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特開2022-160891映像解析装置、脈波検出装置、および映像解析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160891
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】映像解析装置、脈波検出装置、および映像解析方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
A61B5/02 310B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065397
(22)【出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】富澤 亮太
(72)【発明者】
【氏名】足立 佳久
(72)【発明者】
【氏名】岩井 敬文
(72)【発明者】
【氏名】大鐘 ひなつ
(72)【発明者】
【氏名】田中 怜
(72)【発明者】
【氏名】日下部 曜
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AC28
4C017BC11
4C017BC23
4C017FF05
4C017FF15
(57)【要約】
【課題】従来とは異なる手法によって、脈波の検出精度を向上させる。
【解決手段】映像解析装置(10)において、関心領域検出部(11)は、所定のアルゴリズムに基づいて、生体(900)が映った映像から当該生体(900)の関心領域を検出する。脈波検出部(12)は、関心領域に含まれる複数の画素の内、画素値閾値以上の画素値を有する特定高輝度画素の影響を低減させた上で、上記複数の画素の画素値の時間変化に基づいて、生体(900)の脈波を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のアルゴリズムに基づいて、生体が映った映像から上記生体の関心領域を検出する関心領域検出部と、
上記関心領域に含まれる複数の画素の内、画素値閾値以上の画素値を有する特定高輝度画素の影響を低減させた上で、上記複数の画素の画素値の時間変化に基づいて、上記生体の脈波を検出する脈波検出部と、を備えている、映像解析装置。
【請求項2】
上記画素値閾値は、画素値の飽和が生じる蓋然性が高いことを示す値として設定されており、
上記脈波検出部は、上記複数の画素の内、上記画素値閾値以上の画素値を有する画素を、上記特定高輝度画素として特定する、請求項1に記載の映像解析装置。
【請求項3】
上記画素値閾値は、所定の飽和画素値と等しい値に設定されており、
上記脈波検出部は、上記複数の画素の内、上記画素値閾値と等しい画素値を有する画素である上記特定高輝度画素を、飽和画素として特定する、請求項2に記載の映像解析装置。
【請求項4】
上記脈波検出部は、上記複数の画素から上記特定高輝度画素を除いた画素を、通常画素として特定し、
上記脈波検出部は、上記通常画素の画素値の時間変化に基づいて、上記脈波を検出する、請求項1から3のいずれか1項に記載の映像解析装置。
【請求項5】
上記脈波検出部は、上記複数の画素から上記特定高輝度画素を除いた画素を、通常画素として特定し、
上記特定高輝度画素の画素値を特定高輝度画素値と称し、上記通常画素の画素値を通常画素値と称し、
上記脈波検出部は、
上記特定高輝度画素値に対する重み係数である特定重み係数を、上記通常画素値に対する重み係数である通常重み係数よりも小さく設定し、かつ、
(i)上記特定高輝度画素値に上記特定重み係数を乗じた値である重み付き特定高輝度画素値、および、(ii)上記通常画素値に上記通常重み係数を乗じた値である重み付き通常画素値を用いて、所定の演算式に従って、上記脈波を検出する、請求項1から3のいずれか1項に記載の映像解析装置。
【請求項6】
上記映像を記憶する映像記憶部をさらに備えており、
上記脈波検出部は、上記映像記憶部が記憶した上記映像の少なくとも1つのフレームにおいて、上記特定高輝度画素の影響を低減させた上で、上記複数の画素の画素値の時間変化に基づいて上記脈波を検出する、請求項1から5のいずれか1項に記載の映像解析装置。
【請求項7】
上記脈波検出部は、上記複数の画素から上記特定高輝度画素を除いた画素を、通常画素として特定し、
上記脈波検出部は、上記通常画素の数が画素数閾値以上である場合に、上記脈波を検出する、請求項1から6のいずれか1項に記載の映像解析装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の映像解析装置と、
上記映像を撮像する撮像装置と、を備えている、脈波検出装置。
【請求項9】
所定のアルゴリズムに基づいて、生体が映った映像から上記生体の関心領域を検出する関心領域検出ステップと、
上記関心領域に含まれる複数の画素の内、画素値閾値以上の画素値を有する特定高輝度画素の影響を低減させた上で、上記複数の画素の画素値の時間変化に基づいて、上記生体の脈波を検出する脈波検出ステップと、を含んでいる、映像解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、生体が映った映像を解析することにより、上記生体の脈波を検出する映像解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の脈波を検出する装置の一例として、撮像素子(受光素子)の出力値(画素値)に基づいて脈波を検出する脈波検出装置が知られている。但し、このような脈波検出装置においては、画素値の飽和によって脈波の検出精度が低下しうることが知られている。そこで、特許文献1では、脈波の検出精度を向上させることを目的とした技術が提案されている。具体的には、特許文献1では、撮像素子の受光量を飽和レベル以下に抑制するように液晶フィルタを制御するという手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-301934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、撮像装置によって生体の映像を撮像し、かつ、当該映像を解析することにより、脈波を検出する技術が提案されている。但し、後述する通り、このような映像解析に基づく脈波の検出精度を向上させるための具体的な手法については、特許文献1では何ら考慮されていない。本開示の一態様の目的は、従来とは異なる手法によって、脈波の検出精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る映像解析装置は、所定のアルゴリズムに基づいて、生体が映った映像から上記生体の関心領域を検出する関心領域検出部と、上記関心領域に含まれる複数の画素の内、画素値閾値以上の画素値を有する特定高輝度画素の影響を低減させた上で、上記複数の画素の画素値の時間変化に基づいて、上記生体の脈波を検出する脈波検出部と、を備えている。
