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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160818
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】チョーク構造
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/06 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
H01P1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065264
(22)【出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】光島 毅
【テーマコード(参考)】
5J011
【Fターム(参考)】
5J011EA02
(57)【要約】
【課題】導波管2チャンネルロータリージョイントにおいて良好なアイソレーションを確保する構造を実現するとともに前記構造に伴って発生する問題を解決する。
【解決手段】回転導波管部の同軸管23が挿し入れられる固定本体11の中空孔112と第4導波管13との連通部の側に設けられる第1のチョーク部31と、固定本体11の中空孔112と第3導波管12との連通部の側に設けられる第2のチョーク部32と、第1のチョーク部31と第2のチョーク部32との間に介在するとともに同軸管23の内管231を貫通させる内管用貫通孔331を備える仕切部材33と、第2のチョーク部32の内部に収容されるとともに同軸管23の内管231を軸回転自在に支持する軸受部材34と、を有し、仕切部材33の内管用貫通孔331の周囲に、第1のチョーク部31と第2のチョーク部32とを連通させる液抜用貫通孔332が設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導波管および第2導波管を備える回転導波管部と、前記回転導波管部を回転自在に支持する固定本体ならびに第3導波管および第4導波管を備える固定導波管部と、を有する導波管2チャンネルロータリージョイントにおけるチョーク構造であり、
前記回転導波管部の同軸管が挿し入れられる前記固定本体の中空孔と前記第4導波管との連通部の側に設けられる第1のチョーク部と、
前記中空孔と前記第3導波管との連通部の側に設けられる第2のチョーク部と、
前記第1のチョーク部と前記第2のチョーク部との間に介在するとともに前記同軸管の内管を貫通させる内管用貫通孔を備える仕切部材と、
前記第1のチョーク部または前記第2のチョーク部の内部に収容されるとともに前記同軸管の前記内管を軸回転自在に支持する軸受部材と、を有し、
前記仕切部材の前記内管用貫通孔の周囲に、前記第1のチョーク部と前記第2のチョーク部とを連通させる液抜用貫通孔が設けられる、
ことを特徴とするチョーク構造。
【請求項2】
前記軸受部材が収容されることによる波長の変化を吸収して前記第1のチョーク部と前記第2のチョーク部とが同様の電気特性を有するように、前記第1のチョーク部の各部と前記第2のチョーク部の各部との寸法が相互に異なる、
ことを特徴とする請求項1に記載のチョーク構造。
【請求項3】
前記仕切部材の前記液抜用貫通孔が2~4個設けられる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のチョーク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、チョーク構造に関し、例えば衛星通信用アンテナや気象用レーダにおいて導波管を接続する場合に用いられる導波管2チャンネルロータリージョイントに適用して好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば衛星通信用アンテナや気象用レーダに用いられて機器内で導波管を接続するための仕組みとして、円形あるいは矩形断面を有して筒状に延びる中空の中央に区画領域を備え、一方に第1伝播経路と他方に第2伝播経路とが1つの管内に配設される第1導波管と、第1導波管に対して直角方向に延びて接続されて当該直角方向を軸に回転自在に支持され、前記直角の軸心に第1および第2伝播経路へ各々連通してモード変換させる第1および第2伝送線路を同軸線路に備えた同軸管と、を備え、第1導波管の区画領域には、複数の段差が斜めに延びて区画する短絡板と、この短絡板に接続されて第1伝播経路側に連通させる同軸管の第1伝送線路と、第1伝送線路の周囲を囲んで延びて第2伝播経路側に連通させる同軸管の第2伝送線路と、が配設されている、導波管2チャンネルロータリージョイントが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-255200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、2つの信号を別々に伝送する複合同軸構造では、アイソレーションが良好に確保されることが必要とされる。
