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  • 特開-包装用積層フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160831
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】包装用積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20221013BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
B32B27/32 C
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065290
(22)【出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井口 依久乃
(72)【発明者】
【氏名】盧 和敬
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB01
3E086BB21
3E086BB51
3E086BB54
3E086CA27
4F100AB10A
4F100AK01C
4F100AK06C
4F100AK07D
4F100AK41A
4F100AK42A
4F100AK51D
4F100AK62B
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA26
4F100EH17C
4F100EH66A
4F100EJ37A
4F100EJ37D
4F100GB15
4F100HB31D
4F100JA13A
4F100JA13B
4F100JD02A
4F100JL12B
4F100JN02A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】輸送の際のピンホールの発生を低減すると共に、安定して高いヒートシール強度でシールすることのできる包装用積層フィルムを提供すること。
【解決手段】ガスバリアフィルム12とシーラントフィルム13とを、両者の間に溶融押出しされた樹脂1bを介して積層して包装用積層フィルム10とする。シーラントフィルム13は多層構造を有しており、このシーラントフィルム13を構成する各層のうち、最表面に位置する層をシール層13とするとき、このシール層13と前記ガスバリアフィルム12との間に位置するいずれの層の密度も、前記シール層13の密度より小さいものとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリアフィルムとシーラントフィルムとを含み、これらガスバリアフィルムとシーラントフィルムとが、両者の間に溶融押出しされた樹脂を介して積層されている包装用積層フィルムであって、
前記シーラントフィルムが多層構造を有しており、
このシーラントフィルムを構成する各層のうち、最表面に位置する層をシール層とするとき、このシール層と前記ガスバリアフィルムとの間に位置するいずれの層の密度も、前記シール層の密度より小さいことを特徴とする包装用積層フィルム。
【請求項2】
前記シール層の密度が0.93~0.94g/cmの範囲にあり、一方、前記シール層と前記ガスバリアフィルムとの間に位置するいずれの層の密度も0.85~0.92g/cmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の包装用積層フィルム。
【請求項3】
前記ガスバリアフィルムがその層構成中に延伸ポリエステルフィルムを含んでおり、前記ガスバリアフィルムとの間に位置するいずれの層の密度も、この延伸ポリエステルフィルムの密度より小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の包装用積層フィルム。
【請求項4】
前記延伸ポリエステルフィルムの密度が1.34~1.41g/cmの範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の包装用積層フィルム。
【請求項5】
前記ガスバリアフィルムがその層構成中に金属の蒸着膜を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の包装用積層フィルム。
【請求項6】
前記ガスバリアフィルムの200~800nmの波長域の光線透過率が1%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の包装用積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物の包装に適する包装用積層フィルムに関する。重量物としては、例えば、輸液等を充填した輸液バッグを例として挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
