IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国電力株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-鳥害防止具 図1
  • 特開-鳥害防止具 図2
  • 特開-鳥害防止具 図3
  • 特開-鳥害防止具 図4
  • 特開-鳥害防止具 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160733
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】鳥害防止具
(51)【国際特許分類】
   H02G 7/00 20060101AFI20221013BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20221013BHJP
   A01M 29/32 20110101ALI20221013BHJP
【FI】
H02G7/00
H02G1/02
A01M29/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065099
(22)【出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】野村 明成
(72)【発明者】
【氏名】舞田 隆弥
【テーマコード(参考)】
2B121
5G352
5G367
【Fターム(参考)】
2B121AA07
2B121BB26
2B121BB27
2B121BB30
2B121BB32
2B121BB35
2B121EA21
2B121FA12
2B121FA13
5G352AC01
5G352AC03
5G367AB03
5G367AD05
5G367AD09
(57)【要約】
【課題】電柱に設置された碍子連への鳥類の休止を防止することができ、間接活線工法により碍子連に簡単に設置できる鳥害防止具を提供する。
【解決手段】耐張碍子のキャップ金具に装着される固定部2と、この固定部2に突設される支持部3と、この支持部3に取設され、碍子連に並設される防鳥手段4と、を備え、固定部2は、キャップ金具の外周面を覆う筒状をなし、その筒の軸方向の全域にわたって開閉可能に切れ目2eが形成されているカバー本体2aと、切れ目2eの対向する縁部上に係合可能に形成され、カバー本体2aをキャップ金具に着脱可能に固定する留具2b,2bと、を備えている鳥害防止具1による。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体からなる碍子本体と、この碍子本体の一側端側に取り付けられるキャップ金具と、を有する耐張碍子を複数直列に接続してなる碍子連に設置される鳥害防止具であって、
前記碍子連を構成する少なくとも1つの前記耐張碍子の前記キャップ金具に装着される固定部と、
この固定部に突設される支持部と、
この支持部に取設され、前記碍子連に並設される防鳥手段と、を備え、
前記固定部は、
前記キャップ金具の外周面を覆う筒状をなし、その筒の軸方向の全域にわたって開閉可能に切れ目が形成されているカバー本体と、
前記切れ目の対向する縁部上に係合可能に形成され、前記カバー本体を前記キャップ金具に着脱可能に固定する留具と、を備えていることを特徴とする鳥害防止具。
【請求項2】
前記カバー本体は、
前記キャップ金具の前記外周面を覆う半割状の一対のカバー部と、
一対の前記カバー部を連結して前記切れ目を開閉自在にするヒンジと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の鳥害防止具。
【請求項3】
前記防鳥手段は、前記支持部に突設され複数の突起を備える棒状体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鳥害防止具。
【請求項4】
前記防鳥手段は、前記支持部から連続するらせん状体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鳥害防止具。
【請求項5】
前記カバー本体は、その内側に前記キャップ金具と係合可能な凸部を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の鳥害防止具。
【請求項6】
前記防鳥手段は、合成樹脂からなる成形体であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の鳥害防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、碍子連への鳥類の休止を防止することができ、かつ間接活線工法により碍子連に簡単に設置できる鳥害防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
電柱等の架線支持体に電線を引き留めて固定する場合、絶縁性を有する耐張碍子を架線支持体と電線の間に介在させて固定する。なお、電線から受ける大きな張力に耐え得るように、通常耐張碍子を複数直列に連結した碍子連が使用される。
上述する碍子連は、電線の配置から架線支持体の頂部付近に設置されることが多く、鳥類が休止する場所となり易い。そのため碍子連では、止まった鳥類が周囲の電線等の通電部と接触して短絡事故を発生させたり、啄んで碍子連を破損させたり、さらには碍子連の下方に糞を落として路面等を汚したりするといった「鳥害」が頻発していた。
【0003】
このような鳥害を解消するため、電力設備の保守管理を行う業者は、従来から様々な鳥害防止具を考え出し、これを活用することで鳥害を防止してきた。そのような鳥害防止具の一つとして、電柱に碍子連を介して固定された電線に対し、電柱の腕金より一定の間隔で起立した複数の支持部材を取り付け、これら支持部材間に鳥類の休止を邪魔するテグスを張設した鳥害防止具が知られている。このような簡単な構造の鳥害防止具は、安価でありながら鳥類が碍子連に休止するのを防止する効果が高く、現在でも広く利用されている。
【0004】