【0005】
そこでこの発明は、導波管2チャンネルロータリージョイントにおいて良好なアイソレーションを確保する構造を実現することが可能であるとともに前記構造に伴って発生する問題を解決することが可能な、チョーク構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係るチョーク構造は、第1導波管および第2導波管を備える回転導波管部と、前記回転導波管部を回転自在に支持する固定本体ならびに第3導波管および第4導波管を備える固定導波管部と、を有する導波管2チャンネルロータリージョイントにおけるチョーク構造であり、前記回転導波管部の同軸管が挿し入れられる前記固定本体の中空孔と前記第4導波管との連通部の側に設けられる第1のチョーク部と、前記中空孔と前記第3導波管との連通部の側に設けられる第2のチョーク部と、前記第1のチョーク部と前記第2のチョーク部との間に介在するとともに前記同軸管の内管を貫通させる内管用貫通孔を備える仕切部材と、前記第1のチョーク部または前記第2のチョーク部の内部に収容されるとともに前記同軸管の前記内管を軸回転自在に支持する軸受部材と、を有し、前記仕切部材の前記内管用貫通孔の周囲に、前記第1のチョーク部と前記第2のチョーク部とを連通させる液抜用貫通孔が設けられる、ことを特徴とする。
【0007】
この発明に係るチョーク構造は、前記軸受部材が収容されることによる波長の変化を吸収して前記第1のチョーク部と前記第2のチョーク部とが同様の電気特性を有するように、前記第1のチョーク部の各部と前記第2のチョーク部の各部との寸法が相互に異なる、ようにしてもよい。
【0008】
この発明に係るチョーク構造は、前記仕切部材の前記液抜用貫通孔が2~4個設けられる、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るチョーク構造によれば、第1のチョーク部と第2のチョーク部との2つのチョーク部を有するようにしているので、導波管2チャンネルロータリージョイントにおいて十分なアイソレーションを確実に確保する構造を実現することが可能となる。
【0010】
この発明に係るチョーク構造によれば、また、第1のチョーク部と第2のチョーク部との間に介在する仕切部材に第1のチョーク部と第2のチョーク部とを連通させる液抜用貫通孔が設けられるようにしているので、第2のチョーク部内へと入り込んだ洗浄液を外部へと排出することができ、2つのチョーク部,仕切部材,および軸受部材を有する構造に伴って発生する問題を解決することが可能となる。
【0011】
この発明に係るチョーク構造は、軸受部材が収容されることによる波長の変化を吸収して第1のチョーク部と第2のチョーク部とが同様の電気特性を有するように、第1のチョーク部の各部と第2のチョーク部の各部との寸法を相互に異ならせるようにした場合には、同一の周波数帯におけるチャンネル間のアイソレーションを高めることが可能となる。
【0012】
この発明に係るチョーク構造は、仕切部材の液抜用貫通孔が複数個設けられるようにした場合には、第2のチョーク部内へと入り込んだ洗浄液を一層容易に且つ適切に外部へと排出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施の形態に係るチョーク構造を有する、実施の形態における導波管2チャンネルロータリージョイント(特に、固定導波管部)の概略内部構造を示す縦断面図である。
図2図1の導波管2チャンネルロータリージョイントのうちのチョーク構造の拡大縦断面図である。
図3】第2のチョーク部内に洗浄液が残留する状態を説明する固定導波管部の縦断面図である(仕切部材に液抜用貫通孔が設けられない場合)。
図4図1の導波管2チャンネルロータリージョイントのチョーク構造における仕切部材の構造を示す斜視図である。
図5】第2のチョーク部内の洗浄液の外部への排出を説明する固定導波管部の縦断面図である。
図6】検証例でのシミュレーションで用いられた導波管2チャンネルロータリージョイント1のモデルであり、仕切部材に液抜用貫通孔が設けられない場合のシミュレーション用モデルである。
