(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160840
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】重量物運搬トラック
(51)【国際特許分類】
B60P 1/04 20060101AFI20221013BHJP
B60P 1/32 20060101ALI20221013BHJP
B60P 1/43 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
B60P1/04 A
B60P1/32
B60P1/43 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065301
(22)【出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】521152862
【氏名又は名称】株式会社アスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】木原 向一朗
(72)【発明者】
【氏名】下野 力男
(57)【要約】
【課題】簡単な作業により係合機構のメンテナンス作業を完了する。
【解決手段】重量物運搬トラック10は、車体フレーム4と、自走装置20を乗り込ませる、車体フレーム4の上方の荷台3と、トラック自身を水平姿勢から後端側を下方向にした傾斜姿勢とする傾斜機構1と、荷台3を前記車体フレーム4に対して前後方向にスライド移動させるスライド機構5と、荷台3の前端側と前記車体フレーム4とを上下方向に係合する係合機構6とを有している。係合機構6は、車体フレーム4に車体前後方向に沿って設けられた係合レール61と、係合レール61に車体フレーム4側から係合するように荷台3に固定されたロック装置62とを有し、ロック装置62は、スライド機構5により荷台3を車体後方に最大量移動させたときに、荷台3と係合レール61との重複範囲内の任意の位置に配置されている。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
自走装置を乗り込ませる、前記車体フレームの上方の荷台と、
トラック自身を水平姿勢から後端側を下方向にした傾斜姿勢とする傾斜機構と、
前記荷台を前記車体フレームに対して前後方向にスライド移動させるスライド機構と、
前記荷台の前端側と前記車体フレームとを上下方向に係合する係合機構とを有した重量物運搬トラックであって、
前記係合機構は、前記車体フレームに車体前後方向に沿って設けられた係合レールと、前記係合レールに車体フレーム側から係合するように前記荷台に固定されたロック装置とを有し、
前記ロック装置は、前記スライド機構により前記荷台を車体後方に最大量移動させたときに、前記荷台と前記係合レールとの重複範囲内の任意の位置に配置されていることを特徴とする重量物運搬トラック。
【請求項2】
前記係合機構は、
車体側方に向かって突出した突条部が形成された前記係合レールと、前記突条部の下方まで突出した突出部を有した前記ロック装置とを有していることを特徴とする請求項1に記載の重量物運搬トラック。
【請求項3】
前記ロック装置は、
前記突出部と、前記突出部から上方に延びた胴部と、前記胴部の上端に配置された頭部とを有し、
前記荷台及び前記頭部を上下に貫通するボルト及びこれと噛み合うナットによって前記頭部が荷台に固定されており、
前記荷台において前記ボルトが貫通した貫通孔が、車体左右方向に沿って長尺に形成されていることで、前記ボルト及び前記ナットによる前記頭部の固定位置を車体左右方向に関して調整可能であることを特徴とする請求項2に記載の重量物運搬トラック。
【請求項4】
前記係合機構は、
前記突条部と前記突出部との間に設けられ、前記突出部に固定されたエンジニアリング・プラスチック製の摺動部を有していることを特徴とする請求項2又は3に記載の重量物運搬トラック。
【請求項5】
前記係合機構は、
前記突条部と前記胴部との間に設けられ、前記胴部に固定されたエンジニアリング・プラスチック製の摺動部を有していることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の重量物運搬トラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物を積載して運搬するトラックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
