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特開2022-160852木質基材、化粧材及び木質基材の製造方法
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  • 特開-木質基材、化粧材及び木質基材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160852
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】木質基材、化粧材及び木質基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/00 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
B27N3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065320
(22)【出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】大久保 透
【テーマコード(参考)】
2B260
【Fターム(参考)】
2B260AA20
2B260BA01
2B260BA07
2B260BA18
2B260BA19
2B260CB04
2B260CD03
2B260CD04
2B260CD06
2B260DA07
2B260DA18
2B260DB30
2B260DC20
2B260DD02
2B260EA05
(57)【要約】
【課題】本発明は、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質の放散を抑制し、且つ実用的な機械強度と耐水性とを備えた木質基材、その木質基材を備えた化粧材及びその木質基材の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態に係る木質基材20は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料11と、熱可塑性樹脂組成物12と、水溶性樹脂と、を含み、水溶性樹脂はけん化度が90mol%以上のポリビニルアルコールであり、その含有量が木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との合計100質量部に対して0.3質量部以上5質量部以下の範囲内であり、木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)が95/5~65/35であることを要旨とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、熱可塑性樹脂組成物と、水溶性樹脂と、を含む木質基材であって、
前記水溶性樹脂は、けん化度が90mol%以上のポリビニルアルコールであり、その含有量が、前記木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物との合計100質量部に対して、0.3質量部以上5質量部以下の範囲内であり、
前記木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)が、95/5~65/35であることを特徴とする木質基材。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコールのけん化度が97mol%以上であることを特徴とする請求項1に記載の木質基材。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコールがアセトアセチル基を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の木質基材。
【請求項4】
前記木質材料が、菌床を原料に含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項5】
粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、熱可塑性樹脂組成物と、水溶性樹脂とを含む木質基材を用いた化粧材であって、
前記水溶性樹脂は、けん化度が90mol%以上のポリビニルアルコールであり、その含有量が、前記木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物との合計100質量部に対して、0.3質量部以上5質量部以下の範囲内であり、
前記木質基材に、意匠性を有する意匠層が積層されてなることを特徴とする化粧材。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の木質基材の製造方法であって、
前記木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物との混合物に、前記水溶性樹脂を含んだ水溶性樹脂溶液を混合する工程を含むことを特徴とする木質基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質基材、化粧材及び木質基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木質基材とは、木粉、木質チップ、木質繊維などの木質材料を接着剤と混合したものを加熱加圧成形して得られる基材である。この木質基材は、木質材料の種類などによりパーティクルボードや中密度繊維板などと称され、床や壁などの下地材、建具や家具など幅広い用途で使用されている。
【0003】
木質基材の接着剤としては、通常、尿素樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、またはフェノール樹脂系接着剤が、ホルムアルデヒドを含む硬化剤とともに用いられる。ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因となる有害物質であるため、木質基材からの放散が問題となり、放散量低減のための各種施策が検討されているが完全に抑制することはできない。
