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特開2022-160896信号処理装置、信号処理方法及び信号処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160896
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】信号処理装置、信号処理方法及び信号処理システム
(51)【国際特許分類】
   H04S 7/00 20060101AFI20221013BHJP
   G10L 21/034 20130101ALI20221013BHJP
【FI】
H04S7/00 310
G10L21/034
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065407
(22)【出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 和昭
(72)【発明者】
【氏名】久保 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】遠部 俊光
(72)【発明者】
【氏名】中川 聖基
【テーマコード(参考)】
5D162
【Fターム(参考)】
5D162AA10
5D162CA04
5D162CA05
5D162CA11
5D162DA02
(57)【要約】
【課題】オーディオ信号に対するラウドネス補正を設計意図通りに行うこと。
【解決手段】実施形態に係る信号処理装置は、第1の補正部(トーンコントロール、AVCEQ)と第2の補正部(動的ラウドネス補償)を有する。第1の補正部は、入力されたオーディオ信号に対して、ユーザによる設定の内容、及びオーディオ信号が再生される車両の状態に応じた周波数特性の補正を行う。第2の補正部は、第1の補正部によって補正されたオーディオ信号に対して、オーディオ信号の特性に応じたラウドネス補正を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたオーディオ信号に対して、ユーザによる設定の内容、及び前記オーディオ信号が再生される車両の状態に応じた周波数特性の補正を行う第1の補正部と、
前記第1の補正部によって補正されたオーディオ信号に対して、前記オーディオ信号の特性に応じたラウドネス補正を行う第2の補正部と、
を有することを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記第2の補正部は、補正後のオーディオ信号に高調波成分を発生させる非線形処理によるラウドネス補正を行い、さらに、前記非線形処理によって補正されたオーディオ信号に対して線形処理によるラウドネス補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記第2の補正部は、音量が調整された後の前記オーディオ信号のレベルに応じたラウドネス補正を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記車両に備えられたマイクによって収集された騒音量に基づいて、前記第2の補正部によって補正されたオーディオ信号に対して、音量補正を行う第3の補正部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記第3の補正部は、前記マイクによって収集された騒音信号から再生音成分を除去した音声の信号を、フィルタリングして得られた帯域ごとの成分により補正を行うことを特徴とする請求項4に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記第1の補正部は、入力されたオーディオ信号に対して、ユーザによる設定の内容、及び前記オーディオ信号が再生される車両の状態に応じた周波数特性の補正に加え、線形処理によるラウドネス補正を行い、
前記第2の補正部は、前記第1の補正部によって補正されたオーディオ信号に対して、前記オーディオ信号の特性に応じたラウドネス補正に加え、前記車両に備えられたマイクによって収集された騒音量に基づいた、音量補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記第1の補正部は、ユーザによる設定の内容、及び前記オーディオ信号が再生される車両の状態に応じた周波数特性の補正量と、線形処理によるラウドネス補正の補正量とから計算した補正量により入力されたオーディオ信号を補正し、
前記第2の補正部は、前記オーディオ信号の特性に応じたラウドネス補正の補正量と、前記騒音量に基づいた音量補正の補正量とから計算した補正量により、前記第1の補正部によって補正されたオーディオ信号を補正することを特徴とする請求項6に記載の信号処理装置。
【請求項8】
信号処理装置によって実行される信号処理方法であって、
入力されたオーディオ信号に対して、ユーザによる設定の内容、及び前記オーディオ信号が再生される車両の状態に応じた周波数特性の補正を行う第1の補正工程と、