重量物運搬トラックは、一例として、トラクター等の自走装置を荷台に積載する場合、水平姿勢から後端側を下方向にした傾斜姿勢とし、トラックの荷台を車体フレームから後方にスライド移動させ、荷台の後端部を接地させた後、自走装置を荷台に走行させて乗り込ませる。この際、自走装置の重量により荷台の前端側が車体フレームから離脱することに起因する不具合が発生する場合がある。そこで、従来は、トラックの車体フレームの前後方向に長尺の案内体を延設すると共に、案内体と同様に長尺の固定材を荷台に延設し、案内体と固定材とを上下方向に係合させ、自走装置を荷台に乗り込ませる際に、荷台を車体フレームから離脱させないようにした係合機構を備えた構成が開示されている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の重量物運搬トラックは、トラックの荷台をスライド移動させるときに、上下方向に係合された長尺の案内体と長尺の固定材とが摺接することにより摩耗するため、経年使用により摩耗がある程度進行した段階で、案内体及び固定材の何れか一方や両方を取り換える係合機構のメンテナンス作業を行う必要がある。この際、長尺の重量物である案内体及び固定材の何れの交換作業についても、重量物を車体フレーム等の全体から取り外して交換するという困難なメンテナンス作業を行うことが必要になっている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、簡単な作業により係合機構のメンテナンス作業を完了することができる重量物運搬トラックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
車体フレームと、
自走装置を乗り込ませる、前記車体フレームの上方の荷台と、
トラック自身を水平姿勢から後端側を下方向にした傾斜姿勢とする傾斜機構と、
前記荷台を前記車体フレームに対して前後方向にスライド移動させるスライド機構と、
前記荷台の前端側と前記車体フレームとを上下方向に係合する係合機構とを有した重量物運搬トラックであって、
前記係合機構は、前記車体フレームに車体前後方向に沿って設けられた係合レールと、前記係合レールに車体フレーム側から係合するように前記荷台に固定されたロック装置とを有し、
前記ロック装置は、前記スライド機構により前記荷台を車体後方に最大量移動させたときに、前記荷台と前記係合レールとの重複範囲内の任意の位置に配置されている。
【0007】
特許文献1の装置は、荷台側の固定材が長尺に構成されており、荷台が車体後方に最大量移動したときの荷台と案内体との重複範囲を超えた長さを有している。これに対し、本発明のロック装置は、荷台が車体後方に最大量移動したときに荷台と係合レールとの重複範囲内に位置するような寸法を有している。したがって、特許文献1の装置における固定材や案内体と比べ、ロック装置が小型且つ軽量である。このため、荷台を車体フレームに対して前後方向にスライド移動させることにより、係合状態のロック装置と係合レールとが摺接することによって、摩耗によりロック装置の更新が必要になったときに、軽量で小型なロック装置(又はその一部の部品)を取り外して交換するという簡単な作業を行うだけで係合機構のメンテナンス作業を完了することができる。
【0008】
また、本発明の係合機構は、
車体側方に向かって突出した突条部が形成された前記係合レールと、前記突条部の下方まで突出した突出部を有した前記ロック装置とを有していてもよい。
【0009】
上記の構成によれば、荷台を車体フレームに対して前後方向にスライド移動させることによりロック装置の突出部と係合レールの突条部とが摺接することによって、摩耗により突出部の更新が必要になったときに、ロック装置の突出部が係合レールと同程度の線状に形成されている場合と比較して、ロック装置自身が重複範囲内の短い寸法であるため、軽量で小型なロック装置又は摩耗した突出部を取り外して交換するという簡単な作業を行うだけで係合機構のメンテナンス作業を完了することができる。
【0010】
また、本発明のロック装置は、
前記突出部と、前記突出部から上方に延びた胴部と、前記胴部の上端に配置された頭部とを有し、
前記荷台及び前記頭部を上下に貫通するボルト及びこれと噛み合うナットによって前記頭部が荷台に固定されており、
前記荷台において前記ボルトが貫通した貫通孔が、車体左右方向に沿って長尺に形成されていることで、前記ボルト及び前記ナットによる前記頭部の固定位置を車体左右方向に関して調整可能であってもよい。
