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  • 特開-脱臭装置及び脱臭方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160854
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】脱臭装置及び脱臭方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/38 20060101AFI20221013BHJP
   B01D 53/84 20060101ALI20221013BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
B01D53/38 120
B01D53/84 ZAB
B01D53/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065322
(22)【出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】502378601
【氏名又は名称】株式会社シープラン
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】乾 敏晃
(72)【発明者】
【氏名】小関 祐治
【テーマコード(参考)】
4D002
【Fターム(参考)】
4D002AA13
4D002AB02
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA13
4D002BA17
4D002CA07
4D002DA59
4D002EA01
4D002EA03
4D002GA01
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB01
4D002GB02
4D002GB03
4D002GB05
4D002GB08
4D002GB09
4D002GB11
4D002HA03
4D002HA06
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、脱臭性能が高い脱臭装置及び脱臭方法を提供することである。また、コンパクト化できる脱臭装置及び脱臭方法を提供することである。
【解決手段】複数の充填層、微生物を培養するための複数の貯水槽及び散水機構を備え、前記充填層は、微生物を担持した充填材が充填され、臭気ガスが流れるように連結され、前記貯水槽は、水が流れるように連結され、前記散水機構は、最上流の貯水槽より下流の少なくとも1つの貯水槽の水を前記充填層に散水する機構であり、散水する水の供給元となる貯水槽より上流の貯水槽に、充填層を通過した散水された水が導入されるように、前記充填層と前記貯水槽が連結されている脱臭装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気ガスを通過させ脱臭するための複数の充填層、微生物を培養するための複数の貯水槽及び前記充填層に前記貯水槽の水を散水するための散水機構を備えた脱臭装置であって、
前記充填層には、微生物を担持した充填材が充填され、
前記充填層は、前記臭気ガスが導入される最上流の充填層から前記臭気ガスが排出される最下流の充填層まで、前記臭気ガスが流れるように連結され、
前記貯水槽は、前記脱臭装置の外部より前記水が供給される最上流の貯水槽から最下流の貯水槽まで、前記水が流れるように連結され、
前記散水機構は、前記最上流の貯水槽より下流の少なくとも1つの貯水槽の水を前記充填層に散水する機構であり、
散水する水の供給元となる貯水槽より上流の貯水槽に、充填層を通過した散水された水が導入されるように、前記充填層と前記貯水槽が連結されている脱臭装置。
【請求項2】
散水する水の供給元となる貯水槽及び前記貯水槽より上流の貯水槽は、隣り合う貯水槽の下流側の貯水槽が、上流側の貯水槽に連結されている充填層よりも下流の充填層に連結されていることを特徴とする請求項1記載の脱臭装置。
【請求項3】
散水機構によって、散水する水の供給元となる貯水槽の水が、前記貯水槽と連結している充填層及び該充填層よりも上流の充填層の少なくとも1つに散水されることを特徴とする請求項2記載の脱臭装置。
【請求項4】
散水機構によって、貯水槽の水が、さらに前記貯水槽と連結している充填層よりも下流の充填層に散水されることを特徴とする請求項3記載の脱臭装置。
【請求項5】
充填層と充填層の間及び/又は充填層と貯水槽の間に、緩衝室を設けることを特徴とする請求項1~4のいずれか記載の脱臭装置。
【請求項6】
充填材がpH6.5~8.5の発泡ガラスであることを特徴とする請求項1~5のいずれか記載の脱臭装置。
【請求項7】
最上流の充填層に導入する臭気ガスの温度を45℃以下に冷却する冷却装置を備えることを特徴とする請求項1~6のいずれか記載の脱臭装置。
【請求項8】
少なくとも1つの充填層を内部に有する充填塔が横方向に複数配置され、前記充填塔それぞれの下方に貯水槽が配置され、散水機構により前記充填塔内に散水された水が散水された前記充填塔の下方の貯水槽に、前記充填塔内の前記充填層を通過して導入されるように、前記充填塔と前記貯水槽が配置された請求項1~7のいずれか記載の脱臭装置。
かつ、
【請求項9】
pHが6.5~8.5である脱臭に用いるための微生物担持用発泡ガラス。
【請求項10】
臭気ガスの脱臭方法であって、
臭気ガスを通過させ脱臭するための微生物を担持した充填材が充填された複数の充填層、微生物を培養するための複数の貯水槽及び前記充填層に前記貯水槽の水を散水するための散水機構を用意し、
前記充填層を、前記臭気ガスが導入される最上流の充填層から前記臭気ガスが排出される最下流の充填層まで、前記臭気ガスが流れるように連結させ、
