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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160906
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】情報処理システム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20120101AFI20221013BHJP
   G06F 16/28 20190101ALI20221013BHJP
【FI】
G06Q10/00
G06F16/28
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065428
(22)【出願日】2021-04-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】316014906
【氏名又は名称】株式会社FRONTEO
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】特許業務法人SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久光 徹
(72)【発明者】
【氏名】蓮子 和巳
(72)【発明者】
【氏名】水野 貴之
【テーマコード(参考)】
5B175
5L049
【Fターム(参考)】
5B175FB04
5B175KA12
5L049AA00
(57)【要約】
【課題】エンティティが選択可能な戦略を適切に評価する情報処理システム及び情報処理方法等の提供。
【解決手段】 情報処理システムは、エンティティネットワークを取得するエンティティネットワーク取得部と、エンティティネットワークに基づいて影響度算出処理を行う影響度算出部と、第1エンティティによる複数の戦略を提示し、提示された複数の戦略のうちのいずれかの選択を受け付けることで選択戦略を決定する戦略決定部と、選択戦略に基づいて、影響度算出処理における制約条件を決定する戦略解釈部と、評価処理部を含む。影響度算出部は、制約条件がない場合の第1影響度と、制約条件が与えられた場合の第2影響度を算出し、評価処理部は、第1影響度と第2影響度の比較処理に基づいて選択戦略の評価を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投資関係に基づいて、第1エンティティ及び第2エンティティを含む複数のエンティティに対応する複数のノードが接続されたエンティティネットワークを取得するエンティティネットワーク取得部と、
前記エンティティネットワークに基づいて、前記第2エンティティへの影響度を算出する影響度算出処理を行う影響度算出部と、
前記第1エンティティによる将来的な行動を表す複数の戦略を提示し、提示された前記複数の戦略のうちのいずれかの選択を受け付けることで選択戦略を決定する戦略決定部と、
前記選択戦略に基づいて、前記影響度算出処理における制約条件を決定する戦略解釈部と、
前記影響度算出処理の結果に基づいて、前記選択戦略を評価する評価処理部と、
を含み、
前記影響度算出部は、
前記制約条件がない場合の前記影響度である第1影響度と、前記制約条件が与えられた場合の前記影響度である第2影響度を算出し、
前記評価処理部は、
前記第1影響度と前記第2影響度の比較処理に基づいて前記選択戦略の評価を行う情報処理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数のエンティティのうち、前記第1エンティティによる前記行動の対象となるエンティティを第3エンティティとしたとき、
選択可能な前記複数の戦略は、前記第1エンティティが前記第3エンティティと協調する協調戦略、及び、前記第1エンティティが前記第3エンティティと敵対する敵対戦略の少なくとも一方を含む情報処理システム。
【請求項3】
請求項2において、
選択可能な前記複数の戦略は、前記第1エンティティが前記第3エンティティを買収する買収戦略、及び、前記第1エンティティが前記第3エンティティを売却する売却戦略を含む情報処理システム。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記戦略決定部が、前記複数の戦略のうちの何れかの選択を受け付けた場合に、
前記評価処理部は、
前記複数のエンティティから、前記第3エンティティの候補である複数の候補エンティティを抽出し、
前記第1影響度と、前記複数の候補エンティティのそれぞれについて求められた前記第2影響度の前記比較処理に基づいて、前記複数の候補エンティティから前記第3エンティティを選択する処理を行う情報処理システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記評価処理部は、
複数の評価基準のうちのいずれかの選択を受け付けることで選択評価基準を決定し、
前記第1影響度、前記第2影響度、及び前記選択評価基準に基づいて、前記複数の候補エンティティから前記第3エンティティを選択する処理を行い、
前記複数の評価基準は、前記第1エンティティの前記影響度の増加度合いを用いる第1評価基準、及び、前記第1エンティティと敵対する敵対エンティティの前記影響度の減少度合いを用いる第2評価基準を含む情報処理システム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項において、
前記第1影響度と前記第2影響度に基づいて、前記複数のエンティティのうち、前記第1エンティティが前記選択戦略に対応する前記行動を行った場合に、前記第2エンティティへの前記影響度が所与の閾値以上増加すると判定された第4エンティティを提示する処理を行う提示処理部を含む情報処理システム。
【請求項7】
請求項6において、
前記提示処理部は、
前記エンティティネットワークにおいて、前記第4エンティティを識別可能な態様で表示する処理を行う情報処理システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記提示処理部は、
前記第4エンティティから前記第2エンティティまでの複数の経路のうちのクリティカルパスを識別可能な態様で提示し、
前記クリティカルパスは、経路長、及び、経路上における前記エンティティの前記影響度の少なくとも一方に基づいて決定される情報処理システム。
【請求項9】
請求項1乃至5の何れか一項において、
前記複数のエンティティのうち、前記第1エンティティ及び前記第2エンティティのいずれとも異なるエンティティを第5エンティティとし、
前記第1エンティティの前記影響度と、前記第5エンティティの前記影響度に基づいて求められる相対的な前記影響度を相対影響度としたとき、
前記第1影響度と前記第2影響度に基づいて、前記相対影響度の変化を提示する処理を行う提示処理部を含む情報処理システム。
【請求項10】
投資関係に基づいて、第1エンティティ及び第2エンティティを含む複数のエンティティに対応する複数のノードが接続されたエンティティネットワークを取得し、
前記第1エンティティによる将来的な行動を表す複数の戦略を提示し、
提示された前記複数の戦略のうちのいずれかの選択を受け付けることで選択戦略を決定し、
前記選択戦略に基づいて、制約条件を決定し、
前記エンティティネットワークに基づいて、前記制約条件がない場合の前記第2エンティティへの影響度である第1影響度を算出し、
前記エンティティネットワークに基づいて、前記制約条件が与えられた場合の前記第2エンティティへの前記影響度である第2影響度を算出し、
前記第1影響度と前記第2影響度の比較処理に基づいて前記選択戦略の評価を行う、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム及び情報処理方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、あるエンティティが、他のエンティティに対してどのような影響力を有しているかを数値化する手法が知られている。ここでのエンティティは、国、企業、人等である。
【0003】
例えば特許文献1には、実体同士が複雑な関係を有する場合であっても,実体がほかの実体に対して有する影響力を求める手法が開示されている。複雑な関係とは、例えば、多数の階層を有する関係や、循環関係等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-005298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
国や企業等のエンティティが戦略を策定する場合、複雑化したエンティティ間の関係を考慮した上で、当該戦略の効果を評価する必要がある。エンティティの取り得る戦略は種々考えられ、戦略に応じてエンティティ間の関係の変化の仕方も異なる。特許文献1等の従来手法は、戦略の選択受け付けや、受け付けた戦略の解釈等、戦略評価のための具体的な手法を開示していない。
【0006】
本開示のいくつかの態様によれば、エンティティが選択可能な戦略を適切に評価する情報処理システム及び情報処理方法等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、投資関係に基づいて、第1エンティティ及び第2エンティティを含む複数のエンティティに対応する複数のノードが接続されたエンティティネットワークを取得するエンティティネットワーク取得部と、前記エンティティネットワークに基づいて、前記第2エンティティへの影響度を算出する影響度算出処理を行う影響度算出部と、前記第1エンティティによる将来的な行動を表す複数の戦略を提示し、提示された前記複数の戦略のうちのいずれかの選択を受け付けることで選択戦略を決定する戦略決定部と、前記選択戦略に基づいて、前記影響度算出処理における制約条件を決定する戦略解釈部と、前記影響度算出処理の結果に基づいて、前記選択戦略を評価する評価処理部と、を含み、前記影響度算出部は、前記制約条件がない場合の前記影響度である第1影響度と、前記制約条件が与えられた場合の前記影響度である第2影響度を算出し、前記評価処理部は、前記第1影響度と前記第2影響度の比較処理に基づいて前記選択戦略の評価を行う情報処理システムに関係する。
【0008】
本開示の他の態様は、投資関係に基づいて、第1エンティティ及び第2エンティティを含む複数のエンティティに対応する複数のノードが接続されたエンティティネットワークを取得し、前記第1エンティティによる将来的な行動を表す複数の戦略を提示し、提示された前記複数の戦略のうちのいずれかの選択を受け付けることで選択戦略を決定し、前記選択戦略に基づいて、制約条件を決定し、前記エンティティネットワークに基づいて、前記制約条件がない場合の前記第2エンティティへの影響度である第1影響度を算出し、前記エンティティネットワークに基づいて、前記制約条件が与えられた場合の前記第2エンティティへの前記影響度である第2影響度を算出し、前記第1影響度と前記第2影響度の比較処理に基づいて前記選択戦略の評価を行う情報処理方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】情報処理システムを含むシステムの構成例。
図2】サーバシステムの構成例。
図3】端末装置の構成例。
図4】企業持ち株ネットワーク分析の説明図。
図5】サプライチェーン分析の説明図。
図6】人物ネットワーク分析の説明図。
図7】SNS・ニュース分析の説明図。
図8】投資関係を表すエンティティネットワークの例。
図9】NPIを求める処理の説明図。
図10】本実施形態の処理を説明するフローチャート。
図11A】戦略実行エンティティを受け付ける表示画面の例。
図11B】被影響エンティティを受け付ける表示画面の例。
図11C】戦略を受け付ける表示画面の例。
図12A】敵対戦略における表示画面の例。
図12B】敵対戦略における表示画面の例。
図13】協調戦略における表示画面の例。
図14】売却戦略における表示画面の例。
図15A】協調戦略における制約条件の説明図。
図15B】敵対戦略における制約条件の説明図。
図16A】買収戦略における制約条件の説明図。
図16B】売却戦略における制約条件の説明図。
図17】影響度算出処理を説明するフローチャート。
図18A】評価処理を説明するフローチャート。
図18B】経路の評価処理を説明するフローチャート。
図19】評価結果を提示する表示画面の例。
図20A】評価処理を説明するフローチャート。
図20B】評価処理を説明するフローチャート。
図21】評価結果を提示する表示画面の例。
図22】評価結果を提示する表示画面の例。
図23】本実施形態の処理を説明するフローチャート。
図24A】評価基準を受け付ける表示画面の例。
図24B】推奨戦略対称エンティティを提示する表示画面の例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について図面を参照しつつ説明する。図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本開示の必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1.OSINTシステム
1.1 システム構成例
図1は、本実施形態に係る情報処理システム10を含むシステムの構成例である。本実施形態に係るシステムは、サーバシステム100と、端末装置200を含む。ただし、情報処理システム10を含むシステムの構成は図1に限定されず、一部を省略する、他の構成を追加する等の種々の変形実施が可能である。例えば、図1では端末装置200として、端末装置200-1と端末装置200-2の2つを例示しているが、端末装置200の数はこれに限定されない。また、構成の省略や追加等の変形実施が可能である点は、後述する図2図3においても同様である。