前記第1の補正工程によって補正されたオーディオ信号に対して、前記オーディオ信号の特性に応じたラウドネス補正を行う第2の補正工程と、
を含むことを特徴とする信号処理方法。
【請求項9】
車両と、信号処理装置と、を有する信号処理システムであって、
前記信号処理装置は、
入力されたオーディオ信号に対して、ユーザによる設定の内容、及び前記オーディオ信号が再生される車両の状態に応じた周波数特性の補正を行う第1の補正部と、
前記第1の補正部によって補正されたオーディオ信号に対して、前記オーディオ信号の特性に応じたラウドネス補正を行う第2の補正部と、
を有し、
前記車両は、
前記第2の補正部によって補正されたオーディオ信号を音声に変換して出力する出力部を有することを特徴とする信号処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置、信号処理方法及び信号処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるオーディオシステムには、再生周波数特性の補正を目的とした機能として、ラウドネス補正機能(例えば、特許文献1を参照)、自動ボリューム調整機能(AVC:Automatic Volume Control)及びトーンコントロール機能が搭載されている。
【0003】
ラウドネス補正機能は、再生音量が小さくなると低い音と高い音が聞き取りにくくなるという人間の聴覚特性を補償するため、再生音量が小さい場合には再生音の低い音と高い音を上昇させるように周波数特性を調整する機能である。
【0004】
ここで、ユーザによるボリューム操作に応じたラウドネス補正機能を、静的なラウドネス補正機能と呼ぶ。また、オーディオ信号の特性に応じたラウドネス補正機能を、動的なラウドネス補正機能と呼ぶ。
【0005】
また、AVCは、音楽再生時の走行騒音によるマスキング現象を回避するために設けられ、走行速度等の車両状態に応じて再生音の音量や周波数特性を調整する機能である。
【0006】
また、トーンコントロール機能は、ユーザが自分の嗜好に合わせて周波数特性を調整可能な機能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-111538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の技術では、オーディオ信号に対するラウドネス補正を設計意図通りに行うことができない場合があるという問題がある。
【0009】
図10は、従来の信号処理装置を示す図である。図10に示すように、(2)動的ラウドネス補償よりも後段(出力側)に(4)トーンコントロール(ユーザ可変周波数特性補正部102a)及び(5)AVCEQ(マスキング回避部103a)が配置されている。
【0010】
ここで、動的なラウドネス補正機能では非線形処理が行われる。このため、動的なラウドネス補正機能により処理されたオーディオ信号の高調波成分が生じる。
【0011】
図11は、従来の信号処理装置の課題を説明する図である。図11に示すように、(4)トーンコントロールと(2)動的ラウドネス補償の制御帯域が重複する領域が存在する場合がある。
【0012】
その場合、ラウドネス補正機能の設計において生じた高調波成分が、トーンコントロール機能によって強調されることになる。
【0013】
ここで、トーンコントロール及びAVCは、ユーザの設定及び車両の速度といった外的な要因によって調整量が決まる。一方、動的なラウドネス補正機能は、設計意図に沿って調整を行う。
【0014】
そのため、ラウドネス補正機能による高調波成分が強調されると、出力されるオーディオ信号が設計において意図されたものとかい離してしまう場合がある。
【0015】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、オーディオ信号に対するラウドネス補正を設計意図通りに行うことができる信号処理装置、信号処理方法及び信号処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る信号処理装置は、第1の補正部と第2の補正部とを有する。第1の補正部は、入力されたオーディオ信号に対して、ユーザによる設定の内容、及びオーディオ信号が再生される車両の状態に応じた周波数特性の補正を行う。第2の補正部は、第1の補正部によって補正されたオーディオ信号に対して、オーディオ信号の特性に応じたラウドネス補正を行う。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、オーディオ信号に対するラウドネス補正を設計意図通りに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、第1の実施形態に係る信号処理装置の構成例を示す機能ブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る信号処理装置の詳細な構成を示す図である。
図3図3は、線形処理と非線形処理を説明する図である。
図4図4は、第1の実施形態の効果を説明する図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る信号処理装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