前記貯水槽を、前記水が供給される最上流の貯水槽から最下流の貯水槽まで、前記水が流れるように連結させ、
前記充填層に臭気ガスを導入し、前記貯水槽に水を供給して、
前記最上流の貯水槽より下流の少なくとも1つの貯水槽の水を前記充填層に散水し、
散水する水の供給元となる貯水槽より上流の貯水槽に、充填層を通過した散水された水を導入する脱臭方法。
【請求項11】
臭気ガスの温度を45℃以下に冷却した後、充填層に前記臭気ガスを導入することを特徴とする請求項10記載の脱臭方法。
【請求項12】
微生物資材を貯水槽に導入することを特徴とする請求項10又は11記載の脱臭方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を利用した脱臭装置及び脱臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
養豚場等の畜産施設からは臭気が発生し、その発生源は主に豚舎等の畜舎と糞尿のコンポストである。これらから発生する臭気は不快で強烈な臭気(悪臭)であり、近隣からの苦情の原因となっている。そのため、臭気を除くために、バブリングやスクラバー方式で臭気ガスを水に溶解させる水洗法、臭気成分を薬液に吸着させ化学的に中和する薬液処理法、オガクズやモミガラに臭気成分を吸着させる方法、オゾンの酸化力で臭気成分を分解するオゾン脱臭法等の脱臭方法が使用されている。また、微生物による臭気成分の分解作用を利用した生物脱臭方法として、土壌を用いる方法である土壌脱臭法、ロックウールを主体とした材料に有機物や微生物源を混合調整した脱臭材料を使用する方法、微生物を保持できる充填材(担体)を塔内に充填し、充填層内に臭気ガスを通過させて、微生物に臭気成分を分解させる充填塔式生物脱臭法等が使用されている。この中でも、充填塔式生物脱臭法は、維持管理が容易であり、充填材に担持させる微生物の密度を高くできることが期待されるため、いくつかの方法が提案されている。例えば、特許文献1に記載の方法は、脱臭塔内に充填材を充填し、悪臭ガスを脱臭塔内に導入して充填層中を通過させ、その際悪臭ガス中に含まれる悪臭成分を微生物により分解する方法であり、さらに、貯水槽から汲み上げた水を充填層に散水し、充填層を通過してきた水を再度貯水槽に戻して散水用の水を循環させている。しかしながら、微生物の分解能力は充填材への担持後、時間とともに低下していくため、脱臭性能を維持することは難しい。特許文献1に記載の方法では、貯水槽のORP、pHを管理し、貯水槽に栄養成分を添加することにより、脱臭性能の低下を防止しようとしているが、十分ではなかった。また、脱臭性能を維持するためには、装置をコンパクト化することも難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-99021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、脱臭性能が高い脱臭装置及び脱臭方法を提供することを課題とする。また、コンパクト化できる脱臭装置及び脱臭方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、脱臭性能に優れ、コンパクト化の可能な脱臭装置及び脱臭方法の検討を開始した。従来、脱臭のために微生物を含有する充填層を使用する方法が提案され、この充填層には臭気成分であるアンモニアを溶解させるために水が散水されていた。散水され充填層を通過した水には微生物が含まれているため、この水を貯水槽に溜め貯水槽のpHを調整し、栄養成分を添加して貯水槽に溜めた水を再度散水することが提案されている。これは、微生物の活性を維持しながら充填層と貯水槽の間で水を循環させようとする試みである。しかしながら、十分な効果は得られていない。本発明者らは、貯水槽における微生物の活性を維持するのではなく、むしろ積極的に微生物を培養し増殖させ、このような微生物を含む水を充填層に散水すれば、脱臭効果を向上させられるのではないかと考え検討を進めたところ、貯水槽を複数使用して微生物を含んだ水を貯水槽の間でゆっくり移動させると、微生物の培養効果に優れ微生物を増殖できることを見いだした。さらに、充填層、充填層を通過した水が溜まる貯水槽及び散水する水を供給する貯水槽との関係を特定の関係とすると微生物の培養効果が更に優れることを見いだした。また、充填層における脱臭効果が非常に高まることから、装置をコンパクト化できることを見いだした。さらに、このような脱臭装置及び脱臭方法は、充填層における脱臭効果が非常に高まることにより充填材の使用量を減らすことができ、コンパクト化により装置の製造に要する費用、設置工事費、ランニングコスト、管理の手間、また設置スペースを減らすことができるので、脱臭処理を低コスト化できるものであった。本発明は、こうして完成されたものである。
【0006】
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
(1)臭気ガスを通過させ脱臭するための複数の充填層、微生物を培養するための複数の貯水槽及び前記充填層に前記貯水槽の水を散水するための散水機構を備えた脱臭装置であって、
前記充填層には、微生物を担持した充填材が充填され、
前記充填層は、前記臭気ガスが導入される最上流の充填層から前記臭気ガスが排出される最下流の充填層まで、前記臭気ガスが流れるように連結され、
前記貯水槽は、前記脱臭装置の外部より前記水が供給される最上流の貯水槽から最下流の貯水槽まで、前記水が流れるように連結され、
前記散水機構は、前記最上流の貯水槽より下流の少なくとも1つの貯水槽の水を前記充填層に散水する機構であり、
散水する水の供給元となる貯水槽より上流の貯水槽に、充填層を通過した散水された水が導入されるように、前記充填層と前記貯水槽が連結されている脱臭装置。