【0011】
上記の構成によれば、ボルトが貫通した貫通孔が、車体左右方向に沿って長尺に形成されていることで、ボルト及びナットによる頭部の固定位置を車体左右方向に関して調整可能であるため、ロック装置を車体左右方向に移動させることによりロック装置の突出部をレールの突条部に対して最適な係合状態となるように調整することができる。
【0012】
また、本発明の係合機構は、
前記突条部と前記突出部との間に設けられ、前記突出部に固定されたエンジニアリング・プラスチック製の摺動部を有していてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、荷台を車体前後方向に沿って移動させたときに、荷台に固定されたロック装置が荷台と共に移動することによって、ロック装置の突出部がレールの突条部に対して係合状態を維持しながら車体前後方向に移動する。この際、突条部と突出部との間に設けられたエンジニアリング・プラスチック製の摺動部が、突条部と突出部との直接的な接触を防止するため、突条部と突出部とが摺接することによる摩耗を防止し、摩耗した摺動部の交換作業だけでメンテナンス作業を終えることができる。
【0014】
また、本発明の係合機構は、
前記突条部と前記胴部との間に設けられ、前記胴部の少なくともいずれか一方に固定されたエンジニアリング・プラスチック製の摺動部を有していてもよい。
【0015】
荷台を車体前後方向に沿って移動させたときの左右方向に蛇行すると、荷台に固定されたロック装置が荷台と共に左右方向に移動することによって、ロック装置の胴部がレールの突条部に接触する位置まで接近するおそれがある。しかしながら、上記の構成によれば、突条部と胴部との間に摺動部が設けられている。このため、突条部と胴部とが互いに接近するように移動するのを摺動部が抑制する。また、このとき、エンジニアリング・プラスチック製のかかる摺動部が、突条部と胴部との直接的な接触を防止するため、突条部と胴部とが摺接することによる摩耗を防止し、摩耗した摺動部の交換作業だけでメンテナンス作業を終えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡単な作業により係合機構のメンテナンス作業を完了することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】水平姿勢をとった重量物運搬トラックの概要図である。
【
図1B】傾斜姿勢をとった重量物運搬トラックの概要図である。
【
図2A】重量物運搬トラックの外装の上面図である。
【
図2B】重量物運搬トラックの外装の側面図である。
【
図2C】傾斜姿勢をとった重量物運搬トラックの外装の側面図である。
【
図3A】重量物運搬トラックの車体フレームの上面図である。
【
図3B】重量物運搬トラックの車体フレームの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態である重量物運搬トラックについて、図を用いて説明する。
図1A及び
図1Bは、重量物運搬トラック10の動作の概要を示す説明図である。
【0019】
重量物運搬トラック10は、車体フレーム4と、自走装置20を乗り込ませる、車体フレーム4の上方の荷台3と、トラック自身を水平姿勢から後端側を下方向にした傾斜姿勢とする傾斜機構1と、荷台3を車体フレーム4に対して前後方向にスライド移動させるスライド機構5と、荷台3の前端側と車体フレーム4とを上下方向に係合する係合機構6とを有している。係合機構6は、車体フレーム4に車体前後方向に沿って設けられた係合レール61と、係合レール61に車体フレーム側から係合するように荷台3に固定されたロック装置62とを有している。ロック装置62は、スライド機構5により荷台3を車体後方に最大量移動させたときに、荷台3と係合レール61との重複範囲内の任意の位置に配置されている。
【0020】
ここで、「自走装置20」は、建設機械や農作業機械が例示される。建設機械の具体例を示すと、ブルドーザやスクレープドーザ、スクレーパ、ショベル系掘削機、フロントショベル、ローダが存在する。農作業機械の具体例を示すと、乗用型トラクターや乗用型田植機、乗用型コンバインが存在する。尚、自走装置20は、車両自身が重量物である場合に限らず、重量物を積載した車両であってもよい。「水平姿勢」は、重量物運搬トラック10の前輪101と後輪102とが地面30に接触している状態であり、前輪101及び後輪102の中心点同士を結ぶ線分が鉛直方向に対して直交する状態に限定されない。「傾斜姿勢」は、地面に接触する後輪102を支点として、前輪101が地面30の上方に位置する状態である。