【0006】
また、本開示の一態様に係る映像解析方法は、所定のアルゴリズムに基づいて、生体が映った映像から上記生体の関心領域を検出する関心領域検出ステップと、上記関心領域に含まれる複数の画素の内、画素値閾値以上の画素値を有する特定高輝度画素の影響を低減させた上で、上記複数の画素の画素値の時間変化に基づいて、上記生体の脈波を検出する脈波検出ステップと、を含んでいる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、従来とは異なる手法によって、脈波の検出精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1の脈波検出装置の要部の構成を示すブロック図である。
図2】カラーフィルタ部における赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタ、および青色カラーフィルタの配置例を示す図である。
図3】関心領域検出部によって検出された関心領域の一例を示す図である。
図4】各色チャネル画像における欠損画素値の補間処理の一例を示す図である。
図5】補間後の各色チャネル画像の合成処理の一例を示す図である。
図6】フルカラー関心領域画像における1つの画素値の時間変化の様子を例示する図である。
図7】ある時刻におけるフルカラー関心領域画像内の各画素の分類の一例を示す図である。
図8】ある時刻におけるフルカラー関心領域画像内の各画素の分類の別の例を示す図である。
図9】実施形態1の一変形例における画素値閾値について説明するための図である。
図10】実施形態2の脈波検出装置の要部の構成を示すブロック図である。
図11】各色低解像度チャネル画像における各画素値の設定処理の一例を示す図である。
図12】各色低解像度チャネル画像の合成処理の一例を示す図である。
図13】実施形態3の脈波検出装置の要部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
実施形態1の脈波検出装置1について、以下に説明する。説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、以降の各実施形態では同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。簡潔化のため、公知技術と同様の事項についても、説明を適宜省略する。
【0010】
本明細書において述べる各構成および各数値は、特に明示されない限り、単なる一例であることに留意されたい。従って、特に明示されない限り、各部材の位置関係は、各図の例に限定されない。また、各図面は、各部材の形状、構造、および位置関係を概略的に説明するものであり、必ずしも実際の通りに描かれていないことに留意されたい。本明細書では、2つの数AおよびBに関する「A~B」という記載は、特に明示されない限り、「A以上かつB以下」を意味する。
【0011】
(脈波検出装置1の概要)
図1は、脈波検出装置1の要部の構成を示すブロック図である。脈波検出装置1は、生体900(例:人)の脈波を検出する。脈波検出装置1は、非接触式の脈波検出装置の一例である。以下、生体Hの脈波を、単に脈波と称する。脈波検出装置1は、映像解析装置10および撮像装置50(例:カメラ)を備える。映像解析装置10と撮像装置50とは、互いに通信可能に接続されている。
【0012】
撮像装置50は、生体Hが映った映像(動画像)を撮像する。具体的には、撮像装置50は、映像を構成する画像(静止画)を、フレーム期間ごとに撮像する。実施形態1では、撮像装置50が、RGB(Red,Green,Blue)カメラである場合を例示する。このため、実施形態1における映像は、RGBカラー映像である。撮像装置50は、カラーフィルタ部51および撮像部52を備える。
【0013】
カラーフィルタ部51は、赤色カラーフィルタ511R、緑色カラーフィルタ511G、および青色カラーフィルタ511Bを備える。撮像部52は、アレイ状に配列された複数の撮像素子520を備える。撮像素子520は、公知のイメージセンサである。撮像素子520は、生体900から到来し、かつ、カラーフィルタ部51を通過した光(例:外光)を受光する。
【0014】
撮像素子520は、撮像装置50の画素とも称される。このことから、本明細書では、撮像素子520を、撮像画素とも称する。撮像部52では、W個×H個の撮像画素が配列されている。Wは水平方向における撮像画素数(1行あたりの撮像画素)を表し、Hは垂直方向における撮像画素(1列あたりの撮像画素)を表す。撮像画素は、自身が受光した光の強度(例:輝度)を示す電気信号の信号値(例:電流値)を、画素値(階調値)として出力する。より具体的には、撮像画素は、アナログ値としての画素値を出力する。
【0015】
撮像装置50では、不図示のAD変換器によって、アナログ値としての画素値がデジタル値に変換される。そして、撮像装置50は、デジタル画像(デジタル画素値を有する画像)を出力する。一例として、実施形態1における画素値は、8ビットのデジタル値として標本化されている。従って、実施形態1における画素値は、0~255の範囲にある。
【0016】
図2は、カラーフィルタ部51における赤色カラーフィルタ511R、緑色カラーフィルタ511G、および青色カラーフィルタ511Bの配置例を示す図である。撮像装置50において、赤色カラーフィルタ511R、緑色カラーフィルタ511G、および青色カラーフィルタ511Bはそれぞれ、撮像素子520と1対1に対応するように配置されている。1つの赤色カラーフィルタ511Rは、1つの撮像素子520を覆うように配置されている。1つの緑色カラーフィルタ511Gは、別の1つの撮像素子520を覆うように配置されている。1つの青色カラーフィルタ511Bは、さらに別の1つの撮像素子520を覆うように配置されている。
【0017】
図2に示される通り、実施形態1では、赤色カラーフィルタ511R、緑色カラーフィルタ511G、および青色カラーフィルタ511Bが、ベイヤ配列されている場合を例示する。図2の例におけるカラーフィルタ部51では、4つの(水平方向2つ×垂直方向2つの)撮像画素に対応するカラーフィルタユニット510が規定されている。
【0018】
1つのカラーフィルタユニット510は、(i)1つの赤色カラーフィルタ511Rと、(ii)2つの緑色カラーフィルタ511G(緑色カラーフィルタ511G1・511G2)と、(iii)1つの緑色カラーフィルタ511Gを含んでいる。そして、カラーフィルタ部51では、複数のカラーフィルタユニット510が、水平方向および垂直方向に繰り返し配列されている。このように、カラーフィルタ部51では、赤色カラーフィルタ511R、緑色カラーフィルタ511G、および青色カラーフィルタ511Bが、1:2:1の個数比でモザイク状に(より詳細には、チェッカーパターンを成すように)配置されている。
【0019】