【0012】
本実施形態の情報処理システム10は、例えばサーバシステム100に対応する。ただし、本実施形態の手法はこれに限定されず、サーバシステム100と他の装置を用いた分散処理によって、情報処理システム10の処理が実行されてもよい。例えば、本実施形態の情報処理システム10は、サーバシステム100と、端末装置200の分散処理によって実現されてもよい。以下、情報処理システム10がサーバシステム100である例について説明する。
【0013】
サーバシステム100は、1つのサーバであってもよいし、複数のサーバを含んでもよい。例えばサーバシステム100は、データベースサーバとアプリケーションサーバを含んでもよい。データベースサーバは、後述するエンティティネットワーク等、種々のデータを記憶する。アプリケーションサーバは、図10等を用いて後述する処理を行う。なおここでの複数のサーバは、物理サーバであってもよいし仮想サーバであってもよい。また仮想サーバが用いられる場合、当該仮想サーバは1つの物理サーバに設けられてもよいし、複数の物理サーバに分散して配置されてもよい。以上のように、本実施形態におけるサーバシステム100の具体的な構成は種々の変形実施が可能である。
【0014】
端末装置200は、情報処理システム10を利用するユーザによって使用される装置である。端末装置200は、PC(Personal Computer)であってもよいし、スマートフォン等の携帯端末装置であってもよいし、他の装置であってもよい。
【0015】
サーバシステム100は、例えばネットワークを介して端末装置200-1及び端末装置200-2と接続される。以下、複数の端末装置を互いに区別する必要が無い場合、単に端末装置200と表記する。ここでのネットワークは、例えばインターネット等の公衆通信網であるが、LAN(Local Area Network)等であってもよい。
【0016】
本実施形態の情報処理システム10は、例えば公開情報を用いて、対象に関するデータの収集、分析等を行うOSINT(Open Source Intelligence)システムである。ここでの公開情報は、有価証券報告書、産業連関表、政府の公式発表、国や企業に関する報道、サプライチェーンデータベース等、広く公開されており、合法的に入手可能な種々の情報を含む。
【0017】
サーバシステム100は、公開情報に基づいて、様々な属性を含むノードを生成する。1つのノードは、所与のエンティティを表す。ここでのエンティティは人であってもよいし、企業であってもよいし、国であってもよい。属性は、公開情報に基づいて決定される情報であって、エンティティの名称、国籍、事業分野、売り上げ、従業員数、株主と出資比率、ボードメンバー、取引先と取引品目等の種々の情報を含む。名称は、国名、企業名、人名、その他組織名等を含む。
【0018】
所与のノードの属性に、他のノードとの関係性を含む属性がある場合、当該所与のノードと他のノードが、向きを有するエッジによって連結される。例えば、所与のエンティティの株主に、他のエンティティが含まれるとする。この場合、他のエンティティに対応するノードと、所与のエンティティに対応するノードとの間が、投資関係を表すエッジによって連結される。ここでのエッジは、影響を与える側から受ける側への方向を有するエッジであり、例えば出資する側から出資される側への方向を有するエッジである。
【0019】
本実施形態の手法では、サーバシステム100は、複数のエンティティを表す複数のノードが、属性に基づく向きを有するエッジによって連結されたネットワークであるエンティティネットワークを取得する。即ち、エンティティネットワークは有向グラフである。そしてサーバシステム100は、エンティティネットワークに基づく分析を行い、分析結果を提示する処理を行う。例えば、端末装置200は、OSINTシステムが提供するサービスを利用するユーザによって使用される装置である。例えばユーザは、端末装置200を用いて何らかの分析を情報処理システム10であるサーバシステム100に依頼する。サーバシステム100は、エンティティネットワークに基づく分析を行い、分析結果を端末装置200に送信する。
【0020】
図2は、サーバシステム100の詳細な構成例を示すブロック図である。サーバシステム100は、例えば処理部110と、記憶部120と、通信部130を含む。
【0021】
本実施形態の処理部110は、下記のハードウェアによって構成される。ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。例えば、ハードウェアは、回路基板に実装された1又は複数の回路装置や、1又は複数の回路素子によって構成できる。1又は複数の回路装置は例えばIC(Integrated Circuit)、FPGA(field-programmable gate array)等である。1又は複数の回路素子は例えば抵抗、キャパシター等である。
【0022】
また処理部110は、下記のプロセッサによって実現されてもよい。本実施形態のサーバシステム100は、情報を記憶するメモリと、メモリに記憶された情報に基づいて動作するプロセッサと、を含む。情報は、例えばプログラムと各種のデータ等である。プロセッサは、ハードウェアを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等、各種のプロセッサを用いることが可能である。メモリは、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリであってもよいし、レジスタであってもよいし、ハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)等の磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。例えば、メモリはコンピュータによって読み取り可能な命令を格納しており、当該命令をプロセッサが実行することによって、処理部110の機能が処理として実現される。ここでの命令は、プログラムを構成する命令セットの命令でもよいし、プロセッサのハードウェア回路に対して動作を指示する命令であってもよい。
【0023】
処理部110は、例えばエンティティネットワーク取得部111と、影響度算出部112と、戦略決定部113と、戦略解釈部114と、評価処理部115と、提示処理部116を含む。
【0024】
エンティティネットワーク取得部111は、エンティティネットワーク121を取得する。例えばエンティティネットワーク取得部111は、公開情報に基づいてエンティティネットワーク121を作成してもよい。エンティティネットワーク取得部111は、取得したエンティティネットワーク121を、記憶部120に記憶する。ただし、エンティティネットワーク121の作成は、本実施形態に係る情報処理システム10とは異なるシステムにおいて行われ、エンティティネットワーク取得部111は、作成結果を取得する処理を行ってもよい。
【0025】
エンティティネットワーク取得部111は、例えば図4を用いて後述するように、投資関係に基づいて、第1エンティティ及び第2エンティティを含む複数のエンティティに対応する複数のノードが接続されたネットワークを、エンティティネットワーク121として取得してもよい。第1エンティティは後述する戦略実行エンティティであり、第2エンティティは例えば後述する被影響エンティティである。
【0026】
また、エンティティネットワーク取得部111は、図5を用いて後述するサプライチェーンを表すネットワークや、図6を用いて後述する人物間の相関を表すネットワークを、エンティティネットワーク121として取得してもよい。またエンティティネットワーク取得部111は、投資関係、サプライチェーン、人物間の相関等の種々の関係を含むエンティティネットワーク121を取得し、当該エンティティネットワーク121の一部を抽出することによって、図4図6を用いて後述する各ネットワークを取得してもよい。
【0027】
影響度算出部112は、エンティティネットワーク121に基づいて、所与のエンティティの、他のエンティティに対する影響度を算出する影響度算出処理を行う。例えば、エンティティネットワーク121が投資関係を表す場合、影響度とは、特許文献1に開示されたNPI(Network Power Index)である。影響度算出部112は、エンティティネットワーク121に基づいて、少なくとも被影響エンティティ(第2エンティティ)への影響度を算出する。
【0028】
戦略決定部113は、複数の戦略を提示し、提示された複数の戦略のうちのいずれかの選択を受け付ける。戦略とは、戦略実行エンティティ(第1エンティティ)による将来的な行動を表す。戦略実行エンティティは、企業であってもよいし国家であってもよい。以下、戦略決定部113によって決定された戦略を、選択戦略とも表記する。
【0029】
戦略解釈部114は、決定された戦略を解釈する処理を行う。具体的には、戦略解釈部114は、ユーザによって選択された戦略に基づいて、影響度算出処理における制約条件を決定する処理を行う。具体例については、図15A図16Bを用いて後述する。上述した影響度算出部112は、制約条件がない場合の影響度である第1影響度と、制約条件が与えられた場合の影響度である第2影響度を算出する。
【0030】
評価処理部115は、影響度算出処理の結果に基づいて、選択戦略を評価する。具体的には評価処理部115は、第1影響度と第2影響度の比較処理に基づいて選択戦略の評価を行う。
【0031】
提示処理部116は、評価処理部115による評価結果をユーザに提示する処理を行う。提示処理部116は、例えば図19図21図22等を用いて後述する表示画面を表示する処理を行う。
【0032】
記憶部120は、処理部110のワーク領域であって、種々の情報を記憶する。記憶部120は、種々のメモリによって実現が可能であり、メモリは、SRAM、DRAM、ROM、フラッシュメモリなどの半導体メモリであってもよいし、レジスタであってもよいし、ハードディスク装置等の磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。
【0033】
記憶部120は、例えばエンティティネットワーク取得部111が取得したエンティティネットワーク121を記憶する。また記憶部120は、有価証券報告書、産業連関表等の公開情報を記憶してもよい。その他、記憶部120は本実施形態の処理に係る種々の情報を記憶可能である。
【0034】
通信部130は、ネットワークを介した通信を行うためのインターフェイスであり、例えばアンテナ、RF(radio frequency)回路、及びベースバンド回路を含む。通信部130は、処理部110による制御に従って動作してもよいし、処理部110とは異なる通信制御用のプロセッサを含んでもよい。通信部130は、例えばTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)に従った通信を行うためのインターフェイスである。ただし具体的な通信方式は種々の変形実施が可能である。
【0035】
図3は、端末装置200の詳細な構成例を示すブロック図である。端末装置200は、処理部210と、記憶部220と、通信部230と、表示部240と、操作部250を含む。
【0036】
処理部210は、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むハードウェアによって構成される。また処理部210は、プロセッサによって実現されてもよい。プロセッサは、CPU、GPU、DSP等、各種のプロセッサを用いることが可能である。端末装置200のメモリに格納された命令をプロセッサが実行することによって、処理部210の機能が処理として実現される。
【0037】
記憶部220は、処理部210のワーク領域であって、SRAM、DRAM、ROM等の種々のメモリによって実現される。
【0038】
通信部230は、ネットワークを介した通信を行うためのインターフェイスであり、例えばアンテナ、RF回路、及びベースバンド回路を含む。通信部230は、例えばネットワークを介して、サーバシステム100との通信を行う。
【0039】
表示部240は、種々の情報を表示するインターフェイスであり、液晶ディスプレイであってもよいし、有機ELディスプレイであってもよいし、他の方式のディスプレイであってもよい。操作部250は、ユーザ操作を受け付けるインターフェイスである。操作部250は、端末装置200に設けられるボタン等であってもよい。また表示部240と操作部250は、一体として構成されるタッチパネルであってもよい。
【0040】
1.2 サービスの具体例
次にOSINTシステムである情報処理システム10によって提供されるサービスの具体例について説明する。以下、具体的なサービスとして、企業持ち株ネットワーク分析、サプライチェーン分析、人物ネットワーク分析、SNS(social networking servic)・ニュース分析の4つの例を説明する。
【0041】
図4は、企業持ち株ネットワーク分析を説明する図であり、投資関係を表すエンティティネットワークの一例である。図4に示すように、公開情報に含まれる株主や出資比率を表す情報に基づいて、国や企業の投資関係を示すネットワークが形成される。
【0042】
情報処理システム10は、様々な国や企業が、他の企業に対して有している影響度を分析してもよい。この場合の影響度とは、出資による支配力を表し、Shapley-Shubik指数であってもよいし、Shapley-Shubik指数をネットワークへ一般化したNPIであってもよい。
