(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016090
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20220114BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20220114BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20220114BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20220114BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20220114BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20220114BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
G09F9/00 313
G02B5/20
G09F9/33
H01L33/00 L
H01L33/50
H01L33/60
G09F9/30 349Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119371
(22)【出願日】2020-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】川下 雅史
(72)【発明者】
【氏名】川田 京慧
(72)【発明者】
【氏名】下村 温紗
【テーマコード(参考)】
2H148
5C094
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
2H148AA01
2H148AA07
2H148AA19
2H148AA24
2H148AA25
5C094AA43
5C094AA44
5C094BA26
5C094CA19
5F142AA82
5F142BA32
5F142CB13
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5F142CG03
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5F142DA64
5F142DA73
5F142DB20
5F142GA02
5G435AA17
5G435BB04
5G435CC09
5G435GG12
5G435HH02
5G435KK07
(57)【要約】
【課題】発光層の形成に要する負荷の軽減を可能とした表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置100は、第1波長域の光を発する複数の第1発光部111B、および、第2波長域の光を発する複数の第2発光部111Gを備える発光層110と、第1発光部111B上に位置し、第1波長域の光を励起光に用いて第3波長域の光を放出する波長変換部121、波長変換部121とは異なる第1発光部111B上に位置し、第1波長域の光を透過する第1透過部122B、および、第2発光部111G上に位置し、第2波長域の光を透過する第2透過部122Gを備える波長制御層120と、波長変換部121上に位置し、第1波長域の光を選択的に反射するとともに、第3波長域の光を透過する波長選択部131とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長域の光を発する複数の第1発光部、および、第2波長域の光を発する複数の第2発光部を備える発光層と、
前記第1発光部上に位置し、前記第1波長域の光を励起光に用いて第3波長域の光を放出する波長変換部、前記波長変換部とは異なる前記第1発光部上に位置し、前記第1波長域の光を透過する第1透過部、および、前記第2発光部上に位置し、前記第2波長域の光を透過する第2透過部を備える波長制御層と、
前記波長変換部上に位置し、前記第1波長域の光を選択的に反射するとともに、前記第3波長域の光を透過する波長選択部と、を備え、
前記波長選択部は、高屈折率材料からなるサブ波長周期の格子構造が低屈折率材料に囲まれた構造を有する
表示装置。
【請求項2】
前記第1波長域は、青色波長域であり、
前記第2波長域は、緑色波長域であり、
前記第3波長域は、赤色波長域である
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1波長域は、緑色波長域であり、
前記第2波長域は、青色波長域であり、
前記第3波長域は、赤色波長域である
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記波長変換部は、前記第1波長域の光を励起光に用いる無機蛍光体を備える
請求項1~3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記波長変換部は、前記第1波長域の光を励起光に用いる量子ドットを備える
請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1発光部、および、前記第2発光部の各々は、マイクロLEDを備える
請求項1~5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記波長選択部は、
凸部または凹部である凹凸要素であって、サブ波長周期で並ぶ複数の前記凹凸要素が構成する凹凸構造を表面に有する凹凸構造層と、
前記凹凸構造上に位置して当該凹凸構造に追従した表面形状を有する高屈折率層であって、前記凹凸構造の底部に位置してサブ波長格子を構成する第1格子高屈折率部、および、前記凹凸構造の頂部に位置してサブ波長格子を構成する第2格子高屈折率部を含み、前記凹凸構造層よりも屈折率の高い前記高屈折率層と、
前記高屈折率層上に位置する低屈折率層であって、前記高屈折率層よりも屈折率の低い前記低屈折率層と、を備える
請求項1~6のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記低屈折率層は、前記高屈折率層の表面の凹凸に追従した表面形状を有する
請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記凹凸構造層、前記高屈折率層、および、前記低屈折率層の各々は、可視領域の光に対して透明な材料から構成されており、
前記凹凸構造層は、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、および、熱可塑性樹脂のいずれかから構成され、
前記低屈折率層は、無機化合物材料から構成されている
請求項7または8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第1格子高屈折率部の厚さをT1、前記第2格子高屈折率部の厚さをT2、
前記高屈折率層の屈折率をn1、前記凹凸構造層の屈折率をn2、前記低屈折率層の屈折率をn3、
前記第1格子高屈折率部を含みその厚さ方向と直交する断面にて当該第1格子高屈折率部が占める面積比率をR1、前記第2格子高屈折率部を含みその厚さ方向と直交する断面にて当該第2格子高屈折率部が占める面積比率をR2、とするとき、
n1>n2、n1>n3、かつ、R1+R2>1であって、
T1×{n1×R1+n2×(1-R1)}で表される第1パラメータに対する、T2×{n1×R2+n3×(1-R2)}で表される第2パラメータの比が、0.5以上2.0以下である
請求項7~9のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項11】
前記高屈折率層は、前記第1格子高屈折率部と前記第2格子高屈折率部との間で前記凹凸要素の側面に沿って延びる中間高屈折率部を含み、
前記中間高屈折率部を含みその厚さ方向と直交する断面にて当該中間高屈折率部が占める面積比率をR3とするとき、R3≦R1+R2-1が満たされる
請求項10に記載の表示装置。
【請求項12】
前記凹凸構造層、前記高屈折率層、および、前記低屈折率層を有する部分が共鳴構造部であり、
前記表示装置は、前記共鳴構造部の厚さ方向に沿って並ぶ複数の前記共鳴構造部を備える
請求項7~11のいずれか一項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の色の発光素子を備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに異なる色の光を発する複数種類の発光素子を用いて画像を表示する表示装置が知られている。例えば、表示装置は、赤色光を発する発光素子と、緑色光を発する発光素子と、青色光を発する発光素子とを備え、これらの発光素子が発する三色の光を用いて、カラーの画像を表示する。複数の色の発光素子は、表示装置が備える発光層にて、所定の配列で並んでいる。発光素子としては、例えば、無機発光ダイオード(LED:light emitting diode)が用いられる(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Yasufumi Fujiwara, Tomohiro Inaba, Keishi Shiomi, Shuhei Ichikawa, and Jun Tatebayashi , “Wavelength-stable and Narrow-band Red LED for Monolithic Micro-LED Display” The 25th International Display Workshops. 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、互いに異なる色を発する発光素子は、互いに異なる材料から形成される。したがって、発光素子の種類が多いほど、これらの発光素子を所定の配列で並べた発光層の形成に要する負荷が大きくなる。さらに、近年では、高精細な画像の表示のために、マイクロLEDのような微小な発光素子が精密に並んだ発光層の需要が高まっている。発光素子の並びが微細であるほど、発光層の形成の負荷は大きくなり、製造コストの増大を招く。
【0006】
例えば、発光素子としてLEDを用いる場合、緑色および青色の発光素子は、サファイア、シリコン、窒化ガリウム等からなる共通の基板に対する加工によって形成可能である一方、赤色の発光素子の形成には、ガリウムヒ素からなる基板の加工が必要である。このように、三色の発光素子を同一の基板上に形成することが困難であることは、発光層の形成負荷を増大させる一因である。各色の発光素子の形成に共通の基板を用いることができない場合、予め微小なサイズに形成した各色の発光素子を支持基材上の所定の位置に並べることによって、発光層が形成される。
【0007】
これに対し、非特許文献1では、窒化ガリウム系の材料を用いて赤色のLEDを形成する技術が報告されており、青色や緑色の発光素子と共通の基板上に赤色の発光素子を形成することが試みられている。しかしながら、各色の発光素子の形成に共通の基板を用いることが可能であったとしても、発光層の形成の負荷はなお大きい。すなわち、1つの基板上に互いに異なる種類の発光素子を形成するためには、まず、1つの色の発光素子を形成した後、この形成済みの発光素子の位置する領域を保護しつつ、他の領域に他の色の発光素子を形成することを繰り返す必要がある。この過程では、発光素子が形成される微小領域に対して、有機金属気相成長法(MOCVD:metal organic chemica vapor deposition)とエッチングによる加工が繰り返し行われる。したがって、製造のプロセスが複雑となり、発光素子の配列の精密な形成に要する負荷は大きい。
【0008】
本発明は、発光層の形成に要する負荷の軽減を可能とした表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する表示装置は、第1波長域の光を発する複数の第1発光部、および、第2波長域の光を発する複数の第2発光部を備える発光層と、前記第1発光部上に位置し、前記第1波長域の光を励起光に用いて第3波長域の光を放出する波長変換部、前記波長変換部とは異なる前記第1発光部上に位置し、前記第1波長域の光を透過する第1透過部、および、前記第2発光部上に位置し、前記第2波長域の光を透過する第2透過部を備える波長制御層と、前記波長変換部上に位置し、前記第1波長域の光を選択的に反射するとともに、前記第3波長域の光を透過する波長選択部と、を備え、前記波長選択部は、高屈折率材料からなるサブ波長周期の格子構造が低屈折率材料に囲まれた構造を有する。
【0010】
上記構成によれば、2種類の発光部を用いて3種類の色の領域が実現できるため、領域の色数と同数の種類の発光部を用いる場合と比較して、発光層の形成に要する負荷の軽減が可能である。そして、波長変換部上に、第1波長域の光を選択的に反射する波長選択部が配置されているため、発光部からの光が波長変換部を透過した場合に、この光が、波長変換部での変換後の光に混じって表示装置から射出されることが抑えられる。それゆえ、表示装置が射出する光の色が鮮やかになり、表示される画像での混色を抑制することができる。また、反射された第1波長の光が再び波長変換部に入ることで、第3波長の光の生成効率も高められる。
【0011】
上記構成において、前記第1波長域は、青色波長域であり、前記第2波長域は、緑色波長域であり、前記第3波長域は、赤色波長域であってもよい。
上記構成によれば、青と緑との2種類の発光部を用いて、赤、青、緑の三色の副画素領域を実現することができる。したがって、発光部がLEDを備える場合には、1つの基板上に各発光部を形成することができる。また、緑色光から赤色光を生成する場合と比較して、より短波長の光から赤色光が生成されるため、波長変換部で大きな発光が得られやすい。
【0012】
上記構成において、前記第1波長域は、緑色波長域であり、前記第2波長域は、青色波長域であり、前記第3波長域は、赤色波長域であってもよい。
上記構成によれば、青と緑との2種類の発光部を用いて、赤、青、緑の三色の副画素領域を実現することができる。したがって、発光部がLEDを備える場合には、1つの基板上に各発光部を形成することができる。
【0013】
上記構成において、前記波長変換部は、前記第1波長域の光を励起光に用いる無機蛍光体を備えてもよい。
上記構成によれば、励起を利用した波長の変換が好適に可能である。
【0014】
上記構成において、前記波長変換部は、前記第1波長域の光を励起光に用いる量子ドットを備えてもよい。