本明細書では、赤色カラーフィルタ511Rに対応する撮像画素を、赤色撮像画素と称する。1つの赤色撮像画素は、赤色カラーフィルタ511Rを通過した光(赤色光)を受光し、当該赤色光の強度を示す赤色画素値(R画素値)を出力する。また、緑色カラーフィルタ511Gに対応する撮像画素を、緑色撮像画素と称する。1つの緑色撮像画素は、緑色カラーフィルタ511Gを通過した光(緑色光)を受光し、当該緑色光の強度を示す緑色画素値(G画素値)を出力する。また、青色カラーフィルタ511Bに対応する撮像画素を、青色撮像画素と称する。1つの青色撮像画素は、青色カラーフィルタ511Bを通過した光(青色光)を受光し、当該青色光の強度を示す青色画素値(B画素値)を出力する。
【0020】
撮像部52は、映像のフレーム期間ごとに、(i)Rチャネル画像IMGR(複数の赤色撮像画素によって出力されたR画素値の分布を示す画像)、(ii)Gチャネル画像IMGRG(複数の緑色撮像画素によって出力されたG画素値の分布を示す画像)、および、(iii)Bチャネル画像IMGB(複数の青色撮像画素によって出力されたB画素値の分布を示す画像)を、それぞれ生成する。IMGR、IMGG、およびIMGBはいずれも、解像度W×Hを有する。そして、撮像部52は、IMGRとIMGGとIMGBとを合成することにより、モザイク状のRGBカラー画像としての画像IMGを生成する。言い換えれば、撮像部52は、IMGをRAW画像として生成する。
【0021】
以上の通り、撮像部52は、映像を構成する各フレームとして、RAW画像としてのIMGを生成する。そして、撮像部52は、生成した各フレームをフレーム番号順に配列することにより、映像(RAW映像)を生成する。撮像部52は、生成した映像を、映像解析装置10に供給する。
【0022】
映像解析装置10は、関心領域検出部11および脈波検出部12を備える。映像解析装置10は、撮像装置50から取得した映像を解析することにより、脈波を検出する。より具体的には、映像解析装置10は、映像の各フレーム(複数のIMGのそれぞれ)を解析することにより、脈波を検出する。
【0023】
関心領域検出部11は、所定のアルゴリズムに基づいて(例:公知のアルゴリズムを用いて)、IMGから関心領域(Region of Interest,ROI)を検出する。関心領域とは、生体900の所定の部位が映ったIMGの部分領域である。図3は、関心領域検出部11によって検出された関心領域の一例を示す図である。以下の説明では、図3の例における関心領域を、関心領域910と表記する。
【0024】
図3の例におけるIMGは、生体900の顔全体が映った画像である。図3の例では、顔の片側の頬が、所定の部位として予め設定されている。まず、関心領域検出部11は、IMGから顔領域(生体900の顔が映った領域)を検出する。そして、関心領域検出部11は、顔領域内において顔の片側の頬が映った領域を、関心領域910として検出する。図3の例における関心領域910は、矩形領域である。
【0025】
但し、当業者であれば明らかである通り、所定の部位は、頬に限定される必要はなく、生体900の血管に関する情報を抽出可能な部位であればよい。所定の部位の別の例としては、額、鼻根部、首、指先、および掌を挙げることができる。関心領域は、時間変化に伴う生体の肌の色変化が表現されている画像領域であればよい。また、関心領域の数は、必ずしも1つに限定されない。このように、IMGは、図3の例に限定されない。
【0026】
脈波検出部12は、関心領域910に含まれる複数の画素の画素値の時間変化に基づいて、脈波を検出する。一例として、脈波検出部12は、各フレームにおける、(i)関心領域910に含まれるR画素値の平均値Rave、(ii)関心領域910に含まれるG画素値の平均値Gave、および、(iii)関心領域910に含まれるB画素値の平均値Baveを、それぞれ算出する。すなわち、脈波検出部12は、Rave、Gave、およびBaveのそれぞれの時系列データを導出する。
【0027】
そして、脈波検出部12は、公知のアルゴリズムを用いて当該時系列データを解析することにより、脈波を検出(導出)してよい。一例として、脈波検出部12は、国際公開公報「WO2020/090348」に開示されている手法を用いて、脈波を検出してよい。
【0028】
但し、関心領域910内において画素値の飽和が生じている場合、脈波検出部12における脈波の検出精度が低下しうる。このような画素値の飽和は、例えば、外光の輝度が高い場合に生じうる。そこで、実施形態1では、以下に述べる通り、脈波検出部12は、関心領域910に含まれる画素の内、画素値の飽和が生じている画素(以下、飽和画素と称する)の影響を低減させた上で、脈波を検出する。
【0029】
本明細書における「画素値の飽和」とは、画素値が、画像(より厳密には、デジタル画像データ)において設定可能な所定の最大値をとっていることを意味する。上述の通り、実施形態1では、画素値が8ビットのデジタル値として標本化されている。このため、実施形態1における「画素値の飽和」とは、画素値が255であることを意味する。これに対し、実施形態1における「画素値の非飽和」とは、画素値が0~254であることを意味する。以上のことから、実施形態1における飽和画素は、画素値255を有する画素である。従って、実施形態1では、画素値255を、飽和画素値とも称する。なお、上記の説明における画素値は、R画素値、G画素値、またはB画素値のいずれか1つを指す。
【0030】
(実施形態1における脈波検出部12の処理の例)
図4および図5はそれぞれ、脈波検出部12の処理の一例を説明する図である。以下に述べる通り、図4には、各色チャネル画像における欠損画素値の補間処理の一例が示されている。図5には、補間後の各色チャネル画像の合成処理の一例が示されている。
【0031】
脈波検出部12は、RAW画像としての関心領域910の画像(以下、関心領域RAW画像と称する)を、関心領域Rチャネル画像IMGR1、関心領域Gチャネル画像IMGG1、および関心領域Bチャネル画像IMGB1に分解する。図4には、IMGR1、IMGG1、およびIMGB1の一例が示されている。以下では、例えば、IMGR1におけるi行j列目の画素を、IMGR1(i,j)と表記する。また、当該画素の画素値についても、IMGR1(i,j)と表記する。
【0032】
図4に示される通り、IMGR1には、画素値の欠損が生じている画素が存在する。以下、画素値の欠損が生じている画素を、欠損画素と称する。IMGR1における欠損画素は、(i)緑色撮像画素に対応する位置の画素、および、(ii)青色撮像画素に対応する位置の画素である。他方、画素値の欠損が生じていない画素を、非欠損画素と称する。IMGR1における非欠損画素は、赤色撮像画素に対応する位置の画素である。
【0033】
脈波検出部12は、IMGR1における非欠損画素値(非欠損画素の画素値)を用いて、IMGR1における欠損画素値(欠損画素の画素値)を補間することにより、補間後関心領域Rチャネル画像IMGR2を生成する。すなわち、脈波検出部12は、IMGR1をデモザイキング(より具体的には、カラーデモザイキング)することにより、IMGR2を生成する。
