(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160849
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】多機能防護具
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20221013BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
A41D13/11 L
A62B18/02 A
A41D13/11 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065317
(22)【出願日】2021-04-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和 3年 2月24日に通販 WEBサイト「ShinFinePro」にて、フェイスシールドの名称で発表
(71)【出願人】
【識別番号】504002300
【氏名又は名称】信越ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】小濱 芳郎
(72)【発明者】
【氏名】西川 倫
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185BA12
(57)【要約】
【課題】 飲食物の付着を防止し、息苦しさの原因となることがなく、顔面や表情の認証の障害となることが少ない多機能防護具を提供する。
【解決手段】 装着者1の頭部2と頸部4のいずれかに嵌合可能な嵌合バンド10と、この嵌合バンド10に支持されて上下方向に回転可能な支持バンド20と、この支持バンド20に取り付けられて装着者1の顔面3を隙間31を介して覆う透明の樹脂フィルム30とを備える。支持バンド20が上方向に回転可能なので、樹脂フィルム30に対する飲食物の付着を有効に防止することができ、ストレスや不快感の発生を回避することができる。また、樹脂フィルム30が装着者1の顔面3に隙間31を介して対向するので、息苦しさを招くことがない。また、樹脂フィルム30がマスクとは異なり、光透過性の透明なので、装着者1が顔面3や表情を認証してもらいたい場合に障害物となることがない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の頭部と頸部のいずれかに嵌め合わせ可能な嵌合バンドと、この嵌合バンドに支持されて上下方向に回転可能な支持バンドと、この支持バンドに取り付けられて装着者の顔面の少なくとも一部を隙間を介し被覆可能な透明の樹脂シートとを含んでなることを特徴とする多機能防護具。
【請求項2】
嵌合バンドに、支持バンドに接触してその回転を規制するストッパを形成した請求項1記載の多機能防護具。
【請求項3】
支持バンドの両端部を略多角形に折り曲げて嵌合バンドのストッパに接触可能な被支持部とし、この支持バンドの被支持部を、嵌合バンドに止め具を介して回転可能に支持させた請求項2記載の多機能防護具。
【請求項4】
嵌合バンドと支持バンドの被支持部との間に、支持バンドの自由回転を規制する摩擦スペーサ部材を介在させた請求項3記載の多機能防護具。
【請求項5】
樹脂シートを、2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムとした請求項1ないし4のいずれかに記載の多機能防護具。
【請求項6】
樹脂シートの厚さを、40μm以上とした請求項1ないし5のいずれかに記載の多機能防護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、介護、ビジネス、飲食、接客等の現場で使用される多機能防護具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療や介護の現場、ビジネスの分野等において、湿性生体物質の飛沫が飛散する場合に、飛沫に含まれる病原体の吸い込みを抑制する効果と、病原体を含む飛沫の拡散を減少させる効果を得るため、マスクが用いられている(特許文献1、2参照)。この種のマスクは、図示しないが、例えば複数の不織布層と、この複数の不織布層に積層されたり、複数の不織布層の間に介在される高密度繊維層とを備え、左右の両側部にU字形の耳紐具がそれぞれ縫着されており、この一対の耳紐具が装着者の耳に嵌入されることにより、装着者の口や鼻を被覆する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3230900号公報
【特許文献2】特許第6831957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来におけるマスクは、以上のように形成され、病原体の吸い込みを抑制したり、飛沫の拡散を減らすことができるものの、装着者が飲食する場合、不織布層に飲食物が付着することがあり、その結果、装着者のストレスに繋がるという問題が生じる。また、装着者がプレゼンテーションする場合には、息苦しさの原因となるし、装着者が顔面や表情を認証システムで認証してもらいたい場合には、障害物となり、カメラに映った顔情報の減少を招くこととなる。