(2)散水する水の供給元となる貯水槽及び前記貯水槽より上流の貯水槽は、隣り合う貯水槽の下流側の貯水槽が、上流側の貯水槽に連結されている充填層よりも下流の充填層に連結されていることを特徴とする上記(1)の脱臭装置。
(3)散水機構によって、散水する水の供給元となる貯水槽の水が、前記貯水槽と連結している充填層及び該充填層よりも上流の充填層の少なくとも1つに散水されることを特徴とする上記(2)の脱臭装置。
(4)散水機構によって、貯水槽の水が、さらに前記貯水槽と連結している充填層よりも下流の充填層に散水されることを特徴とする上記(3)の脱臭装置。
(5)充填層と充填層の間及び/又は充填層と貯水槽の間に、緩衝室を設けることを特徴とする上記(1)~(4)のいずれかの脱臭装置。
(6)充填材がpH6.5~8.5の発泡ガラスである上記(1)~(5)のいずれかの脱臭装置。
(7)最上流の充填層に導入する臭気ガスの温度を45℃以下に冷却する冷却装置を備えることを特徴とする請求項1~6のいずれか記載の脱臭装置。
(8)少なくとも1つの充填層を内部に有する充填塔が横方向に複数配置され、前記充填塔それぞれの下方に貯水槽が配置され、散水機構により前記充填塔内に散水された水が散水された前記充填塔の下方の貯水槽に、前記充填塔内の前記充填層を通過して導入されるように、前記充填塔と前記貯水槽が配置された上記(1)~(7)のいずれかの脱臭装置。
かつ、
(9)pHが6.5~8.5である脱臭に用いるための微生物担持用発泡ガラス。
(10)臭気ガスの脱臭方法であって、
臭気ガスを通過させ脱臭するための微生物を担持した充填材が充填された複数の充填層、微生物を培養するための複数の貯水槽及び前記充填層に前記貯水槽の水を散水するための散水機構を用意し、
前記充填層を、前記臭気ガスが導入される最上流の充填層から前記臭気ガスが排出される最下流の充填層まで、前記臭気ガスが流れるように連結させ、
前記貯水槽を、前記水が供給される最上流の貯水槽から最下流の貯水槽まで、前記水が流れるように連結させ、
前記充填層に臭気ガスを導入し、前記貯水槽に水を供給して、
前記最上流の貯水槽より下流の少なくとも1つの貯水槽の水を前記充填層に散水し、
散水する水の供給元となる貯水槽より上流の貯水槽に、充填層を通過した散水された水を導入する脱臭方法。
(11)臭気ガスの温度を45℃以下に冷却した後、充填層に前記臭気ガスを導入することを特徴とする請求項10記載の脱臭方法。
(12)微生物資材を貯水槽に導入することを特徴とする上記(10)又は(11)の脱臭方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の脱臭装置及び脱臭方法は、優れた脱臭性能を有する。本発明の脱臭装置及び脱臭方法は、コンパクトな脱臭装置を提供できる。また、本発明の脱臭装置及び脱臭方法は、脱臭に要する費用を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の脱臭装置の一実施形態を示す図である。
図2図2は、本発明の脱臭装置の他の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の脱臭装置は、臭気ガスを通過させ脱臭するための複数の充填層、微生物を培養するための複数の貯水槽及び前記充填層に前記貯水槽の水を散水するための散水機構を備えた脱臭装置であって、前記充填層には、微生物を担持した充填材が充填され、前記充填層は、前記臭気ガスが導入される最上流の充填層から前記臭気ガスが排出される最下流の充填層まで、前記臭気ガスが流れるように連結され、前記貯水槽は、前記脱臭装置の外部より前記水が供給される最上流の貯水槽から最下流の貯水槽まで、前記水が流れるように連結され、前記散水機構は、前記最上流の貯水槽より下流の少なくとも1つの貯水槽の水を前記充填層に散水する機構であり、散水する水の供給元となる貯水槽より上流の貯水槽に、充填層を通過した散水された水が導入されるように、前記充填層と前記貯水槽が連結されている脱臭装置である。本発明の脱臭装置は、複数の充填層、すなわち2つ又は3つ以上の充填層を備え、本発明の脱臭装置に導入された臭気ガスは、複数の充填層を順次通過して排出される。臭気ガスが最初に通過する充填層を最上流の充填層といい、臭気ガスが最後に通過する充填層を最下流の充填層という。例えば、コンポストからの排気(臭気ガス)は、温度が80℃以上になることがあり、微生物が死滅するおそれがあるため、必要に応じて充填層に導入する臭気ガスを冷却してもよく、本発明の脱臭装置に臭気ガスの冷却装置を取り付けてもよい。冷却装置により、最上流の充填層に導入する臭気ガスの温度を45℃以下に冷却するのが好ましく、40℃以下に冷却するのがより好ましい。導入する臭気ガスの温度は15~45℃に調整することが好ましく、30~40℃に調整することがより好ましい。本発明の脱臭装置は、複数の貯水槽、すなわち2つ又は3つ以上の貯水槽を備え、本発明の脱臭装置に供給された水は、複数の貯水槽を順次通過する。水が最初に通過する貯水槽を最上流の貯水槽といい、水が最後に通過する貯水槽を最下流の貯水槽という。水が余分となった場合は、最下流の貯水槽から排出されてもよい。本発明の脱臭装置は、散水機構を備える。本発明における散水機構は、貯水槽の水を充填層に散水できれば、その構造等特に制限されるものではないが、例えば、貯水槽の水を汲み上げて充填層の上方まで送るポンプ、貯水槽から充填層の上方まで水を移送する配管、水を充填層に散水するノズル等で構成される。
【0010】
