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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160762
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】連結椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 1/121 20060101AFI20221013BHJP
   A47C 3/18 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
A47C1/121
A47C3/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065160
(22)【出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】510274430
【氏名又は名称】コトブキシーティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】松田宗一
【テーマコード(参考)】
3B091
3B099
【Fターム(参考)】
3B091EA01
3B091EC02
3B099FA10
(57)【要約】
【課題】正面位置/回動位置への変更が容易な連結椅子を提供する。
【解決手段】基台に水平方向に回動可能に支持される複数の椅子と、前記複数の椅子の回動軸が連結されるリンク体と、前記複数の椅子の少なくとも1つに設けられる角度変更装置とを備え、前記角度変更装置は、前記椅子の正面位置と傾斜位置とを規定する位置決め孔が形成されたストッパピン受けと、前記ストッパピン受けの下方に配置され、前記基台に設けられる回動位置拘束ユニットとを有し、前記回動位置拘束ユニットは、前記位置決め孔に出没可能に設けられ、上向きに付勢されたストッパピンを備える連結椅子を提供する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に水平方向に回動可能に支持される複数の椅子と、前記複数の椅子の回動軸が連結されるリンク体と、前記複数の椅子の少なくとも1つに設けられる角度変更装置と、
を備え、
前記角度変更装置は、前記椅子の正面位置と傾斜位置とを規定する位置決め孔が形成されたストッパピン受けと、前記ストッパピン受けの下方に配置され、前記基台に設けられる回動位置拘束ユニットとを有し、
前記回動位置拘束ユニットは、前記位置決め孔に出没可能に設けられ、上向きに付勢されたストッパピンを備える、
ことを特徴とする連結椅子。
【請求項2】
前記位置決め孔は、前記ストッパピン受けを備えられた前記椅子の回動軸を中心とした円周上に、複数個設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の連結椅子。
【請求項3】
前記ストッパピン受けは、前記椅子に着脱可能に設けられる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の連結椅子。
【請求項4】
前記回動位置拘束ユニットは、前記基台に着脱可能に設けられる、
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の連結椅子。
【請求項5】
前記リンク体は、前記椅子の座面を起立させたときの椅子の前後方向の範囲に入るように配置されている、
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の連結椅子。
【請求項6】
前記複数の椅子のうち、前記ストッパピン受け及び前記回動位置拘束ユニットを設けた椅子とは別の椅子に、前記ストッパピン受けの前記位置決め孔とは、規定される前記椅子の位置が異なる位置決め孔が形成された別のストッパピン受けと、回動位置拘束ユニットとが設けられている、
ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の連結椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、複数の椅子が連動して回動可能な連結椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
