(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160776
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】回転角検出装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
G01D5/245 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065184
(22)【出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075579
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100175259
【弁理士】
【氏名又は名称】尾林 章
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大
(72)【発明者】
【氏名】小林 敬幸
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 紳
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀隆
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA21
2F077CC02
2F077NN02
2F077NN19
2F077PP14
2F077QQ03
2F077TT16
2F077UU21
2F077WW02
(57)【要約】
【課題】モータ回転軸の回転を検出するセンサと、電源を供給するコントローラとがハーネスで接続される構成で、間欠的に電源を供給する際にセンサ出力の安定性を向上する。
【解決手段】センサユニット30は、コントローラ40とハーネス35で接続され、ハーネス35を介して間欠的な電源が供給される。センサユニット30は、コントローラ40から供給された電源で駆動されてモータ回転軸の回転に応じた正弦信号及び余弦信号を出力するセンサ32と、センサ32の出力信号を増幅してセンサ信号として出力する増幅器37と、ハーネス35を介してコントローラ40から供給された電源電圧を分圧する分圧抵抗Rd21、Rd22と、分圧電圧が入力され増幅器にオフセット電圧を付与するオフセット電圧出力回路39とを備える。オフセット電圧出力回路39の入力端子とグラウンドとデカップリングコンデンサC12で接続する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータのモータ回転軸の回転に応じた正弦信号及び余弦信号を含んだセンサ信号を出力するセンサユニットと、
前記センサユニットにセンサ電源を供給するとともに前記センサ信号に基づいて前記モータ回転軸の回転角を表す回転角情報を算出するコントローラと、
前記コントローラ及び前記センサユニットを接続し、前記コントローラから前記センサユニットへ前記センサ電源を伝送し、前記センサユニットから前記コントローラへ前記センサ信号を伝送するハーネスと、
を備え、
前記センサユニットは、前記ハーネスを介して前記コントローラから供給された前記センサ電源により駆動されて前記モータ回転軸の回転に応じた正弦信号及び余弦信号を出力するセンサと、前記センサの出力信号を増幅して前記センサ信号として出力する増幅器と、前記ハーネスを介して前記コントローラから供給された前記センサ電源の電圧を分圧する分圧抵抗と、前記分圧抵抗の接続点から分圧電圧が入力され前記増幅器にオフセット電圧を付与するオフセット電圧出力回路と、前記オフセット電圧出力回路の入力端子とグラウンドとを接続する第1のデカップリングコンデンサと、を備え、
前記コントローラは、電源スイッチがオンである場合に前記センサ電源として連続的な電力を供給し、前記電源スイッチがオフである場合に前記センサ電源として間欠的な電力を供給する電源管理部を備える、
ことを特徴とする回転角検出装置。
【請求項2】
前記センサユニットは、前記センサと近接する位置において前記センサ電源の電源ラインとグラウンドとを接続するバイパスコンデンサを備えることを特徴とする請求項1に記載の回転角検出装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記電源管理部と近接する位置において前記ハーネスの前記センサ電源の電源ラインとグラウンドとを接続する第2のデカップリングコンデンサを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転角検出装置。
【請求項4】
モータのモータ回転軸の回転に応じた正弦信号及び余弦信号を含んだ第1センサ信号と、モータ回転軸の回転に応じた正弦信号及び余弦信号を含んだ第2センサ信号とを出力するセンサユニットと、
前記センサユニットに電源を供給するとともに前記第1センサ信号及び前記第2センサ信号に基づいて前記モータ回転軸の回転角を表す回転角情報を算出するコントローラと、
前記コントローラ及び前記センサユニットを接続し、前記コントローラから前記センサユニットへ前記電源を伝送し、前記センサユニットから前記コントローラへ前記第1センサ信号及び前記第2センサ信号を伝送するハーネスと、
を備え、
前記センサユニットは、前記電源として前記ハーネスを介して前記コントローラから供給された第1センサ電源により駆動されて前記モータ回転軸の回転に応じた正弦信号及び余弦信号を出力する第1センサと、前記第1センサの出力信号を増幅して前記第1センサ信号として出力する第1増幅器と、前記電源として前記ハーネスを介して前記コントローラから供給された第2センサ電源により駆動されて前記モータ回転軸の回転に応じた正弦信号及び余弦信号を出力する第2センサと、前記第2センサの出力信号を増幅して前記第2センサ信号として出力する第2増幅器と、前記ハーネスを介して前記コントローラから供給された前記第1センサ電源及び前記第2センサ電源の電圧をそれぞれ分圧する第1分圧抵抗及び第2分圧抵抗と、前記第1分圧抵抗及び前記第2分圧抵抗の接続点からそれぞれ分圧電圧が入力され前記第1増幅器及び前記第2増幅器にオフセット電圧を付与する第1オフセット電圧出力回路及び第2オフセット電圧出力回路と、前記第2オフセット電圧出力回路の入力端子とグラウンドとを接続する第1のデカップリングコンデンサと、を備え、
前記コントローラは、電源スイッチがオンである場合に前記第1センサ電源及び前記第2センサ電源として連続的な電力を供給し、前記電源スイッチがオフである場合に前記第1センサ電源の供給を停止するとともに前記第2センサ電源として間欠的な電力を供給する電源管理部を備える、
ことを特徴とする回転角検出装置。
【請求項5】
前記センサユニットは、前記第2センサと近接する位置において前記第2センサ電源の電源ラインとグラウンドとを接続する第1のバイパスコンデンサを備えることを特徴とする請求項4に記載の回転角検出装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記電源管理部と近接する位置において前記ハーネスの前記第2センサ電源の電源ラインとグラウンドとを接続する第2のデカップリングコンデンサを備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の回転角検出装置。
【請求項7】
前記センサユニットは、前記第1センサと近接する位置において前記第1センサ電源の電源ラインとグラウンドとを接続する第2のバイパスコンデンサを備えることを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の回転角検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータ回転軸の回転角を検出するセンサが提案されている。また、電源スイッチがオフである間のモータの回転軸の回転数を監視する技術が提案されている。
