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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160914
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】インクジェット記録用油性インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/36 20140101AFI20221013BHJP
【FI】
C09D11/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065442
(22)【出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 達也
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039BE01
4J039BE22
4J039CA07
4J039EA46
4J039EA47
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】インク吐出性に優れ、かつ高浸透性の記録媒体に印刷した際においてもにじみが少ないインクジェット記録用油性インクを提供する。
【解決手段】顔料、顔料分散剤A、及び非水系溶媒Bを含有するインクジェット記録用油性インクであって、顔料分散剤Aが、ポリアルキレンイミン(x-1)と、数平均分子量500以上の反応性の官能基を有するポリオレフィン(x-2)と、の反応物Xを含む、インクジェット記録用油性インクである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、顔料分散剤A、及び非水系溶媒Bを含有するインクジェット記録用油性インクであって、
顔料分散剤Aが、ポリアルキレンイミン(x-1)と、数平均分子量500以上の反応性の官能基を有するポリオレフィン(x-2)と、の反応物Xを含む、インクジェット記録用油性インク。
【請求項2】
反応物Xにおけるポリアルキレンイミン(x-1)のポリオレフィン(x-2)に対する質量比〔ポリアルキレンイミン(x-1)/ポリオレフィン(x-2)〕が、5/95以上20/80以下である、請求項1に記載のインクジェット記録用油性インク。
【請求項3】
ポリオレフィン(x-2)の骨格が、ポリイソブテン骨格及び/又はポリプロピレン骨格である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用油性インク。
【請求項4】
ポリアルキレンイミン(x-1)の数平均分子量が、100以上20,000以下である、請求項1~3のいずれかに記載のインクジェット記録用油性インク。
【請求項5】
ポリアルキレンイミン(x-1)が、アルキレン基の炭素数が2以上6以下である分岐状ポリアルキレンイミンである、請求項1~4のいずれかに記載のインクジェット記録用油性インク。
【請求項6】
顔料分散剤Aの含有量が、顔料100質量部に対して、50質量部以上150質量部以下である、請求項1~5のいずれかに記載のインクジェット記録用油性インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用油性インクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、ノズルから微細なインク液滴を吐出し、ノズルに対向する記録媒体に画像等を印刷する記録方式である。この方式は、安価に高速印刷及び高画質印刷が可能であることから、近年、様々な分野で利用されている。インクジェット記録用インクは、溶媒の種類により、水系インク及び非水系インクに大別され、水系インクは主溶媒として水を含み、非水系インクは主溶媒として非水系溶剤を含む。さらに、非水系インクは、主溶媒が揮発性有機溶剤であるソルベントインクと、主溶媒が低揮発性あるいは不揮発性の有機溶剤である油性インクに分類される。
【0003】
特許文献1には、ノズルプレートへのインクの付着を防止し、印刷物の画像裏抜けを防止すること等を課題として、顔料、顔料分散剤、及びシリコーンオイルを含み、前記顔料分散剤は、櫛形構造を有するポリエステルアミン系顔料分散剤及び分岐構造を有するポリエチレンイミン系顔料分散剤からなる群から選択される1種以上を含み、前記シリコーンオイルは、インク全量に対し15質量%以上であり、インクの水抽出物のアンモニウムイオン濃度が1ppm~10ppmである、油性インクジェットインクが開示されている。