図7】検証例でのシミュレーションで用いられた導波管2チャンネルロータリージョイント1のモデルであり、仕切部材に液抜用貫通孔が2個設けられる場合のシミュレーション用モデルの例である。
図8】仕切部材の液抜用貫通孔の有無および液抜用貫通孔の形様ケース別のSパラメータS11(リターンロス)の比較を示すグラフである。
図9】仕切部材の液抜用貫通孔の有無および液抜用貫通孔の形様ケース別のSパラメータS33(リターンロス)の比較を示すグラフである。
図10】仕切部材の液抜用貫通孔の有無および液抜用貫通孔の形様ケース別のSパラメータS21(インサーションロス)の比較を示すグラフである。
図11】仕切部材の液抜用貫通孔の有無および液抜用貫通孔の形様ケース別のSパラメータS43(インサーションロス)の比較を示すグラフである。
図12】仕切部材の液抜用貫通孔の有無および液抜用貫通孔の形様ケース別のSパラメータS13(アイソレーション)の比較を示すグラフである。
図13】仕切部材の液抜用貫通孔の有無および液抜用貫通孔の形様ケース別のSパラメータS14(アイソレーション)の比較を示すグラフである。
図14】仕切部材の液抜用貫通孔の有無および液抜用貫通孔の形様ケース別のSパラメータS23(アイソレーション)の比較を示すグラフである。
図15】仕切部材の液抜用貫通孔の有無および液抜用貫通孔の形様ケース別のSパラメータS24(アイソレーション)の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。以下の説明では、図中に示すように、導波管2チャンネルロータリージョイント1に対して相互に直交する縦軸および横軸を定義し、また、縦軸方向に沿わせて上および下を対応させるとともに横軸方向に沿わせて右および左を対応させる。
【0015】
図1は、この発明の実施の形態に係るチョーク構造30を有する、実施の形態における導波管2チャンネルロータリージョイント1(特に、固定導波管部10)の概略内部構造を示す縦断面図である。図2は、導波管2チャンネルロータリージョイント1のうちのチョーク構造30の拡大縦断面図である。
【0016】
この導波管2チャンネルロータリージョイント1は、矩形断面を有する中空の矩形導波管の伝送基本モードであるTEモード(Transverse Electric mode)から回転可能な同軸線路のTEMモード(Transverse Electromagnetic mode)へとモード変換する機能を備え、主として、例えば気象レーダの回転台に固定されて設置される固定導波管部10と、この固定導波管部10の上部に回転自在に支持される回転導波管部と、を有する。
【0017】
ここで、この発明は固定導波管部10に関するものであり、また、回転導波管部の構造は、固定導波管部10へと挿し入れられる同軸管23を有するものであれば、特定の態様には限定されないので、回転導波管部の構造についてはここでは詳細の説明を省略する。
【0018】
回転導波管部は、概略としては例えば、固定導波管部10の上部に回転自在に支持される回転本体に固定されて垂直偏波(CH2)を出力するポートである第1導波管21と、前記回転本体に固定されて水平偏波(CH1)を出力するポートである第2導波管22と、第1導波管21へと垂直偏波(CH2)を伝送するとともに第2導波管22へと水平偏波(CH1)を伝送する同軸管23と、を有するものとして構成されることが考えられ、このような回転導波管部の具体的な構造として、例えば特開2013-255200号公報に開示されている構造(尚、背景技術として開示されている構造と発明を実施するための形態として開示されている構造とを含む)が採用され得る。
【0019】
固定導波管部10は、例えば気象レーダの回転台に固定的に設置されるとともに回転導波管部を回転自在に支持する固定本体11と、この固定本体11内に配設される同軸管23へと前記回転台から伝送される垂直偏波(CH2)を入力するポートである第3導波管12と、水平偏波(CH1)を入力するポートである第4導波管13と、を有する。
【0020】
固定本体11は、上端において開口(符号111)して形成されて、回転導波管部から下向きに延出して上下方向に沿って配設される同軸管23を収容するとともに、第3導波管12および第4導波管13と連通する中空孔112を有する。なお、固定本体11は、上端寄りの位置にベアリングなどの回転部材(図示していない)が装着されて、この回転部材を介して回転導波管部を回転自在に支持する(例えば、上記の特開2013-255
200号公報に開示されている構造を参照)。
【0021】
