(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160751
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】吸収ショーツ
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20221013BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20221013BHJP
A61F 13/476 20060101ALI20221013BHJP
A41B 9/12 20060101ALI20221013BHJP
A41B 9/04 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
A61F13/49 220
A61F13/15 141
A61F13/15 142
A61F13/476
A41B9/12 E
A41B9/04 C
A41B9/04 F
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065133
(22)【出願日】2021-04-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 特許法第30条第2項適用、刊行物等(令和3年4月22日付けで提出された新規性の喪失の例外証明書提出書で提出された全114件について特許法第30条第2項の適用を認める。)
(71)【出願人】
【識別番号】520506888
【氏名又は名称】金井 健
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】金井 健
【テーマコード(参考)】
3B128
3B200
【Fターム(参考)】
3B128EA02
3B128EB16
3B128EB17
3B128EC04
3B128EC10
3B128EC12
3B128KA01
3B128KA02
3B200AA03
3B200BA01
3B200BA05
3B200BA12
3B200BB24
3B200CA08
3B200CA11
3B200CB03
3B200CB07
3B200DB02
3B200DB12
(57)【要約】
【課題】経血等の体液の漏れを極力抑え、衛生的且つ利便性を向上させた吸収ショーツを提供する。
【解決手段】着用者の腹部及び腿部に当接する吸収ショーツ本体1と、吸収ショーツ本体1に連結され、着用者の体液を吸収する吸収部2と、を備え、吸収ショーツ本体1は、前身頃11と、後身頃12と、を有し、吸収部2は、前身頃11及び後身頃12に連結され、着用者の内腿及び股下に当接する、吸収部本体Aを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹部及び腿部に当接する吸収ショーツ本体と、前記吸収ショーツ本体に連結され、前記着用者の体液を吸収する吸収部と、を備え、
前記吸収ショーツ本体は、前身頃と、後身頃と、を有し、
前記吸収部は、前記前身頃及び前記後身頃に連結され、前記着用者の内腿及び股下に当接する、吸収部本体を有する、吸収ショーツ。
【請求項2】
前記前身頃は、前記着用者の下腹部に当接する下腹部当接部と、前記下腹部当接部から延設され、前記着用者の前腿に当接する前腿当接部と、を含み、
前記後身頃は、前記着用者の臀部に当接する臀部当接部と、前記臀部当接部から延設され、前記着用者の腿裏に当接する腿裏当接部と、を含み、
前記吸収部本体は、前記前腿当接部及び前記腿裏当接部の下端部に連結されている、請求項1に記載の吸収ショーツ。
【請求項3】
前記吸収部本体は、最上層の肌接地層と、最下層の露出層と、前記肌接地層と前記露出層との間に設けられた吸収層と、を含むことにより、多層構造となされ、
前記肌接地層は、吸収速乾性を有するメッシュ生地により構成される吸収速乾部を含む、請求項1又は2に記載の吸収ショーツ。
【請求項4】
前記肌接地層は、前記吸収速乾部の周縁に連結され、防水性を有する素材により構成される防水部を含む、請求項3に記載の吸収ショーツ。
【請求項5】
前記吸収層は、多層構造となされている、請求項3又は4に記載の吸収ショーツ。
【請求項6】
前記吸収層は、消臭性を有する素材により構成される消臭層と、保水性を有する素材により構成される保水層と、抗菌防臭性を有する素材により構成される抗菌防臭層と、防水性を有する素材により構成される防水層と、を含む、請求項5に記載の吸収ショーツ。
【請求項7】
前記防水層は、前記吸収層の最下層に配置され、
前記防水層の側部は、前記吸収層における他の層の側方を覆い、前記吸収層における最上層の側辺に連結されている、請求項6に記載の吸収ショーツ。