例えば、下記特許文献1には、電動モータの角度位置を検出するMR(磁気抵抗:Magnetic Resistance)センサを備え、イグニションキーがオフである間には、MRセンサに間欠的に電源供給を行ってモータの回転を検出するステアリングシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなセンサを、電源を供給するコントローラとは別体に設けて、その間をハーネスで接続する構成を採用すると、間欠的に電源供給を行って駆動した場合に、立ち上がり直後の電源電圧が不安定になったり、電磁ノイズの発生源となることがあるため、安定したセンサ出力が得られないことがある。
本発明は、モータ回転軸の回転を検出するセンサと、電源を供給するコントローラとがハーネスで接続される構成において、間欠的にセンサに電源を供給する際にセンサ出力の安定性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様による回転角検出装置は、モータのモータ回転軸の回転に応じた正弦信号及び余弦信号を含んだセンサ信号を出力するセンサユニットと、センサユニットにセンサ電源を供給するとともにセンサ信号に基づいてモータ回転軸の回転角を表す回転角情報を算出するコントローラと、コントローラ及びセンサユニットを接続し、コントローラからセンサユニットへセンサ電源を伝送し、センサユニットからコントローラへセンサ信号を伝送するハーネスと、を備える。
【0006】
センサユニットは、ハーネスを介してコントローラから供給されたセンサ電源により駆動されてモータ回転軸の回転に応じた正弦信号及び余弦信号を出力するセンサと、センサの出力信号を増幅してセンサ信号として出力する増幅器と、ハーネスを介してコントローラから供給されたセンサ電源の電圧を分圧する分圧抵抗と、分圧抵抗の接続点から分圧電圧が入力され増幅器にオフセット電圧を付与するオフセット電圧出力回路と、第2オフセット電圧出力回路の入力端子とグラウンドとを接続するデカップリングコンデンサと、を備える。
コントローラは、電源スイッチがオンである場合にセンサ電源として連続的な電力を供給し、電源スイッチがオフである場合にセンサ電源として間欠的な電力を供給する電源管理部を備える。
【0007】
また、本発明の他の一態様による回転角検出装置は、モータのモータ回転軸の回転に応じた正弦信号及び余弦信号を含んだ第1センサ信号と、モータ回転軸の回転に応じた正弦信号及び余弦信号を含んだ第2センサ信号とを出力するセンサユニットと、センサユニットに電源を供給するとともに第1センサ信号及び第2センサ信号に基づいてモータ回転軸の回転角を表す回転角情報を算出するコントローラと、コントローラ及びセンサユニットを接続し、コントローラからセンサユニットへ電源を伝送し、センサユニットからコントローラへ第1センサ信号及び第2センサ信号を伝送するハーネスと、を備える。
【0008】
センサユニットは、ハーネスを介してコントローラから供給された第1センサ電源により駆動されてモータ回転軸の回転に応じた正弦信号及び余弦信号を出力する第1センサと、第1センサの出力信号を増幅して第1センサ信号として出力する第1増幅器と、ハーネスを介してコントローラから供給された第2センサ電源により駆動されてモータ回転軸の回転に応じた正弦信号及び余弦信号を出力する第2センサと、第2センサの出力信号を増幅して第2センサ信号として出力する第2増幅器と、ハーネスを介してコントローラから供給された第1センサ電源及び第2センサ電源の電圧をそれぞれ分圧する第1分圧抵抗及び第2分圧抵抗と、第1分圧抵抗及び第2分圧抵抗の接続点からそれぞれ分圧電圧が入力され第1増幅器及び第2増幅器にオフセット電圧を付与する第1オフセット電圧出力回路及び第2オフセット電圧出力回路と、第2オフセット電圧出力回路の入力端子とグラウンドとを接続するデカップリングコンデンサと、を備える。
コントローラは、電源スイッチがオンである場合に第1センサ電源及び第2センサ電源として連続的な電力を供給し、電源スイッチがオフである場合に第1センサ電源の供給を停止するとともに第2センサ電源として間欠的な電力を供給する電源管理部を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、モータ回転軸の回転を検出するセンサと、電源を供給するコントローラとがハーネスで接続される構成において、間欠的にセンサに電源を供給する際にセンサ出力の安定性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の電動パワーステアリング装置の一例の概要を示す構成図である。
【
図2】第1正弦信号、第1余弦信号、第2正弦信号及び第2余弦信号の一例を示す図である。
【
図3】センサユニットの一例の概略を示す分解図である。
【
図4】センサユニットの回路構成の一例の概略を示すブロック図である。
【
図6】(a)はイグニションキーがオフである間に間欠的に出力される第2センサ電源Vs2の一例の波形を示す図であり、(b)は(a)の第2センサ電源Vs2の1回の間欠出力の波形を示す図である。
【
図7】電源管理部の機能構成の一例のブロック図である。
【
図8】(a)~(d)は回転数検出部の動作の一例の説明図であり、(e)は回転数情報の一例の説明図である。
【
図9】マイクロプロセッサの機能構成の一例のブロック図である。
【
図10】(a)は第1正弦信号sin1及び第1余弦信号cos1を示す図であり、(b)は角度位置情報θ1の一例を示す図であり、(c)はモータ回転数Nrを示す図であり、(d)は回転角情報θmを示す図である。
【
図11】アシスト制御部の機能構成の一例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構成、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
以下、実施形態の回転角検出装置を、車両のステアリング機構にモータの回転力で操舵補助力(アシスト力)を付与する電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering)に適用した場合の構成例を説明する。ただし本発明は、電動パワーステアリング装置に適用される回転角検出装置に限定されず、モータ回転軸の回転に応じた信号を出力するセンサを備える回転角検出装置に広く適用可能である。
【0013】
(構成)
図1を参照する。操向ハンドル1のコラム軸(操舵軸)2i及び2oは、減速ギア3、ユニバーサルジョイント4A及び4B、ピニオンラック機構5を経て操向車輪のタイロッド6に連結されている。コラム軸の入力軸2iと出力軸2oとは、入力軸2iと出力軸2
oとの間の回転角のずれによって捩れるトーションバー(図示せず)によって連結されている。
【0014】
トルクセンサ10は、トーションバーの捩れ角を、操向ハンドル1の操舵トルクThとして電磁気的に測定する。
また、コラム軸の出力軸2oには、操向ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速ギア3を介して連結されている。
【0015】
コントローラ40は、モータ20を駆動制御する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。コントローラ40には、電源であるバッテリ14からバッテリ電源Vbatが供給されると共に、電源スイッチであるイグニションキー11からイグニションキー信号IGが入力される。イグニションキー信号IGは、イグニションキー11がオン又はオフのいずれであるかを示す。
コントローラ40は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクThと車速センサ12で検出された車速Vhとに基づいて、アシストマップ等を用いてアシスト指令の操舵補助指令値の演算を行い、演算された操舵補助指令値に基づいてモータ20に駆動電流Iを供給する。
【0016】
センサユニット30は、モータ20のモータ回転軸の回転に応じたセンサ信号を各々出力する2つのセンサを備える。
センサユニット30の2つのセンサは、各々独立してモータ回転軸の角度位置θ(θ=0~360[deg])を検出し、一方のセンサからは振幅Aの第1正弦信号sin1=A×sinθ+Voff1及び第1余弦信号cos1=A×cosθ+Voff1を、他方のセンサからは振幅Aの第2正弦信号sin2=A×sinθ+Voff2及び第2余弦信号cos2=A×cosθ+Voff2を、各々コントローラ40へ出力する。電圧Voff1及びVoff2は、オフセット電圧(すなわち、第1正弦信号sin1、第1余弦信号cos1、第2正弦信号sin2及び第2余弦信号cos2の直流成分)である。第1正弦信号sin1、第1余弦信号cos1、第2正弦信号sin2及び第2余弦信号cos2の一例を