ホールを多目的に活用するために、複数の椅子を備えた観覧装置を設けることがある。椅子は水平方向に回動可能に支持され、取付け角度を変更可能であり、正面位置または所定角度回動した傾斜位置にて、回動を拘束される(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開H4-86445号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の椅子では、椅子を回動させるために、ストッパピンを外し、椅子を回動させ、ストッパピンを再び取り付けるという動作が必要であり、手間が掛かるという問題があった。
【0005】
本発明は、これに鑑みてなされたものであり、椅子の正面位置/傾斜位置への変更が容易な連結椅子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するため、本開示のある態様では、基台に回動可能に支持される複数の椅子と、前記複数の椅子の回動軸が連結されるリンク体と、前記複数の椅子の少なくとも1つに設けられる角度変更装置とを備え、前記角度変更装置は、前記椅子の正面位置と傾斜位置とを規定する位置決め孔が形成されたストッパピン受けと、前記ストッパピン受けの下方に配置され、前記基台に設けられる回動位置拘束ユニットとを有し、前記回動位置拘束ユニットは、前記位置決め孔に出没可能に設けられ、上向きに付勢されたストッパピンを備えるように連結椅子を構成した。
【0007】
この態様によれば、上向きに付勢されたストッパピンにより、通常ではストッパピンは上方位置に配置され、位置決め孔に係嵌して、椅子の回動を拘束している。ストッパピンは回動位置拘束ユニットに保持されており、ストッパピンを下方に移動させて位置決め孔から没入させ、係嵌を解除して椅子をまとめて回転させたのちに、ストッパピンへの下方移動の負荷を外すだけで、自然にストッパピンは上向きの付勢により、上方に突出して、位置決め孔に係嵌する。一人で回動作業ができ、椅子の正面位置/傾斜位置への変更が容易な構成となっている。
【0008】
また、ある態様では、前記位置決め孔は、前記ストッパピン受けを備えられた前記椅子の回動軸を中心とした円周上に、複数個設けられているように構成した。この態様によれば、複数の傾斜位置から固定位置を選択できる。
【0009】
また、ある態様では、前記ストッパピン受けは、前記椅子に着脱可能に設けられるように構成した。この態様によれば、着脱可能であるため、固定される角度の異なる位置決め孔が形成された別のストッパピン受けに付け替えることができ、椅子の傾斜角度を変更できる。
【0010】
また、ある態様では、前記回動位置拘束ユニットは、前記基台に着脱可能に設けられるように構成した。この態様によれば、回動位置拘束ユニットも、ストッパピン受けに合わせて取付け位置を変更できる。これにより、椅子の傾斜を逆側にするなど、より自由に椅子の傾斜角度の変更ができる。
【0011】
また、ある態様では、前記リンク体は、前記椅子の座面を起立させたときの椅子の前後方向の範囲に入るように配置されているよう構成した。この態様によれば、椅子を傾倒して格納する移動観覧席にも取り付けることができる。
【0012】
また、ある態様では、前記複数の椅子のうち、前記ストッパピン受け及び前記回動位置拘束ユニットを設けた椅子とは別の椅子に、前記ストッパピン受けの前記位置決め孔とは、規定される前記椅子の位置が異なる位置決め孔が形成された別のストッパピン受けと、回動位置拘束ユニットとが設けられているように構成した。この態様によれば、固定される椅子の角度の自由度が上がり、より広い範囲に椅子を回動させて固定することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、椅子の正面位置/傾斜位置への変更が容易な連結椅子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】連結椅子Uを備える観覧席Aが配置されたフロア平面図である。
図2】連結椅子Uの正面図である。
図3】連結椅子Uの側面図である。
図4】連結椅子Uの平面図であり、連結された複数の椅子Sの回動の説明図である。
図5】連結椅子の一つに設けられた角度変更装置の正面図である。移動側機構と固定側機構とを分離して示している。
図6】角度変更装置の背面図である。移動側機構と固定側機構とを分離して示している。
図7】角度変更装置の背面斜視図である。移動側機構と固定側機構とを分離して示している。