しかしながら、上述する支持部材とテグスとからなる鳥害防止具は、碍子連の周囲に設置する場合、テグスを張るといった人手による細かな作業が必要となる。また、可能な限り停電させることなく短期間で鳥害防止具を設置するという目的から、通常上述する鳥害防止具を設置する際には電線を活線状態としながら、人手により作業を行う工法(直接活線工法)が採られている。このような直接活線工法であれば、確かに工期は短縮されるが、作業者は厚手の絶縁手袋を装着した状態で高所作業を行う必要がある。このため、例えば夏場の高温下での作業の場合、作業者は疲労し易くなり、疲労により誤って落下したり、電線に接触したりする事故を誘発させてしまうことが懸念された。そのため、電力設備の保守管理を行う業者から、間接活線工具を用いて比較的安全に作業できる「間接活線工法」を採ることができ、かつ碍子連に簡単に設置できる鳥害防止具を求める声が強くなっている。
以上のような背景の中で、碍子連の周囲に設置可能な鳥害防止具として、最近では以下に示す考案及び発明が開示されている。
【0005】
特許文献1では、「がいし装置用鳥害防止具」という名称で、送配電線用のがいし装置に取り付けられ、鳥類による短絡事故を防止することができる鳥害防止具に関する考案が開示されている。
特許文献1に開示される考案について、同文献中の図1に記載される符号をそのまま用いて説明すると、特許文献1に記載のがいし装置用鳥害防止具(防止具1a)は、がいし連11の一端にアース側アークホーン12と、他端にライン側アークホーン13をそれぞれ有する耐張がいし装置Aのライン側アークホーン13に近いキャップ金具14に設けられた取付具2と、この取付具2に設けられた阻止棒5とを備え、阻止棒5の上端部5dは、アース側アークホーン12及びライン側アークホーン13の両先端間を結ぶ仮想線lよりも上方に位置し、かつその仮想線lとほぼ平行するように屈曲させられるとともに、ライン側アークホーン13の先端13aよりも突出して設けられていることを特徴とする。
【0006】
上記構成を有する特許文献1に開示される考案であれば、阻止棒5の上端部5dがライン側アークホーン13の上方に位置し、かつその先端13aよりもアース側アークホーン12側へ接近しているため、アース側アークホーン12と上端部5dとの間隔を狭くするという作用を有する。この結果、鳥類ががいし連11に休止しようとしても、防止具1aが邪魔となり鳥類はがいし連11に休止し難くなる。さらに、鳥類がアース側アークホーン12へ休止し羽根を拡げても、阻止棒5の上端部5dによって羽根がライン側アークホーン13に接触しなくなる。加えて、阻止棒5の上端部5dに鳥類が休止して羽根を拡げ、その羽根がアース側アークホーン12に接した場合であっても、阻止棒5はがいし連11に設置されていることで電気的に絶縁されているため、短絡事故が発生することはない。
【0007】
また、特許文献2では、「ポリマー碍子用鳥害防止具」という名称で、鳥類の啄みによるポリマー碍子の破損を防止することができるポリマー碍子用鳥害防止具に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示される発明について同文献中の図1に記載される符号をそのまま用いて説明すると、ポリマー碍子用鳥害防止具10は、ポリマー碍子100の表面に装着される装着部11と、その装着部11がポリマー碍子100に装着された状態でポリマー碍子100から離間する方向に延在する複数の突起部12とを備えていることを特徴とする。
【0008】
上記構成を有する特許文献2に開示される発明であれば、例えば、ポリマー碍子100の端末金具部30に取り付ければ、ポリマー碍子100の端末金具部30側に止まった鳥類が突起部12を乗り越えて碍子本体20側に移動することが困難になるとともに、端末金具部30側から碍子本体20を啄むことができなくなる。この結果、鳥類の休止及び啄みによるポリマー碍子100の破損を防止することができる。また、このポリマー碍子用鳥害防止具10が端末金具部30ではなく碍子本体20に取り付けられていれば、飛来した鳥類が直接碍子本体20に止まることを防ぐこともできる。
【0009】
さらに、特許文献3では、「鳥害防止装置」という名称で、電柱の送電線支持部に配設された電線や碍子への鳥類の排泄物被害、及び電線への鳥類の接触による短絡事故を防止するための鳥害防止装置に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示される発明について、同文献中の図1に記載される符号をそのまま用いて説明すると、鳥害防止装置は、送電線支持部2や送電線4に着脱自在に固着する固着具5に支持部材6を取り付け、また支持部材6の先端または中間部に先端が自由端である揺動自在の絶縁性細線7を送電線4の上方で、かつ送電線4の長さ方向に沿って取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
上記構成を有する特許文献3に開示される発明であれば、絶縁性細線7が送電線4の上方に、かつ送電線4の長さ方向に沿って着脱自在に取り付けられることで、絶縁性細線7は送電線4及び送電線支持部2にある碍子3に鳥類が休止しようとするのを妨害するという作用を有する。この結果、特許文献3に開示される発明は、鳥類の排泄物被害、鳥類による短絡事故を防止することができる。
また、絶縁性細線7が絶縁性であることから、風によって絶縁性細線7が揺動したり、折れ曲がったりして電線4に接触しても短絡事故が発生することはない。加えて、特許文献3に開示される発明は、送電線支持部2又は送電線4に対して簡単に着脱することができるため、施工性がよく、作業時の労力を低減することができるという効果を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開平03-71516号公報
【特許文献2】特開2012-221823号公報