上記構成によれば、励起を利用した波長の変換が好適に可能である。また、変換後の光として、単色性の高い光が得られる。
【0015】
上記構成において、前記第1発光部、および、前記第2発光部の各々は、マイクロLEDを備えてもよい。
上記構成によれば、発光部から単色性の高い光の放出が可能であるとともに、低電力での発光部の駆動が可能である。また、高輝度かつ広視野角で高精細な画像の表示が可能である。
【0016】
上記構成において、前記波長選択部は、凸部または凹部である凹凸要素であって、サブ波長周期で並ぶ複数の前記凹凸要素が構成する凹凸構造を表面に有する凹凸構造層と、前記凹凸構造上に位置して当該凹凸構造に追従した表面形状を有する高屈折率層であって、前記凹凸構造の底部に位置してサブ波長格子を構成する第1格子高屈折率部、および、前記凹凸構造の頂部に位置してサブ波長格子を構成する第2格子高屈折率部を含み、前記凹凸構造層よりも屈折率の高い前記高屈折率層と、前記高屈折率層上に位置する低屈折率層であって、前記高屈折率層よりも屈折率の低い前記低屈折率層と、を備えてもよい。
【0017】
上記構成によれば、波長選択部において、2つのサブ波長格子が低屈折率材料で埋め込まれているため、導波モード共鳴による波長選択性の高い反射光が得られ、また、反射光の強度も高められる。
【0018】
上記構成において、前記低屈折率層は、前記高屈折率層の表面の凹凸に追従した表面形状を有してもよい。
上記構成によれば、低屈折率層の厚さおよび屈折率の調整により、サブ波長格子が位置する領域で強められた反射光とは異なる波長域の光が打ち消されて、こうした光が反射光とともに射出されることを抑えることができる。したがって、波長選択部の波長選択性が高められる。
【0019】
上記構成において、前記凹凸構造層、前記高屈折率層、および、前記低屈折率層の各々は、可視領域の光に対して透明な材料から構成されており、前記凹凸構造層は、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、および、熱可塑性樹脂のいずれかから構成され、前記低屈折率層は、無機化合物から構成されていてもよい。
【0020】
上記構成によれば、凹凸構造層の製造方法として、ナノインプリントのように、微細な凹凸の形成に適した製法の採用が可能である。また、低屈折率層の製造方法として、物理気相成長法のように、下層の凹凸に沿った形状の低屈折率層の形成に適した製法の採用が可能である。このように、低屈折率材料の使い分けによって、凹凸構造層と低屈折率層との好適な形成が可能であり、また、凹凸構造層と低屈折率層との屈折率を異ならせることも容易である。
【0021】
上記構成において、前記第1格子高屈折率部の厚さをT1、前記第2格子高屈折率部の厚さをT2、前記高屈折率層の材料の屈折率をn1、前記凹凸構造層の材料の屈折率をn2、前記低屈折率層の材料の屈折率をn3、前記第1格子高屈折率部を含みその厚さ方向と直交する断面にて当該第1格子高屈折率部が占める面積比率をR1、前記第2格子高屈折率部を含みその厚さ方向と直交する断面にて当該第2格子高屈折率部が占める面積比率をR2、とするとき、n1>n2、n1>n3、かつ、R1+R2>1であって、T1×{n1×R1+n2×(1-R1)}で表される第1パラメータに対する、T2×{n1×R2+n3×(1-R2)}で表される第2パラメータの比が、0.5以上2.0以下であってもよい。
上記構成によれば、2つのサブ波長格子が位置する領域の各々で強められた近しい波長域の光が反射光として得られる。それゆえ、波長選択部の波長選択性がより高められる。
【0022】
上記構成において、前記高屈折率層は、前記第1格子高屈折率部と前記第2格子高屈折率部との間で前記凹凸要素の側面に沿って延びる中間高屈折率部を含み、前記中間高屈折率部を含みその厚さ方向と直交する断面にて当該中間高屈折率部が占める面積比率をR3とするとき、R3≦R1+R2-1が満たされてもよい。
【0023】
上記構成によれば、中間高屈折率部の幅が小さく抑えられるため、2つのサブ波長格子の間の領域の平均屈折率が過度に大きくなることが抑えられる。したがって、サブ波長格子が位置する領域とその隣接領域との平均屈折率の差が良好に確保されるため、導波モード共鳴現象によって得られる反射光の強度が良好になる。
【0024】
上記構成において、前記凹凸構造層、前記高屈折率層、および、前記低屈折率層を有する部分が共鳴構造部であり、前記表示装置は、前記共鳴構造部の厚さ方向に沿って並ぶ複数の前記共鳴構造部を備えてもよい。
【0025】
上記構成によれば、各共鳴構造部におけるサブ波長格子の周期や配列の調整によって、波長選択部の波長選択性の向上や、反射光の波長域の調整や、偏光に対する応答性の調整が可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、発光層の形成に要する負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】表示装置の一実施形態について、表示装置の層構成の第1形態を示す図。
【
図2】一実施形態の表示装置における第1形態の光学的な作用を示す図。
【
図3】一実施形態の表示装置の層構成の第2形態を示す図。
【
図4】一実施形態の表示装置における第2形態の光学的な作用を示す図。
【
図5】一実施形態の波長選択部における第1例の構造を示す図であって、(a)は、波長選択部の断面構造を示し、(b)は、第1格子領域の断面構造を示し、(c)は、中間領域の断面構造を示し、(d)は、第2格子領域の断面構造を示す。
【
図6】一実施形態の波長選択部の第1例の製造方法を説明する図であって、凹凸構造層の形成工程を示す図。
【
図7】一実施形態の波長選択部の第1例の製造方法を説明する図であって、高屈折率層の形成工程を示す図。
【
図8】一実施形態の波長選択部の第1例の製造方法を説明する図であって、低屈折率層の形成工程を示す図。
【
図9】一実施形態の波長選択部における第1例の変形例の断面構造を示す図。
【
図10】一実施形態の波長選択部における第1例の変形例の断面構造を示す図。
【
図11】一実施形態の波長選択部における第2例の断面構造を示す図。
【
図12】一実施形態の波長選択部における第2例の断面構造を示す図。
【
図13】一実施形態の波長選択部の第2例の製造方法を説明する図であって、向かい合わされた凹凸構造体を示す図。
【
図14】一実施形態の波長選択部の第2例の製造方法を説明する図であって、埋込層の形成工程を示す図。
【
図15】一実施形態の波長選択部における第3例の構造を示す図。
【
図16】一実施形態の波長選択部における第4例の構造を示す図であって、(a)は、波長選択部の断面構造を示し、(b)は、第1格子領域の断面構造を示し、(c)は、中間領域の断面構造を示し、(d)は、第2格子領域の断面構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1~
図16を参照して、表示装置の一実施形態を説明する。以下において、可視領域の光の波長は、400nm以上800nm以下である。青色波長域は、400nm以上500nm以下であり、青色光は、青色波長域にピーク波長を有する光である。緑色波長域は、520nm以上580nm以下であり、緑色光は、緑色波長域にピーク波長を有する光である。赤色波長域は、600nm以上700nm以下であり、赤色光は、赤色波長域にピーク波長を有する光である。
【0029】
[表示装置の構成]
図1が示すように、表示装置100は、発光層110、波長制御層120、フィルタ層130、および、駆動部140を備えている。発光層110上に波長制御層120が位置し、さらに、波長制御層120上にフィルタ層130が位置する。駆動部140は発光層110に接続されている。波長制御層120に対してフィルタ層130の位置する側が表示装置100の表側であり、波長制御層120に対して発光層110の位置する側が表示装置100の裏側である。表示装置100の利用者は、フィルタ層130と対向する位置から、表示装置100を見る。
【0030】
フィルタ層130と対向する位置から見て、発光層110と波長制御層120とフィルタ層130とを含む積層体は、赤色副画素領域100Rと、緑色副画素領域100Gと、青色副画素領域100Bとを含む。赤色副画素領域100Rからは、表示装置100の表側に向けて、赤色光が射出される。緑色副画素領域100Gからは、表示装置100の表側に向けて、緑色光が射出される。青色副画素領域100Bからは、表示装置100の表側に向けて、青色光が射出される。
【0031】
赤色副画素領域100Rと、緑色副画素領域100Gと、青色副画素領域100Bとを含む単位領域が画素領域GPである。3種類の副画素領域100R,100G,100Bは、画素領域GP内において、所定の順番で並んでいる。なお、画素領域GPは、3種類の副画素領域100R,100G,100Bを1つずつ含むことに限らず、例えば、いずれか1種類の副画素領域を2つ、他の2種類の副画素領域を1つずつ含んでいてもよい。また、1つの画素領域GP内での3種類の副画素領域100R,100G,100Bの大きさは、互いに一致していてもよいし、異なっていてもよい。表示装置100は、複数の画素領域GPを有し、複数の画素領域GPは、例えばマトリクス状等の所定の配列に並んでいる。画素領域GPの配列に応じて、3種類の副画素領域100R,100G,100Bも、所定の順番での並びを繰り返しつつ配列されている。
【0032】
発光層110は、複数の発光部111を備えている。複数の発光部111は、緑色光を発する緑色発光部111Gと、青色光を発する青色発光部111Bとを含む。言い換えれば、発光部111は、緑色光および青色光のいずれかを発する。緑色発光部111Gは、緑色光を発する発光素子を備えている。青色発光部111Bは、青色光を発光する発光素子を備えている。発光素子は、例えば、マイクロLEDである。各発光部111は、例えば、数10μmの長さおよび幅を有する大きさに形成されている。発光素子としてマイクロLEDが用いられる場合、すべての発光部111は同一の基板上に形成されている。
【0033】
各発光部111には、各発光部111の発光を互いに独立して制御可能に駆動部140が接続されている。駆動部140は、表示装置100に表示させる画像のデータに基づき、発光部111における発光の強度を制御する信号を生成して、各発光部111に供給する。
【0034】
波長制御層120は、入射光の波長を変換して射出する波長変換部121と、入射光を透過する透過部122とを備えている。複数の透過部122には、緑色光を透過する緑色透過部122Gと、青色光を透過する青色透過部122Bとが含まれる。緑色透過部122Gは、例えば、TiO2等からなる粒子を含む透明樹脂膜を備え、緑色透過部122Gに入射した緑色光を、粒子によって緑色透過部122G内で拡散させて、透過する。青色透過部122Bは、TiO2等からなる粒子を含む透明樹脂膜を備え、青色透過部122Bに入射した青色光を、粒子によって青色透過部122B内で拡散させて、透過する。上記透明樹脂膜としては、例えば、クリアレジストが用いられる。
【0035】
なお、緑色透過部122Gは、少なくとも緑色光を透過し、青色透過部122Bは、少なくとも青色光を透過すればよい。例えば、緑色透過部122Gと青色透過部122Bとは同一の構成を有し、これらの透過部122G,122Bは、いずれも、緑色光と青色光とを透過してもよい。また、これらの透過部122G,122Bは、可視領域の光の全体を透過してもよい。
【0036】
フィルタ層130は、導波モード共鳴を利用して選択的に光を反射および透過する波長選択部131と、入射光を透過する非選択部132とを備えている。波長選択部131は、高屈折率材料からなるサブ波長周期の格子構造が低屈折率材料に囲まれた構造を有する。非選択部132は、可視領域の光の全体または一部を透過する。非選択部132は、例えば、透明樹脂膜から構成されている。透明樹脂膜としては、例えば、アクリル系のクリアレジストが用いられる。
なお、表示装置100は、上述の各層に加えて、電極層やバリア層等を備えている。また、各層の間には、平坦化のための膜等が配置されていてもよい。
【0037】
本実施形態の表示装置100は、発光層110、波長制御層120、フィルタ層130における各部の配列について、第1形態および第2形態のいずれかの構成を有する。以下、第1形態および第2形態について順に説明する。
【0038】
<第1形態>
図1は、第1形態の表示装置100を示す。第1形態の発光層110において、赤色副画素領域100Rには、青色発光部111Bが位置し、緑色副画素領域100Gには、緑色発光部111Gが位置し、青色副画素領域100Bには、青色発光部111Bが位置する。したがって、1つの画素領域GPが、赤色副画素領域100Rと、緑色副画素領域100Gと、青色副画素領域100Bとを1つずつ含む場合、1つの画素領域GPには、2つの青色発光部111Bと1つの緑色発光部111Gとが含まれる。
【0039】
第1形態の波長制御層120において、波長変換部121は、青色光を赤色光に変換する青赤変換部121BRである。青赤変換部121BRは、例えば、量子ドットを備える。青赤変換部121BRに分散された量子ドットは、青色光を吸収して赤色光を放出するように、その粒径や粒子種等が調整されている。あるいは、青赤変換部121BRは、青色光を吸収して赤色光を放出する無機蛍光体を備えてもよい。要は、青赤変換部121BRは、青色光を励起光として利用したエネルギー状態の遷移に起因して赤色光を放出するように構成されていればよい。
【0040】
青赤変換部121BRは、赤色副画素領域100Rに位置し、青色発光部111B上に配置されている。緑色透過部122Gは、緑色副画素領域100Gに位置し、緑色発光部111G上に配置されている。青色透過部122Bは、青色副画素領域100Bに位置し、青色発光部111B上に配置されている。
【0041】
なお、互いに隣接する青赤変換部121BRと透過部122との間には、これらを区画する隔壁が設けられていてもよいし、青赤変換部121BRと透過部122とは接していてもよい。また、互いに隣り合う透過部122同士の間には、これらを区画する隔壁が設けられていてもよいし、透過部122同士は接していてもよい。また、互いに隣り合う透過部122同士が同一の構成を有する場合には、これらの透過部122は連続していてもよい。
【0042】