図2に示す。
コントローラ40は、第1正弦信号sin1、第1余弦信号cos1、第2正弦信号sin2及び第2余弦信号cos2に基づいてモータ20のモータ回転軸の回転角θmを演算する。
【0017】
コントローラ40は、モータ20のモータ回転軸の回転角θmと減速ギア3のギア比Rgとに基づいて、コラム軸の出力軸2oの回転角θoを演算する。コントローラ40は、回転角θoと操舵トルクThに基づいて、コラム軸の入力軸2iの回転角θi、すなわち操向ハンドル1の操舵角θsを演算する。
【0018】
このような構成の電動パワーステアリング装置において、操向ハンドル1から伝達された運転手のハンドル操作による操舵トルクThをトルクセンサ10で検出し、操舵トルクth及び車速Vhに基づいて算出される操舵補助指令値によってモータ20は駆動制御され、運転手のハンドル操作の補助力(操舵補助力)として操舵系に付与される。
【0019】
図3は、センサユニット30の一例の概略を示す分解図である。センサユニット30は、磁石31と、回路基板32とを備える。
磁石31は、モータ20のモータ回転軸21の出力端22と反対側の端部24に固定され、モータ回転軸21の周方向に沿って配列された異なる磁極(S極及びN極)を有している。
【0020】
回路基板32には、磁石31から生じた磁束を検出することにより、モータ20のモータ回転軸の回転に応じた第1センサ信号及び第2センサ信号をそれぞれ出力する第1センサ33と第2センサ34を備える。
第1センサ33から出力される第1センサ信号は、第1正弦信号sin1及び第1余弦信号cos1を含む。第2センサ34から出力される第2センサ信号は、第2正弦信号sin2及び第2余弦信号cos2を含む。
【0021】
第1センサ33と第2センサ34は、例えば、磁束を検出するMRセンサ(例えばTMR(Tunnel Magneto Resistance)センサ)であってよい。
第1センサ33及び第2センサ34は、モータ回転軸21とともに回転する磁石31に近接して配置され、磁石31から発生する磁束を検出することにより、モータ回転軸21の回転に応じた第1正弦信号sin1及び第1余弦信号cos1、並びに第2正弦信号sin2及び第2余弦信号cos2をそれぞれ生成する。
【0022】
センサユニット30は、コントローラ40とは別体のユニットとして形成され、ハーネス35によりコントローラ40に接続される。コントローラ40は、第1センサ33及び第2センサ34をそれぞれ駆動する第1センサ電源Vs1及び第2センサ電源Vs2を、ハーネス35を経由してセンサユニット30へ供給する。センサユニット30は、第1センサ信号及び第2センサ信号を、ハーネス35を経由してからコントローラ40へ出力する。ハーネス35の長さは例えば約10cmであってよい。
【0023】
図4は、センサユニット30の回路構成の一例の概略を示すブロック図である。センサユニット30は、第1センサ33と、第2センサ34と、第1増幅器36と、第2増幅器37と、第1オフセット電圧出力回路38と、第2オフセット電圧出力回路39と、分圧抵抗Rd11、Rd12、Rd21及びRd22と、を備える。
センサユニット30側の第1センサ電源Vs1の第1センサ電源ラインVL1と第2センサ電源Vs2の第2センサ電源ラインVL2は、ハーネス35側の第1センサ電源ラインVL1と第2センサ電源ラインVL2と接続されており、コントローラ40から、それぞれ第1センサ電源Vs1及び第2センサ電源Vs2が供給される。また、センサユニット30側の第1センサ接地ラインGND1と第2センサ接地ラインGND2は、ハーネス35側の接地ラインGNDを介して、コントローラ40側の接地ライン(図示せず)に接続されている。
【0024】
第2センサ34は、磁気抵抗素子Rs21、Rs22、Rs23及びRs24のブリッジ回路34aと、磁気抵抗素子Rc21、Rc22、Rc23及びRc24のブリッジ回路34bを備える。
磁気抵抗素子Rs21、Rs22、Rs23及びRs24のピン層の磁化方向と、磁気抵抗素子Rc21、Rc22、Rc23及びRc24のピン層の磁化方向とは、90°ずれている。
【0025】
電源端子V2SINを介して第2センサ電源ラインVL2に接続された磁気抵抗素子Rs21及びRs22の接続点と、グラウンド端子G2SINを介して第2センサ接地ラインGND2に接続された磁気抵抗素子Rs23及びRs24の接続点との間に、第2センサ電源Vs2を供給すると、中点電位点に接続された出力端子SIN2P及びSIN2Nからは、モータ回転軸21の回転に応じた正弦成分を表す差動正弦信号Ss2p及びSs2nが出力される。
また、電源端子V2COSを介して第2センサ電源ラインVL2に接続された磁気抵抗素子Rc21及びRc22の接続点と、グラウンド端子G2COSを介して第2センサ接地ラインGND2に接続された磁気抵抗素子Rc23及びRc24の接続点との間に、第2センサ電源Vs2を供給すると、中点電位点に接続された出力端子COS2P及びCOS2Nからは、モータ回転軸21の回転に応じた正弦成分を表す差動余弦信号Sc2p及びSc2nが出力される。
【0026】
第1センサ33は、第2センサ34と同一の構成を有しており、電源端子V1SIN及びV1COSが、電源端子V2SIN及びV2COSにそれぞれ対応し、グラウンド端子G1SIN及びG1COSが、グラウンド端子G2SIN及びG2COSにそれぞれ対応し、出力端子SIN1N、SIN1P、COS1N及びCOS1Pが、出力端子SIN2N、SIN2P、COS2N及びCOS2Pにそれぞれ対応し、差動正弦信号Ss1p及びSs1nが差動正弦信号Ss2p及びSs2nにそれぞれ対応し、差動余弦信号Sc1p及びSc1nが差動余弦信号Sc2p及びSc2nにそれぞれ対応する。
【0027】
第2増幅器37は、差動正弦信号Ss2p及びSs2nを増幅して、第2オフセット電圧出力回路39から出力されたオフセット電圧Voff2を付与することにより、第2正弦信号sin2を出力する。また、差動余弦信号Sc2p及びSc2nを増幅して、オフセット電圧Voff2を付与することにより、第2余弦信号cos2を出力する。
第2増幅器37は、非反転入力端子と反転入力端子に差動正弦信号Ss2p及びSs2nがそれぞれ入力される差動増幅器37aと、非反転入力端子と反転入力端子に差動余弦信号Sc2p及びSc2nがそれぞれ入力される差動増幅器37bを備える。
【0028】
第2オフセット電圧出力回路39は、オフセット電圧Voff2をこれら差動増幅器37a及び37bの非反転入力端子に付与する。
第2オフセット電圧出力回路39は、例えば増幅器39aを有するボルテージフォロワ回路であってよい。増幅器39aの非反転入力端子には、分圧抵抗Rd21及びRd22によって第2センサ電源Vs2を分圧して得られた分圧電圧が入力される。
例えば、分圧抵抗Rd21及びRd22の抵抗値を等しくして、第2センサ電源Vs2を1対1に分圧してよい。この場合、オフセット電圧Voff2は、第2センサ電源Vs2の電圧の2分の1(Vs2/2)となる。
【0029】
第1増幅器36及び第1オフセット電圧回路38は、第2増幅器37及び第2オフセット電圧回路39と同一の構成を有する。
第1増幅器36は、差動正弦信号Ss1p及びSs1nを増幅して、第1オフセット電圧出力回路38から出力されたオフセット電圧Voff1を付与することにより、第1正弦信号sin1を出力する。また、差動余弦信号Sc1p及びSc1nを増幅して、オフセット電圧Voff1を付与することにより、第1余弦信号cos1を出力する。
第1オフセット電圧出力回路38は、例えば、分圧抵抗Rd11及びRd12によって第1センサ電源Vs1を分圧して得られた分圧電圧が入力されるボルテージフォロワ回路であってよい。オフセット電圧Voff1は、例えば、第1センサ電源Vs1の電圧の2分の1(Vs1/2)であってよい。
第1正弦信号sin1、第1余弦信号cos1、第2正弦信号sin2、第2余弦信号cos2は、ハーネス35を介してコントローラ40へ伝送される。
【0030】
図5を参照して、コントローラ40の構成例を説明する。コントローラ40は、電源管理部50と、マイクロプロセッサ(MPU:Micro-Processing Unit)60を備える。