本発明における充填層は、最上流の充填層から最下流の充填層まで、臭気ガスが流れるように連結されている。ここで連結とは、1つの充填層を通過した臭気ガスが、次の充填層に流れるように充填層と充填層がつながっていることを意味する。その構造は特に制限されず、例えば、臭気ガスを流すための配管で充填層と充填層との間をつなぐ、空間を介して充填層と充填層とを並べ、その空間を通じて臭気ガスを流す等の構造を挙げることができる。本発明における貯水槽は、最上流の貯水槽から最下流の貯水槽まで、水が流れるように連結されている。ここで連結とは、1つの貯水槽に貯留された水が、次の貯水槽に流れるように貯水槽と貯水槽がつながっていることを意味する。その構造は特に制限されず、例えば、水を流すための配管で貯水槽と貯水槽との間をつなぐ、壁を介して貯水槽と貯水槽とを並べ壁に穴をあけて水の通路とする、壁を介して貯水槽と貯水槽とを並べて貯水槽と壁の上方に空間を設け、空間を通じて壁の上部からオーバーフローした水を隣の貯水槽に流す構造等を挙げることができる。本発明においては、最上流の貯水槽より下流の少なくとも1つの貯水槽の水が、散水機構によって充填層に散水される。散水する水を供給する貯水槽は、1つでもよく2つ以上でもよい。散水される充填層は、1つでもよく2つ以上でもよく全ての充填層でもよい。また、最上流の貯水槽より下流の貯水槽の水が散水されれば、それに加えて最上流の貯水槽の水が散水されてもよい。本発明における充填層と貯水槽は、少なくとも散水する水の供給元となる貯水槽より上流の貯水槽に、充填層を通過した散水された水(以下、「処理水」ともいう。)が導入されるように連結されている。ここで連結とは、充填層を通過した水が貯水槽に導入されるように充填層と貯水槽がつながっていることを意味する。その構造は特に制限されず、例えば、水を流すための配管で充填層と貯水槽との間をつなぐ、充填層の下方に空間を介して貯水槽を設け、空間を通じて充填層を通過した水を貯水槽に落下させる等の構造を挙げることができる。本発明における充填層と貯水槽は、充填層に散水する水の供給元となる貯水槽より上流の貯水槽の少なくとも1つに、少なくとも1つの充填層を通過した処理水が導入されるように連結されていれば、各充填層を通過した処理水がどの貯水槽に導入されるかは、特に制限されるものではなく、貯水槽と連結されない充填層があってもよく、水の供給元となる貯水槽に処理水が導入されてもよく、水の供給元となる貯水槽より下流の貯水槽に処理水が導入されてもよい。
【0011】
本発明の脱臭装置は、少なくとも1つの充填層を内部に有する充填塔が横方向に複数配置され、前記充填塔それぞれの下方に貯水槽が配置され、散水機構により前記充填塔内に散水された水が散水された前記充填塔の下方の貯水槽に、前記充填塔内の前記充填層を通過して導入されるように、前記充填塔と前記貯水槽が、配置されてもよい。本発明における充填塔は、1つ又は2つ以上の充填層を内部に有し、前記充填層を臭気ガスが通過できる構造であれば、その構造、形状等は特に制限されず、例えば、円筒状、角筒状等の形状を挙げることができ、これら筒形状物内に充填層を設けた構造等を挙げることができる。また、例えば、充填層が1つの場合は1つの充填層を臭気ガスが通過でき、充填層が2つ以上の場合は順次各充填層を臭気ガスが通過できる構造を挙げることができる。例えば、複数の充填層を、充填層と充填層の間に、臭気ガスが通過できる空間を設けて充填塔内に配置してもよい。本実施形態においては、2つ以上の充填塔が横方向に並んで配置され、充填塔間を臭気ガスが流れるように連結し、最上流の充填層を有する充填塔への臭気ガス導入部を設け、最下流の充填層を有する充填塔からの臭気ガス排出部を設けることにより、各充填層が、臭気ガスが導入される最上流の充填層から前記臭気ガスが排出される最下流の充填層まで、臭気ガスが流れるように連結される。本実施形態においては、貯水槽が、それぞれの充填塔の下方に配置される。貯水槽は、1つの充填塔に対して1つ配置して、1つの充填塔を通過した散水が1つの貯水槽に導入されるようにしてもよく、複数の充填塔に対して1つ配置して、複数の充填塔を通過した散水が1つの貯水槽に導入されるようにしてもよい。貯水槽間を水が流れるように連結し、最上流の貯水槽への水供給部を設けることにより、各貯水槽が、水が供給される最上流の貯水槽から最下流の貯水槽まで、水が流れるように連結される。最下流の貯水槽には、必要に応じて水の排出部を設けてもよい。本態様の脱臭装置は、充填塔内に設けられた充填層が縦方向に並ぶように各充填塔が縦に設置され、縦に設置された充填塔が複数横方向に並べられている。そのため、充填塔に散水された水は、臭気ガスと同じ経路を通って下方に落下して、充填塔の下方に配置された貯水槽に導入される。
【0012】
本発明における貯水槽には、充填層に散水され充填層を通過した水である処理水が導入される。この処理水は、充填層を通過する間に充填層中の微生物の一部を含むようになるため、貯水槽の水に微生物が導入される。また処理水は、充填層を通過する間にアンモニア等の微生物にとって栄養分となる臭気ガス中の成分を含むようになるため、微生物にとっての栄養分も貯水槽の水に導入される。このため、貯水槽で微生物を培養することが可能となるが、1つの貯水槽のみを設けた場合、微生物が十分培養され増殖しないうちに貯水槽の水が再び充填層に散水されるので、微生物の培養効果を発揮することはできない。本発明では、複数の貯水槽を設け、水が貯水槽間を上流から下流に流れるようにするため、微生物を含んだ水は、各貯水槽で貯留され次の貯水槽へと流れていく。そのため、下流の貯水槽に貯留されるまでの間に微生物の培養、増殖に必要な時間を確保することができる。そして本発明では、最上流ではなく下流の貯水槽まで流れてきた水を再び充填層に散水し、かつ散水する水の供給元となる貯水槽より上流の貯水槽に処理水が導入されるため、上流の貯水槽に導入された処理水中の微生物は、散水する水の供給元となる貯水槽に流れてくるまでの間に、十分培養され増殖する。そのため本発明では、微生物を多く含んだ水を充填層に散水することができ、充填層での臭気成分の分解を促進することができる。一般に、微生物は環境が整うと倍数でなく乗数で増えると言われており、有機分解(脱臭)能力は微生物の数に比例するので、本発明において微生物を含んだ水を各貯水槽間を移動させながら微生物を培養し増殖させることによる効果は極めて大きくなる。貯水槽で培養される微生物は、処理水に含まれる微生物のみでなく、予め貯水槽の水中に微生物を添加してもよく、脱臭装置の運転途中で貯水槽の水中に微生物を添加して補充してもよい。また、本発明においては、最上流の充填層に臭気ガスを導入する前に、処理水を臭気ガスに散水してもよい。散水された後の処理水は、微生物の栄養分と共に溶存酸素を多く含むので、微生物の培養により好適となる。