【請求項8】
前記吸収部本体には、前記肌接地層を覆う吸収パッドが着脱自在に取付け可能な、吸収パッド取付け部が設けられている、請求項3~7の何れかに記載の吸収ショーツ。
【請求項9】
前記吸収部は、前記吸収部本体に連結され、前記後身頃の内面に積層される補助吸収部を有する、請求項1~8の何れかに記載の吸収ショーツ。
【請求項10】
前記補助吸収部は、前記吸収部本体における前記後身頃との連結部分を覆って設けられる、請求項9に記載の吸収ショーツ。
【請求項11】
前記補助吸収部は、その後端部が前記後身頃と連結され、その側辺が部分的に前記後身頃と分離して構成されている、請求項9又は10に記載の吸収ショーツ。
【請求項12】
前記吸収ショーツ本体は、前記前身頃及び前記後身頃の間に設けられ、前記前身頃及び前記後身頃それぞれに連結されるマチ形成部を有する、請求項1~11の何れかに記載の吸収ショーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、女性が生理時に着用しておく吸収ショーツに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、女性の身体から排出される経血等の体液を吸収するための生理用品として、ナプキンやタンポンが、広く用いられてきた。
【0003】
しかし、これらの生理用品は、経血量が多く、また、長時間交換が出来ない場合等、人によっては頻繁に交換が必要となるため、替えの生理用品を常に持ち歩く必要があり、荷物が増える、交換の手間がかかる、といった問題があった。
この他、使用済みの生理用品の廃棄による、環境への悪影響も懸念されていた。
【0004】
また、ナプキンは、発汗時や激しい運動を行った際等に、ずれが生じ、適切な当接状態を維持できない、という問題があった。
さらに、タンポンは、未成熟の女性には使用が困難であり、使用に抵抗を感じる女性も多く、特に日本での使用率は2割程度と言われている。
【0005】
このような問題点を解決するために、近年、複数のメーカーにより、吸収ショーツが開発されている。
【0006】
吸収ショーツは、女性が通常着用するショーツ自体に、吸収性能を持たせたものであり、ナプキンを着用する必要がないため、着用時、交換時の負担が軽減されるばかりか、洗うことで繰り返し使用できるため、経済的かつ環境にも優しいものである。
【0007】
このような吸収ショーツに関する発明として、特許文献1には、手洗いのしやすい吸収ショーツが記載されている。
この吸収ショーツに設けられた吸収部材は、股下部に当たる部分において左右に一対の羽部を有し、この吸収部材は、前端部、後端部、及び羽部において前記ショーツ本体に縫い付けられている。
このように、吸収部材が、その外周のみで縫合されていることで、洗濯時に、吸収部材を引っ張り出してもみ洗いしやすい構成となされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の吸収ショーツは、吸収部材が身体の前後方向にかけて延びており、股下部、特に内腿が当接する部分には、羽部が部分的に存在するのみである。
【0010】
このような場合、前後方向よりも先に、左右方向に体液が到達する上、水分は上に向かうよりも下に向かう性質がある為、吸収層全体の吸収機能を果たす前に、横漏れが生じやすくなる。
また、このような場合、吸収部材の左右方向へのズレが生じやすく、このズレに伴う横漏れも生じてしまう。
【0011】
本発明は上記のような実状に鑑みてなされたものであり、経血等の体液の漏れを極力抑え、衛生的且つ利便性を向上させた吸収ショーツを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、着用者の腹部及び腿部に当接する吸収ショーツ本体と、前記吸収ショーツ本体に連結され、前記着用者の体液を吸収する吸収部と、を備え、
前記吸収ショーツ本体は、前身頃と、後身頃と、を有し、
前記吸収部は、前記前身頃及び前記後身頃に連結され、前記着用者の内腿及び股下に当接する、吸収部本体を有する。
【0013】
本発明によれば、吸収部本体が着用者の内腿及び股下に当接している、即ち、吸収部本体が、身体の左右方向にかけて延びていることで、左右方向に広がった体液を確実に吸収し、内腿が当接する部分から漏れ出てくる事態を抑制することが可能となる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記前身頃は、前記着用者の下腹部に当接する下腹部当接部と、前記下腹部当接部から延設され、前記着用者の前腿に当接する前腿当接部と、を含み、前記後身頃は、前記着用者の臀部に当接する臀部当接部と、前記臀部当接部から延設され、前記着用者の腿裏に当接する腿裏当接部と、を含み、前記吸収部本体は、前記前腿当接部及び前記腿裏当接部の下端部に連結されている。