第1形態のフィルタ層130において、波長選択部131は、赤色光を透過し、かつ、青色光を反射する青赤選択部131BRである。青赤選択部131BRは、赤色波長域の光を70%以上透過する一方で、青色波長域の光を70%以上反射することが好ましい。青赤選択部131BRは、緑色光を透過してもよいし、透過しなくてもよい。青赤選択部131BRは、赤色副画素領域100Rに位置し、青赤変換部121BR上に配置されている。緑色副画素領域100Gと青色副画素領域100Bとには、非選択部132が位置し、非選択部132は、緑色透過部122Gおよび青色透過部122B上に配置されている。緑色透過部122G上の非選択部132は、少なくとも緑色光を透過し、青色透過部122B上の非選択部132は、少なくとも青色光を透過する。
【0043】
なお、互いに隣接する青赤選択部131BRと非選択部132との間には、これらを区画する隔壁が設けられていてもよいし、青赤選択部131BRと非選択部132とは接していてもよい。また、緑色透過部122G上の非選択部132と、青色透過部122B上の非選択部132とは、連続していてもよいし、区切られていてもよい。
【0044】
緑色透過部122G上の非選択部132と、青色透過部122B上の非選択部132とが連続し、これらが同一の材料から形成される場合、非選択部132は、緑色波長域および青色波長域に吸収を有さない材料から形成され、非選択部132における緑色光および青色光の透過率は100%に近いことが好ましい。例えば、非選択部132は、可視波長域の全域に吸収を有さない材料から形成され、非選択部132における可視領域の光の透過率は100%に近いことが好ましい。
【0045】
緑色透過部122G上の非選択部132と、青色透過部122B上の非選択部132とが各別に形成される場合には、緑色透過部122G上の非選択部132は、緑色波長域に吸収を有さない材料から形成されればよい。そして、緑色透過部122G上の非選択部132における緑色波長域の光の透過率は100%に近いことが好ましい。また、青色透過部122B上の非選択部132は、青色波長域に吸収を有さない材料から形成され、当該非選択部132における青色波長域の光の透過率は100%に近いことが好ましい。
【0046】
図2を参照して、第1形態の表示装置100において生じる光学的な作用を説明する。
まず、駆動部140からの信号に応じて、発光層110の各発光部111が、波長制御層120に向けて、各色の光を放出する。すなわち、赤色副画素領域100Rでは、青色発光部111Bからの青色光Ibが、青赤変換部121BRに向けて射出される。緑色副画素領域100Gでは、緑色発光部111Gからの緑色光Igが、緑色透過部122Gに向けて射出される。青色副画素領域100Bでは、青色発光部111Bからの青色光Ibが、青色透過部122Bに向けて射出される。
【0047】
赤色副画素領域100Rにて、青赤変換部121BRは、青色発光部111Bから入射した青色光Ibを吸収し、青赤選択部131BRに向けて赤色光Irを放出する。青赤選択部131BRは、青赤変換部121BRから入射した赤色光Irを透過して、当該赤色光Irを表示装置100の表側に射出する。これにより、赤色副画素領域100Rから、赤色光Irが射出される。
【0048】
ここで、青赤変換部121BRが放出する光には、赤色光Irに加えて、青色発光部111Bが発した光のうち、波長が変換されずに青赤変換部121BRを透過する青色光IEbが含まれ得る。青赤選択部131BRは、赤色光を透過する一方で、青色光を反射するため、青赤変換部121BRから放出された青色光IEbは、青赤選択部131BRにて裏側に反射される。したがって、赤色副画素領域100Rから、フィルタ層130よりも表側に青色光IEbが射出されることが抑えられる。
【0049】
これにより、赤色副画素領域100Rに赤色光Irとは異なる色の光が混じった光が視認されることが抑えられる。その結果、赤色副画素領域100Rの赤色が鮮明となり、表示装置100が表示する画像が、本来の色味とは異なる色味を帯びること、すなわち、表示される画像での混色が抑制される。
【0050】
また、青赤選択部131BRにて反射された青色光IEbは、青赤変換部121BRに再び入射して、赤色光Irの生成に寄与する。それゆえ、赤色副画素領域100Rから射出される赤色光Irの強度が大きくなり、赤色副画素領域100Rに視認される赤色がより鮮明になる。
【0051】
緑色副画素領域100Gにて、緑色発光部111Gから緑色透過部122Gに入射した緑色光Igは、緑色透過部122G内で拡散されつつ緑色透過部122Gを通って、非選択部132に向けて射出される。非選択部132は、入射した緑色光Igを透過して、当該緑色光Igを表示装置100の表側に射出する。これにより、緑色副画素領域100Gから、緑色光Igが射出される。
【0052】
青色副画素領域100Bにて、青色発光部111Bから青色透過部122Bに入射した青色光Ibは、青色透過部122B内で拡散されつつ青色透過部122Bを通って、非選択部132に向けて射出される。非選択部132は、入射した青色光Ibを透過して、当該青色光Ibを表示装置100の表側に射出する。これにより、青色副画素領域100Bから、青色光Ibが射出される。
【0053】
以上により、表示装置100の利用者には、赤色副画素領域100Rから射出された赤色光Irが視認され、緑色副画素領域100Gから射出された緑色光Igが視認され、青色副画素領域100Bから射出された青色光Ibが視認される。駆動部140によって発光部111ごとの発光の強度が制御されることにより、各副画素領域100R,100G,100Bからの光の強さが制御される。これによって、画素領域GPに視認される色が制御され、画素領域GPの集合によって表示装置100の表示する画像が形成される。発光素子として、マイクロLEDが用いられることによって、表示装置100では、高輝度かつ広視野角で高精細な画像の表示が実現される。
【0054】
第1形態の表示装置100においては、緑色副画素領域100Gおよび青色副画素領域100Bの色の表示には、発光部111からの光が波長の変換を経ずに用いられ、赤色副画素領域100Rの色の表示には、青色発光部111Bからの青色光Ibから変換された赤色光Irが用いられる。したがって、赤色副画素領域100R、緑色副画素領域100G、青色副画素領域100Bの各々の色の表示に発光部111からの光がそのまま用いられる場合と比較して、発光層110が備える発光素子の色の種類の削減が可能である。すなわち、赤色光を発する発光素子を用いずとも、三色の副画素領域100R,100G,100Bの実現が可能である。それゆえ、発光層110の形成に要する負荷の軽減が可能である。
【0055】
具体的には、発光素子がマイクロLEDである場合、発光層110は、緑色および青色のマイクロLEDのみを備えるため、すべての発光素子を同一の基板上に形成することができる。さらに、形成対象の発光素子が2種類であるため、3種類の発光素子を同一の基板上に形成する場合と比較して、MOCVDやエッチングの工程の繰り返しの回数の削減が可能である。したがって、発光層110の形成に要する負荷の軽減が可能であり、発光層110の製造に要するコストの削減も可能である。
【0056】
第1形態において、青色波長域は第1波長域の一例であり、緑色波長域は第2波長域の一例であり、赤色波長域は第3波長域の一例である。また、青色発光部111Bは第1発光部の一例であり、緑色発光部111Gは第2発光部の一例である。また、青色透過部122Bは第1透過部の一例であり、緑色透過部122Gは第2透過部の一例である。
【0057】
<第2形態>
図3は、第2形態の表示装置100を示す。第2形態の表示装置100では、赤色副画素領域100Rの色の表示に、緑色発光部111Gからの光を変換して利用することが、第1形態と異なっている。以下、第2形態と第1形態との相違点を中心に説明する。
【0058】
第2形態の発光層110において、赤色副画素領域100Rには、緑色発光部111Gが位置し、緑色副画素領域100Gには、緑色発光部111Gが位置し、青色副画素領域100Bには、青色発光部111Bが位置する。したがって、1つの画素領域GPが、赤色副画素領域100Rと、緑色副画素領域100Gと、青色副画素領域100Bとを1つずつ含む場合、1つの画素領域GPには、2つの緑色発光部111Gと1つの青色発光部111Bとが含まれる。
【0059】
第2形態の波長制御層120において、波長変換部121は、緑色光を赤色光に変換する緑赤変換部121GRである。緑赤変換部121GRは、緑色光を励起光として利用したエネルギー状態の遷移に起因して赤色光を放出するように構成されている。例えば、緑赤変換部121GRは、緑色光を吸収して赤色光を放出する無機蛍光体を備えている。
【0060】
緑赤変換部121GRは、赤色副画素領域100Rに位置し、緑色発光部111G上に配置されている。緑色透過部122Gは、緑色副画素領域100Gに位置し、緑色発光部111G上に配置されている。青色透過部122Bは、青色副画素領域100Bに位置し、青色発光部111B上に配置されている。
【0061】
第2形態のフィルタ層130において、波長選択部131は、赤色光を透過し、かつ、緑色光を反射する緑赤選択部131GRである。緑赤選択部131GRは、赤色波長域の光を70%以上透過する一方で、緑色波長域の光を70%以上反射することが好ましい。緑赤選択部131GRは、青色光を透過してもよいし、透過しなくてもよい。緑赤選択部131GRは、赤色副画素領域100Rに位置し、緑赤変換部121GR上に配置されている。緑色副画素領域100Gと青色副画素領域100Bとには、非選択部132が位置し、非選択部132は、緑色透過部122Gおよび青色透過部122B上に配置されている。
【0062】
図4を参照して、第2形態の表示装置100において生じる光学的な作用を説明する。
まず、駆動部140からの信号に応じて、発光層110の各発光部111が、波長制御層120に向けて、各色の光を放出する。すなわち、赤色副画素領域100Rでは、緑色発光部111Gからの緑色光Igが、緑赤変換部121GRに向けて射出される。緑色副画素領域100Gでは、緑色発光部111Gからの緑色光Igが、緑色透過部122Gに向けて射出される。青色副画素領域100Bでは、青色発光部111Bからの青色光Ibが、青色透過部122Bに向けて射出される。
【0063】
赤色副画素領域100Rにて、緑赤変換部121GRは、緑色発光部111Gから入射した緑色光Igを吸収し、緑赤選択部131GRに向けて赤色光Irを放出する。緑赤選択部131GRは、緑赤変換部121GRから入射した赤色光Irを透過して、当該赤色光Irを表示装置100の表側に射出する。これにより、赤色副画素領域100Rから、赤色光Irが射出される。
【0064】
ここで、緑赤変換部121GRが放出する光には、赤色光Irに加えて、緑色発光部111Gが発した光のうち、波長が変換されずに緑赤変換部121GRを透過する緑色光IEgが含まれ得る。緑赤選択部131GRは、赤色光を透過する一方で、緑色光を反射するため、緑赤変換部121GRから放出された緑色光IEgは、緑赤選択部131GRにて裏側に反射される。したがって、赤色副画素領域100Rから、フィルタ層130よりも表側に緑色光IEgが射出されることが抑えられる。
【0065】
これにより、赤色副画素領域100Rに赤色光Irとは異なる色の光が混じった光が視認されることが抑えられる。その結果、赤色副画素領域100Rの赤色が鮮明となり、表示される画像での混色が抑制される。
【0066】
また、緑赤選択部131GRにて反射された緑色光IEgは、緑赤変換部121GRに再び入射して、赤色光Irの生成に寄与する。それゆえ、赤色副画素領域100Rから射出される赤色光Irの生成効率が高められ、赤色副画素領域100Rに視認される赤色がより鮮明になる。
【0067】
緑色副画素領域100Gでは、第1形態と同様に、緑色発光部111Gから緑色透過部122Gに入射した緑色光Igが、緑色透過部122G内で拡散され、緑色透過部122Gと非選択部132とを通って、表示装置100の表側に射出される。青色副画素領域100Bでも、第1形態と同様に、青色発光部111Bから青色透過部122Bに入射した青色光Ibが、青色透過部122B内で拡散され、青色透過部122Bと非選択部132とを通って、表示装置100の表側に射出される。
【0068】
以上により、表示装置100の利用者には、赤色副画素領域100Rから射出された赤色光Irが視認され、緑色副画素領域100Gから射出された緑色光Igが視認され、青色副画素領域100Bから射出された青色光Ibが視認される。
【0069】
第2形態では、緑色副画素領域100Gおよび青色副画素領域100Bの色の表示には、発光部111からの光が波長の変換を経ずに用いられ、赤色副画素領域100Rの色の表示には、緑色発光部111Gからの緑色光Igから変換された赤色光Irが用いられる。したがって、第2形態においても、赤色光を発する発光素子を用いずとも、三色の副画素領域100R,100G,100Bの実現が可能であるため、発光層110の形成に要する負荷の低減が可能である。
【0070】
第2形態において、緑色波長域は第1波長域の一例であり、青色波長域は第2波長域の一例であり、赤色波長域は第3波長域の一例である。また、緑色発光部111Gは第1発光部の一例であり、青色発光部111Bは第2発光部の一例である。また、緑色透過部122Gは第1透過部の一例であり、青色透過部122Bは第2透過部の一例である。
【0071】
[波長選択部の構成]
以下、波長選択部131の詳細な構成について、第1例~第4例を説明する。
<第1例>
(波長選択部の全体構成)
図5(a)が示すように、波長選択部131は、基材11、第1低屈折率領域12、第1格子領域13、中間領域14、第2格子領域15、第2低屈折率領域16、および、頂部領域17を備えている。これらの各領域は、層状に広がっており、基材11に近い位置から、第1低屈折率領域12、第1格子領域13、中間領域14、第2格子領域15、第2低屈折率領域16、および、頂部領域17がこの順に並んでいる。これらの領域の並ぶ方向が、第1方向である。すなわち、第1方向は、各領域および波長選択部131の厚さ方向である。また、基材11に対して頂部領域17の位置する側が波長選択部131の表面側であり、頂部領域17に対して基材11の位置する側が、波長選択部131の裏面側である。
図5(b)は、第1格子領域13における第1方向と直交する断面を示し、
図5(c)は、中間領域14における第1方向と直交する断面を示し、
図5(d)は、第2格子領域15における第1方向と直交する断面を示す。
【0072】
基材11は、板状、シート状、または、フィルム状であってよい。基材11が有する面のうち、波長選択部131の表面側に位置する面が基材11の表面である。基材11は、ガラス板、または、透明なポリマーフィルムであってよい。ガラス板の実例は、合成石英基板である。透明なポリマーフィルムの材料は、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートであってよい。