図8】回動位置拘束ユニットの動きを説明する説明図である。
図9】角度変更装置の動きを説明する説明図である。
図10】変形例である。
図11】変形例であり、図10の拡大図である。
図12】別の変形例である。
図13】さらに別の変形例である。
図14図13の斜視図である。
図15図13の分解側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、以下の実施例および変形例の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0016】
(観覧席)
まず、一例として、本開示の好適な形態である連結椅子Uを備える観覧席Aについて説明する。図1は、観覧席Aが用いられる建物のフロア平面図である。観覧席Aは、例えば大型の体育館やイベント用建造物等、多目的に使用される広域なフロアを有する建物で使用される。
【0017】
図1に示すように、建物のフロアには、競技場DとステージEとが設けられている。競技場Dは、例えばバレーボールやバスケットのコートである。ステージEは、競技場Dに隣接した直交位置に設置されている。競技場DとステージEの交互使用により、建物は多目的に活用される。
【0018】
観覧席Aは、雛壇型観覧席であり、最前段が最も低く、後段に向かって順に高さを増す階段状の床面に、多数の椅子Sが整列されて配置されている。観覧席Aには、前後方向の通路となる階段STEPが複数列設けられており、同段に並置される椅子Sは、階段STEPに区切られて、複数個ずつがひとまとめのユニットとして構成される連結椅子Uとなっている。
【0019】
観覧席Aの椅子Sはそれぞれ水平方向に回動可能に支持されており、椅子Sが回動して、正面位置から傾斜位置となることで、視覚方向が通常視覚Fから角度変更視覚Gに変更される。
【0020】
観覧席Aは、直前方向の競技場Dにおける催し物を、通常視覚Fにより、楽に観覧することができるうえ、ステージEで催し物があるときには、このステージE側が観覧席Aに対して角度変更視覚Gにあっても、競技場D側に対する視覚とほぼ同じ視覚配置の元で観覧することができる。
【0021】
(連結椅子U)
それぞれの連結椅子Uには、リンク体8が設けられている。リンク体8により複数の椅子Sが連動して動き、1つの椅子Sを回動させるだけで、連結椅子Uの全ての椅子Sが、それぞれの回動軸を中心として同角度だけ回動される。また、少なくとも一つの椅子Sに角度変更装置1が設けられている。角度変更装置1により椅子Sの回動角度変更が容易となっている。これを、図2図4を用いて説明する。
【0022】
図2は連結椅子Uの正面図である。一例として、連結椅子Uには4つの椅子Sが含まれるものとした。図3は、連結椅子Uの側面図である。図4は、連結椅子Uの平面図であり、椅子Sの回動を説明する説明図である。回動の状態を示すために、主要部のみ示した。図4(A)が正面位置を示し、図4(B)が30度回動した傾斜位置を示す。
【0023】
図2に示すように、連結椅子Uは、横並びの四つの椅子Sが連結された形態となっている。それぞれの椅子Sは、回動軸Ax1を中心として水平方向に回動可能に支持されており、四つ全ての椅子Sは連動して動く構成となっている。以下、連動して回動する移動側の機構を移動側機構MOVE、床面に固定されて動かない固定側の機構を固定側機構FIXと称して説明する。
【0024】
観覧席Aの横列の一つである床面FLに固定された土台2から、柱3が立設しており、柱3の上には、連結椅子Uの左右方向の幅を持つ基台管BASEが架設されている。
【0025】
基台管BASEは、その断面が矩形の金属製パイプ管であり、長手方向を床面FLの延伸方向に合わせて床面FLに平行に固定されている。この基台管BASEの上面に、1席毎間隔で、支軸5が立設されている。支軸5には椅子基体10が回動可能に保持されている。
【0026】
椅子基体10は、1つの椅子幅に切断された断面矩形の金属製パイプ管であり、この椅子基体10に、椅子の座を載せる低盤と肘支柱とが取り付けられる。椅子基体10の中央には鉛直方向に貫通孔(不図示)が設けられており、椅子基体10がこの貫通孔に通して支軸5に遊嵌されることで、椅子Sが支軸5を中心として、回動自在に保持される。支軸5の中心軸が椅子Sの回動軸Ax1となる。
【0027】
連結椅子Uには、複数の椅子Sの回動軸Ax1に連結されるリンク体8が設けられている(図4参照)。リンク体8は、各椅子基体10に背面側に突出して設けられた突出体30に、鉛直軸Ax2を中心として、水平方向に回動可能に連結されている。
