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特開2022-160888タービン制御装置、タービン制御方法、およびタービン制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160888
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】タービン制御装置、タービン制御方法、およびタービン制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   F01D 19/00 20060101AFI20221013BHJP
   F01D 17/06 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
F01D19/00 G
F01D19/00 J
F01D17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065385
(22)【出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100217940
【弁理士】
【氏名又は名称】三並 大悟
(72)【発明者】
【氏名】ハディヤン ブディ プラセティオ
(72)【発明者】
【氏名】稲田 浩
(72)【発明者】
【氏名】アフィフ マシュラフル
【テーマコード(参考)】
3G071
【Fターム(参考)】
3G071BA02
3G071BA25
3G071CA01
3G071DA02
3G071DA05
3G071EA02
3G071FA02
3G071HA01
3G071HA04
3G071JA02
(57)【要約】
【課題】スムーズにタービンを起動することが可能なタービン制御装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係るタービン制御装置は、タービンの速度指令に基づいて、タービンに流入する蒸気の流量を計算するタービンモデルベース流量制御部と、流量の計算値に基づいて、蒸気をタービンに供給するか否かを切り替える主蒸気止め弁の開度を計算するMSV開度計算部と、開度の計算値に基づいて、主蒸気止め弁の開閉動作を制御するMSV開度制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンの速度指令に基づいて、前記タービンに流入する蒸気の流量を計算するタービンモデルベース流量制御部と、
前記流量の計算値に基づいて、前記蒸気を前記タービンに供給するか否かを切り替える主蒸気止め弁の開度を計算するMSV開度計算部と、
前記開度の計算値に基づいて、前記主蒸気止め弁の開閉動作を制御するMSV開度制御部と、
を備える、タービン制御装置。
【請求項2】
前記開閉動作の指令と、前記主蒸気止め弁の開時間とに基づいて、前記主蒸気止め弁の開度を推定するMSV開度シミュレーターをさらに備える、請求項1に記載のタービン制御装置。
【請求項3】
前記タービンモデルベース流量制御部は、前記タービンで計測された速度と、前記速度指令との偏差に基づいて前記流量を補正する補正部を有する、請求項1または2に記載のタービン制御装置。
【請求項4】
前記タービンモデルベース流量制御部は、前記タービンの速度を維持するための第1流量と、前記タービンを加速するための第2流量とを加算して前記流量を計算する、請求項1または2に記載のタービン制御装置。
【請求項5】
タービンの速度指令に基づいて、前記タービンに流入する蒸気の流量を計算し、
前記流量の計算値に基づいて、前記蒸気を前記タービンに供給するか否かを切り替える主蒸気止め弁の開度を計算し、
前記開度の計算値に基づいて、前記主蒸気止め弁の開閉動作を制御する、
タービン制御方法。
【請求項6】
前記開閉動作の指令と、前記主蒸気止め弁の開時間とに基づいて、前記主蒸気止め弁の開度を推定する、請求項5に記載のタービン制御方法。
【請求項7】
前記タービンで計測された速度と、前記速度指令との偏差に基づいて前記流量を補正する、請求項5または6に記載のタービン制御方法。
【請求項8】
前記タービンの速度を維持するための第1流量と、前記タービンを加速するための第2流量とを加算して前記流量を計算する、請求項5または6に記載のタービン制御方法。
【請求項9】
タービンの速度指令に基づいて、前記タービンに流入する蒸気の流量を計算し、
前記流量の計算値に基づいて、前記蒸気を前記タービンに供給するか否かを切り替える主蒸気止め弁の開度を計算し、
前記開度の計算値に基づいて、前記主蒸気止め弁の開閉動作を制御する、
ことをコンピュータに実行させるためのタービン制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タービン制御装置、タービン制御方法、およびタービン制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