【0013】
本発明における充填層は、微生物を担持した充填材が充填された充填層である。臭気ガスは、充填層を通過する際、臭気成分が充填材に担持された微生物により分解されて脱臭される。微生物としては、アンモニア等の臭気成分を分解する微生物であれば特に制限されず、例えば、アンモニア硝化菌等を挙げることができる。充填材としては、微生物を担持できるものであれば特に制限されず、例えば、ロックウール、発泡ガラス、その他の多孔質材等を挙げることができる。従来、発泡ガラスは脱臭のための微生物の担体としては多くは使用されてこなかった。これは、発泡ガラスのpHは10~11程度のアルカリ性であるのに対し、脱臭に使用される微生物はpHが中性の環境でないと、効率的な活動を行わないため、膨大な量のガラス発泡材を使用するか、またはたとえば一定期間散水を行いpHを下げて使用する必要があったからである。発泡ガラスを脱臭のための微生物の担体として使用しようという発想はあったがこのような問題が普及の障害になっていた。しかし、発泡ガラスであってもpHを6.5~8.5程度にすれば、脱臭のための微生物の担体として従来の担体よりもはるかに優れることを見いだした。このpHが6.5~8.5である脱臭に用いるための微生物担持用発泡ガラスは、従来はなかったものである。発泡ガラスのpHは、発泡ガラスの比重から割り出した1Lの体積分の重量の発泡ガラスを、2Lのビーカーに入れ、1Lの中性(pH7±0.1)の水を加えて10分攪拌し、その後静置して24時間経過後、水のpHをpH測定器で測定することにより測定でき、本発明における発泡ガラスのpHとは、前記方法で測定したpHをいう。発泡ガラスは、ガラスや添加物などの原材料を700~1000℃で焼成し、焼成物を粉砕して得られる多孔材料であるため、発泡ガラス表面には粉砕の際に生じる微細な粉状成分が付着している。発泡ガラスのpHは、発泡ガラスから溶出する成分と、発泡ガラス表面に付着した前記微細な粉状成分に影響される。発泡ガラスのpHを6.5~8.5にすることにより、溶出成分や付着成分の影響により脱臭に使用される微生物の活動が低下することを防ぐことができる。より微生物の活動低下を防ぎ、微生物の活動をより向上させる観点から、発泡ガラスのpHは、6.5~8.0がより好ましく、6.5~7.5が更に好ましい。また、pHが6.5~8.5である発泡ガラスは、発泡ガラスを無機酸等の酸で洗浄することにより得ることができる。本発明の微生物担持用発泡ガラスは、脱臭という用途を見いだした用途発明である。特に、糞尿のコンポスト等の畜産施設からの臭気ガスの脱臭用途を見いだしたものである。本発明における充填材は、pHが6.5~8.5である発泡ガラスが好ましい。また、貯水槽の中に、微生物の培養を助けるためにpHが6.5~8.5の発泡ガラスを入れてもよい。充填材としてロックウールを使用した場合、ロックウールが散水により水分を含むとひしゃげてしまい、空気が通りにくくなる。通常、3ケ月程度でこのような状況が発生するため、性能維持のために半年~1年程度で交換が必要になる。一方、発泡ガラスは形状の変化や劣化がおきにくいので、脱臭のための微生物の担体(充填材)として発泡ガラスを使用できると、充填材交換のためのランニングコストを低減できる。
【0014】
本発明では、散水する水の供給元となる貯水槽及び前記貯水槽より上流の貯水槽は、隣り合う貯水槽の下流側の貯水槽が、上流側の貯水槽に連結されている充填層よりも下流の充填層に連結されていることが好ましい。充填層を通過する臭気ガス中の臭気成分の濃度は、上流が濃く下流にいくにしたがって薄くなっていく。したがって、処理水に含まれる微生物にとって栄養分となる成分の濃度も上流の充填層からの処理水では濃く、下流にいくにしたがって薄くなっていく。そのため、隣り合う貯水槽のうち下流側の貯水槽が連結される充填層が、上流側の貯水槽が連結される充填層よりも下流の充填層となるようにすることにより、下流の貯水槽には上流の貯水槽に比べて微生物にとっての栄養分の少ない処理水が導入され、反対に上流の貯水槽には栄養分の多い処理水が導入される。栄養分の多い上流の貯水槽で増殖した微生物は、下流の貯水槽に運ばれると、栄養分が少ないため飢餓状態になる。飢餓状態の微生物は栄養分を見つけると最も活発な分解活動を行うため、飢餓状態の微生物を含む水を充填層に散水すると、充填層において微生物が臭気成分の分解活動を活発に行うことにより脱臭効果を更に促進することができる。また、貯水槽に導入される処理水中の栄養分は、下流にいくにしたがい段階的に少なくなるため、栄養分が一気に減少することにより微生物が減少するのを防ぐことができる。散水する水の供給元となる貯水槽より下流での充填層と貯水槽との処理水の導入に関する対応関係は、特に制限されない。
【0015】
本発明では、散水機構によって、散水する水の供給元となる貯水槽の水が、前記貯水槽と連結している充填層及び該充填層よりも上流の充填層の少なくとも1つに散水されることが好ましい。こうすることにより、臭気成分の分解効果の高い下流の貯水槽の水を、臭気成分を多く含む臭気ガスが通過する上流の充填層に散水することができ、臭気成分の分解効率を高めることができる。さらに、本発明では、上記に加えて、散水する水の供給元となる他の貯水槽の水が、前記貯水槽と連結している充填層よりも下流の充填層の少なくとも1つに散水されてもよい。こうすることにより、臭気成分の分解効果の高い下流の貯水槽の水を、臭気成分を多く含む臭気ガスが通過する上流の充填層に散水し、臭気成分の分解効果の低い上流の貯水槽の水を、臭気成分の量が少ない臭気ガスが通過する下流の充填層に散水して、負荷を均一化して分解処理の効率化を図ることができる。本発明における散水量は特に制限されるものではないが、例えば、充填層の体積1mあたりの散水量が0.02~0.1m/分等を挙げることができる。