【0004】
これに対し、従来、ホルムアルデヒドを含まない接着剤として、粉体の糖類と粉体のポリカルボン酸を主成分とする接着剤を用い、これを植物繊維と混合し加熱加圧成形することで繊維ボードを製造する方法が提案されている(特許文献1の段落[0017]参照)。また、ホルムアルデヒドを含まない接着剤として、従来、ポリビニルアルコールと水とからなる接着剤を用いた木質基材を含む積層体の製造方法が提案されている(特許文献2の段落[0017]、及び図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-55620号公報
【特許文献2】特許第5553279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した従来の接着剤を用いた木質基材は、曲げ強度などの機械特性や耐水性が実用上十分なものではなかった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質の放散を抑制し、且つ実用的な機械強度と耐水性とを備えた木質基材、その木質基材を備えた化粧材及びその木質基材の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
発明者は上記した課題を解決すべく鋭意検討した結果、木質材料と熱可塑性樹脂組成物の粉体混合物とを加熱加圧して形成する木質基材において、粉体混合物にポリビニルアルコ―ル溶液を含有させることで、上記した課題が解決することを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る木質基材は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、熱可塑性樹脂組成物と、水溶性樹脂と、を含む木質基材であって、前記水溶性樹脂は、けん化度が90mol%以上のポリビニルアルコールであり、その含有量が、前記木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物との合計100質量部に対して、0.3質量部以上5質量部以下の範囲内であり、前記木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)が、95/5~65/35である。
【0009】
また、本発明の一態様に係る化粧材は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、熱可塑性樹脂組成物と、水溶性樹脂とを含む木質基材を用いた化粧材であって、前記水溶性樹脂は、けん化度が90mol%以上のポリビニルアルコールであり、その含有量が、前記木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物との合計100質量部に対して、0.3質量部以上5質量部以下の範囲内であり、前記木質基材に、意匠性を有する意匠層が積層されてなる。
【0010】
また、本発明の一態様に係る木質基材の製造方法は、前記木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物との混合物に、前記水溶性樹脂溶液を混合する工程を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質の放散を抑制し、且つ実用的な機械強度と耐水性とを備えた木質基材、その木質基材を備えた化粧材及びその木質基材の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る木質基材の断面構造及びその木質基材の製造工程を説明するため模式図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る化粧材の構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状及び構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る木質基材の断面構造及びその木質基材の製造方法を示す模式図である。図1中、符号20は、本発明の第1実施形態に係る木質基材を示す。木質基材20は、木質基材20を構成する木質材料11の種類などによりパーティクルボードや中密度繊維板などと称され、床や壁などの下地材、建具や家具など幅広い用途で使用されている。
【0015】
木質基材20は、図1に示すように、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料11と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物12と、水溶性樹脂と、を含む原料混合物10を加熱加圧して形成される。なお、木質基材20には、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質は含まれていない。よって、木質基材20内部からのホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質の放散を抑制することができる。
以下、本実施形態に係る木質基材20の構成について詳しく説明する。
【0016】
(木質材料11)
木質材料11は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有するものである。ここで、「粉体状」、「チップ状」には、サイズや形状の定義は一般に存在しない。本実施形態では、そのサイズ(平均粒径)が概ね数十ミクロン~数センチメートルの範囲にあるものをいう。本実施形態における木質材料11の平均粒径(D50)は、例えば、100μm以上30mm以下の範囲内であることが望ましい。
【0017】