【0005】
これらの問題を解消する手段として、フェイスシールドの採用が考えられる。しかしながら、従来のフェイスシールドは、装着者の頭部に巻かれる装飾板の表面に、装着者の顔面を覆う透明の樹脂フィルムが単に接着されるに止まるので、息苦しさを解消することはできても、固定の樹脂フィルムに飲食物が付着するのを効果的に阻止することができない。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、飲食物の付着を防止し、息苦しさの原因となることがなく、顔面や表情の認証の障害となることが少ない多機能防護具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、装着者の頭部と頸部のいずれかに嵌め合わせ可能な嵌合バンドと、この嵌合バンドに支持されて上下方向に回転可能な支持バンドと、この支持バンドに取り付けられて装着者の顔面の少なくとも一部を隙間を介し被覆可能な透明の樹脂シートとを含んでなることを特徴としている。
【0008】
なお、嵌合バンドに、支持バンドに接触してその回転を規制するストッパを形成することができる。
また、支持バンドの両端部を略多角形に折り曲げて嵌合バンドのストッパに接触可能な被支持部とし、この支持バンドの被支持部を、嵌合バンドに止め具を介して回転可能に支持させることができる。
【0009】
また、嵌合バンドと支持バンドの被支持部との間に、支持バンドの自由回転を規制する摩擦スペーサ部材を介在させることもできる。
また、樹脂シートを、2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムとすることが好ましい。
また、樹脂シートの厚さを、40μm以上とすることが好ましい。
【0010】
ここで、特許請求の範囲における嵌合バンドとストッパは、一体でも良いし、別体でも良い。このストッパは、必要数形成することができる。また、樹脂シートは、縦長でも良いし、横長でも良く、厚いシートや薄いフィルムが含まれる。この樹脂シートには、必要に応じ、防曇性等を付与することができる。樹脂シートは、止め具の他、タック性を有する各種のゴム素材等により、支持バンドに接着したり、粘着することができる。
【0011】
本発明によれば、多機能防護具を装着したまま飲食する場合、支持バンドを引き上げて樹脂シートを上方に退避させ、装着者の口元付近に障害物のない空間を形成すれば、樹脂シートに飲食物が付着するのを防ぎながら飲食することができる。また、多機能防護具の樹脂シートは、装着者の顔面の少なくとも一部に空間をおいて対向するので、装着者の呼吸を容易にする。また、樹脂シートが透明なので、装着者が顔面や表情を認証してもらいたい場合、カメラに映った顔情報が減少することが少ない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、飲食物の付着を防止し、息苦しさの原因になることがないという効果がある。また、顔面や表情の認証の障害になることが少ないという効果がある。また、装着者の頭部と頸部のいずれにも嵌合バンドを嵌め合わせることができ、この嵌め合わせ箇所に応じ、樹脂シートの大きさを変更して装着者の顔面の全部又は一部に対向させることができるので、利用シーンに応じて装着法を選択し、多機能防護具をフェイスシールドあるいはマウスシールドとして利用することができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、嵌合バンドのストッパが支持バンドに接触してその下降を規制するので、樹脂シートを装着者の顔面に対して適正に位置合わせすることができる。
請求項3記載の発明によれば、支持バンドの被支持部が略多角形に形成された状態で嵌合バンドに支持されるので、支持バンドを、嵌合バンドとの間に隙間を区画する湾曲形態に容易に維持することができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、支持バンドの被支持部と摩擦スペーサ部材が接触し、支持バンドの自由回転が規制されて静止するので、引き上げられた支持バンドが自然に回転して下降し、樹脂シートの位置ずれを招くことが少ない。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、樹脂シートとして、2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムを用いるので、優れた印刷性、光沢性、衝撃性、耐水性、耐熱性、透明性、防湿性を有する樹脂フィルムを得ることが可能となる。また、環境に良い樹脂フィルムの提供が期待できる。
請求項6記載の発明によれば、樹脂シートの厚さを40μm以上とするので、樹脂シートに強度や剛性を付与し、樹脂シートに、装着者の顔面の少なくとも一部を有効に保護させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る多機能防護具の実施形態を模式的に示す使用状態説明図である。
【
図2】本発明に係る多機能防護具の実施形態における嵌合バンドと支持バンドを模式的に示す斜視説明図である。