輸液を収納する輸液バッグは、アミノ酸液、糖・電解質液など酸素により変質し易い薬剤や、ビタミンなど光により変質し易い薬液を収納するが、一方でこれらの薬剤を直接体内に注入するため、無添加のプラスチック容器が一次容器として用いられることが多い。そして無添加のプラスチック容器は酸素バリア性や遮光性がないため、酸素バリア性や遮光性を有する外装用外装袋が、一次容器を収納する二次容器として使用されることが多い。
【0003】
例えば、特許文献1には、外側から順に、基材フィルム、ガスバリアフィルム、シーラントフィルムを積層して成る積層フィルムで外装用包装袋を構成し、この外装用包装袋の内部に輸液バッグを収納する技術が記載されている。そして、そのガスバリアフィルムはアルミニウムを蒸着した蒸着フィルムである。アルミニウム蒸着膜は、酸素ガスや水蒸気等の各種ガスに対する遮断性(バリア性)に優れており、また、遮光性にも優れているのである。このため、輸液バッグ内の薬剤や薬液は各種ガスや紫外線等の放射線から守られるのである。
【0004】
また、ガスバリアフィルムとシーラントフィルムとはいわゆる溶融押出しラミネート法によって積層されている。すなわち、溶融した樹脂を押し出し機から押出し、この溶融樹脂が接着力を有している間に、その両側にガスバリアフィルムとシーラントフィルムとを重ねて圧着することにより、全体を一体化するのである。溶融押出しする樹脂としては一般に低密度ポリエチレンが使用されている。
【0005】
ところで、この輸液バッグはその重量が重く、このように重い内容物を包装袋に収容して輸送したとき、この輸送の際の振動に起因して前記積層フィルムが屈曲を繰り返し、また、相互に衝突したり擦れたりする結果、この積層フィルムにピンホールを生じることがあった。
【0006】
このようなピンホールの発生を防ぐため、特許文献1は、前記シーラントフィルムとして二軸延伸エチレン系共重合体フィルムを使用した包装用積層フィルムを提案している。二軸延伸エチレン系共重合体フィルムは、二軸延伸されているにも拘わらず、それ自体ヒートシール性を有している。このため、この二軸延伸エチレン系共重合体フィルムは高い物理的強度を有し、かつ、高い耐衝撃性を有しているため、前述のような重量物を収容して、輸送中の振動や周囲との衝突によってもピンホールを生じ難いのである。
【0007】
しかしながら、二軸延伸エチレン系共重合体フィルムは、ヒートシール性を有しているとはいうものの二軸延伸によって結晶化しているため、高いヒートシール強度を期待することができず、その安定性が乏しいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-30313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、輸送の際のピンホールの発生を低減すると共に、安定して高いヒートシール強度でシールすることのできる包装用積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明は、ガスバリアフィルムとシーラントフィルムとを含み、これらガスバリアフィルムとシーラントフィルムとが、両者の間に溶融押出しされた樹脂を介して積層されている包装用積層フィルムであって、
前記シーラントフィルムが多層構造を有しており、
このシーラントフィルムを構成する各層のうち、最表面に位置する層をシール層とするとき、このシール層と前記ガスバリアフィルムとの間に位置するいずれの層の密度も、前記シール層の密度より小さいことを特徴とする包装用積層フィルムである。
【0011】
次に、請求項2に記載の発明は、前記シール層の密度が0.93~0.94g/cmの範囲にあり、一方、前記シール層と前記ガスバリアフィルムとの間に位置するいずれの層の密度も0.85~0.92g/cmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の包装用積層フィルムである。
【0012】
次に、請求項3に記載の発明は、前記ガスバリアフィルムがその層構成中に延伸ポリエステルフィルムを含んでおり、前記ガスバリアフィルムとの間に位置するいずれの層の密度も、この延伸ポリエステルフィルムの密度より小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の包装用積層フィルムである。
【0013】
次に、請求項4に記載の発明は、前記延伸ポリエステルフィルムの密度が1.34~1.41g/cmの範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の包装用積層フィルムである。
【0014】
次に、請求項5に記載の発明は、前記ガスバリアフィルムがその層構成中に金属の蒸着膜を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の包装用積層フィルムである。
【0015】
