(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160823
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】飛行体
(51)【国際特許分類】
B64C 27/20 20060101AFI20221013BHJP
B64C 27/24 20060101ALI20221013BHJP
B64D 45/00 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
B64C27/20
B64C27/24
B64D45/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065276
(22)【出願日】2021-04-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年2月5日、Applied Sciences(Volume 11、Issue4)のウェブサイト(https://www.mdpi.com/2076-3417/11/4/1462)に掲載
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】下ノ村 和弘
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 遼
(57)【要約】
【課題】安定性の高い飛行が可能な飛行体を提供する
【解決手段】飛行体1は、本体10と、第1方向の軸心回りに回転して揚力を発生させるように本体に設けられた第1の回転翼11と、第1方向に交差する第1平面における全方位への推進力を発生可能に本体に設けられた、第1の回転翼とは異なる全方位推進ユニット2と、全方位推進ユニットを制御するコントローラ30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
第1方向の軸心回りに回転して揚力を発生させるように前記本体に設けられた第1の回転翼と、
前記第1方向に交差する第1平面における全方位への推進力を発生可能に前記本体に設けられた、前記第1の回転翼とは異なる全方位推進ユニットと、
前記全方位推進ユニットを制御するコントローラと、を備える
飛行体。
【請求項2】
前記全方位推進ユニットは、前記推進力を発生させる、前記第1の回転翼とは異なる第2の回転翼を有し、
前記コントローラによる前記全方位推進ユニットの制御は、前記推進力の向きを前記第1平面における指定された向きとするように前記第2の回転翼の出力又は向きを制御することを含む
請求項1に記載の飛行体。
【請求項3】
前記全方位推進ユニットは、それぞれ、異なる向きに推進力を発生させる複数の前記第2の回転翼を有し、
前記出力を制御することは、前記指定された向きに応じて、前記複数の前記第2の回転翼それぞれの出力を調整することを含む
請求項2に記載の飛行体。
【請求項4】
前記第2の回転翼は垂直回転翼であり、
前記全方位推進ユニットは、3つ以上の前記第2の回転翼を有する
請求項3に記載の飛行体。
【請求項5】
前記第2の回転翼は、風出する空気流が、前記第1の回転翼、又は、前記第1の回転翼が風出する空気流に重ならない位置に設置されている
請求項3又は4に記載の飛行体。
【請求項6】
前記第2の回転翼は、飛行体重心からの距離が前記第1の回転翼の前記飛行体重心からの距離よりも長く、前記第2の回転翼の風出方向が前記飛行体重心から離れる方向を向くように設置されている
請求項5に記載の飛行体。
【請求項7】
前記複数の前記第2の回転翼は、前記第1平面において、飛行体重心を中心とした円周上に等間隔に配置されている
請求項3~6のいずれか一項に記載の飛行体。
【請求項8】
前記複数の前記第2の回転翼は、それぞれの回転の軸心方向が飛行体重心に向くように配置されている
請求項3~7のいずれか一項に記載の飛行体。
【請求項9】
前記複数の前記第2の回転翼それぞれは、飛行体重心からの距離が同じとなるように配置されている
請求項3~8のいずれか一項に記載の飛行体。
【請求項10】
前記コントローラは、作業用の方向の指定と、移動用の方向の指定と、を受け付けて、これらを合成した推力を発生させるように構成されている
請求項2~9のいずれか一項に記載の飛行体。
【請求項11】
前記第2の回転翼はダクテッドファンである
請求項2~10のいずれか一項に記載の飛行体。
【請求項12】
前記推進力の方向の移動距離を得るために、前記推進力の方向の加速度を検出する加速度センサをさらに備える
請求項1~11のいずれか一項に記載の飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
ドローンとも呼ばれる、マルチロータ型の飛行体がある。この飛行体は、揚力発生用の複数の回転翼を有する。この飛行体は、高所での作業などの作業用途に用いられることがある。
【0003】
この飛行体の機体は、回転翼が軸心回りに回転することで軸心方向に発生する揚力によって浮上する。また、この飛行体は、機体の傾きと回転翼の回転速度のバランスとを制御することで、軸心方向に交差する平面内(例えば水平面内)の指定された方向に移動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
この飛行体に対して、飛行の安定性が求められる場合がある。例えば作業用途で用いられる場合、作業のための位置の精度が要求される場合がある。しかしながら、この飛行体は、水平面内の移動時には機体を傾ける必要があるため、飛行の安定性に欠ける。そのため、作業に必要な姿勢に保つことが困難となる場合がある。本開示は、安定性の高い飛行が可能な飛行体を提供することを目的としたものである。
【0006】