【
図3】本発明に係る多機能防護具の実施形態における樹脂フィルムを模式的に示す斜視説明図である。
【
図4】本発明に係る多機能防護具の実施形態における嵌合バンドを模式的に示す説明図である。
【
図5】本発明に係る多機能防護具の実施形態における支持バンドを模式的に示す説明図である。
【
図6】本発明に係る多機能防護具の実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【
図7】本発明に係る多機能防護具の実施形態における支持バンドが上方に回転していない状態を模式的に示す斜視説明図である。
【
図8】本発明に係る多機能防護具の実施形態における支持バンドが上方に回転した状態を模式的に示す斜視説明図である。
【
図9】本発明に係る多機能防護具の第2の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における多機能防護具は、
図1ないし
図8に示すように、装着者1の頭部2と頸部4のうち、頭部2に嵌合可能な嵌合バンド10と、この嵌合バンド10に支持されて上方向に回転可能な支持バンド20と、この支持バンド20に取り付けられて装着者1の顔面3を隙間31を介して覆う透明の樹脂フィルム30とを備えた安価なフェイスシールドであり、国連サミットで採択されたSDGs(国連の持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる持続可能な開発目標)の目標9の達成に貢献する。
【0018】
嵌合バンド10と支持バンド20は、例えば射出成形法、プレス成形法、樹脂シートの打ち抜き加工法等により製造される。これら嵌合バンド10と支持バンド20の材料としては、特に限定されるものではないが、例えばポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエステル(PEs)樹脂、ナイロン(PA)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、又はこれらの組み合わせ等があげられる。
【0019】
嵌合バンド10は、
図1、
図2、
図4、
図6ないし
図8に示すように、可撓性を有する細長い帯形に形成され、両端部が重ねられて頭部2の後頭部側に位置し、装着者1の頭部2を部分的に被覆する。この嵌合バンド10の両端部には、複数の調整孔11がそれぞれ一列に穿孔され、各調整孔11が貫通した丸孔に形成されており、両端部の任意の調整孔11が重ねられ、必要数の止め具12に着脱自在に嵌入されることにより、嵌合バンド10がリング形に形成されて装着者1の頭部2に適切な大きさで嵌合する。各止め具12は、所定の樹脂を用いて画鋲形に成形され、先端部が茸形に膨出形成されて調整孔11からの脱落を有効に防止する。
【0020】
嵌合バンド10の両側部には、支持バンド20用の取付孔13が穿孔されるとともに、この取付孔13の近傍に位置する半円弧形の切り欠き14が切り欠かれており、この切り欠き14により、支持バンド20の下部に接触する半円形のストッパ15が嵌合バンド10の外側に向けて突出形成される。また、嵌合バンド10の一側部表面には、取付孔13の近傍に位置する正三角形等の識別マーク16が形成され、この識別マーク16の向きにより、嵌合バンド10の上下方向が装着者1等に明瞭に認識される。
【0021】
支持バンド20は、
図1、
図2、
図5、
図6ないし
図8に示すように、可撓性を有する細長い帯形に形成され、嵌合バンド10の取付孔13に止め具12Aを介し回転可能に支持されることにより、嵌合バンド10の前部前方に半円弧形に湾曲した状態で位置するとともに、嵌合バンド10の前部との間に隙間21を区画する。この支持バンド20の両端部には、樹脂フィルム30用の取付孔22、固定孔23、嵌合バンド10用の支持孔24、固定孔23がそれぞれ一列に穿孔され、これら複数の取付孔22、固定孔23、支持孔24がそれぞれ貫通した丸孔に形成される。
【0022】
支持バンド20の両端部は、略多角形の二等辺三角形に折り返して折曲形成され、相対向する複数の折り返し片のうち、一の折り返し片の下端に横長の切り欠き25が形成されており、固定孔23と固定孔23とが相対向し、この相対向する固定孔23に止め具12Bが着脱自在に外側から嵌入されることにより、嵌合バンド10のストッパ15に切り欠き25が接触可能な被支持部26に区画形成される。止め具12Bは、所定の樹脂を用いて画鋲形に成形され、先端部が茸形に膨出形成されて固定孔23からの脱落を有効に防止する。
【0023】
支持バンド20の被支持部26は、嵌合バンド10の取付孔13に支持孔24が重ねられ、嵌合バンド10の取付孔13に嵌入された止め具12Aに支持孔24が貫通係止されることにより、嵌合バンド10に止め具12Aを介して支持され、支持バンド20が上方に回転可能となる。止め具12Aは、止め具12B同様、所定の樹脂を用いて画鋲形に成形され、先端部が茸形に膨出形成されて取付孔13や支持孔24からの脱落を防止する。
【0024】
支持バンド20の被支持部26と嵌合バンド10の表面との間には