【0034】
一例として、IMGR1における注目画素として、IMGR1(2,2)を考える。図4の例におけるIMGR1(2,2)は、欠損画素である。脈波検出部12は、ある欠損画素(例えばIMGR1(2,2))を中心とする3×3の矩形領域における非欠損画素値を用いて、当該欠損画素の画素値を補間してよい。すなわち、脈波検出部12は、上記非欠損画素値を用いて、上記欠損画素に対応する位置におけるIMGR2の画素値を設定してよい。
【0035】
図4の例では、IMGR1(1,1)、IMGR1(1,3)、IMGR1(3,1)、およびIMGR1(3,3)が、上記矩形領域における非欠損画素値である。従って、脈波検出部12は、これら4つの非欠損画素値を用いて、IMGR2(2,2)を設定する。一例として、脈波検出部12は、上記4つの非欠損画素値を用いた線形補間によって、IMGR2(2,2)を設定してよい。
【0036】
図4の例では、脈波検出部12は、上記4つの非欠損画素値の平均値として、IMGR2(2,2)を設定する。すなわち、脈波検出部12は、
IMGR2(2,2)
={IMGR2(1,1)+IMGR2(1,3)
+IMGR2(3,1)+IMGR2(3,3)}/4 …(1)
として、IMGR2(2,2)を設定する。その他の非欠損画素値についても、上記の例と同様に補間されてよい。なお、注目画素が非欠損画素である場合の補間については、後述するIMGB1についての例を参照されたい。
【0037】
同様に、脈波検出部12は、IMGG1をデモザイキングすることにより、補間後関心領域Gチャネル画像IMGG2を生成する。一例として、IMGG1における注目画素として、IMGG1(2,2)を考える。図4の例におけるIMGG1(2,2)も、IMGR1(2,2)と同様に、欠損画素である。
【0038】
脈波検出部12は、IMGG1(2,2)を中心とする3×3の矩形領域における非欠損画素値を用いて、IMGR2(2,2)を設定する。図4の例では、IMGG1(1,2)、IMGG1(2,1)、IMGG1(2,3)、およびIMGG1(3,2)が、上記矩形領域における非欠損画素値である。図4の例では、脈波検出部12は、
IMGG2(2,2)
={IMGG1(1,2)+IMGG1(2,1)
+IMGG1(2,3)+IMGG1(3,2)}/4 …(2)
として、IMGG2(2,2)を設定する。
【0039】
同様に、脈波検出部12は、IMGB1をデモザイキングすることにより、補間後関心領域Bチャネル画像IMGB2を生成する。一例として、IMGB1における注目画素として、IMGB1(2,2)を考える。図4の例におけるIMGB1(2,2)は、IMGR1(2,2)およびIMGG1(2,2)とは異なり、非欠損画素である。
【0040】
注目画素が非欠損画素である場合、脈波検出部12は、当該非欠損画素の画素値を、当該非欠損画素に対応する位置におけるIMGB2の画素値として設定する。従って、脈波検出部12は、
IMGB2(2,2)=IMGB1(2,2) …(3)
として、IMGB2(2,2)を設定する。
【0041】
以上の通り、脈波検出部12は、IMGR1、IMGG1、およびIMGB1のそれぞれをデモザイキングすることにより、非欠損画素を有しないIMGR2、IMGG2、およびIMGB2を生成する。上記の通り生成されたIMGR2、IMGG2、およびIMGB2はそれぞれ、解像度W×Hを有する。
【0042】
続いて、脈波検出部12は、IMGR2、IMGG2、およびIMGB2を合成することにより、解像度W×Hを有する関心領域フルカラー画像IMG2を生成する。図5には、IMG2の一例が示されている。図5に示される通り、IMG2は、フルカラーRGB画像である。フルカラーRGB画像とは、画像中の全ての画素が、R画素値、G画素値、およびB画素値の3つの画素値を有する画像である。以下、当該3つの画素値を、総称的にRGB画素値と称する。
【0043】
具体的には、脈波検出部12は、
IMG2(i,j)
={IMGR2(i,j),IMGG2(i,j),IMGB2(i,j)}…(4)
として、IMG2(i,j)のR画素値、G画素値、およびB画素値をそれぞれ設定する。図5の例では、IMGR2(2,2)=80、IMGG2(2,2)=130、IMGB2(2,2)=200である。従って、脈波検出部12は、IMG2(2,2)=(80,130,200)として、IMG2(2,2)を設定する。
【0044】
IMG2は、フルカラーRGB画像であるので、関心領域RAW画像に比べて、より多くの色情報を含んでいる。すなわち、IMG2は、生体900の血管に関する情報をより多く含んでいる。このため、IMG2に基づいて脈波を検出することにより、脈波の検出精度を向上させることができる。
【0045】
そこで、実施形態1では、脈波検出部12は、フレームごとに、IMG2に含まれる各画素の画素値(RGB画素値)を用いて、Rave、Gave、およびBaveを、それぞれ算出することが好ましい。このように、脈波検出部12は、IMG2に基づいてRave、Gave、およびBaveの時系列データを導出することが好ましい。そして、脈波検出部12は、当該時系列データを解析することにより、脈波を検出する。
【0046】
加えて、実施形態1では、脈波検出部12は、IMG2に含まれる飽和画素の影響を低減させた上で、脈波を検出する。飽和画素は、本開示の一態様に係る特定高輝度画素(後述)の一例である。一例として、脈波検出部12は、IMG2内の画素の内、画素値閾値Lth以上の画素値を有する画素を、特定高輝度画素として判定(特定)する。
【0047】
実施形態1では、Lthは、画素値の飽和を示す値として設定されている。すなわち、Lthは、飽和画素値と等しい値として設定されている。具体的には、Lth=255として設定されている。このことから、実施形態1におけるLthは、飽和閾値と称されてもよい。以下では、飽和閾値としてのLthを、Lth1と表記する。実施形態1では、脈波検出部12は、IMG2内の画素の内、Lth1に等しい画素値を有する画素(すなわち画素値255を有する画素)を、飽和画素として判定する。
【0048】
図6は、IMG2内のある1つの画素(例えば、IMG2(2,2))の画素値Lの時間変化の様子を例示するグラフである。Lは、R画素値、G画素値、またはB画素値のいずれか1つである。図6の例におけるLは、B画素値であるものとする。図6のグラフにおける横軸は、時刻tである。当該横軸は、フレーム番号と読み替えられてもよい。
【0049】
図6の例では、t1~t2(第1時間範囲)およびt3~t4(第2時間範囲)において、L=Lth1である。このため、脈波検出部12は、第1時間範囲および第2時間範囲において、IMG2(2,2)が飽和画素であると判定する。この場合、一例として、脈波検出部12は、第1時間範囲および第2時間範囲において、IMG2(2,2)のR画素値、G画素値、およびB画素値を用いることなく、Rave、Gave、およびBaveを、それぞれ算出する。