【0028】
連結椅子Uの椅子Sの一つには、角度変更装置1が設けられている(図2参照)。本実施形態においては、角度変更装置1は、一番右側の椅子に設けられたが、これに限らず、任意の椅子Sに設けることができる。また、詳しくは後述するが、角度変更装置1は、着脱可能に備えられるため、いったん椅子Sに角度変更装置1を取り付けた後に、他の椅子Sに付け替えることも可能である。
【0029】
角度変更装置1は、椅子基体10に固定されるストッパピン受け20と、基台管BASEに固定される回動位置拘束ユニット50を備える。
【0030】
ストッパピン受け20には、複数の位置決め孔H1,H2,H3が設けられている。位置決め孔H1~H3は、備えられる椅子Sの回動軸Ax1を中心とした円周上に、鉛直方向に貫通して形成されている。以下、位置決め孔H1~H3の一つを特定せずにいずれかを指す場合には、単に位置決め孔Hと称する。
【0031】
回動位置拘束ユニット50には、上向きに付勢されたストッパピン52が出没可能に設けられている。ストッパピン52が上方向に突出して、位置決め孔Hに係嵌することで、椅子基体10の回動を拘束する。
【0032】
図4(A)に示すように、椅子Sが通常状態である正面位置にあるとき、ストッパピン52は上方に突出して、位置決め孔H3に係嵌し、椅子Sの回動を拘束している。
【0033】
図4(B)に示すように、椅子Sを傾斜位置とするには、ストッパピン52を下方へ移動させて位置決め孔H3から没入させて、係嵌を解除する。これにより、椅子Sの回動の拘束が解除されるため、椅子Sを傾斜位置の方向へ向けて回動軸Ax1で回動させる。このとき、四つの椅子Sは全てリンク体8で連結されているため、任意の一つの椅子Sを回動させるだけで、全ての椅子Sが、それぞれの回動軸Ax1を中心として、同角度だけ回動する。椅子Sを所定角度だけ回動させたのちは、ストッパピン52の没入を解除すると、ストッパピン52は上方に付勢されているため、今度は位置決め孔H1に突出して係嵌する。椅子Sは所定角度だけ回動した状態のまま、回動を拘束される。このようにして、椅子Sは正面位置/傾斜位置に、選択的に配置される。
【0034】
(角度変更装置1)
角度変更装置1について、図5図7を用いて詳しく説明する。角度変更装置1は連結椅子Uの回動を所定角度で拘束可能に構成されている。図5は角度変更装置1の正面図、図6は角度変更装置1の背面図、図7は角度変更装置1の背面斜視図である。図5図7においては、説明のために、支軸5を基準として、移動側機構MOVEと固定側機構FIXとを上下に離間して示した。
【0035】
まず移動側機構MOVEから説明する。
【0036】
移動側機構MOVEの椅子基体10は、前述の通り、椅子Sの機構が取り付けられる椅子Sのベースであり、椅子Sの視野方向は椅子基体10の回動位置(回動角度)で決定される。
【0037】
椅子基体10には、ストッパピン受け20および突出体30が固設されいる。
【0038】
突出体30は、主としてベース材31からなる。ベース材31は一枚の金属平板からなり、左右部が90度曲げ起こされて、底面31aの左右の側辺から側面31bが立設する形状となっている。
【0039】
側面31bには、椅子基体10の形状に合わせて、矩形の切り欠き31cが設けられている。底面31aには、挿通孔31dが形成されている。支軸5が挿通孔31d、椅子基体10に設けられた貫通孔(不図示)の順に挿通して、ナット9が掛けられることにより、椅子基体10は支軸5に遊嵌状態で回動可能に組付けされる。ベース材31は切り欠き31cで椅子基体10に係合して固定されて一体化しており、椅子基体10に回動した際には突出体30として、椅子基体10と共に回動する。
【0040】
ベース材31の底面31a後方寄りに、貫通孔31eが設けられており、リンク体8が、ボルト35およびナット36により、貫通孔31eの中心の鉛直軸Ax2を回動軸として、水平方向に回動可能に連結されている。他の椅子Sも同様にリンク体8に回動可能に連結されており、リンク体8によって、連結椅子Uの全ての椅子Sが連動して回動する。
【0041】