タービンに流入される蒸気の流量を制御する機器として、制御弁(CV:Control Valve)と、主蒸気止め弁(MSV:Main Stop Valve)とが知られている。タービンを起動する際、主蒸気止め弁は開方向に動いて、全開状態となる。一方、制御弁は、速度指令に基づいて計算された開度で少しずつ開く。これにより、タービンに流入される蒸気の流量が少しずつ増加するので、タービンは、速度指令通りに昇速する。
【0003】
しかし、タービンの起動時における低負荷時間帯では、蒸気が制御弁から漏れる場合がある。この場合、速度指令とタービンの実際の速度との偏差に応じて、主蒸気止め弁4を開閉することによって、タービンの速度を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58-104306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
主蒸気止め弁4は、オン・オフ弁であるため、全開または全閉の指令しか受け取ることができない。また、主蒸気止め弁4が、指令を受け取ってから実際に全開状態または全閉状態になるまでにタイムラグが生じる。そのため、速度指令とタービンの実際の速度との偏差に応じて主蒸気止め弁の開閉動作を制御する速度フィードバック制御を実施した場合、制御性が不十分になり、その結果スムーズにタービンを起動することが困難になる。
【0006】
本発明の実施形態は、上述した課題を解決するためになされたものであり、スムーズにタービンを起動することが可能なタービン制御装置、タービン制御方法、およびタービン制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るタービン制御装置は、タービンの速度指令に基づいて、タービンに流入する蒸気の流量を計算するタービンモデルベース流量制御部と、流量の計算値に基づいて、蒸気をタービンに供給するか否かを切り替える主蒸気止め弁の開度を計算するMSV開度計算部と、開度の計算値に基づいて、主蒸気止め弁の開閉動作を制御するMSV開度制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、スムーズにタービンを起動することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るタービン制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】CV制御部の構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係るMSV制御部の構成を示すブロック図である。
図4】速度指令と流量指令との関係を示すグラフである。
図5】MSV制御部の動作手順の一例を示すフローチャートである。
図6】第2実施形態に係るMSV制御部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。下記の実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るタービン制御装置の構成を示すブロック図である。本実施形態に係るタービン制御装置1は、CV制御部10およびMSV制御部20を有する。CV制御部10は、制御弁3の開閉動作を制御する。制御弁3は、タービン2に流入する高温高圧の蒸気100の流量を制御する。一方、MSV制御部20は、主蒸気止め弁4の開閉動作を制御する。主蒸気止め弁4は、蒸気100をタービン2に供給するか否かを切り替える元栓として機能する。制御弁3および主蒸気止め弁4は、タービン2に連結された配管5に設置されている。蒸気100は、配管5を通じてタービン2内に流入する。
【0012】
制御弁3には、コイルが設けられている。このコイルにサーボ電流が供給されると、制御弁3が開閉する。サーボ電流が正方向に流れると、油がタンクから制御弁3に流入する。これにより、制御弁3は開方向に動く。サーボ電流が負方向に流れると、制御弁3に流入した油がタンクに排出される。これにより、制御弁3は閉方向に動く。サーボ電流がコイルを流れないときには、制御弁3の現状の開度が維持される。
【0013】
制御弁3の開度は、LVDT6(Liner Variable Differential Transformer)によって検出される。LVDT6の検出結果は、CV制御部10に入力される。CV制御部10は、速度センサ7で計測されたタービン2の実際の(回転)速度や、LVDT6で検出された制御弁3の実際の開度に基づいて、サーボ電流の大きさや向きを示す電流指令C10を制御弁3へ出力する。
【0014】