【0050】
但し、IMG2(2,2)のB画素値が飽和している場合であっても、IMG2(2,2)のR画素値およびG画素値については非飽和であることも考えられる。そこで、IMG2(2,2)において、B画素値が飽和しており、かつ、R画素値およびG画素値が非飽和である場合、脈波検出部12は、第1時間範囲および第2時間範囲において、IMG2(2,2)のR画素値およびG画素値を用いて、RaveおよびGaveを、それぞれ算出してもよい。脈波検出部12は、飽和が生じた画素値を排除して、時系列データを算出できればよい。
【0051】
図7は、ある時刻(例:t1)におけるIMG2内の各画素の分類の一例を示す図である。上述の通り、脈波検出部12は、Lth1に基づいて飽和画素610を特定する。この場合、脈波検出部12は、IMG2内の各画素から飽和画素610を除いた画素を、通常画素620としてさらに特定してよい。そして、脈波検出部12は、通常画素620の画素値の時間変化に基づいて、脈波を検出してよい。
【0052】
(効果)
上述の通り、特許文献1の技術(従来技術の一例)では、撮像素子の受光量を飽和レベル以下に抑制するように液晶フィルタが制御される。但し、特許文献1の技術では、腕時計型の脈波検出装置(接触式の脈波検出装置)を前提としている。従って、特許文献1の技術では、関心領域に対して光(例:外光)が入射する方向がある程度限定されている。このため、特許文献1では、外光の方向が予め特定されているという前提に基づいて、液晶フィルタの制御手法が提案されている。
【0053】
しかしながら、撮像装置によって撮像された映像を解析することによって脈波を検出する脈波検出装置(便宜上、「映像解析ベースの脈波検出装置」と称する)では、関心領域に対して多くの様々な方向から外光が入射することが一般的である。このため、映像解析ベースの脈波検出装置では、特許文献1の技術とは異なり、関心領域に対して光外光が入射する方向を予め特定することは困難である。
【0054】
それゆえ、特許文献1の技術を映像解析ベースの脈波検出装置に採用したとしても、撮像素子の受光量を適切に制御することはできない。すなわち、特許文献1の技術を映像解析ベースの脈波検出装置に採用したとしても、関心領域内における飽和画素の発生を抑制することはできない。以上の通り、従来では、映像解析ベースの脈波検出装置における脈波の検出精度を向上するための手法については、考慮されていなかった。
【0055】
他方、上述の通り、脈波検出装置1(より具体的には、映像解析装置10)では、関心領域内における飽和画素の影響を低減させた上で、脈波を検出できる。このため、関心領域内における飽和画素が存在していたとしても、脈波の検出精度の低下を防止できる。従って、特許文献1の技術とは異なり、外光の方向が予め特定されていなくとも、脈波の検出精度を向上させることができる。以上の通り、脈波検出装置1によれば、従来とは異なる手法によって脈波の検出精度を向上させることができる。
【0056】
〔変形例〕
(1)図8は、ある時刻(例:t1)におけるIMG2内の各画素の分類の別の例を示す図である。図8の例においても、上述の図6と同様に、脈波検出部12によって飽和画素610が特定されている。脈波検出部12は、飽和画素610の周辺に位置する画素を、周辺画素615としてさらに特定してよい。
【0057】
一例として、脈波検出部12は、IMG2内において、飽和画素610から所定の距離範囲内に存在している画素を、周辺画素615として特定してよい。図8の例では、脈波検出部12は、飽和画素610に隣接する画素(1画素分だけ離間している画素)を、周辺画素615として特定する。図8の例では、画素間の距離は、8近傍距離(チェス盤距離)として定義されている。但し、当然ながら、本開示の一態様において、画素間の距離の定義は、図8の例に限定されない。
【0058】
図8の例において、脈波検出部12は、IMG2の各画素から、飽和画素610および周辺画素615を除いた画素を、通常画素620Aとしてさらに特定する。そして、脈波検出部12は、通常画素620Aの画素値の時間変化に基づいて、脈波を検出してよい。
【0059】
多くの場合、画像内における画素値の局所的な分布は、ある程度の連続性を有している。このため、周辺画素615は、ある時刻においては飽和画素でなくとも、時間の進展に伴って飽和画素へと変化する蓋然性(可能性)が高い画素であると予期される。そこで、図8に示す通り、脈波検出部12は、飽和画素610のみならず、周辺画素615をさらに排除して、通常画素620Aを特定してもよい。これにより、飽和画素610の影響のみならず、周辺画素615の影響をも低減した上で、脈波を検出できる。その結果、脈波の検出精度をさらに向上させることが可能となる。
【0060】
(2)上述の通り、本開示の一態様において、脈波検出部12は、通常画素の画素値の時間変化に基づいて、脈波を検出してよい。但し、通常画素の画素数があまりに少ない場合には、不十分な(低い)精度の脈波が検出されることも懸念される。
【0061】
そこで、脈波検出部12は、通常画素の数が画素数閾値未満である場合に、脈波の検出を停止してよい。言い換えれば、脈波検出部12は、通常画素の数が画素数閾値以上である場合にのみ、脈波の検出を行ってもよい。なお、脈波検出部12は、通常画素の数が画素数閾値未満以上である場合には、脈波の検出を停止する旨の報知情報を出力してもよい。一例として、脈波検出部12は、通常画素の数が画素数閾値未満以上である場合には、「十分な精度の脈波を検出できないと懸念されるため、脈波の検出を停止する」旨を示すエラーメッセージを、脈波検出装置1の表示部(不図示)に出力してもよい。
【0062】
上記の構成によれば、通常画素の数が画素数閾値未満である場合に、不十分な精度の脈波が検出されてしまうことを防止できる。画素数閾値は、特に限定されないが、ある程度高い精度の脈波の検出が可能であると期待される通常画素の数を基準として設定されてよい。一例として、画素数閾値は、100に設定されてよい。
【0063】
(3)上述の各説明から明らかである通り、Lth(画素値閾値)は飽和閾値(Lth1)に限定されない。一例として、Lthは、画素値の飽和が生じる蓋然性が高いことを示す値として設定されてもよい。そこで、本明細書では、画素値がLth以上である画素を、特定高輝度画素と称する。なお、本明細書では、飽和画素も、「画素値の飽和が生じる蓋然性が高い画素」に含まれるものとする。
【0064】
以下、本変形例におけるLthを、Lth2と称する。一例として、Lth2=230として設定されてよい。但し、当然ながら、Lth2は、上記の例に限定されない。Lth2は、飽和画素値の90%以上かつ100%以下の値として設定されてよい。従って、画素値が8ビットのデジタル値として標本化されている場合(飽和画素値255である場合)、Lth2は230以上かつ255以下に設定されていればよい。
【0065】