【0016】
本発明では、充填層と充填層の間及び/又は充填層と貯水槽の間に、緩衝室を設けることが好ましい。本発明では、臭気ガスを複数の充填層を通過させて流すために、相当の圧力をかけて臭気ガスを脱臭装置に導入する必要があり、充填層に圧力が偏ってかかるおそれがある。そのため、充填層にかかる圧力を均一化することが好ましい。充填層と充填層の間に気流圧力のバッファとなる緩衝室を設けることにより、充填層に入る臭気ガス気流の圧力を均一化することができる。また、充填層を通過した処理水は貯水槽に導入されるが、充填層を通過した臭気ガスも貯水槽の水面に当たる構造の場合、気流の圧力が均一でないと水面の特定個所に集中して気流が当たることにより、水が飛ばされたり、貯水槽から貯水槽への水の流れが乱されたりするおそれがある。そのため、貯水槽の水面に均一に気流が当たるようにすることが好ましい。充填層と貯水槽の間に気流圧力のバッファとなる緩衝室を設けることにより、貯水槽の水面に当たる臭気ガス気流の圧力を均一化することができる。緩衝室は、臭気ガス気流の圧力を均一化するための空間であり、臭気ガス気流が当たる充填層表面の面積や貯水槽水面の面積、及び導入する臭気ガスの流量や圧力に応じて、その容積を適宜選択できるが、臭気ガス気流が当たる充填層表面や貯水槽水面においては、これら表面積や水面の面積と同じ面積を有することが好ましい。また、臭気ガス気流の圧力を均一化するために、充填層と緩衝室との間、又は緩衝室の中に気流を均一化するための部材を置くことができる。前記部材としては、例えば、穴又はスリットのあいた板、メッシュ状の板等を挙げることができる。この緩衝室を処理水が通過する通路として使用すると、処理水中に溶存酸素を多く含ませることができ、微生物の培養のために、より効果的になる。養豚場等のコンポストの場合は、一般にヒーターが内蔵され、豚糞を強制的に発酵(堆肥化)する仕組みになっており、最も強烈な悪臭が発生するのは、発酵するまでの発酵過程であるコンポスト運転時である。発酵してしまうと、悪臭であることに変わりはないものの臭気は低減するが、一般のコンポストは、十分な発酵ができていない場合が少なくはなく、これも悪臭の原因になっている。本発明の脱臭装置は、臭気濃度に応じて(栄養源の増減に応じて)装置内の微生物が増減する構造になっているため、発酵過程の時間帯や発酵程度によって異なる悪臭の度合いに対して、広く対応できる。また、養豚等のコンポストに限らず有機物による悪臭であれば、どのようなものでも対応可能である。
【0017】
本発明における貯水槽には、微生物の栄養剤、pH調整剤等を加えてもよく、微生物を加えてもよい。栄養剤を加えることや、pHを微生物の培養に適したpHに調整することにより微生物の培養をより促進することができる。また、貯水槽に微生物を添加することにより、死滅や脱臭装置外への流出等により減少した微生物を補充し、貯水槽における又は充填層内における微生物の量を一定にすることができる。また、自然界では有機物には微量であってもそこに分解菌が存在し、又はそこに分解菌が飛来する。本発明の脱臭装置は、そのような微生物を増殖し活性化できるため、充填層や貯水槽に微生物を添加しなくても、そのような地場菌のみでも悪臭成分を分解することが可能な場合がある。貯水槽に間欠曝気等の曝気により酸素を供給して、微生物の培養を促進してもよい。本発明における貯水槽には、pH、EC(電気伝導率)、水温等の計測器、ヒーター、冷却器等の水温調整器などを設置して常時管理し、貯水槽の環境を微生物が増殖活性化するのに適した環境にすることが好ましい。ECを測定することにより貯水槽の汚濁の程度を測定できる。微生物は45℃を上回る高温では死滅するおそれがあり、15℃を下回る低温で働きが鈍化するので、貯水槽の水や臭気ガスの温度は、15~45℃が好ましく、15~40℃がより好ましく、30℃±3℃を更に好ましい温度として挙げることができる。また、本発明の脱臭装置では、臭気濃度、貯水槽の水量、風量、装置内の臭気ガス温度等の装置内温度、微生物の残量などを測定する測定器を設置してもよい。例えば、脱臭装置の排気管に風量計を設置することにより、脱臭装置の目詰まりを検知することができる。これらの測定値を管理し各条件を調製することにより、効率よく脱臭を行うことができると共に、トラブルの発生を未然に回避したり、発生したトラブルを速やかに解決したりすることができる。インターネット回線等を通じてこれらの測定値を管理すると、現地ユーザーと保守メンテナンス業者等との間でリアルタイムで情報を共有することができ、迅速な対応が可能となる。また、離れたところにある脱臭装置を一括して管理することができる。本発明の脱臭装置及び脱臭方法においては、微生物資材を貯水槽に導入してもよい。本発明における微生物資材とは、微生物の培養の促進、微生物からの酵素排出の促進を行う成分であり、例えば、フルボ酸、フミン酸等を挙げることができる。
【0018】