【0073】
第1低屈折率領域12は、基材11の表面に接し、基材11の表面に沿って一様に広がっている。第1格子領域13は、第1格子高屈折率部13aと第1格子低屈折率部13bとを有する。基材11の表面と対向する位置から見て、すなわち、第1方向に沿った方向から見て、第1格子高屈折率部13aと第1格子低屈折率部13bとは、共通の方向である第2方向に沿って帯状に延び、第2方向と直交する第3方向に沿って交互に並んでいる。第2方向と第3方向との各々は、第1方向に直交する。
【0074】
中間領域14は、中間高屈折率部14aと第1中間低屈折率部14bと第2中間低屈折率部14cとを有する。これらの各部は、第1方向に沿った方向から見て、第2方向に沿って延び、第1中間低屈折率部14bと第2中間低屈折率部14cとは、その間に中間高屈折率部14aを挟みつつ、第3方向に沿って交互に並んでいる。すなわち、第3方向に沿って、第1中間低屈折率部14b、中間高屈折率部14a、第2中間低屈折率部14c、中間高屈折率部14aが、この順に繰り返し並んでいる。第1中間低屈折率部14bは、第1格子低屈折率部13b上に位置する。中間高屈折率部14aは、第1格子高屈折率部13aの幅方向における端部上に位置し、第2中間低屈折率部14cは、第1格子高屈折率部13aの幅方向における中央部上に位置する。
【0075】
第2格子領域15は、第2格子高屈折率部15aと第2格子低屈折率部15bとを有する。第1方向に沿った方向から見て、第2格子高屈折率部15aと第2格子低屈折率部15bとは、第2方向に沿って帯状に延び、第3方向に沿って交互に並んでいる。すなわち、2つの格子領域13,15において、高屈折率部および低屈折率部の配列方向は一致している。第2格子高屈折率部15aは、第1中間低屈折率部14b上および中間高屈折率部14a上に位置し、第2格子低屈折率部15bは、第2中間低屈折率部14c上に位置する。
【0076】
第2低屈折率領域16は、第2格子領域15に対して中間領域14とは反対側で第2格子領域15に沿って一様に広がっている。頂部領域17は、第1頂部低屈折率部17aと第2頂部低屈折率部17bとを有する。第1方向に沿った方向から見て、第1頂部低屈折率部17aと第2頂部低屈折率部17bとは、第2方向に沿って帯状に延び、第3方向に沿って交互に並んでいる。第1頂部低屈折率部17aは、第2低屈折率領域16を挟んで第2格子高屈折率部15a上に位置し、第2頂部低屈折率部17bは、第2低屈折率領域16を挟んで第2格子低屈折率部15b上に位置する。
【0077】
波長選択部131を構成する上記の各領域において、第1方向に沿って互いに隣接する領域は、その一部において互いに連続している。具体的には、第1低屈折率領域12と第1格子低屈折率部13bとは互いに連続し、さらに、第1格子低屈折率部13bと第1中間低屈折率部14bとは互いに連続しており、これらは互いに同一の材料とできる。また、第1格子高屈折率部13aと中間高屈折率部14aとは互いに連続し、さらに、中間高屈折率部14aと第2格子高屈折率部15aとは互いに連続しており、これらは互いに同一の材料とできる。また、第2中間低屈折率部14cと第2格子低屈折率部15bとは互いに連続し、第2格子低屈折率部15bと第2低屈折率領域16とは互いに連続し、さらに、第2低屈折率領域16と第1頂部低屈折率部17aとは互いに連続しており、これらは互いに同一の材料とできる。また、第2頂部低屈折率部17bは空気で充填されている。
【0078】
すなわち、波長選択部131は、基材11と、基材11上に位置し、複数の凸部21aが構成する凹凸構造を表面に有する凹凸構造層21と、凹凸構造層21の表面に沿って配置された高屈折率層22と、高屈折率層22の表面に沿って配置された低屈折率層23とを備える構造体であるとも捉えられる。複数の凸部21aは、第2方向に沿って延び、第3方向に沿って並ぶ。高屈折率層22は、凹凸構造層21の凹凸に追従した表面形状を有し、低屈折率層23は、高屈折率層22の凹凸に追従した表面形状を有する。
【0079】
凹凸構造層21は、第1低屈折率領域12と第1格子低屈折率部13bと第1中間低屈折率部14bとから構成され、凸部21aは、第1格子低屈折率部13bと第1中間低屈折率部14bとから構成される。
【0080】
高屈折率層22は、第1格子高屈折率部13aと中間高屈折率部14aと第2格子高屈折率部15aとから構成される。第1格子高屈折率部13aは、複数の凸部21aの間、すなわち、凹凸構造層21が有する凹凸構造の底部に位置する。中間高屈折率部14aは、凸部21aの側面に接し、第1方向に沿った方向から見て互いに隣り合う第1格子高屈折率部13aと第2格子高屈折率部15aとの端部間を繋ぐように、中間領域14の厚さ方向に延びている。第2格子高屈折率部15aは、凸部21aの頂面を覆い、すなわち、凹凸構造層21が有する凹凸構造の頂部に位置する。
【0081】
低屈折率層23は、第2中間低屈折率部14cと第2格子低屈折率部15bと第2低屈折率領域16と第1頂部低屈折率部17aとから構成される。低屈折率層23は、第2低屈折率領域16から基材11に向けて第2中間低屈折率部14cおよび第2格子低屈折率部15bが突出し、第2低屈折率領域16から基材11とは反対側に向けて第1頂部低屈折率部17aが突出した形状を有する。低屈折率層23の表面は凹凸を有し、その凹部に第2頂部低屈折率部17bが対応する。
【0082】
高屈折率層22の屈折率は、空気の屈折率よりも大きく、かつ、凹凸構造層21および低屈折率層23の各々の屈折率よりも大きい。すなわち、第1格子高屈折率部13a、中間高屈折率部14a、第2格子高屈折率部15aの各々の屈折率は、第1低屈折率領域12、第1格子低屈折率部13b、第1中間低屈折率部14b、第2中間低屈折率部14c、第2格子低屈折率部15b、第2低屈折率領域16、第1頂部低屈折率部17a、第2頂部低屈折率部17bの各々の屈折率よりも大きい。
【0083】
凹凸構造層21および低屈折率層23の各々の屈折率は、空気の屈折率よりも大きい。導波モード共鳴現象を好適に生じさせるためには、凹凸構造層21および低屈折率層23の各々と高屈折率層22との屈折率差が大きいことが好ましい。そして、凹凸構造層21と低屈折率層23との屈折率差よりも、凹凸構造層21および低屈折率層23の各々と高屈折率層22との屈折率差の方が大きいことが好ましい。また、空気層と隣接する低屈折率層23の屈折率は、凹凸構造層21の屈折率以下であることが好ましい。
【0084】
さらに、凹凸構造層21の屈折率は、低屈折率層23の屈折率とは異なることが好ましい。これにより、波長選択部131に光学的な非対称性が生じるため、表面側と裏面側との一方により多くの光を射出できる。凹凸構造層21と低屈折率層23との屈折率差は、0.01以上0.3以下とできる。屈折率差が0.01以上であれば、光学的な非対称性が十分に生じる。屈折率差が0.3以下であれば、光学的な非対称性が大きくなりすぎないため、格子領域13,15での光の共鳴に乱れが生じることが抑えられる。
【0085】
凹凸構造層21、高屈折率層22、および、低屈折率層23の各々の材料は、可視領域に吸収波長を有さない物質、すなわち、可視領域の光に対して透明な物質であってよい。具体的には、凹凸構造層21の材料である第1低屈折率材料は、ポリマーであってよい。ポリマーは、紫外線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等とできる。これらの樹脂の実例は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタンアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポレオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂である。
【0086】
凹凸構造層21は、ナノサイズの径を有するフィラーを含有していてもよい。フィラーは、無機フィラーとできる。無機フィラーは、シリカフィラー、金属のフィラー、金属化合物のフィラーとできる。金属のフィラーの実例は、ジルコニウムのフィラーである。金属化合物のフィラーの実例は、酸化アルミニウムのフィラー、酸化チタンのフィラーである。凹凸構造層21は、これらのフィラーの1種類を単独で、または複数種類を混合して、含有することができる。フィラーの種類とその含有量の選択によって、例えば、凹凸構造層21の屈折率を調整することが可能であり、これにより、凹凸構造層21と高屈折率層22との屈折率差や、凹凸構造層21と低屈折率層23との屈折率差を調整することができる。なお、含有させるフィラーの屈折率を下げたい場合には、ポーラス構造を有するフィラーや、中空の粒子であるフィラーを用いることができる。
【0087】
低屈折率層23の材料である第2低屈折率材料は、無機化合物であってよい。無機化合物は、酸化物とできる。酸化物の実例は、酸化ケイ素である。また、無機化合物は、窒化物、フッ化物としてもよい。窒化物の実例は、窒化カルシウムである。フッ化物の実例は、フッ化マグネシウムである。
【0088】
高屈折率層22の材料である高屈折率材料は、無機化合物であってよい。無機化合物が金属化合物であると、高い屈折率を得やすいため、好ましい。金属化合物の実例は、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、酸化インジウムスズ、窒化アルミニウムである。
【0089】
(波長選択部の作用)
第1格子領域13における格子構造の周期、すなわち、第1格子高屈折率部13aの配列の周期が、第1周期P1であり、第1周期P1は、可視領域の光の波長よりも小さい。同様に、第2格子領域15における格子構造の周期、すなわち、第2格子高屈折率部15aの配列の周期が、第2周期P2であり、第2周期P2は、可視領域の光の波長よりも小さい。すなわち、第1周期P1および第2周期P2はサブ波長周期であり、第1格子領域13および第2格子領域15の各々はサブ波長格子を含む。
【0090】
波長選択部131において、領域ごとの平均屈折率は、実用上、各領域における高屈折率部と低屈折率部との体積比率に応じて、高屈折率部の屈折率と低屈折率部の屈折率とを均した値とできる。第1格子領域13における第1格子高屈折率部13aの割合、および、第2格子領域15における第2格子高屈折率部15aの割合の各々よりも、中間領域14における中間高屈折率部14aの割合は小さい。したがって、中間領域14の平均屈折率は、第1格子領域13の平均屈折率、および、第2格子領域15の平均屈折率の各々よりも小さい。すなわち、波長選択部131は、第1格子領域13および第2格子領域15の各々に位置するサブ波長格子が、低屈折率の領域に埋め込まれた構造を有している。
【0091】
波長選択部131の表面側から波長選択部131に光が入射すると、第2格子領域15のサブ波長格子が低屈折率の領域に埋め込まれていることから、第2格子領域15では、表面側への回折光の射出が抑えられ、導波モード共鳴現象が発生する。すなわち、特定の波長域の光が第2格子領域15を多重反射しつつ伝播して共鳴を起こし、この特定の波長域の光が、波長選択部131の表面側に反射光として射出される。
【0092】
第2格子領域15を透過し、さらに中間領域14を透過した光は、第1格子領域13に入る。第1格子領域13に光が入射すると、第1格子領域13のサブ波長格子が低屈折率の領域に埋め込まれていることから、第1格子領域13でも、導波モード共鳴現象が発生する。すなわち、特定の波長域の光が第1格子領域13を多重反射しつつ伝播して共鳴を起こし、この特定の波長域の光が、波長選択部131の表面側に反射光として射出される。
第1格子領域13を透過した光は、第1低屈折率領域12および基材11を透過して、波長選択部131の裏面側に出る。
【0093】
結果として、波長選択部131の表面側には、第2格子領域15で強められた波長域の光と、第1格子領域13で強められた波長域の光とが射出される。そして、波長選択部131を構成する各領域を透過した光が、透過光として波長選択部131の裏面側に射出される。以上のように、波長選択部131によれば、反射光として、各格子領域13,15で強められた波長域の光を取り出すことができる。したがって、格子領域が1つである形態と比較して、取り出される反射光の強度が高められる。また、透過光として、各格子領域13,15で強められた波長域とは異なる波長域の光を取り出すことができる。
【0094】
波長選択部131は、頂部領域17を波長変換部121に向けて配置される。各格子領域13,15で共鳴を起こす波長域は、周期P1,P2、格子領域13,15の厚さT1,T2、格子領域13,13の屈折率等の因子によって調整できる。第1形態では、各格子領域13,15で共鳴を起こす波長域が青色波長域となるように、上記因子が制御されている。これにより、第1形態の青赤選択部131BRは、青色光を反射し、赤色光および緑色光を透過する。第2形態では、各格子領域13,15で共鳴を起こす波長域が緑色波長域となるように、上記因子が制御されている。これにより、第2形態の緑赤選択部131GRは、緑色光を反射し、赤色光および青色光を透過する。
【0095】
このように、導波モード共鳴を利用した波長選択部131であれば、上記因子の制御によって反射光および透過光の波長域を変えることができるため、赤色副画素領域100Rに用いる発光部111を、青色発光部111Bと緑色発光部111Gとから任意に選択することができる。したがって、表示装置100の構成の自由度が高められる。
【0096】
なお、波長選択部131の表面側には、各格子領域13,15で強められた波長域の光に加えて、波長選択部131を構成する各領域での反射や干渉に起因した光が射出され得る。そして、こうした光には、各格子領域13,15で強められた波長域とは異なる波長域の光である非対象光が含まれる。波長選択部131の表面側に射出される非対象光の強度が大きいと、波長選択部131の表面側に取り出される光の波長選択性が低くなる。
【0097】
これに対し、本実施形態の波長選択部131における頂部領域17は、各格子領域13,15で強められた波長域とは異なる波長域の光が、波長選択部131の表面側に射出されることを抑える機能を有する。言い換えれば、頂部領域17は、非対象光を打ち消すように構成されている。具体的には、頂部領域17は、非対象光を干渉によって弱めることや、非対象光を裏面側に反射することによって、表面側に射出される非対象光の強度を低くする。頂部領域17によって打ち消される光の波長域は、頂部領域17の厚さおよび平均屈折率によって調整可能であり、言い換えれば、低屈折率層23の厚さおよび材料によって調整できる。すなわち、各格子領域13,15で強められた波長域以外の光が頂部領域17から表面側に射出されることを抑えられるように、低屈折率層23の厚さおよび材料が選択される。