主蒸気止め弁4は、制御弁3よりも配管5の上流側に取り付けられている。主蒸気止め弁4の開閉動作は、MSV制御部20から入力される励磁指令C20によって制御される。励磁指令C20がオフであると、油が油タンクから主蒸気止め弁4に流入する。これにより、主蒸気止め弁4は、全開状態になるまで開方向に動く。反対に、励磁指令C20がオンであると、主蒸気止め弁4に流入した油が油タンクに排出される。これにより、主蒸気止め弁4は、全閉状態になるまで閉方向に動く。主蒸気止め弁4が全閉状態になると、タービン2への蒸気100の供給が停止される。
【0015】
図2は、CV制御部10の構成を示すブロック図である。図2に示すように、CV制御部10は、減算部11と、乗算部12と、CV開度計算部13と、CV開度制御部14と、を有する。CV制御部10では、各部の機能がハードウェアで実現されてもよいし、少なくともの一部の機能がソフトウェアで実現されてもよい。
【0016】
減算部11には、速度指令C11と、速度センサ7の検出値とが入力される。速度指令C11は、タービン2の速度を示す。この速度は、タービン2の起動開始時に入力操作によって選択された昇速率に基づいて算出されている。速度センサ7の検出値は、タービン2の実際の速度に相当する。減算部11は、速度指令C11から速度センサ7の検出値を減算し、減算結果を示す偏差C12を乗算部12へ出力する。
【0017】
乗算部12は、偏差C12にゲインを乗算する。続いて、乗算部12は、乗算結果を示す乗算値C13をCV開度計算部13へ出力する。
【0018】
CV開度計算部13は、乗算値C13に基づいて制御弁3の開度を計算する。本実施形態では、CV開度計算部13は、乗算値C13を制御弁3の開度に変換するCV流量関数を用いて制御弁3の開度を計算する。続いて、CV開度計算部13は、開度の計算値を示す開度指令C14をCV開度制御部14へ出力する。
【0019】
CV開度制御部14には、開度指令C14と、LVDT6の計測値とが入力される。LVDT6の計測値は、制御弁3の実際の開度に相当する。CV開度制御部14は、開度指令C14をLVDT6の計測値と比較する。その結果、開度指令C14がLVDT6の計測値よりも高い場合には、CV開度制御部14は、制御弁3のコイルに正方向のサーボ電流を流す電流指令C10を出力する。これにより、制御弁3が開方向に動いて、蒸気100が配管5を通じてタービン2に流入する。
【0020】
開度指令C14がLVDT6の計測値に等しい場合には、CV開度制御部14は、制御弁3のコイルに電流を流さない電流指令C10を出力する。これにより、制御弁3の現状の開度が維持される。このように、タービン2の起動時に制御弁3を少しずつ開くことによって、タービン2への蒸気100の流量を少しずつ増加させることができる。その結果、昇速率を維持したままタービン2を昇速させることができる。
【0021】
図3は、MSV制御部20の構成を示すブロック図である。図3に示すように、MSV制御部20は、タービンモデルベース流量制御部21と、MSV開度計算部22と、MSV開度制御部23と、MSV開度シミュレーター24と、を有する。MSV制御部20では、各部の機能がハードウェアで実現されてもよいし、少なくともの一部の機能がソフトウェアで実現されてもよい。
【0022】
タービンモデルベース流量制御部21は、第1流量計算部211と、第2流量計算部212と、加算部213と、を有する。第1流量計算部211は、速度指令C11に基づいてタービン2の速度を維持するための第1流量Q1を計算する。第2流量計算部212は、タービン起動時に選択された昇速率に基づいて、タービン2を加速するための第2流量Q2を計算する。ここで、図4を参照して第1流量Q1および第2流量Q2について説明する。
【0023】
図4は、速度指令と流量指令との関係を示すグラフである。図4では、横軸は速度指令を示し、縦軸は流量指令を示す。図4に示すように、第1流量Q1は、速度指令に比例する。そのため、速度指令C11が増加すると、第1流量Q1も速度指令C11に比例して増加する。一方、第2流量Q2は、タービン2の昇速率ごとに一定の値となる。そのため、昇速率が大きくなるにつれて、第2流量Q2も多くなる。なお、タービン2を昇速しない場合には、第2流量Q2はゼロとなる。
【0024】
上記のように求められた第1流量Q1および第2流量Q2は、図3に示すように、加算部213で加算される。加算部213は、加算値を示す流量指令C21をMSV開度計算部22へ出力する。本実施形態では、第1流量計算部211および第2流量計算部212でそれぞれ計算した流量を合計することによって、設定された昇速率でタービン2を昇速するために必要な流量を計算することができる。
【0025】
MSV開度計算部22は、流量指令C21に基づいて主蒸気止め弁4の開度を計算する。本実施形態では、MSV開度計算部22は、流量指令C21を主蒸気止め弁4の開度に変換するMSV流量関数を用いて主蒸気止め弁4の開度を計算する。続いて、MSV開度計算部22は、開度の計算値を示す開度指令C22をMSV開度制御部23へ出力する。
【0026】
MSV開度制御部23は、減算部231と、第1比較部232と、第2比較部233と、ラッチ部234と、を有する。
【0027】