【0021】
また、「荷台3を車体後方に最大量移動させる」とは、設計上又は構成上、移動可能な範囲の限界まで荷台3を車体後方へ車体フレーム4上をスライド移動させることである。設計上移動可能な範囲は、傾斜機構1の傾斜範囲、荷台3の重量、車体フレーム4の寸法、スライド機構5の推力、自走装置20の重量等に基づき決定される。構成上移動可能な範囲は、荷台3の移動を規制する構成が重量物運搬トラック10に設けられており、その規制によって規定される移動可能な範囲である。例えば、車体フレーム4に荷台3の移動を規制する規制部材が設けられており、荷台3が後方へと所定の位置まで移動すると、当該規制部材が荷台3に接触することで荷台3がそれ以上後方に移動できないように重量物運搬トラック10が構成されていてもよい。この場合、上記所定の位置まで荷台3が移動した状態が、荷台3が車体後方に最大量移動した状態に対応する。
【0022】
尚、「荷台3と係合レール61との重複範囲」とは、
図1A及び
図1Bに示すように、荷台3の下面の内、下方に係合レール61が設けられている範囲Aのことである。また、「ロック装置62が荷台3と係合レール61との重複範囲内の任意の位置に配置されている」とは、荷台3の下面における範囲A内のいずれかの位置にロック装置62が固定されていることに対応する。
【0023】
本実施形態において、「上方」や「上側」は、車体片側に配置された前輪101及び後輪102の中心点同士を結ぶ線分に沿った車長方向と、車体両側に配置された前輪101・101の中心点同士を結ぶ線分に沿った車幅方向とに直交し、地面30から離れる方向である。「下方」や「下側」は、車長方向と車幅方向とに直交し、地面30に近づく方向である。「上下方向」は、車長方向と車幅方向とに直交する方向である。「前方」や「前側」は、車長方向に沿って運転部103に向かう方向である。「後方」や「後側」は、車長方向に沿って運転部103とは反対側に向かう方向である。「前後方向」は、車長方向に沿った方向である。「車体側方」は、車幅方向に沿った方向である。
【0024】
上記のように構成された重量物運搬トラック10は、
図1Aの水平姿勢から
図1Bの傾斜姿勢にされた後、車体フレーム4から荷台3を進出させた状態で、荷台3の後端側から自走装置20を荷台3上に走行させて乗り込ませたときに、自走装置20の重量が荷台3の後端部に下方向の過重として作用し、車体フレーム4と荷台3との重複の境界位置が支点となって荷台3の前端側を車体フレーム4から離隔させる上方向に移動させるように作用する力のモーメントが発生するが、荷台3と係合レール61との重複範囲内に配置されたロック装置62が係合レール61に車体フレーム4側から係合していることによって、ロック装置62の配置位置で反力が発生する。この結果、自走装置20の積み下ろし時に荷台3が車体フレーム4から離隔する事態を防止することができる。
【0025】
また、重量物運搬トラック10は、荷台3を車体フレーム4に対して前後方向にスライド移動させると、係合状態のロック装置62と係合レール61とが摺接することによって、摩耗によりロック装置62の更新が必要になる事態が発生し得る。このような事態が発生したときのメンテナンス作業は、ロック装置62が係合レール61と同程度の線状に形成されている場合と比較して、ロック装置62自身が重複範囲内の短い寸法であるため、軽量で小型なロック装置62を取り外して交換するという簡単な作業を行うだけで完了することができる。
【0026】
(重量物運搬トラック:具体例)
上記の構成を有した重量物運搬トラック10の具体例を示す。
図2A及び
図2Bに示すように、重量物運搬トラック10は、車体前側の端部に配置された運転部103と、運転部103の後方に配置された荷台3と、荷台3と運転部103との間に配置されたクレーン装置7及び傾斜機構1とを有している。これらの運転部103、荷台3、クレーン装置7及び傾斜機構1は、車体フレーム4により支持されている。
【0027】