【0015】
このような構成とすることで、吸収部本体の身体への当接面積が増加し、より多くの体液を吸収することができ、体液の漏れをさらに効果的に抑制することが可能となる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記吸収部本体は、最上層の肌接地層と、最下層の露出層と、前記肌接地層と前記露出層との間に設けられた吸収層と、を含むことにより、多層構造となされ、前記肌接地層は、吸収速乾性を有するメッシュ生地により構成される吸収速乾部を含む。
【0017】
このような構成とすることで、吸収部本体の吸収能力が向上する上、肌接地層がメッシュ生地により構成される吸収速乾部を含むことで、股下に接地する部分が凹凸面となり、長時間サラサラとした着け心地を維持することが可能となる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記肌接地層は、前記吸収速乾部の周縁に連結され、防水性を有する素材により構成される防水部を含む。
【0019】
このような構成とすることで、肌接地層において広がった体液の、吸収ショーツ本体への染み出しを抑制することが可能となる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記吸収層は、多層構造となされている。
【0021】
このような構成とすることで、吸収層に浸透した体液が、吸収層が含む各層により確実に吸収され、体液の漏れをさらに効果的に抑制することが可能となる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記吸収層は、消臭性を有する素材により構成される消臭層と、保水性を有する素材により構成される保水層と、抗菌防臭性を有する素材により構成される抗菌防臭層と、防水性を有する素材により構成される防水層と、を含む。
【0023】
このような構成とすることで、吸収層に浸透した体液が、各層の特性により処理され、着用者やその周囲にいる人への、漏れや臭いによる不快感を軽減することが可能となる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記防水層は、前記吸収層の最下層に配置され、
前記防水層の側部は、前記吸収層における他の層の側方を覆い、前記吸収層における最上層の側辺に連結されている。
【0025】
このような構成とすることで、防水層の側部により、吸収層の側方に防水壁が形成されることとなり、吸収層からの体液の染み出しを抑制することが可能となる。
【0026】
本発明の好ましい形態では、前記吸収部本体には、前記肌接地層を覆う吸収パッドが着脱自在に取付け可能な、吸収パッド取付け部が設けられている。
【0027】
このような構成とすることで、吸収部本体の吸収能力を、吸収パッドにより適宜向上させることができ、本吸収ショーツの衛生面を良好に維持し、且つ利便性を向上させることが可能となる。
【0028】
本発明の好ましい形態では、前記吸収部は、前記吸収部本体に連結され、前記後身頃の内面に積層される補助吸収部を有する。
【0029】
このような構成とすることで、着用者が座位の状態等に、体液が臀部に流入した場合であっても、補助吸収部により、この体液を吸収することができ、体液の漏れをさらに効果的に抑制することが可能となる。
【0030】
本発明の好ましい形態では、前記補助吸収部は、前記吸収部本体における前記後身頃との連結部分を覆って設けられる。
【0031】
このような構成とすることで、吸収部本体と後身頃とを縫合した際に形成される針穴からの体液の漏れを防止することが可能となる。
【0032】
本発明の好ましい形態では前記補助吸収部は、その後端部が前記後身頃と連結され、その側辺が部分的に前記後身頃と分離して構成されている。
【0033】
このような構成とすることで、吸収ショーツ本体の伸縮性を阻害せず、良好な着け心地を維持できる上、側辺を縫合した際に形成される針穴が形成されないため、さらに効果的に体液の漏れを防止することが可能となる。
【0034】
本発明の好ましい形態では、前記吸収ショーツ本体は、前記前身頃及び前記後身頃の間に設けられ、前記前身頃及び前記後身頃それぞれに連結されるマチ形成部を有する。
【0035】