【0043】
例えば、特定の国が、所与の業種の企業に対して有している影響度を求めることによって、当該国が当該業種の製品供給をどの程度支配しているかを把握することが可能である。例えば、当該国で重大な事件が起こった場合に、その事件が製品の安定供給に与える影響を評価すること等が可能である。また情報処理システム10は、世界的企業への国ごとの影響力を求めてもよい。これにより、国家間のパワーバランスを把握することが可能である。また、世界的企業への国ごとの影響力の時系列的な変化を求めることで、上記パワーバランスの推移を把握することも可能である。
【0044】
あるいは、情報処理システム10は、所与の国のインフラストラクチャに関連する企業への、他の国の影響力を求めてもよい。インフラストラクチャに関連する企業は、電力等のエネルギー関連企業であってもよいし、移動通信網を提供する企業であってもよい。このようにすれば、インフラストラクチャが機能を停止するリスクを評価することが可能になる。あるいは情報処理システム10は、軍事転用が可能な技術を有する企業への影響力を求めてもよい。このようにすれば、安全保障上のリスクを検出することが可能になる。
【0045】
また情報処理システム10は、国または企業が特定の行動を取ったときの影響度の変化を求めてもよい。例えば、所与の国の外交政策が転換されたと仮定した場合に、転換前後での影響度を求めることによって、当該外交政策が世界各国へ与える影響をシミュレーションすることが可能である。
【0046】
その他、企業持ち株ネットワーク分析を用いることによって、人手では検出が難しい複雑な投資関係の分析が可能になる。
【0047】
図5は、サプライチェーンを表すエンティティネットワーク121の具体例である。例えば原材料の調達から、製造、配送、販売、消費等の各工程を行う企業等が、エンティティネットワーク121のノードとなる。
【0048】
本実施形態の情報処理システム10は、例えばサプライチェーンのチョークポイントを検出する処理を行ってもよい。チョークポイントとは、二つのノード、またはコミュニティを結ぶパス上にあって、そのノードがなくなると連結が絶たれるか、互いを連結するパスの長さが数倍になるようなノードを表す。ここでのコミュニティとは、密に連結する複数のノードの集合を表す。
【0049】
国家や企業にとって、サプライチェーンの確保は重要な課題である。例えば、半導体のサプライチェーンにチョークポイントがある場合、当該チョークポイントに対応するエンティティを支配することによって、半導体業界全体に対して強い影響力を発揮することが可能になる。情報処理システム10は、チョークポイントを発見することによって、対象となる業界等における重要なエンティティを提示することが可能である。
【0050】
また情報処理システム10は、当該チョークポイントを表すエンティティへの影響度を分析してもよい。このようにすれば、特定の業界へ強い影響力を有する国や企業を特定することが可能になる。また情報処理システム10は、特定の国や企業が、チョークポイントを表すエンティティへの影響度を増すためにはどのような戦略をとればよいかを提示してもよい。
【0051】
また情報処理システム10は、サプライチェーン分析において、取引規制されている企業とのかかわりがないことを確認する処理を行ってもよい。例えば、奴隷労働的な問題を抱える鉱山が存在する場合、各企業は、当該鉱山の生産物を自社製品のサプライチェーンに組み込まないことが重要である。情報処理システム10は、例えば取引規制されている企業を中心とするコミュニティと、サービス利用者である顧客企業を含むコミュニティとの間を媒介するブリッジ企業を見つける処理を行ってもよい。当該ブリッジ企業と顧客企業の関係を絶つことを提案することによって、顧客企業のサプライチェーン汚染を抑制できる。また情報処理システム10は、ブリッジ企業と類似する企業を探索、提示する処理を行ってもよい。顧客企業が、ブリッジ企業と類似する企業と関係を持たないことを提案することで、顧客企業のサプライチェーン汚染をより抑制することが可能である。また、サプライチェーンのデータベースに含まれない企業についても、属性等を用いることでブリッジ企業との類似度を算出可能である。よって、取引がない企業を対象としたブラックリストの作成を容易に行うことも可能である。
【0052】
また情報処理システム10は、国または企業が特定の行動を取ったときのサプライチェーンの変化を求めてもよい。例えば、所与の国の政策が転換されたと仮定した場合に、転換前後でのサプライチェーンを比較することによって、当該政策がサプライチェーンへ与える影響をシミュレーションすることが可能である。
【0053】
図6は、人物ネットワークであるエンティティネットワーク121の具体例である。図6の各ノードは人を表すエンティティに対応する。例えば情報処理システム10は、人の属する国や組織等の情報、SNS等におけるつながりを表す情報等に基づいて、人物ネットワークを生成する。
【0054】
例えば情報処理システム10は、所与の研究分野における研究者をノードとする人物ネットワークを用いた分析を行ってもよい。例えば、人物ネットワークにおいて密に結合する複数のノードからなるコミュニティを特定する。ここでのコミュニティは、同じ国に属する研究者の集合であってもよいし、同じ研究機関、企業に属する研究者の集合であってもよい。例えば情報処理システム10は、所与のコミュニティと他のコミュニティを媒介するキーパーソンを特定する処理を行う。例えば所与の国の政府は、自国のコミュニティと、友好国のコミュニティを媒介するキーパーソンを特定することによって、国際的な研究活動を推進することが可能である。あるいは、自国のコミュニティと、敵対的な国のコミュニティを媒介するキーパーソンを特定することによって、研究成果の不正な流出を抑制することが可能である。
【0055】
また人物ネットワークは、人のみをノードとするものに限定されず、企業に対応するノードを含んでもよい。例えば情報処理システム10は、人や企業とのつながりを表す人物ネットワークを作成し、政治的要人や経済的要人に関する分析を行う。例えば情報処理システム10は、所与の国への経済制裁が、政府要人に与える影響の評価を行ってもよい。また情報処理システム10は、政府・経済界要人の間の関係性、投資を通じた企業との関係性の分析を行い、ある政策により企業への影響力が変化した場合に、人的ネットワークにはどのような影響があるか予測してもよい。また情報処理システム10は、好ましくないコミュニティ間をつなぐ人物を突き止めてもよい。
【0056】
図7は、SNS・ニュース分析を説明する図である。図7のword1~word4はそれぞれ、所与のワードの、SNSやニュースにおける出現数又は出現頻度の時系列変化を表す。また図7の指標は、政治的あるいは経済的な指標の時系列変化を表す。ここでの指標は、特定の政治家や政党の支持率であってもよいし、PMI(Purchasing Managers' Index)等の景気指標であってもよい。
【0057】
情報処理システム10は、SNSやニュースに現れたワードを分析し、所与の指標と相関を有するワードを特定する処理を行う。図7は、指標との相関が高いワードとして、word1~word4の4つが特定された例を示している。この場合、word1~word4に対応するワードの出現頻度が高くなると指標も高くなり、出現頻度が低くなると指標も低くなる。そのため、SNS等におけるワードの出現頻度に基づいて、指標の変化を予測すること等が可能になる。
【0058】
具体的には、情報処理システム10は、SNS等におけるトピック分析を行ってもよい。トピック分析は、例えばトピックモデルに従って行われる。例えば、与えられた文書中に、いくつかの潜在的なトピックがあって、各単語はトピック固有の確率に従って生成されると仮定する。トピックモデルとは、当該仮定において、統計的に最適な個数のトピックと、各トピックから単語が発生する最適な確率分布を計算するモデルである。情報処理システム10は、トピックの比率変化をモニタリングすることによって、トピックの変化と他の指標の変化の相関を求めてもよい。例えば情報処理システム10は、twitter(登録商標)上でのトピックと政治家、政党の支持率との関連性を分析してもよい。このようにすれば、トピックの変化に基づいて、支持率の変動を予測することが可能になる。
【0059】
また情報処理システム10は、感情分析を行ってもよい。情報処理システム10は、SNSの投稿や、新聞記事へのコメントの内容を、例えばpositive, negative, neutralの3種類に分類する。情報処理システム10は、それぞれの比率の変化をモニタリングすることにより、例えば民意の変化を把握、あるいは、予測することが可能である。例えば情報処理システム10は、上記のトピック分析と感情分析を組み合わせることによって、重要なトピックに対する民意を分析してもよい。
【0060】
近年、国家間、企業間、要人間の関係は、かつてないほどグローバルかつ複雑につながったネットワークとなっており、人手での分析には限界がある。その点、上述したOSINTシステムでは、出資による企業支配を表すネットワーク、サプライチェーン、要人間の人脈ネットワーク等の分析が可能である。OSINTシステムでは、複雑な関係性を読み解くことや、政策決定に影響を及ぼす民意を把握することが可能であるため、政府や企業が最適な戦略を立案すること等が可能になる。
【0061】
2.処理の詳細
以下、本実施形態における処理の詳細を説明する。本実施形態の手法は、狭義には企業持ち株ネットワーク分析であって、政府や企業等の戦略策定を支援する手法である。
【0062】
2.1 影響度算出
まず所与のエンティティが他のエンティティに与える影響を表す影響度を算出する処理について説明する。なお、本実施形態の影響度は、Shapley-Shubik指数や、それを一般化したNPIであり、例えば特許文献1に開示された手法を用いて求められてもよい。
【0063】
図8は、株式の保有関係を表すエンティティネットワーク121の一例である。図8の例では、エンティティZ1の株式を、エンティティZ2及びエンティティZ3が30%ずつ保有し、エンティティZ4が40%を保有している。またエンティティZ3の株式を、エンティティZ2とエンティティZ5が50%ずつ保有している。
【0064】
Shapley-Shubik指数は、複数の株主が提携によってある投票に勝とうとした場合に、特定の株主が、自分の投票順において「投票結果を決定する最初の投票者」になる場合の数の比によって測られる。以下、「投票結果を決定する最初の投票者」をピボット投票者と表記する。換言すれば、Shapley-Shubik指数はある会社が投票結果を左右するキャスティングボードを握ることができる確率を表す。
【0065】
例えば、エンティティZ3の株式を保有するのはエンティティZ2とエンティティZ5の2つである。よって、投票順序は、Z2→Z5とZ5→Z2の2通りである。そして、出資比率はいずれも50%であるため、Z2→Z5の投票順序におけるピボット投票者はエンティティZ5であり、Z5→Z2の投票順序におけるピボット投票者はエンティティZ2である。即ち、エンティティZ3に関して、エンティティZ2がピボット投票者となる確率は0.5であり、エンティティZ5がピボット投票者となる確率は0.5である。エンティティXのエンティティYに対する影響度を表すNPIをNPI(X,Y)としたとき、NPI(Z2,Z3)=0.5であり、NPI(Z5,Z3)=0.5である。
【0066】
エンティティZ1に対する影響を表すShapley-Shubik指数を求める場合も同様であり、エンティティZ1の株式を直接保有する株主の投票順序を求め、各投票順序におけるピボット投票者を決定すればよい。例えば、エンティティZ1の株主は、エンティティZ2、エンティティZ3、エンティティZ4の3つであるため、6通りの投票順序について、それぞれピボット投票者が求められる。ただし、NPIではShapley-Shubik指数がネットワークに拡張されており、直接の株主とならない企業の影響も考慮される。例えば、図8の例において、エンティティZ3は上述したように、確率0.5でエンティティZ2に支配され、確率0.5でエンティティZ5に支配される。これは、エンティティZ3を表すノードのラベルが確率0.5でエンティティZ2に変更され、確率0.5でエンティティZ5に変更されることに対応する。
【0067】
図9は、エンティティZ3を表すノードのラベルが変更された後のネットワークに基づいて、エンティティZ1に対する影響度を求める処理を説明する図である。エンティティZ3に対応するラベルがエンティティZ2に変更された場合、エンティティZ1の株式を、エンティティZ2が60%、エンティティZ4が40%を保有することになる。よって投票順序はZ2→Z4とZ4→Z2の2通りであり、いずれの場合もエンティティZ2がピボット投票者となる。
【0068】
エンティティZ3に対応するラベルがエンティティZ5に変更された場合、エンティティZ1の株式を、エンティティZ2及びエンティティZ5が30%ずつ保有し、エンティティZ4が40%を保有することになる。よって投票順序は図9に示す6通りであり、いずれの場合も2番目に投票するエンティティがピボット投票者となる。即ち、エンティティZ2、エンティティZ4、エンティティZ5がピボット投票者となる確率はいずれも1/3である。
【0069】
以上を考慮すると、エンティティZ1に対する影響度を表すNPIは下式(1)のように求められる。
NPI(Z2,Z1)=NPI(Z2,Z3)*1+NPI(Z5,Z3)*1/3
=2/3