第1乃至第4導波管21,22,12,13は、それぞれ、矩形断面を有する中空の矩形導波管の伝送基本モードであるTEモードの導波管であり、固定本体11の中空孔112内へと延びる回転可能な同軸線路のTEMモードの同軸管23と連通する。
【0022】
同軸管23は、2つの偏波を別々に伝送する複合同軸構造を備え、回転可能な同軸線路のTEMモードによる同軸管であって2つの伝送線路が形成されている2チャンネルの同軸管であり、固定本体11の中空孔112内に収容される。
【0023】
同軸管23は、棒状の中心導体24の周囲を覆うように細長く円筒状に延びる長尺の内管231と、この内管231の上端部分の外側を覆う円筒状の短尺の外管232と、を有する。なお、図2図3,および図5では同軸管23および中心導体24を図示していない。
【0024】
同軸管23は、また、中心導体24と内管231との間に形成されて垂直偏波(CH2)を伝送する第1伝送線路233と、内管231と外管232との間に形成されて水平偏波(CH1)を伝送する第2伝送線路234とを備える。
【0025】
同軸管23には、第1伝送線路233の上端と回転導波管部の第1導波管21とが連通するとともに第1伝送線路233の下端と第3導波管12とが連通し、また、第2伝送線路234の上端と回転導波管部の第2導波管22とが連通するとともに第2伝送線路234の下端と第4導波管13とが固定本体11の中空孔112を介して連通する。すなわち、第1導波管21と第3導波管12とが同軸管23の内管231内(即ち、第1伝送線路233)を介して連通し、第2導波管22と第4導波管13とが同軸管23の外管232内(即ち、第2伝送線路234)を介して連通する。
【0026】
ここで、第3導波管12から入力されて伝送される垂直偏波(CH2)と第4導波管13から入力されて伝送される水平偏波(CH1)との間のアイソレーション、つまりチャンネル間のアイソレーションを十分に確保するため、同軸管23と第3導波管12との連通部と、同軸管23と第4導波管13との連通部との間に、チョーク構造30が設けられる。
【0027】
チョーク構造30は、チャンネル間の十分なアイソレーションを確実に確保するため、固定本体11の中空孔112と第4導波管13との連通部(「第1の連通部131」と呼ぶ)の側(即ち、上側)に設けられる第1のチョーク部31と、固定本体11の中空孔112と第3導波管12との連通部(「第2の連通部121」と呼ぶ)の側(即ち、下側)に設けられる第2のチョーク部32との2つのチョーク部を有する。第1のチョーク部31と第2のチョーク部32とは、第1の連通部131と第2の連通部121との間に、固定本体11の中空孔112と連接する中空空間として設けられる。
【0028】
なお、成型や組み立てなどの都合のため、固定導波管部10は複数の部片が組み合わされて構成され、チョーク構造30に関係して、第1のチョーク部31が設けられる側と、第2のチョーク部32が設けられる側とは、各々別個の部片として形成される(図1図3,および図5における符号BSは部片どうしの接合面を表す)。
【0029】
実施の形態に係るチョーク構造30は、第1導波管21および第2導波管22を備える回転導波管部と、前記回転導波管部を回転自在に支持する固定本体11ならびに第3導波管12および第4導波管13を備える固定導波管部10と、を有する導波管2チャンネルロータリージョイント1におけるチョーク構造であり、前記回転導波管部の同軸管23が
挿し入れられる固定本体11の中空孔112と第4導波管13との連通部の側に設けられる第1のチョーク部31と、固定本体11の中空孔112と第3導波管12との連通部の側に設けられる第2のチョーク部32と、第1のチョーク部31と第2のチョーク部32との間に介在するとともに同軸管23の内管231を貫通させる内管用貫通孔331を備える仕切部材33と、第2のチョーク部32の内部に収容されるとともに同軸管23の内管231を軸回転自在に支持する軸受部材34と、を有し、仕切部材33の内管用貫通孔331の周囲に、第1のチョーク部31と第2のチョーク部32とを連通させる液抜用貫通孔332が設けられる、ようにしている。
【0030】
第1のチョーク部31は第1のチョーク部空間311と第1のチョーク溝312とを有する中空空間として設けられ、第2のチョーク部32は第2のチョーク部空間321と第2のチョーク溝322とを有する中空空間として設けられる。
【0031】
固定本体11内の第1の連通部131の側に、平面視において円形で所定高さの中空空間として、言い換えると円柱状の中空空間として、第1のチョーク部空間311が形成される。
【0032】
第1のチョーク部空間311の上面/天面の周縁部から上向きに凹む、したがって下面が開口している環状の溝として第1のチョーク溝312が形成される。