ストッパピン受け20はベース体21を有する。ベース体21は、金属平板が切断、屈曲されることで、底面21aから側面21bが立設し、かつ側面21bには椅子基体10の形状に合わせて切り欠き部21cが設けられた形状となっている。さらにベース体21の前面には、金属平板の当接部22が、その下部を底面21aよりも下方に突出して溶接されている。切り欠き部21cに椅子基体10が係合して、当接部22が椅子基体10にボルト23とナット24で締結される。これにより、ベース体21は椅子基体10に固定されて一体化し、椅子基体10に回動した際にはストッパピン受け20として、椅子基体10と共に回動する。
【0042】
ベース体21の底面21aには、前述の位置決め孔H1,H2,H3が設けられている。位置決め孔H3は、椅子Sの正面位置を規定する。位置決め孔H2,H1は、回動軸Ax1を中心とした位置決め孔H3を通過する円上に、H3から15度間隔で設けられている。位置決め孔H2,H1は、椅子Sの正面位置からそれぞれ15度、30度回動した傾斜位置を規定する。位置決め孔はこれに限らず、正面位置から所定の角度だけ回動した傾斜位置を規定する位置決め孔を、所望の数だけ設けることができる。
【0043】
前述のリンク体8は、突出体30およびストッパピン受け20とは上下方向に離間して保持されているため(図6参照。リンク体8上面と底面31a,21aの下面の間には、遊びとなる空間が設けられている)、突出体30およびストッパピン受け20と接触することなく滑らかに回動する。
【0044】
次に、固定側機構FIXについて説明する。
【0045】
固定側機構FIXの基台管BASEには、支軸5が立設している。支軸5には、無給油ワッシャ6が収嵌されている。移動側機構MOVEと固定側機構FIXの間、具体的には、突出体30の底面31aの下面と、基台管BASEの上面の間に無給油ワッシャ6が介装されることにより、移動側機構MOVEは滑らかに回動する。
【0046】
基台管BASEには、回動位置拘束ユニット50が固定されている。回動位置拘束ユニット50は、ストッパピン受け20の下方に配置されている。
【0047】
回動位置拘束ユニット50は、金属平板から成る筐体51を有する。筐体51の側面51fの一部が切り起こされて、当接面51aとして、当て板59と共に基台管BASEを前後方向から挟持して、ボルト57とナット58で締結されることで、筐体51は基台管BASEに固定される。
【0048】
筐体51には、上面51bの孔51cと底面51dの孔51eに挿通して、ストッパピン52が鉛直に配置されている。ストッパピン52は弾性部材55により上方向に付勢されている。
【0049】
ストッパピン52には、左右方向に貫通した係合孔52aが設けられている。係合孔52aに係合ピン54が挿通して左右方向に突出し、これが筐体51の左右の側面51fに形成された縦長孔51gに移動可能に係合している。
【0050】
筐体51の内部には、補助部材56が配置されている。補助部材56は、対向する二枚の側面56aが連結されたコの字状の形状となっている。対向する二枚の側面56aに貫通して、六角ボルトが水平軸53として溶接されており、水平軸53が筐体51の側面51fに貫通して、回動可能に支持される。これにより、補助部材56は筐体51内で上下方向に回動可能に支持される。水平軸53の一端は、ボルト頭である六角柱体の頭部53aであり、これが側面51fから突出した状態で、補助部材56は保持されている。このため、筐体51の外側から、頭部53aを回動させることで、筐体51内に配置された補助部材56を回動させることができる。
【0051】
補助部材56の側面56aには、横長孔56bが形成されており、前述の係合ピン54は、この横長孔56bにも挿通して係合している。二つの縦長孔51g,横長孔56bにより、補助部材56の回動は、係合ピン54を介して、ストッパピン52の上下方向の移動に変換される。
【0052】
(ストッパピン52の移動)
ストッパピン52の移動について、図8を用いて詳しく説明する。図8(A)は、ストッパピン52上状態、図8(B)はストッパピン52下状態を示す。
【0053】
図8(A)に示すように、ストッパピン52は、弾性部材55であるバネによって上向きの付勢がされている。ストッパピン52の移動範囲は縦長孔51gの範囲であり、何もしない通常状態では、縦長孔51gの上位置で係合ピン54により保持されている。このとき、ストッパピン52の先端は、筐体51の上面51bから突出して、ストッパピン受け20の位置決め孔Hに挿通して係嵌している。ストッパピン52の係嵌により、移動側機構MOVEの回動は拘束される。
【0054】