運転部103は、走行や停止等の運転操作を運転手に実行可能にさせる各種の機器を有している。クレーン装置7は、車幅中央部に配置されており、自由端部(先端部)のフックにより荷物を吊り上げるブーム71と、ブーム71の固定端部を支持するブーム支持機構72と、ブーム71のフックを昇降や旋回させるための油圧シリンダにオイルを供給する油圧制御装置73 とを有している。これにより、クレーン装置7は、油圧制御装置73の操作によりアーム71のフックを旋回及び昇降させることによって、フックの旋回半径内に置かれた荷物を荷台3と地面30との間で移動させることが可能になっている。
【0028】
(車体フレーム等)
図3A及び
図3Bに示すように、車体フレーム4は、長尺の型鋼からなる2本のメインフレーム41と、複数本のサブフレーム42と、ローラー収納箱43と、ローラー44と、メインフレーム摺動部材45とを有している。2本のメインフレーム41は、車幅中心を通過する中心線に対して左右対称に配置されている。メインフレーム41・41同士は、複数本のサブフレーム42により複数個所で連結されている。これにより、車体フレーム4は、メインフレーム41とサブフレーム42とで高い剛性を有した構造物とされている。
【0029】
ローラー収容箱43は、メインフレーム41後半部の外面に設けられ、車幅中心を通過する中心線に対して左右対称に配置されている。ローラー44は、ローラー収容箱43内に回転自在に収容されている。ローラー44の頭部は、ローラー収容箱43から露出しており、後述する荷台3を支持している。
【0030】
車体フレーム4の前部には、図示しないタイヤ支持機構が設けられている。タイヤ支持機構は、前後の2か所に配置された前輪101a・101bを回転自在に支持している。一方、車体フレーム4の後部には、図示しないタイヤ駆動機構が設けられている。タイヤ駆動機構は、前後の2か所に配置された後輪102a・102bを回転駆動可能に支持している。また、車体フレーム4は、泥はね防止機構104・105・106を支持している。泥はね防止機構104は、車体フレーム4に設けられた泥はね支持部材1041と、泥はね支持部材1041に支持された泥はね防止板1042とを有し、泥はね防止板1042は、前輪101bの後方を覆うように配置されている。泥はね防止機構105・106は、車体フレーム4に設けられた泥はね支持部材1051・1061と、泥はね支持部材1051・1061に支持された泥はね防止板1052・1062とを有している。泥はね防止板1052と泥はね防止板1062とは、後輪102aの前方と、後輪102bの後方とをそれぞれ覆うように配置されている。
【0031】
尚、2本のメインフレーム41後部の上面には、2個のメインフレーム摺動部材45が、車幅中心を通過する中心線に対して左右対称となるようにそれぞれ配置されている。メインフレーム摺動部材45は、荷台3に備えられた後述する後部クロス摺動部材34がメインフレーム摺動部材45に乗ることで、荷台3を支持している。
【0032】
(荷台)
図4に示すように、車体フレーム4の上方には、自走装置20を載置する荷台3が配置されている。荷台3は、荷台ベース31と、荷台ベース31の上面に設けられた床板32とを有している。荷台ベース31は、複数の長尺のクロス部材311と、2本の長尺のサイド部材312と、2本の長尺の補助部材313とを有している。クロス部材311は、長尺方向が車幅方向に一致されている。サイド部材312及び補助部材313は、長尺方向が車長方向に一致されている。複数のクロス部材311は、車長方向に間隔を隔てて配置されている。一方、2本のサイド部材312及び補助部材313は、車体フレーム4の2本のメインフレーム41の上方にそれぞれ配置されている。複数のクロス部材311と2本のサイド部材312とは、サイド部材312の上方にクロス部材311が配置される位置関係とされており、クロス部材311の下面にサイド部材312の上面が溶接されることにより固定されている。
【0033】
図5に示すように、サイド部材312は断面がZ型の長尺の鋼材であり、サイド部材312の上部312aは係合レール61の車体外側に位置するようにクロス部材311の下面に固定されている。また、サイド部材312の下部312bの下面は、車体フレーム4に設けられたローラー44と接しており、荷台3のスライド移動の際、サイド部材312の下部312bがローラー44を回転させながら移動することで、荷台3のスライド移動を容易にしている。尚、サイド部材312の下部312bとクロス部材311との間には、長尺の角形鋼である補助部材313がサイド部材312及びクロス部材311に固定されている。
【0034】
上記のように構成された荷台3は、サイド部材312が
図3Aのローラー44上に載置されている。これにより、荷台3は、ローラー44の回転により車体フレーム4に対して移動自在にされている。