【特許文献3】特開平10-14474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の特許文献1に開示される考案の場合、絶縁された阻止棒5の上端部5dががいし連11の上方に存在することで、確かに鳥類ががいし連11に休止するのを妨げたり、休止して羽根を拡げた場合の短絡事故等を防いだりする効果があると考えられる。しかしながら、ここでのがいし連11に鳥類の休止を妨げる効果は、アース側アークホーン12及びライン側アークホーン13の存在によるところも少なからずあると考えられる。すなわち、特許文献1に開示される考案は、上記2つのアークホーンが存在する場合において効果が十分に発揮されるのであり、これらのアークホーンが存在しない碍子連に対して使用する場合には、鳥類の休止を十分に防止できない可能性があるという課題がある。
また、阻止棒5を取り付ける取付具2は、耐張がいし装置Aのキャップ金具14にボルト、ナットを用いて取り付けられるとの記載もあり、手による細かな作業が必要になると考えられる。このため、特許文献1の考案は間接活線工法を用いての設置は困難であると考えられる。したがって、設置の際に直接活線工法により作業が行われる可能性が高く、設置する作業者の安全が十分確保できないという課題もあった。
【0013】
一方、特許文献2に開示される発明であれば、ポリマー碍子用鳥害防止具10が端末金具部30に取り付けられていることで、確かに端末金具部30側に休止した鳥類は突起部12により碍子本体20側に移動することも、碍子本体20を啄むこともできなくなる。この結果、ポリマー碍子100が鳥類により破損されてしまうのを防止できると考えられる。また、ポリマー碍子用鳥害防止具10が碍子本体20に直接取り付けられていれば、鳥類はポリマー碍子100に休止し難くなり鳥害を防ぐことができると考えられる。
しかしながら、特許文献2に開示される発明の場合、ポリマー碍子100に固定する方法として、略C字形状を呈する環状の部材である装着部11をポリマー碍子100に嵌め合わせるといった記載はあるものの、具体的な方法は記載されていない。このため、ポリマー碍子用鳥害防止具10は設置の際に手作業が必要となり間接活線工法が利用できない可能性もあると考えられる。また、突起部12は、碍子本体20側の軸に対し垂直に離間する方向にのみ延在する。このため、様々なサイズの鳥類が碍子本体20に休止するのを防ぐためには、碍子本体20の軸方向に、突起部12を短い間隔で複数取り付けておく必要がある。このような作業は煩雑であり、作業中に事故を発生させ易くするものと考えられる。
【0014】
また、特許文献3に開示される発明であれば、簡単に送電線支持部2、送電線4に対して簡単に着脱でき、しかも絶縁性細線7の長さを調整することで広範囲に亘って鳥類の休止を防止することができると考えられる。しかしながら、特許文献3に開示される発明の場合、間接活線工法での設置が可能か明らかにされておらず、間接活線工法が使用できない可能性もあった。また、送電線支持部2や送電線4に鳥害防止装置を固着する際の固着具5はクリップ状であるため、固定する力は十分とは言い難い。そのため、特許文献3に開示された発明である鳥害防止装置が、風を受けたり鳥類と接触したりすることで、固着具5が送電線4の周りを回転してしまう等により絶縁性細線7の配置が変化してしまい易いと考えられ、その場合鳥類の休止を防止することができなくなってしまうという課題があった。
【0015】
本発明は、かかる従来の課題に対処してなされたものであり、その目的は間接活線工法により簡単に碍子連に設置することができ、碍子連に鳥類が休止するのを防止することが可能な鳥害防止具を提供することにある。
さらに本発明は、碍子連に設置された際に、所定の配置に維持されるように碍子連に係止できる鳥害防止具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための第1の発明は、絶縁体からなる碍子本体と、この碍子本体の一側端側に取り付けられるキャップ金具と、を有する耐張碍子を複数直列に接続してなる碍子連に設置される鳥害防止具であって、碍子連を構成する少なくとも1つの耐張碍子のキャップ金具に装着される固定部と、この固定部に突設される支持部と、この支持部に取設され、碍子連に並設される防鳥手段と、を備え、固定部は、キャップ金具の外周面を覆う筒状をなし、その筒の軸方向の全域にわたって開閉可能に切れ目が形成されているカバー本体と、切れ目の対向する縁部上に係合可能に形成され、カバー本体をキャップ金具に着脱可能に固定する留具と、を備えていることを特徴とするものである。
【0017】
上記構成の第1の発明であれば、固定部の筒状のカバー本体の切れ目を開き、耐張碍子のキャップ金具の外周面を覆うようにカバー本体が装着されることで、第1の発明である鳥害防止具の固定部が碍子連に係止されるという作用を有する。また、カバー本体の切れ目の対向する縁部上に形成された留具を係合させたり係合を解除したりすることで、切れ目を開口不能にしたり開口可能にしたりすることができる。すなわち、この留具の係合及び係合解除を行うことで、カバー本体(固定部)をキャップ金具に着脱可能に固定できるようになる。
ここで、留具の仕様については特に指定はないが、ヤットコ等の間接活線工具を用いて容易に係合させたり係合を解除できたりすることが可能なものが望ましい。このような留具として、例えば、上記切れ目の一方の縁部に設けられた、凸部を有する係合片と、上記切れ目の他方の縁部に設けられ上記凸部を挿入かつ係止可能な係合孔が形成された係合片とからなる留具が挙げられる。
【0018】
一方、支持部が固定部に突設されることで、支持部は固定部及び碍子連から離隔する方向に向くという作用を有する。そして、この支持部に防鳥手段が碍子連に接触しないように間隔をあけて取設されることで、防鳥手段は碍子連に対し並設されるという作用も有する。
また、支持部に取設されている防鳥手段は、その防鳥手段の配置されている側から碍子連へ接近する鳥類に対し障害物になるという作用を有する。なお、ここでの防鳥手段とは、特に指定はなく、碍子連に近づき難くする障害物となるものであればよい。例えば、防鳥手段は単なる棒状体であってもよく、棒状体に複数の突起が設けられたものであってもよく(図1参照)、さらにコイル状に形成した線状部材であってもよい(図2参照)。