ここで、側面51fより突出する六角柱体の頭部53aを、例えばソケットレンチ等の回動器具SL(二重鎖線にて図示)などにより反時計回りに回動させると、補助部材56が下方へ回動する。このとき作業者は連結椅子Uの正面側に立って作業を行うため、上記動作は回動器具SLのバーを上方へ引き上げる動作となる。ストッパピン52の移動方向と同期しておらず、回し難い方向で、いたずらされ難い形態となっている。
【0055】
補助部材56の回動は、係合ピン54の下方移動へ変換され、係合ピン54の下方移動により、ストッパピン52が下方へ移動して筐体51内に没入する。ストッパピン52は位置決め孔Hから外れて、ストッパピン受け20との係嵌が解除され、椅子Sが回動可能となる(図8(B)参照)
椅子Sを所定角度だけ回動させたのちに、回動器具SLのバーへの負荷をやめると、弾性部材55の上向きの付勢により、係合ピン54は上方に移動して、ストッパピン52が上方に移動して、位置決め孔Hに再び挿通する。。
【0056】
図9は、実際の配置での移動側機構MOVEと固定側機構FIXである。図9(A)が椅子Sの正面位置(0度回動)、図9(B)が椅子Sの傾斜位置(30度回動)を示す。
【0057】
図9(A)の正面位置から図9(B)の回動位置とする際には、上記した手順でストッパピン52を没入させてストッパピン受け20(位置決め孔H)との係嵌を解除する。ストッパピン52は上方向に付勢されているため、作業者は片手でソケットレンチなどの回動器具SLのバーを引き上げたまま、反対側の手で一つの椅子Sを、所定角度回動させる。リンク体8により、全ての椅子Sは、それぞれ所定角度回動する。
【0058】
弾性部材55の上方向の付勢は係合ピン54を介して回動器具SLへも伝達されているため、回動器具SLのバーへの負荷を止めると、自然に回動器具SLのバーが押し下がり、ストッパピン52が上方へ突出して、位置決め孔H1に挿通する。ストッパピン52の上面は先細りの円柱台形状となっており、ストッパピン52が位置決め孔Hの正確な位置のみならず、その近傍位置に突出しても、自然に位置決め孔Hに入り込む。ストッパピン52の先端は、半球形状であってもよい。近傍の位置決め孔Hに自然に入り込む形態により、係嵌不良が抑制される。
【0059】
図9(B)の状態から正面位置に戻す際には、同様に上記の手順で、ストッパピン52を没入させて回動拘束を解除し、1つの椅子Sを逆方向へ回動させる。リンク体8により、全ての椅子Sは、連動して回動する。
【0060】
このとき、ストッパピン受け20の当接部22は、ストッパピン受け20の前面にその底面21aよりも下方へ突出して設けられているため、正面位置(0度回動)で、下方の突出部分が基台管BASEに当接する(図9(A)参照)。当接部22は、反対側まで回動してしまう回動オーバーを防ぐストッパーであり、当て板59に設けられた切り欠き部59aにより、当て板59には当接せずに基台管BASEに直接、面接触する。当接部22により、移動側機構MOVEは正確な正面位置で停止するため、回動器具SLのバーへの負荷を止めると、弾性部材55の付勢により、自然にストッパピン52が上方に突出して、正面位置を規定する位置決め孔H3に挿通して係嵌する。
【0061】
弾性部材55の上向きの付勢により、一連の作業が容易であり、作業者一人で連結椅子Uの角度変更作業を行うことができる。
【0062】
ストッパピン受け20は、支軸5に設けられているわけでなく、椅子基体10とは別体として設けられ、支軸5から左右方向にオフセットされた位置で、椅子基体10に固設されている。ストッパピン受け20は、ボルト締結で椅子基体10に固定されており、着脱が可能な構成となっている。このため、固定される角度の異なる、即ち位置決め孔の配置の異なる別のストッパピン受けに付け替えることも可能である。
【0063】
水平軸53は六角ボルトであるため、これを回動させるために専用の器具を用意する必要はなく、ソケットレンチ、モンキーレンチ、スパナなどの市販の器具を回動器具SLとして用いることができる。水平軸53を回動させるための回動レバーを筐体に直接設けず、別体として使用する構成としたことで、全体の大きさ、特に前後方向の幅をコンパクトにすることができる。水平軸53を回動させるためには、これに接続されるバーの手が長いほど、作用点が遠くなり小さな力で回動させることができるが、回動レバーを設けると、前後方向に装置の幅が広がってしまい、観覧者の往来時で当たり転んでしまう危険があり、これを抑制できる。加えて、回動レバーを椅子Sに設けないことで、観覧者によっていたずらにレバー操作されてしまうことを防止できる。