【0033】
固定本体11内の第2の連通部121の側に、平面視において円形で所定高さの中空空間として、言い換えると円柱状の中空空間として、第2のチョーク部空間321が形成される。
【0034】
第2のチョーク部空間321の下面/底面の周縁部から下向きに凹む、したがって上面が開口している環状の溝として第2のチョーク溝322が形成される。
【0035】
軸受部材34は、同軸管23の内管231を、前記内管231が軸回転自在であるように支持する部材である。軸受部材34は、円盤状をベースとして、同軸管23の内管231を貫通させるための貫通孔341を平面視における中心部に有するとともに下面/底面の周縁部から下向きに凸む環状の凸部を有する。
【0036】
軸受部材34は、下向きの環状の凸部が第2のチョーク溝322へと入り込ませられた状態で、第2のチョーク部32内に収容される。
【0037】
軸受部材34の材質は、特定の種類には限定されないものの、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)が挙げられる。
【0038】
ここで、第2のチョーク部32内に軸受部材34が収容されることにより、軸受部材34を構成する材料と固定導波管部10を構成する金属材料との誘電率が相互に異なることに起因して、第2のチョーク部32では波長の変化が生じる。例えば、固定導波管部10を構成する金属材料の誘電率よりも高い誘電率の材料(具体的には例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))によって軸受部材34が形成される場合は、第2のチョーク部32内に軸受部材34が収容されることにより、第2のチョーク部32では波長短縮が生じる。
【0039】
そこで、同一の周波数帯におけるチャンネル間のアイソレーションを良好に確保するため、第1のチョーク部31と第2のチョーク部32とは、各々の大きさ(つまり、チョーク部空間311,321やチョーク溝312,322の各部の寸法)が相互に異なる中空空間として設けられる。すなわち、第1のチョーク部31と第2のチョーク部32との各
々のチョーク構造の寸法は、軸受部材34が収容されることによる波長の変化を吸収して第1のチョーク部31と第2のチョーク部32とが同様の電気特性を有するようにして、同一の周波数帯におけるチャンネル間のアイソレーションが高まるように、相互に調節されて設定される。
【0040】
仕切部材33は、第1のチョーク部31と第2のチョーク部32との間に介在し、第1のチョーク部空間311と第2のチョーク部空間321とを仕切って区画する。
【0041】
仕切部材33は、円盤状をベースとして、同軸管23の内管231を貫通させるための内管用貫通孔331を平面視における中心部に有する。
【0042】
ここで、固定導波管部10の組み立ての際には、複数の部片が組み合わされて部片どうしの接合面BSに対してロウ付けが行われて接合され、気密性が確保されるようにしている。そして、ロウ付け後のフラックスを除去するためには、組み立て後の固定導波管部10の機械構造が複雑であるので、例えばアルコールを含ませた脱脂綿とピンセットとを用いて拭き取ることは実質的に不可能であり、組み立て後の固定導波管部10を所定の洗浄液に浸漬させて溶解させる必要がある。
【0043】
洗浄液に浸漬させてフラックスを溶解させる場合には、フラックスが高温の状態で洗浄液に浸漬しなければ溶解しないため、組み立て後の固定導波管部10を高温状態で洗浄液に浸漬させることになる。この場合、洗浄液に浸漬させた際に組み立て後の固定導波管部10の温度が急激に下がるため、固定本体11の中空孔112へと浸入した洗浄液が軸受部材34と周囲(具体的には、第2のチョーク部32)の金属材料との境目から第2のチョーク部32へと入り込み、一方で、所定時間の浸漬後に組み立て後の固定導波管部10を洗浄液から取り出しても軸受部材34と周囲の金属材料との境目から洗浄液は排出されず、第2のチョーク部32内に洗浄液が残留する、という問題が発生する(図3参照)。
【0044】
そこで、仕切部材33に、内管用貫通孔331の周囲の、平面視において(言い換えると、上下方向において)第2のチョーク部32と少なくとも一部が重なる位置に、2個の液抜用貫通孔332が設けられる(図1図2図4参照)。なお、仕切部材33に設けられる液抜用貫通孔332の個数は、2個に限定されるものではなく、1個でもよく、また、3個以上でもよい。
【0045】