図6図6は、第2の実施形態に係る信号処理装置の詳細な構成を示す図である。
図7図7は、第3の実施形態に係る信号処理装置の詳細な構成を示す図である。
図8図8は、補正量を計算する処理の流れを示す図である。
図9図9は、補正量の調停処理を説明する図である。
図10図10は、従来の信号処理装置を示す図である。
図11図11は、従来の信号処理装置の課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する信号処理装置、信号処理方法及び信号処理システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0020】
[第1の実施形態]
図1を用いて、第1の実施形態に係る信号処理装置の構成を説明する。図1は、第1の実施形態に係る信号処理装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【0021】
信号処理装置1は、車両に搭載されているものとする。信号処理装置1は、オーディオ信号の入力を受け付ける。また、信号処理装置1は、処理済みのオーディオ信号を出力する。
【0022】
さらに、信号処理装置1は、ユーザの操作情報及び車速情報等の入力を受け付ける。
【0023】
例えば、オーディオ信号は、車両内で再生される音楽に関するものである。この場合、信号処理装置1は、入力されたオーディオ信号に対して、音楽の再生品質を向上させるような処理を行う。
【0024】
例えば、信号処理装置1は、オーディオ信号に対してAVC、トーンコントロール、動的なラウドネス補償及び静的なラウドネス補償を行う。
【0025】
ここで、図10に示すように、従来の信号処理装置では、動的なラウドネス補償が行われた後にトーンコントロール及びAVCが行われていた。
【0026】
このため、前述の通り、従来はオーディオ信号に対するラウドネス補正を設計意図通りに行うことができないという問題が生じていた。
【0027】
一方、第1の実施形態の信号処理装置は、動的なラウドネス補償の前にトーンコントロール及びAVCを行うことにより、ラウドネス補正を設計意図通りに行うことができないという問題を回避している。
【0028】
図1に示すように、信号処理装置1は、ボリューム調整部101と、ユーザ可変周波数特性補正部102と、マスキング回避部103と、再生音量レベル検知部104と、動的ラウドネス補正量計算部105と、動的ラウドネス補正部106と、静的ラウドネス補正部107と、周波数特性補正部108と、を有する。
【0029】
さらに、信号処理装置1は、ボリュームゲイン計算部201と、ユーザ可変周波数補正量計算部202と、マスキング回避補正量計算部203と、静的ラウドネス補正量計算部204と、を有する。
【0030】
ボリュームゲイン計算部201は、ボリューム調整部101による再生音量の調整量を、ユーザの操作情報に基づき計算する。
【0031】
ボリューム調整部101は、ボリュームゲイン計算部201の計算結果に基づき再生音量を調整する。
【0032】
ユーザ可変周波数補正量計算部202は、トーンコントロールにおける周波数特性の調整量を、ユーザの操作情報に基づき計算する。
【0033】
ユーザ可変周波数特性補正部102は、ユーザ可変周波数補正量計算部202による計算結果に基づきトーンコントロールを行う。
【0034】
マスキング回避補正量計算部203は、AVCにおける周波数特性の調整量を、ユーザの操作情報及び車速情報に基づき計算する。マスキング回避部103は、マスキング回避補正量計算部203による計算結果を基にAVCを行う。
【0035】
再生音量レベル検知部104は、ボリューム調整部101による調整後の再生音量のレベルを検知する。
【0036】
動的ラウドネス補正量計算部105は、動的ラウドネス補償における所定の周波数帯域の補正量を、再生音量レベル検知部104の検知結果を基に計算する。
【0037】
動的ラウドネス補正部106は、動的ラウドネス補正量計算部105による計算結果を基に動的ラウドネス補償を行う。
【0038】
静的ラウドネス補正量計算部204は、静的ラウドネス補償における所定の周波数帯域の補正量を、ユーザの操作情報(例えば、再生音量の調整量)を基に計算する。
【0039】
静的ラウドネス補正部107は、静的ラウドネス補正量計算部204による計算結果を基に静的ラウドネス補償を行う。
【0040】
周波数特性補正部108は、周波数特性の補正する他の処理を行う。ただし、周波数特性補正部108は、ユーザの操作情報によらない処理を行うものとする。
【0041】
図2は、第1の実施形態に係る信号処理装置の詳細な構成を示す図である。図2は、説明のため、図1で説明した各処理部から主要なものを抜粋したものである。
【0042】
まず、(1)ボリューム調整部101はボリュームを調整する機能である。
【0043】
(4)ユーザ可変周波数特性補正部102は、トーンコントロールを行う。
【0044】