【0064】
(変形例)
本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限られない。本開示の構成は、常設された観覧席のみならず、移動観覧席にも適用できる。
【0065】
図10は、連結椅子Uを用いた移動観覧席Bの説明図である。移動観覧席Bは、収納可能に構成されており、図10(A)が収納状態における側面図、図10(B)は使用状態における側面図である。図11図10の拡大図である。
【0066】
移動観覧席Bは、複数の床台FUを備え、各床台FUに連結椅子U1が配置される。連結椅子U1は、土台2が床台FUに固定され、柱3が前方に起倒可能に土台2に支持されている以外は、連結椅子Uと同一の構成となっている。
【0067】
図10(A)に示す収納状態では、移動観覧席Bを構成する複数の床台FUが全体的に上下に整列している。図11は、連結椅子U1の起立状態と、傾倒状態を示す。
【0068】
雛壇型の移動観覧席Bは、各段が、床面FLに沿って延在する固定部材Kと、固定部材Kに設けられた固定支柱Jと、固定支柱から延在する床台FUによって構成されている。前方の段ほど、固定支柱Jが短くなる形態により、雛壇型の移動観覧席Bが構成される。
【0069】
収納状態では、各床台FUに固定された連結椅子U1は前方に傾倒する。連結椅子U1は、傾倒した状態で、前後方向には、設置された床台FU内に収まり、かつ上下方向には、後方の床台FUの底面よりも低く収まる。各段は前方へ移動可能となっており、それぞれの段が後方の床台FUの下方空間SPに、順に収納されることで、最終的にすべての段が上下方向に整列する。
【0070】
図11に示すように、本実施形態の角度変更装置1はコンパクトな構成となっており、リンク体8も、椅子Sの座面が起立させた際の椅子Sの前後方向の幅の範囲内に収まるように配置されいる(図11の二点鎖線は、椅子Sの最背面であり、リンク体8はこの線よりも前方に配置される)。このため、収納状態とするために、連結椅子U1を柱3で前方へ傾倒させても、リンク体8は傾倒状態の椅子Sの上面よりも下方に配置され、椅子Sの収納を邪魔しない。
【0071】
移動観覧席Bは、自在に移動可能に構成されるため、多様な配置でのフロア使用が可能となっている。このように、本開示の構成は、常時設置される観覧席だけでなく、移動観覧席にも適用できる。
【0072】
図12に別の変形例である連結椅子U2の概略構成の平面図を示す。
【0073】
図12に示す連結椅子U2は、最も右側に配置された椅子Sに角度変更装置1を備え、最も左側に配置された椅子Sに、角度変更装置1と左右対称に構成される角度変更装置101を備える。連結椅子U2には当接部22は設けられておらず、椅子Sの水平方向の回動は左右方向どちらか一方に拘束されることはない。
【0074】
角度変更装置101のストッパピン受け120には、位置決め孔H1~H3とは対称な位置決め孔H4~H6が形成されている。椅子Sが右方向へ回動した際には、位置決め孔H1~H3のいずれかにストッパピン52に係嵌される。椅子Sが左方向へ回動した際には、位置決め孔H4~H6にストッパピン152が係嵌される。これにより、連結椅子U2は、右方向だけでなく左方向にも視野方向を変更できる。連結椅子U2では角度変更装置101は、角度変更装置1が取り付けられた椅子Sとは異なる椅子Sに取付けられたが、角度変更装置101を角度変更装置1と同じ椅子Sに取付けてもよい。
【0075】
図13および図14に、別の変形例として着脱が容易に構成された角度変更装置201を備える連結椅子U3を示す。図13は連結椅子U3の側面図である。図14は、角度変更装置201の背面斜視図である。主要部のみを適宜離間して示した。
【0076】
角度変更装置201は、ストッパピン受け220および回動位置拘束ユニット250を有する。ストッパピン受け220は、椅子基体10の長手方向の所望の位置にて固定可能に構成される。回動位置拘束ユニット250は、基台管BASEの長手方向の所望の位置にて固定可能に構成される。このため、角度変更装置201は、所望の位置にて着脱可能である。
【0077】
ストッパピン受け220および回動位置拘束ユニット250は、ストッパピン受け20,回動位置拘束ユニット50と略同等に構成され、固定される形態のみ異なる。ストッパピン受け220および回動位置拘束ユニット250の固定形態の構成は同一である。代表として図15にストッパピン受け220の分解斜視図を示す。