木質材料11は、例えば、木粉、木質繊維、木材をチップ状に破砕したものが挙げられ、その原料としては、例えば、間伐材、オガ粉、廃木材なども用いることができる。
また、木質材料11は、木材以外でも、例えば、竹、麻、ヤシ繊維、クルミ殻など、木材と同様にセルロース成分を含むものであれば、その候補とすることができる。
【0018】
木質材料11の原料としては、例えば、キノコ栽培時に大量に発生する使用済み菌床が好適である。菌床は、キノコ栽培に用いる培地であり、木材チップやオガ粉にフスマや米ぬかなどの栄養分を混ぜたものである。菌床は、キノコ栽培後の国内で年間30万トン前後が廃棄されていると推定されバイオマスとして有望であるが、リサイクルが進んでいないのが現状である。
【0019】
本実施形態において、菌床を木質材料11として使用する場合には、木質材料11全体の体積に占める菌床の割合は、1%以上100%以下の範囲内であればよく、好ましくは、50%以上100%以下の範囲内であり、さらに好ましくは、80%以上100%以下の範囲内である。菌床の含有量が上記数値範囲内であれば、製造コストを通常の木質チップを用いた場合と比較して低減することができる。
【0020】
(熱可塑性樹脂組成物12)
原料混合物10には一種類以上の熱可塑性樹脂組成物12が用いられる。また熱可塑性樹脂組成物12は一種類以上の熱可塑性樹脂を含有する。
【0021】
熱可塑性樹脂組成物12に含まれる熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエスエル、ポリアミド、ポリオレフィン、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、エチレンビニルアセテート、シリコーンゴムなど各種用いることができるが、木質基材20の機械強度と耐水性の点でポリエチレンが好適である。
【0022】
ポリエチレンは、特に限定されるものでなく、高密度ポリエチレン(比重が0.92~0.96程度のポリエチレン)、低密度ポリエチレン(比重が0.91~0.92程度のポリエチレン)、超低密度ポリエチレン(比重が0.9に満たない程度のポリエチレン)、直鎖状低密度ポリエチレン(比重が0.94に満たない程度のポリエチレン)など既存の材料から、原料混合物10の流動性などを考慮し適宜選択して用いられる。
熱可塑性樹脂は、木質材料11の熱可塑性樹脂に対する接着性を向上させるため、酸を含む樹脂であっても良い。酸を含む樹脂としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレンや無水マレイン酸ポリプロレン等、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、及び無水イタコン酸変性ポリエチレン等を用いることができる。
【0023】
酸を含む樹脂の添加量は、全熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して5質量部以上50質量部以下の範囲内が好ましく、10質量部以上40質量部以下の範囲内がさらに好ましい。
酸を含む樹脂の添加量が5質量部に満たないと、木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との接着性が不足するため、木質基材20に十分な強度を付与することができない場合がある。また、酸を含む樹脂の添加量が50質量部を超えると木質基材20の強度が低下する場合ある。
【0024】
原料混合物10、より具体的には熱可塑性樹脂組成物12は、基材形成における熱プレス時に熱可塑性樹脂を架橋させるため有機過酸化物を配合しても良い。架橋により木質基材20の強度や耐水性が向上する場合がある。原料混合物10に配合される有機過酸化物としては、例えば、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル等の既存材料から、反応性や安定性を考慮し、適宜選択して用いられる。
【0025】
有機過酸化物の添加量は、全熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下の範囲内が好ましく、0.5質量部以上4質量部以下の範囲内がさらに好ましくい。
有機過酸化物の添加量が0.1質量部に満たないと、原料混合物10の加熱加圧時の反応性が不足するため、木質基材20の強度向上に寄与しない。また、有機過酸化物の添加量が5質量部を超えると反応時の分解生成物が多くなり、木質基材20の変形の原因になる場合がある。
【0026】
熱可塑性樹脂組成物12のうち複数成分を含むものは、各種公知の方法で作製することが可能である。複数成分を含む熱可塑性樹脂組成物12は、例えば、一軸混錬機やバッチ式混錬機を用い、熱可塑性樹脂とその他の原料を加熱混錬後、機械粉砕や凍結粉砕等の方法で粉体化することで作製できる。
【0027】
木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)は、95/5~65/35の範囲内である。また、木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)は、より好ましくは95/5~75/25の範囲内であり、さらに好ましくは90/10~80/20の範囲内である。木質材料11の含有量が、上記数値(95/5)より大きくなると、木質基材20に十分な強度を付与することができない場合がある。一方、木質材料11の含有量が上記数値(65/35)より小さいと、原料混合物10が均一に混合された状態にならず、木質基材20の強度や耐水性が低下する場合がある。
【0028】
(水溶性樹脂)
水溶性樹脂はポリビニルアルコール(PVA)が用いられ、原料混合物10に水溶液の状態で配合される。ポリビニルアルコール水溶液は粘着性を有するため、原料混合物10中で木質材料11に熱可塑性樹脂組成物12がポリビニルアルコールを介して付着し、その結果、均一に混合した原料混合物10が得られ、木質基材20の耐水性や強度が向上する。
【0029】