【0035】
(荷台:前部クロス摺動部材)
荷台3の前部に配置されたクロス部材311の下面には、エンジニアリング・プラスチック製の4個の前部クロス摺動部材33が設けられている。4個の前部クロス摺動部材33は、係合レール61の上面に車幅中心を通過する中心線に対して左右対称となるようにそれぞれ配置されている。エンジニアリング・プラスチックとしては、例えば、モノマーキャストナイロンから成るポリアミド樹脂があり、機械的強度、熱的特性、及び耐摩耗性に優れている。
【0036】
上記の構成により、前部クロス摺動部材33は、荷台3が車体フレーム4に載置された場合、係合レール61とクロス部材311との間で、荷台3を支持する役割を果たしている。特に、前部クロス摺動部33と同様に荷台3を支持しているローラー44は、車体フレーム4の後半部に備えられているため、前部クロス摺動部材33は、荷台3の車体フレーム4前半部と重複する範囲の重量を主に支持している。
【0037】
さらに、前部クロス摺動部材33は、荷台3がスライド移動する際、案内装置61上面を滑りながらスライド移動することで、スライド移動を容易にすると同時に、案内装置61及びクロス部材311が直接摺接することによる案内装置61及びクロス部材311の摩耗を防止している。
【0038】
(荷台:後部クロス摺動部材)
荷台3の後部に配置されたクロス部材311の下面には、エンジニアリング・プラスチック製の2個の後部クロス摺動部材34が設けられている。後部クロス摺動部材34は、車体フレーム4に備えられたメインフレーム摺動部材45の上に乗るように配置されていることで、荷台3を支持している。
【0039】
(傾斜機構)
図3A及び
図3Bに示すように、重量物運搬トラック10は、傾斜機構1を有している。傾斜機構1は、前輪101aと前輪101bとの間に位置するように、車体フレーム4に設けられている。傾斜機構1は、アーム11と、レッグ12と、ジャッキ13とを有する。アーム11は、2本のメインフレーム41と直交するように、メインフレーム41の上面に配置される。レッグ12は、アーム11の両端に固定される。レッグ12は筒状の構成となっており、ジャッキ13は、レッグ12の内側に設けられている。
【0040】
傾斜機構1は、重量物運搬トラック10を
図2Aに示す水平姿勢から
図2Cに示す傾斜姿勢に変更する。具体的には、油圧制御装置73の操作によりジャッキ13を鉛直下方へ伸長させる。ジャッキ13の鉛直下方への伸長により、ジャッキ13が地面30に及ぼす力の反力として、車体フレーム4には、傾斜機構1との支持点を支点とした鉛直上方の力が作用する。その結果、重量物運搬トラック10は、地面30に接触する後輪102bを支点として、前輪101a・101b及び後輪102aが地面30から離隔した傾斜姿勢に変更する。
【0041】
(スライド機構)
図3A及び
図3Bに示すように、重量物運搬トラック10は、スライド機構5を有している。スライド機構5は、移動装置である2本の油圧シリンダ51と、2本の案内装置61とを有している。2本の油圧シリンダ51は、メインフレーム41後部の複数のサイドフレーム42の上面に、車幅中心を通過する中心線に対して左右対称に配置されている。案内装置61は、長尺のH型鋼材で構成され、メインフレーム41の前部から中部にかけて、メインフレーム41の上面に固定されている。尚、本実施形態では、案内装置61は係合レール61と同一の構造物である。
【0042】
スライド機構5は、車体フレーム4に沿って、荷台3を車体前後方向へスライド移動させるように構成されている。具体的には、
図3Aに示すように、車体前部に配置された油圧制御装置73を操作し、油圧シリンダ51に制御油を送出することにより、図示しないビストン軸を制御する。ピストン軸は、荷台ベース31と連結されており、ピストン軸の制御により、荷台3がスライド移動する。
【0043】
また、案内装置61は、荷台ベース31に設けられたロック装置62と車体内側で接するように配置されている。これにより、案内装置61は、スライド移動の際、各装置の動作による揺動や地面30の傾斜等により、荷台ベース31に車幅方向の力が作用した場合、案内装置61とロック装置62とが接することによる反力が発生する。この反力により、サイド部材312がローラー44から脱輪し、荷台3が車体フレーム4から車幅方向に離隔することが防止される。
【0044】
(係合機構)