NPI(Z4,Z1)=NPI(Z5,Z3)*1/3=1/6
NPI(Z5,Z1)=NPI(Z5,Z3)*1/3=1/6 …(1)
【0070】
なお、以上ではシンプルなネットワークを想定したため、すべての投票順序を考慮してNPIを求めた。ただし特許文献1に開示されているように、乱数を用いて投票順序を決定し、当該投票順序に従って演算が行われてもよい。例えば特許文献1では、起点となるノードから上位ノードへ向かって、順次、ピボット投票者を求める演算を行い、演算結果に応じて各ノードのラベルを更新する更新ラベルの特定処理が行われる。更新ラベルの特定処理を、上位ノードを有するすべてのノードについて行うことによって、一単位の処理が完了する。特許文献1では当該一単位の処理を、乱数を用いて投票順序を変えながら所定回数繰り返し、各ノードに付与されたラベルの割合を特定することによって、当該ノードへの影響度を表すNPIが求められる。
【0071】
Shapley-Shubik指数やNPIについては公知であるため、影響度算出に関するこれ以上の説明は省略する。なお本実施形態の手法における影響度算出手法は上記に限定されず、Shapley-Shubik指数、NPI、及びそれらを拡張した情報を影響度として用いる種々の手法を適用することが可能である。
【0072】
2.2 処理の流れ
図10は、本実施形態の処理の流れを説明するフローチャートである。以下、各ステップについて詳細に説明する。
【0073】
<ステップS101:エンティティネットワークの取得>
まずステップS101において、エンティティネットワーク取得部111は、国家、企業間の投資関係を表すエンティティネットワーク121を取得する。エンティティネットワーク取得部111は、有価証券報告書等の公開情報に基づいてエンティティネットワーク121を作成してもよいし、作成済みのエンティティネットワーク121を取得してもよい。
【0074】
<ステップS102:戦略実行エンティティの受け付け>
ステップS102において、戦略決定部113は、戦略実行エンティティの入力を受け付ける。戦略実行エンティティは、戦略を実行する主体となるエンティティである。戦略は、エンティティによる将来的な行動を表し、例えば他のエンティティとの関係を変化させる行動である。エンティティが国家である場合、戦略とは例えば外交政策や経済政策等の国家戦略である。エンティティが企業である場合、戦略とは例えば経営戦略である。
【0075】
図11Aは、戦略実行エンティティの選択操作を受け付ける表示画面の例である。図11Aに示す画面は、例えば端末装置200の表示部240に表示される。例えばサーバシステム100の戦略決定部113は、図11Aに示す画面に対応する画面情報を生成し、通信部130を介して、当該画面情報を端末装置200に送信してもよい。ここでの画面情報は、画像そのものであってもよいし、画像を形成するための情報であってもよい。ただし、図11Aの表示画面は、サーバシステム100が有する不図示の表示部に表示されてもよいし、他の装置に表示されてもよい。また、表示される装置に種々の変形実施が可能である点は、図11B以降の表示画面においても同様である。
【0076】
図11Aに示すように、表示画面は、戦略実行エンティティを入力可能な領域を有する。なお、図11Aではプルダウンメニューを用いる例を示しているが、具体的な選択手法は種々の変形実施が可能である。例えば、ユーザがテキスト等を用いて自由に戦略実行エンティティを入力可能であってもよい。あるいは、端末装置200は、エンティティネットワーク121を表示部240に表示するとともに、ポインティングデバイスやタッチパネル等の操作部250を用いて任意のノードの選択操作を受け付け可能であってもよい。またユーザに選択を行わせる画面等に種々の変形実施が可能である点は、後述する図11B図14においても同様である。
【0077】
<ステップS103:被影響エンティティの受け付け>
ステップS103において、戦略決定部113は、被影響エンティティの入力を受け付ける。被影響エンティティは、影響を受けるエンティティを表し、例えば影響度算出部112は、少なくとも被影響エンティティに対する他のエンティティの影響度を求める処理を行う。狭義には、被影響エンティティとは、NPIの算出対象となるネットワークの起点(最下位ノード)に対応するエンティティである。図8の例であれば、被影響エンティティはエンティティZ1に対応する。
【0078】
図11Bは、被影響エンティティの選択操作を受け付ける表示画面の例である。図11Bに示すように、表示画面は、被影響エンティティを入力可能な領域を有する。被影響エンティティの入力を受け付けることによって、NPIの算出対象となるネットワークを特定できる。例えば影響度算出部112は、後述する図17のステップS201に示すように、記憶部120に記憶されたエンティティネットワーク121のうち、選択された被影響エンティティを起点とするネットワークを抽出する。以下、エンティティネットワーク121の少なくとも一部であって、被影響エンティティを起点とするネットワークを抽出ネットワークと表記する。抽出ネットワークの特定処理については後述する。
【0079】
なおここでは、被影響エンティティへの影響度に基づいて、戦略実行エンティティによる戦略を評価することを想定している。そのため、戦略実行エンティティは、被影響エンティティへ影響を及ぼすことができることが必要となる。換言すれば、戦略実行エンティティに対応するノードは、被影響エンティティを表すノードとの間にパスを有する上位側のノードである。なおここでは、第1ノードに対応するエンティティが、第2ノードに対応するエンティティに影響を与える場合、第1ノードを第2ノードの上位ノードと表記する。被影響エンティティを起点として上位ノードを順次たどることによって戦略実行エンティティに到達できる場合、戦略実行エンティティは被影響エンティティの上位側のノードとなる。
【0080】
よって戦略決定部113は、記憶部120に記憶されるエンティティネットワーク121から、被影響エンティティの候補となるノードを抽出する処理を行ってもよい。例えば戦略決定部113は、戦略実行エンティティに対応するノードを起点として、下位ノードを順次抽出し、抽出されたノードに対応するエンティティを、被影響エンティティの候補として図11Bにおいて提示してもよい。あるいは戦略決定部113は、図11Bにおいていずれかのエンティティが被影響エンティティとして選択された場合、戦略エンティティと被影響エンティティとを結ぶパスが存在するかを判定してもよい。戦略決定部113は、パスが存在しない場合、被影響エンティティが不適切であるとしてエラー表示を行ってもよい。
【0081】
<ステップS104:戦略の提示>
ステップS104において、戦略決定部113は、選択可能な複数の戦略を提示する処理を行う。図11Cは、戦略を提示する表示画面の例である。図11Cに示すように、表示画面は、複数の戦略を表示し、且つ、その何れかを選択可能な領域を有する。
【0082】
以下、エンティティネットワーク121に含まれる複数のエンティティのうち、戦略実行エンティティ(第1エンティティ)による行動の対象となるエンティティを戦略対象エンティティ(第3エンティティ)と表記する。図11Cに示すように、選択可能な複数の戦略は、第1エンティティが第3エンティティと協調する協調戦略、及び、第1エンティティが第3エンティティと敵対する敵対戦略の少なくとも一方を含む。このようにすれば、エンティティ間の協調、敵対がエンティティネットワーク121に及ぼす影響を評価することが可能になる。敵対戦略とは、例えば投票において必ず相手と異なる行動を取ることを表す。協調戦略とは、例えば投票において必ず相手と同じ行動を取ることを表す。
【0083】
また図11Cに示すように、選択可能な複数の戦略は、第1エンティティが第3エンティティを買収する買収戦略、及び、第1エンティティが第3エンティティを売却する売却戦略をさらに含んでもよい。このようにすれば、エンティティの売却または買収がエンティティネットワーク121に及ぼす影響を評価することが可能になる。
【0084】
<ステップS105:戦略選択の受け付け>
ステップS105において、戦略決定部113は、提示した複数の戦略のうちのいずれかを選択するユーザ入力を受け付ける。図11Cの例であれば、選択される戦略は、敵対戦略、協調戦略、売却戦略、買収戦略の何れかである。
【0085】
<ステップS106:戦略対象エンティティの受け付け>
ステップS106において、戦略決定部113は、戦略対象エンティティの選択を受け付ける処理を行う。図12Aは、戦略として敵対戦略が選択された場合の、戦略対象エンティティの選択操作を受け付ける表示画面の例である。図12Aに示すように、表示画面は、敵対するエンティティを入力可能な領域を有する。
【0086】
なお戦略対象エンティティは、エンティティネットワーク121に含まれるすべてのエンティティから選択可能であってもよい。あるいは、戦略決定部113は、戦略対象エンティティの候補を抽出し、抽出結果を提示する処理を行ってもよい。例えば、ここでは被影響エンティティを選択し、少なくとも被影響エンティティへの影響度が判定される。そのため、戦略対象エンティティが被影響エンティティへのパスを有さない場合、戦略が実行されても影響度が変化せず、戦略を評価する意義が小さい。よって戦略決定部113は、エンティティネットワーク121のうち、被影響エンティティへのパスを有する上位ノードに対応するエンティティを、戦略対象エンティティの候補として提示してもよい。例えば、影響度算出部112は、図17のステップS201を用いて後述する抽出ネットワークの抽出処理を、ステップS102の後、且つ、ステップS106の前に実行しておいてもよい。そして戦略決定部113は、抽出ネットワークに含まれるノードに対応するエンティティを、戦略対象エンティティの候補として提示する。
【0087】
図12Bは、戦略対象エンティティの選択操作が行われた場合の表示画面の例である。図12Bに示す例では、ユーザは、エンティティAがエンティティCと敵対する敵対戦略を、エンティティBに対する影響度に基づいて評価することを情報処理システム10に依頼したことになる。これにより、処理に必要な情報が特定されたため、例えば表示画面には評価開始ボタンが表示され、ユーザが当該ボタンの選択操作を行うことによって、図10のステップS107以降の処理が開始される。
【0088】
なお、選択される戦略が敵対戦略以外である場合も、ステップS106の処理は同様である。例えば図13は、戦略として協調戦略が選択された場合の、戦略対象エンティティの選択操作を受け付ける表示画面の例である。図13に示すように、表示画面は、協調するエンティティを入力可能な領域を有する。戦略決定部113は、敵対戦略の場合と同様に、戦略対象エンティティの候補を抽出する処理を行ってもよい。
【0089】
図14は、戦略として売却戦略が選択された場合の、戦略対象エンティティの選択操作を受け付ける表示画面の例である。図14に示すように、表示画面は、売却するエンティティを入力可能な領域を有する。なお、売却戦略における戦略対象エンティティは、戦略実行エンティティが保有するエンティティでなければ、そもそも戦略を実行することができない。よって戦略決定部113は、戦略実行エンティティが保有するエンティティを、戦略実行エンティティの候補として抽出、提示する処理を行ってもよい。
【0090】
また売却戦略においては、売却対象のエンティティを、いずれの売却先に売却するかによって、各エンティティの投資関係が変化する。よって図14には不図示であるが、戦略決定部113は、売却先となるエンティティを入力可能な領域を有する画面を表示してもよい。
【0091】
また、ここでは詳細な図示を省略するが、戦略決定部113は、戦略として買収戦略が選択された場合、買収先を表す戦略対象エンティティの選択操作を受け付ける表示画面を表示し、ユーザ選択を受け付ける処理を行う。
【0092】
<ステップS107:戦略解釈>
ステップS107において、戦略解釈部114は、図10のステップS105で受け付けた戦略を解釈する処理を行う。具体的には、戦略解釈部114は、戦略に基づいて、影響度算出における制約条件を求める処理を行う。制約条件は、Shapley-Shubik指数やNPIにおいて、ピボット投票者を決定する処理を変更する情報である。
【0093】
エンティティPの株主の集合をQ1、…、Qkとし、それぞれの持ち株比率をq1、…、qkとする。kは2以上の整数である。影響度の算出は、図8及び図9を用いて上述したように、Q1~Qkを所与の順に並べた並び順Q1’~Qk’に対して、ピボット投票者を特定する処理を含む。
【0094】
ここでは、戦略実行エンティティがエンティティAであり、被影響エンティティがエンティティBであり、戦略対象エンティティがエンティティCである例について説明する。なお、売却戦略における売却対象と売却先のように、戦略対象エンティティが複数である場合、複数の戦略対象エンティティをそれぞれエンティティC1、エンティティC2、…と表記する。
【0095】
エンティティAがエンティティCと協調する協調戦略においては、ピボット投票者の特定処理に、以下の制約条件が追加される。
(協調制約条件1)エンティティAのみが、あるQsと一致するとき、QsをA&Cと書き換え、その持ち株比率をqsとする。ここでsは1以上k以下の整数である。
(協調制約条件2)エンティティCのみが、あるQtと一致するとき、QtをA&Cと書き換え、その持ち株比率をqtとする。ここでtは1以上k以下の整数である。
(協調制約条件3)エンティティAとエンティティCの両方がそれぞれQs、Qtと一致するとき、Qs及びQtを削除し、A&Cを挿入する。A&Cの持ち株比率はqs+qtとする。