このような構成とすることで、吸収ショーツ本体が立体的な仕上がりとなり、本吸収ショーツが、身体に良くフィットし、動きやすく、また、腿部の不要な巻き上がりを抑制できるものとなる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、経血等の体液の漏れを極力抑え、衛生的且つ利便性を向上させた吸収ショーツを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の実施形態に係る吸収ショーツを示す図であって、(a)前方から見た概略斜視図、(b)後方からみた概略斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る吸収ショーツを裏返した状態での、後方から見た概略斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る吸収ショーツを裏返した状態での底面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る吸収ショーツにおける吸収部本体を示す図であって、(a)分解斜視図、(b)吸収層のPP線断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る吸収ショーツにおける吸収部及びこれに連結された後身頃を示す平面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る吸収ショーツにおける吸収ショーツ本体の分解平面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る吸収ショーツにおける吸収部の分解平面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る吸収ショーツの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る吸収ショーツについて説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、これらの図において、符号Xは、本実施形態に係る吸収ショーツを示す。
【0039】
ここで、各図において、吸収ショーツ本体が有する構成要素同士、吸収部が有する構成要素同士、それぞれの連結部分(縫合辺)を、縫合糸を模した細い一点鎖線で示し、吸収ショーツ本体が有する構成要素と吸収部が有する構成要素との連結部分(縫合辺)を、縫合糸を模した太い一点鎖線で示す。
なお、
図4以降で示す、上記した各構成要素が分解されている状態においては、分解されている各構成要素の外形線を実線で示している。
【0040】
また、上記した各構成要素を縫合する縫合糸としては、伸縮性に優れ、肌触りの優しいウーリー糸を用いることが好ましく、ウーリー糸に他の縫合糸を混ぜることで、強度を向上させても良い。
また、上記した各構成要素は、肌に当たる負担を極力抑制するために、平縫いにより縫合されることが好ましい。
また、後述する2Wayストレッチ素材は、合成繊維により形成された40デニール程度の糸により縫製されることが好ましい。
【0041】
図1及び
図2に示すように、吸収ショーツXは、着用者(図示せず)の腹部及び腿部に当接する吸収ショーツ本体1と、吸収ショーツ本体1に縫合され、着用者の体液を吸収する吸収部2と、を備えている。
【0042】
吸収ショーツ本体1は、前身頃11と、一対の後身頃12と、一対のマチ形成部13と、前身頃11、一対の後身頃12及び一対のマチ形成部13の上端から延設され、着用者の上腹部に当接する略円筒状の上腹部当接部14と、を有している。
【0043】
前身頃11は、着用者の下腹部に当接する下腹部当接部11aと、下腹部当接部11aから延設され、着用者の前腿に当接する前腿当接部11bと、を含む。
また、前身頃11は、縦横に伸縮性を有する所謂2Wayストレッチ素材を用いた布材を、二枚積層することで形成されている(
図6参照)。
なお、
図1では、便宜上、前身頃11における下腹部当接部11aと前腿当接部11bとの境界線を、細線で示しているが、これらは縫合により連結されているわけではなく、上記した布材により、一体形成されている(
図6参照)。
【0044】
一対の後身頃12は、それぞれが、着用者の臀部に当接する臀部当接部12aと、臀部当接部12aから延設され、着用者の腿裏に当接する腿裏当接部12bと、を含む。
また、各後身頃12は、それぞれが着用者の臀裂に相当する位置で縫合されている。
さらに、各後身頃12は、縦横に伸縮性を有する所謂2Wayストレッチ素材を用いた布材を外面側、防水性を有する素材により形成される防水布を内面側とし、これら二枚を積層することで形成されている(
図6参照)。
なお、
図1では、便宜上、各後身頃12における臀部当接部12aと腿裏当接部12bとの境界線を、細線で示しているが、これらは縫合により連結されているわけではなく、上記した布材により、一体形成されている(
図6参照)。
【0045】