【0098】
また、波長選択部131の最表面である低屈折率層23の表面が凹凸を有しているため、波長選択部131の最表面が平坦である形態と比較して、波長選択部131の表面反射を抑えることができる。これによっても、波長選択部131の表面側に、各格子領域13,15で強められた波長域の光とは異なる波長域の光が射出されることが抑えられるため、波長選択部131の表面側に取り出される光の波長選択性が高められる。
【0099】
なお、頂部領域17による非対象光を打ち消す機能や表面反射を抑える機能が重視されない場合には、波長選択部131は、基材11を波長変換部121に向けて配置されてもよい。すなわち、波長選択部131の裏面側から波長選択部131に光が入射してもよい。この場合も、第1格子領域13および第2格子領域15にて共鳴を起こした波長域の光が、反射光として波長変換部121に向けて射出され、波長選択部131の各領域を透過した光が、表示装置100の表側に射出される。
【0100】
(波長選択部の詳細構成)
波長選択部131において、第1格子領域13で共鳴を起こす光の波長域と、第2格子領域15で共鳴を起こす光の波長域とは、反射させたい波長域、すなわち、発光部111からの光の波長域に応じて設定されればよい。例えば、より狭域で高い強度の反射光を得たい場合、言い換えれば、反射光の波長選択性をより高めたい場合には、第1格子領域13で共鳴を起こす光の波長域と、第2格子領域15で共鳴を起こす光の波長域とが近いほど好ましい。
【0101】
例えば、第2格子領域15で特定の波長域の光が共鳴を起こしたとき、第2格子領域15と中間領域14との屈折率の差が小さい場合等には、上記特定の波長域の光の一部が、第2格子領域15内での反射ごとに、中間領域14に漏れ出る。こうした場合にも、第1格子領域13と第2格子領域15とで共鳴を起こす光の波長域が一致していれば、中間領域14に漏れ出た上記特定の波長域の光が第1格子領域13に入って共鳴を起こし、反射光として射出される。したがって、波長選択部131から射出される反射光の波長選択性が高められる。
【0102】
第1格子領域13と第2格子領域15とで共鳴を起こす光の波長域を一致させるためには、第1格子領域13と第2格子領域15とで、平均屈折率と膜厚とを乗じた値として表されるパラメータである光学膜厚を一致させればよい。つまり、第1格子領域13と第2格子領域15との光学膜厚が近いほど、第1格子領域13と第2格子領域15との各々で共鳴を起こす光の波長域が互いに近くなり、波長選択性が高められる。本願の発明者は、シミュレーションによって、反射光についての良好な波長選択性を得られる第1格子領域13と第2格子領域15との光学膜厚の比の範囲を見出した。以下、この内容について詳細に説明する。
【0103】
第1格子領域13の全体に対する第1格子高屈折率部13aの体積比率は、第1方向に沿った方向から見た平面視での第1格子領域13の全体に対する第1格子高屈折率部13aの面積比率に等しい。当該面積比率は、言い換えれば、第1格子高屈折率部13aを含みその厚さ方向と直交する断面にて第1格子高屈折率部13aが占める面積比率である。断面の位置によって第1格子高屈折率部13aの面積が変化する場合には、第1格子高屈折率部13aの面積が最大となる断面での第1格子高屈折率部13aの面積比率が採用される。
【0104】
第1格子高屈折率部13aの上記面積比率をR1とするとき、上記断面における第1格子低屈折率部13bの面積比率は1-R1で表される。
高屈折率層22の屈折率をn1、凹凸構造層21の屈折率をn2とするとき(n1>n2)、第1格子領域13の平均屈折率NA1は、下記(式1)によって表される。
NA1=n1×R1+n2×(1-R1) ・・・(式1)
【0105】
そして、第1格子領域13の光学膜厚OT1は、第1格子領域13の平均屈折率NA1および厚さT1を用いて、下記(式2)によって表される。
OT1=T1×NA1
=T1×{n1×R1+n2×(1-R1)} ・・・(式2)
【0106】
第2格子領域15において、格子構造の周期である第2周期P2は、第1格子領域13における第1周期P1と一致している。
【0107】
ただし、第1方向に沿った方向から見て、第2格子領域15における第2格子高屈折率部15aの幅は、第1格子領域13における第1格子低屈折率部13bの幅よりも大きい。そして、第2格子低屈折率部15bの幅は、第1格子高屈折率部13aの幅よりも小さい。
【0108】
第2格子領域15の全体に対する第2格子高屈折率部15aの体積比率は、第1方向に沿った方向から見た平面視での第2格子領域15の全体に対する第2格子高屈折率部15aの面積比率に等しい。当該面積比率は、言い換えれば、第2格子高屈折率部15aを含みその厚さ方向と直交する断面にて第2格子高屈折率部15aが占める面積比率である。断面の位置によって第2格子高屈折率部15aの面積が変化する場合には、第2格子高屈折率部15aの面積が最大となる断面での第2格子高屈折率部15aの面積比率が採用される。
【0109】
第2格子高屈折率部15aの上記面積比率をR2とするとき、上記断面における第2格子低屈折率部15bの面積比率は1-R2で表される。
高屈折率層22の屈折率をn1、低屈折率層23の屈折率をn3とするとき(n1>n3)、第2格子領域15の平均屈折率NA2は、下記(式3)によって表される。
NA2=n1×R2+n3×(1-R2) ・・・(式3)
【0110】
そして、第2格子領域15の光学膜厚OT2は、第2格子領域15の平均屈折率NA2および厚さT2を用いて、下記(式4)によって表される。
OT2=T2×NA2
=T2×{n1×R2+n3×(1-R2)} ・・・(式4)
【0111】
第1格子領域13の光学膜厚OT1に対する第2格子領域15の光学膜厚OT2の比(OT2/OT1)が1に近いほど、第1格子領域13と第2格子領域15とのそれぞれにおいて共鳴を起こす光の波長域が近くなる。一方で、上記比が1から離れるにつれ、第1格子領域13と第2格子領域15とで共鳴を起こす光の波長域が異なるようになる。第1格子領域13と第2格子領域15とで意図的に共鳴する光の波長域を変える場合は、上記比は例えば2.0より大きい、あるいは、0.5より小さくてもよい。
【0112】
しかしながら、第1格子領域13と第2格子領域15とで共鳴する光の波長域が異なっていると、第1格子領域13および第2格子領域15の一方において所望の波長域の光を共鳴させた場合に、他方において共鳴する波長域の光の影響により、波長選択部131の波長選択性が低下しやすい。すなわち、反射光の波長域が広くなったり、反射光の波長域にノイズが発生したりする。
【0113】
本願の発明者は、高い波長選択性を得るためには、第1格子領域13の光学膜厚OT1に対する第2格子領域15の光学膜厚OT2の比(OT2/OT1)の制御が重要であるという着想を得た。そして、本願の発明者は、良好な波長選択性が得られるとともに、安定した生産が可能であること等の工業製品としての適性が良好となる上記比の範囲を見出した。すなわち、OT2/OT1の値は0.5以上2.0以下であることが好ましい。OT2/OT1の値がこの範囲であると、波長選択部131の安定した生産が可能であり、表示装置100を工業製品として実用化しやすい。さらに、OT2/OT1の値が0.625以上1.6以下であれば、より高い波長選択性を得ることができるため、表示装置100の性能がより高められる。
【0114】
OT2/OT1の値が1.0、すなわち、光学膜厚OT1と光学膜厚OT2とが一致すると、第1格子領域13で共鳴を起こす光の波長域と、第2格子領域15で共鳴を起こす光の波長域とが一致し、波長選択性が特に高められる。したがって、光学膜厚OT1と光学膜厚OT2とが一致するように、各層の材料が選択されるとともに、厚さT1,T2、および、凹凸構造層21における凸部21aの幅が設定されていることが好ましい。凹凸構造層21と低屈折率層23との屈折率差が小さいほど、光学膜厚OT1に対する光学膜厚OT2の比を1.0に近づけることが容易である。
【0115】
例えば、第1格子高屈折率部13aの面積比率R1と第2格子高屈折率部15aの面積比率R2とを近づけるために、第1格子領域13にて第1格子低屈折率部13bの面積比率が第1格子高屈折率部13aの面積比率よりも小さくなり、第2格子領域15にて第2格子高屈折率部15aの面積比率が第2格子低屈折率部15bの面積比率よりも大きくなるように、凸部21aの幅を設定してもよい。この場合、第1格子高屈折率部13aの面積比率R1と第2格子高屈折率部15aの面積比率R2との各々は、0.5よりも大きく、R1+R2は1よりも大きくなる。
【0116】
面積比率R1,R2が0.5よりも大きいことにより、面積比率R1,R2が0.5以下である形態と比較して、各格子領域13,15の平均屈折率が高くなるため、各格子領域13,15の平均屈折率と、当該格子領域13,15に隣接する各領域12,14,16の平均屈折率との差が大きくなる。その結果、各格子領域13,15にて生じる多重反射での損失が小さくなるため、格子領域13,15から射出される反射光の強度が高められる。
【0117】
中間領域14における第1中間低屈折率部14bの配列の周期である第3周期P3は、第1格子領域13における第1周期P1と一致している。第1方向に沿った方向から見て、第1中間低屈折率部14bの幅は、第1格子低屈折率部13bの幅と一致する。
【0118】
第1方向に沿った方向から見た平面視での中間領域14の全体に対する中間高屈折率部14aの面積比率は、第2格子高屈折率部15aの上記面積比率と第1格子低屈折率部13bの上記面積比率との差以下であることが好ましい。すなわち、上記中間高屈折率部14aの面積比率をR3とするとき、R3は、下記(式5)を満たすことが好ましい。なお、当該面積比率は、言い換えれば、中間高屈折率部14aを含みその厚さ方向と直交する断面にて中間高屈折率部14aが占める面積比率である。断面の位置によって中間高屈折率部14aの面積が変化する場合には、中間高屈折率部14aの面積が最大となる断面での中間高屈折率部14aの面積比率が採用される。
R3≦R2-(1-R1)=R1+R2-1 ・・・(式5)
【0119】
第1方向に沿った方向から見て、第2格子高屈折率部15aが位置する領域が、第1中間低屈折率部14bおよび中間高屈折率部14aが位置する領域と一致するとき、中間高屈折率部14aの上記面積比率R3は、右辺と一致し、R1+R2-1となる。そして、第1方向に沿った方向から見て、第2格子高屈折率部15aが位置する領域が、第1中間低屈折率部14bおよび中間高屈折率部14aが位置する領域よりも大きいとき、言い換えれば、中間高屈折率部14aが第2格子高屈折率部15aの外縁よりも内側の領域に位置するとき、上記面積比率R3は、R1+R2-1よりも小さくなる。
【0120】
上述のように、導波モード共鳴現象によって各格子領域13,15から射出される反射光の強度を高めるためには、各格子領域13,15の平均屈折率と、当該格子領域13,15を挟む各領域12,14,16の平均屈折率との差が大きいことが望ましい。したがって、中間領域14の平均屈折率は小さいほど好ましく、すなわち、中間高屈折率部14aの面積比率が小さいほど好ましい。上記(式5)が満たされていれば、中間高屈折率部14aの幅が、第2格子高屈折率部15aよりも外側まで広がらない程度に抑えられるため、中間高屈折率部14aの面積比率が大きくなりすぎない。したがって、各格子領域13,15からの反射光の強度が良好になる。
【0121】
上記反射光の強度を高めるためには、第1格子領域13の平均屈折率と、第1低屈折率領域12および中間領域14の各々の平均屈折率との差は、いずれも0.1よりも大きいことが好ましい。同様に、第2格子領域15の平均屈折率と、中間領域14および第2低屈折率領域16の各々の平均屈折率との差は、いずれも0.1よりも大きいことが好ましい。
【0122】
なお、上記(式5)が満たされる範囲内で中間領域14が中間高屈折率部14aを有することにより、中間高屈折率部14aの面積比率の調整によって、中間領域14の平均屈折率の微調整が可能である。したがって、例えば、中間領域14における干渉等の作用によって、反射光や透過光として取り出したい波長域とは異なる波長域の光が打ち消されるように、中間領域14を構成することも可能である。
頂部領域17における第1頂部低屈折率部17aの配列の周期は、第1格子領域13における第1周期P1と一致する。
【0123】
(波長選択部の製造方法)
図6~
図8を参照して、第1例の波長選択部131の製造方法を説明する。
【0124】
図6が示すように、まず、基材11の表面に、第1低屈折率材料からなる層を形成し、この層の表面に凹凸構造を形成することによって、凹凸構造層21を形成できる。凹凸構造層21は、基材11に沿って広がる平坦部21cと、平坦部21cから突き出た複数の凸部21aとを有するとともに、凸部21a間に位置する部分である複数の凹部21bを有する。凸部21aおよび凹部21bは、第2方向に沿って帯状に延びる。
【0125】
凹凸構造は、公知の微細加工法により形成できる。微細加工法は、ナノインプリント法やドライエッチング法とできる。なかでも、ナノインプリント法は、微細な凸部21aおよび凹部21bを簡便に形成できるため好ましい。
【0126】
光ナノインプリント法を用いれば、第1低屈折率材料を紫外線硬化性樹脂とし、凹凸構造層21を形成することができる。この場合、まず、基材11の表面に、紫外線硬化性樹脂を塗工する。次いで、この紫外線硬化性樹脂からなる塗工層の表面に、形成対象の凸部21aおよび凹部21bからなる凹凸の反転された凹凸を有する凹版であるガラスモールドを押し当て、塗工層および凹版に紫外線を照射する。続いて、硬化した紫外線硬化性樹脂を凹版から離型する。これによって、凹版の有する凹凸が紫外線硬化性樹脂に転写されて凸部21aおよび凹部21bが形成されるとともに、凸部21aおよび凹部21bと基材11との間には、紫外線硬化性樹脂からなる残膜として、平坦部21cが形成される。
【0127】
なお、紫外線硬化性樹脂を用いた光ナノインプリント法は凹凸構造の形状の形成精度、すなわち、第1周期P1の寸法精度や凹版からの凹凸の転写精度に優れているため、凹凸構造層21の形成方法として好適である。ただし、場合によっては、凹凸構造層21の形成手法として、熱硬化や熱可塑でのナノインプリント法が適している。
【0128】
次に、