次に、請求項6に記載の発明は、前記ガスバリアフィルムの波長200nm~800nmの光線の透過率が1%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の包装用積層フィルムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、最表面に位置するシール層とガスバリアフィルムとの間に位置するいずれの層の密度も、前記シール層の密度より小さいため、この包装用積層フィルムで構成した包装袋に対して振動や屈曲を繰り返して加えたときにも、この振動や屈曲による応力をシール層とガスバリアフィルムとの間に位置する前記層が吸収緩衝してピンホールを生じ難い。このため、こうして製袋された包装袋に輸液バッグ等の重量物を収容して輸送した場合にも、この包装袋に生じるピンホールを低減することができる。
【0017】
また、多層構造のシーラントフィルムを構成するいずれの層にも延伸フィルムを採用する必要がなく、結晶性に乏しい未延伸フィルムを利用することができるから、安定して高いヒートシール強度でシールすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は本発明の包装用積層フィルムの具体例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の具体例を説明する。図1は本発明の包装用積層フィルムの具体例を示す断面図で、この図から分かるように、この包装用積層フィルム10は、外側から順に、基材フィルム11、ガスバリアフィルム12、シーラントフィルム13を積層して成るものである。基材フィルム11とガスバリアフィルム12とは、いわゆる溶融押出しラミネート法によって積層されている。すなわち、溶融した樹脂を押し出し機から押出し、この溶融樹脂が接着力を有している間に、その両側に基材フィルム11とガスバリアフィルム12と重ねて圧着することにより、全体を一体化して積層されたものである。また、ガスバリアフィルム12とシーラントフィルム13もいわゆる溶融押出しラミネート法によって積層されている。なお、図1において、1aは基材フィルム11とガスバリアフィルム12との間の溶融押出樹脂層を示し、1bはガスバリアフィルム12とシーラントフィルム13との間の溶融押出樹脂層を示している。
【0020】
本発明の積層フィルム10に使用する基材フィルム11としては任意のプラスチックフィルムが使用できるが、収容する輸液バッグは一般にその重量が重いため、このような重量物の収容に耐える強度を有し、しかも、包装袋の製造加工に適する加工適性を有するものが望ましい。このようなフィルムとしては、例えば、厚さ20~100μmの二軸延伸フィルムが挙げられる。例えば、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、二軸延伸ポリエステル(OPET)フィルム等である。
【0021】
この基材フィルム11には、図示しない印刷絵柄を施すことができる。印刷絵柄は、積層フィルム10の外面側に露出しない面に施すことが望ましい。いわゆる裏刷りである。印刷インキのバインダーは任意の材質でよいが、例えば、ウレタン系樹脂をバインダーとする印刷インキが使用できる。
【0022】
次に、ガスバリアフィルム12はプラスチックフィルムを蒸着基材として、この蒸着基材上に金属の蒸着膜を積層して構成することができる。金属の蒸着膜は、酸素ガスや水蒸気等の各種ガスに対する遮断性(バリア性)に優れており、また、遮光性にも優れている。
【0023】
蒸着基材は任意のプラスチックフィルムでよいが、この包装用積層フィルムで構成した包装袋に対して振動や屈曲を繰り返して加えたときに、ピンホールの発生を抑制するため、高密度で硬いフィルムを使用することが望ましい。例えば、密度1.34~1.41g/cmの二軸延伸ポリエステル(OPET)フィルムである。蒸着基材の厚みは例えば6~16μmでよい。
【0024】
また、金属の蒸着膜としてはアルミニウムの蒸着膜を好ましく利用できる。この金属蒸着膜は、前述のように、酸素等の各種ガスに対する遮断性(バリア性)と共に、遮光性を担保するものである。このため、蒸着基材上にこの金属蒸着膜を積層して構成されたガスバリアフィルム12は、200~800nmの波長域の光線透過率が1%以下であることが望ましい。この程度の光線透過率を有するものであれば、そのガスバリア性も十分である。なお、この金属蒸着膜は、真空蒸着のほか、スパッタリング法等によって形成することも可能である。
【0025】
次に、基材フィルム11とガスバリアフィルム12との間に介在して、これらを一体に接着積層する溶融押出樹脂層1aとしては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン系樹脂で構成することができる。前述のように、このポリエチレン系樹脂を溶融状態で押し出し機から押し出し、この溶融したポリエチレン系樹脂が接着力を有している間に、その両側に基材フィルム11とガス