一対のマチ形成部13は、それぞれが、前身頃11及び後身頃12の間に設けられ、前身頃11及び後身頃12それぞれに縫合されている。これにより各マチ形成部13は、それぞれ、着用者の左外腿及び右外腿に当接する。
また、各マチ形成部13は、縦横に伸縮性を有する所謂2Wayストレッチ素材を用いた、一枚の布材により形成されている(
図6参照)。
【0046】
ここで、前腿当接部11b、各腿裏当接部12b及び各マチ形成部13は、その下端部が内面側に折り返され、ロック縫いが施されることで、端部処理がなされている。
また、各腿裏当接部12bの折り返された下端部は、後述する補助吸収部Bの側辺の一部が挟持された状態で、ロック縫いが施される。
なお、
図1~
図3において、外面から見た、ロック縫いが施されている部分を、細い点線で示し、内面から見た、ロック縫いが施されている部分を、太い点線で示している。
【0047】
上腹部当接部14は、全体がリブ編みにより形成されており、その径方向及び上下方向に伸縮性を有している。
このように、全体がリブ編みにより形成されていることで、例えば、上腹部当接部14に、単にゴム紐を通した場合、ゴム紐の部分のみが着用者の上腹部に食い込む事態を防止でき、快適な着け心地を実現することができる。
なお、
図1及び
図2において、外面から見た、上腹部当接部14における両端部同士の縫合部分を、細い点線で示し、内面から見たこの縫合部分を、太い点線で示している。
【0048】
吸収部2は、前身頃11及び後身頃12に縫合され、着用者の内腿及び股下に当接する、吸収部本体Aと、吸収部本体Aに縫合され、後身頃12の内面に積層される補助吸収部Bと、を有する。
なお、吸収部本体Aは、前腿当接部11b、腿裏当接部12b及びマチ形成部13と同様に、その左右側部が内面側に折り返され、ロック縫いが施されることで、端部処理がなされている。
【0049】
以下、
図3~
図5を用いて、吸収部2の構成について詳述する。
なお、
図4(a)に示す吸収部本体Aは、ロック縫いによる端部処理がなされる前の状態で示している。
また、
図5に示す吸収部本体A及び後身頃12も、ロック縫いによる端部処理がなされる前の状態で示している。
【0050】
図3(或いは
図2)に示すように、吸収部本体Aは、前腿当接部11b及び腿裏当接部12bの下端部に縫合されている。
【0051】
図4に示すように、吸収部本体Aは、最上層の肌接地層A1と、最下層の露出層A2と、肌接地層A1と露出層A2との間に設けられた吸収層Sと、を含むことにより、多層構造となされている。
なお、
図2及び
図3は、吸収ショーツXを裏返した状態の図のため、肌接地層A1が外部に露出している状態となされている。
【0052】
肌接地層A1は、吸収速乾性を有するメッシュ生地により構成される吸収速乾部A11と、吸収速乾部A11の周縁に縫合され、防水性を有する素材により構成される防水部A12と、を含む。
【0053】
防水部A12は、4枚設けられ、それぞれが、吸収速乾部A11の左右辺、前後辺に縫合されることで、吸収速乾部A11の全周を囲って構成されている。
【0054】
吸収速乾部A11と吸収速乾部A11の前後辺に縫合された各防水部A12との縫合辺上に、肌接地層A1を覆う吸収パッドPが着脱自在に取付け可能な、一対の吸収パッド取付け部kが設けられている
【0055】
一対の吸収パッド取付け部kは、左右方向に延びるように配置された、伸縮性且つ防水性を有する細長い帯状体であり、それぞれの両端が肌接地層A1に縫合されている。
これにより、吸収パッドPを、点線矢印で示すように、一対の吸収パッド取付け部kと肌接地層A1との間を挿通させることで、吸収パッドPは、一対の吸収パッド取付け部kと肌接地層A1との間に挟持される態様で、吸収部本体Aに取付けられる。
【0056】
吸収パッドPは、ナプキンのように前後方向に延びる略小判状を呈しており、上面(肌接地面)の略全面がメッシュ生地で構成され、このメッシュ生地部分を囲むように防水生地が設けられた構成となされている。
このように構成することで、吸収パッドPの型崩れが防止される。
【0057】
また、吸収パッドPの上面には、吸収パッドPを吸収部本体Aに取付けた際、一方の吸収パッド取付け部kに引っ掛かる、突起jが設けられている。
【0058】
突起jは、左右方向に間隔をおいて一対設けられ、それぞれの両端が、吸収パッドPの側面に縫合されることで、それぞれが、略リング状を呈している。
このように構成することで、着用者がトイレで吸収ショーツXを脱いだ際等に、吸収パッドPが吸収部本体Aから脱離してしまう事態を防止することができる。
【0059】
露出層A2は、肌接地層A1と略同外形状となされた布材を、二枚積層することで形成されている。
下方の露出層A21は、縦横に伸縮性を有する所謂2Wayストレッチ素材を用いた布材により形成されている。