電源管理部50は、バッテリ14からバッテリ電源Vbatの供給を受けて、センサユニット30及びコントローラ40の電源管理を行う。電源管理部50は、単一の集積回路(IC:Integrated Circuit)チップとして実装されてよい。例えば電源管理部50は、パワーマネージメントIC(Power Management Integrated Circuit)であってよい。
【0031】
電源管理部50は、イグニションキー信号IGに基づいて、バッテリ14からの供給電力から、第1センサ33を駆動するための第1センサ電源Vs1と、第2センサ34を駆動するための第2センサ電源Vs2と、MPU60やコントローラ40のその他の構成部品(以下「MPU60等」と表記することがある)を駆動するための電源Vmと、電源管理部50内部のディジタル論理回路を駆動するための内部電源Vpを生成する。
【0032】
電源管理部50は、イグニションキー11がオンである間には、電源VmをMPU60等に供給する。
また、電源管理部50は、第1センサ33及び第2センサ34へ第1センサ電源Vs1及び第2センサ電源Vs2をそれぞれ供給する。イグニションキー11がオンである間に、電源管理部50は、第1センサ電源Vs1及び第2センサ電源Vs2として連続的な電力を供給する。イグニションキー11がオンである間の第1センサ電源Vs1及び第2センサ電源Vs2の電圧は、例えば共通の電源電圧Vcc1(例えばVcc1=5[V])であってよい。
【0033】
また、イグニションキー11がオンである間、電源管理部50は、電源管理部50内部のディジタル論理回路に対して、連続的な電力である内部電源Vpを供給する。例えば、イグニションキー11がオンである間の内部電源Vpの電圧は、共通の電源電圧Vcc1であってよい。すなわち内部電源Vpの電圧は、第2センサ電源Vs2と等しい電圧であってよい。
【0034】
一方で、イグニションキー11がオフである間には、電源管理部50は、第1センサ33への第1センサ電源Vs1の供給及びMPU60等への電源Vmの供給を停止する。
また、イグニションキー11がオフである間には、電源管理部50は、第2センサ電源Vs2として間欠的な電力を第2センサ34へ供給する。
例えば、イグニションキー11がオフである間に間欠的に供給される第2センサ電源Vs2の電圧は、電源電圧Vcc1より低い電源電圧Vcc2であってよい。例えば電源電圧Vcc2は3.3[V]であってよい。
【0035】
図6(a)は、イグニションキー11がオフである間に間欠的に出力される第2センサ電源Vs2の一例の波形を示す。
イグニションキー11がオフである場合、第2センサ電源Vs2の電圧は、出力周期Tで到来する時間幅Wtの間欠出力期間で電源電圧Vcc2となり、間欠出力期間以外の期間では「0」となる。後述するように電源管理部50は、出力周期Tを動的に変更してよい。出力周期Tは、例えば2.2ミリ秒~6.6ミリ秒であってよい。
【0036】
図6(b)は、第2センサ電源Vs2の1回の間欠出力の波形を示す図である。第2センサ電源Vs2が欠的に出力される1回の出力期間の時間幅Wtは、待機期間Pwとアイドル期間Piとサンプリング期間Psの合計である。
待機期間Pwは、第2センサ電源Vs2の間欠出力の開始直後に発生する電圧変動が第2センサ34の第2センサ信号に与える影響を避けるために、第2センサ信号のサンプリングが禁止される期間である。待機期間Pwは、例えば固定値であってもよく、電源管理部50にプログラム可能な任意の値であってもよい。
【0037】
アイドル期間Pi及びサンプリング期間Psの期間長は、電源管理部50にプログラム可能な任意の値である。サンプリング期間Psは、イグニションキー11がオフである場合に電源管理部50が、第2センサ34の第2センサ信号のサンプリングを行う期間として指定される。
アイドル期間Piの期間長は、サンプリング期間Psの開始時期を指定するためにプログラムでき、サンプリング期間Psの期間長は、第2センサ電源Vs2の間欠出力の終了時期を指定するためにプログラムできる。
【0038】
第2センサ電源Vs2の間欠出力の時間幅Wtの長さは、イグニションキー11がオフである間にセンサユニット30及びコントローラ40に流れる暗電流に影響する。すなわちイグニションキー11がオフである間のセンサユニット30及びコントローラ40の消費電力に影響する。時間幅Wtが長いほど暗電流及び消費電力が大きくなり、時間幅Wtが短いほど暗電流及び消費電力を節約する。
【0039】
一方で、アイドル期間Pi及びサンプリング期間Psを短くすると、間欠的に駆動される第2センサ34から出力される第2センサ信号を精度よくサンプリングすることが難しくなる。
例えば、第2センサ電源Vs2の供給が開始すると、コントローラ40が第2センサ34から受信する第2センサ信号の電圧は、「0」から第2センサ34に印加されている磁束に応じた値まで、ある時定数で変化する。第2センサ信号の時定数は、例えば、第2センサ34自体の電気的特性やハーネス35や入力回路のインピーダンス等によって定まる。このため、アイドル期間Piが過小であると本来の第2センサ信号よりも小さな信号をサンプリングしてしまうおそれがある。
【0040】
したがって、第2センサ電源Vs2の1回の間欠出力の時間幅Wtは、イグニションキー11がオフである間のセンサユニット30及びコントローラ40に許容される消費電流(暗電流)に応じて設定されることが望ましい。例えば、第2センサ電源Vs2の1回の間欠出力の時間幅Wtは220マイクロ秒以下であってよい。
【0041】
また、第2センサ電源Vs2の1回の間欠出力の時間幅Wtは、イグニションキー11がオフである間に間欠的な第2センサ電源Vs2の供給が開始したときの第2センサ信号の時定数に応じて設定されることが望ましい。
例えば、第2センサ電源Vs2の出力を開始後100マイクロ秒が経過時に第2センサ信号が十分に大きくなるように(例えば、第2センサ電源Vs2が連続して供給される場合の第2センサ信号の99パーセント程度の大きさまで上昇するように)設計することは現実的に可能である。したがって、例えば第2センサ電源Vs2の1回の間欠出力の時間幅Wtは、100マイクロ秒以上であってよい。
【0042】
以上のように、イグニションキー11がオフである間に、電源管理部50は、第2センサ電源Vs2として間欠的な電力を第2センサ34へ供給するが、センサユニット30がコントローラ40と別体のユニットとして形成され、ハーネス35を介して間欠的な第2センサ電源Vs2が第2センサ34へ供給されると、立ち上がり直後に過渡電流が流れて電源電圧が不安定になったり、電磁ノイズの発生源となることがある。このため、イグニションキー11がオフである間に、第2センサ34から得られる第2センサ信号が不安定となるおそれがある。
【0043】
そこで、第2センサ電源Vs2の第2センサ電源ラインVL2に、バイパスコンデンサやデカップリングコンデンサを設ける。バイパスコンデンサは、主に比較的高い周波数のノイズ成分をグラウンドに逃がす機能を果たし、デカップリングコンデンサは、主に比較的低い周波数の電圧変動を吸収して電源系を安定化させる役割を果たすが、同一のコンデンサで両方の機能を果たす場合もある。
本発明では、第2センサ電源Vs2が連続的に供給されるイグニションキー11がオンの場合と、第2センサ電源Vs2が間欠的に供給されるイグニションキー11がオフの場合との両方で、(1)第2センサ34側の電源安定性と、(2)良好なEMC(Electromagnetic Compatibility)特性と、(3)イグニションキー11がオフの時の暗電流の低減が求められる。
電源安定性の観点からは、大きな容量のデカップリングコンデンサが望まれる。一方で、第2センサ電源Vs2が間欠的に供給されるイグニションキー11がオフの場合では、高速な信号の立ち上がりと暗電流低減の観点から小さい容量のバイパスコンデンサが望まれる。またEMC特性の観点からは、高周波領域で機能するバイパスコンデンサが望まれる。
【0044】
発明者らは、シミュレーションを繰り返すことにより、次の3箇所(1)~(3)にバイパスコンデンサやカップリングコンデンサを設けることにより、安定的な第2センサ信号が得られることを発見した。