図7が示すように、凹凸構造層21の表面に、高屈折率材料からなる高屈折率層22を形成する。高屈折率層22は、公知の成膜技術で形成できる。公知の成膜技術の実例は、物理気相成長法である。物理気相成長法は、真空蒸着法やスパッタリング法とできる。高屈折率層22の厚さは、凸部21aの高さよりも小さく、所望の厚さT1および厚さT2に応じて設定される。高屈折率層22の厚さは、10nm以上500nm以下とできる。
【0129】
物理気相成長法で、高屈折率層22を形成する場合、凹凸構造層21の凸部21a上には、凸部21aよりも広がって層が形成される。すなわち、第2格子高屈折率部15aの幅が、凸部21aである第1格子低屈折率部13bおよび第1中間低屈折率部14bの幅よりも大きく形成される。したがって、物理気相成長法が採用される場合に、凹凸構造層21の表面における凸部21aと凹部21bとの面積比率を1対1に設定したとしても、第1格子高屈折率部13aの面積比率と第2格子高屈折率部15aの面積比率との間にはずれが生じてしまう。
【0130】
また、成膜中に第2格子高屈折率部15aの幅が拡大していくと、凹部21b上に蒸着材料の粒子が付着し難くなるため、第1格子高屈折率部13aの厚さT1と第2格子高屈折率部15aの厚さT2との間にずれが生じる場合がある。
【0131】
波長選択部131の波長選択性を高めるためには、こうした第2格子高屈折率部15aの幅の拡大に起因した面積比率や厚さのずれを補填しつつ、上記光学膜厚OT1に対する光学膜厚OT2の比が、0.5以上2.0以下、より好ましくは0.625以上1.6以下となるように、凸部21aの幅、すなわち、凸部21aと凹部21bとの面積比率を設定することが望ましい。
【0132】
また、物理気相成長法を用いて高屈折率層22を形成する場合、凹凸構造層21の凸部21aの側面にも高屈折率材料が付着する場合が多く、中間高屈折率部14aの形成は避け難い。そこで、上述のように、上記(式5)が満たされるように、中間高屈折率部14aの幅を制御することで、各格子領域13,15からの反射光の強度を良好に得ることができる。
【0133】
中間高屈折率部14aの幅は、成膜方法や成膜の条件によって制御することが可能である。成膜の条件のパラメータは、成膜スピード、ターゲットの形状、サイズ、対象との距離等である。成膜は一回でもよいが、複数回行ってもよい。真空蒸着法とスパッタリング法とでは、粒子の飛来方向についての角度依存性が異なるため、いずれの方法を用いるか、またはそれらを組み合わせることによって、中間高屈折率部14aの幅を変えることができる。また、高屈折率層22を物理気相成長法により形成した後にエッチングを行い、中間高屈折率部14aの幅を縮小させてもよい。
【0134】
次に、
図8が示すように、高屈折率層22の表面に、第2低屈折率材料からなる低屈折率層23を形成する。低屈折率層23は、公知の成膜技術で形成できる。公知の成膜技術の実例は、物理気相成長法である。物理気相成長法は、真空蒸着法やスパッタリング法とできる。低屈折率層23の厚さは、10nm以上500nm以下とできる。
【0135】
上述のように、波長選択部131では、第1格子領域13で強められた波長域の光と、第2格子領域15で強められた波長域の光とが射出されることにより、反射光の波長選択性が高められる。そのため、波長選択部131は、格子領域に接する層を導波層として用いる形態と比較して、格子領域に接する層の精密な膜厚の制御を要さない。例えば、ナノインプリント法を用いて波長選択部131を形成する場合には、残膜の膜厚の精密な制御を要さずに、波長選択性の高められた波長選択部131を製造することができる。したがって、波長選択部131の製造は容易であり、また、ナノインプリント法を用いれば、より容易に波長選択部131を製造できる。
【0136】
また、波長選択部131は、光ナノインプリント法と真空蒸着法等とを組み合わせた製造方法によって形成可能である。そのため、ロール・トゥ・ロール法による製造に適している。したがって、波長選択部131の構造は、大量生産にも適している。
【0137】
(変形例)
第1例の波長選択部131は以下のように変更してもよい。
図9が示すように、波長選択部131は、基材11を備えていなくてもよい。この場合、第1低屈折率材料からなる板状体の表面に凹凸構造を形成することによって、凹凸構造層21を形成する。例えば、熱可塑性樹脂からなるシートを用いて、当該シートの表面に凹凸構造を形成してもよいし、ガラス板を用いて、当該ガラス板の表面に凹凸構造を形成してもよい。ガラス板に対する凹凸構造の形成には、ドライエッチング法等の公知の技術が用いられればよい。
【0138】
また、
図10が示すように、基材11の表面に凸部21aが直接に形成されていてもよい。すなわち、凹凸構造層21は、凸部21aに連続する平坦部21cを有さなくてもよい。この場合、凸部21aと基材11とが凹凸構造層21を構成し、基材11のなかで凸部21aに接する領域が、第1低屈折率領域12として機能する。こうした凹凸構造層21は、例えば、フォトリソグラフィの利用によって形成できる。
【0139】
また、低屈折率層23は、各種の塗布法を用いて、樹脂材料から形成されてもよい。ただし、低屈折率層23を高屈折率層22に追従した形状に形成するため、言い換えれば、低屈折率層23の表面に好適に凹凸を形成するためには、低屈折率層23は、無機化合物材料を用いて、物理気相成長法によって形成されることが好ましい。
【0140】
また、波長選択部131は、第2低屈折率領域16を有さず、第2格子領域15の直上に頂部領域17が位置してもよい。言い換えれば、低屈折率層23の表面の凹部の底部が、第1方向において、高屈折率層22の頂部、すなわち、第2格子高屈折率部15aの頂部と一致する位置に配置されていてもよい。さらには、第2格子低屈折率部15bの一部もしくは全部は、第2頂部低屈折率部17bから連続し、空気が充填されていてもよい。この場合、低屈折率層23の表面の凹部の底部は、第2格子領域15に位置する。さらには、第2中間低屈折率部14cの一部は、第2頂部低屈折率部17bから連続し、空気が充填されていてもよい。この場合、低屈折率層23の表面の凹部の底部は、中間領域14に位置する。各領域の平均屈折率は、空気も含めて、各領域を構成する物質の屈折率を、各物質の占める部分の体積比率に応じて均した値となる。
【0141】
なお、頂部領域17の機能、すなわち、各格子領域13,15で強められた波長域とは異なる波長域の光を打ち消す機能、および、表面反射を抑える機能が重視されない場合には、低屈折率層23の表面は平坦であってもよい。この場合、波長選択部131は、頂部領域17、すなわち、低屈折率層23の表面の凹凸部分に対応する領域を有さず、第2低屈折率領域16の表面が波長選択部131の最外面となる。表面が平坦な低屈折率層23は、各種の塗布法を用いて、樹脂材料から形成されてもよい。
【0142】
<第2例>
波長選択部131の第2例について、第1例との相違点を中心に説明する。第1例と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0143】
(波長選択部の構成)
図11が示すように、第2例の波長選択部131は、第1低屈折率領域12、第1格子領域13、中間領域14、第2格子領域15、第2低屈折率領域16、および、頂部領域17からなる構造体である共鳴構造部31を、2つ備えている。ただし、頂部領域17における第2頂部低屈折率部17bは、低屈折率材料で充填されている。
【0144】
2つの共鳴構造部31である第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとは、第1方向に隣り合っており、2つの共鳴構造部31A,31Bは、2つの基材11で挟まれている。換言すれば、第2例の波長選択部131は、第1例の2つの波長選択部が、頂部領域17同士が向かい合うように接合された構造を有する。すなわち、第2例の波長選択部131は、第1方向に間をあけて並ぶ4つのサブ波長格子を有し、これらのサブ波長格子が低屈折率材料に埋め込まれた構造を有している。言い換えれば、波長選択部131は、配列方向および配列周期が同一である格子構造の対を2つ有しており、これらの格子構造は低屈折率材料に囲まれている。2つの格子対は、第1方向に並んでいる。なお、一方の基材11に対する他方の基材11の側が波長選択部131の表面側であり、他方の基材11に対する一方の基材11の側が波長選択部131の裏面側である。
【0145】
波長選択部131において、第1共鳴構造部31Aにおける格子要素である格子高屈折率部13a,15aおよび格子低屈折率部13b,15bの延びる方向と、第2共鳴構造部31Bにおける格子要素である格子高屈折率部13a,15aおよび格子低屈折率部13b,15bの延びる方向とは、一致している。言い換えれば、第1共鳴構造部31Aが有するサブ波長格子の配列方向と、第2共鳴構造部31Bが有するサブ波長格子の配列方向とは、一致している。また、各共鳴構造部31の中間領域14および頂部領域17における各低屈折率部および高屈折率部も、格子要素と同一の方向に延びている。
【0146】
第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとの間には、第1共鳴構造部31Aの頂部領域17と第2共鳴構造部31Bの頂部領域17とに沿って一様に広がる境界低屈折率領域18が位置する。境界低屈折率領域18は、第1共鳴構造部31Aの頂部領域17における第2頂部低屈折率部17b、および、第2共鳴構造部31Bの頂部領域17における第2頂部低屈折率部17bの各々と連続しており、境界低屈折率領域18と各共鳴構造部31の第2頂部低屈折率部17bとは、互いに同一の材料から形成できる。
【0147】
第1共鳴構造部31Aにおける凸部21aの配列の周期である構造周期Pkと、第2共鳴構造部31Bにおける凸部21aの配列の周期である構造周期Pkとは、
図11が示すように同一であってもよいし、
図12が示すように互いに異なっていてもよい。構造周期Pkは、第1格子領域13における第1周期P1と一致する。
【0148】
第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとの各々において、波長選択性を高めるためには、第1例と同様に、第1格子領域13の光学膜厚OT1に対する第2格子領域15の光学膜厚OT2の比は、0.5以上2.0以下であることが好ましく、0.625以上1.6以下であることがより好ましい。
【0149】
(波長選択部の作用)
2つの共鳴構造部31A,31Bが同一の構造周期Pkを有する場合、波長選択部131が有する4つの格子領域13,15において、共鳴を起こす光の波長域のばらつきが小さくなる。4つの格子領域13,15の各々で強められた波長域の反射光が波長選択部131から射出されることにより、第1例の波長選択部131と比較して、反射光における特定の範囲の波長域の強度がより大きくなり、反射光の波長選択性がより高められる。このとき、第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとで、光学膜厚OT1に対する光学膜厚OT2の比が一致していれば、4つの格子領域13,15における光学膜厚のばらつきが小さくなり、各格子領域13,15で共鳴を起こす光の波長域がより近くなるため好ましい。
【0150】
例えば、発光部111からの光が、青色波長域あるいは緑色波長域に1つの急峻なピークを有する場合、このピーク波長と、4つの格子領域13,15の各々からの反射光のピーク波長とが近くなるように、構造周期Pkが調整される。これにより、波長選択部131は、波長変換部121を透過した発光部111からの光を的確に反射できる。
【0151】
一方、2つの共鳴構造部31A,31Bが互いに異なる構造周期Pkを有する場合、第1共鳴構造部31Aの格子領域13,15にて共鳴を起こす光の波長域と、第2共鳴構造部31Bの格子領域13,15にて共鳴を起こす光の波長域とは、互いに異なる。その結果、波長選択部131からは、第1共鳴構造部31Aの格子領域13,15にて強められた波長域の光と、第2共鳴構造部31Bの格子領域13,15にて強められた波長域の光とを含む反射光が射出される。
【0152】
例えば、発光部111からの光が、ブロードなスペクトルを有する場合、第1共鳴構造部31Aの格子領域13,15からの反射光のピーク波長と、第2共鳴構造部31Bの格子領域13,15からの反射光のピーク波長とが、青色波長域内で互いに異なるように、もしくは、緑色波長域内で互いに異なるように、共鳴構造部31A,31Bの構造周期Pkが設定される。これにより、波長選択部131からの反射光の波長域がブロードなスペクトルに対応するように広がるため、波長選択部131は、波長変換部121を透過した発光部111からの光を的確に反射できる。
【0153】
また、発光部111からの光が、第1のピークと第2のピークとを含む複数のピークを有する場合、第1共鳴構造部31Aの格子領域13,15からの反射光のピーク波長が、第1のピークの波長付近となり、第2共鳴構造部31Bの格子領域13,15からの反射光のピーク波長が、第2のピークの波長付近となるように、共鳴構造部31A,31Bの構造周期Pkが設定されてもよい。これによっても、波長選択部131は、波長変換部121を透過した発光部111からの光を的確に反射できる。
【0154】
また、格子領域13,15での導波モード共鳴に作用する光の入射角度と反射角度とは、構造周期Pkによって決まる。したがって、発光部111からの光が散乱性を有する場合、2つの共鳴構造部31A,31Bの構造周期Pkが互いに異なっていれば、2つの共鳴構造部31A,31Bは、発光部111からの光のうち、互いに異なる角度からの光を反射することができる。したがって、波長選択部131は、波長変換部121を透過した発光部111からの光を効率的に反射できる。
【0155】
なお、2つの共鳴構造部31A,31Bの構造周期Pkが同一であるか否かに関わらず、第1例と同様に、頂部領域17は、頂部領域17よりも裏面側での反射や干渉による光のうち、取り出したい波長域の光とは異なる波長域の光である非対象光を打ち消すことで非対象光が波長選択部131の表面側に射出されることを抑える。すなわち、各格子領域13,15で強められた波長域以外の光を頂部領域17が打ち消すように、低屈折率層23の厚さおよび材料と、境界低屈折率領域18の材料とが選択される。
【0156】
(波長選択部の製造方法)
図13および
図14を参照して、第2例の波長選択部131の製造方法を説明する。第2例の波長選択部131の製造に際しては、まず、第1例と同様に、基材11上に凹凸構造層21と高屈折率層22と低屈折率層23とが順に形成される。