そして、支持部にその一端が取設される防鳥手段及び/又は支持部が、屈曲性を有する素材により形成されている場合には、防鳥手段が風を受けて揺動し易くなり、碍子連に休止しようとする鳥類に警戒心及び恐怖心を与えるという作用も有する。さらに、防鳥手段の長さを予め長く作製しておけば、鳥害防止具を装着する際に耐張碍子又は碍子連の寸法に合わせて切断・調整して使用することもできる。
【0019】
次に、第2の発明である鳥害防止具は、上述した第1の発明において、カバー本体は、キャップ金具の外周面を覆う半割状の一対のカバー部と、一対のカバー部を連結して切れ目を開閉自在にするヒンジと、を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第2の発明であれば、上述する第1の発明と同じ作用に加えて、カバー本体が一対のカバー部となりヒンジにより連結されることで、カバー本体の開放端である切れ目が小さな力で開閉自在になるという作用を有する。
【0020】
そして、第3の発明である鳥害防止具は、上述した第1又は第2の発明において、防鳥手段は、支持部に突設され複数の突起を備える棒状体であることを特徴とするものである。
上記構成の第3の発明であれば、上述する第1又は第2の発明の作用に加えて、防鳥手段が複数の突起を備える棒状体とすることで、この棒状体に鳥類が休止しようとしても、突起の存在により鳥類が棒状体を掴み難くなるという作用を有する。
【0021】
そして、第4の発明である鳥害防止具は、上述した第1又は第2の発明において、防鳥手段は、支持部から連続するらせん状体であることを特徴とするものである。
上記構成の第4の発明であれば、上述する第1又は第2の発明の作用に加えて、防鳥手段が棒状である場合に比べて外形が大きくなり、鳥類がその存在を感知し易くなるという作用を有する。
【0022】
さらに、第5の発明である鳥害防止具は、上述した第1乃至第4の発明のいずれか1つの発明において、カバー本体は、その内側にキャップ金具と係合可能な凸部を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第5の発明であれば、上述する第1乃至第4の発明のいずれかの発明と同じ作用に加えて、凸部が後述するキャップ金具に形成されている挟持部等の凹部に係合することができる。これにより、キャップ金具に装着されたカバー本体がキャップ金具の軸線周りに回転するような力が加えられた際に、係合した凸部がストッパーとなり回転を防止することができる。さらに、凸部をキャップ金具の所定の凹部に引掛けることで、鳥害防止具の支持部及び防鳥手段が、碍子連に対して常に所定の位置に配置されるという作用も有する。
【0023】
さらに、第6の発明である鳥害防止具は、上述した第1乃至第5の発明のいずれか1つの発明において、防鳥手段は、合成樹脂からなる成形体であることを特徴とするものである。
上記構成の第6の発明であれば、上述する第1乃至第5の発明のいずれかの発明と同じ作用に加えて、防鳥手段が合成樹脂製の成形体となることで、所望の形状の成形体を簡単に作製し支持部に設置できるとともに、市販される多種多様な合成樹脂製の成形体を支持部に設置することも可能となる。加えて、防鳥手段となる部品の重量が軽量化されるため、支持部に加わる負荷が低減されるという作用も有する。また、風や鳥類の接触により屈曲しても破損し難く、屈曲時に通電部に触れた場合でも金属部品等に比べて絶縁性が高いため、電流が流れ難くなるという作用を有する。
【発明の効果】
【0024】
上述する第1の発明によれば、碍子連を構成する少なくとも一つの耐張碍子のキャップ金具に装着するだけで、簡単に鳥害防止具を碍子連に係止することができ、留具の係合及び係合解除という操作により、鳥害防止具を碍子連に着脱可能に固定することができる。このような簡単な方法で着脱可能に固定することができるため、ヤットコ等の間接活線工具を使用した間接活線工法による設置作業も可能となる。その結果、直接活線工法に比べ鳥害防止具の設置作業時の労力を軽減でき、さらには安全性も高めることが可能となる。
【0025】
また、防鳥手段を碍子連に並設させ、かつその長さを碍子連の長さと同程度に調節することで、碍子連の長さによらず一つの鳥害防止具により碍子連に休止しようとする鳥類の接近を防止することができる。
加えて、防鳥手段は一方の端部のみが支持部に固定されたものであったり、防鳥手段及び/又は支持部が、屈曲性を有する素材により形成されていたりする場合には、風により揺動し易くなる。これにより、碍子連に休止しようとする鳥類に警戒心及び恐怖心を与えて近寄らせなくすることができ、鳥害を一層防止することができる。
【0026】
次に、上述する第2の発明であれば、第1の発明と同じ効果に加えて、カバー本体を構成する一対のカバー部がヒンジにより連結されていることで、カバー本体の開放端である切れ目が開閉自在になる。すなわち、小さな力でも切れ目の開閉が可能となるため、カバー本体をキャップ金具に装着したり取り外したりする作業が一層容易になる。この結果、鳥害防止具の設置作業において、労力を一層軽減することができるとともに、作業時の安全性を一層高めることができる。
【0027】
次に、上述する第3の発明であれば、第1又は第2の発明と同じ効果に加えて、支持部に取設された防鳥手段に鳥類が休止してしまうのを防止することができる。この結果、碍子連における鳥害を一層防止することができる。
【0028】
次に、上述する第4の発明であれば、第1又は第2の発明と同じ効果に加えて、防鳥手段が棒状である場合に比べて外形が大きくなることで鳥類が感知し易くなり、鳥類が警戒して碍子連に近づき難くなるという効果があると考えられる。この結果、碍子連における鳥害を一層防止することができる。
【0029】