図6に示すように、支持バンド20の自由回転を規制する摩擦スペーサ部材27が介在される。この摩擦スペーサ部材27は、例えば摩擦係数の高いウレタンゴムや天然ゴム等を使用して弾性の円板に形成され、嵌合バンド10の取付孔13に嵌入された止め具12Aの軸に貫通される。また、支持バンド20の一端部表面には、支持孔23と固定孔25の間に位置して切り欠き25に近接する正三角形等の識別マーク28が形成され、この識別マーク28の向きにより、支持バンド20の上下方向が明瞭に認識される。
【0025】
樹脂フィルム30は、
図1、
図3、
図7、
図8に示すように、所定の大きさ(例えば、260mm×280mm、310mm×295mm、240mm×240mm等)を有する平面矩形の透明に形成され、上部両側に止め具12Cがそれぞれ装着されており、この一対の止め具12Cが支持バンド20の取付孔22に着脱自在に嵌入されることにより、平面弓なりに湾曲した状態で装着者1の顔面3、具体的には少なくとも額から顎までの領域に隙間31を介し対向して被覆保護するよう機能する。
【0026】
係る樹脂フィルム30としては、特に限定されるものではないが、例えば2軸延伸ポリプロピレン(OPP)樹脂フィルム、無軸延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂フィルム、非晶性ポリエチレンテレフタレート(A‐PET)樹脂フィルム、ポリアリーレンエーテルケトン(PAEK)樹脂フィルム等があげられる。これらの中では、薄い2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムと無軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムが好ましく、印刷性、光沢性、衝撃性、耐水性、耐熱性、透明性、防湿性に優れ、環境に良い安価な2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムが最適である。
【0027】
樹脂フィルム30の表裏両面のうち、少なくとも装着者1の顔面3に対向する裏面(片面)には、装着者1の吐息で曇ることのないよう防曇性や親水性が選択的に付与される。この場合には、樹脂フィルム30の成形時に成形材料に防曇フィラーが添加されたり、又は樹脂フィルム30に防曇剤や防曇フィルム等がコーティングされる。また、樹脂フィルム30の厚さは、40μm以上、好ましくは50μm以上150μm以下、より好ましくは60μm以上130μm以下、さらに好ましくは60μm以上100μm以下が良い。
【0028】
樹脂フィルム30の厚さは、40μm以上であれば良いが、防曇性を確保したい場合には、防曇剤や防曇フィルムの厚さに配慮して40μm以上150μm以下が良い。これに対し、強度や剛性を確保したい場合には、40μm以上、好ましくは60μm以上150μm以下が良い。
【0029】
樹脂フィルム30は、生分解性タイプやバイオ系等の種類があるが、特に問うものではない。樹脂フィルム30が2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの場合、この2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの具体例として、信越ポリマー株式会社製、サン・トックス株式会社製、フタムラ化学株式会社製、三井化学東セロ株式会社製等が該当する。また、止め具12Cは、上記同様、所定の樹脂を用いて画鋲形に成形され、先端部が茸形に膨出形成されて支持バンド20の取付孔22からの脱落を防止する。
【0030】
上記構成において、多機能防護具を組み立てる場合には、先ず、嵌合バンド10の識別マーク16が上向きとなるよう、嵌合バンド10の向きを整え、嵌合バンド10に水平に対向していた支持バンド20を基準位置から少々引き上げ、この支持バンド20の一対の取付孔22に樹脂フィルム30の上部両側の止め具12Cを嵌入することにより、支持バンド20から樹脂フィルム30を垂れ下げる(
図7参照)。この際、支持バンド20の被支持部26と摩擦スペーサ部材27が摺接し、支持バンド20の自由回転が規制されて停止するので、引き上げられた支持バンド20が元の基準位置に自然に下降し、位置ずれを招くことがない。
【0031】
こうして樹脂フィルム30の上部両側の止め具12Cを嵌入したら、嵌合バンド10の両端部の任意の調整孔11を装着者1の頭部2のサイズに合わせながら調整して重ね、この複数の調整孔11に止め具12を嵌入すれば、多機能防護具を組み立ててることができる。
【0032】
次に、組み立てた多機能防護具をフェイスシールドとして使用する場合には、装着者1の頭部2に嵌合バンド10を嵌合して支持バンド20や樹脂フィルム30を装着者1の顔面3側に位置させ、支持バンド20を元の基準位置に下げて樹脂フィルム30を装着者1の顔面3全体に隙間31を介し対向させれば良い。こうすれば、装着者1は、対向した樹脂フィルム30のシールド効果により、飛沫に含まれる病原体の吸い込みの抑制、病原体を含む飛沫の拡散の減少、顔面3の病原体等からの保護を図りながら医療作業、介護作業、ビジネス等に従事することができる。
【0033】