液抜用貫通孔332は、第1のチョーク部31と第2のチョーク部32とを連通させるように設けられ、延いては、固定本体11の中空孔112と第2のチョーク部32とを連通させるように設けられる。
【0046】
これにより、第2のチョーク部32内へと入り込んだ洗浄液は、仕切部材33の液抜用貫通孔332,第1のチョーク部31,および固定本体11の中空孔112を通過して固定導波管部10の上端の開口部111から外部へと排出される(図5参照)。
【0047】
第2のチョーク部32内へと入り込んだ洗浄液が一層容易に且つ適切に外部へと排出されるようにするためには、複数の液抜用貫通孔332が仕切部材33に設けられることが好ましく、さらに、ロータリージョイントとしての電気特性に与える影響を適当な程度に制御することを考慮すると、2~4個程度の液抜用貫通孔332が仕切部材33に設けられることが好ましい。
【0048】
実施の形態に係るチョーク構造30によれば、第1のチョーク部31と第2のチョーク部32との2つのチョーク部を有するようにしているので、導波管2チャンネルロータリージョイントにおいて十分なアイソレーションを確実に確保する構造を実現することが可
能となる。
【0049】
実施の形態に係るチョーク構造30によれば、また、第1のチョーク部31と第2のチョーク部32との間に介在する仕切部材33に第1のチョーク部31と第2のチョーク部32とを連通させる液抜用貫通孔332が設けられるようにしているので、第2のチョーク部32内へと入り込んだ洗浄液を固定導波管部10の外部へと排出することができ、2つのチョーク部31・32,仕切部材33,および軸受部材34を有する構造に伴って発生する問題を解決することが可能となる。
【0050】
また、実施の形態に係るチョーク構造30によれば、軸受部材34が収容されることによる波長の変化を吸収して第1のチョーク部31と第2のチョーク部32とが同様の電気特性を有するように、第1のチョーク部31の各部と第2のチョーク部32の各部との寸法を相互に異ならせているので、同一の周波数帯におけるチャンネル間のアイソレーションを高めることが可能となる。
【0051】
また、実施の形態に係るチョーク構造30によれば、仕切部材33の液抜用貫通孔332が複数個設けられるようにしているので、第2のチョーク部32内へと入り込んだ洗浄液を一層容易に且つ適切に外部へと排出することが可能となる。
【0052】
この発明に係るチョーク構造の検証例を図8乃至図15を用いて下記に説明する。
【0053】
この検証例では、導波管2チャンネルロータリージョイント1のモデルを用いてシミュレーションを行ってSパラメータを求めることにより、仕切部材33に液抜用貫通孔332が設けられることによるロータリージョイントとしての電気特性への影響を把握・検証した。
【0054】
この検証例でのシミュレーションで用いられた導波管2チャンネルロータリージョイント1のモデルを図6および図7に示す。図6は、仕切部材33に液抜用貫通孔332が設けられない場合のシミュレーション用モデルである。図7は、仕切部材33に液抜用貫通孔332が設けられる場合のシミュレーション用モデルの例であり、具体的には液抜用貫通孔332が2個設けられる場合のシミュレーション用モデルの例である。
【0055】
この検証例では、シミュレーションにおけるポート1乃至4と第1乃至第4導波管21,22,12,13とがそれぞれ下記のように対応づけられた。
ポート1:第2導波管22(水平偏波(CH1)を出力するポート)
ポート2:第4導波管13(水平偏波(CH1)を入力するポート)
ポート3:第1導波管21(垂直偏波(CH2)を出力するポート)
ポート4:第3導波管12(垂直偏波(CH2)を入力するポート)
【0056】
この検証例では、仕切部材33に液抜用貫通孔332が設けられることによるロータリージョイントとしての電気特性への影響を把握・検証するため、液抜用貫通孔332が設けられない場合と液抜用貫通孔332が設けられる場合とのそれぞれについてのSパラメータが比較された。また、液抜用貫通孔332の個数や径の違いによる影響を把握・検証するため、液抜用貫通孔332の設けられ方に関して、径φ2mm,φ3mm,φ4mm,φ5mm,φ6mm,およびφ7mmで2個、ならびに、径φ7mmで4個のケース(「形様ケース」と呼ぶ)がそれぞれ設定された。
【0057】
仕切部材33の液抜用貫通孔332の有無および液抜用貫通孔332の形様ケース別のSパラメータS11(即ち、リターンロス)の比較の結果を図8に示し、また、SパラメータS33(即ち、リターンロス)の比較の結果を図9に示す。
【0058】