特定高輝度画素は、飽和画素ほど顕著ではなくとも、脈波の検出精度の低下に寄与すると考えられる。このため、脈波検出部12は、一例として、画素値がLth2以上である画素を、特定高輝度画素として判定してよい。そして、脈波検出部12は、特定高輝度画素の影響を低減させた上で、脈波を検出してよい。この場合、脈波検出の精度をより一層向上させることができる。以上の説明から理解される通り、上述の図8の例における周辺画素は、特定高輝度画素の別の例であると言える。
【0066】
図9は、Lth2について説明するための図である。図9においても、図6と同様に、IMG2内のある1つの画素(例えば、IMG2(2,2))の画素値Lの時間変化の様子が例示されている。図9の例におけるLも、図6の例と同様に、B画素値であるものとする。
【0067】
図9の例では、(i)tm1~tm2(第1時間範囲)、(ii)tm3~tm4(第2時間範囲)、および、(iii)tm5~tm6(第3時間範囲)において、L≧Lth2である。このため、脈波検出部12は、第1時間範囲、第2時間範囲、および第3時間範囲において、IMG2(2,2)が特定高輝度画素であると判定する。
【0068】
そこで、一例として、脈波検出部12は、第1時間範囲、第2時間範囲、および第3時間範囲において、IMG2(2,2)のR画素値、G画素値、およびB画素値を用いることなく、Rave、Gave、およびBaveを、それぞれ算出する。これにより、脈波検出部12は、特定高輝度画素であるIMG2(2,2)の影響を低減させた上で、脈波を検出できる。
【0069】
但し、IMG2(2,2)のB画素値がLth2以上である場合であっても、IMG2(2,2)のR画素値およびG画素値についてはLth2未満であることも考えられる。そこで、IMG2(2,2)において、B画素値がLth2以上であり、かつ、R画素値およびG画素値がLth2未満である場合、脈波検出部12は、第1時間範囲、第2時間範囲、および第3時間範囲において、IMG2(2,2)のR画素値およびG画素値を用いて、RaveおよびGaveを、それぞれ算出してもよい。この場合にも、脈波検出部12は、特定高輝度画素であるIMG2(2,2)の影響を低減させた上で、脈波を検出できる。以上の通り、脈波検出部12は、Lth2以上の画素値を排除して、時系列データを算出できればよい。
【0070】
(4)特定高輝度画素(例:飽和画素)の影響を低減して脈波を検出する手法は、上述の各例に限定されない。例えば、飽和画素の画素値を必ずしも排除することなく、脈波を検出することもできる。
【0071】
一例として、上述の図7の通り、IMG2内の各画素が、飽和画素と通常画素とに分類されている場合を考える。この場合、脈波検出部12は、飽和画素値および通常画素の画素値(以下、通常画素値と称する)に対し、異なる重み係数を設定してもよい。以下の説明では、飽和画素値に対する重み係数をw1、通常画素値に対する重み係数をw2と、それぞれ表記する。具体的には、脈波検出部12は、w1をw2よりも小さい値に設定する。w1およびw2はそれぞれ、飽和重み係数および通常重み係数と称されてもよい。
【0072】
そして、脈波検出部12は、(i)飽和画素値にw1を乗じた値である重み付き飽和画素値、および、(ii)通常画素値にw2を乗じた値である重み付き通常画素値を、脈波を導出するための所定の演算式に代入することによって、脈波を導出してよい。当該演算式は、ある画素値に対する重み係数が小さいほど、当該画素値が演算結果(脈波)に与える影響が小さくなるように設定されているものとする。以上の通り、脈波検出部12は、重み付き飽和画素値および重み付き通常画素値を用いて、上記演算式に従って脈波を検出してよい。これにより、飽和画素値が脈波に及ぼす影響を低減しつつ、当該飽和画素値の存在を考慮して脈波を検出できる。
【0073】
別の例として、脈波検出部12が、Lth2に基づいて、IMG2内の各画素を特定高輝度画素と通常画素とに分類する場合を考える。この場合、飽和画素についての上記の例と同様に、脈波検出部12は、特定高輝度画素の画素値(以下、特定高輝度画素値と称する)および通常画素値に対し、異なる重み係数を設定してもよい。以下の説明では、特定高輝度画素値に対する重み係数をw1aと表記する。脈波検出部12は、w1aをw2よりも小さい値に設定する。w1aは、w1と等しい値に設定されてもよいし、あるいはw1よりも大きい値に設定されてもよい。w1aは、特定重み係数と称されてもよい。
【0074】
そして、脈波検出部12は、(i)特定高輝度画素値にw1aを乗じた値である重み付き特定高輝度画素値、および、(ii)重み付き通常画素値を、上記演算式に代入することによって、脈波を導出してよい。以上の通り、脈波検出部12は、重み付き特定高輝度画素値および重み付き通常画素値を用いて、上記演算式に従って脈波を検出してよい。これにより、特定高輝度画素値が脈波に及ぼす影響を低減しつつ、当該特定高輝度画素値の存在を考慮して脈波を検出できる。
【0075】
さらに別の例として、上述の図8の通り、IMG2内の各画素が、飽和画素と周辺画素と通常画素とに分類されている場合を考える。この場合、脈波検出部12は、飽和画素値、周辺画素の画素値(以下、周辺画素値と称する)、および通常画素値のそれぞれに対し、異なる重み係数を設定してもよい。以下の説明では、周辺画素値に対する重み係数をwmと表記する。脈波検出部12は、wmを、w2よりも小さく、かつ、w1よりも大きい値に設定する。wmは、周辺重み係数と称されてもよい。
【0076】
そして、脈波検出部12は、(i)重み付き飽和画素値、(ii)周辺画素値にwmを乗じた値である重み付き周辺画素値、および、(iii)重み付き通常画素値を、上記演算式に代入することによって、脈波を導出してよい。以上の通り、脈波検出部12は、重み付き飽和画素値、重み付き周辺画素値、および重み付き通常画素値を用いて、上記演算式に従って脈波を検出してよい。これにより、飽和画素値および周辺画素値が脈波に及ぼす影響の違いを考慮しつつ、脈波を検出できる。
【0077】
〔実施形態2〕
図10は、実施形態2の脈波検出装置2の要部の構成を示すブロック図である。脈波検出装置2の映像解析装置を、映像解析装置10Aと称する。また、映像解析装置10Aの脈波検出部を、脈波検出部12Aと称する。脈波検出部12Aは、脈波検出部12とは異なる手法によって、関心領域のフルカラー画像を生成する。
【0078】
図11および図12はそれぞれ、脈波検出部12Aの処理の一例を説明する図である。以下に述べる通り、図11には、各色低解像度チャネル画像における各画素値の設定処理の一例が示されている。図11には、上述の図4と同様のIMGR1、IMGG1、およびIMGB1が例示されている。図12には、各色低解像度チャネル画像の合成処理の一例が示されている。
【0079】