図5に示すように、重量物運搬トラック10は、係合機構6を有している。係合機構6は、車体側方に向かって突出した突条部611が形成された係合レール61と、突条部611の下方まで突出した突出部624を有したロック装置62とを有している。
【0045】
(係合機構:係合レール)
係合機構6の具体例を示すと、係合レール61は、長尺のH型鋼材で構成されている。係合レール61は、H型鋼材の一対のフランジ部を上下に位置させる姿勢にされており、上側のフランジ部が突条部611とされている。係合レール61は、メインフレーム41の前部から中部にかけて、メインフレーム41の上面に取付部材46を介して固定されている。
【0046】
(係合機構:ロック装置)
図6~
図8に示すように、ロック装置62は、水平配置された平板状の頭部621と、頭部621から垂下された一対の側部622・622と、側部622・622の車体外側端に配置された胴部623と、側部622・622及び胴部623の下方端に配置され、平板部材の一部が車体外側方向に突出された突出部624とを有している。頭部621は、貫通孔を有しており、荷台ベース31とボルト接続により固定されている。
【0047】
(係合機構:ロック装置:摺動部)
また、ロック装置62は、胴部摺動部625と突出部摺動部626とを有している。胴部摺動部625は、胴部623の車体外側面に固定されている。突出部摺動部626は、突出部624の上面に固定されている。胴部摺動部625と突出部摺動部626とは、エンジニアリング・プラスチックにより形成されている。
【0048】
胴部623、突出部624、胴部摺動部625及び突出部摺動部626は、平板状に形成されている。各部623・624・625・626は、ボルトが挿通される貫通孔を有しており、胴部623は胴部摺動部625と、突出部624は突出部摺動部626と夫々ボルト接続により固定されている。
【0049】
図5に示すように、ロック装置62は、突出部摺動部626が係合レール61の突条部611下方に位置するように配置されている。具体的には、突出部摺動部626の上面は、突条部611の車体内側の下面と、上下方向に係合するように近接して配置されている。
【0050】
上記の構成により、係合機構6は、荷台3が車体フレーム4から上方へ離隔することを防止している。具体的には、重量物運搬トラック10が水平姿勢から傾斜姿勢にされた後、車体フレーム4から荷台3を進出させた状態で、荷台3の後端側から自走装置20を荷台3上に走行させて乗り込ませたときに、自走装置20の重量が荷台3の後端部に下方向の過重として作用する。この過重により、車体フレーム4と荷台3の重複の境界位置が支点となって荷台3の前端側を車体フレーム4から離隔させる上方向に移動させるように作用する力のモーメントが発生する。この力のモーメントにより、荷台3に固定されたロック装置62は上方向に移動する。その結果、突出部摺動部626が係合レール61の突条部611と係合する。この突出部摺動部626と突条部611との係合面で力のモーメントに対する反力が発生することで、自走装置20の積み下ろし時に荷台3が車体フレーム4から離隔する事態を防止することができる。
【0051】
また、ロック装置62は、荷台3が車体後方に最大量移動したときに荷台3と係合レール61との重複範囲内に位置するような寸法を有しているため、長尺に構成された固定材や案内体と比べて小型且つ軽量である。このため、荷台3を車体フレーム4に対して前後方向にスライド移動させることにより、係合状態のロック装置62と係合レール61とが摺接することによって、摩耗によりロック装置62の更新が必要になったときに、軽量で小型なロック装置62(又はその一部の部品)を取り外して交換するという簡単な作業を行うだけで係合機構6のメンテナンス作業を完了することができる。
【0052】
尚、荷台3がスライド移動する際、荷台3がロック装置62と係合レール61とを摺接させながら移動するが、この摺接が摺動部(胴部摺動部625及び突出部摺動部626)を介して行われることにより、ロック装置62の胴部623や突出部624が突条部611と直接摺接する場合と比べ、突条部611の摩耗による係合レール61の劣化を軽減することを可能にしている。
【0053】