【0078】
図14および図15に示すように、ストッパピン受け220は、ベース材221、蓋材225、低頭ボルト226、ナット228を備える。ベース材221は、底面221aの左右側縁部から立設する側面221bに矩形の切り欠き221cが設けられており、ここに断面がコの字型で、前方が開口した矩形管227が溶接されている。
【0079】
蓋材225は、断面がコの字型であり、凹部を内側にして矩形管227の開口部に嵌り、矩形管227の開口部に内蓋のように係合する。
【0080】
矩形管227の内形は、椅子基体10の外形に合わせて形成されている。矩形管227および蓋材225の前縁部には、係合した状態で連通する鉛直貫通孔227a、225aが左右に二か所ずつ設けられている。低頭ボルト226は、六角穴付き低頭ボルトである。
【0081】
図15に示すように、ストッパピン受け220を椅子基体10に取付けの際は、ストッパピン受け220を椅子基体10の長手方向の所望の位置に後方から差し込み、椅子基体10を矩形管227の内側に収納させて、前方から蓋材225を係合させ、椅子基体10を前後方向から挟持する。その状態で、鉛直貫通孔227a、225aに鉛直貫通孔に低頭ボルト226を刺し通して、ナット228を締結させることで、ストッパピン受け220は椅子基体10に固定される。
【0082】
低頭ボルト226が矩形管227内に収納できるように、上方の鉛直貫通孔227aは低頭ボルト226の頭部の形状に合わせた形状となっている。このため、締結された状態で、低頭ボルト226は頭部を含めて矩形管227から突出せず、椅子基体10の回動を邪魔することはない。
【0083】
これにより、ストッパピン受け220は、椅子基体10に着脱可能に構成される。着脱可能であるため、異なる位置決め孔を備える別のストッパピン受けに付け替えることも容易である。また、椅子基体10に固定のための孔を設ける必要もなく、挟持によるクランプ固定形態により、容易に配置を変更することができる。
【0084】
同様に、回動位置拘束ユニット250は、筐体251、蓋材260、低頭ボルト261、ナット263を備える。筐体251は、側面251fに矩形の切り欠き251hが形成されており、ここに断面がコの字型の矩形管262が、前方を開口させて溶接されている。矩形管262の内形は、基台管BASEの外形に合わせて形成されている。
【0085】
筐体251を、ストッパピン受け220の下方の、基台管BASEの長手方向の所定の位置に後方から差し込み、矩形管262の内側に基台管BASEを収納させて、前方から蓋材260を係合させ、基台管BASEを前後から挟持する。その状態で、不図示の鉛直貫通孔に低頭ボルト261を刺し通して、ナット263を締結させることで、回動位置拘束ユニット250は基台管BASEに固定される。低頭ボルト261は、その頭部が矩形管262の上面から突出せず、ストッパピン受け220を含めた移動側機構MOVEの回動を邪魔しない。これにより、所望の位置に固定されたストッパピン受け220に合わせて、回動位置拘束ユニット250を固定できる。
【0086】
上記構成によれば、角度変更装置201を固定するための孔を設けることなく、長手方向のどの位置でも取付けでき、また取り外すこと、異なる箇所に付け直すことも容易である。例えば、連結椅子U2の一番右側の椅子Sに角度変更装置201を取付けたが、作業空間が確保できないため、一番左の椅子Sに角度変更装置201を取付け直すことや、異なるステージに使用するために、回動角度の異なる角度変更装置201に付け替えることも容易である。配置や使用状態に合わせて、柔軟に対応することができる。
【0087】
以上、本発明の好ましい実施形態や変形例について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1 :角度変更装置
8 :リンク体
10 :椅子基体
20 :ストッパピン受け
50 :回動位置拘束ユニット
52 :ストッパピン
BASE :基台管
H :位置決め孔
S :椅子
U :連結椅子
図1
図2
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図4
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図10
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図15