(1)第2オフセット電圧出力回路39の入力端子
第2オフセット電圧出力回路39の入力端子と第2センサ接地ラインGND2とを接続するように(すなわち分圧抵抗Rd21、Rd22の接続点と第2センサ接地ラインGND2とを接続するように)デカップリングコンデンサC12(
図4参照)を設けることにより、第2センサ電源Vs2が間欠的に供給される場合に、第2センサ電源Vs2がスイッチングされても、その過渡電流による電圧変動は、分圧抵抗Rd21とデカップリングコンデンサC12により形成されるローパスフィルタによって遮断され、第2センサ信号の直流成分の変動が抑制される。この結果、第2センサ信号の安定性を向上できる。
【0045】
(2)第2センサ34に近接する位置
第2センサ34と近接する位置において第2センサ電源ラインVL2と第2センサ接地ラインGND2とを接続するバイパスコンデンサC23及びC24を設けることにより、第2センサ電源Vs2のスイッチングにより生じた電磁ノイズが、第2センサ34に与える影響を抑制し、この結果、第2センサ信号の安定性を向上できる。
【0046】
(3)電源管理部50に近接する位置
電源管理部50と近接する位置においてハーネス35の第2センサ電源ラインVL2と接地ラインGNDとを接続するデカップリングコンデンサC32(
図5参照)を設けることにより、第2センサ電源Vs2がスイッチングされたときに発生する電源の電圧変動が、ハーネス35へ進入することを抑制し、ハーネス35により供給される電源を安定化できる。また、ハーネス35から生じるノイズを低減できる。
なお、イグニションキー11がオンの場合(すなわち第2センサ電源Vs2が連続的に供給されていている場合)においても、上記の3箇所(1)~(3)にバイパスコンデンサやデカップリングコンデンサを接続することにより、外部からのノイズが第2センサ34へ及ぼす影響を抑制できるので、第2センサ信号の安定性を向上できる。
【0047】
第2センサ電源Vs2の第2センサ電源ラインVL2と同様に、第1センサ電源Vs1の第1センサ電源ラインVL1に、バイパスコンデンサやデカップリングコンデンサを設けてもよい。本実施形態では、第1オフセット電圧出力回路38の入力端子と第1センサ接地ラインGND1とを接続するデカップリングコンデンサC11(
図4参照)を設ける。
また、第1センサ33と近接する位置において第1センサ電源ラインVL1と第1センサ接地ラインGND1とを接続するバイパスコンデンサC21及びC22を設ける。
また、電源管理部50と近接する位置においてハーネス35の第1センサ電源ラインVL1と接地ラインGNDとを接続するデカップリングコンデンサC31(
図5参照)を設ける。
【0048】
さらに、ハーネス35とのコネクタに近接する位置において、センサユニット30側の第1センサ電源ラインVL1と第1センサ接地ラインGND1とを接続する、静電気放電サージ(ESD)対策用のバイパスコンデンサCe1と、センサユニット30側の第2センサ電源ラインVL2と第2センサ接地ラインGND2とを接続する、ESD対策用のバイパスコンデンサCe2を設けてもよい。
【0049】
図5にもどってコントローラ40説明を続ける。イグニションキー11がオフである間も、電源管理部50は、内部電源Vpとして連続的な電力を供給する。すなわち、電源管理部50は、イグニションキー11がオンであるかオフであるかにかかわらず連続的な電力を内部電源Vpとして供給する。
ただし、イグニションキー11がオフである間には、電源管理部50は、イグニションキー11がオンである間の電圧よりも低い電圧を有する内部電源Vpを供給する。
例えば、イグニションキー11がオフである間の内部電源Vpの電圧は、イグニションキー11がオフである間の第2センサ電源Vs2の電圧である電源電圧Vcc2と等しくてもよい。
【0050】
また、電源管理部50は、第2正弦信号sin2及び第2余弦信号cos2に基づいてモータ回転軸21の回転数を検出し、回転数を表す回転数情報を生成する。回転数情報は、第2正弦信号sin2の符号の変化を計数した正弦カウント値CNTsと、第2余弦信号cos2の符号の変化を計数した余弦カウント値CNTcを含む。正弦カウント値CNTsと余弦カウント値CNTcは、第2正弦信号sin2の符号と第2余弦信号cos2の符号の組合せによって変化する。電源管理部50の詳細は後述する。
【0051】
MPU60は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクThと車速センサ12で検出された車速Vhとに基づいて、アシストマップ等を用いてアシスト指令の操舵補助指令値の演算を行い、モータ20の駆動電流Iを制御する。
【0052】
また、MPU60は、第1正弦信号sin1及び第1余弦信号cos1に基づいて、モータ回転軸21の角度位置を表す角度位置情報θ1を算出する。
角度位置情報θ1は、モータ回転軸21の1回転の角度範囲内における角度位置を表す(θ1=0~360[deg])。
MPU60は、電源管理部50が生成した回転数情報(正弦カウント値CNTs及び余弦カウント値CNTc)と角度位置情報θ1に基づいて、モータ回転軸21の回転角を表す回転角情報θmを算出する。回転角情報θmは、モータ回転軸21の1回転以上のマルチターンの角度範囲における回転角を表す。
【0053】
具体的には、イグニションキー11がオフである間、MPU60への電源Vmの供給が停止するので、MPU60は動作を停止する。
イグニションキー11がオフからオンになった時点で、MPU60は、電源管理部50から回転数情報を読み出し、回転数情報と角度位置情報θ1に基づいて回転角情報θmを算出する。
イグニションキー11がオンである間、MPU60は、イグニションキー11がオフからオンになった時点以降の角度位置情報θ1の角度変化を、イグニションキー11がオフからオンになった時点に算出した回転角情報θmに累積して、イグニションキー11がオフからオンになった時点以降の回転角情報θmを算出する。
【0054】
MPU60は、回転角情報θmに減速ギア3のギア比Rgを乗じて、コラム軸の出力軸2oの回転角θoを算出する。また、トルクセンサ10が検出した操舵トルクThに基づいて、コラム軸に設けられたトーションバーの捩れ角θtを算出し、出力軸2oの回転角θoに捩れ角θtを加算してコラム軸の入力軸2iの回転角θi(操向ハンドル1の操舵角θs)を算出する。
【0055】
コントローラ40は、出力軸2oの回転角θoや入力軸2iの回転角θiの回転角情報に基づいて、モータ20により出力軸2oに付与する操舵補助力を制御してもよい。
例えば、コントローラ40は、回転角情報に基づいてコラム軸が端当て状態であるか否かを判定してよい。コラム軸が端当て状態である場合には、コントローラ40は、モータ20の駆動電流Iを制限して、操舵補助力を低減するように補正してもよい。
【0056】
また例えば、コントローラ40は、回転角情報に基づいて操向ハンドル1が切り増し状態であるか切り戻し状態であるかを判定してもよい。例えばコントローラ40は、コラム軸の回転角とその変化方向に基づいて、切り増し状態であるか切り戻し状態であるかを判定してもよい。またコントローラ40は、コラム軸の回転角と操舵トルクThにもとづいて、切り増し状態であるか切り戻し状態であるかを判定してもよい。
コントローラ40は、切り増し状態である場合には駆動電流Iを増加補正して操舵補助力を増大させ、切り戻し状態である場合には駆動電流Iを減少補正して操舵補助力を減少させてもよい。MPU60の詳細は、さらに後述する。
【0057】
次に、
図7を参照して電源管理部50の機能構成の一例を説明する。電源管理部50は、レギュレータ51と、第1電源供給部52と、第2電源供給部53と、第3電源供給部54と、電源制御部56と、回転数検出部58を備える。第3電源供給部54は、特許請求の範囲に記載の「電源供給部」の一例である。
【0058】
電源制御部56は、イグニションキー信号IGに基づいて動作切替信号Sigを生成して、レギュレータ51、第1電源供給部52、第2電源供給部53及び第3電源供給部54へ出力する。
動作切替信号Sigは、イグニションキー11がオンであるかオフであるかを示す。例えば、イグニションキー11がオンであることを示す値は「1」であってよく、イグニションキー11がオフであることを示す値は「0」であってよい。