また、胴部摺動部625及び突出部摺動部626は、突条部611と摺接することで摩耗が進行するが、摩耗の進行により、胴部摺動部625及び突出部摺動部626を固定するボルトの頭部が露出し、突条部611と摺接する状態となる。これにより、荷台3のスライド移動時に、胴部摺動部625又は突出部摺動部626のボルトの頭部と突条部611との摺接音が発生する。胴部摺動部625又は突出部摺動部626のボルトの頭部と突条部611との摺接音は、胴部摺動部625及び突出部摺動部626と突条部611との摺接音よりも大きいため、胴部摺動部625又は突出部摺動部626のボルトの頭部と突条部611との摺接音により、胴部摺動部625又は突出部摺動部626の摩耗が進行していることを検知することが可能となる。
【0054】
尚、
図9に示すように、ロック装置62の頭部621及び荷台ベース31とのボルト接続による固定において、ロック装置62の頭部621及び荷台ベース31とのボルト接続用の貫通孔627が車体左右方向に沿って長尺に形成されてもよい。具体的には、
図10に示すように、荷台3及び頭部621を上下に貫通するボルト629及びこれと噛み合うナット630によって頭部621が荷台3に固定されており、荷台3においてボルト629が貫通した貫通孔627・628が、車体左右方向に沿って長尺に形成されていることで、ボルト629及びナット630による頭部621の固定位置を車体左右方向に関して調整可能であってもよい。
【0055】
これにより、ボルト629が貫通した貫通孔627・628が、車体左右方向に沿って長尺に形成されていることで、ボルト629及びナット630による頭部の固定位置を車体左右方向に関して調整可能であるため、ロック装置62を車体左右方向に移動させることによりロック装置62の突出部624を係合レール61の突条部611に対して最適な係合状態となるように調整することができる。
【0056】
また、突条部611と突出部624との間には、エンジニアリング・プラスチック製の突出部摺動部626が設けられている。これにより、荷台3を車体前後方向に沿って移動させたときに、荷台3に固定されたロック装置62が荷台3と共に移動することによって、ロック装置62の突出部624が係合レール61の突条部611に対して係合状態を維持しながら車体前後方向に移動する際、突条部611と突出部624との間に設けられた突出部摺動部625が、突条部611と突出部624との直接的な接触を防止する。その結果、突条部611と突出部624とが摺接することによる摩耗を防止し、摩耗した突出部摺動部625の交換作業だけでメンテナンス作業を終えることができる。
【0057】
さらに、突条部611と胴部623との間には、エンジニアリング・プラスチック製の胴部摺動部625が設けられている。荷台3を車体前後方向に沿って移動させたときの左右方向に蛇行すると、荷台3に固定されたロック装置62が荷台と共に左右方向に移動することによって、ロック装置62の胴部623がレールの突条部611に接触する位置まで接近するおそれがある。しかしながら、上記の構成によれば、突条部611と胴部623との間に胴部摺動部625が設けられている。このため、突条部611と胴部623とが互いに接近するように移動するのを胴部摺動部625が抑制する。また、このとき、エンジニアリング・プラスチック製のかかる胴部摺動部625が、突条部611と胴部623との直接的な接触を防止するため、突条部611と胴部623とが摺接することによる摩耗を防止し、摩耗した胴部摺動部625の交換作業だけでメンテナンス作業を終えることができる。
【0058】
(係合機構:変形例)
図11は、係合機構6の変形例の断面図である。係合機構6は、中突条部631と、中突条部摺動部632とを有する。中突条部631は、胴部623中部の外側に水平方向に固定されている。中突条部摺動部632は、中突条部631の下面にボルト接続により固定されている。
【0059】
このような構成とすることにより、傾斜姿勢にされた重量物運搬トラック10の荷台3の後方に自走装置20が積み込まれた時に荷台3に作用する上方向の力が、突出部摺動部625と突条部611との係合面において発生する反力に打ち消されることに加え、荷台3のスライド移動や自走装置20の積み込み時に荷台3が揺動することによって荷台3に作用する下方向の力も、中突条部摺動部632と突条部611との係合面において発生する反力に打ち消される。これにより、自走装置20の積み下ろし作業の効率性や安全性が向上する。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、各手段等の具体的構成は、適宜設計変更可能である。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。