減算部231は、開度指令C22から、MSV開度シミュレーター24で算出された主蒸気止め弁4の開度の推定値C26を減算する。続いて、減算部231は、減算結果を示す偏差C23を第1比較部232および第2比較部233へそれぞれ出力する。
【0028】
第1比較部232は、偏差C23を、予め定められたしきい値の上限Hと比較する。続いて、第1比較部232は、偏差C23が上限Hを上回っているか否かを判定した判定指令C24をラッチ部234に出力する。
【0029】
第2比較部233は、偏差C23を、上記しきい値の下限Lと比較する。続いて、第2比較部233は、偏差C23が下限Lを下回っているか否かを判定した判定指令C25をラッチ部234に出力する。
【0030】
ラッチ部234は、第1比較部232から入力された判定指令C24と、第2比較部233から入力された判定指令C25とを論理計算する。続いて、ラッチ部234は、論理計算結果に応じた励磁指令C20を主蒸気止め弁4およびMSV開度シミュレーター24へ同時に出力する。
【0031】
ラッチ部234では、偏差C23が上限Hを上回ると、主蒸気止め弁4を開かせる励磁指令C20が出力される。また、偏差C23が下限Lを下回ると、主蒸気止め弁4を閉じさせる励磁指令C20が出力される。これにより、偏差C23が上限Hと下限Lとの範囲内に収まるように、主蒸気止め弁4の開度が調整される。
【0032】
MSV開度シミュレーター24は、主蒸気止め弁4の開時間(開いた状態の時間)と、主蒸気止め弁4の動特性に基づいて主蒸気止め弁4の開度を推定する。
【0033】
主蒸気止め弁4には、構造の都合上LVDT6を取り付けることができないため、主蒸気止め弁4の開度を計測することができない。その一方で、タービン2に実際に流入する蒸気100の流量を流量指令C21に合致させるためには、主蒸気止め弁4の開度を制御することが求められる。
【0034】
そこで、本実施形態では、LVDT6の代わりにMSV開度シミュレーター24で主蒸気止め弁4の開度を推定する。主蒸気止め弁4は、励磁指令C20を受信してから全開状態または全閉状態になるまでには、多少の時間を要する。この時間は、主蒸気止め弁4の動特性、具体的には、開閉速度に依存する。開閉速度は、主蒸気止め弁4が全開状態になるまでの速度や、全閉状態になるまでの速度を含む。MSV開度シミュレーター24は、励磁指令C20の入力時点における主蒸気止め弁4の開時間、換言すると、前回の励磁指令C20の入力時点から今回の励磁指令C20の入力時点までの時間と、主蒸気止め弁4の開閉速度と、を乗算して開度の推定値C26を算出する。
【0035】
また、MSV開度シミュレーター24で算出された開度の推定値C26は、MSV開度制御部23にフィードバックされる。具体的には、減算部231において、MSV開度計算部22で算出された開度指令C22と開度の推定値C26との偏差C23が計算され、この偏差C23に基づく励磁指令C20によって、主蒸気止め弁4の開閉動作が制御される。
【0036】
以下、図5を参照して、上述したMSV制御部20の動作手順について説明する。図5は、MSV制御部20の動作手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、コンピュータに実行させるためのプログラムとして、タービン制御装置1内に記憶することができる。
【0037】
図5に示すフローチャートでは、まず、タービンモデルベース流量制御部21が、タービン2に流入される蒸気100の流量を計算する(ステップS11)。具体的には、第1流量計算部が速度指令C11に比例する第1流量Q1を計算するとともに、第2流量計算部212が、起動時に設定されたタービン2の昇速率に対応する第2流量Q2を計算する。続いて、加算部213が、第1流量Q1と第2流量Q2とを加算する。
【0038】
次に、MSV開度計算部22が、加算部213の加算値を示す流量指令C21に基づいてタービン2の開度を計算する(ステップS12)。
【0039】
次に、MSV開度計算部22において、減算部231が、MSV開度計算部22の計算値を示す開度指令と、MSV開度シミュレーター24の推定値C26との偏差C23を計算する(ステップS13)。
【0040】
次に、MSV開度計算部22において、第1比較部232が、偏差C23がしきい値の上限Hを上回っているか否かを判定する(ステップS14)。偏差C23が上限Hを上回っていない場合、第2比較部233が、偏差C23がしきい値の下限Lを下回っているか否かを判定する(ステップS15)。
【0041】
ステップS14において、偏差C23がしきい値の上限Hを上回っている場合、ラッチ部234は、主蒸気止め弁4を開く励磁指令C20を出力する(ステップS16)。
【0042】