上方の露出層A22は、防水性を有する素材を用いた布材により形成されている。
【0060】
吸収層Sは、上面視で前後方向に長い略長方形状に構成され、吸収部本体Aにおける左右方向略中央に配置されている。
このように、吸収層Sを、肌接地層A1や露出層A2と同一形状とせず、略中央の限定された領域に配置される程度の大きさとすることで、着用時の動きやすさを阻害せず、また、使用する布を節約しつつ、必要十分な吸収能力を確保することができる。
なお、吸収層Sの吸収能力を、より高めたい場合には、吸収層Sを、肌接地層A1や露出層A2と略同一の形状とする等、その面積を左右方向に広げても良い。
【0061】
また、吸収層Sは、多層構造となされている。
詳述すれば、吸収層Sは、
図4(b)に示すように、消臭性を有する素材により構成される消臭層S1と、保水性を有する素材により構成される保水層S2と、抗菌防臭性を有する素材により構成される抗菌防臭層S3と、防水性を有する素材により構成される防水層S4と、を含む。
なお、防水層S4は、その露出側(露出層A2に当接する側)の面が防水性を有する素材により構成され、肌側の面は吸収性を有する素材により構成される、積層構造となされている。
【0062】
上記した各層は、上層から、消臭層S1、保水層S2、抗菌防臭層S3、防水層S4の順で積層されている。
なお、消臭層S1、保水層S2や防水層S4には、例えば、ポリエステルやナイロン等の種々の化学繊維が好適に用いられる。
また、抗菌防臭層S3、例えば、銀繊維が好適に用いられる。
【0063】
防水層S4は、上記したように、吸収層Sの最下層に配置されており、また、他の層S1~S3と比較して、左右方向に長い布材が用いられている。
これにより、防水層S4の左右側部は、
図4(b)に示すように、他の層S1~S3の側方を覆い、左右側部の各端辺は、一度折り返されたされた後、最上層である消臭層S1の側辺に縫合されている。
また、他の層S1~S3は、ぞれぞれの左右側辺で縫合されている。
なお、吸収層Sの各層S1~S4における縫合糸の図示は省略する。
【0064】
図5に示すように、補助吸収部Bは、吸収部本体Aにおける後身頃12との連結部分(縫合辺m1)を覆って設けられている。
詳述すれば、補助吸収部Bは、その前端辺が、肌接地層A1における後方の防水部A12の後端辺ではなく、吸収速乾部A11の後端辺に縫合されている。
【0065】
また、補助吸収部Bは、その後端辺が後身頃12の後端辺に縫合され、その左右一対の側辺が部分的に後身頃12と分離して構成されている。
即ち、補助吸収部Bの内、前方に向かうに連れてその間隔が広がっていく一対の側辺m2は、後身頃12に縫合されていない。
なお、補助吸収部Bの内、前方に向かうに連れてその間隔が狭まっていく一対の側辺m3は、吸収部本体A及び後身頃12の端部処理がなされる折り返し部分で挟持され、ロック縫いにより縫合される部分である。
【0066】
上記のように、補助吸収部Bは、前端辺が吸収速乾部A11に、後端辺が後身頃12に、それぞれ縫合されているため、後端辺の縫合を解くことで、
図5(b)に示すように、前端辺を軸として、前方に捲り上げることができる。
【0067】
また、補助吸収部Bは、上層B1、中層B2及び下層B3により構成された、多層構造となされている(
図7参照)。
上層B1は、上層B1の略全面を構成し、消臭性を有する素材により構成される消臭部B11と、消臭部B11の周縁に縫合され、防水性を有する素材により構成される5つの防水部B12と、により構成されている。
中層B2及び下層B3は、防水性を有する素材により構成されている。
【0068】
なお、吸収部本体Aを構成する各層同士及び補助吸収部Bを構成する各層同士の縫合に用いられる縫合糸の図示は省略するが、例えば、バイアステープを用いて周縁の端部処理がなされることが好ましい。
また、吸収層Sは、その前後端辺が、肌接地層A1及び露出層A2それぞれに縫合されることで、肌接地層A1と露出層A2との間で位置決めされる。
【0069】
以下、
図6~
図8を用いて、吸収ショーツXの縫製過程について説明する。
なお、
図6及び
図7において、2枚の布材を積層して構成されている構成要素については、外形線を太線で示している。
【0070】
また、
図6~
図8に示す、前身頃11、各後身頃12、各マチ形成部13及び吸収部本体Aは、ロック縫いによる端部処理を施す前の状態で示している。
また、下記に説明する縫製過程は一例であり、その順番は前後しても良い。
なお、吸収部本体Aの分解図については、
図4(a)を参照されたい。
【0071】
まず、
図6に示すように、縫製者は、二枚の布材を積層及び縫合することで形成された前身頃11の左右側辺それぞれに、マチ形成部13を縫合する(矢印a)。