脈波検出部12Aは、IMGR1、IMGG1、およびIMGB1をそれぞれダウンコンバートすることにより、低解像度Rチャネル画像IMGR3、低解像度Gチャネル画像IMGG3、および低解像度Bチャネル画像IMGB3を生成する。図10の例では、脈波検出部12Aは、解像度W/2×H/2を有するIMGR3、IMGG3、およびIMGB3を生成する。すなわち、脈波検出部12Aは、IMGR1、IMGG1、およびIMGB1のそれぞれについて、水平解像度および垂直解像度を半減させるダウンコンバートを行う。
【0080】
一例として、脈波検出部12Aは、IMGR1における2×2の矩形領域(以下、赤色画素ユニットと称する)に含まれる各画素の画素値を用いて、IMGR3における1つの画素値を設定する。1つの画素ユニットは、上述の図2における1つのカラーフィルタユニット510に対応する。以下では、IMGR1(i,j)、IMGR1(i,j+1)、IMGR1(i+1,j)、およびIMGR1(i+1,j+1)という4つの画素を含む画素ユニットを、赤色画素ユニットRunit(i,j)と称する。その他の色における画素ユニットについても、同様に表記する。
【0081】
図2の各色カラーフィルタの配置によれば、IMGR1における1つのRunitは、1つの非欠損画素のみを含んでいる。例えば、Runit(1,1)は、非欠損画素としてIMGR1(1,1)のみを含んでいる。そこで、脈波検出部12Aは、1つのRunitにおける単一の非欠損画素値を、当該1つのRunitに対応するIMGR3の画素値として設定してよい。一例として、脈波検出部12Aは、
IMGR3(1,1)=IMGR1(1,1) …(5)
として、IMGR3(1,1)を設定してよい。図10の例では、IMGR1(1,1)=80である。このため、脈波検出部12Aは、IMGR3(1,1)=80として、Runit(1,1)に対応する画素の画素値を設定する。
【0082】
以上の通り、Runit(i,j)に含まれる単一の非欠損画素値と1対1に対応させるようにIMGR3(i,j)の画素値を設定することにより、解像度W/2×H/2を有するRチャネル画像であるIMGR3が生成される。
【0083】
図3の各色カラーフィルタの配置によれば、IMGB1における1つの青色画素ユニットBunitは、1つの非欠損画素のみを含んでいる。従って、IMGR3についての上記の例と同様に、IMGB1に基づいてIMGB3が生成されてよい。例えば、Bunit(1,1)は、非欠損画素としてIMGB1(2,2)のみを含んでいる。そこで、脈波検出部12Aは、
IMGB3(1,1)=IMGB1(2,2) …(6)
として、IMGB3(1,1)を設定してよい。
【0084】
図11の例では、IMGB1(2,2)=180である。このため、脈波検出部12Aは、IMGB3(1,1)=180として、Bunit(1,1)に対応する画素の画素値を設定する。このように、Bunit(i,j)に含まれる単一の非欠損画素値と1対1に対応させるようにIMGB3(i,j)の画素値を設定することにより、解像度W/2×H/2を有するBチャネル画像であるIMGR3が生成される。
【0085】
ところで、図3の各色カラーフィルタの配置によれば、IMGG1における1つの緑色画素ユニットGunitは、2つの非欠損画素を含んでいる。例えば、Gunit(1,1)は、2つの非欠損画素としてIMGG1(1,2)およびIMGG1(2,1)を含んでいる。
【0086】
そこで、脈波検出部12Aは、1つのBunitにおける2つの非欠損画素値の平均値を、当該画素ユニットに対応するIMGB3の画素値として設定してよい。一例として、脈波検出部12Aは、
IMGG3(1,1)={IMGG1(1,2)+IMGG1(2,1)}/2
…(7)
として、IMGG3(1,1)を設定してよい。図11の例では、IMGG1(1,2)=140、IMGG1(2,1)=150である。このため、脈波検出部12Aは、IMGG3(1,1)=145として、Gunit(1,1)に対応する画素の画素値を設定する。
【0087】
このように、Gunit(i,j)に含まれる2つの非欠損画素値の平均値と1対1に対応させるようにIMGG3(i,j)の画素値を設定することにより、解像度W/2×H/2を有するGチャネル画像であるIMGG3が生成される。
【0088】
以上の通り、脈波検出部12Aは、ある色のチャネル画像における1つの画素ユニットに含まれる1つ以上の非欠損画素の画素値の統計値(例:平均値)に基づいて、当該ある色の低解像度チャネル画像における上記画素ユニットに対応する画素の画素値を設定してよい。これにより、非欠損画素値の補間を行うことなく、各色の低解像度チャネル画像を生成できる。
【0089】
続いて、脈波検出部12Aは、IMGR3、IMGG3、およびIMGB3を合成することにより、解像度W/2×H/2を有する低解像度関心領域フルカラー画像IMG3を生成する。図12には、IMG3の一例が示されている。IMG3は、上述のIMG2と同様に、フルカラーRGB画像である。
【0090】
具体的には、脈波検出部12Aは、
IMG3(i,j)
={IMGR3(i,j),IMGG3(i,j),IMGB3(i,j)}…(8)
として、IMG3(i,j)のR画素値、G画素値、およびB画素値をそれぞれ設定する。上述の通り、IMGR3(1,1)=80、IMGG2(1,1)=145、IMGB3(1,1)=180である。従って、脈波検出部12Aは、IMG3(1,1)=(80,145,180)として、IMG3(1,1)を設定する。
【0091】
脈波検出部12Aは、フレームごとに、IMG3に含まれる各画素の画素値(RGB画素値)を用いて、Rave、Gave、およびBaveを、それぞれ算出する。このように、脈波検出部12Aは、IMG3に基づいてRave、Gave、およびBaveの時系列データを導出する。そして、脈波検出部12は、実施形態1と同様に、当該時系列データを解析することにより、脈波を検出する。
【0092】
以上の通り、脈波検出装置2によれば、非欠損画素値の補間を行うことなく生成された関心領域のフルカラー画像(例:IMG3)に基づき、脈波を検出できる。このため、非欠損画素値の補間に起因する誤差の影響を排除した上で、脈波を検出できる。それゆえ、脈波検出装置2によれば、脈波の検出精度をより一層高めることができる。
【0093】
〔実施形態3〕
図13は、実施形態3の脈波検出装置3の要部の構成を示すブロック図である。脈波検出装置3の映像解析装置を、映像解析装置10Bと称する。映像解析装置10Bは、映像解析装置10とは異なり、映像記憶部13をさらに有する。また、脈波検出装置3の脈波検出部を、脈波検出部12Bと称する。脈波検出部12Bは、脈波検出部12とは異なる手法によって脈波を検出する。
【0094】
映像記憶部13は、撮像装置50(より具体的には、撮像部52)が生成した映像を記憶する。一例として、映像記憶部13は、撮像部52が生成したRAW映像を記憶する。なお、映像記憶部13は、撮像部52が生成した映像のうち、関心領域検出部11が検出した関心領域910に含まれる画素の画素値のみを記録してもよい。
【0095】