本開示のある側面に係る飛行体は、本体と、第1方向の軸心回りに回転して揚力を発生させるように前記本体に設けられた第1の回転翼と、第1方向に交差する第1平面における全方位への推進力を発生可能に本体に設けられた、第1の回転翼とは異なる全方位推進ユニットと、全方位推進ユニットを制御するコントローラと、を備える。
【0007】
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る飛行体の平面概略図である。
【
図2】
図2は、飛行体から外した状態での全方位推進ユニットの平面概略図である。
【
図4】
図4は、全方位推進ユニットの第2の回転翼の他の例を表した概略図である。
【
図5】
図5は、全方位推進ユニットの推進力を説明するための図である。
【
図6】
図6は、飛行体のコントローラの制御ブロック図である。
【
図7】
図7は、コントローラにおける状態判定の流れを表した図である。
【
図8】
図8は、飛行体の制御の流れを表した図である。
【
図9】
図9は、飛行体の移動制御の流れを表した図である。
【
図10】
図10は、発明者らによる第1の検証実験の結果を表した図である。
【
図11】
図11は、発明者らによる第2の検証実験の結果を表した図である。
【
図12】
図12は、発明者らによる第3の検証実験の結果を表した図である。
【
図13】
図13は、全方位推進ユニットの変形例を表した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<1.飛行体の概要>
【0010】
(1)実施の形態に係る飛行体は、本体と、第1方向の軸心回りに回転して揚力を発生させるように前記本体に設けられた第1の回転翼と、第1方向に交差する第1平面における全方位への推進力を発生可能に本体に設けられた、第1の回転翼とは異なる全方位推進ユニットと、全方位推進ユニットを制御するコントローラと、を備える。
【0011】
飛行体が全方位推進ユニットを有し、コントローラが全方位推進ユニットを制御することによって、飛行体の姿勢を維持したまま飛行させることが可能になる。これにより、安定した飛行が可能になる。
【0012】
(2)好ましくは、全方位推進ユニットは、推進力を発生させる、第1の回転翼とは異なる第2の回転翼を有し、コントローラによる全方位推進ユニットの制御は、推進力の向きを第1平面における指定された向きとするように第2の回転翼の出力又は向きを制御することを含む。これにより、本体に対して指定された向きの推進力を与えることができる。その結果、飛行体を、姿勢を維持したまま第1平面における指定された向きに移動させることができる。
【0013】
(3)好ましくは、全方位推進ユニットは、それぞれ、異なる向きに推進力を発生させる複数の第2の回転翼を有し、出力を制御することは、指定された向きに応じて、複数の第2の回転翼それぞれの出力を調整することを含む。これにより、複数の第2の回転翼それぞれの出力のバランスによって、本体に対して平面方向のうちの指定された方向の推進力を与えることができる。
【0014】
(4)好ましくは、第2の回転翼は垂直回転翼であり、全方位推進ユニットは、3つ以上の第2の回転翼を有する第2の回転翼は垂直回転翼であり、全方位推進ユニットは、3つ以上の第2の回転翼を有する。これにより、本体に指定された向きの推進力を与えるための、3つ以上の第2の回転翼それぞれの必要な出力の算出が容易になる。
【0015】
(5)好ましくは、第2の回転翼は、風出する空気流が、第1の回転翼、又は、第1の回転翼が風出する空気流に重ならない位置に設置されている。第2の回転翼の風出する空気流が、第1の回転翼、又は、第1の回転翼が風出する空気流に重ならないことは、第2の回転翼の風出方向の先に、第1の回転翼も、第1の回転翼が風出する空気流も位置しないことを指す。これにより、第2の回転翼から風出された空気流が、第1の回転翼にも、第1の回転翼が風出する空気流にも接触しない。そのため、第1の回転翼が発生させる揚力への影響を抑えることができる。
【0016】
(6)好ましくは、第2の回転翼は、飛行体重心からの距離が第1の回転翼の飛行体重心からの距離よりも長く、風出方向が飛行体重心から遠くなる向きに設置されている。これにより、第2の回転翼から吹き出された空気が第1の回転翼に当たらないようにできる。
【0017】
(7)好ましくは、複数の第2の回転翼は、第1平面において、飛行体重心を中心とした円周上に等間隔に配置されている。これにより、本体に指定された向きの推進力を与えるための、複数の第2の回転翼それぞれの必要な出力の算出が容易になる。
【0018】
(8)好ましくは、複数の第2の回転翼は、それぞれの回転の軸心方向が飛行体重心に向くように配置されている。これにより、本体に指定された向きの推進力を与えるための、複数の第2の回転翼それぞれの必要な出力の算出が容易になる。
【0019】
(9)好ましくは、複数の第2の回転翼は、それぞれの飛行体重心からの距離が同じとなるように配置されている。これにより、本体に指定された向きの推進力を与えるための、複数の第2の回転翼それぞれの必要な出力の算出が容易になる。
【0020】
(10)好ましくは、コントローラは、作業用の方向の指定と、移動用の方向の指定と、を受け付けて、これらを合成した推力を発生させるように構成されている。これにより、飛行体を作業させながら移動させることができる。
【0021】
(11)好ましくは、第2の回転翼はダクテッドファンである。ダクテッドファンは、円筒形のダクトの中にプロペラ状の回転翼が配置されたものである。ダクテッドファンは、ダクトに覆われているために衝撃に強い。そのため、第2の回転翼を第1の回転翼よりも外周側に配置しても接触に強くなる。また、ダクテッドファンは比較的出力が強いため、小型のものを用いることができる。その結果、飛行体全体の小型化が図られる。
【0022】