次に、縫製者は、各マチ形成部13の側辺それぞれに、後身頃12を縫合する(矢印b)。
次に、縫製者は、各後身頃12を縫合する(矢印c)。
次に、縫製者は、前身頃11、各後身頃12及び各マチ形成部13の上端部と、上腹部当接部14の下端部と、を縫合する(矢印d)。
【0072】
これにより、着用者の腹部全周に当接し、また腿部に部分的に当接する、吸収ショーツ本体1が縫製される。
なお、吸収ショーツ本体1は、マチ形成部13により前後方向に広がり、立体的となるが、この他に、上記各構成要素の外形状が曲線的に裁断されていることから、これらを縫合することで、吸収ショーツ本体1がより立体的となり、着用者の臀部及び下腹部を包み込む形状となされる。
【0073】
次に、
図7に示すように、縫製者は、消臭部B11の周縁に各防水部B12を縫合する(また、隣接する各防水部B12同士を縫合する)ことで、補助吸収部Bの上層B1を形成する(矢印e)。
次に、縫製者は、上層B1に、中層B2及び下層B3を積層し、これらの周縁を縫合することで、補助吸収部Bを形成する(矢印f)。
次に、縫製者は、肌接地層A1、露出層A2及び吸収層Sを積層及び縫合することで、吸収部本体Aを形成する。
次に、縫製者は、補助吸収部Bの前端部と吸収速乾部A11の上端とを縫合する(矢印g)。
【0074】
これにより、着用者の内腿及び股下に当接する、吸収部2が縫製される。
【0075】
次に、
図8に示すように、縫製者は、補助吸収部Bを後身頃12の内面に積層させ、補助吸収部Bの後端部を後身頃12の上端辺(
図5における後端辺)に縫合する。
最後に、縫製者は、正面視で逆U字状となされた吸収部本体Aの左右下端部(
図5における左右側部)及び前身頃11、各後身頃12及び各マチ形成部13の下端部を内面側に折り返してロック縫いを施した後、吸収部本体Aの前端辺及び後端辺それぞれを、前身頃11及び各後身頃12の股下辺m4、m5に縫合する。
なお、これらの工程は、まとめて矢印hとして示す。
また、このとき、上記したように、補助吸収部Bの一対の側辺m3は、折り返された吸収部本体Aの左右下端部及び各後身頃12の下端部に挟持されることで、吸収部本体Aと共に、吸収ショーツ本体1に縫合される。
【0076】
これにより、
図1に示すような、着用者の腹部及び腿部を囲って当接し、且つ股下全面に当接する、吸収ショーツXが縫製される。
【0077】
本発明は、上記実施形態により、以下のような効果を奏する。
【0078】
即ち、本実施形態によれば、吸収部2が、着用者の内腿及び股下に当接する、吸収部本体Aを有することで、左右方向に広がった体液を確実に吸収し、内腿が当接する部分から漏れ出てくる事態を抑制することが可能となる。
【0079】
また、吸収部本体Aが前腿当接部11b及び腿裏当接部12bの下端部に連結されていることで、吸収部本体Aの身体への当接面積が増加し、より多くの体液を吸収することができ、体液の漏れをさらに効果的に抑制することが可能となる。
【0080】
また、吸収部本体Aが多層構造となされ、最上層の肌接地層A1が、吸収速乾性を有するメッシュ生地により構成される吸収速乾部A11を含むことで、吸収部本体Aの吸収能力が向上する上、股下に接地する部分が凹凸面となり、長時間サラサラとした着け心地を維持することが可能となる。
【0081】
また、肌接地層A1が防水部A12を含むことで、肌接地層A1において広がった体液の、吸収ショーツ本体1への染み出しを抑制することが可能となる。
【0082】
また、吸収層Sが多層構造となされていることで、吸収層Sに浸透した体液が、吸収層Sが含む各層により確実に吸収され、体液の漏れをさらに効果的に抑制することが可能となる。
【0083】
また、吸収層Sが、消臭層S1と、保水層S2と、抗菌防臭層S3と、防水層S4と、を含むことで、吸収層Sに浸透した体液が、各層の特性により処理され、着用者やその周囲にいる人への不快感を軽減することが可能となる。
【0084】
また、防水層S4が、吸収層Sの最下層に配置され、防水層S4の側部が、吸収層Sにおける他の層S1~S3の側方を覆い、最上層の消臭層S1の側辺に縫合されていることで、防水層S4の側部により、吸収層Sの側方に防水壁が形成されることとなり、吸収層Sからの体液の染み出しを抑制することが可能となる。
【0085】
また、吸収部2が補助吸収部Bを有することで、着用者が座位の状態等に、体液が臀部に流入した場合であっても、補助吸収部Bにより、この体液を吸収することができ、体液の漏れをさらに効果的に抑制することが可能となる。
【0086】
また、補助吸収部Bが、吸収部本体Aにおける後身頃12との連結部分(縫合辺m1)を覆って設けられることで、吸収部本体Aと後身頃12とを縫合した際に形成される針穴からの体液の漏れを防止することが可能となる。