この際、嵌合バンド10の複数のストッパ15が支持バンド20の被支持部26の切り欠き25に接触して支持バンド20の下降を規制するので、樹脂フィルム30を装着者1の顔面3に対して適正な個所に位置させることができる。また、樹脂フィルム30の湾曲により、樹脂フィルム30の強度が増大するので、樹脂フィルム30が風等に煽られて変形し、多機能防護具の保護機能の低下を招くことが少ない。
【0034】
次に、装着者1が多機能防護具を装着したまま飲食する場合には、支持バンド20を高く引き上げて樹脂フィルム30を上方に退避(
図8参照)させ、装着者1の口元付近に樹脂フィルム30の存在しない空間を形成すれば、樹脂フィルム30に飲食物が付着するのを未然に阻止しながら、多機能防護具を外すことなく、快適に飲食することができる。この際、摩擦スペーサ部材27の摺接作用により、支持バンド20の自由回転が規制されて停止するので、引き上げられた支持バンド20が元の基準位置に自然に下降し、飲食に支障を来すことがない。
【0035】
上記構成によれば、支持バンド20が上方向に回転可能なので、樹脂フィルム30に対する飲食物の付着を有効に防止することができ、ストレスや不快感の発生を回避することができ、しかも、実に衛生的である。また、樹脂フィルム30が装着者1の顔面3に直接接触するのではなく、隙間31を介し湾曲しながら対向するので、息苦しさを招くことがない。また、樹脂フィルム30がマスクとは異なり、光透過性の透明なので、装着者1が顔面3や表情を認証システムに認証してもらいたい場合に障害物となることがなく、カメラに映った顔情報の減少を招くことがない。
【0036】
また、嵌合バンド10に識別マーク16が形成されるので、この識別マーク16により、組立時における作業性の向上を図ることができる。また、支持バンド20の被支持部26が略三角形に折曲形成された状態で嵌合バンド10に支持されるので、支持バンド20を容易に半円弧形の湾曲状態に維持することが可能となる。さらに、嵌合バンド10の前部と支持バンド20間の隙間21から熱を上方に排気することができるので、熱気に伴う樹脂フィルム30の曇りを有効に防止することが可能になる。
【0037】
次に、
図9は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、支持バンド20の一対の取付孔22に上下逆にした樹脂フィルム30の止め具12Cを嵌入固定し、装着者1の頸部4に嵌合バンド10を緩く嵌めて胸部に傾けて接触させ、多機能防護具を、装着者1の少なくとも口を隙間31を介して覆うマウスシールドとして利用するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0038】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、装着者1の頭部2ではなく、頸部4に嵌合バンド10を緩く掛けるだけなので、多機能防護具の着脱時に髪型が乱れたり、嵌合バンド10の締め付けに伴い、頭部2や額に痛みが生じるのを防止することができるのは明らかである。また、装着者1の胸部で嵌合バンド10を支持するので、眼鏡や帽子をつけたままでも、多機能防護具を簡単に装着することができる。
【0039】
また、装着者1の胸部に嵌合バンド10を接触させて隙間を塞ぐので、下方からの飛沫をも防止することができる。さらに、樹脂フィルム30を大きく長く拡大形成して装着者1の顔面3全体に隙間31を介し対向させれば、本実施形態の多機能防護具をマウスシールドではなく、フェイスシールドとして使用することが可能となる。
【0040】
なお、上記実施形態では嵌合バンド10に半円形のストッパ15を一体形成したが、矩形、多角形、半楕円形のストッパ15を形成しても良い。また、嵌合バンド10の表面に、複数の識別マーク16を形成したり、識別マーク16を上向きの矢印形等に形成しても良い。また、支持バンド20の表面にタック性の粘着層を積層粘着し、この粘着層に、装着者1の顔面3を被覆する樹脂フィルム30の上部を着脱自在に粘着しても良い。
【0041】
また、樹脂フィルム30には、上記樹脂やフィラーの他、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱向上剤等を必要に応じて添加することができる。さらに、樹脂フィルム30の製造に特に支障を来さないのであれば、樹脂フィルム30の周縁部やその近傍に粘着層を帯形に塗布して積層し、支持バンド20の表面に樹脂フィルム30を粘着層を介し着脱自在に粘着することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る多機能防護具は、医療、介護、ビジネス、家庭、小売業、歯科、製造、飲食、接客、剪定、農作業等の分野で使用される。
【符号の説明】
【0043】
1 装着者
2 頭部
3 顔面
4 頸部
10 嵌合バンド
12 止め具
12A 止め具
12B 止め具
12C 止め具
15 ストッパ
16 識別マーク
20 支持バンド
21 隙間
25 切り欠き
26 被支持部
27 摩擦スペーサ部材
28 識別マーク
30 樹脂フィルム(樹脂シート)
31 隙間