特許文献2には、インクジェットインクを用いた印刷方法において、インクの浸透性が高い普通紙の用紙に印刷する際に、印刷濃度が高く、滲みや裏抜けの少ない高品位の印刷画像が得られる印刷方法及びインクセットの提供を課題として、前処理液を印刷媒体へ塗布した後、色材及び溶剤を少なくとも含んでなる油性インクを該印刷媒体上へ吐出させることにより印刷を行う油性インクジェット印刷方法において、前記前処理液が、ポリオレフィン系樹脂粒子の水性分散液であり、前記ポリオレフィン系樹脂粒子は、融点、軟化点又はガラス転移点が90℃以上で、かつ、平均粒子径が0.5μm以上のものである、油性インクジェット印刷方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-141128号公報
【特許文献2】特開2015-104872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年ではインクジェット記録の高速化及び高画質化の要求が高まっており、このような要求を満たすには、油性インクにおいても吐出性に優れるインクが求められる。また、油性インクは水系インクに比べ、普通紙等の微細な空隙を有する高浸透性の記録媒体に印刷した際に用紙が変形し難いといった利点がある一方で、溶媒及び色材が浸透し易く、にじみが発生し、高画質な画像を得ることが困難である。一般的に吐出性を改善するためには低粘度のインクが望ましいが、低粘度のインクは記録媒体への浸透が起こり易く、にじみが発生し易いといった問題がある。そのため、従来の技術では良好なインク吐出性とにじみ抑制との両立は困難である。
本発明は、インク吐出性に優れ、かつ高浸透性の記録媒体に印刷した際においてもにじみが少ないインクジェット記録用油性インクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、顔料、顔料分散剤、及び非水系溶媒を含有するインクジェット記録用油性インクであって、該顔料分散剤が、ポリアルキレンイミンと反応性の官能基を有するポリオレフィンとの反応物を含むことにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、顔料、顔料分散剤A、及び非水系溶媒Bを含有するインクジェット記録用油性インクであって、
顔料分散剤Aが、ポリアルキレンイミン(x-1)と、数平均分子量500以上の反応性の官能基を有するポリオレフィン(x-2)と、の反応物Xを含む、インクジェット記録用油性インクを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、インク吐出性に優れ、かつ高浸透性の記録媒体に印刷した際においてもにじみが少ないインクジェット記録用油性インクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[インクジェット記録用油性インク]
本発明のインクジェット記録用油性インク(以下、「油性インク」ともいう)は、顔料、顔料分散剤A、及び非水系溶媒Bを含有するインクジェット記録用油性インクであって、
顔料分散剤Aが、ポリアルキレンイミン(x-1)と、数平均分子量500以上の反応性の官能基を有するポリオレフィン(x-2)と、の反応物Xを含む。
【0009】
本発明において、「油性」とは、インクに含有される媒体中で、非水系溶媒が最大割合を占めていることを意味する。「非水系溶媒」とは、溶媒を25℃の水100mLに溶解させたときに、その溶解量が10mL未満である溶媒を意味する。
また、本発明において、記録媒体が高浸透性であるか低浸透性であるかは、記録媒体の空隙の程度を示す指標として、記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量により判定される。該吸水量は、自動走査吸液計(例えば、熊谷理機工業(株)製 KM500win)を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下で、純水の接触時間100m秒における転移量として測定できる。
「高浸透性」とは、前記吸水量が10g/m2超であることを意味する。「低浸透性」とは、低浸透性及び非浸透性を含む概念であり、前記吸水量が0g/m2以上10g/m2以下であることを意味する。
【0010】
本発明の油性インクは、インク吐出性に優れ、かつ高浸透性の記録媒体に印刷した際においてもインクのにじみが少ない画像を形成することができる。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明において、顔料分散剤は、ポリアルキレンイミンと数平均分子量500以上の反応性の官能基を有するポリオレフィンとの反応物を含む。そのため、顔料分散剤は、高極性のポリアルキレンイミン部位が顔料の極性基と相互作用することで顔料表面に対する高い吸着性を示し、一方でポリオレフィン部位は非水系溶媒と親和性が高く、非水系溶媒中に拡がることで高い立体反発性を示すことにより、顔料の分散安定性を向上させることができ、ノズル近傍での顔料の凝集が抑制されてインク吐出性を向上させることができると考えられる。
さらに、油性インクがノズルから吐出した後、高浸透性の記録媒体に着弾するとインク中の非水系溶媒は記録媒体内部に浸透していくが、この浸透過程において非水系溶媒と高い親和性を有するポリオレフィン部位の影響により、顔料分散剤は顔料表面から脱着し易く、非水系溶媒と共に記録媒体へ浸透すると推察される。これにより、顔料同士が凝集して記録媒体への浸透が抑制されるため、にじみの少ない高画質な画像が得られると考えられる。