なお制約条件におけるエンティティAとは、他のエンティティを表すノードのラベルが、エンティティAに置き換えられたものを含む。制約条件におけるエンティティCについても同様である。
【0096】
以上のように、協調戦略では、エンティティAに対応するノード及びエンティティCに対応するノードが、エンティティA&Cに対応するノードに置き換えられる。協調戦略では、エンティティAとエンティティCが所与の議題について完全に協調して投票を行うため、エンティティA及びエンティティCは、株式を共有する1つのエンティティであるエンティティA&Cと見なすことができる。
【0097】
そのため、上記(協調制約条件1)に示すように所与のエンティティPの株主にAのみが含まれる場合、エンティティA&CがエンティティAに対応する持ち株比率を有すると解釈できる。同様に、(協調制約条件2)に示すように所与のエンティティPの株主にCのみが含まれる場合、エンティティA&CがエンティティCに対応する持ち株比率を有すると解釈できる。また(協調制約条件3)に示すように、所与のエンティティPの株主にAとCの両方が含まれる場合、エンティティA&Cの持ち株比率は、エンティティAとエンティティCの持ち株比率の合計になると解釈できる。
【0098】
図15Aは、協調戦略の解釈結果である制約条件を例示する図であり、上記(協調制約条件3)の場合の具体例である。なお図15Aは、抽出ネットワークのうちの隣接する2つの階層の一例を表す。図15AのエンティティPは、被影響エンティティであるエンティティBであってもよいし、エンティティBよりも上位のエンティティであってもよい。この点は、図15B図16Bにおいても同様である。
【0099】
図15Aにおいて、Pの株主はA,Q,Cの3つであり、持ち株比率はq1,q2,q3であったとする。この場合、Pの株主に戦略実行エンティティであるエンティティAと、戦略対象エンティティであるエンティティCが含まれるため、A及びCに対応するノードが削除される。また新たに、エンティティA&Cに対応するノードが追加され、エンティティA&Cの持ち株比率はq1+q3に設定される。
【0100】
影響度算出部112は、エンティティA&Cによる影響度を、エンティティAによる影響度として求める。例えば影響度算出部112は、NPI(A&C,P)の値を求め、当該値をNPI(A,P)の値とする。エンティティネットワーク121が複雑な関係を有する場合でも同様であり、ピボット投票者を決定するそれぞれの処理において、上述した制約条件を用いることによって、協調戦略を考慮した影響度の算出が可能である。
【0101】
またエンティティAがエンティティCと敵対する敵対戦略においては、ピボット投票者の特定処理に、以下の制約条件が追加される。
(敵対制約条件1)並び順Q1’~Qn’においてピボット投票者が決まる前にエンティティAが出現したら、エンティティCを並び順から削除する。
(敵対制約条件2)並び順Q1’~Qn’においてピボット投票者が決まる前にエンティティCが出現したら、エンティティAを並び順から削除する。
【0102】
ピボット投票者の特定では、持ち株比率の合計が初めて閾値を超える投票者がピボット投票者となる。これは、それ以前の投票者と同じ投票を行った場合に、ピボット投票者による投票によって得票が目標値を超えることを意味する。これに対して、エンティティAとエンティティCが完全に敵対する場合、エンティティAとエンティティCは異なる投票を行う。例えば、議題への賛成/反対が問われた場合、一方が賛成すれば他方は反対する。また代表者の選任投票であれば、エンティティAが投票する候補者と、エンティティCが投票する候補者は異なる。即ち、敵対戦略をとった場合、エンティティAとエンティティCの一方が、他方の投票に同調することによって、得票が目標値を超えるという状況が考えられない。
【0103】
よって影響度算出部112は、上述した(敵対制約条件1)及び(敵対制約条件2)に示すように、ピボット投票者の特定処理において、一方が出現した場合に他方を並び順から除外する処理を行う。これにより、エンティティAとエンティティCの敵対を、制約条件として適切に表現することが可能になる。
【0104】
図15Bは、敵対戦略の解釈結果である制約条件を例示する図である。図15Bにおいて、Pの株主はA,Q,Cの3つであり、持ち株比率はq1,q2,q3である。この場合、並び順としては図示した6パターンが考えられる。パターン1、2及び5では、並び順においてエンティティAが先に出現するため、並び順からエンティティCが除外される。同様に、パターン3、4及び6では、並び順においてエンティティCが先に出現するため、並び順からエンティティAが除外される。
【0105】
また、エンティティAがエンティティCを買収する買収戦略においては、ピボット投票者の特定処理に、以下の制約条件が追加される。
(買収制約条件1)エンティティCのみが、あるQsと一致するとき、QsのラベルをエンティティAに書き換える。
(買収制約条件2)エンティティAとエンティティCの両方がそれぞれQs、Qtと一致するとき、Qtは削除し、Qsの持ち株比率をqs+qtとする。
【0106】
以上のように、買収戦略では、エンティティCに対応するノードのラベルが、エンティティAに置き換えられる。また、置き換えの結果、ラベルとしてエンティティAが付されたノードが複数存在する場合、当該複数のノードがまとめられる。このようにすれば、エンティティAによる買収を制約条件として適切に表現することが可能になる。
【0107】
図16Aは、買収戦略の解釈結果である制約条件を例示する図であり、上記(買収制約条件2)の場合の具体例である。図16Aにおいて、Pの株主はA,Q,Cの3つであり、持ち株比率はq1,q2,q3であったとする。この場合、Pの株主に戦略実行エンティティであるエンティティAと、買収対象となるエンティティCが含まれるため、Cに対応するノードが削除される。またエンティティAの持ち株比率はq1+q3に設定される。
【0108】
また、エンティティAが、エンティティC1をエンティティC2に売却する売却戦略においては、ピボット投票者の特定処理に、以下の制約条件が追加される。
(売却制約条件1)エンティティC1が、あるQsと一致するとき、QsをエンティティC2に書き換える。
(売却制約条件2)エンティティC1とエンティティC2の両方がそれぞれQs、Qtと一致するとき、Qsは削除し、Qtの持ち株比率をqs+qtとする。
【0109】
以上のように、売却戦略では、エンティティC1に対応するノードのラベルが、エンティティC2に置き換えられる。また、置き換えの結果、ラベルとしてエンティティC2が付されたノードが複数存在する場合、当該複数のノードがまとめられる。このようにすれば、エンティティC1のエンティティC2への売却を、制約条件として適切に表現することが可能になる。
【0110】
図16Bは、売却戦略の解釈結果である制約条件を例示する図であり、上記(売却制約条件2)の場合の具体例である。図16Bにおいて、Xの株主はA,C1,C2の3つであり、持ち株比率はq1,q2,q3であったとする。売却されるエンティティであるエンティティC1と、売却先であるエンティティC2が、Xの株主に含まれるため、C1に対応するノードが削除される。またエンティティC2の持ち株比率はq2+q3に設定される。
【0111】
<ステップS108:影響度算出>
ステップS106までの処理によって、戦略実行エンティティ、被影響エンティティ、戦略、戦略対象エンティティが決定された。またステップS107の処理によって、戦略が影響算出処理における制約条件に変換された。よってステップS108において、影響度算出部112は、戦略評価に用いられる影響度を算出する処理を行う。
【0112】
図17は、ステップS108の影響度算出処理を説明するフローチャートである。まずステップS201において、影響度算出部112は、被影響エンティティを起点とするネットワークを、抽出ネットワークとして抽出する処理を行う。
【0113】
例えば影響度算出部112は、まず被影響エンティティに対応するノードを特定し、当該ノードを抽出ネットワークに追加する処理を行う。次に影響度算出部112は、新たに抽出ネットワークに追加されたノードのそれぞれについて、当該ノードに直接接続する上位ノードを、抽出ネットワークに追加するノード追加処理を、繰り返し実行する。例えば、被影響エンティティを表すノードが追加された直後であれば、被影響エンティティに直接出資する株主を表すノードが、抽出ネットワークに追加される。その次のノード追加処理では、被影響エンティティの株主の株を保有する株主、即ち、被影響エンティティの2層上のエンティティを表すノードが抽出ネットワークに追加される。3層目以降も同様である。影響度算出部112は、所与の終了条件が満たされるまで、ノード追加処理を繰り返し、当該終了条件が満たされたときの抽出ネットワークを取得する。このようにすれば、被影響エンティティに影響を与える可能性のあるノードからなるネットワークを、抽出ネットワークとして抽出することが可能になる。
【0114】
なお、ここでの終了条件は、新たに抽出ネットワークに追加されたノードのすべてについて、当該ノードに直接接続する上位ノードが存在しないことであってもよい。このようにすれば、被影響エンティティへのパスを有するエンティティは、被影響エンティティまでのパス長が長いものも含めて、抽出ネットワークに追加されることになる。あるいは影響度算出部112は、ノード追加処理を所定回数実行した場合に、終了条件が満たされたと判定してもよい。この場合、被影響エンティティから所定階層上までのエンティティが、抽出ネットワークに含まれる。
【0115】
次にステップS202において、影響度算出部112は、抽出ネットワークを対象として、影響度を求める。例えば影響度算出部112は、抽出ネットワークを対象として図8及び図9を用いて上述した処理を行うことによって、影響度としてNPIを求める。ここでの影響度は、戦略実行エンティティによる戦略が考慮されていない影響度である。以下、戦略実行前の影響度を第1影響度と表記する。例えば影響度算出部112は、抽出ネットワークに含まれる2つのエンティティX,Yのすべての順列について、NPI(X,Y)を求める処理を行う。以下、エンティティXのエンティティYに対する第1影響度を、NPI_BEFORE(X,Y)と表記する。
【0116】
ステップS203において、影響度算出部112は、図15A図16Bを用いて上述した制約条件を考慮した上で、影響度を求める。ここでの影響度は、戦略実行エンティティが戦略を実行した場合の影響度である。以下、戦略を実行した場合の影響度を第2影響度と表記する。例えば影響度算出部112は、制約条件を反映した上で、抽出ネットワークに含まれる2つのノードX,Yのすべての順列について、NPI(X,Y)を求める処理を行う。以下、エンティティXのエンティティYに対する第2影響度を、NPI_AFTER(X,Y)と表記する。
【0117】
<ステップS109:戦略の評価>
評価処理部115は、第1影響度と第2影響度に基づいて、選択された戦略を評価する処理を行う。例えば評価処理部115は、戦略実行前の戦略実行エンティティの被影響エンティティへの第1影響度と、戦略を実行した場合の戦略実行エンティティの被影響エンティティへの第2影響度の差分を求めてもよい。例えば、戦略実行エンティティをエンティティAとし、被影響エンティティをエンティティBとしたとき、評価処理部115は、下式(2)によってΔ(A,B)を求めてもよい。Δ(X,Y)は、戦略前後における、エンティティXのエンティティYへの影響度の変化を表す。
Δ(A,B)=NPI_AFTER(A,B)-NPI_BEFORE(A,B)
…(2)
【0118】
評価処理部115は、影響度の増加度合いが大きいほど、戦略が有効であると判定する。例えば、評価処理部115は、Δ(A,B)の値が、0より大きい所与の閾値以上であれば、戦略が有効と判定してもよい。
【0119】
あるいは、評価処理部115は、他のエンティティの、被影響エンティティへの影響度の変化に関する評価を行ってもよい。図8及び図9を用いて上述したように、例えば影響度算出部112は、抽出ネットワークに含まれる被影響エンティティ以外のすべてのエンティティについて、当該エンティティの被影響エンティティへの影響度を算出可能である。よって以下では、各エンティティについて、被影響エンティティへの第1影響度及び第2影響度が算出されているものとして説明する。
【0120】
図18Aは、ステップS109で評価処理部115が実行する評価処理を説明するフローチャートである。まずステップS301において、評価処理部115は、抽出ネットワークに含まれる複数のエンティティのうち、何れか1つのエンティティを選択する。例えば、抽出ネットワークに含まれる被影響エンティティ(エンティティB)以外のエンティティをX1~Xnとする。nは2以上の整数である。評価処理部115は、ステップS301において、エンティティXiを選択する。iは1以上n以下の整数を表す。
【0121】
ステップS302において、評価処理部115は、第1影響度と第2影響度に基づいて、選択されたエンティティXiの、被影響エンティティへの影響度の変化を求める。具体的には、評価処理部115は、上式(2)と同様に、NPI_AFTER(Xi,B)からNPI_BEFORE(Xi,B)を減算することによってΔ(Xi,B)を求める。
【0122】
ステップS303において、評価処理部115は、影響度の変化度合いが閾値以上であるかを判定する。例えば、評価処理部115は、Δ(Xi,B)の絶対値を求める。評価処理部115は、当該絶対値が、0より大きい所与の閾値以上である場合に、影響度の変化が閾値以上と判定する。