(2)動的ラウドネス補償は、再生音量レベル検知部104、動的ラウドネス補正量計算部105及び動的ラウドネス補正部106によって実行される。
【0045】
(3)静的ラウドネス補償は、静的ラウドネス補正部107及びホストマイコンに備えられた静的ラウドネス補正量計算部204によって実行される。
【0046】
動的ラウドネス補償及び静的ラウドネス補償は、所定の高域及び低域の成分を補正する処理である。
【0047】
このとき、動的ラウドネス補償では、検知された再生音量のレベルに応じて補正量が決定されるのに対し、静的ラウドネス補償では、設定されたボリューム値によって補正量が決定される。
【0048】
また、動的ラウドネス補償では線形な処理が行われるのに対し、静的ラウドネス補償では非線形な処理が行われる。
【0049】
図3は、線形処理と非線形処理を説明する図である。図3に示すように、線形処理における入力信号レベルと出力信号レベルの関係は、処理前と同様に線形である。一方、非線形処理における入力信号レベルと出力信号レベルの関係は、処理前とは異なる。
【0050】
さらに、非線形処理(動的ラウドネス補償)においては、補正量にスムージングゲインを持たせることで、過渡期における音声信号の変化を自然かつ滑らかにすることができる。
【0051】
ここで、第1の実施形態では、ユーザ可変周波数補正量計算部202及びマスキング回避補正量計算部203が第1の補正部に相当する。
【0052】
すなわち、ユーザ可変周波数補正量計算部202及びマスキング回避補正量計算部203は、入力されたオーディオ信号に対して、ユーザによる設定の内容、及びオーディオ信号が再生される車両の状態に応じた周波数特性の補正を行う。
【0053】
また、動的ラウドネス補正部106は、音量が調整された後のオーディオ信号のレベルに応じたラウドネス補正を行う。
【0054】
また、第1の実施形態では、動的ラウドネス補正部106及び静的ラウドネス補正部107が第2の補正部に相当する。
【0055】
すなわち、動的ラウドネス補正部106は、ユーザ可変周波数補正量計算部202及びマスキング回避補正量計算部203によって補正されたオーディオ信号に対して、オーディオ信号の特性に応じたラウドネス補正を行う。
【0056】
オーディオ信号の特性は、ユーザの操作及び車両の状態にかかわらず、オーディオ信号自体から得られる情報であり、例えば検知されたレベルである。
【0057】
一方、静的ラウドネス補正部107は、非線形処理によって補正されたオーディオ信号に対して線形処理によるラウドネス補正を行う。
【0058】
このように、ユーザの操作及び車両の状態に応じて結果が変化する処理を、動的ラウドネス補償よりも前段(入力側)に配置することで、ラウドネス補正を設計意図通りに行うことができる。
【0059】
特に、第1の実施形態によれば、動的ラウドネス補償で発生した高調波成分が、トーンコントロール及びAVCによって強調されることを防止することができる。
【0060】
図4は、第1の実施形態の効果を説明する図である。図4に示すように、第1の実施形態では、トーンコントロールと動的ラウドネス補償の制御帯域が重複する場合であっても、動的ラウドネス補償による高調波成分はトーンコントロールにより強調されない。
【0061】
図5は、第1の実施形態に係る信号処理装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【0062】
図5に示すように、信号処理装置1は、オーディオ信号の入力を受け付ける(ステップS101)。例えば、信号処理装置1は、車両に備えられた記憶装置に音声ファイルとして記憶されたオーディオ信号の入力を受け付ける。
【0063】
次に、信号処理装置1は、オーディオ信号に対してトーンコントロールを行う(ステップS102)。
【0064】
続いて、信号処理装置1は、オーディオ信号に対して、マスキング現象回避のためにAVCを行う(ステップS103)。
【0065】
その後、信号処理装置1は、オーディオ信号に対して動的ラウドネス補償を行う(ステップS104)。
【0066】
そして、信号処理装置1は、オーディオ信号に対して静的ラウドネス補償を行う(ステップS105)。
【0067】
ここで、信号処理装置1は、処理後のオーディオ信号を出力する(ステップS106)。例えば、信号処理装置1は、車両のスピーカに対してオーディオ信号を出力する。
【0068】
また、信号処理装置1は、車両と信号処理システムを構成することができる。
【0069】
この場合、車両は、処理前のオーディオ信号を記憶する記憶部と、信号処理装置1によって処理されたオーディオ信号を音声に変換して出力する出力部を有する。
【0070】
信号処理装置1は、記憶部に記憶されたオーディオ信号の入力を受け付け、出力部に対して処理後のオーディオ信号を出力する。
【0071】
記憶部は、光学メディア及びフラッシュメモリ等の記憶媒体によって実現されてもよい。また、記憶部は、車両とデータ通信可能に接続された携帯端末、又は車両とネットワーク経由で接続されたサーバの記憶領域であってもよい。
【0072】
また、例えば、出力部はスピーカである。