【0157】
続いて、
図13が示すように、基材11と凹凸構造層21と高屈折率層22と低屈折率層23とからなる構造体である2つの凹凸構造体32を、低屈折率層23同士が向かい合うように対向させ、
図14が示すように、2つの凹凸構造体32の間の領域を第3低屈折率材料で埋めることによってこれらの凹凸構造体32を接合する。これにより、波長選択部131が形成される。
【0158】
図14が示すように、低屈折率材料による埋め込みによって、2つの凹凸構造体32の間に形成される部分が埋込層24である。埋込層24は、第1共鳴構造部31Aの頂部領域17における第2頂部低屈折率部17bと、第2共鳴構造部31Bの頂部領域17における第2頂部低屈折率部17bと、境界低屈折率領域18とから構成される。
【0159】
埋込層24を構成する第3低屈折率材料は、高屈折率層22を構成する高屈折率材料よりも屈折率の低い材料である。第3屈折率材料としては、紫外線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂材料が用いられることが好ましい。例えば、埋込層24は、凹凸構造層21と同一の材料から形成されてもよい。埋込層24の形成方法としては、各種の塗布法等が用いられればよい。
【0160】
なお、2つの凹凸構造体32を対向させた状態において、第1頂部低屈折率部17a同士が向かい合ってもよいし、一方の凹凸構造体32における第1頂部低屈折率部17aと、他方の凹凸構造体32における第2頂部低屈折率部17bとが向かい合ってもよい。あるいは、一方の凹凸構造体32における第1頂部低屈折率部17aは、他方の凹凸構造体32における第1頂部低屈折率部17aの一部および第2頂部低屈折率部17bの一部と向かい合っていてもよい。
【0161】
例えば、凸部21aの周期が同一である2つの凹凸構造体32を接合することによって、2つの共鳴構造部31A,31Bが同一の構造周期Pkを有する波長選択部131が形成できる。また例えば、凸部21aの周期が互いに異なる2つの凹凸構造体32を接合することによって、2つの共鳴構造部31A,31Bが互いに異なる構造周期Pkを有する波長選択部131が形成できる。
【0162】
なお、2つの共鳴構造部31A,31Bは、頂部領域17同士が向かい合うように配置されることに代えて、頂部領域17を外側に向けて配置されてもよい。すなわち、2つの凹凸構造体32は、基材11同士が向かい合うように低屈折率材料によって接合されていてもよい。
【0163】
また、2つの共鳴構造部31A,31Bは、各共鳴構造部31A,31Bの頂部領域17が、同一の方向を向くように配置されてもよい。すなわち、2つの凹凸構造体32は、一方の凹凸構造体32の頂部領域17と、他方の凹凸構造体32の基材11とが向かい合うように低屈折率材料によって接合されていてもよい。
頂部領域17が波長選択部131の最表面に位置していれば、頂部領域17によって表面反射を抑える効果が、第1例と同様に得られる。
【0164】
また、波長選択部131は、第1方向に並ぶ3以上の共鳴構造部31を備えていてもよい。波長選択部131が複数の共鳴構造部31を備える形態において、これらの共鳴構造部31における構造周期Pkが同一であれば、共鳴構造部31の数が多いほど、反射光の強度が高められる。また、複数の共鳴構造部31に、構造周期Pkが同一である複数の共鳴構造部31と、構造周期Pkが互いに異なる複数の共鳴構造部31とが含まれてもよい。こうした構成によれば、波長選択部131から出射される反射光の波長域の細かな調整も可能となる。
【0165】
3以上の共鳴構造部31を備える波長選択部131の製造に際しては、基材11と凹凸構造層21とが、凹凸構造層21から基材11を剥離可能な材料から形成され、凹凸構造体32の積層に際して基材11が剥離されてもよい。例えば、2つの凹凸構造体32が、頂部領域17同士が向かい合うように低屈折率材料によって接合されたのち、一方の基材11が剥離され、露出された凹凸構造層21と他の凹凸構造体32とがさらに低屈折率材料を挟んで接合されることが繰り返されることによって、6以上のサブ波長格子を有する波長選択部131が形成される。
なお、第2例の波長選択部131には、第1例の各変形例の構造が適用されてもよい。
【0166】
<第3例>
波長選択部131の第3例を説明する。第3例は、第2例と比較して、2つの共鳴構造部におけるサブ波長格子の配列方向が異なる。以下では、第3例と第2例との相違点を中心に説明し、第2例と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。なお、
図15は、波長選択フィルタの一部分を示す図であり、波長選択フィルタの構造を理解しやすくするために、凹凸構造層21、高屈折率層22、低屈折率層23、埋込層24の各々に、互いに異なる濃度のドットを付して示している。
【0167】
(波長選択部の構成)
図15が示すように、第3例の波長選択部131は、第2例と同様に、第1方向に隣り合う2つの共鳴構造部31A,31Bを備えている。ただし、第3例においては、第1共鳴構造部31Aの格子領域13,15が有する格子要素、すなわち、格子高屈折率部13a,15aおよび格子低屈折率部13b,15bの延びる方向と、第2共鳴構造部31Bの格子領域13,15が有する格子要素の延びる方向とは互いに異なる。言い換えれば、第1共鳴構造部31Aが有するサブ波長格子の配列方向と、第2共鳴構造部31Bが有するサブ波長格子の配列方向とが互いに異なっている。
【0168】
第1共鳴構造部31Aにおける凸部21aの配列の周期である構造周期Pkと、第2共鳴構造部31Bにおける凸部21aの配列の周期である構造周期Pkとは、同一である。反射光の波長選択性を高めるためには、第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとの各々において、第1格子領域13の光学膜厚OT1に対する第2格子領域15の光学膜厚OT2の比は、0.5以上2.0以下であることが好ましく、0.625以上1.6以下であることがより好ましい。さらに、第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとで、上記比は一致していることが好ましい。
【0169】
第1共鳴構造部31Aの格子高屈折率部13a,15aおよび格子低屈折率部13b,15bは、第2方向に沿って延び、第3方向に沿って並ぶ。一方、第2共鳴構造部31Bの格子高屈折率部13a,15aおよび格子低屈折率部13b,15bは、第3方向に沿って延び、第2方向に沿って並ぶ。すなわち、第1共鳴構造部31Aが有する格子要素の延びる方向と、第2共鳴構造部31Bが有する格子要素の延びる方向とは直交している。換言すれば、第1共鳴構造部31Aが有するサブ波長格子の配列方向と、第2共鳴構造部31Bが有するサブ波長格子の配列方向とのなす角は90°である。
【0170】
(波長選択フィルタの作用)
サブ波長格子が、1つの方向に帯状に延びる格子高屈折率部13a,15aから構成されている場合、各格子領域13,15では、特定の方向へ偏光した光が多重反射して共鳴を起こし、反射光として射出される。上記特定の方向は、サブ波長格子の配列方向に依存する。第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとでサブ波長格子の配列方向が異なることにより、第1共鳴構造部31Aの格子領域13,15と第2共鳴構造部31Bの格子領域13,15とでは、多重反射する光の偏光方向は互いに異なる。したがって、第3例の波長選択部131によれば、様々な方向への偏光成分を含む入射光に対して、効率的に反射光が出射されるため、反射光の強度がより高められる。
【0171】
発光部111からの光が所定の方向に偏光している場合には、第1例や第2例の波長選択部が用いられることが好ましい。発光部111がマイクロLEDを備える場合のように、発光部111からの光が無偏光である場合、すなわち、発光部111からの光が様々な方向への偏光成分を含む光である場合、第3例の波長選択部が用いられることが好ましい。
【0172】
(波長選択部の製造方法)
第3例の波長選択部131は、第2例と同様に、2つの凹凸構造体32を、頂部領域17同士が向かい合うように対向させ、2つの凹凸構造体32の間の領域を第3低屈折率材料で埋めることによって形成される。ここで、第3例では、一方の凹凸構造体32における凸部21aの延びる方向と、他方の凹凸構造体32における凸部21aの延びる方向とが直交するように、これらの凹凸構造体32を向かい合わせて低屈折率材料により接合する。
【0173】
なお、第2例と同様に、2つの共鳴構造部31A,31Bは、頂部領域17を外側に向けて配置されてもよいし、各共鳴構造部31A,31Bの頂部領域17が、同一の方向を向くように配置されてもよい。
【0174】
また、2つの共鳴構造部31A,31Bにおけるサブ波長格子の配列方向は、直交していることに限らず、互いに異なっていればよい。サブ波長格子の配列方向の設定によって、波長選択部131の偏光応答性を調整することもできる。
【0175】
また、波長選択部131は、第1方向に並ぶ3以上の共鳴構造部31を備えていてもよく、複数の共鳴構造部31に、格子要素の延びる方向が互いに異なる共鳴構造部31が含まれていればよい。こうした波長選択部131は、偶数、すなわち2n(nは3以上の整数)個のサブ波長格子を備え、表面側もしくは裏面側から2m-1番目(mは1以上n以下の整数)のサブ波長格子と2m番目のサブ波長格子とにおいて、配列方向は互いに同一であり、格子の配列周期は互いに同一である。
【0176】
こうした構成によれば、共鳴構造部31ごとのサブ波長格子の配列方向の設定や、サブ波長格子の配列方向が同一である共鳴構造部31の数の設定等によって、波長選択部131の偏光応答性を調整することもできる。なお、複数の共鳴構造部31には、サブ波長格子の配列周期が互いに異なる共鳴構造部31が含まれていてもよい。
なお、第3例の波長選択部131には、第1例の各変形例の構造が適用されてもよい。
【0177】
<第4例>
波長選択部131の第4例を説明する。第4例は、第1例と比較して、サブ波長格子の配列が異なる。以下では、第4例と第1例との相違点を中心に説明し、第1例と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0178】
図16(a)~(d)が示すように、第4例の波長選択部131において、サブ波長格子は、二次元格子状の配列を有する。
詳細には、
図16(b)が示すように、第1格子領域13において、複数の第1格子低屈折率部13bは、二次元格子状に配置されている。二次元格子の種類は特に限定されず、互いに異なる方向に延びる2つの平行線群が交差することによって構成される格子の格子点に第1格子低屈折率部13bが位置していればよい。例えば、第1格子低屈折率部13bが構成する二次元格子は、正方格子であってもよいし、六方格子であってもよい。第1格子領域13における格子構造の周期である第1周期P1は、二次元格子が延びる各方向において一致している。第1格子高屈折率部13aは、複数の第1格子低屈折率部13bの間を埋めており、連続する1つの高屈折率部を構成している。
【0179】
第1方向に沿った方向から見て、第1格子低屈折率部13bの形状は特に限定されないが、例えば第1格子低屈折率部13bが正方形であると、第1格子領域13の平均屈折率を規定する面積比率の設定が容易である。
【0180】
図16(c)が示すように、中間領域14において、複数の第1中間低屈折率部14bは、第1格子低屈折率部13bと一致した二次元格子状に配置されている。中間領域14における第1中間低屈折率部14bの配列の周期である第3周期P3は、第1格子領域13における第1周期P1と一致している。第1方向に沿った方向から見て、第1中間低屈折率部14bの大きさは、第1格子低屈折率部13bと一致する。
【0181】
第1方向に沿った方向から見て、中間高屈折率部14aは枠形状を有し、第1中間低屈折率部14bを1つずつ取り囲んでいる。第2中間低屈折率部14cは、互いに隣接する中間高屈折率部14aの間を埋めており、連続する1つの低屈折率部を構成している。
【0182】
図16(d)が示すように、第2格子領域15において、複数の第2格子高屈折率部15aは、第1格子低屈折率部13bと一致した二次元格子状に配置されている。第2格子低屈折率部15bは、複数の第2格子高屈折率部15aの間を埋めており、連続する1つの低屈折率部を構成している。第2格子領域15における格子構造の周期である第2周期P2は、第1格子領域13における第1周期P1と一致している。
【0183】
ただし、第1方向に沿った方向から見て、第2格子領域15において点在する第2格子高屈折率部15aは、第1格子領域13において点在する第1格子低屈折率部13bよりも大きい。言い換えれば、第2方向および第3方向の各々において、第2格子高屈折率部15aの幅は、第1格子低屈折率部13bの幅よりも大きい。したがって、第2格子低屈折率部15bの幅は、第1格子高屈折率部13aの幅よりも小さい。第1方向に沿った方向から見て、第2格子高屈折率部15aは、第1格子低屈折率部13bの形状に準じた形状を有する。
【0184】
また、頂部領域17においても、複数の第1頂部低屈折率部17aは、第1格子低屈折率部13bと一致した二次元格子状に配置されている。そして、第2頂部低屈折率部17bは、複数の第1頂部低屈折率部17aの間を埋めており、連続する1つの低屈折率部を構成している。頂部領域17における第1頂部低屈折率部17aの配列の周期は、第1格子領域13における第1周期P1と一致している。
【0185】
第4例の波長選択部131においても、第1例と同様の原理によって導波モード共鳴現象が起こり、第1格子領域13で強められた波長域の光と、第2格子領域15で強められた波長域の光とが、反射光として取り出される。第4例においても、第1格子領域13の光学膜厚OT1は、第1例で示した(式2)によって求められ、第2格子領域15の光学膜厚OT2は、第1例で示した(式4)によって求められる。そして、第1格子領域13の光学膜厚OT1に対する第2格子領域15の光学膜厚OT2の比が、0.5以上2.0以下、より好ましくは0.625以上1.6以下であれば、波長選択部131において、反射光についての良好な波長選択性が得られる。
【0186】
また、第4例においても、中間高屈折率部14aの面積比率R3について、第1例で示した(式5)が満たされることが好ましい。(式5)が満たされていれば、中間高屈折率部14aの幅が、第2格子高屈折率部15aよりも外側まで広がらない程度に抑えられるため、中間高屈折率部14aの面積比率が大きくなりすぎない。したがって、各格子領域13,15からの反射光の強度が良好になる。