【0123】
影響度の変化が閾値以上である場合、ステップS304において、評価処理部115は、選択されたエンティティであるXiをリストに追加する処理を行う。
【0124】
ステップS305において、評価処理部115は、抽出ネットワークに含まれるすべてのエンティティに対する処理を行ったかを判定する。未処理のエンティティが残っている場合、評価処理部115は、ステップS301に戻り、他のエンティティを対象として上述した処理を実行する。すべてのエンティティに対する処理が終了した場合、評価処理部115は図18Aに示す処理を終了し、作成したリストを提示処理部116に出力する。このリストは、戦略実行エンティティが戦略を実行した場合に、被影響エンティティへの影響度が大きく変化するエンティティのリストである。
【0125】
また評価処理部115は、図18Aに示す処理の後、図18Bに示す処理を実行してもよい。まずステップS401において、評価処理部115は、図18Aに示す処理において作成したリストから、1つのエンティティを選択する。例えば、リストに含まれるエンティティをX1’~Xm’とする。mは1以上n以下の整数であり、X1’~Xm’は、それぞれ、X1~Xnのうち、ステップS303の条件を満たしたものに対応する。評価処理部115は、ステップS401において、エンティティXj’を選択する。jは1以上m以下の整数を表す。
【0126】
ステップS402において、評価処理部115は、選択されたエンティティXj’を始点とし、被影響エンティティを終点とするパスを、抽出ネットワークから抽出する。ここでのパスは1つに限定されない。
【0127】
ステップS403において、評価処理部115は、抽出された1または複数のパスのうち、所与の条件を満たすクリティカルパスを選択する。例えば、クリティカルパスは、経路長が最も短いパスを表す。ここでの経路長は、例えば経由するノードの数であるが、何らかの重み付けに基づいて求められる距離であってもよい。またクリティカルパスは、経路上におけるエンティティの影響度に基づいて決定されてもよい。例えば評価処理部115は、各経路について、経路上のエンティティの影響度をすべて乗算した結果が最も大きい経路をクリティカルパスとして選択する。なおここでの影響度は、例えば各エンティティが被影響エンティティに対して有する影響度の変化であるΔ(Xi,B)であってもよいし、戦略実行時の影響度であるNPI_AFTER(Xi,B)であってもよいし、他の影響度であってもよい。
【0128】
ステップS404において、評価処理部115は、リストに含まれるすべてのエンティティについて処理を行ったかを判定する。未処理のエンティティが残っている場合、評価処理部115は、ステップS401に戻り、他のエンティティを対象として上述した処理を実行する。すべてのエンティティに対する処理が終了した場合、評価処理部115は図18Bに示す処理を終了する。図18Bに示す処理によって、リストに含まれる各エンティティについて、当該エンティティから被影響エンティティまでのクリティカルパスが対応付けられる。
【0129】
<ステップS110:提示処理>
ステップS110において、提示処理部116は、評価処理部115における評価結果をユーザに提示する処理を行う。
【0130】
例えば提示処理部116は、上式(2)を用いて求めたΔ(A,B)の数値を、端末装置200の表示部240に表示させる処理を行う。このようにすれば、戦略実行エンティティの被影響エンティティへの影響力の変化を分かりやすくユーザに提示することが可能である。例えばユーザは、Δ(A,B)の正負、及び値の大小に基づいて、選択された戦略が適切であるか否かを判定できる。ただし、戦略実行エンティティが戦略によってエンティティネットワーク121の他のエンティティの影響度がどのように変化したかという情報も、当該戦略を評価する上で有用である。よって提示処理部116は、他のエンティティの影響度に関する提示を行ってもよい。
【0131】
例えば提示処理部116は、第1影響度と第2影響度に基づいて、複数のエンティティのうち、戦略実行エンティティ(第1エンティティ)が選択戦略に対応する行動を行った場合に、被影響エンティティ(第2エンティティ)への影響度が所与の閾値以上変化する第4エンティティを提示する処理を行ってもよい。
【0132】
例えば、評価処理部115が図18Aに示す処理を行うことによって、X1’、X2’及びX3’の3つのエンティティが、戦略実行エンティティの戦略による影響度の変化が大きいと判定されたとする。この場合、提示処理部116は、エンティティX1’~X3’をユーザに提示する処理を行う。提示処理部116は、3つのエンティティの名称をリストで表示してもよい。
【0133】
あるいは提示処理部116は、エンティティネットワーク121において、第4エンティティを識別可能な態様で表示してもよい。このようにすれば、エンティティネットワーク121上で影響度の変化が大きいエンティティが図示されるため、当該エンティティと他のエンティティとのつながりを可視化することが可能である。
【0134】
図19は、提示処理部116が提示する画面の例である。図19においてBが被影響エンティティを表す。X1’~X3’が影響度の変化が閾値以上であるエンティティである。例えば所与の正の閾値をth1としたとき、Δ(X1’,B)>th1である。同様に、Δ(X2’,B)>th1、Δ(X3’,B)<-th1とする。
【0135】
図19において、X1’~X3’は、例えば対応するノードが所与の態様で表示される。例えば、提示処理部116は、影響度が大きく増加したX1’及びX2’を他のノードとは異なる第1態様で表示し、影響度が大きく減少したX3’を第2態様で表示する。提示処理部116は、例えばノードの色やサイズ、テキストの色やサイズ等に基づいて、表示態様を決定する。
【0136】
また提示処理部116は、第4エンティティから第2エンティティまでの複数の経路のうちのクリティカルパスを識別可能な態様で提示してもよい。クリティカルパスは、上述したように、例えば経路長、及び、経路上におけるエンティティの影響度の少なくとも一方に基づいて決定される。このようにすれば、影響度の変化が大きいエンティティが、どのような経路によって被影響エンティティへ影響を及ぼしているかを分かりやすく図示できる。
【0137】
図19に示す例では、エンティティX1’についてX2を含む経路が図示され、エンティティX2’についてX3を含む経路が図示され、エンティティX3’についてX4を含む経路が図示されている。
【0138】
また図19に示すように、提示処理部116は、影響度の変化によらず、被影響エンティティに直接接続するエンティティを表示する処理を行ってもよい。図19の例では、被影響エンティティであるエンティティBに直接接続するエンティティは、X1~X5の5つである。提示処理部116は、X1~X5に対応する5つのノードを表示する。このようにすれば、被影響エンティティの直接投資関係を可視化することが可能になる。
【0139】
なお提示処理部116は、第4エンティティ(X1’~X3’)以外の各エンティティに対応するノードについても、影響度の変化に応じた態様で表示する処理を行ってもよい。例えば、影響度が小さく増加するエンティティを表すノードは第3態様で表示され、影響度が小さく減少するエンティティを表すノードは第4態様で表示される。例えば、0<th2<th1を満たす第2閾値th2を考えたとき、th2<Δ(xi,B)≦th1を満たすエンティティXiは、影響度が小さく増加したと判定され、第3態様で表示される。-th1≦Δ(Xi,B)<-th2を満たすエンティティXiは、影響度が小さく減少したと判定され、第4態様で表示される。
【0140】
また、提示処理部116は、影響度の変化が非常に小さいエンティティを第5態様で表示してもよい。例えば、-th2≦Δ(Xi,B)≦th2を満たすエンティティXiは、影響度の変化が非常に小さいと判定され、第5態様で表示される。
【0141】
ここで第1態様に対応するノードは濃い赤色で表示され、第2態様に対応するノードは濃い青色で表示されてもよい。同様に、第3態様に対応するノードは薄い赤色で表示され、第4態様に対応するノードは薄い青色で表示され、第5態様に対応するノードは白色で表示されてもよい。このように、色相を用いて影響度の増加/減少を表し、彩度及び明度の少なくとも一方を用いて影響度の変化度合いを表すことによって、影響度の変化を分かりやすく可視化することが可能である。ただし、表示態様は以上に限定されず、影響度の増減やその度合いを表現可能であれば種々の変形実施が可能である。
【0142】
国家戦略や企業戦略の有効性を考えるとき、その評価軸は種々考えられるが、投資関係に基づく「資本支配力」という観点からの評価は、戦略の具体的な効果を測るうえで大きな意味がある。以上で説明した本実施形態の手法によれば、投資関係が非常に複雑になった場合にも、当該関係を適切に把握し、戦略による関係変化を評価することが可能である。
【0143】
その際、図11Cに示すように複数の戦略を提示することによって、戦略実行エンティティが実行可能な戦略をわかりやすく提示できる。例えば、戦略実行エンティティに適した戦略を抽出、提示することによって、評価をする意義のある戦略を評価対象とすることが可能になる。また、提示した複数の戦略のいずれかの選択を受け付けることによって、戦略の選択にユーザの意図を反映させることが可能になる。
【0144】
さらに、図15A図16Bに示すように、選択された戦略を制約条件という形に適切に解釈することによって、当該戦略による変化を適切に影響度算出処理に反映することが可能になる。また図19等に示すように、評価結果を可視化することによって、戦略の評価結果をユーザに理解させやすくすることが可能である。
【0145】
特に、NPIを用いる手法では、「子会社の子会社による出資」、「取引会社の取引相手の取引相手」のような間接的な関係性まで考慮できる。その際、図19等に示す本実施形態の手法であれば、被影響エンティティから遠く離れたエンティティの影響度変化の提示、被影響エンティティまでの具体的なパスの提示が行われる。そのため、上記の間接的な関係性まで考慮した定量的な評価結果を、ネットワーク上のつながりを含めて分かりやすく可視化できる。
【0146】
なお、本実施形態の情報処理システム10は、その処理の一部または大部分をプログラムにより実現してもよい。この場合には、CPU等のプロセッサがプログラムを実行することで、本実施形態の情報処理システム10が実現される。具体的には、非一時的な情報記憶媒体に記憶されたプログラムが読み出され、読み出されたプログラムをCPU等のプロセッサが実行する。ここで、情報記憶媒体(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、その機能は、光ディスク、HDD、或いはメモリなどにより実現できる。そして、CPU等のプロセッサは、情報記憶媒体に格納されるプログラムに基づいて本実施形態の種々の処理を行う。即ち、情報記憶媒体には、本実施形態の各部としてコンピュータ(操作部、処理部、記憶部、出力部を備える装置)を機能させるためのプログラムが記憶される。
【0147】
また本実施形態の手法は、以下の各ステップを実行する情報処理方法に適用できる。情報処理方法は、投資関係に基づいて、第1エンティティ及び第2エンティティを含む複数のエンティティに対応する複数のノードが接続されたエンティティネットワークを取得し、所与の企業または所与の国家である第1エンティティによる将来的な行動を表す複数の戦略を提示し、提示された複数の戦略のうちのいずれかの選択を受け付けることで選択戦略を決定し、選択戦略に基づいて、制約条件を決定し、エンティティネットワークに基づいて、制約条件がない場合の第2エンティティへの影響度である第1影響度を算出し、エンティティネットワークに基づいて、制約条件が与えられた場合の第2エンティティへの影響度である第2影響度を算出し、第1影響度と第2影響度の比較処理に基づいて選択戦略の評価を行う。
【0148】
3.変形例
3.1 処理フローに関する変形例
以上では、図10のステップS105及びS106に示したように、戦略決定部113は、戦略の選択を受け付けた後に、当該戦略における戦略対象エンティティの選択を受け付ける例について説明した。戦略に応じて戦略対象エンティティの候補が限定されるため、例えば戦略決定部113は、当該候補を抽出、提示する処理を行ってもよい。ただし処理の順序はこれに限定されない。
【0149】
例えば戦略対象エンティティの入力を受け付けた後に、選択可能な戦略の提示及び受付が行われてもよい。この場合、戦略決定部113は、戦略実行エンティティと戦略対象エンティティの関係に応じて、選択可能な戦略を絞り込む処理を行ってもよい。例えば、戦略実行エンティティが戦略対象エンティティの株式を保有していない場合、売却戦略は実行不可であるため、ユーザへの提示対象から除外されてもよい。また、戦略実行エンティティが戦略対象エンティティの株式の過半数を保有している場合、敵対戦略をとることは不合理であるし、協調戦略を意図的にとる意義も少ない。よってこの場合、戦略決定部113は、敵対戦略及び協調戦略を提示対象から除外してもよい。
【0150】
その他、被影響エンティティの選択を受け付けた後に、戦略実行エンティティの選択を受け付ける等、図10は処理の一例であって、具体的な処理フローは、種々の変形実施が可能である。
【0151】
3.2 評価処理及び提示処理に関する変形例