映像記憶部13が記憶する映像のフレーム数は、予め設定された所定のフレーム数であってよい。言い換えれば、映像記憶部13が記憶する映像の時間長は、予め設定されていてよい。一例として、所定のフレーム数が300に設定されている場合を考える。この場合、映像記憶部13は、撮像部52が生成した映像のフレーム数が300フレームに達するまで、当該映像の各フレームを記憶する。
【0096】
なお、映像記憶部13は、映像から生体900の顔領域が検出されている期間に亘って、当該映像を記憶してもよい。例えば、映像記憶部13は、関心領域検出部11によって映像から顔領域が検出されたことを契機として、当該映像の記憶を開始してよい。そして、映像記憶部13は、関心領域検出部11によって映像から顔領域が検出されなくなった(顔領域の検出が終了した)ことを契機として、当該映像の記憶を終了してもよい。
【0097】
また、映像記憶部13は、映像中において検出された顔領域の位置が大きく変化した場合に、当該映像の記憶を終了してもよい。このような顔領域の位置の大きい変化は、例えば生体900が大きく動いた場合に生じうる。
【0098】
一例として、実施形態3の関心領域検出部11では、顔領域の位置の変化についての許容閾値(換言すれば、生体900の動きについての許容閾値)が予め設定されていてもよい。この場合、映像記憶部13は、映像の任意の2つのフレーム間(例:隣接する2つのフレーム間)における顔領域の位置の変化量(移動量)が許容閾値以上であると関心領域検出部11が判定した場合に、当該映像の記憶を終了してもよい。
【0099】
許容閾値は、実空間における生体900のサイズ(より具体的には、生体900の顔のサイズ)を基準として、脈波検出装置3の設計者によって適宜設定されてよい。例えば、許容閾値は、映像における50画素分の長さに設定されていてよい。50画素分という本例の長さは、例えば、実空間における5センチメートルに相当する長さとして設定されている。
【0100】
脈波検出部12Bは、映像記憶部13が記憶した映像の各フレームにおいて、関心領域910に含まれる複数の画素のうち、Lth以上の画素値を有する画素を、特定高輝度画素として特定する。例えば、脈波検出部12Bは、映像記憶部13が記憶した映像の各フレームにおいて、Lth1以上の画素値を有する画素を、飽和画素として特定する。
【0101】
この場合、例えば、脈波検出部12Bは、映像記憶部13が記憶した映像の全フレームに亘って通常画素であると特定された画素の画素値のみを用いて、Rave、Gave、およびBaveのそれぞれの時系列データを導出する。例えば、脈波検出部12Bは、映像記憶部13が記憶した映像の全フレームに亘って非飽和画素であると特定された画素の画素値のみを用いて、Rave、Gave、およびBaveのそれぞれの時系列データを導出してよい。
【0102】
なお、脈波検出部12Bは、実施形態1と同様に、IMG2に基づいてRave、Gave、およびBaveのそれぞれの時系列データを導出してもよい。あるいは、脈波検出部12Bは、実施形態2と同様に、IMG3に基づいてRave、Gave、およびBaveのそれぞれの時系列データを導出してもよい。
【0103】
映像記憶部13に記憶される映像では、全フレームに亘って関心領域910に含まれる画素数は同じである必要がある。また、映像中の各画素は、全フレームに亘って、生体900の同一箇所の色情報を表現していることが望ましい。
【0104】
このため、映像記憶部13は、生体900が動いた場合には、所定の画像処理技術によって、当該生体900の同一箇所を追尾(トラッキング)した画像を生成してもよい。あるいは、撮像装置50に、生体900を追尾する機能を付与してもよい。また、上述の通り、生体900が大きく動いた場合には、映像記憶部13に映像の記憶を終了させてもよい。
【0105】
脈波検出装置3では、映像の全フレームに亘って、関心領域910に含まれる同じ画素数の画素の情報(例:同じ画素数の画素値分布)を使用して、脈波を検出できる。すなわち、脈波検出装置3では、映像のフレーム間における関心領域910に含まれる画素数の違いに起因する誤差の影響を低減して、脈波を検出できる。
【0106】
以上の通り、脈波検出装置3は、映像記憶部13が記憶した映像の全フレームに亘って(言い換えれば、映像記憶部13が記憶した映像の時間長の全体に亘って)、特定高輝度画素の影響を低減させた上で、関心領域910に含まれる複数の画素の画素値の時間変化に基づいて、脈波を検出する。
【0107】
但し、当業者であれば明らかである通り、脈波検出装置3は、必ずしも映像の全フレームに亘って、特定高輝度画素の影響を低減させる必要はない。脈波検出装置3は、映像記憶部13が記憶した映像の少なくとも1つのフレームにおいて、特定高輝度画素の影響を低減させた上で、関心領域910に含まれる複数の画素の画素値の時間変化に基づいて、脈波を検出できればよい。
【0108】
〔ソフトウェアによる実現例〕
脈波検出装置1~3(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に、映像解析装置10~10Bに含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0109】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0110】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0111】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0112】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0113】
〔付記事項〕
本開示の一態様は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の一態様の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成できる。
【符号の説明】
【0114】
1、2、3 脈波検出装置
10、10A、10B 映像解析装置
11 関心領域検出部
12、12A、12B 脈波検出部
13 映像記憶部
50 撮像装置
51 カラーフィルタ部
52 撮像部
520 撮像素子
510 カラーフィルタユニット
511R 赤色カラーフィルタ
511G、511G1・511G2 緑色カラーフィルタ
511B 青色カラーフィルタ
610 飽和画素(特定高輝度画素)
615 周辺画素(特定高輝度画素)
620、620A 通常画素(特定高輝度画素を除いた画素)
900 生体
910 関心領域
IMG 画像(生体が映った映像の1フレーム)
IMG2 関心領域フルカラー画像
IMG3 低解像度関心領域フルカラー画像
Lth1 飽和閾値(画素値閾値)
Lth2 画素値閾値
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