また、電源制御部56は、イグニションキー11がオフである間、第2センサ電源Vs2の間欠出力期間の開始時期を示す周期Tのタイミング信号Stを、第3電源供給部54と回転数検出部58に出力する。
【0059】
レギュレータ51は、バッテリ電源Vbatから所定電圧のレギュレータ電源VRを発生させる。第1電源供給部52及び第2電源供給部53は、このレギュレータ電源VRから、電源Vm及び第1センサ電源Vs1を発生させる。また、第3電源供給部54は、レギュレータ電源VRから、第2センサ電源Vs2及び内部電源Vpを発生させる。
レギュレータ51は、動作切替信号Sigに応じてレギュレータ電源VRの電圧を切り替える。
【0060】
例えば、動作切替信号Sigが値「0」である間(すなわちイグニションキー11がオフである間)のレギュレータ電源VRの電圧を、動作切替信号Sigが値「1」である間(すなわちイグニションキー11がオンである間)のレギュレータ電源VRの電圧よりも下げてもよい。これにより、イグニションキー11がオフである間の第2センサ電源Vs2及び内部電源Vpの電圧を、イグニションキー11がオンである間の電圧よりも下げることができる。
例えば、動作切替信号Sigが値「1」である間のレギュレータ電源VRの電圧は6[V]であってよく、動作切替信号Sigが値「0」である間のレギュレータ電源VRの電圧は4[V]であってよい。
【0061】
第1電源供給部52は、動作切替信号Sigが値「1」である間、電源Vmとして連続的な電力をMPU60等に供給し、第2電源供給部53は、第1センサ電源Vs1として連続的な電力を第1センサ33に供給する。
また、動作切替信号Sigが値「1」である間、第3電源供給部54は、第2センサ電源Vs2として連続的な電力を第2センサ34と回転数検出部58に供給し、内部電源Vpとして連続的な電力を回転数検出部58に供給する。
この結果、イグニションキー11がオンである間、MPU60等、第1センサ33、第2センサ34は連続して動作する。また、このときの第1センサ電源Vs1、第2センサ電源Vs2及び内部電源Vpの電圧は、電源電圧Vcc1である。
【0062】
一方で、動作切替信号Sigが値「0」である間(すなわちイグニションキー11がオフである間)、第1電源供給部52及び第2電源供給部53は、電源Vm及び第1センサ電源Vs1の生成を停止する。これにより、第1センサ33への第1センサ電源Vs1の供給と、MPU60等への電源Vmの供給が止まり、第1センサ33及びMPU60等の動作が停止する。
【0063】
第3電源供給部54は、動作切替信号Sigが値「0」である間、電源電圧Vcc2を有する間欠的な電力を第2センサ電源Vs2として出力する。
この結果、電源電圧Vcc1よりも低い電源電圧Vcc2の第2センサ電源Vs2が間欠的に第2センサ34に供給され、第2センサ34が間欠的に動作する。
第3電源供給部54は、電源制御部56から出力されるタイミング信号Stに基づくタイミングで、間欠的に第2センサ電源Vs2を出力する。また、第3電源供給部54は、待機期間Pwと、電源管理部50に予めプログラムされたアイドル期間Piとサンプリング期間Psに応じて、第2センサ電源Vs2の1回の間欠出力の時間幅Wtを設定する。
【0064】
また、第3電源供給部54は、動作切替信号Sigが値「0」である間、電源電圧Vcc2を有する連続的な電力を内部電源Vpとして生成する。例えば、第3電源供給部54は、電源電圧Vcc2を有する連続的な共通電力をレギュレータ電源VRから生成して、共通電力をそのまま内部電源Vpとして出力する一方で、共通電力をスイッチングして第2センサ電源Vs2を生成してもよい。
【0065】
回転数検出部58は、第2正弦信号sin2及び第2余弦信号cos2に基づいて、モータ回転軸21の回転数を検出し、回転数を表す回転数情報(すなわち正弦カウント値CNTs及び余弦カウント値CNTc)を生成する。イグニションキー11がオンである間、回転数検出部58は、第2センサ電源Vs2の間欠出力周期Tよりも短い所定のサンプリング周期で回転数情報を生成する。イグニションキー11がオフである間、回転数検出部58は、間欠出力周期Tで第2センサ電源Vs2が第2センサ34に供給されたときに、間欠的に回転数情報を生成する。
【0066】
回転数検出部58は、第1コンパレータ58aと、第2コンパレータ58bと、正弦カウンタ58cと、余弦カウンタ58dを備える。
第1コンパレータ58aは、第2センサ電源Vs2を電源として動作し、第2正弦信号sin2と閾値電圧Vrとを比較して、第2正弦信号sin2の正負の符号を示す符号信号Csを生成する。符号信号Csは、第2正弦信号sin2が閾値電圧Vr以上である場合に論理値「1」を有し、第2正弦信号sin2が閾値電圧Vr未満である場合に論理値「0」を有する。
【0067】
閾値電圧Vrは、第2センサ電源Vs2の電圧に基づいて設定してよい。第2正弦信号sin2と第2余弦信号cos2は、直流オフセット成分Voff2を有するので、例えば、閾値電圧Vrをオフセット電圧Voff2に設定してよい。例えば、回転数検出部58は、第2センサ電源Vs2やレギュレータ電源VRの電圧を分圧して閾値電圧Vrを生成する分圧抵抗を備えてもよい。
第2コンパレータ58bは、第2センサ電源Vs2を電源として動作し、第2余弦信号cos2と閾値電圧Vrとを比較して、第2余弦信号cos2の正負の符号を示す符号信号Ccを生成する。符号信号Ccは、第2余弦信号cos2が閾値電圧Vr以上である場合に論理値「1」を有し、第2余弦信号cos2が閾値電圧Vr未満である場合に論理値「0」を有する。
【0068】
また、イグニションキー11がオフである間には、第1コンパレータ58a及び第2コンパレータ58bは、第2正弦信号sin2及び第2余弦信号cos2を、電源制御部56から出力される周期Tのタイミング信号Stと、待機期間Pwと、電源管理部50に予めプログラムされたアイドル期間Piと基づき定まる開始時期から始まるサンプリング期間Ps内において取得する。これにより、第1コンパレータ58a及び第2コンパレータ58bは、イグニションキー11がオフである間、符号信号Cs及びCcを間欠的に生成する。
【0069】
図8(a)及び
図8(b)を参照する。
図8(a)の破線の波形は第2正弦信号sin2を、実線の波形は第2余弦信号cos2の例を示す。
実施形態の第2正弦信号sin2及び第2余弦信号cos2の振幅Aは、第2センサ電源Vs2の電圧の2分の1(すなわちVs2/2)であり、直流成分が第2センサ電源Vs2の電圧の2分の1(すなわちVs2/2)だけオフセットされている。
したがって、閾値電圧Vrを第2センサ電源Vs2の電圧の2分の1(すなわちVs2/2)に設定する。
例えば、イグニションキー11がオンであり第2センサ電源Vs2が5[V]である場合に閾値電圧Vrは2.5[V]に設定され、イグニションキー11がオフであり第2センサ電源Vs2が3.3[V]である場合に閾値電圧Vrは1.65[V]に設定されてよい。
【0070】
第1コンパレータ58aから出力される第2正弦信号sin2の符号信号Csは、モータ回転軸21の角度位置が0[deg]から180[deg]までの範囲で値「1」を有し、180[deg]から360[deg]までの範囲で値「0」を有する。
第2コンパレータ58bから出力される第2余弦信号cos2の符号信号Ccは、モータ回転軸21の角度位置が0[deg]から90[deg]まで及び270[deg]~360[deg]までの範囲で値「1」を有し、90[deg]から270[deg]までの範囲で値「0」を有する。
【0071】
図7を参照する。正弦カウンタ58c及び余弦カウンタ58dは、内部電源Vpを電源として動作し、第2正弦信号sin2の符号信号Csと第2余弦信号cos2の符号信号Ccに基づいて、第2正弦信号sin2及び第2余弦信号cos2の符号の組み合わせの変化を計数し、正弦カウント値CNTsと余弦カウント値CNTcをそれぞれ算出する。
図8(c)及び
図8(d)を参照する。正弦カウンタ58cは、第2正弦信号sin2の符号が変化する回数を計数した正弦カウント値CNTsを算出し、余弦カウンタ58dは、第2余弦信号cos2の符号が変化する回数を計数した余弦カウント値CNTcを算出する。正弦カウンタ58c及び余弦カウンタ58dは、算出した正弦カウント値CNTsと余弦カウント値CNTcを、例えば不揮発性メモリ(図示せず)に記憶する。