【0087】
また、補助吸収部Bの後端辺が後身頃12と縫合され、側辺が部分的に後身頃12と分離して構成されていることで、吸収ショーツ本体1の伸縮性を阻害せず、良好な着け心地を維持できる上、側辺を縫合した際に形成される針穴が形成されないため、さらに効果的に体液の漏れを防止することが可能となる。
【0088】
また、吸収部本体Aに吸収パッド取付け部kが設けられていることで、吸収部本体Aの吸収能力を、吸収パッドPにより適宜向上させることができ、吸収ショーツXの衛生面を良好に維持し、且つ利便性を向上させることが可能となる。
【0089】
また、吸収ショーツ本体1がマチ形成部13を有することで、吸収ショーツ本体1が立体的な仕上がりとなり、吸収ショーツXが、身体に良くフィットし、動きやすく、また、腿部の不要な巻き上がりを抑制できるものとなる。
【0090】
このように、上記のように縫製された吸収ショーツXは、上記した一連の構成により、他の吸収ショーツと比較して、その吸収能力、体液の外部への漏れ出しを抑制する能力が極めて高いものである。
【0091】
このため、例えば、漏れの生じやすい運動中、移動中や就寝中等、生理用品を交換することが困難な状況であっても、着用者は、吸収ショーツXの着用により、漏れや交換の必要性に伴う不安を感じることがなく、極めて有用性の高いものである。
【0092】
なお、上述の実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0093】
X 吸収ショーツ
1 吸収ショーツ本体
11 前身頃
12 後身頃
13 マチ形成部
14 上腹部当接部
2 吸収部
A 吸収部本体
A1 肌接地層
A2 露出層
S 吸収層
S1 消臭層
S2 保水層
S3 抗菌防臭層
S4 防水層
B 補助吸収部
B1 上層
B2 中層
B3 下層
P 吸収パッド
【手続補正書】
【提出日】2021-09-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹部及び腿部に当接する吸収ショーツ本体と、前記吸収ショーツ本体に連結され、前記着用者の体液を吸収する吸収部と、を備え、
前記吸収ショーツ本体は、前身頃と、後身頃と、を有し、
前記吸収部は、前記前身頃及び前記後身頃に連結され、前記着用者の内腿及び股下に当接する、吸収部本体と、前記吸収部本体に連結され、前記後身頃の内面に積層される補助吸収部と、を有し、
前記補助吸収部は、前記吸収部本体における前記後身頃との連結部分を覆って設けられる、吸収ショーツ
【請求項2】
前記前身頃は、前記着用者の下腹部に当接する下腹部当接部と、前記下腹部当接部から延設され、前記着用者の前腿に当接する前腿当接部と、を含み、
前記後身頃は、前記着用者の臀部に当接する臀部当接部と、前記臀部当接部から延設され、前記着用者の腿裏に当接する腿裏当接部と、を含み、
前記吸収部本体は、前記前腿当接部及び前記腿裏当接部の下端部に連結されている、請求項1に記載の吸収ショーツ。
【請求項3】
前記吸収部本体は、最上層の肌接地層と、最下層の露出層と、前記肌接地層と前記露出層との間に設けられた吸収層と、を含むことにより、多層構造となされ、
前記肌接地層は、吸収速乾性を有するメッシュ生地により構成される吸収速乾部を含む、請求項1又は2に記載の吸収ショーツ。
【請求項4】
前記肌接地層は、前記吸収速乾部の周縁に連結され、防水性を有する素材により構成される防水部を含む、請求項3に記載の吸収ショーツ。
【請求項5】
前記吸収層は、多層構造となされている、請求項3又は4に記載の吸収ショーツ。
【請求項6】
前記吸収層は、消臭性を有する素材により構成される消臭層と、保水性を有する素材により構成される保水層と、抗菌防臭性を有する素材により構成される抗菌防臭層と、防水性を有する素材により構成される防水層と、を含む、請求項5に記載の吸収ショーツ。
【請求項7】
前記防水層は、前記吸収層の最下層に配置され、
前記防水層の側部は、前記吸収層における他の層の側方を覆い、前記吸収層における最上層の側辺に連結されている、請求項6に記載の吸収ショーツ。
【請求項8】
前記吸収部本体には、前記肌接地層を覆う吸収パッドが着脱自在に取付け可能な、吸収パッド取付け部が設けられている、請求項3~7の何れかに記載の吸収ショーツ。
【請求項9】
前記補助吸収部は、その後端部が前記後身頃と連結され、その側辺が部分的に前記後身頃と分離して構成されている、請求項1に記載の吸収ショーツ。
【請求項10】
前記吸収ショーツ本体は、前記前身頃及び前記後身頃の間に設けられ、前記前身頃及び前記後身頃それぞれに連結されるマチ形成部を有する、請求項1~9の何れかに記載の吸収ショーツ。