【0073】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、信号処理装置1は、第1の実施形態で説明した処理に加えて、騒音感応型の動的騒音補償を行う。
【0074】
図6は、第2の実施形態に係る信号処理装置の詳細な構成を示す図である。図6に示すように、動的騒音補償部304は、動的ラウドネス補正部106の後段(出力側)に配置される。
【0075】
動的騒音補償部304は、車両に備えられたマイクによって収集された騒音信号のレベル計算結果(騒音量)に基づき、動的ラウドネス補償によって補正されたオーディオ信号に対し、騒音によりマスキングされた分の音量補償を行う。
【0076】
これにより、ユーザは走行音等の騒音に応じてボリューム値を都度変更する必要がなくなる。
【0077】
走行騒音によって車両内において再生音が聞き取りにくくなることを防止するために、AVC等車速連動型の静的騒音補償機能が知られている。
【0078】
一方で、走行騒音は車速以外にも走行場所や条件によっても大きく変動する。このため、第2の実施形態では、走行騒音をモニタするセンサを追加しセンサ情報から得られた騒音モニタ情報を基に動的な騒音補償を行う。
【0079】
図6の例では、騒音量を求めるために車速とマイクによる入力の両方が使用されている。車速は走行騒音と相関が高い情報である。また、マイクは、騒音をセンシングするための手段である。
【0080】
ここで、マスキング回避部103(AVCEQ)は、車速情報とボリューム値に基づき騒音の低減を行う静的騒音補償に相当する。
【0081】
図6に示すように、マスキング回避部103は、ボリューム調整部101による再生音量の調整量に対応するVolume Tables、及び車速パルスに対応するAVC Tablesを参照して補正量を計算する。
【0082】
一方、動的騒音補償は、実際にマイクで録音した車両内の騒音を解析した結果に基づいて行われる。
【0083】
具体的には、動的騒音補償補正量計算部303は、マイク入力の騒音信号から、再生音成分除去部301がE/C処理によって再生音声成分を除去した結果を基に補正量を計算する。
【0084】
さらに、動的騒音補償補正量計算部303は、マイクによって収集された音声から再生音成分を除去した音声の信号を、フィルタリングして得られた帯域ごとの成分により補正してもよい。
【0085】
これにより、周波数帯域別に細やかなイコライザ制御が可能になる。
【0086】
なお、騒音量の求め方は上記のマイクで録音した音声を用いるものに限られない。動的騒音補償補正量計算部303は、走行騒音と相関の強い車両信号、及び、アクチュエータによるセンシング結果のいずれか又は両方から得られた情報を基に、騒音量を計算してもよい。
【0087】
走行騒音と相関の強い車両信号には、車速、エンジン回転数、トルク等がある。また、アクチュエータはマイクであってもよいし、振動センサであってもよい。
【0088】
さらに、信号処理装置12は、ハンズフリー通話用マイク及びANC(Active Noise Control)用センサ等の他の目的で設置されているアクチュエータを利用してもよい。
【0089】
信号処理装置12は、アクチュエータより入力される信号から実際の騒音量のみ検出するため、再生するオーディオ信号に対して伝達関数を畳み込み、アクチュエータに入力されるオーディオ信号成分を予測する。
【0090】
そして、信号処理装置12は、予測したオーディオ信号成分を、入力される信号から減算する。
【0091】
図6のようにアクチュエータとしてマイクを使用する場合、信号処理装置12は、スピーカ出力からマイク入力までの再生空間(車両内)における伝達特性を求め適用する。
【0092】
また、アクチュエータとして振動センサを使用する場合、信号処理装置12は、スピーカから振動センサまでの車体伝搬特性を求め適用する。
【0093】
また、図6の伝達関数畳み込みの際に用いるFIR(Finite Impulse Response)フィルタの前段にFIRのタップ長削減を目的とした帯域制限フィルタが備えられていてもよい。
【0094】
また、騒音量の検出精度よくするため、前述の帯域制限フィルタと同様のフィルタを騒音信号側(マイク入力側)にも挿入することで相対的な位相差をなくしてもよい。
【0095】
さらに、マイク入力を周波数又は時間の特性によってフィルタリングし、それぞれの検出結果に応じて制御内容を調整することで、特定の騒音種に対し感度を高めることができる。
【0096】
[第3の実施形態]
第3の実施形態では、信号処理装置は、動的ラウドネス補償と動的騒音補償を統合した処理を行う。
【0097】
これは、動的ラウドネス補償と動的騒音補償は処理内容が類似しており、いずれもイコライザとして機能するためである。これにより、競合による動的ラウドネス補償と動的騒音補償の効果の低減を抑止し、処理負荷を削減することができる。
【0098】
また、第3の実施形態では、信号処理装置は、静的ラウドネス補償とトーンコントロール及びAVCを統合した処理を行う。
【0099】
図7は、第3の実施形態に係る信号処理装置の詳細な構成を示す図である。
【0100】