次に、上述する第5の発明であれば、第1乃至第4の発明のいずれかの発明と同じ効果に加えて、カバー本体の内側に形成された凸部がキャップ金具と係合することで、カバー本体がキャップ金具の軸線周りに回転するのを防止できる。この結果、風や鳥類が当たっても防鳥手段の位置を一定に維持することができる。これにより、鳥害を防止する効果を維持させることが可能となる。さらに、凸部がキャップ金具の凹部に係合するようにすれば、支持部及び防鳥手段が碍子連に対して常に所定の位置に配置されるようになる。すなわち、予め凸部の位置を調整しておけば、鳥害防止具の設置作業の際に凸部を凹部に設置するだけで、支持部及び防鳥手段を最適な配置とすることができる。この結果、鳥害防止具の設置作業を一層単純化することができ、作業効率が向上することで安全性も向上する。そして、人件費の削減にも繋げることができると考えられる。
【0030】
次に、上述する第6の発明であれば、第1乃至第5の発明のいずれかと同じ効果に加えて、防鳥手段として所望の形状に作製した合成樹脂製の成形体、並びに市販の合成樹脂製の成形体を取設することができる。これにより、鳥類に合わせて最適な成形体を選択して取設することができ、鳥害防止効果を一層高めることが可能となる。加えて、安価に入手可能な市販の成形体も使用できるため、鳥害防止具を維持管理するための費用の低減も図ることができる。
さらに、防鳥手段が軽量化するため、防鳥手段を支える支持部に加わる負荷も軽減する。この結果、支持部が破損し難くなることで鳥害防止具の製品寿命は延び、鳥害防止具の交換頻度も低くすることができる。また、防鳥手段は風や鳥類の接触により屈曲しても破損し難くなり、屈曲時に通電部に触れても絶縁性が高いため短絡事故が発生し難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係る鳥害防止具の外観斜視図である。
図2図1に示す鳥害防止具の変形例の外観斜視図である。
図3図1に示す鳥害防止具を耐張碍子に装着した状態であって、(a)はその側面図であり、(b)はその平面図である。
図4図1に示す鳥害防止具を碍子連に設置した場合の側面図である。
図5図3(a)に示すX-X線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、本発明の鳥害防止具について図1乃至図5を参照しながら詳細に説明する。なお、いずれの図も本発明の鳥害防止具の例として挙げたものであり、後述する本発明の作用・効果を奏する範囲内であれば、構成要素の形状、数を任意に設定することが可能である。
【0033】
「1;本発明の基本構成について」
「1-1;基本構成の構造について」
本発明の実施形態に係る鳥害防止具の構造について、図1を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態に係る鳥害防止具の外観斜視図である。なお、多数ある同一の構成要素については、図が煩雑にならないようにその全てに符号付けを行っていない。
図1に示す鳥害防止具1は、絶縁体からなる碍子本体と、この碍子本体の一側端側に取り付けられるキャップ金具とを有する耐張碍子(図示せず、図3参照)を複数直列に接続してなる碍子連(図示せず、図4参照)に設置されるものであり、碍子連を構成する耐張碍子のキャップ金具(図示せず、図3参照)に装着される固定部2と、この固定部2に突設される支持部3と、この支持部3に取設されている防鳥手段4とを備えている。
ここで、固定部2は、図1に示すようにカバー本体2aと留具2b,2bとを有している。そして、カバー本体2aは図示しないキャップ金具の外周面を覆って装着可能なように筒状をなし、かつカバー本体2aは半割状の一対のカバー部2c,2cで構成され、これら一対のカバー部2c,2cはヒンジ2dにより開閉自在に連結されている。
【0034】
また、ヒンジ2dにより開閉自在となり、カバー本体2aの筒の軸方向の全域にわたって形成されている切れ目2eの縁部には、上述する留具2b,2bが切れ目2eの開口を防止するために設置されている。なお、この留具2bの仕様は特に指定するものではないが、間接活線工具であるヤットコ等を用いて簡単に係合させたり係合を解除できたりするものが望ましい。このような留具2bとして、上述したように、切れ目2eの一方のカバー部2cの縁部に形成され凸部を有する係合片と、他方のカバー部2cの縁部に設けられ、上記凸部を挿入して係止可能な係合孔を有する係合片とからなる留具が挙げられる。なお、図1乃至図5に示す鳥害防止具1に形成された留具2bは、このような一対の係合片からなる留具を想定したものである。
【0035】
また、図1に示すように、このカバー本体2aには、切れ目2eの開閉を補助等するため、切れ目2eを構成する一方のカバー部2cの縁部と、他方のカバー部2cの縁部に把持部2f,2fが形成されていてもよい。このような把持部2f,2fが形成されていることで、後述するようにヤットコ等の間接活線工具による把持が容易になり、切れ目2eを簡単に開閉させることができるようになる。また、鳥害防止具1を運搬する際にも活用可能となる。
なお、把持部2f,2fの配置としては、上記ヤットコ等での操作のし易さを考慮すれば、図1に示すようにカバー本体2aを略側面視した際に、把持部2f,2fが重ならないようにしておくことが望ましい。
【0036】
次に、固定部2に突設された支持部3において、固定部2より離隔しながら取設されている防鳥手段4は、図1に示すように支持部3の一端に固定され、図示しない碍子連の接続方向を向くものとなる(図4参照)。なお、詳細は後述するが、ここでの防鳥手段4は単なる直線状の棒状体であってもよく、図1に示すように直線状の棒状体4aと、この棒状体4aから複数突設されている突起4bとからなるものであってもよい。このような防鳥手段4の他の例について、図2を用いて説明する。
【0037】
図2は、図1に示す本発明の実施の形態に係る鳥害防止具の変形例の外観斜視図である。なお、図1において既に説明した同じ構成要素については同一の符号を付し、その説明は省略する。
図2に示す鳥害防止具7は、支持部3に取設されている防鳥手段8が支持部3の端部に形成されたらせん状体となる以外は、鳥害防止具1と共通の構成要素を有する。このような防鳥手段8を有する鳥害防止具7であっても、後述する鳥害防止具1の作用及び効果を発揮することができる。そして、設置方法、製造方法についても後述する鳥害防止具1と同じである。