(12)好ましくは、飛行体は、推進力の方向の移動距離を得るために、推進力の方向の加速度を検出する加速度センサをさらに備える。移動距離は、移動開始からの加速度の積分値で求められる。飛行体が全方位推進ユニットを有することによって姿勢を維持して飛行が可能であるために、加速度センサでの検出結果を用いて移動距離を高精度で算出することが可能になる。
【0023】
<2.飛行体の例>
【0024】
本実施の形態に係る飛行体1は、ドローンとも呼ばれる、マルチロータ型の飛行体である。詳しくは、
図1及び
図3の上の図を参照して、飛行体1は、第1の回転翼11を有する。第1の回転翼11は、回転軸心11A回りに回転することによって揚力を発生させる。
図1及び
図3のようにX軸、Y軸、Z軸を設定して、それぞれの軸の方向をX方向、Y方向、及びZ方向とし、回転軸心11Aの方向をZ方向(第1方向)とする。
【0025】
第1の回転翼11は、発生させた揚力によって、飛行体1に対してZ方向の推進力Lを与える。第1の回転翼11は、飛行体1に対して、Z方向を垂直とし、風入側の面を上向き、風出側の面を下向きとして設けられている。すなわち、第1の回転翼11は、風出方向W1が下向きとなるように飛行体1に対して設けられている。そのため、に与えられる推進力Lは上向きの力である。飛行体1は、推進力Lによって浮上する。
図1は、飛行体1の平面図であり、
図3の上の図は飛行体1の正面図である。
【0026】
飛行体1は、本体10と、全方位推進ユニット2と、を有する。本体10は、支持部13を有している。支持部13は、本体10から、本体10の重心C1から離れる方向に延び、その先端に第1の回転翼11を支持している。本体10の重心C1は、飛行体1の重心と一致している。つまり、飛行体1の重心C1と言える。
【0027】
本体10は、複数の支持部13を有し、各支持部13が、第1の回転翼11を支持している。つまり、複数の第1の回転翼11が支持部13により支持され、支持部13を介して本体10に設けられている。複数の第1の回転翼11は、すべて、風出方向W1が下向きとなるように本体10に設けられている。
【0028】
好ましくは、本体10には、3つ以上の第1の回転翼11が設けられている。一例として、本体10には、6つの第1の回転翼11が設けられている。好ましくは、6つの第1の回転翼11は、本体10の重心C1を中心とする円11Bの周上に等間隔に配置されている。つまり、各支持部13は、60°間隔で重心C1を中心に放射状に円11Bの径外方向に伸び、その先端に第1の回転翼11を支持している。
【0029】
6つの第1の回転翼11が重心C1を中心とした円11B上に等間隔に配置されることによって、各第1の回転翼11で発生した揚力が推進力Lとして飛行体1にバランスよく与えられるとともに、推進力Lの制御が容易になる。
【0030】
全方位推進ユニット2は、Z方向に交差するXY平面(第1平面)における全方位への推進力を本体10に与える。飛行体1に対して第1の回転翼11がZ方向を垂直として設けられているため、XY平面は水平面となる。
【0031】
全方位推進ユニット2は、重心C2が本体10の重心C1と一致するように本体10に取り付けられている。すなわち、全方位推進ユニット2の重心C2もまた、飛行体1の重心C1と一致している。
【0032】
全方位推進ユニット2は、
図2及び
図3に表されたように、本体10に後付けされるものであってもよい。さらに、全方位推進ユニット2は、本体10に着脱可能であってもよい。
図2は、
図1に表された、本体10から外された状態の全方位推進ユニット2の正面図である。
【0033】
図2及び
図3を参照して、全方位推進ユニット2は、本体10への装着部16が設けられている。好ましくは、本体10は、下面10Aに着地用の複数の脚部19を有し、装着部16には、脚部19を通過させる貫通孔16Bが設けられている。一例として、全方位推進ユニット2は、本体10の脚部19に貫通孔16Bを通過させ、装着部16の上面16Aが、本体10の下面10Aと接するように取り付けられている。取り付け方法は特定の方法に限定されない。例えば、装着部16の上面16Aと本体10の下面10Aとが接着剤で接着されてもよいし、ボルトで接続されてもよい。
【0034】
全方位推進ユニット2は、第1の回転翼11とは異なる第2の回転翼12を有する。第2の回転翼12は、回転軸心12A回りに回転することによって、推進力を発生させる。回転軸心12Aの方向(第2方向)は、Z方向に直交する方向である。Z方向が垂直であるため、回転軸心12Aの方向は水平方向である。その場合、第2の回転翼12は、垂直回転翼である。
【0035】
第2の回転翼12は、例えば、ダクテッドファンである。
図3の第2の回転翼12の拡大図を参照して、ダクテッドファンである第2の回転翼12は、円筒形のダクト121と、その中に配置されているプロペラ状の回転翼122と、を有する。回転翼122の軸122Aは、第2駆動部18に接続されている。第2駆動部18はモータ123を含む。回転翼122は、モータ123の回転に従って軸122A回りに回転する。
【0036】
第2の回転翼12は、回転翼122がダクト121に覆われているために衝撃に強い。そのため、後述するように、第2の回転翼12を第1の回転翼11よりも飛行体1の重心から遠い位置に配置しても接触に強くなる。また、ダクテッドファンは比較的出力が強いため、第2の回転翼12を小型化できる。その結果、飛行体1全体の小型化が図られる。
【0037】
全方位推進ユニット2は、それぞれ、異なる方向への推進力を発生させる複数の第2の回転翼12を有する。各第2の回転翼12は、支持部14により支持されている。支持部14は、基端14Aが装着部16に接合され、他端14Bにて第2の回転翼12を支持している。
【0038】
複数の第2の回転翼12は、それぞれの回転軸心12Aが重心C2に向くように装着部16に取り付けられている。全方位推進ユニット2の重心C2は飛行体1の重心C1と一致するため、複数の第2の回転翼12は、それぞれの回転軸心12Aが飛行体1の重心に向くように本体10に取り付けられる。
【0039】