図18A図19では、影響を受ける側である被影響エンティティを固定し、当該被影響エンティティに対する各エンティティの第1影響度及び第2影響度に基づいて、評価処理及び提示処理を行う例を説明した。上述した例においては、エンティティBを被影響エンティティとしたときに、評価処理部115は、NPI_AFTER(A,B)とNPI_BEFORE(A,B)の差分であるΔ(A,B)や、NPI_AFTER(Xi,B)とNPI_BEFORE(Xi,B)の差分であるΔ(Xi,B)に基づいて評価を行った。ただし本実施形態の手法はこれに限定されない。
【0152】
例えば、影響を与える側のエンティティを選択し、選択されたエンティティの、他の各エンティティに対する第1影響度及び第2影響度に基づいて、評価処理及び提示処理が行われてもよい。以下、影響を与える側のエンティティとして、戦略実行エンティティを用いる例について説明する。このようにすれば、所与の国や企業が戦略を採用した場合に、当該国や企業の影響度がどのように変化するかを評価することが可能になる。ただし、影響を与える側のエンティティは、戦略実行エンティティ以外のエンティティから選択されることは妨げられない。
【0153】
図20Aは、評価処理部115における処理を説明するフローチャートである。なお図10と同様に、評価処理部115の処理前に、影響度算出部112によって第1影響度及び第2影響度が算出されているものとする。例えば、第1影響度及び第2影響度は、被影響エンティティを起点とする抽出ネットワークを対象として算出される。
【0154】
ステップS501において、評価処理部115は、抽出ネットワークに含まれる複数のエンティティのうち、何れか1つのエンティティを選択する。例えば戦略実行エンティティをエンティティAとし、被影響エンティティをエンティティBとし、その他のエンティティをX1~Xnとしたとき、評価処理部115は、Xiを選択する。上述した例と同様に、nは2以上の整数であり、iは1以上n以下の整数である。
【0155】
ステップS502において、評価処理部115は、選択されたエンティティXiに対する、戦略実行エンティティの第1影響度と第2影響度の差分を、影響度の変化度合いとして求める。評価処理部115は、NPI_AFTER(A,Xi)からNPI_BEFORE(A,Xi)を減算することによってΔ(A,Xi)を求める。
【0156】
ステップS503において、評価処理部115は、抽出ネットワークに含まれるすべてのエンティティに対する処理を行ったかを判定する。未処理のエンティティが残っている場合、評価処理部115は、ステップS501に戻り、他のエンティティを対象として上述した処理を実行する。これにより、Δ(A,X1)~Δ(A,Xn)が求められる。すべてのエンティティに対する処理が終了した場合、評価処理部115は図20Aに示す処理を終了し、求めたΔ(A,X1)~Δ(A,Xn)を提示処理部116に出力する。
【0157】
図21は、図20Aに示す評価処理に基づいて、提示処理部116が提示する画面の例である。図21におけるエンティティAが戦略実行エンティティに対応し、X1~X13は、戦略実行エンティティ以外のエンティティを表す。
【0158】
図21に示すように、提示処理部116は、戦略実行エンティティ以外の複数のエンティティのそれぞれについて、影響度の増加/減少/変化なしと、増加または減少の場合の変化度合いを可視化してもよい。図21の例では、図19と同様に、影響度の増加度合いが大きいエンティティに対応するノードが第1態様で表示され、影響度の減少度合いが大きいエンティティに対応するノードが第2態様で表示される。また、影響度の増加度合いが小さいエンティティに対応するノードが第3態様で表示され、影響度の減少度合いが小さいエンティティに対応するノードが第4態様で表示され、影響度の変化度合いが0に近いエンティティに対応するノードが第5態様で表示される。ただし、表示態様に種々の変形実施が可能である点は、図19と同様である。
【0159】
図20Aに示す評価処理、及び、図21に示す提示処理を行うことによって、戦略実行エンティティ(エンティティA)の他のエンティティ(エンティティX1~Xn)への影響度がどのように変化するかを、エンティティネットワーク121を用いて分かりやすく可視化される。結果として、評価対象となる戦略が戦略実行エンティティにとってどのような効果をもたらすかを、ユーザに分かりやすく提示できる。
【0160】
またエンティティネットワーク121に含まれる複数のエンティティのうち、戦略実行エンティティ(第1エンティティ)及び被影響エンティティ(第2エンティティ)のいずれとも異なるエンティティを注目エンティティ(第5エンティティ)とする。ここで、戦略実行エンティティの他のエンティティに対する影響度と、注目エンティティの当該他のエンティティに対する影響度に基づいて求められる相対的な影響度を相対影響度とする。なお相対影響度は、例えば下式(3)を用いて後述するように、2つの影響度の差分であるが、これには限定されない。例えば、相対影響度は、2つの影響度の比であってもよいし、他の情報であってもよい。提示処理部116は、第1影響度と第2影響度に基づいて、相対影響度の変化を表示してもよい。以下、図20B及び図22を用いて詳細に説明する。このように、相対的な影響度の変化を用いることによって、戦略が有効か否かをより適切に評価すること、及び、その評価結果を提示することが可能になる。
【0161】
図20Bは、評価処理部115における他の処理を説明するフローチャートである。ステップS601において、評価処理部115は、抽出ネットワークに含まれる複数のエンティティから注目エンティティを選択する。例えば評価処理部115は、注目エンティティを選択するユーザ操作を受け付けてもよい。ここでの注目エンティティとは、戦略実行エンティティにとって注目すべきエンティティであり、例えば戦略実行エンティティと敵対するエンティティである。
【0162】
例えば戦略実行エンティティをエンティティAとし、被影響エンティティをエンティティBとし、注目エンティティをエンティティDとし、それ以外のエンティティをX1~Xnとする。なお、図15A等においては戦略対象エンティティをエンティティCと表記し、以下では注目エンティティをエンティティDと表記するが、これは戦略対象エンティティと注目エンティティが異なるエンティティであることを限定するものではない。例えば本実施形態の手法では、1つのエンティティが戦略対象エンティティと注目エンティティを兼ねてもよい。例えば、エンティティAがエンティティCと敵対する敵対戦略をとる場合に、エンティティCが以下で説明する注目エンティティとして選択されてもよいし、他のエンティティが注目エンティティとして選択されてもよい。
【0163】
ステップS602において、評価処理部115は、抽出ネットワークに含まれる複数のエンティティのうち、何れか1つのエンティティを選択する。例えば評価処理部115は、エンティティXiを選択する。
【0164】
ステップS603において、評価処理部115は、選択されたエンティティXiに対する、戦略実行エンティティの第1影響度と第2影響度の差分を、影響度の変化度合いとして求める。具体的には評価処理部115は、NPI_AFTER(A,Xi)からNPI_BEFORE(A,Xi)を減算することによってΔ(A,Xi)を求める。
【0165】
ステップS604において、評価処理部115は、選択されたエンティティXiに対する、注目エンティティの第1影響度と第2影響度の差分を、影響度の変化度合いとして求める。具体的には評価処理部115は、NPI_AFTER(D,Xi)からNPI_BEFORE(D,Xi)を減算することによってΔ(D,Xi)を求める。
【0166】
ステップS605において、評価処理部115は、ステップS603で求めた差分値と、ステップS604で求めた差分値の差分を求める。例えば評価処理部115は、下式(3)に基づいて、Δ(Xi)を求める。
Δ(Xi)=Δ(A,Xi)-Δ(D,Xi) …(3)
【0167】
ステップS606において、評価処理部115は、エンティティX1~Xnのすべてに対する処理を行ったかを判定する。未処理のエンティティが残っている場合、評価処理部115は、ステップS602に戻り、未処理のエンティティを対象として上述した処理を実行する。即ち、評価処理部115は、Δ(X1)~Δ(Xn)を求める。すべてのエンティティに対する処理が終了した場合、評価処理部115は図20Bに示す処理を終了し、求めたΔ(X1)~Δ(Xn)を提示処理部116に出力する。
【0168】
例えば、戦略実行エンティティであるエンティティAが、注目エンティティであるエンティティDと敵対している場合、エンティティDによる各エンティティへの影響度の変化も戦略を評価する上で重要である。例えば、戦略によってエンティティAによる所与のエンティティXiへの影響度が増加したとしても、エンティティDによる当該所与のエンティティXiへの影響度がそれ以上に増加していた場合、Xiに関するDとの競争においてAは不利となる。一方、戦略によってエンティティAによる所与のエンティティXiへの影響度が減少したとしても、エンティティDによる当該所与のエンティティXiへの影響度がそれ以上に減少していた場合、Xiに関するDとの競争においてAは有利となる。即ち、Δ(Xi)が正の値の場合、エンティティAの相対的な影響度が増加したことを表し、Δ(Xi)が負の値の場合、エンティティAの相対的な影響度が減少したことを表す。
【0169】
図20Bに示すように、Δ(A,Xi)に加えてΔ(D,Xi)を用いた評価処理を行うことによって、注目エンティティとの間の相対的な影響度の変化に基づいて、戦略を評価することが可能になる。
【0170】
図22は、図20Bに示す評価処理に基づいて、提示処理部116が提示する画面の例である。図22におけるエンティティAが戦略実行エンティティに対応する。エンティティDが注目エンティティに対応する。図21はエンティティネットワーク121の一部を表し、X1~X12は、当該一部のネットワークのうちの戦略実行エンティティ及び注目エンティティ以外のエンティティを表す。
【0171】
図22に示すように、提示処理部116は、複数のエンティティX1~X12について、Δ(X1)~Δ(X12)の値に基づいて、影響度の増加/減少/変化なしと、増加または減少の場合の変化度合いを可視化してもよい。表示手法は、図19図21と同様に種々の変形実施が可能である。例えば、提示処理部116は、X1~Xnのうち、変化量が閾値th1より大きいエンティティから、エンティティAやエンティティB等へのパスを図示してもよい。また提示処理部116は、X1~Xnのそれぞれに対応するノードを、Δ(Xi)の増加/減少、及び変化度合いに応じた態様で表示してもよい。
【0172】
なお図20B及び図22では省略しているが、評価処理部115は戦略実行エンティティの注目エンティティへの影響度の変化を算出してもよい。例えば評価処理部115は、NPI_AFTER(A,D)からNPI_BEFORE(A,D)を減算することによってΔ(A,D)を求め、当該Δ(A,D)を図示してもよい。
【0173】
あるいは、戦略を評価するための指標として、複数のXi(図21の例であればX1~X12)のそれぞれについて求められたΔ(Xi)の総和を用いてもよい。例えば評価処理部115は、Δ(X1)~Δ(Xn)の総和を指標値pとして求める。
【0174】
即ち、Δ(A,D)はエンティティAがエンティティDに及ぼす直接的な影響力の変化を表す。pは、エンティティAとエンティティDの相対的な影響力の変化を表す。例えば評価処理部115は、Δ(A,D)>0且つp>0の両方が満たされる場合に、選択された戦略が有効であると判定してもよい。
【0175】
3.3 戦略対象エンティティの提案
また以上では、図10のステップS105及びS106に示したように、戦略決定部113が、戦略の選択入力とともに、戦略対象エンティティの選択入力を受け付ける例について説明した。例えば、特定のエンティティと協調した場合の効果を知りたい、といったように、戦略の詳細が明確である場合に、上述した処理は好適である。ただし状況によっては、自身の影響度を増加させたい、敵対エンティティの影響度を減少させたいといった目標のみが決まっており、そのための具体的な戦略が未定の場合もある。
【0176】
よって戦略決定部113が複数の戦略のうちの何れかの選択を受け付けた場合に、評価処理部115は、複数のエンティティから、戦略対象エンティティ(第3エンティティ)の候補である複数の候補エンティティを抽出してもよい。影響度算出部112は、複数の候補エンティティのそれぞれについて、当該候補エンティティを戦略対象エンティティとした場合の第2影響度を算出する。評価処理部115は、第1影響度と第2影響度の比較処理に基づいて、複数の候補エンティティから第3エンティティを選択する処理を行う。このようにすれば、戦略対象エンティティの選択を情報処理システム10側でサポートできる。例えば情報処理システム10は、詳細が決まっていない戦略策定の初期段階においても、適切な評価結果をユーザに提示することが可能になる。以下、図23及び図24を用いて詳細に説明する。
【0177】
図23は、戦略対象エンティティを自動的に決定する処理を説明するフローチャートである。図23のステップS701~S706については、図10のステップS101~S105、S107と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0178】
ステップS707において、評価処理部115は、複数の候補エンティティを取得する。例えば評価処理部115は、抽出ネットワークに含まれる戦略実行エンティティ及び被影響エンティティ以外のすべてのエンティティを候補エンティティとしてもよいし、その一部を候補エンティティとしてもよい。また、評価処理部115は、ユーザによる候補エンティティの選択操作を受け付けてもよい。評価処理部115は、候補エンティティのうちの1つを仮の戦略対象エンティティとして選択する処理を行う。