バリアフィルム12とを重ねて圧着することにより、全体を一体化して、基材フィルム11、溶融押出樹脂層1a及びガスバリアフィルム12をこの順に積層することができる。溶融したポリエチレン系樹脂を基材フィルム11とガスバリアフィルム12の間に押し出して圧着してもよいし、基材フィルム11とガスバリアフィルム12のいずれか一方のフィルム上に押し出して溶融押出樹脂層1aを形成した後、他方のフィルムを圧着してもよい。また、これら基材フィルム11やガスバリアフィルム12を圧着するに先立ち、アンカーコート層を設けたり、あるいはコロナ放電処理やオゾン処理等の表面処理を施すこともできる。
【0026】
次に、シーラントフィルム13は、この積層フィルム10を使用して外装袋を製造する際に、その内層を構成し、互にシールされるものである。
【0027】
シーラントフィルム13は多層構造を有する必要がある。二層構造であってもよいが、図1に示した包装用積層フィルム10は三層構造を有している。
【0028】
シーラントフィルム13を構成する各層のうち、最表面に位置する層13を「シール層」と呼ぶと、このシール層13は外装袋の最内層に位置する層である。この他の層13,13は、溶融押出樹脂層1bとシール層13との間に位置する層である。そこで、説明の便宜上、これら2層13,13のうち、溶融押出樹脂層1bに接している層13を「ラミ層」、ラミ層13とシール層13との間に位置する層13を「中間層」と呼ぶ。
【0029】
これらラミ層13,中間層13及びシール層13は、いずれの層もポリオレフィン系樹脂で構成することができるが、後述するように、ラミ層13の密度及び中間層13の密度は、いずれも、シール層13の密度より小さいことが必要である。なお、これら各層13,13,13を構成するポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EAA)、アイオノマー、ポリプロピレン等を使用することができる。これらの樹脂を押出し機により共押し出して多層構造のフィルム状として使用すればよい。結晶性に乏しい未延伸フィルムであることが望ましい。
【0030】
ガスバリアフィルム12とシーラントフィルム13との間に介在して、これらを一体に接着積層する溶融押出樹脂層1bとしてはポリオレフィン系樹脂が使用できる。なお、後述するように、この溶融押出樹脂層1bの密度もシール層13の密度より小さいことが必要である。
【0031】
この溶融押出樹脂層1bを構成するポリオレフィンを溶融状態で押し出し機から押し出し、この溶融したポリオレフィンが接着力を有している間に、その両側にガスバリアフィルム12とシーラントフィルム13とを重ねて圧着することにより、全体を一体化して、ガスバリアフィルム12、溶融押出樹脂層1b及びシーラントフィルム13をこの順に積層することができる。
【0032】
基材フィルム11、ガスバリアフィルム12及びシーラントフィルム13を積層する順序は任意である。すなわち、まず基材フィルム11とガスバリアフィルム12とを互に積層し、次にこれにシーラントフィルム13を積層してもよい。また、まずガスバリアフィルム12とシーラントフィルム13とを互に積層し、次にこれに基材フィルム11を積層してもよい。
【0033】
ところで、前述のように、シール層13とガスバリアフィルム12との間に位置するいずれの層の密度も、前記シール層13の密度より小さいことが必要である。このようにこれらの層の密度がシール層13の密度より小さい場合、この包装用積層フィルム10で構成した包装袋に対して振動や屈曲を繰り返して加えたときにも、この振動や屈曲による応力をシール層13とガスバリアフィルム12との間に位置するこれらの層が吸収緩衝してピンホールの発生を抑制するからである。この例では、シール層13とガスバリアフィルム12との間に位置する層は、溶融押出樹脂層1b,ラミ層13及び中間層13である。このため、これら溶融押出樹脂層1b,ラミ層13及び中間層13の密度は、いずれも、シール層13の密度より小さいことが必要である。例えば、シール層13の密度が0.93~0.94g/cmの場合、これら溶融押出樹脂層1b,ラミ層13及び中間層13の密度は0.85~0.92g/cmの範囲にあればよい。
【0034】
なお、前述のように、シール層13とガスバリアフィルム12との間に位置する層(この例では、溶融押出樹脂層1b,ラミ層13及び中間層13)の密度が、ガスバリアフィルム12の蒸着基材の密度より小さい場合には、密度が小さいこれらの層1b,13,13が、密度の大きいガスバリアフィルム12とシール層13との間に介在することになるから、振動や屈曲による応力をこれらの層が吸収緩衝して、ピンホールの発生を一層確実に低減する。
【実施例0035】
(実施例)
基材フィルム11として、厚さ50μmのOPPフィルム(東洋紡(株)製:P2161)を使用した。なお、この基材フィルム11には、ウレタン系裏刷りインキ(東洋インキ製造(株)製:LPGT)で印刷絵柄を施してある。そのインキ厚みは1μmである。
【0036】
ガスバリアフィルム12としては、OPETフィルムを蒸着基材として、この蒸着基材の上にアルミニウム蒸着膜を積層した蒸着フィルム(尾池パックマテリアル(株)製:JC-V8,厚さ12μm)を使用した。なお、蒸着基材のOPETフィルムの密度は1.40g/cmである。