一方で、防鳥手段8がこのようならせん状体となることで、防鳥手段が棒状である場合に比べて外形が大きくなり、鳥類がその存在を感知し易くなると考えられる。この結果、鳥害防止具7では鳥類が警戒して碍子連に近づき難くなるという効果もあると考えられる。
【0038】
以上のように、防鳥手段4の形状は使用者が任意に設定し、所望の形状として使用することができる。例えば、対象とする鳥類、設置される環境等に合わせて、防鳥効果の高い形状を有する防鳥手段を支持部3に取設することも可能である。
なお、本明細書中に図示しないが、防鳥手段は図1図2に示すように一つだけ取設されるのではなく、例えば複数の防鳥手段4が固定部2より離隔しながら支持部3に取設され、かつ互いに異なる向きとなるように配置されたものであってもよい。このような構成であっても、鳥害防止具1と同じ作用及び効果を発揮することが可能となる。
【0039】
[1-2;本発明の設置方法について]
次に、上述する鳥害防止具1を耐張碍子に設置する方法について、図3を参照しながら説明する。
図3図1に示す鳥害防止具を、碍子連を構成する耐張碍子に装着した状態を示すものであり、図3(a)はその側面図であり、図3(b)はその平面図である。なお、図3では支持部3の一部と防鳥手段4の記載は省略するとともに、図1及び図2において既に説明した同じ構成要素については、同一の符号を付して説明は省略する。
図3(a)、図3(b)に示すように、鳥害防止具1が装着された耐張碍子5は、碍子本体5a、キャップ金具5b(一部破線により示す)、連結部5cを備え、キャップ金具5bには他の耐張碍子5の連結部5c又は他の部材と連結するための二股形状の挟持部5dが形成されている。
このような耐張碍子5に対し、図1に示す鳥害防止具1を設置した場合、図3(a)、図3(b)に示されるように、鳥害防止具1のカバー本体2a内にキャップ金具5bが収容されるとともに、耐張碍子5の碍子本体5a、連結部5c、キャップ金具5bの挟持部5dはカバー本体2aより露出した状態となる。このため、鳥害防止具1を耐張碍子5に固定する場合に、鳥害防止具1は耐張碍子5が他の耐張碍子又は他の部材と連結するのを阻害することはない。
【0040】
このような鳥害防止具1を耐張碍子5に設置する方法は以下の通りである。
まず初めに固定部2の留具2b,2bの係止を解除した後、間接活線工具のヤットコ等で掴みながら鳥害防止具1を耐張碍子5の上方まで移動させる。次いで、2つの把持部2f,2fをそれぞれヤットコ等の間接活線工具で把持して切れ目2eが開くように操作しながら、開いた切れ目2eよりキャップ金具5bをカバー本体2a内に収容することで、鳥害防止具1を耐張碍子5に係止する。その後、鳥害防止具1の防鳥手段4が所定の配置となるように、固定部2をキャップ金具5bの軸線周りに回転させて調整する。防鳥手段4の配置が所定の位置になれば、2つの留具2b,2bをヤットコ等で挟む等して係合させることで、鳥害防止具1を耐張碍子5に簡単に固定することができる。
一方、耐張碍子5に固定した鳥害防止具1を取り外す場合は、まず把持部2f,2fをヤットコ等で把持して切れ目2eが開くように操作し、留具2b,2bの係合を解除する。そして、ヤットコ等で切れ目2eを開いた状態に維持しながら固定部2を移動させキャップ金具5bから外すことで、鳥害防止具1を耐張碍子5から簡単に取り外すことができる。
【0041】
[1-3;本発明による作用及び効果について]
上述するような鳥害防止具1であれば、下記の作用を有すると考えられる。
まず、筒状のカバー本体2aの切れ目2eを開き、碍子連を構成する耐張碍子5のキャップ金具5bの外周面を覆うように固定部2が装着されることで、鳥害防止具1が耐張碍子5(すなわち碍子連)に係止されるという作用を有する。また、カバー本体2aの切れ目2eの対向する縁部上に形成された留具2b,2bを係合させたり係合を解除したりすることで、切れ目2eを開口不能にしたり開口可能にしたりすることができる。すなわち、留具2b,2bの係合及び係合解除を行うことで、カバー本体2aをキャップ金具5bに着脱可能に固定できるようになる。
【0042】
次に、図4を用いながら支持部3と防鳥手段4に関する作用について説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る鳥害防止具が、2つの耐張碍子が直列に連結されている碍子連に設置されている状態を示す側面図である。なお、図1乃至図3において既に説明した同じ構成要素については、同一の符号を付して説明は省略するとともに、図が煩雑とならないように説明に無関係な構成要素(碍子連6に連結している器具も含む)についても符号を省略した。
図4に示すように、図示しない電柱と電線の間に介在し、2つの耐張碍子5,5からなる碍子連6に対し、鳥害防止具1が耐張碍子5,5のそれぞれのキャップ金具5bに固定されている。この際、各鳥害防止具1において、固定部2より突設された支持部3に取設されている防鳥手段4は、碍子連6に並設されるように配置される。すなわち、支持部3が固定部2に突設されることで、支持部3は碍子連6から離隔する方向に向けられるという作用する。そして、防鳥手段4が碍子連6に対し間隔を開けながら耐張碍子5の接続方向に向くように支持部3に取設されることで、防鳥手段4は碍子連6に並設されるという作用を有する。
【0043】
加えて、図4に示すように、防鳥手段4,4が碍子連6の接続方向に沿って並設されることで、防鳥手段4,4は碍子連6の防鳥手段4,4が配置されている側(紙面左側)から接近してくる鳥類を阻む障害物になるという作用を有する。
さらに、鳥害防止具1において、防鳥手段4及び/又は支持部3が屈曲性を有する素材により形成されている場合には、支持部3に一端が取設されて支持されている防鳥手段4は風の抵抗を受けて揺動し易くなり、碍子連6に休止しようとする鳥類に警戒心及び恐怖心を与えるという作用も有する。