好ましくは、全方位推進ユニット2には、3つ以上の第2の回転翼12が配置されている。3つ以上の第2の回転翼12は、一例として3つの第2の回転翼12である。3つの第2の回転翼12は、それぞれ、回転軸心12A回りに回転することによって、本体10に、重心C1に向く推進力F1,F2,F3を与える。
【0040】
3つの第2の回転翼12は、装着部16の重心C2を中心とした円12Bの周上に等間隔に配置されている。つまり、各支持部14は、120°間隔で重心C2を中心に放射状に装着部16から円12Bの径外方向に伸び、その先端に第2の回転翼12を支持している。これにより、本体10に指定された向きの推進力を与えるための、3つの第2の回転翼12それぞれの必要な出力の算出が容易になる。
【0041】
第2の回転翼12は、風出する空気流が、第1の回転翼11、又は、第1の回転翼11が風出する空気流に重ならない位置に設置されている。第2の回転翼12の風出する空気流が、第1の回転翼11、又は、第1の回転翼11が風出する空気流に重ならないことは、第2の回転翼12の風出方向W2の先に、第1の回転翼11も、第1の回転翼11が風出する空気流も位置しないことを指す。これにより、第2の回転翼12から風出された空気流が、第1の回転翼11にも、第1の回転翼11が風出する空気流にも接触しない。そのため、第1の回転翼11が発生させる揚力への影響を抑えることができる。
【0042】
第2の回転翼12は、一例として、第1の回転翼11より飛行体1の重心C1から遠い位置であって、風出方向W2の向きが飛行体1の重心C1へ向かう向きと逆向きに設置されている。第1の回転翼11より飛行体1の重心C1から遠い位置に配置されることは、第2の回転翼12の配置される円12Bの半径が、第1の回転翼11の配置された円11Bの半径より大きいことを指す。円11Bの半径は、第1の回転翼11と飛行体1の重心C1との距離L1である。円12Bの半径は、第2の回転翼12と飛行体1の重心C1との距離L2である。
【0043】
好ましくは、第2の回転翼12は、6つの第1の回転翼11の回転時にそれぞれの第1の回転翼11の先端111が描く6つの円11Dの外接円11Cの外側に配置されている。これにより、第2の回転翼12から風出された空気流が、第1の回転翼11にも、第1の回転翼11が風出する空気流にも接触しない。そのため、第1の回転翼11が発生させる揚力への影響を抑えることができる。また、第1の回転翼11から風出された空気流が、第2の回転翼21にも、第2の回転翼12が風出する空気流にも接触しない。そのため、第2の回転翼12が発生させる推力への影響を抑えることができる。
【0044】
好ましくは、第2の回転翼12は、第2の回転翼12のから風出される空気流が第1の回転翼11から遠ざかる向きに流れるよう設けられている。一例として、複数の第2の回転翼12は、すべて、風出方向W2が飛行体1の重心C1へ向かう向きと逆向きに設置されている。これにより、第2の回転翼12から風出された空気流が、第1の回転翼11にも、第1の回転翼11が風出する空気流にも接触しない。そのため、第1の回転翼11が発生させる揚力への影響を抑えることができる。
【0045】
例えば、第2の回転翼12は、
図1の円Pに表された、円11Bと外接円11Cとの間であって、円11Dの外側に設置されてもよい。これにより、機体の小型化が図られる。
【0046】
なお、第2の回転翼12は、回転軸心方向を同一とする複数の回転子からなるユニットで構成されていてもよい。例えば、
図4に示されたように、第2の回転翼12は、回転軸心124Aの方向と、回転軸心125Bの方向とが一致している、2つの回転子124,125からなるものであってもよい。複数の回転子124,125からなるユニットである第2の回転翼12は、円12Bの周上に等間隔に配置されている。
【0047】
飛行体1は、3つの第2の回転翼12それぞれから与えられる推進力F1,F2,F3の合力を用いて、XY平面内での任意の方向、すなわち、水平方向の移動を実現する。飛行体1は、全方位推進ユニット2を制御するコントローラ30を有する。コントローラ30による全方位推進ユニット2の制御は、全方位推進ユニット2の推進力の方向を指定された方向とする方向制御を含む。
【0048】
全方位推進ユニット2の制御は、全方位推進ユニット2の推進力の方向を指定された方向とするために必要な推進力F1,F2,F3を計算し、推進力F1,F2,F3を調整することを含む。推進力F1,F2,F3を調整することは、複数の第2の回転翼12それぞれの出力を調整することを含む。
【0049】
詳しくは、3つの第2の回転翼12が
図1~
図3に表されたように、円12Bの周上に等間隔に配置されることにより、3つの第2の回転翼12それぞれによって、本体10には、
図5に表されたような推進力F1,F2,F3が与えられる。
図5においては、重心C1を中心に120°間隔で放射状に推進力F1,F2,F3が作用していることが示されている。
【0050】
重心C1に作用する推進力は、推進力F1,F2,F3の合力で得られる。例えば、重心C1に与える、向きが推進力F1の向きと推進力F2の向きとの間であり、大きさが第2の回転翼12の最大出力Fmaxより小さい推進力T1は、
図5の式(1)で表される。推進力T1は、
図5の領域S1に含まれる。
【0051】
重心C1に与える、向きが推進力F1の向きと推進力F3の向きとの間であり、大きさが第2の回転翼12の最大出力Fmaxより小さい推進力T2は、
図5の式(2)で表される。推進力T2は、
図5の領域S2に含まれる。
【0052】
重心C1に与える、向きが推進力F2の向きと推進力F3の向きとの間であり、大きさが第2の回転翼12の最大出力Fmaxより小さい推進力T3は、
図5の式(3)で表される。推進力T3は、
図5の領域S3に含まれる。
【0053】