【0037】
シーラントフィルム13としては、ラミ層13、中間層13及びシール層13をこの順に共押し出し積層した3層構造のフィルムを使用した。これらラミ層13、中間層13及びシール層13はいずれもLLDPEで構成されており、ラミ層13の密度は0.92g/cm、中間層13の密度は0.90g/cm、シール層13の密度は0.94g/cmである。また、各層13,13及び13の厚みはいずれも20μmで、このシーラントフィルム13の厚みは60μmである。また、このシーラントフィルム13は未延伸のフィルムである。
【0038】
また、溶融押出樹脂層1a、1bを構成する樹脂としてLDPE(住友化学(株)製:スミカセンl417)を準備した。その密度は0.918g/cmである。
【0039】
そして、溶融押出樹脂層1aを構成する前記LDPEを溶融状態で押し出し機から押し出し、この溶融したLDPEが接着力を有している間に、その両側に基材フィルム11とガスバリアフィルム12とを重ねて圧着することにより、これらを積層一体化すると共に、溶融押出樹脂層1bを構成する前記LDPEを溶融状態で押し出し、その両側にガスバリアフィルム12とシーラントフィルム13とを重ねて圧着することにより、これらを積層一体化した。
【0040】
以上の工程で製造された包装用積層フィルム10は、図1に示すように、外面側から、
基材フィルム11、溶融押出樹脂層1a、ガスバリアフィルム12、溶融押出樹脂層1b、ラミ層13、中間層13及びシール層13をこの順に積層したもので、シール層13とガスバリアフィルム12との間に位置する層は、溶融押出樹脂層1b(密度0.918g/cm)、ラミ層13(密度0.92g/cm)及び中間層13(密度0.90g/cm)で、いずれの層の密度もシール層13(密度0.94g/cm)より小さい。
【0041】
そして、こうして得られた包装用積層フィルム10を使用して、大きさ縦390mm横280mmの四方シール袋を製袋した。
【0042】
(比較例)
シーラントフィルム13の代わりに次のフィルムを使用したことを除いて、実施例と同様に包装用積層フィルム10を製造し、また、四方シール袋を製袋した。
【0043】
実施例で使用したシーラントフィルム13の代わりに使用したフィルムは、ラミ層13、中間層13及びシール層13をこの順に共押し出し積層した3層構造で、これらラミ層13、中間層13及びシール層13はいずれもLLDPEで構成されており、ラミ層13の密度は0.94g/cm、中間層13の密度は0.90g/cm、シール層13の密度は0.94g/cmである。また、各層13,13及び13の厚みはいずれも20μmで、このシーラントフィルム13の厚みは60μmである。また、このシーラントフィルム13は未延伸のフィルムである。
【0044】
すなわち、実施例で使用したシーラントフィルム13とこの比較例で使用したフィルムとは、ラミ層13の密度が異なっている。そのほかの点は同一である。
【0045】
そして、このため、シール層13とガスバリアフィルム12との間に位置する層のうち、ラミ層13(密度0.94g/cm)の密度がシール層13(密度0.94g/cm)と同一である。
【0046】
(評価)
これら実施例1~3、比較例1の包装用積層フィルム10について、振動や屈曲に対する耐性を評価した。この評価は、次の方法で行った。
【0047】
すなわち、まず、これら包装用積層フィルム10で製袋した四方シール袋に1000mlの水を充填密封して包装体とした。そして、これら包装体を段ボール箱に詰めて梱包した。包装体は、その10袋を2行に並べ、こうして並べた包装体を多数段に重ねて段ボール箱に収容した。
【0048】
そして、こうして包装体を詰め込んだ段ボール箱を振動させた。振動条件は、加速度5G、振動数11Hz、振幅20mm、1時間である。
【0049】
この振動試験の後、段ボール箱から取り出した包装体を開封し、水を排出した後、水の代わりにテレピン油を封入した。この状態で24時間保存した後、ピンホールの数を目視で確認した。また、ピンホールは確認できないものの、テレピン油が包装体の外面に滲み出しているものの数を目視で確認した。この結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
この結果から、シーラントフィルム13を構成する各層のうち、最表面に位置するシール層13とガスバリアフィルム12との間に位置するいずれの層の密度も前記シール層13の密度より小さい場合には、シーラントフィルム13が未延伸フィルムであっても
、振動によって包装用積層フィルム10が受けるダメージを低減させ、ピンホールの数も低減させることができることが理解できる。
【符号の説明】
【0052】
10:包装用積層フィルム
11:基材フィルム
12:ガスバリアフィルム
13:シーラントフィルム 13:ラミ層 13:中間層 13:シール層
1a:溶融押出樹脂層
1b:溶融押出樹脂層
図1