【0072】
具体的には、正弦カウンタ58cは、第2余弦信号cos2の符号信号Ccが値「1」を有する間に、第2正弦信号sin2の符号信号Csの値が「0」から「1」に変化すると、正弦カウント値CNTsを1つ増加させ、第2正弦信号sin2の符号信号Csの値が「1」から「0」に変化すると、正弦カウント値CNTsを1つ減少させる。
また、正弦カウンタ58cは、第2余弦信号cos2の符号信号Ccが値「0」を有する間に、第2正弦信号sin2の符号信号Csの値が「1」から「0」に変化すると、正弦カウント値CNTsを1つ増加させ、第2正弦信号sin2の符号信号Csの値が「0」から「1」に変化すると、正弦カウント値CNTsを1つ減少させる。
【0073】
余弦カウンタ58dは、第2正弦信号sin2の符号信号Csが値「0」を有する間に、第2余弦信号cos2の符号信号Ccの値が「0」から「1」に変化すると、余弦カウント値CNTcを1つ増加させ、第2余弦信号cos2の符号信号Ccの値が「1」から「0」に変化すると、余弦カウント値CNTcを1つ減少させる。
また、余弦カウンタ58dは、第2正弦信号sin2の符号信号Csが値「1」を有する間に、第2余弦信号cos2の符号信号Ccの値が「1」から「0」に変化すると、余弦カウント値CNTcを1つ増加させ、第2余弦信号cos2の符号信号Ccの値が「0」から「1」に変化すると、余弦カウント値CNTcを1つ減少させる。
【0074】
これにより、モータ回転軸21が1回転すると正弦カウント値CNTs及び余弦カウント値CNTcは、回転方向に応じて各々2つ増減する。このため、正弦カウント値CNTs及び余弦カウント値CNTcの和(以下「カウント合計値CNT」と表記することがある)は、
図8(e)に示すように、モータ回転軸21が1回転する度に回転方向に応じて4つ増減する。したがって正弦カウント値CNTs及び余弦カウント値CNTcの組合せやカウント合計値CNTは、4分の1回転単位の回転数を表す。このため正弦カウント値CNTs及び余弦カウント値CNTcの組合せやカウント合計値CNTは、モータ回転軸21の角度位置が、モータ回転軸21の回転範囲を4分割した4象限のいずれに属するかを示す。
なお、本実施形態の正弦カウント値CNTs及び余弦カウント値CNTcは例示であり、本発明の回転数情報は、正弦カウント値CNTs及び余弦カウント値CNTcに限定されない。回転数情報は、nを2以上の自然数としてn分の1回転単位の回転数を表す回転数情報であればよい。
【0075】
図7を参照する。上記のとおり電源管理部50は、イグニションキー11がオフである間の第2センサ電源Vs2の間欠出力周期Tを動的に変更してよい。例えば、イグニションキー11がオフである間にモータ回転軸21が回転した場合、その後にモータ回転軸21がさらに速く回転して、回転数検出部58がモータ回転軸21の回転を正しく検出できなくなるおそれがある。一方で、モータ回転軸21が停止し続けている間は、間欠出力周期Tを長くすることによって消費電力を低減できる。
このため、例えば電源管理部50は、第2正弦信号sin2又は第2余弦信号cos2のいずれか一方の変化を検出した場合に、間欠出力周期Tを短縮してよい。また電源管理部50は、第2正弦信号sin2及び第2余弦信号cos2の不変期間が継続する場合に間欠出力周期Tを延長してよい。
【0076】
なお、
図6及び
図7を参照して説明した電源管理部50の構成例は、MPU60等に電源Vmを供給する第1電源供給部52と、第1センサ33に第1センサ電源Vs1を供給する第2電源供給部53とを備えるが、本発明は、このような構成に限定されない。電源Vmと第1センサ電源Vs1は、イグニションキー11がオンである場合に供給され、イグニションキー11がオフの場合に供給が停止すれば、電源管理部50以外の構成要素から供給されてもよい。
【0077】
次に、
図9を参照してMPU60の機能構成の一例を説明する。MPU60は、角度位置算出部61と、カウント合計部62と、回転数算出部64と、ねじれ角算出部65と、回転角情報算出部66と、診断部67と、アシスト制御部68を備える。
角度位置算出部61、カウント合計部62、回転数算出部64、ねじれ角算出部65、回転角情報算出部66、診断部67、及びアシスト制御部68の機能は、MPU60やコントローラ40が有する記憶装置(例えば不揮発性メモリなど)に格納されたプログラムをMPU60が実行することによって実現される。
回転角情報算出部66は、特許請求の範囲に記載の「回転角算出部」及び「操舵角算出部」の一例である。アシスト制御部68は、特許請求の範囲に記載の「モータ制御部」の一例である。
【0078】
角度位置算出部61は、第1正弦信号sin1及び第1余弦信号cos1を入力し、これらの信号に含まれる誤差(オフセット、振幅差、位相差など)を補償する。
図10(a)は、第1正弦信号sin1及び第1余弦信号cos1の一例を示す。角度位置算出部61は、誤差を補償した後の第1正弦信号sin1及び第1余弦信号cos1に基づいて、モータ回転軸の1回転の角度範囲内における角度位置を表す角度位置情報θ1を算出する(θ1=0~360[deg])。角度位置情報θ1の一例を
図10(b)に示す。
【0079】
例えば角度位置算出部61は、第1正弦信号sin1及び第1余弦信号cos1の和(cos1+sin1)と差(cos1-sin1)とに基づいて、角度位置情報θ1を算出してよい。
同様に、角度位置算出部61は、第2正弦信号sin2及び第2余弦信号cos2を入力し、誤差を補償して、モータ回転軸の1回転の角度範囲内における角度位置を表す角度位置情報θ2を算出する(θ2=0~360[deg])。
【0080】
図9を参照する。カウント合計部62は、MPU60への電源Vmの供給が開始した時点(すなわちイグニションキー11がオフからオンになった時点)で、電源管理部50の正弦カウンタ58c及び余弦カウンタ58dから、それぞれ正弦カウント値CNTs及び余弦カウント値CNTcを読み出す。カウント合計部62は、正弦カウント値CNTs及び余弦カウント値CNTcを加算して、
図8(e)に示すようなカウント合計値CNTを算出する。
【0081】
回転数算出部64は、カウント合計値CNTを、自然数nで除算した商をモータ回転軸の回転数Nrとして算出する。自然数nは、モータ回転軸の1回転当たりのカウント合計値CNTの増減数であり、本実施形態では自然数nは「4」である。回転数Nrの一例を
図10(c)に示す。
図9を参照する。ねじれ角算出部65は、トルクセンサ10が検出した操舵トルクThに基づいて、コラム軸に設けられたトーションバーのねじれ角θtを算出する。
【0082】
回転角情報算出部66は、MPU60への電源Vmの供給が開始した時点(すなわちイグニションキー11がオフからオンになった時点)で、回転数算出部64が算出した回転数Nrと、角度位置算出部61が算出した角度位置情報θ1に基づいて、モータ回転軸の1回転以上のマルチターンの角度範囲における回転角情報θmを算出する。
回転角情報算出部66は、乗算器66a及び加算器66bにより回転角情報θm=(360[deg]×回転数Nr)+角度位置情報θ1を算出する。回転角情報θmの一例を
図10(d)に示す。
【0083】
その後、イグニションキー11がオンである間、回転角情報算出部66は、イグニションキー11がオフからオンになった時点以降の角度位置情報θ1の角度変化を、イグニションキー11がオフからオンになった時点に算出した回転角情報θmに累積して、イグニションキー11がオフからオンになった時点以降の回転角情報θmを算出する。
【0084】
図9を参照する。乗算器66cは、回転角情報θmに減速ギア3のギア比Rgを乗じて、コラム軸の出力軸2oの回転角θoを算出する。加算器66dは、回転角θoにトーションバーの捩れ角θtを加算してコラム軸の入力軸2iの回転角θi(操向ハンドル1の操舵角θs)を算出する。回転角情報算出部66は、回転角θo及び回転角θiの回転角情報を出力する。
上記のとおり、出力軸2oの回転角θoや入力軸2iの回転角θiの回転角情報は、コントローラ40において、コラム軸が端当て状態であるか否かの判定や、操向ハンドル1が切り増し状態であるか切り戻し状態であるかの判定に用いることができる。コントローラ40は、これらの判定結果に基づいて、モータ20により出力軸2oに付与する操舵補助力を制御してもよい。