図7に示すように、信号処理装置13は、前段部分(静的音声制御統合ブロック:ユーザ可変周波数補正量計算部202、マスキング回避補正量計算部203、静的ラウドネス補正量計算部204、静的制御補正量調停部401、静的制御補正部402)において静的ラウドネス補償、トーンコントロール及びAVCを実行する。
【0101】
また、信号処理装置13は、後段部分(動的音声制御統合ブロック:動的ラウドネス補正量計算部105、再生音成分除去部301、騒音量レベル検知部302、動的騒音補償補正量計算部303、動的制御補正量調停部403、静的制御補正部402)において動的ラウドネス補償及び動的騒音補償を実行する。
【0102】
すなわち、静的音声制御統合ブロックは、入力されたオーディオ信号に対して、ユーザによる設定の内容、及びオーディオ信号が再生される車両の状態に応じた周波数特性の補正に加え、線形処理によるラウドネス補正を行う。
【0103】
また、動的音声制御統合ブロックは、静的音声制御統合ブロックによって補正されたオーディオ信号に対して、オーディオ信号の特性に応じたラウドネス補正に加え、第2の実施形態と同様の手段によって得られた騒音量に基づき、総合的に補正量を決定する。
【0104】
静的音声制御統合ブロックにおける補正量は、Volume Tables及びAVC Tablesに加え、Tone Table及びLoudness Tableを参照して計算される。
【0105】
図8は、補正量を計算する処理の流れを示す図である。図8のステップS201、S202、S203、S204及びS205は、動的音声制御統合ブロックにおける補正量を計算する処理である。
【0106】
また、ステップS301、S302、S303、S304及びS305は、静的音声制御統合ブロックにおける補正量を計算する処理である。
【0107】
図8に示すように、動的音声制御統合ブロックは、再生音から再生音量の検出を行う(ステップS201)。
【0108】
そして、動的音声制御統合ブロックは、検出した再生音量を基にラウドネス補正量を計算する(ステップS202)。
【0109】
また、動的音声制御統合ブロックは、マイク入力によって得られる騒音及び車速信号から、騒音量を照合する処理を行う(ステップS203)。
【0110】
そして、動的音声制御統合ブロックは、照合した騒音量を基に騒音補償補正量を計算する(ステップS204)。
【0111】
さらに、動的音声制御統合ブロックは、ステップS202及びステップS204のそれぞれで計算した補正量x1及びy1のうち、採用する補正量Aを決定する(ステップS205)。
【0112】
次に、静的音声制御統合ブロックは、車速信号及びボリュームステップを基にAVC Tableを照合する(ステップS301)。
【0113】
そして、静的音声制御統合ブロックは、AVC Tableの照合結果を基にマスキング回避補正量(AVCの補正量)を計算する(ステップS302)。
【0114】
また、静的音声制御統合ブロックは、トーンコントロール等の設定内容を基にLoudness Tableを照合する(ステップS303)。
【0115】
そして、静的音声制御統合ブロックは、Loudness Tableの照合結果を基にラウドネス補正量を計算する(ステップS304)。
【0116】
さらに、静的音声制御統合ブロックは、ステップS302及びステップS304のそれぞれで計算した補正量x2及びy2のうち、採用する補正量Bを決定する(ステップS305)。
【0117】
図9は、補正量の調停処理を説明する図である。図9の例では、図8のステップS205において、静的ラウドネス補償の補正量x2が6dBと計算され、AVCEQの補正量y2が4dBと計算されたとする。
【0118】
この場合、x2の方がy2よりも大きいため、静的制御補正量調停部401は、補正量としてx2を採用する。
【0119】
また、動的制御補正量調停部403は、x1及びy1について、図9と同様の調停処理を行う。
【0120】
また、調停方法は、図9に示すものに限られず、例えば各計算結果に重みを付与する方法であってもよい。例えば、x1に重み2、y1に重み1を付与する場合、A=(2/3)×x1+(1/3)×y1のように計算される。
【0121】
このような調停処理を行うことにより、各処理で計算された補正量を最終的な補正に反映させることができる。
【0122】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細及び代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0123】
1 信号処理装置
101 ボリューム調整部
102 ユーザ可変周波数特性補正部
103 マスキング回避部
104 再生音量レベル検知部
105 動的ラウドネス補正量計算部
106 動的ラウドネス補正部
107 静的ラウドネス補正部
108 周波数特性補正部
201 ボリュームゲイン計算部
202 ユーザ可変周波数補正量計算部
203 マスキング回避補正量計算部
204 静的ラウドネス補正量計算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11