重心C1に与える推進力T1,T2,T3それぞれを得るための推進力F1,F2,F3の組み合わせは、推進力F1,F2,F3それぞれをA(Fx,Fy)と表したときの、式(4)の係数Aで表される。(Fx,Fy)は、推進力F1,F2,F3それぞれをX軸方向及びY軸方向に分解したものである。
【0054】
すなわち、式(4)より、推進力T1,T2,T3が得られる推進力F1,F2,F3の組み合わせT1(F1,F2,F3),T2(F1,F2,F3),T3(F1,F2,F3)は下のように得られる。
T1(F1,F2,F3)=((kFx,Fy),(kFx,-Fy),(0,0))
T2(F1,F2,F3)=((2kFx,0),(0,0),(-kFx,Fy))
T3(F1,F2,F3)=((0,0),(2kFx,0),(kFx,Fy))
【0055】
コントローラ30は、フライトコントローラとも呼ばれる、CPU(Central Processing Unit)やメモリなどからなる制御装置である。本体10に全方位推進ユニット2が装着されることで、本体10に含まれるCPUに全方位推進ユニット2に含まれるCPUが接続されてコントローラ30を形成してもよい。
【0056】
飛行体1は、センサを有し、センサからのセンサ信号はコントローラ30に入力される。センサは、例えば、カメラ15Aを含む。また、センサは、例えば、加速度センサ15Bを含んでもよい。また、センサは、例えば、ジャイロセンサ15Cを含んでもよい。
【0057】
また、コントローラ30には、外部センサの一例としてモーションキャプチャ装置5からの撮影画像を含むキャプチャ情報が、センサ信号として入力されてもよい。モーションキャプチャ装置5は、一例として光学式モーションキャプチャ装置である。この場合、キャプチャ情報は複数のカメラで得られた複数の撮影画像で構成されるキャプチャ空間における位置情報を含む。
【0058】
コントローラ30には、飛行体1の操縦のためのユーザ操作を受け付ける操作装置4からの操作信号が入力される。操作装置4は、例えば、遠隔にて飛行体1を操縦するためのリモートコントローラが想定される。操作は、飛行体1の高度と、水平面内における推進方向と、移動速度と、を指示する操作を含む。
【0059】
コントローラ30は、通信部31を有する。通信部31は、操作装置4から無線によって送信される操作信号を受信する受信器を含む。また、通信部31は、モーションキャプチャ装置5から無線によって送信される撮影画像のデータを受信する受信器を含む。また、通信部31は、カメラ15Aと接続し、カメラ15Aでの撮影画像のデータを受信するインタフェースを含む。
【0060】
コントローラ30は、CPUがメモリに記憶されているプログラムを実行することによって、状態を判定する状態判定部32として機能する。状態を判定することは、飛行体1の現在の状態を表す値を得ることを含み、一例として、
図7に表された、現在位置を推定すること(ステップS13)、及び、推進速度を判定すること(ステップS15)、を含む。
【0061】
詳しくは、
図7を参照して、コントローラ30は、モーションキャプチャ装置5からキャプチャ情報の入力を受け付けて(ステップS11)、キャプチャ情報を用いて、飛行体1の状態を表す値としての飛行体1の現在位置(px,py)を推定する(ステップS13)。現在位置(px,py)は、一例として、xy座標系における座標値で表される。
【0062】
また、コントローラ30は、センサ15からセンサ信号の入力を受け付けて(ステップS15)、飛行体1の状態を表す値としての飛行体1の推進速度(vx,vy)を判定する(ステップS17)。推進速度(vx,vy)は、一例として、仮想的なxy座標系におけるx方向の速度成分、及び、y方向の速度成分で表される。
【0063】
状態を判定することは、さらに、飛行体1の取るべき状態を表す値を得ることを含む。取るべき状態を表す値を得ることは、一例として、
図7に表された、取るべき姿勢を判定すること(ステップS19)を含む。詳しくは、コントローラ30は、操作装置4から操作信号として指示された、水平面における推進方向を表す方向情報の入力を受け付けて(ステップS19)、飛行体1の取るべき姿勢を判定する(ステップS21)。姿勢は、一例として、ロール角θr、ピッチ角θp、及びヨー角θyで定義される。ここでは、コントローラ30は、飛行体1の取るべきロール角θr、ピッチ角θp、及びヨー角θyを得る。
【0064】
操作装置4は、さらに、飛行体1を作業に用いる際の、作業用の方向を指定する操作を含んでもよい。飛行体1で行う作業は、例えば、高所作業である。高所作業は、例えば、高所にある物体に物理的に作用する動作を伴う作業を指す。例えば、高層ビルなどの高所にある窓の清掃、物体を押し込む作業、物体を引っ張る作業などである。また、高所作業は、高所を移動しながら行う作業を指す。例えば、農薬の散布やチラシの撒布高所からの音声による宣伝、などである。
【0065】
例えば、飛行体1で行う作業が窓の清掃である場合、窓に対して清掃用具を押し付けながら窓に平行に左右に移動するよう飛行体1を移動させることが想定される。この場合、操作装置4によって、窓に向かう方向、つまり、前方が作業用の方向として指定され、窓に平行な面内での左右方向が移動用の方向として指定される。
【0066】
コントローラ30は、飛行体1を作業に用いる際の、作業に伴う動作を判定する作業判定部35として機能する。作業に伴う動作を判定することは、
図7に表された状態判定部32での状態を判定することと概ね同じである。作業に伴う動作を判定する際には、飛行体1の取るべき状態を表す値を得る処理において、作業に伴う動作の指定を受け付けてその動作を用いる。例えば、窓の清掃である場合、窓に平行な平面内の所定の軌道で移動しながら窓に水を散布する、動作が想定される。この場合、作業に伴う動作は、上記軌道に沿った移動が含まれる。
【0067】