ポリビニルアルコールは、そのけん化度が90mol%以上であることが必要であるが、木質基材20の耐水性の観点からポリビニルアルコールのけん化度は97mol%以上がより好ましい。ポリビニルアルコールのけん化度が90mol%未満であると木質基材の耐水性の低下が顕著に生じる。
なお、ポリビニルアルコールのけん化反応及びポリビニルアルコールのけん化度測定は、それぞれ公知の方法を用いることができる。
【0030】
ポリビニルアルコールの、木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との合計100質量部に対する配合量は、0.3質量部以上5質量部以下の範囲内である。また、ポリビニルアルコールの、木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との合計100質量部に対する配合量は、より好ましくは、1.0質量部以上3質量部以下の範囲内である。ポリビニルアルコールの配合量が上記数値(0.3質量部)より小さいと、原料混合物の均一性が不十分となり、木質基材の強度や耐水性が低下する。また、ポリビニルアルコールの配合量が上記数値(5質量部)より大きいと、木質基材の強度や耐水性が低下するだけでなく、原料混合物が塊状になりやすいため製造工程に問題が生じる。
【0031】
ポリビニルアルコールは、アセトアセチル基を含むものであることが好ましい。ポリビニルアルコールがアセトアセチル基を含んだものであれば、木質基材20の熱圧形成時にアセトアセチル基同士が架橋し、木質基材20の強度と耐水性が向上する。
なお、上述したアセトアセチル基含有ポリビニルアルコールにおけるアセトアセチル基を有する構造単位の含有量は、0.1mol%以上20mol%以下の範囲内であれば好ましく、0.5mol%以上15mol%以下の範囲内であればより好ましい。
【0032】
ポリビニルアルコール水溶液は、架橋剤を含有していてもよい。木質基材20の熱圧形成時にポリビニルアルコールが架橋することで木質基材20の耐水性や強度の向上が期待できる。ポリビニルアルコール水溶液に含まれる架橋剤には、例えば、架橋アミンやヒドラジド化合物、ジルコニウム等の金属塩など、市販の材料を用いることができる。架橋剤の含有量は、ポリビニルアルコール100質量部に対して1質量部以上10質量部以下の範囲内であれば好ましい。
【0033】
ポリビニルアルコール水溶液の濃度は、ポリビニルアルコールの分子量などにより適宜設定されるが、通常は概ね10wt%以下である。
【0034】
(原料混合物10の作製)
原料混合物10の作製工程は、混合物を得るために、木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12を混合したものに、木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との合計100質量部に対する配合量が0.3質量部以上5質量部以下の範囲内となるように、けん化度が90mol%以上であるポリビニルアルコール水溶液を添加し混合することが好ましい。例えば、木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12を攪拌しながら、ポリビニルアルコール水溶液を噴霧器などで添加することで原料混合物10を得ることができる。
【0035】
(原料混合物10の加熱加圧)
原料混合物10の加熱加圧は、各種公知の方法を用いることができるが、枠型を用いたプレス成型が好適である。加熱温度は、熱可塑性樹脂組成物12に含まれる熱可塑性樹脂の融点以上であることが必要であり、通常120℃~250℃である。250℃を超えると、木質材料11の熱劣化が顕著に生じる。加圧圧力は、通常は10~200kgf/cmであり、所望する木質基材20の密度により適宜設定した値を用いる。木質基材20の密度や形状は、用途に応じて適宜決定されるが、密度については0.5~1.2g/ccが好ましく、更に0.6~1.1g/ccが好ましい。
【0036】
(第2実施形態)
図2を用いて第2実施形態について説明する。木質基材20は、基材単独でも化粧材として実用に供することができるが、意匠性を付与するため、図2に示すように絵柄などの意匠が付与された紙やフィルムなどの意匠性基材(意匠層)31を木質基材20に積層して化粧材30としてもよい。
【0037】
[実施例]
以下に、本発明の第1実施形態に係る木質基材の実施例1~5及び比較例1~5について説明する。なお、本発明は、下記の実施例1~5に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
実施例1では、低密度ポリエチレン樹脂90質量部、酸変性ポリオレフィン樹脂(ユーメックス100TS、三洋化成工業(株)製)10質量部をバッチ式混錬装置で加熱混錬後、機械粉砕することで、粉体状の熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0039】
水溶性樹脂溶液は、水溶性樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)(けん化度93mol%)を純水に溶解し、濃度5wt%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。
【0040】
木質材料は、キノコ収穫後の菌床を洗浄後に乾燥した材料を用いた。
【0041】
上述した木質材料と熱可塑性樹脂組成物とをミキサーで攪拌しながら、上述した水溶性樹脂溶液をエアスプレーで噴霧し、さらに攪拌を続け、以下の混合比(質量比)の原料混合物を得た(木質材料/熱可塑性樹脂組成物/水溶性樹脂=85/15/2)。以下、原料混合物の構成材料の混合比は、質量比で表記する。
【0042】
この原料混合物をアルミ製の型枠に導入し、熱プレス装置で加熱加圧することで、密度が0.7g/ccの木質基材を得た(プレス条件:30kgf/cm、170℃10分、基材材厚:10mm)。