本発明の一実施形態を、図1を用いて説明する。図1の脱臭装置では、充填層を縦に2つ並べ、その下方に貯水槽を設けたものを横に3列並べている。各充填層は最上流の充填層である第1充填層21から最下流の充填層である第6充填層42まで臭気ガスが流れるように、緩衝室で連結されている。また、各貯水槽は最上流の貯水槽である第1貯水槽101から最下流の貯水槽である第3貯水槽103まで水が流れるように、水通路で連結されている。また、第1充填層21に導入する前の臭気ガスに臭気ガス導入路11において処理水を散水している。図1の脱臭装置においては、臭気ガス導入路11における脱臭を第1脱臭、第1充填層21及び第2充填層22における脱臭を第2脱臭、第3充填層31及び第4充填層32における脱臭を第3脱臭、第5充填層41及び第6充填層42における脱臭を第4脱臭と呼んでいる。臭気ガスは、臭気ガス導入路11及び緩衝室S1aを通って第1充填層21に導入される。導入された臭気ガスは、第1充填層21を通過し、緩衝室S1bを通って、第2充填層22に導入され、第2充填層22を通過した臭気ガスは、緩衝室S1c及びS2cを通って、第3充填層31に導入され、第3充填層31を通過した臭気ガスは、緩衝室S2bを通って、第4充填層32に導入され、第4充填層32を通過した臭気ガスは、緩衝室S2a及びS3aを通って、第5充填層41に導入され、第5充填層41を通過した臭気ガスは、緩衝室S3bを通って、第6充填層42に導入され、第6充填層42を通過した臭気ガスは、緩衝室S3cを通って、臭気ガス排出路12から排出される。排出される脱臭されたガスの一部(例えば、20%程度)を臭気ガス導入路11に戻して、脱臭装置に導入される臭気ガスを薄め、処理する臭気ガス中の臭気成分の濃度を調整してもよい。また、処理する臭気ガスを冷却するために使用してもよい。
【0019】
一方、水供給路13から第1貯水槽101に水が供給され、供給された水は水通路13-1を通って第2貯水槽102に流れ、第2貯水槽102の水は水通路13-2を通って第3貯水槽103に流れる。水通路13-1は、第1貯水槽101と第2貯水槽102との間の壁に水が通過できる穴をあけたものであり、水通路13-2は、第2貯水槽102、第3貯水槽103及びこれらの間の壁の上方の空間(緩衝室S2a及びS3aを兼ねている)において、第2貯水槽102の水を前記壁の上をオーバーフローさせて第3貯水槽103に流すものである。図1の脱臭装置では、水供給路13から適切な量の水を流し続けることにより、第1貯水槽101から第3貯水槽103への水の流れを作っている。また、余分な水は水排出路14から排出し、水が不足する場合は供給する水の量を増やすことにより水量の調整を行っている。
【0020】
第3貯水槽103の水は、散水用ポンプ71で汲み上げられ、散水路7を通って、散水ノズル72及び73から充填層に散水される。散水路7は途中で3つに分かれ、1つは第2充填層22、第3充填層31及び第6充填層42の上方に、1つは第1充填層21、第4充填層32及び第5充填層41の上方に、1つは臭気ガス導入路11の上方に通じている。図1の脱臭装置では、最下流の貯水槽である第3貯水槽103の水が、全ての充填層に散水されている。第2充填層22及び第1充填層21を通過した水は、緩衝室S1a(処理水通路を兼ねる)を通って下に落下することにより第1貯水槽101に導入される。同様に、第3充填層31及び第4充填層32を通過した水は、緩衝室S2a(処理水通路を兼ねる)を通って下に落下することにより第2貯水槽102に導入され、第6充填層42及び第5充填層41を通過した水は、緩衝室S3a(処理水通路を兼ねる)を通って下に落下することにより第3貯水槽103に導入される。図1の脱臭装置では、充填層を通過した水(処理水)が、散水する水の供給元となる第3貯水槽103より上流の貯水槽に導入されると共に、第3貯水槽103にも導入されている。また、第3貯水槽103並びにその上流の貯水槽101及び102では、隣り合う貯水槽の下流側の貯水槽が、上流側の貯水槽に連結されている充填層よりも下流の充填層に連結されている。各貯水槽に導入された処理水は、各貯水槽に貯留された後、下流の貯水槽に流れて第3貯水槽103に達する。そして、第3貯水槽103の水は再び充填層に散水され、こうして水は貯水槽と充填層の間を循環する。各貯水槽では、曝気用配管15-1及び15-2により曝気を行い微生物の培養に好適な環境を整えている。また、各貯水槽には、発泡ガラス16を投入し、微生物がより増殖しやすい環境を整えている。
【0021】
図1の脱臭装置では、第1貯水槽101に導入される処理水が最も栄養分が多く微生物も多くなっている。この処理水が第1貯水槽101に導入されて微生物の培養のサイクルが始まり、第2貯水槽102、第3貯水槽103に移っていくにしたがって安定して培養が進む。一方で、微生物の増殖により栄養分は減っていき、さらに下流の貯水槽にいくにしたがって、導入される処理水中の栄養分も減っていくので、第3貯水槽103には増殖した多くの微生物を含みながら栄養分が少な水が溜まる。この水に含まれる微生物は、いわゆる腹を減らして餌を求めている状態のため、この水を散布すると臭気成分の分解が促進される。図1の脱臭装置では、第2脱臭、第3脱臭、第4脱臭と進むにつれ充填層の容積を小さくしている。これは臭気成分の濃度により対応した脱臭(臭気成分の濃度は、第2脱臭から第4脱臭に進むにつれ小さくなっている)を行うためであるが、第2脱臭~第4脱臭まで同じ容積でもよい。必要に応じて微生物や微生物資材を貯水槽に添加してもよく、この添加は自動でも手動でもよい。
【0022】
本発明の他の一実施形態を、図2を用いて説明する。臭気ガスは、臭気ガス導入路11を通って第1充填層B1に導入される。導入された臭気ガスは、第1充填層B1を通過し、第2充填層B2、第3充填層C2、第4充填層C1、第5充填層D1、第6充填層D2、第7充填層E2、第8充填層E1、第9充填層F1、第10充填層F2と下流の充填層を順に通過して、臭気ガス排出路12から排出される。各充填層の間には、図1の脱臭装置と同様に緩衝室が設けられている。一方で、水供給路13から第1貯水槽101に水が供給され、供給された水は水通路13-1を通って第2貯水槽102に流れ、第2貯水槽102の水は水通路13-2を通って第3貯水槽103に流れ、第3貯水槽103の水は水通路13-3を通って第4貯水槽104に流れ、第4貯水槽104の水は水通路13-4を通って第5貯水槽105に流れる。水通路13-1と13-3では、貯水槽と貯水槽の間の壁に水が通過する穴があけられており、水通路13-2と13-4では、図1の脱臭装置と同様にオーバーフローにより水が移動している。