ここで、鳥害防止具1の防鳥手段4の長さを予め長く形成しておけば、設置対象となる耐張碍子5、碍子連6の寸法に合わせた防鳥手段4の形成が現場において可能となり便利である。そして、碍子連6の接続方向の長さと同じ長さとなる防鳥手段4が形成された鳥害防止具1であれば、図4のように複数の鳥害防止具1を必要とする碍子連6に対して鳥害防止具1の設置個数を減らすことも可能となる。
【0044】
一方、カバー本体2aが一対のカバー部2c,2cで形成され、かつ一対のカバー部2c,2cがヒンジ2dにより連結されていることで、カバー本体2aの開放端である切れ目2eが小さな力でも開閉自在になるという作用を有する。
さらに、切れ目2eにおいて対向する一対のカバー部2c,2cの縁部にそれぞれ把持部2f,2fが形成されていることで、この把持部2fを介してカバー本体2aを間接活線工具であるヤットコ等で容易に把持できるようになる。この結果、カバー部2c,2cの縁部を離隔する方向(切れ目2eを開く方向)に容易に力を作用させることが可能になる。
【0045】
以上の作用により、鳥害防止具1は以下の効果を有すると考えられる。
まず、碍子連6を構成する少なくとも一つの耐張碍子5のキャップ金具5bに鳥害防止具1の固定部2を装着することで、簡単に鳥害防止具1を碍子連6に係止することができる。そして、留具2b,2bの係合及び係合解除の操作により、鳥害防止具1を碍子連6に着脱可能に固定することができる。すなわち、ネジにより固定するといった煩わしい作業もなく、簡単に鳥害防止具1を着脱可能に固定することができる。このため、従来のように電柱に碍子連6を介して固定された電線に対し、電柱の腕金より一定の間隔置きに支持部材を取り付けて、支持部材間にテグスを張設するような煩わしい作業を省略することができるとともに、ヤットコ等の間接活線工具を用いた間接活線工法による設置作業も可能となる。その結果、鳥害防止具1の設置作業における労力を軽減できるとともに、作業時の安全性も高めることができる。
また、防鳥手段4が碍子連6に休止しようとする鳥類を阻む障害物になることで、碍子連6への鳥類の休止を防止することができ、鳥害を効果的に防止することができる。加えて、防鳥手段4は風の抵抗を受けて揺動し易く、鳥類に警戒心及び恐怖心を与えるため、鳥類が休止し難くなる。これによって鳥害を効果的に防止できると考えられる。
さらに、鳥害防止具1の防鳥手段4を予め長めに作製し、碍子連6に固定する際に碍子連6の寸法と同程度に調節することができるようにすれば、碍子連6に設置する鳥害防止具1の数を減らすことも可能となる。この結果、設置作業を一層簡素化し安全性を高めることができるとともに、必要となる鳥害防止具1の個数が減るため経費削減にも繋がる。
【0046】
さらに、カバー本体2aを構成する一対のカバー部2c,2cがヒンジ2dにより連結されていることで、切れ目2eが小さな力でも開閉自在になるため、カバー本体2aをキャップ金具5bに装着したり取り外したりする作業が容易になる。この結果、鳥害防止具1の設置作業時の労力を軽減することができるとともに、作業の安全性も高めることができる。
そして、カバー本体2aに把持部2f,2fが形成されていることでヤットコ等の掴み代となり、切れ目2eを開いたり、運搬時に利用したりすることができる。この結果、間接活線工法のように間接活線工具を用いた作業であっても、ミスなく進めることができるようになる。
【0047】
[1-4;本発明の製造方法について]
次に、図1に示す鳥害防止具1の製造方法について説明する。鳥害防止具1の製造に関し、使用する素材として特に指定はないが、使用場所を考慮すれば、絶縁性を有する素材であることが望ましい。そのような材料としては、無機材料、合成樹脂(ゴムを含む)、繊維強化樹脂等が挙げられる。なお、成形の容易さ、低価格であることを考慮すれば、合成樹脂が好適である。合成樹脂の中でも熱可塑性樹脂を用いる場合であれば、複雑な形状の成形体であっても、射出成形法を用いて安価かつ簡単に大量生産が可能となる。
【0048】
具体的な製造方法としては、鳥害防止具1の各部品(固定部2、支持部3、防鳥手段4)をそれぞれ周知の成形技術により作製し、次いで支持部3を固定部2の所定の位置に、そして防鳥手段4を支持部3の所定の位置に設置することで鳥害防止具1を作製することができる。また、上述するように各部品を別々に作製せず、このうちのいくつか、又は全てを一体で成形するものであってもよい。
なお、固定部2を作製する場合、留具2b、把持部2fを備えたものとすれば、後で形成する手間が省けるため都合がよい。また、固定部2の筒状のカバー本体2aが半割形状であって、ヒンジ2dにより連結されている場合には、カバー本体2aを構成するカバー部2c,2cを別々に作製した後、ヒンジ2dを設置して連結してもよく、一対のカバー部2c,2c及びヒンジ2dを一体として成形するものであってもよい。
【0049】
また、固定部2と支持部3を接続したり、支持部3と防鳥手段4を接続したり、カバー部2cとヒンジ2dを接続したりする場合、使用する素材にもよるが、熱融着させたり、接着剤により接合したり、ネジ構造を形成して螺合させたりする一般的な接続方法を用いることができる。
一方、鳥害防止具1を全て同じ素材で作製するものでなくともよく、部品毎に使用する素材を変えたものであっても構わない。例えば、固定部2は熱硬化性樹脂を用い、その他は無機材料を用いていてもよい。また、強度の必要な支持部3に曲げ強度の高い繊維強化樹脂からなる素材が用いられるものであってもよい。
【0050】
「2;本発明の細部構造について」
「2-1;カバー本体の内側に凸部が形成されている場合について」
鳥害防止具1は、図1に示すように、カバー本体2aが、その内側にキャップ金具5bと係合可能な凸部2gを備えていてもよい。
この凸部2gについて、図5を用いながら説明する。図5は、図3(a)に示す鳥害防止具のX-X線矢視断面図である。なお、既に説明した構成要素とその作用効果については説明を省略する。