なお、本実施例では、木質基材には、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質は含まれていない。
【0043】
(実施例2)
実施例2においては、実施例1の水溶性樹脂溶液のポリビニルアルコールを、けん化度98mol%のポリビニルアルコールに置き換え、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0044】
(実施例3)
実施例3においては、原料混合物の混合比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物/水溶性樹脂)を実施例2の「85/15/2」から「85/15/4」に変更し、それ以外は実施例2と同様の方法で木質基材を得た。
【0045】
(実施例4)
実施例4においては、原料混合物の混合比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物/水溶性樹脂)を実施例2の「85/15/2」から「70/30/2」に変更し、それ以外は実施例2と同様の方法で木質基材を得た。
【0046】
(実施例5)
実施例5においては、実施例2の水溶性樹脂溶液のポリビニルアルコールを、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール(ゴーセネックスZ300,けん化度98mol%、三菱ケミカル(株)製)に置き換え、それ以外は実施例2と同様の方法で木質基材を得た。
【0047】
(比較例1)
比較例1においては、原料混合物の混合比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物/水溶性樹脂)を実施例1の「85/15/2」から「85/15/0.2」に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0048】
(比較例2)
比較例2においては、実施例1の水溶性樹脂溶液のポリビニルアルコールを、けん化度87mol%のポリビニルアルコールに置き換え、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0049】
(比較例3)
比較例3においては、原料混合物の混合比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物/水溶性樹脂)を実施例2の「85/15/2」から「85/15/6」に変更し、それ以外は実施例2と同様の方法で木質基材を得た。
【0050】
(比較例4)
比較例4においては、原料混合物の混合比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物/水溶性樹脂)を実施例2の「85/15/2」から「60/40/2」に変更し、それ以外は実施例2と同様の方法で木質基材を得た。
【0051】
(比較例5)
比較例5においては、実施例1の水溶性樹脂溶液のポリビニルアルコールをポリアクリル酸に置き換え、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0052】
(木質基材の評価)
木質基材の物性評価は、次の(1)機械強度、(2)耐水性の2点で評価した。
【0053】
(1)機械強度
機械強度は、JISA5908に準拠する方法で曲げ強度を測定した。測定値(単位:N/mm)に対する機械強度の評価基準は、「◎」「○」「△」「×」の4段階とし、「◎」「○」「△」を合格、「×」を不合格とした。
【0054】
◎:18以上(合格)
○:13以上18未満(合格)
△:8以上13未満(合格)
×:8未満(不合格)
【0055】
(2)耐水性
耐水性は、JISA5908に準拠する方法で吸水厚さ膨張率を測定した。測定値(単位:%)に対する評価基準は、次の通り「○」「△」「×」の3段階とし、「○」「△」を合格、「×」を不合格とした。
【0056】
○:8未満(合格)
△:8以上12未満(合格)
×:12以上(不合格)
【0057】
(評価結果)
木質基材の評価結果は表1のとおりである。物性評価が2点とも「合格」なのは、実施例1~5であり、比較例1~5は何れも耐水性が不合格であった。
【0058】
【表1】
【0059】
比較例1は原料混合物に含まれる水溶性樹脂の含有量が少なすぎること、比較例2はポリビニルアルコールのけん化度が小さすぎること、比較例3は水溶性樹脂の配合量が過剰であること、比較例4は熱可塑性樹脂組成物の配合量が過剰であること、比較例5は水溶性樹脂にポリビニルアルコール以外のものが用いられていることが原因と推測できる。
【0060】
(実施例1~5の評価結果)
実施例1~5の評価結果を比較すると、評価結果が2点とも「○」または「◎」であるのは、実施例2および実施例5の2件であり、実施例5が最も好ましい形態である。
【0061】
耐水性の評価結果に「△」を含むのは、実施例1、実施例3および実施例4の3件である。実施例1はポリビニルアルコールのけん化度が小さいため水分で膨潤しやすいこと、実施例3はポリビニルアルコール配合量が多いため水分による膨潤の影響を受けやすいこと、実施例4は熱可塑性樹脂組成物の分量が多く、原料混合物の均一性が良くないことが、それぞれ耐水性低下の原因となっていると推測できる。
【0062】
また、上述した実施例及び比較例では、木質基材には、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質は含まれていない。よって、上述した実施例及び比較例に係る木質基材の内部からのホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質の放散を抑制することができる。
以上、表1から明らかなように、本発明の木質基材は優れた機械強度と耐水性を有することが示された。
【符号の説明】
【0063】
10…原料混合物、11…木質材料、12…熱可塑性樹脂組成物、20…木質基材、30…化粧材、31…意匠層(意匠性基材)
図1
図2