【0023】
第1貯水槽101の水は、散水路7-3を通って、第6充填層D2及び第5充填層D1に散水される。第2貯水槽102の水は、散水路7-2を通って、第3充填層C2及び第4充填層C1に散水される。第3貯水槽103の水は、散水路7-1を通って、第2充填層B2及び第1充填層B1に散水される。散水路7-1、7-2及び7-3は途中で二つに分かれ、一方はそれぞれ第2充填層B2、第3充填層C2及び第6充填層D2の上方に、他方はそれぞれ第1充填層B1、第4充填層C1及び第5充填層D1の上方に通じている。また、第5貯水槽105の水は、散水路7-4を通って、第7充填層E2、第8充填層E1、第10充填層F2及び第9充填層F1に散水される。散水路7-4は途中で3つに分かれ、1つは第7充填層E2及び第10充填層F2の上方に、1つは第8充填層E1及び第9充填層F1の上方に、1つは臭気ガス導入路11に通じている。第2充填層B2及び第1充填層B1に散水された水は、各充填層を通過して第1貯水槽101に落下することにより導入される。同様に、第3充填層C2及び第4充填層C1に散水された水、第6充填層D2及び第5充填層D1に散水された水、第7充填層E2及び第8充填層E1に散水された水、第10充填層F2及び第9充填層F1に散水された水は、それぞれ第2貯水槽102、第3貯水槽103、第4貯水槽104、第5貯水槽105に落下して導入される。
【0024】
第3貯水槽103の水は、第3貯水槽103が連結している第6充填層D2及び第5充填層D1よりも上流の第2充填層B2及び第1充填層B1に散水され、第1貯水槽101の水は、第1貯水槽101が連結している第2充填層B2及び第1充填層B1よりも下流の第6充填層D2及び第5充填層D1に散水され、第2貯水槽102の水は、第2貯水槽102が連結している第3充填層C2及び第4充填層C1に散水される。このため、第1貯水槽101~第3貯水槽103の中で最も臭気成分の分解能力の高い水を、最も臭気成分の多い(負荷の高い)充填層に散水し、最も臭気成分の分解能力の低い水を、最も臭気成分の少ない(負荷の低い)充填層に散水することができるので、負荷を均一化し分解処理の効率化を図ることができる。また、第7充填層E2から下流の充填層に流れる臭気ガスは、脱臭がある程度進み臭気成分が少なくなっている。そのため、第4貯水槽104及び第5貯水槽105に導入される処理水中の栄養分及び微生物はそれほど多くなくいが、臭気成分の少ない第7充填層E2~第10充填層F2には、第5貯水槽105の水を散水することにより十分に臭気成分を分解することができる。
【実施例0025】
図1のタイプの脱臭装置(ただし、第2脱臭~第4脱臭までの充填層の容積は同じ)を使用して脱臭を行った。脱臭装置の大きさは、幅1100mm×奥行600mm×高さ1400mmであり、脱臭装置内の充填層の容量は合計で0.60m、充填材としてpH7の発泡ガラスを使用した。この脱臭装置に43mの養豚コンポストからの臭気ガスを、40℃まで冷却して、流量1.5m/分で導入した。各充填層への散水量は、それぞれ0.0042m/分であった。各貯水槽中の水の量は、それぞれ約0.1mであった。各貯水槽には、それぞれ約0.03mの発泡ガラスを投入した。各貯水槽の水には、マイクロバブル発生機により空気を送り込んだ。その結果を表1に示す。発酵過程であるコンポスト運転時のコンポストからの排気の臭気濃度(アンモニア濃度)は1000ppm以上であったが(測定器の検出範囲を超えたため、それ以上の濃度は測定できなかった)、脱臭装置からの排気の臭気濃度は20ppmと極めて低い値にまで減少した。また、コンポスト発酵完了時のコンポストからの排気の臭気濃度は300ppmであったが、脱臭装置からの排気の臭気濃度は15ppmと極めて低い値にまで減少した。このように、本発明の脱臭装置は、臭気濃度の広い範囲にわたり、臭気濃度に応じて適切な脱臭処理が行え、非常にコンパクトでありながら、優れた脱臭効果を有した。本脱臭装置は、同等の能力の従来の装置に比べて1/5~1/50程度の大きさであった。
【0026】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の脱臭装置及び脱臭方法は、各種の脱臭に使用でき、特に養豚、養鶏等の畜産施設からの強烈な悪臭の脱臭に好適に使用でき、コンポストからの悪臭の脱臭にも好適である。また、畜産施設からの悪臭のみでなく、有機物による悪臭であればどのような施設や悪臭源からの臭気ガスに対しても対応可能であり、例えば、排水処理施設、食品工場等からの悪臭の脱臭にも使用できる。
【符号の説明】
【0028】
11 臭気ガス導入路
12 臭気ガス排出路
13 水供給路
13-1 水通路
13-2 水通路
14 水排出路
15-1 曝気用配管
15-2 曝気用配管
16 発泡ガラス
21 第1充填層
22 第2充填層
31 第3充填層
32 第4充填層
41 第5充填層
42 第6充填層
7 散水路
7-1 散水路
7-2 散水路
7-3 散水路
7-4 散水路
71 散水用ポンプ
72 散水ノズル
73 散水ノズル
101 第1貯水槽(A水槽)
102 第2貯水槽(B水槽)
103 第3貯水槽(C水槽)
104 第4貯水槽(D水槽)
105 第5貯水槽(E水槽)
S1a 緩衝室(処理水通路)
S1b 緩衝室(処理水通路)
S1c 緩衝室
S2a 緩衝室(処理水通路)
S2b 緩衝室(処理水通路)
S2c 緩衝室
S3a 緩衝室(処理水通路)
S3b 緩衝室(処理水通路)
S3c 緩衝室
B1 第1充填層
B2 第2充填層
C2 第3充填層
C1 第4充填層
D1 第5充填層
D2 第6充填層
E2 第7充填層
E1 第8充填層
F1 第9充填層
F2 第10充填層
図1
図2