図8および図9に示す結果から、液抜用貫通孔332の有無によっては、リターンロスは周波数別の挙動や程度が大きくは変化しないことが確認された。図8に示す結果や図9に示す結果から、また、液抜用貫通孔332の個数や径の違いによっては、少なくともこの検証例で設定された形様ケースの範囲では、リターンロスは周波数別の挙動や程度が大きくは変化しないことが確認された。なお、いずれの場合も、ここでのシミュレーションにおける仕様上の中心周波数9.5GHzを含む所定の周波数帯域(凡そ9~10GHz)でリターンロスの規格を満足している。
【0059】
仕切部材33の液抜用貫通孔332の有無および液抜用貫通孔332の形様ケース別のSパラメータS21(即ち、インサーションロス)の比較の結果を図10に示し、また、SパラメータS43(即ち、インサーションロス)の比較の結果を図11に示す。なお、SパラメータS21,S43の比較については、液抜用貫通孔332の設けられ方に関する径φ7mmで4個の形様ケースは設定されていない。
【0060】
図10および図11に示す結果から、液抜用貫通孔332の有無によっては、インサーションロスは周波数別の挙動や程度が大きくは変化しないことが確認された。図10に示す結果や図11に示す結果から、また、液抜用貫通孔332の個数や径の違いによっては、少なくともこの検証例で設定された形様ケースの範囲では、インサーションロスは周波数別の挙動や程度が大きくは変化しないことが確認された。なお、いずれの場合も、ここでのシミュレーションにおける仕様上の中心周波数9.5GHzを含む所定の周波数帯域(凡そ9~10GHz)でインサーションロスの規格を満足している。
【0061】
仕切部材33の液抜用貫通孔332の有無および液抜用貫通孔332の形様ケース別のSパラメータS13(即ち、アイソレーション)の比較の結果を図12に示し、SパラメータS14(即ち、アイソレーション)の比較の結果を図13に示し、SパラメータS23(即ち、アイソレーション)の比較の結果を図14に示し、さらに、SパラメータS24(即ち、アイソレーション)の比較の結果を図15に示す。
【0062】
図12乃至図15に示す結果から、少なくともこの検証例で設定された形様ケースの範囲では、いずれの場合も、アイソレーションの規格を満足することが確認された。
【0063】
上記の検証例の結果から、第1のチョーク部31と第2のチョーク部32との間に介在して第1のチョーク部空間311と第2のチョーク部空間321とを仕切って区画する仕切部材33に内管用貫通孔331が設けられるようにしても、ロータリージョイントとしての電気特性に大きな影響はなく、また、アイソレーションの規格を満足する性能が発揮され得ることが確認された。
【0064】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0065】
具体的には、上記の実施の形態ではこの発明に係るチョーク構造が図1に概略構造を示す導波管2チャンネルロータリージョイント1に適用されるようにしているが、この発明に係るチョーク構造が適用され得る導波管2チャンネルロータリージョイントの構造は図1に概略構造を示す導波管2チャンネルロータリージョイント1に限定されるものではなく、この発明に係るチョーク構造が他の構造の導波管2チャンネルロータリージョイントに適用されるようにしてもよい。
【0066】
また、上記の実施の形態では軸受部材34が第2のチョーク部32内に収容されるよう
にしているが、軸受部材34が第1のチョーク部31内に収容されるようにしてもよい。この場合には、第1のチョーク部31内に洗浄液が残留することになり、第1のチョーク部31内へと入り込んだ洗浄液は、仕切部材33の液抜用貫通孔332,第2のチョーク部32,および固定本体11の中空孔112を通過して固定導波管部10の上端の開口部111から外部へと排出されるようになる。
【符号の説明】
【0067】
1 導波管2チャンネルロータリージョイント
10 固定導波管部
11 固定本体
111 開口部
112 中空孔
12 第3導波管
121 第2の連通部
13 第4導波管
131 第1の連通部
21 第1導波管
22 第2導波管
23 同軸管
231 内管
232 外管
233 第1伝送線路
234 第2伝送線路
24 中心導体
30 チョーク構造
31 第1のチョーク部
311 第1のチョーク部空間
312 第1のチョーク溝
32 第2のチョーク部
321 第2のチョーク部空間
322 第2のチョーク溝
33 仕切部材
331 内管用貫通孔
332 液抜用貫通孔
34 軸受部材
341 貫通孔
BS 接合面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15