ステップS15において、偏差C23がしきい値の下限Lを下回っている場合、ラッチ部234は、主蒸気止め弁4を閉じる励磁指令C20を出力する(ステップS17)。反対に、偏差C23がしきい値の下限Lを下回っておらず、かつ、主蒸気止め弁4が、現状、開方向に動いている場合(ステップS18:YES)、上述したステップS16の動作が実行される。偏差C23がしきい値の下限Lを下回っておらず、かつ、主蒸気止め弁4が、現状、開方向に動いていない(閉方向に動いている)場合(ステップS18:NO)、上述したステップS17の動作が実行される。
【0043】
最後に、MSV開度シミュレーター24が、主蒸気止め弁4の開度を推定する(ステップS19)。ステップS19で算出された開度の推定値C26は、ステップS13で求める偏差C23の計算に用いられる。
【0044】
以上説明した本実施形態では、タービンモデルベース流量制御部21において、速度指令C11が流量指令C21に変換される。また、MSV開度計算部22において、流量指令C21が開度指令C22に変換される。さらに、MSV開度制御部23が開度指令C22に基づいて主蒸気止め弁4の開閉動作を制御する。すなわち、本実施形態では、速度指令C11を直接にMSV開度制御部23に入力するのではなく、先にタービンモデルに基づいて流量指令C21に変換し、さらに流量指令C21を開度指令C22に変換する。このようにタービン2の動特性が速度応答に与える影響を考慮して主蒸気止め弁4の開閉動作が制御されるため、スムーズなタービン起動が可能となる。
【0045】
また、本実施形態では、MSV開度シミュレーター24もMSV制御部20に実装されているため、LVDTがなくても、主蒸気止め弁4のフィードバック制御を実現し、流量指令C21の通りに蒸気100の流量をタービン2に流入することが可能となる。
【0046】
本実施形態によれば、流量指令C21を計算し、主蒸気止め弁4の開度を推定し、フィードバック制御をすることにより、オン・オフタイプの主蒸気止め弁4で、タービン2の起動時に、昇速率を維持しながら昇速することが可能となる。
【0047】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態では、MSV制御部の構成が、第1実施形態と異なる。以下、本実施形態に係るMSV制御部について説明する。
【0048】
図6は、第2実施形態に係るMSV制御部の構成を示すブロック図である。上述した第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0049】
図6に示すMSV制御部20Aには、タービンモデルベース流量制御部21Aが実装されている。タービンモデルベース流量制御部21Aは、第1流量計算部211、第2流量計算部212、および加算部213に加えて、流量補正部214および加算部215をさらに有する。
【0050】
流量補正部214には、速度指令C11と速度センサ7で計測されたタービン2の速度が入力される。流量補正部214は、速度指令C11と速度センサ7との偏差を流量に変換する関数を用いて補正流量を算出する。
【0051】
加算部215は、流量補正部214で算出された補正流量と、第2流量計算部212で算出された第2流量Q2とを加算する。この加算値は、加算部213において、第1流量計算部211で算出された第1流量Q1とさらに加算される。そのため、本実施形態の流量指令C21には、第1流量Q1、第2流量Q2および補正流量を加算した流量が示される。
【0052】
上述した第1実施形態では、蒸気100は、流量指令C21で指定された流量でタービン2に流入することを前提としている。しかし、速度指令C11と、実際の速度(速度センサ7で計測されたタービン2の速度)との間に誤差が生じると、タービン2が、速度指令C11通りに昇速することができず、その結果、蒸気100の実際の流量も流量指令C21と異なる可能性がある。
【0053】
そこで、本実施形態では、速度センサ7で計測されたタービン2の速度をタービンモデルベース流量制御部21にフィードバックする。タービンモデルベース流量制御部21では、流量補正部214が、速度センサ7の計測値と速度指令C11との偏差に応じて補正流量を算出する。さらに、この補正流量を第1流量Q1および第2流量Q2に加算し、加算結果が流量指令C21として出力される。
【0054】
したがって、本実施形態によれば、タービンモデルと実際のタービンとの間に誤差があっても、タービン2が速度指令通りに昇速することが可能となる。
【0055】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規なシステムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明したシステムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0056】
1:タービン制御装置
2:タービン
4:主蒸気止め弁
21:タービンモデルベース流量制御部
22:MSV開度計算部
23:MSV開度制御部
24:MSV開度シミュレーター
100:蒸気
図1
図2
図3
図4
図5
図6