【0085】
診断部67は、第1正弦信号sin1及び第1余弦信号cos1に基づいて算出した角度位置情報θ1と、第2正弦信号sin2及び第2余弦信号cos2に基づいて算出した角度位置情報θ2とを比較して、第1センサ33又は第2センサ34に生じた異常を判定する。例えば、角度位置情報θ1と角度位置情報θ2との差分が閾値以上である場合に、
第1センサ33又は第2センサ34に異常が生じたと判定する。
また、診断部67は、正弦カウント値CNTsと余弦カウント値CNTcとの差に基づいて、第2センサ34又は回転数検出部58に生じた異常を判定する。例えば、正弦カウント値CNTsと余弦カウント値CNTcとの差が2以上である場合に、第2センサ34又は回転数検出部58に異常が生じたと判定する。
診断部67は、判定結果を示す診断信号Sdをアシスト制御部68に出力する。
【0086】
アシスト制御部68は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクThと車速センサ12で検出された車速Vhとに基づいてモータ20の駆動電流Iを制御する。
図11に、アシスト制御部68の機能構成の一例を示す。トルクセンサ10で検出された操舵トルクTh及び車速センサ12で検出された車速Vhは、電流指令値Iref1を演算する電流指令値演算部71に入力される。電流指令値演算部71は、入力された操舵トルクTh及び車速Vhに基づいてアシストマップ等を用いて、モータ20に供給する電流の制御目標値である電流指令値Iref1を演算する。
【0087】
電流指令値Iref1は加算部72Aを経て電流制限部73に入力され、最大電流を制限された電流指令値Irefmが減算部72Bに入力され、フィードバックされているモータ電流値Imとの偏差ΔI(=Irefm-Im)が演算され、その偏差ΔIが操舵動作の特性改善のためのPI(比例積分)制御部75に入力される。PI制御部75で特性改善された電圧制御指令値VrefがPWM制御部76に入力され、更に駆動部としてのインバータ77を介してモータ20がPWM駆動される。モータ20の電流値Imはモータ電流検出器78で検出され、減算部72Bにフィードバックされる。
【0088】
加算部72Aには補償信号生成部74からの補償信号CMが加算されており、補償信号CMの加算によって操舵システム系の特性補償を行い、収れん性や慣性特性等を改善するようになっている。補償信号生成部74は、セルフアライニングトルク(SAT)74-3と慣性74-2を加算部74-4で加算し、その加算結果に更に収れん性74-1を加算部74-5で加算し、加算部74-5の加算結果を補償信号CMとしている。
図9を参照する。アシスト制御部68は、診断部67から出力された診断信号Sdに基づいて異常の発生を検出した場合に、モータ20の駆動停止や警報出力などの所定の異常対応処理を行う。
【0089】
(実施形態の効果)
(1)実施形態の回転角検出装置は、モータ20のモータ回転軸21の回転に応じた正弦信号及び余弦信号を含んだ第1センサ信号と、モータ回転軸21の回転に応じた正弦信号及び余弦信号を含んだ第2センサ信号とを出力するセンサユニット30と、センサユニット30に電源を供給するとともに第1センサ信号及び第2センサ信号に基づいてモータ回転軸21の回転角を表す回転角情報を算出するコントローラ40と、コントローラ40及びセンサユニット30を接続し、コントローラ40からセンサユニット30へ電源を伝送し、センサユニット30からコントローラ40へ第1センサ信号及び第2センサ信号を伝送するハーネス35と、を備える。
【0090】
センサユニット30は、ハーネス35を介してコントローラ40から供給された第1センサ電源Vs1により駆動されてモータ回転軸21の回転に応じた正弦信号及び余弦信号を出力する第1センサ33と、第1センサ33の出力信号を増幅して第1センサ信号として出力する第1増幅器36と、電源としてハーネス35を介してコントローラ40から供給された第2センサ電源Vs2により駆動されてモータ回転軸21の回転に応じた正弦信号及び余弦信号を出力する第2センサ34と、第2センサ34の出力信号を増幅して第2センサ信号として出力する第2増幅器37と、ハーネス35を介してコントローラ40から供給された第1センサ電源Vs1及び第2センサ電源Vs2の電圧をそれぞれ分圧する第1分圧抵抗Rd11及びRd12並びに第2分圧抵抗Rd21及びRd22と、第1分圧抵抗Rd11及びRd12並びに第2分圧抵抗Rd21及びRd22の接続点からそれぞれ分圧電圧が入力され第1増幅器36及び第2増幅器37にオフセット電圧を付与する第1オフセット電圧出力回路38及び第2オフセット電圧出力回路39と、第2オフセット電圧出力回路39の入力端子とグラウンドとを接続するデカップリングコンデンサC12と、を備える。
コントローラ40は、電源スイッチがオンである場合に第1センサ電源Vs1及び第2センサ電源Vs2として連続的な電力を供給し、電源スイッチがオフである場合に第1センサ電源Vs1の供給を停止するとともに第2センサ電源Vs2として間欠的な電力を供給する電源管理部50を備える。
【0091】
このようなデカップリングコンデンサC12を設けることにより、第2センサ電源Vs2が間欠的に供給される場合に、第2センサ電源Vs2がスイッチングされても、その過渡電流による電源の電圧変動は、分圧抵抗Rd21とデカップリングコンデンサC12により形成されるローパスフィルタによって遮断され、第2センサ信号の直流成分の変動が抑制される。この結果、第2センサ信号の安定性を向上できる。
【0092】
(2)センサユニット30は、第2センサ34と近接する位置において第2センサ電源Vs2の電源ラインとグラウンドとを接続するバイパスコンデンサC23及びC24を備えてもよい。
このようなバイパスコンデンサC23及びC24を設けることにより、第2センサ電源Vs2のスイッチングにより生じた電磁ノイズが、第2センサ34に与える影響を抑制し、この結果、第2センサ信号の安定性を向上できる。
【0093】
(3)コントローラ40は、電源管理部50と近接する位置においてハーネス35の第2センサ電源Vs2の電源ラインとグラウンドとを接続するデカップリングコンデンサC32を備えてもよい。
このようなデカップリングコンデンサC32を設けることにより、第2センサ電源Vs2がスイッチングされたときに発生する電源の電圧変動が、ハーネス35へ進入することを抑制し、ハーネス35により供給される電源を安定化できる。また、ハーネス35から生じるノイズを低減できる。
【0094】
(4)センサユニット30は、第1センサ33と近接する位置において第1センサ電源Vs1の電源ラインとグラウンドとを接続するバイパスコンデンサC21及びC22を備えてもよい。
このようなバイパスコンデンサC22及びC22を設けることにより、第1センサ電源Vs1のスイッチングにより生じた電磁ノイズが、第1センサ33に与える影響を抑制し、この結果、第1センサ信号の安定性を向上できる。
【符号の説明】
【0095】
1…操向ハンドル、2i…コラム軸(入力軸)、2o…コラム軸(出力軸)、3…減速ギア、4A、4B…ユニバーサルジョイント、5…ピニオンラック機構、6…タイロッド、10…トルクセンサ、11…イグニションキー(電源スイッチ)、12…車速センサ、14…バッテリ、20…モータ、21…モータ回転軸、30…センサユニット、31…磁石、32…回路基板、33…第1センサ、34…第2センサ、35…ハーネス、36…第1増幅器、37…第2増幅器、38…第1オフセット電圧出力回路、39…第2オフセット電圧出力回路、40…コントローラ、50…電源管理部、51…レギュレータ、52…第1電源供給部、53…第2電源供給部、54…第3電源供給部、56…電源制御部、58…回転数検出部、58a…第1コンパレータ、58b…第2コンパレータ、58c…正弦カウンタ、58d…余弦カウンタ、60…マイクロプロセッサ、61…角度位置算出部、62…カウント合計部、64…回転数算出部、65…角算出部、66…回転角情報算出部、66a、66c…乗算器、66b、66d…加算器、67…診断部、68…アシスト制御部、C11、C12、C31、C32…デカップリングコンデンサ、C21~C24、Ce1、Ce2…バイパスコンデンサ