【0187】
第4例のように、サブ波長格子を構成する格子要素が二次元格子状に並んでいれば、互いに異なる方向へ偏光している光を格子要素が並ぶ方向ごとにそれぞれ共鳴させることができる。したがって、第1例のように、格子要素が1つの方向のみに沿って並ぶ形態と比較して、様々な方向への偏光成分を含む入射光に対して、効率的に反射光が出射される。そのため、反射光の強度がより高められる。
【0188】
特に、格子要素が六方格子状に並んでいれば、格子要素が正方格子状に並ぶ場合と比較して、格子領域13,15にて共鳴可能な偏光の方向が多くなるため、様々な方向への偏光成分を含む入射光に対して、より効率的に反射光を出射することができる。
【0189】
第4例の波長選択部131は、第1例の波長選択部131の製造方法において、凸部21aの配列を変更することによって製造できる。具体的には、複数の凸部21aが二次元格子状に配置された凹凸構造を形成することによって、凹凸構造層21を形成する。複数の凸部21aは互いに離間しており、凸部21a間に位置する凹部21bは連続する1つの凹部を構成している。第4例のように、凸部21aが二次元格子状に並んでいると、凸部21aの大きさや配置についての自由度が高いため、凸部21aと凹部21bとの面積比率の設定に際しての細かな調整が容易である。
【0190】
第4例の波長選択部131には、第1例の各変形例の構造が適用されてもよい。また、第2例および第3例の波長選択部に第4例のサブ波長格子の配列が適用されてもよい。すなわち、複数の第4例の波長選択部131を第1方向に沿って積層することによって、4つ以上の格子領域を有する波長選択部を構成してもよい。このとき、2以上の共鳴構造部31において、サブ波長格子を構成する格子要素が並ぶ方向、言い換えれば、二次元格子の延びる方向は、一致していてもよいし、異なっていてもよい。2つの共鳴構造部31における二次元格子の延びる方向が異なる場合、偏光に関し、より多くの方向に対応して反射光を射出することができる。
【0191】
なお、各格子領域13,15において、格子構造の周期は、二次元格子が延びる方向によって異なっていてもよい。こうした構成によれば、二次元格子が延びる方向によって共鳴を起こす波長域を異ならせて、反射光に含まれる波長域や偏光に対する応答性を調整することが可能である。
【0192】
また、凹凸構造層21の凹凸構造は、互いに離間した複数の凹部と、これらの凹部の間で連続している単一の凸部とから構成されてもよい。すなわち、凹凸構造層21の凹凸構造は、凸部もしくは凹部である複数の凹凸要素が互いに離間しつつ二次元格子状に並ぶことにより形成されていればよい。
【0193】
以上、本実施形態の表示装置100によれば、下記に列挙する効果が得られる。
(1)表示装置100が、第1発光部の発する色の光が射出される副画素領域と、第2発光部の発する色の光が射出される副画素領域と、第1発光部の発した光の波長が変換された色の光が射出される副画素領域とを有している。したがって、2種類の発光部111を用いて3種類の色の副画素領域が実現できるため、発光層110の形成に要する負荷の軽減が可能である。そして、波長変換部121上に、波長変換部121を透過した発光部111からの光を選択的に反射する波長選択部131が配置されているため、波長変換部121での変換後の光に混じって発光部111からの光が表示装置100の表側に射出されることが抑えられる。それゆえ、副画素領域の色が鮮明となり、表示される画像での混色を抑制することができる。また、波長選択部131で反射された光が再び波長変換部121に入ることにより励起光として用いられるため、波長変換部121から射出される光の強度が高められる。
【0194】
(2)赤色副画素領域100Rにて、青色発光部111Bからの青色光が赤色光に変換されて射出される。青色副画素領域100Bでは、青色発光部111Bからの青色光が変換を経ずに射出され、緑色副画素領域100Gでは、緑色発光部111Gからの緑色光が変換を経ずに射出される。これにより、青色発光部111Bと緑色発光部111Gとの2種類の発光部111を用いて、三色の副画素領域を実現することができる。したがって、発光部111がLEDを備える場合には、1つの基板上に各発光部111を形成することができる。
【0195】
また、緑色光から赤色光を生成する場合と比較して、より短波長の光から赤色光が生成されるため、波長変換部121で大きな発光が得られやすい。さらに、波長選択部131が、短波長領域である青色波長域を反射する。こうした波長選択部131であれば、上述した低屈折率材料や高屈折率材料のうち入手しやすい材料から好適な屈折率の各領域を形成することが容易である。
【0196】
(3)赤色副画素領域100Rにて、緑色発光部111Gからの緑色光が赤色光に変換されて射出される。青色副画素領域100Bでは、青色発光部111Bからの青色光が変換を経ずに射出され、緑色副画素領域100Gでは、緑色発光部111Gからの緑色光が変換を経ずに射出される。これにより、青色発光部111Bと緑色発光部111Gとの2種類の発光部111を用いて、三色の副画素領域を実現することができる。したがって、発光部111がLEDを備える場合には、1つの基板上に各発光部111を形成することができる。
【0197】
(4)波長変換部121が、無機蛍光体または量子ドットを備えることにより、励起を利用した波長の変換が好適に可能である。特に、波長変換部121が量子ドットを備えていれば、変換後の光として、単色性の高い光が得られる。
【0198】
(5)発光部111が、発光素子としてマイクロLEDを備えることにより、単色性の高い光の放出が可能であるとともに、低電力での駆動が可能である。また、表示装置100において、高輝度かつ広視野角で高精細な画像の表示が可能である。
【0199】
(6)波長選択部131が、サブ波長周期で並ぶ凹凸構造を表面に有する凹凸構造層21と、凹凸構造層21の凹凸構造に追従した形状を有する高屈折率層22と、高屈折率層22上に位置する低屈折率層23とを備える。こうした構造であれば、2つのサブ波長格子が低屈折率材料で埋め込まれているため、導波モード共鳴による波長選択性の高い反射光が得られ、また、反射光の強度も高められる。
【0200】
(7)低屈折率層23が、高屈折率層22の表面の凹凸に追従した表面形状を有するため、低屈折率層23の厚さおよび屈折率の調整により、各格子領域13,15で強められた反射光とは異なる波長域の光が打ち消されて、こうした光が反射光とともに射出されることを抑えることができる。したがって、波長選択部131の波長選択性が高められる。
【0201】
(8)凹凸構造層21は、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、および、熱可塑性樹脂のいずれかから形成され、低屈折率層23は、無機化合物から形成されている。これにより、凹凸構造層21の製造方法として、ナノインプリントの採用が可能であるため、微細な凹凸を好適に形成できる。また、低屈折率層23の製造方法として、物理気相成長法の採用が可能であるため、低屈折率層23を下層の凹凸に沿った形状に好適に形成できる。このように、低屈折率材料の使い分けによって、凹凸構造層21と低屈折率層23との好適な形成が可能であり、凹凸構造層21と低屈折率層23との屈折率を異ならせることも容易である。
【0202】
(9)第1格子領域13の光学膜厚OT1に対する第2格子領域15の光学膜厚OT2の比が、0.5以上2.0以下、より好ましくは0.625以上1.6以下であることにより、波長選択部131の波長選択性がより高められる。
【0203】
(10)中間領域14における中間高屈折率部14aの面積比率R3について、R3≦R1+R2-1が満たされることにより、中間高屈折率部14aの幅が小さく抑えられるため、中間領域14の平均屈折率が過度に大きくなることが抑えられる。したがって、格子領域13,15とその隣接領域との平均屈折率の差が良好に確保されるため、導波モード共鳴現象によって得られる各格子領域13,15からの反射光の強度が良好になる。
【0204】
(11)波長選択部131が、第1方向に並ぶ複数の共鳴構造部31を備えることにより、波長選択部131が4つ以上の格子領域13,15を備える。そのため、波長選択部131の波長選択性の向上や、反射光の波長域の調整や、偏光に対する応答性の調整が可能である。
【0205】
[変形例]
上記実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。以下の変形例は互いに組み合わせて実施してもよい。
【0206】
・複数の赤色副画素領域100Rは、青色発光部111Bの発する青色光から変換された赤色光を射出する赤色副画素領域100Rと、緑色発光部111Gの発する緑色光から変換された赤色光を射出する赤色副画素領域100Rとを含んでいてもよい。この場合、波長制御層120は、青色発光部111B上に位置する青赤変換部121BRと、緑色発光部111G上に位置する緑赤変換部121GRとを備える。また、フィルタ層130は、青赤変換部121BR上に位置する青赤選択部131BRと、緑赤変換部121GR上に位置する緑赤選択部131GRとを備える。
【0207】
・フィルタ層130の波長選択部131において、基材11が波長変換部121に向けられ、頂部領域17が表示装置100の表側に向けられる場合、すなわち、低屈折率層23の凹凸が表示装置100の表側に向けられる場合には、低屈折率層23の凹凸が、非選択部132から連続する透明樹脂膜によって埋められてもよい。これにより、各副画素領域100R,100G,100Bの平坦化が可能である。この場合、非選択部132は、可視波長域の全域に吸収を有さない材料から形成され、非選択部132における可視領域の光の透過率は100%に近いことが好ましい。具体的には、非選択部132には、アクリル系のクリアレジストが用いられればよい。
【0208】
・フィルタ層130の非選択部132は、透過部122を透過した光の明るさを、波長選択部131から射出された光の明るさに合わせるように調整する機能を有していてもよい。これにより、発光部111が所定の発光量であるときに、各副画素領域100R,100G,100Bに視認される色の鮮やかさ等にばらつきが生じることが抑えられるため、表示される画像での的確な色彩の再現が可能である。例えば、非選択部132は、透過部122を透過した光の一部を吸収することで、表示装置100の表側に射出される光の強度を弱めてもよい。
【0209】
・フィルタ層130において、波長選択部131と非選択部132とが連続していてもよい。例えば、波長選択部131を構成する低屈折率材料や高屈折率材料からなる層が、非選択部132まで延びていてもよい。この場合、上記低屈折率材料や高屈折率材料からなる層は、非選択部132においては平膜状を有していればよい。
【0210】
・フィルタ層130、もしくは他の層は、各副画素領域100R,100G,100Bの境界部分に、隔壁を備えていてもよい。これにより、各副画素領域100R,100G,100Bからの光が混ざって見えることが抑えられ、鮮明な色の表現が可能である。隔壁としては、反射隔壁が好適に用いられるが、吸収隔壁を用いてもよい。反射隔壁は、例えば、クリアレジストからなる枠形状の構造体をアルミニウムで被覆した構造、あるいは、樹脂と光散乱粒子とを含む材料から構成される白色のレジストからなる枠形状の構造を有する。当該白色のレジストとしては、例えば、TiO2やZrO2からなる白色顔料が分散された樹脂材料が用いられる。吸収隔壁は、例えば、カーボンブラック等の遮光性を有する黒色色素が添加された樹脂材料から構成される。
【0211】
・表示装置100は、赤色光、緑色光、青色光の三色の光を用いて色を表現する装置でなくてもよく、表示装置100の色の表現方式は限定されない。表示装置100は、表示装置100の色の表現方式に応じた種類の副画素領域を有していればよい。発光層110は、第1波長域の光を発する複数の第1発光部と、第1波長域とは異なる第2波長域の光を発する複数の第2発光部とを備えていればよく、第1波長域と第2波長域とは、青色波長域および緑色波長域とは異なっていてもよいし、発光層110がさらに、第1波長域および第2波長域とは異なる波長域の光を発する発光部を備えていてもよい。例えば、発光部がマイクロLEDを備える場合、第1波長域および第2波長域は、窒化ガリウム系半導体のPN接合構造により放出可能な波長域であればよい。
【0212】
表示装置100が、第1発光部の発する色の光が射出される副画素領域と、第2発光部が発する色の光が射出される副画素領域と、第1発光部の発した光の波長が変換された色の光が射出される副画素領域とを有していれば、副画素領域の色の種類よりも少ない種類の発光部によって、これらの副画素領域の色が実現できる。そのため、上記(1)の効果が得られる。
【0213】
・波長選択部131の中間領域14は、中間高屈折率部14aを有していなくてもよい。すなわち、中間領域14は、第1中間低屈折率部14bと第2中間低屈折率部14cとから構成されていてもよい。高屈折率層22の製造条件によっては、中間高屈折率部14aを有さない波長選択部131、すなわち、凸部21aの側面への高屈折率層22の成膜がない波長選択部131の製造が可能である。
【0214】
・頂部領域17が最表面に位置する形態において、頂部領域17を覆う保護層が設けられてもよい。この場合、保護層は樹脂等の低屈折率材料から構成され、低屈折率層23の凹部は保護層によって埋められる。すなわち、第2頂部低屈折率部17bは、低屈折率材料によって充填される。
【符号の説明】
【0215】
11…基材
12…第1低屈折率領域
13…第1格子領域
13a…第1格子高屈折率部
13b…第1格子低屈折率部
14…中間領域
14a…中間高屈折率部
14b…第1中間低屈折率部
14c…第2中間低屈折率部
15…第2格子領域
15a…第2格子高屈折率部
15b…第2格子低屈折率部
16…第2低屈折率領域
17…頂部領域
17a…第1頂部低屈折率部
17b…第2頂部低屈折率部、
18…境界低屈折率領域
21…凹凸構造層
22…高屈折率層
23…低屈折率層
24…埋込層
31,31A,31B…共鳴構造部
32…凹凸構造体
100…表示装置
100R,100B,100G…副画素領域
110…発光層
111,111B,111G…発光部
120…波長制御層
121,121BR,121GR…波長変換部
122,122B,122G…透過部
130…フィルタ層
131,131BR,131GR…波長選択部
132…非選択部
140…駆動部。