【0011】
<顔料>
本発明に用いられる顔料は、有機顔料及び無機顔料のいずれであってもよく、レーキ顔料、蛍光顔料を用いることもできる。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。顔料は1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
有機顔料の具体例としては、アゾレーキ顔料、不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料類;フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、スレン顔料、金属錯体顔料等の多環式顔料類等が挙げられる。
無機顔料の具体例としては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック;酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロム等の金属酸化物;真珠光沢顔料等が挙げられる。
体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
これらの中でも、顔料は、インク吐出性を向上させる観点、及び画像のにじみを抑制する観点から、好ましくは有機顔料であり、より好ましくは多環式顔料類である。
色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
【0012】
本発明の油性インク中の顔料の含有量は、インク吐出性を向上させる観点、及び画像のにじみを抑制する観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは6質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは16質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0013】
<顔料分散剤A>
本発明の油性インク中の顔料は、インク吐出性を向上させる観点、及び画像のにじみを抑制する観点から、顔料分散剤Aにより分散されてなる。
本発明に係る顔料分散剤Aは、ポリアルキレンイミン(x-1)と、数平均分子量500以上の反応性の官能基を有するポリオレフィン(x-2)と、の反応物Xを含む。
【0014】
(ポリアルキレンイミン(x-1))
ポリアルキレンイミン(x-1)の構造は、直鎖状又は分岐状であってもよい。
直鎖状ポリアルキレンイミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン等が挙げられる。
分岐状ポリアルキレンイミンとしては、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2-ブチレンイミン、2,3-ブチレンイミン、1,1-ジメチルエチレンイミン等の炭素数2以上6以下のアルキレンイミンの重合体などが挙げられる。
これらの中でも、ポリアルキレンイミン(x-1)は、インク吐出性を向上させる観点、及び画像のにじみを抑制する観点から、好ましくは直鎖状ポリアルキレンイミン及び分岐状ポリアルキレンイミンから選ばれる1種以上であり、より好ましくは分岐状ポリアルキレンイミンであり、更に好ましくはアルキレン基の炭素数が2以上6以下である分岐状ポリアルキレンイミンであり、より更に好ましくはアルキレン基の炭素数が2以上4以下である分岐状ポリアルキレンイミンであり、より更に好ましくは分岐状ポリエチレンイミン及び分岐状ポリプロピレンイミンから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくは分岐状ポリエチレンイミンである。
【0015】
ポリアルキレンイミン(x-1)が分岐状である場合、その構造中に第二級アミノ基(イミノ基)の他、第三級アミノ基、第一級アミノ基を有していてもよい。
ポリアルキレンイミンが分岐状である場合、該ポリアルキレンイミンのアミノ基中の第一級アミノ基及び第二級アミノ基の合計割合は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上であり、そして、上限は100%である。
該第一級アミノ基及び第二級アミノ基の合計割合の値は、13C-NMRにより求められる。
【0016】
ポリアルキレンイミン(x-1)のアミン価は、好ましくは3mmol/g以上、より好ましくは5mmol/g以上、更に好ましくは10mmol/g以上、より更に好ましくは15mmol/g以上であり、そして、好ましくは40mmol/g以下、より好ましくは30mmol/g以下、更に好ましくは25mmol/g以下である。