作業判定部35として機能するコントローラ30は、指定された作業に伴う動作のために、飛行体1の状態を判定して状態を表す値を得る。また、コントローラ30は、指定された作業に伴う動作のために、飛行体1の取るべき状態を表す値を得る。飛行体1の取るべき状態を表す値は、飛行体1に与える推力の方向を用いて得られる。飛行体1の取るべき状態を表す値を得ることは、操作装置4によって指定された作業用の方向と移動用の方向とを合成して推力の方向を得ることを含む。
【0068】
コントローラ30は、第1の制御を行う第1制御部33として機能する。第1の制御は、第1の回転翼11を回転させるための第1駆動部17を制御することを指す。一例として、第1の制御において、コントローラ30は、状態を判定することによって得られた飛行体1の状態を表す値から、第1駆動部17を動作させるための制御信号を生成する。
【0069】
コントローラ30は、第2の制御を行う第2制御部34として機能する。第2の制御は、第2駆動部18を制御することを指す。一例として、第1の制御において、コントローラ30は、状態を判定することによって得られた、飛行体1の位置(px,py)、及び飛行体1の推進速度(vx,vy)を用いて、第2駆動部18を動作させるための制御信号を生成する。
【0070】
一例として、コントローラ30は、各第1の回転翼11及び各第2の回転翼12が本体10に与える推進力に応じた、各第1の回転翼11及び各第2の回転翼12の回転量を予め記憶している。コントローラ30は、飛行体1の状態を表す値、及び、取るべき状態を表す値を用いて、各第1の回転翼11及び各第2の回転翼12が本体10に与えるべき推進力を算出する。その際に、
図4の式(1)~(5)を用いる。
【0071】
コントローラ30は、得られた、各第1の回転翼11及び各第2の回転翼12が本体10に与えるべき推進力に応じて、各第1の回転翼11及び各第2の回転翼12の回転量を決定する。コントローラ30は、各第1の回転翼11及び各第2の回転翼12を、決定された回転量で回転させるための制御信号を生成する。
【0072】
第1駆動部17及び第2駆動部18は、例えば、モータを含む。この場合、制御信号は、一例としてPWM(Pulse Width Modulation)信号を含む。制御信号を生成することは、飛行体1の状態を表す値を対応するPWM信号に変換することを含む。
【0073】
飛行体1は、通常飛行モードに加え、水平推進モードを有する。飛行モードは、例えば、操作装置4によって選択することができる。選択された飛行モードを示す操作信号は、コントローラ30に送信される。
【0074】
通常飛行モードは、第1の回転翼11のみを用い、第2の回転翼12を用いない飛行モードを指す。この場合、コントローラ30は第1制御部33として機能し、飛行体1の状態を表す値と、飛行体1の取るべき状態を表す値とから、第1駆動部17を動作させるための制御信号を生成する。この制御については、通常のマルチロータ型の飛行体における飛行制御を用いることができる。
【0075】
水平推進モードは、全方位推進ユニット2を用いて飛行体1を飛行させる飛行モードを指す。この場合、コントローラ30は、第1制御部33として機能するとともに第2制御部34として機能し、飛行体1の状態を表す値と、飛行体1の取るべき状態を表す値とから、第1駆動部17を動作させるための制御信号、及び、第2駆動部18を動作させるための制御信号を生成する。
【0076】
なお、水平推進モードは、一例として、到達地点や速度を予め設定し、到達地点まで自動で飛行体1を飛行させる位置制御モードと、操作装置4からの操作信号に従って飛行体1を飛行させる手動モードと、を含んでもよい。
【0077】
コントローラ30は、一例として、
図8に表されたような飛行体1の制御を行う。すなわち、
図8を参照して、コントローラ30は、飛行体1を所定の目的地まで飛行して移動させる移動制御(ステップS100)と、目的地における作業のための飛行の制御である作業用制御(ステップS200)と、を行う。
【0078】
ステップS100の移動制御において、コントローラ30は、飛行モードに応じて飛行体1の制御モードを切り替え、一例として、
図9のフローチャートに表した流れで飛行体1の移動を制御する。詳しくは、
図9を参照して、コントローラ30は、操作装置4からの制御信号から得られた、飛行体1の飛行に対して設定された飛行モードに基づいて、コントローラ30での制御モードを判定する。
【0079】
設定された飛行モードが位置制御モードである場合(ステップS101で「位置制御モード」)、コントローラ30は、ステップS103以降の制御を行う。詳しくは、コントローラ30は、水平推進モード用の初期設定を行う(ステップS103)。ステップS103の設定することは、飛行体1のロール角θr及びピッチ角θpを0に設定することを含む。これにより、以降の制御においてもロール角θr及びピッチ角θpが0に保たれる。そのため、飛行体1の本体10の水平が保たれる。
【0080】
次に、コントローラ30は、操作装置4からの操作信号より目的地の入力を受け付ける(ステップS105)。また、コントローラ30は、操作装置4からの操作信号より推進速度を決定する(ステップS109)。コントローラ30は、さらに、移動時の高度を設定する操作信号を受け付けてもよい。
【0081】
コントローラ30は、入力された目的地と現在位置とから、飛行体1を移動させる方向、つまり、飛行体1のヨー角θyを算出する(ステップS107)。なお、現在位置は、モーションキャプチャ装置5からのキャプチャ情報に基づいて推定されるものであってもよいし、操作装置4からの操作信号より得られるものであってもよい。
【0082】
コントローラ30は、ステップS107で算出されたヨー角θy、及び、ステップS109で決定された推進速度から、第2の回転翼12の制御量を算出する(ステップS111)。また、コントローラ30は、設定された高度まで浮上させるために必要な第1の回転翼11の制御量を算出する(ステップS111)。具体的には、各第1の回転翼11、及び、各第2の回転翼12が本体10に与える推進力、つまり、各第1の回転翼11、及び、各第2の回転翼12の回転量を算出する。