【0179】
ステップS708において、影響度算出部112は、第1影響度を算出する処理を行う。またステップS708において、影響度算出部112は、選択された仮の戦略対象エンティティを用いて、第2影響度を算出する処理を行う。ここでの処理は、図17を用いて上述した処理と同様である。なお、第1影響度については戦略対象エンティティによらず一定であるため、第1影響度を算出する処理は1回行われればよい。
【0180】
ステップS709において、評価処理部115は、候補エンティティのすべてについて、処理を行ったかを判定する。未処理のエンティティが残っている場合、評価処理部115は、ステップS707に戻り、他の候補エンティティを仮の戦略対象エンティティとして選択する。
【0181】
すべての候補エンティティに対する処理が終了した場合、ステップS710において、評価処理部115は、影響度の算出結果に基づいて評価処理を行うことによって、複数の候補エンティティから推奨戦略対象エンティティを決定する。例えば、評価処理部115は、評価処理部115は、複数の候補エンティティについて、それぞれを戦略対象エンティティとしたときの評価値を求め、当該評価値が高い候補エンティティを推奨戦略対象エンティティとしてもよい。
【0182】
より具体的には、戦略実行エンティティをエンティティA、被影響エンティティをエンティティBとしたとき、評価処理部115は、NPI_AFTER(A,B)からNPI_BEFORE(A,B)を減算することによってΔ(A,B)を求め、その値が最大となる候補エンティティを、推奨戦略対象エンティティとしてもよい。あるいは、評価処理部115は、図20B及び図22を用いて上述したように注目エンティティDを特定し、Δ(A,D)やpに相当する指標値を求め、当該指標値が最大となる候補エンティティを、推奨戦略対象エンティティとしてもよい。
【0183】
以上のように、推奨戦略対象エンティティを決定する際には評価の高い候補エンティティを選択することが考えられる。しかし上述した例からも分かるように、評価の高低は評価基準に応じて異なる。例えば、Δ(A,B)、Δ(A,D)及びpのいずれを用いるかによって、推奨戦略対象エンティティが異なる可能性がある。
【0184】
よって評価処理部115は、複数の評価基準のうちのいずれかの選択を受け付けることで選択評価基準を決定してもよい。評価処理部115は、選択評価基準に従った比較処理に基づいて、複数の候補エンティティから戦略対象エンティティ(第3エンティティ)を選択する処理を行う。ここで複数の評価基準は、戦略実行エンティティ(第1エンティティ)の影響度の増加度合いを用いる第1評価基準、及び、戦略実行エンティティと敵対する敵対エンティティの影響度の減少度合いを用いる第2評価基準を含んでもよい。このようにすれば、ユーザ選択に応じた評価基準が用いられるため、ユーザに適した推奨戦略対象エンティティを提示することが可能になる。
【0185】
例えば、戦略実行エンティティをエンティティA、被影響エンティティをエンティティB、注目エンティティ(敵対エンティティ)をエンティティD、その他のエンティティをエンティティX1~Xnとする。第1評価基準における評価値は、例えばΔ(A,B)、Δ(A,Xi)、Δ(A,X1)~Δ(A,Xn)の総和等、戦略実行エンティティであるエンティティAの影響度の変化を表す値である。そして第1評価基準は、評価値が大きい場合に、評価が高くなる評価基準である。
【0186】
第2評価基準における評価値は、例えばΔ(D,B)、Δ(D,Xi)、Δ(D,X1)~Δ(D,Xn)の総和等、敵対エンティティの影響度の変化を表す値である。そして第2評価基準は、評価値が小さい場合に、評価が高くなる評価基準である。
【0187】
あるいは、複数の評価基準は、2つのエンティティの相対的な影響度の変化を用いる第3評価基準を含んでもよい。例えば第3評価基準における評価値は、上式(3)に示したΔ(Xi)や、Δ(X1)~Δ(Xn)の総和である。これらの評価値が用いられる場合、第3評価基準は、評価値が大きい場合に、評価が高くなる評価基準である。
【0188】
図24Aは評価基準を受け付ける際の表示画面の例である。図24Aに示すように、表示画面は、複数の評価基準がリストとして表示され、その何れかの選択操作を受け付け可能な領域を含む。
【0189】
ステップS711において、提示処理部116は、推奨戦略対象エンティティを提示する処理を行う。図24Bは、この場合の推奨戦略対象エンティティを提示する表示画面の例である。ここでは、評価基準として第1評価基準が選択され、評価処理部115は、第1評価基準に従って各候補エンティティを評価した結果、エンティティEを推奨戦略対象エンティティとして特定したとする。
【0190】
図24Bに示す表示画面は、推奨戦略対象エンティティが表示される領域を含む。このようにすれば、ユーザによる戦略対象エンティティの選択を受け付けなくても、推奨戦略対象エンティティを自動的に選択し、選択結果をわかりやすく提示することが可能になる。
【0191】
なお、以上では評価処理部115が、1つの推奨戦略対象エンティティを自動的に戦略対象エンティティとして決定する例を示したが、本実施形態の処理はこれに限定されない。例えば、評価処理部115は、評価値が閾値以上である候補エンティティのすべてを、推奨戦略対象エンティティとして決定してもよい。提示処理部116は、例えば複数の推奨戦略対象エンティティを表示し、その何れかの選択操作を受け付け可能であってもよい。
【0192】
戦略対象エンティティが決定された後の処理は、図10と同様であり、評価処理部115は影響度に基づいて評価処理を行い、提示処理部116は評価結果を提示する。ただし、図10のステップS108に対応する影響度算出処理は、ステップS708で実行済である。また図10のステップS109に対応する評価処理は、ステップS710で実行済である。よって、図23の処理では、改めて影響度算出処理及び評価処理を実行しなくてもよい。例えば、提示処理部116は、ステップS711の提示処理において、推奨戦略対象エンティティの提示に加えて、当該推奨戦略対象エンティティに基づく評価結果を提示してもよい。この場合の表示画面は、図19図21図22等、種々の画面を利用可能である。
【0193】
3.4 エンティティ及びエンティティネットワークの変形例
以上では、エンティティが人、企業、国家等であって、エンティティネットワークは複数のエンティティの資本による支配関係を表すネットワークである例について説明した。ただし本実施形態の手法はこれに限定されない。
【0194】
例えば本実施形態におけるエンティティは、委員会を含んでもよい。委員会とは、複数の人、企業、国家の集合であって、当該複数の人等の議決によって意思決定が行われる組織である。議決に加わるエンティティが、それぞれ一定の票を持っているとしたとき、ここでの影響力の強さは上述した例と同様に、Shapley-Shubik指数を用いて評価できる。
【0195】
例えば所与の委員会Aに複数のエンティティ(人、企業、又は国家等)が属する場合、当該複数のエンティティのそれぞれが委員会Aに及ぼす影響力は、例えば各エンティティが有する票数に基づいて演算されるShapley-Shubik指数で表現される。全エンティティが一定の票を持っている場合、Shapley-Shubik指数は均等な値となる。即ち、委員会をエンティティとして含むエンティティネットワークを取得し、当該エンティティネットワークに基づいて上述した例と同様の処理を行うことによって、例えば委員会に所属する所与の人や企業等の戦略によって、複数の委員会の間の影響力がどのように変化するか等を評価することが可能になる。
【0196】
また、委員会Aに所属する人aが、委員会Bの委員であるとする。人aは、例えば委員会Aの代表者である。そして人aは、委員会Bでの議決において、委員会Aでの議決結果に応じた意見に基づいて行動するとする。この場合、委員会Aでの議決結果が、委員会Bでの議決結果に影響を及ぼす。即ち、委員会Aは委員会Bに対して影響力を有する。即ち、委員会をエンティティとして含むエンティティネットワークを取得し、当該エンティティネットワークに基づいて上述した例と同様の処理を行うことによって、所与の委員会の戦略によって、複数の委員会の間の影響力がどのように変化するかを求めることが可能になる。
【0197】
例えば、サーバシステム100は、公開情報に基づいて、委員会に対応するノードを生成する。委員会を対象とする場合、ノードが有する属性は、例えば対象の委員会に所属する人等の情報や、当該委員会の代表者を表す情報を含む。そして、委員会Aに所属するエンティティが委員会Bに所属する場合、委員会Aと委員会Bは関係性を有するため、対応する2つのノードが、向きを有するエッジによって連結される。例えば、委員会Aの代表者が委員会Bに属する場合、委員会Aから委員会Bへ向かうエッジによって、2つのノードが連結される。
【0198】
例えば委員会Aに所属する人aが委員会Bの委員であって、委員会Bでは全委員が1票の投票が可能である場合、委員会Aによる委員会Bへの影響力は、1票という票数に基づいて求められる。なお、委員会Aに属する複数の人物が委員会Bの委員であって、当該複数の人物が委員会Aの議決結果に基づいて強調して行動する場合、委員会Aによる委員会Bへの影響力は、人数分の票数に基づいて求められてもよい。
【0199】
本変形例によれば、例えば複数の企業の集合体である標準化団体や、複数の国家が参加する国際機関等において、どのような戦略を行えば所望の結果を得られるかを評価することが可能になる。また所与の委員会に関係した戦略が、他の委員会等に及ぼす影響等を評価することが可能になる。例えば所与の委員会で有利になるための戦略が他の委員会で不利に働くため、総合的な戦略としては好ましくない、といったように、エンティティ間の複雑な関係を考慮した戦略策定が可能になる。
【0200】
3.5 戦略対象エンティティの数や組み合わせに関する変形例
以上では、戦略対象エンティティが1つである例について説明した。ただし、実際の場面では、複数の企業群と協調する戦略や、複数の企業群と敵対する戦略がとられることもある。また、所与の企業が、1または複数の企業とは協調しつつ、他の1または複数の企業と敵対するように、協調戦略と敵対戦略が同時に実行される可能性もある。
【0201】
よって本実施形態では、戦略対象エンティティとして、複数のエンティティが設定されてもよい。例えば、戦略実行エンティティが複数の戦略対象エンティティと協調戦略をとる場合、以下で再掲する協調制約条件1~3のエンティティCを複数のエンティティに拡張すればよい。即ち、戦略実行エンティティのみがあるQsと一致するとき、協調制約条件1の処理が実行され、複数の戦略対象エンティティのうちの何れか1つのみがあるQtと一致するとき、協調制約条件2の処理が実行される。そして、戦略実行エンティティと複数の戦略対象エンティティのうちの2以上が、Q1、…、Qkのうちの2以上と一致するとき、協調制約条件3の処理が実行される。この際、Q1、…、Qkのいずれかと一致するエンティティは3以上であってもよく、その場合の持ち株比率は、当該3つ以上のエンティティの持ち株比率の合計となる。
(協調制約条件1)エンティティAのみが、あるQsと一致するとき、QsをA&Cと書き換え、その持ち株比率をqsとする。ここでsは1以上k以下の整数である。
(協調制約条件2)エンティティCのみが、あるQtと一致するとき、QtをA&Cと書き換え、その持ち株比率をqtとする。ここでtは1以上k以下の整数である。
(協調制約条件3)エンティティAとエンティティCの両方がそれぞれQs、Qtと一致するとき、Qs及びQtを削除し、A&Cを挿入する。A&Cの持ち株比率はqs+qtとする。
【0202】
実行される戦略が協調戦略以外の場合も同様である。即ち、上述した敵対制約条件、買収制約条件、売却制約条件のそれぞれにおいて、戦略対象エンティティが2以上に拡張される。このようにすれば、戦略対象エンティティが2以上である場合であっても、戦略を適切に評価することが可能になる。
【0203】
また、種類の異なる複数の戦略を組み合わせる場合、対応する制約条件を表す処理があわせて実行される。例えば、所与の企業群Aと協調し、他の企業群Bと敵対する戦略がとられる場合、企業群Aに含まれる企業をエンティティCとして、協調制約条件1~3が実行され、且つ、企業群Bに含まれる企業をエンティティCとして敵対制約条件1~3が実行される。このようにすれば、複数の戦略があわせて実行される場合であっても、戦略を適切に評価することが可能になる。この際、各戦略における戦略対象エンティティが2以上であってもよい。
【0204】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また情報処理システム、サーバシステム、端末装置等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0205】
10…情報処理システム、100…サーバシステム、110…処理部、111…エンティティネットワーク取得部、112…影響度算出部、113…戦略決定部、114…戦略解釈部、115…評価処理部、116…提示処理部、120…記憶部、121…エンティティネットワーク、130…通信部、200,200-1,200-2…端末装置、210…処理部、220…記憶部、230…通信部、240…表示部、250…操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18A
図18B
図19
図20A
図20B
図21
図22
図23
図24A
図24B