図1及び図2に示すように、カバー本体2aを構成する一対のカバー部2c,2cのうち、支持部3が突設されているカバー部2cの内側には凸部2gが形成されている。この凸部2gは、図5に示すように鳥害防止具1が耐張碍子5に装着された際に、キャップ金具5bに形成された二股形状を有する挟持部5dの凹部に嵌って係合するようになる。
【0051】
このように凸部2gがキャップ金具5bの挟持部5dと係合することで、カバー本体2aにキャップ金具5bの軸線周りに回転するような力が加えられた際に、カバー本体2aは凸部2gがストッパーとなって回転できなくなるという作用を有する。さらに、凸部2gの位置を調整することで、凸部2gをキャップ金具5bに係合させれば支持部3及び防鳥手段4が碍子連6に対して常に所定の位置に固定されるようになる。なお、ここでは凸部2gをキャップ金具5bの挟持部5dに係合させているが、この挟持部5dとは別の部位に係合させて、上記作用を生じさせるものであってもよい。
【0052】
以上の作用により、凸部2gとキャップ金具5bの挟持部5dとが係合することで、キャップ金具5bの軸線周りにカバー本体2aが回転できなくなり、風や鳥類の接触により力を受けても防鳥手段4を所望の位置に維持することができる。これにより、鳥害を防止する効果を長期間維持することができる。
さらに、凸部2gをキャップ金具5bの挟持部5dに係合させることで、鳥害防止具1の支持部3及び防鳥手段4が碍子連6に対して常に所定の位置に固定されるようになるため、予め凸部2gの位置を調整しておけば、鳥害防止具1の設置作業の際に凸部2gを挟持部5dに係合させるだけで、支持部3及び防鳥手段4を所望の配置に簡単にセットできる。この結果、鳥害防止具1の設置作業を一層単純化させることができ、作業効率が向上し作業の安全性が一層高められる。
【0053】
「2-2;カバー本体がヒンジを有していない場合について」
鳥害防止具1の固定部2において、カバー本体2aは半割状の一対のカバー部2c,2cがヒンジ2dにより開閉自在に連結されたものではなく、筒状をなし、その筒の軸方向の全域にわたって開閉可能に切れ目2eが形成されたものであってもよい。ここでは図示していないが、このようなカバー本体2aであっても、上述する鳥害防止具1と同じ作用と効果を有する。また、上記カバー本体2aを有する鳥害防止具を碍子連6に設置する方法についても、上述する鳥害防止具1と基本的に同じである。
加えて、製造方法についても、上述した鳥害防止具1の製造方法と基本的に共通する。なお、固定部2のカバー本体2aについては、例えばキャップ金具5bの外周面を覆うことが可能な筒状の成形体を、熱可塑性樹脂を用い射出成形により作製する。次いで、その筒の軸方向の全域にわたって開閉可能なようにカッター等の切断具を用いて切れ目2eを形成することで作製可能である。
【0054】
「2-3;防鳥手段が複数の突起を有する棒状体である場合について」
鳥害防止具1の防鳥手段4は、図1に示すように、棒状体4aと、この棒状体4aから複数突設されている突起4bとからなるものであってもよい。
上記構成を有する防鳥手段4を有する鳥害防止具1であれば、防鳥手段4が単なる棒状体ではなく複数の突起4bを備える棒状体4aであるため、棒状体4aに鳥類が休止しようとしても、突起4bの存在により鳥類は棒状体4aを掴むことが困難になるという作用を有する。
以上のような作用により、防鳥手段4は碍子連6への鳥類の休止を妨げるばかりか、防鳥手段4自体に鳥類が休止することも防ぐことが可能となる。この結果、碍子連6における鳥害を一層防止することができるのである。
【0055】
「2-4;防鳥手段が合成樹脂からなる成形体である場合について」
鳥害防止具1の防鳥手段4は、合成樹脂からなる成形体であってもよい。
このような構成を有する鳥害防止具1であれば、防鳥手段4を合成樹脂製の成形体とすることで、防鳥手段4を所望の形状に作製して支持部3に取設できるとともに、市販される多種多様な合成樹脂製の成形体も支持部3に取設できる。加えて、合成樹脂とすることで、防鳥手段4が軽量化されるため、支持部3に加わる負荷も低減されるという作用も有する。また、風や鳥類の接触により屈曲しても折れ難く、通電部に触れた場合でも絶縁性が高いため電流を流れ難くするという作用を有する。
なお、合成樹脂からなる上記防鳥手段4を支持部3に取設する方法については、上述した通りである([1-4;本発明の製造方法について]参照)。
【0056】
以上のような作用を有する鳥害防止具1であれば、鳥類に合わせて最適な形状の防鳥手段4を選択して取設することができ、鳥害を防止する効果を一層向上させることが可能となる。加えて、安価に入手可能な市販の防鳥用の成形体も防鳥手段4として利用できるため、鳥害防止具1の維持管理費の削減も図ることが可能となる。
【0057】
そして、防鳥手段4が軽量化するため、防鳥手段4の取設された支持部3に加わる負荷も軽減する。この結果、支持部3が破損等し難くなるため、鳥害防止具1の製品寿命が延びると考えられ、鳥害防止具1の交換頻度も低下させることもできる。すなわち、鳥害防止具1の維持管理費の低減も可能となるのである。
また、防鳥手段4を合成樹脂製とすることで、風や鳥類の接触により屈曲しても折れ難くなるため、鳥害防止具1の製品寿命を延ばす効果があると考えられる。加えて、防鳥手段4が強風等により屈曲し、誤って通電部に触れた場合であっても短絡事故が起き難くなるため、碍子連6等の電力設備の修理回数が減り維持管理費の削減に繋がると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明は間接活線工法により碍子連に簡単に設置することができる鳥害防止具であり、鳥害防止に関する技術分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…鳥害防止具 2…固定部 2a…カバー本体 2b…留具 2c…カバー部 2d…ヒンジ 2e…切れ目 2f…把持部 2g…凸部 3…支持部 4…防鳥手段 4a…棒状体 4b…突起 5…耐張碍子 5a…碍子本体 5b…キャップ金具 5c…連結部 5d…挟持部 6…碍子連 7…鳥害防止具 8…防鳥手段
図1
図2
図3
図4
図5