【0083】
コントローラ30は、ステップS111で得られた各第1の回転翼11、及び、各第2の回転翼12の回転量に基づいて各第1の回転翼11、及び、各第2の回転翼12の回転量を制御するための制御信号を生成し、それぞれの駆動を制御する(ステップS113,S115)。
【0084】
具体的に、ステップS115で、コントローラ30は、
図4の式(1)~(4)を用いて、各第2の回転翼12の推進力F1,F2,F3を算出し、算出された推進力F1,F2,F3となる回転量で各第2の回転翼12を回転させるように、制御信号を生成する。
【0085】
コントローラ30は、飛行体1が設定された目的地に到着しているか否かを判定する。ステップS105で入力された目的地が位置情報である場合には、コントローラ30は、モーションキャプチャ装置5からのキャプチャ情報より得られる位置情報と目的地とする位置情報とを比較することによって飛行体1が設定された目的地に到着しているか否かを判定する。
【0086】
ステップS105で入力された目的地が、飛行開始位置からの距離と方向とで指定された位置である場合には、コントローラ30は、加速度センサ15Bからのセンサ信号で得られる、移動開始からの加速度の積分値で求められる移動距離と、目的地として入力された移動距離とを比較することによって飛行体1が設定された目的地に到着しているか否かを判定する。
【0087】
なお、移動開始からの加速度を積分して飛行体1の移動距離を算出する処理は、コントローラ30の外部装置で行われ、コントローラ30に演算結果が与えられてもよい。いずれの場合であっても、飛行体1が全方位推進ユニット2を有することによって姿勢を維持したまま飛行するために、加速度センサでの検出結果を用いて移動距離を高精度で算出することが可能になる。
【0088】
コントローラ30は、各第1の回転翼11、及び、各第2の回転翼12の制御を、飛行体1が設定された目的に到着するまで維持する(ステップS117でNO)。そして、目的地に到着すると(ステップS117でYES)、コントローラ30は、移動制御を終了する。これにより、飛行体1は、姿勢を維持したまま目的地まで飛行することになる。
【0089】
設定された飛行モードが手動モードである場合(ステップS101で「手動モード」)、コントローラ30は、ステップS121以降の制御を行う。詳しくは、コントローラ30は、水平推進モード用の初期設定を行う(ステップS121)。ステップS121の設定は、ステップS103の設定と同じである。これにより、操作装置4からの操作信号に従って飛行体1の移動を制御する場合であっても、ロール角θr及びピッチ角θpが0に保たれる。そのため、飛行体1の本体10の水平が保たれる。つまり、水平姿勢を維持したまま飛行体1を移動させることができる。
【0090】
次に、コントローラ30は、操作装置4から操作信号を受け付けると(ステップS123でYES)、ステップS125以降の処理を実行する。ステップS125以降の処理は、ステップS107以降の処理と概ね同じである。
【0091】
すなわち、コントローラ30は、制御信号に基づいて飛行体1を移動させる方向、つまり、飛行体1のヨー角θyを算出する(ステップS125)。コントローラ30は、操作信号が高度の指定を含む場合、さらに、高度を算出してもよい。また、コントローラ30は、操作装置4からの操作信号より推進速度を決定する(ステップS127)。
【0092】
コントローラ30は、ステップS125で算出されたヨー角θy、及び、ステップS127で決定された推進速度から、第2の回転翼12の制御量を算出する(ステップS129)。また、コントローラ30は、設定された高度まで浮上させるために必要な第1の回転翼11の制御量を算出する(ステップS129)。
【0093】
コントローラ30は、ステップS129で得られた各第1の回転翼11、及び、各第2の回転翼12の回転量に基づいて各第1の回転翼11、及び、各第2の回転翼12の回転量を制御するための制御信号を生成し、それぞれの駆動を制御する(ステップS131,S133)。
【0094】
コントローラ30は、ステップS123以降の処理を、飛行の停止を指示する操作信号が入力されるまで繰り返す(ステップS135でNO)。そして、飛行の停止が指示されると(ステップS135でYES)、コントローラ30は、移動制御を終了する。
【0095】
なお、設定された飛行モードが通常飛行モードである場合には(ステップS101で「通常飛行モード」)、コントローラ30の制御は通常のマルチロータ型の飛行体における飛行制御であって、特定の制御に限定されるものではない。
【0096】
飛行体1が全方位推進ユニット2を有し、コントローラ30が飛行体1を水平推進モードで飛行させるための上記の制御を行うことによって、飛行体1は、姿勢を維持したまま飛行することになる。これにより、飛行体1の位置の制御の精度を向上させ、安定した飛行が可能になる。すなわち、目的地とする位置に到着させる精度を向上させることができる。これは、飛行体1を目的地において作業に用いる場合に、作業のための動作の位置決めの精度を向上させることにつながる。
【0097】
コントローラ30は、ステップS100の飛行体1の移動制御が終了すると、ステップS200の作業用制御を行う。ステップS200の作業用制御は、
図9に表された処理の流れと概ね同じである。作業用制御においては、コントローラ30は、ステップS103,S121の初期設定を行わない。そのため、作業に応じて飛行体1の姿勢を指定通りのものとすることができる。
【0098】
作業においては、コントローラ30は、操作装置4から、作業用の方向と移動用の方向との指定を受け付けることができる。作業が窓の清掃である場合、作業用の方向として窓に向かう方向、つまり、前方が指定され、移動用の方向として窓に平行な面内での左右方向が指定される。
【0099】
この場合、コントローラ30は、飛行体1の本体10に与える推進力を、作業用の方向の推力と移動用の方向の推力とを合成することで得る。そして、コントローラ30は、作業用の方向の推力と移動用の方向の推力とを合成することで得られた推力を本体10に与えるための制御を、
図9に表された処理の流れと同様にして行う。
【0100】
飛行体1が全方位推進ユニット2を有し、コントローラ30が第2の回転翼12の制御を行って第2方向の移動を制御することによって、飛行体1を作業に用いる際に、作業用の方向と移動用の方向との両方に飛行体1を移動させることができる。つまり、作業中における飛行体1の位置決めの精度を向上させることができる。そのため、飛行体1を用いた作業の精度を向上させることができる。
【0101】
<変形例>
【0102】
全方位推進ユニット2は、他の例として、
図13に表されたように、風出方向W2を水平面内で可変なように、重心C2と一致する位置で支持部14によって支持された1つの第2の回転翼12を含む構成であってもよい。全方位推進ユニット2は、第2の回転翼12を水平面内で回転させる回転機構14Cを有し、回転機構14Cの回転は、コントローラ30によって制御される。
【0103】
この場合、コントローラ30は、第2の回転翼12の回転量を制御して本体10に与える推進力Fを制御するとともに、回転機構14Cの回転角度を制御して本体10に与える推進力Fの向きを制御する。このような構成であっても、上記と同様に、飛行体1の姿勢を安定させて第2方向に移動させることができる。
【0104】
発明者らは、全方位推進ユニット2の効果を評価するために、飛行体1を用いた押し引きの作業の第1の検証実験を行った。第1の検証実験では、飛行体1の離陸後に位置制御モードとし、飛行体1を用いた押し引きの作業中の位置(px,py)、ロール角θr、及び、ピッチ角θpを計測した。実験結果を示す
図10の上のグラフは、飛行中の飛行体1の位置(px,py)の時間変化を示している。下のグラフは、飛行中の飛行体1のロール角θr及びピッチ角θpの時間変化を示している。
【0105】
図10より、x軸方向の位置の平均誤差は0.0358m、y軸方向の位置の平均誤差は0.0188mであり、いずれも、±0.05mの範囲内に維持されていた。また、下の図より、飛行中の飛行体1の姿勢は±2度の範囲に維持されていた。この実験結果より、飛行体1は押し引きの作業中において水平に維持することができると検証された。
【0106】
発明者らは、さらに、全方位推進ユニット2を用いることによって高精度に飛行体1の位置制御を行うことが可能であることを検証するために、第2の検証実験を行った。第2の検証実験では、飛行体1の初期位置を位置(0,0)とし、5秒間隔で0.2mずつ、位置(px,py)、ロール角θr、及び、ピッチ角θpを計測した。実験結果を示す
図11の上のグラフは、飛行中の飛行体1の位置(px,py)の時間変化を示している。下のグラフは、飛行中の飛行体1のロール角θr及びピッチ角θpの時間変化を示している。
【0107】
図11より、x軸方向の位置の平均誤差は0.037m、y軸方向の位置の平均誤差は0.0194mであり、いずれも、±0.05mの範囲内に維持されていた。また、飛行中、飛行体1の姿勢は±2度の範囲に維持されていた。この実験結果より、飛行体1は、最短、0.2mで位置を制御することが可能であると検証された。
【0108】
発明者らは、さらに、全方位推進ユニット2で目的地までの移動中における移動方向以外の方向へのぶれを確認するために、第3の検証実験を行った。第3の検証実験では、
図12の左の図に表されたように、飛行体1の初期位置を位置(0,0)とし、位置(0,0)から0.5m離れた30°間隔で放射状に配置された目的地を設定した。
【0109】
図12の右の図に表された測定結果より、飛行体1は、目的位置がx軸上、又はy軸上であるとき、つまり、前後、左右に移動する場合に概ね直線で移動し、他の方向へのぶれがないことが確認された。他の位置に設定された目的地に対しては、目的地に向かう方向からのぶれが約5°程度であることが確認された。
【0110】
以上の第1の検証実験~第3の検証実験から、全方位推進ユニット2を用いることによって、飛行体1の飛行における位置決めを高精度にできることが検証された。これにより、飛行体1の飛行の安定性を向上させることができる。
【0111】
<3.付記>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 :飛行体
2 :全方位推進ユニット
4 :操作装置
5 :モーションキャプチャ装置
10 :本体
10A :下面
11 :第1の回転翼
11A :回転軸心
11B :円
11C :外接円
11D :円
12 :第2の回転翼
12A :回転軸心
12B :円
13 :支持部
14 :支持部
14A :基端
14B :他端
14C :回転機構
15 :センサ
15A :カメラ
15B :加速度センサ
15C :ジャイロセンサ
16 :装着部
16A :上面
16B :貫通孔
17 :第1駆動部
18 :第2駆動部
19 :脚部
21 :第2の回転翼
30 :コントローラ
31 :通信部
32 :状態判定部
33 :第1制御部
34 :第2制御部
35 :作業判定部
111 :先端
121 :ダクト
122 :回転翼
122A :軸
123 :モータ
124 :回転子
124A :回転軸心
125 :回転子
125B :回転軸心
C1 :重心
C2 :重心
F :推進力
F1 :推進力
F2 :推進力
F3 :推進力
Fmax :最大出力
L :推進力
L1 :距離
L2 :距離
P :円
S1 :領域
S2 :領域
S3 :領域
T1 :推進力
T2 :推進力
T3 :推進力
W1 :風出方向
W2 :風出方向
θp :ピッチ角
θr :ロール角
θy :ヨー角