分岐状ポリエチレンイミンのアミン価は、JIS K2501の方法に準じて、測定溶媒のみJIS K2501の規定のクロロベンゼンからクロロホルムに変更して測定し、分岐状ポリエチレンイミン1gに含まれる第一級アミノ基、第二級アミノ基(イミノ基)、及び第三級アミノ基の合計モル数(mmol)として求めることができる。
【0017】
ポリアルキレンイミン(x-1)の数平均分子量は、インク吐出性を向上させる観点、及び画像のにじみを抑制する観点から、好ましくは100以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは500以上、より更に好ましくは1,000以上であり、そして、好ましくは20,000以下、より好ましくは15,000以下、更に好ましくは10,000以下、より更に好ましくは5,000以下、より更に好ましくは3,000以下である。ポリアルキレンイミン(x-1)の数平均分子量は、実施例に記載の方法により求められる。
【0018】
ポリアルキレンイミン(x-1)は、公知の方法で合成したものを用いてよく、市販品を用いてもよい。例えば、ポリエチレンイミンの合成法としては、エチレンイミンを二酸化炭素、塩酸、臭化水素酸等を触媒として開環重合させる方法、塩化エチレンとエチレンジアミンを重縮合させる方法、2-オキサゾリドンを加熱する方法が挙げられる。
ポリアルキレンイミン(x-1)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
(反応性の官能基を有するポリオレフィン(x-2))
反応性の官能基を有するポリオレフィン(x-2)(以下、「ポリオレフィン(x-2)」ともいう)の数平均分子量は、インク吐出性を向上させる観点、及び画像のにじみを抑制する観点から、500以上であり、好ましくは800以上であり、そして、好ましくは8,500以下、より好ましくは3,000以下、更に好ましくは2,000以下である。
ポリオレフィン(x-2)の数平均分子量は、実施例に記載の方法により求められる。
【0020】
ポリオレフィン(x-2)の反応性の官能基としては、カルボキシ基、エポキシ基、ホルミル基、イソシアネート基等が挙げられる。これらの中でも、安全性及び反応性の観点から、カルボキシ基又はエポキシ基が好ましい。従って、反応性の官能基を導入する化合物は、カルボン酸系化合物が好ましい。カルボン酸系化合物としては、フマル酸、マレイン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、酒石酸、それらの無水物又はアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。中でも、安全性及び反応性の観点から、酸無水物が好ましい。
【0021】
ポリオレフィン(x-2)の骨格は、インク吐出性を向上させる観点、及び画像のにじみを抑制する観点から、好ましくは炭素数2以上24以下の不飽和炭化水素の重合体であり、より好ましくは炭素数2以上22以下の不飽和炭化水素の重合体である。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブテン、ポリメチルペンテン、ポリテトラデセン、ポリヘキサデセン、ポリオクタデセン、ポリエイコセン、ポリドコセン等が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン(x-2)の骨格は、前記と同様の観点から、更に好ましくはポリイソブテン骨格及び/又はポリプロピレン骨格であり、より更に好ましくはポリイソブテン骨格である。
【0022】
反応性の官能基を有するポリオレフィン(x-2)としては、ポリオレフィン無水コハク酸、ハロゲン化ポリオレフィン等が挙げられる。中でも、好ましくはポリオレフィン無水コハク酸であり、より好ましくはポリプロピレン無水コハク酸及びポリイソブテン無水コハク酸から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはポリイソブテン無水コハク酸である。ポリオレフィン(x-2)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
以上のとおり、反応物Xは、インク吐出性を向上させる観点、及び画像のにじみを抑制する観点から、好ましくは直鎖状ポリアルキレンイミン及び分岐状ポリアルキレンイミンから選ばれる1種以上とポリオレフィン無水コハク酸との縮合物であり、より好ましくは分岐状ポリアルキレンイミンとポリオレフィン無水コハク酸との縮合物であり、更に好ましくはアルキレン基の炭素数が2以上6以下である分岐状ポリアルキレンイミンとポリオレフィン無水コハク酸との縮合物であり、より更に好ましくはアルキレン基の炭素数が2以上4以下である分岐状ポリアルキレンイミンと、ポリプロピレン無水コハク酸及びポリイソブテン無水コハク酸から選ばれる1種以上との縮合物であり、より更に好ましくは分岐状ポリエチレンイミン及び分岐状ポリプロピレンイミンから選ばれる1種以上と、ポリプロピレン無水コハク酸及びポリイソブテン無水コハク酸から選ばれる1種以上との縮合物であり、より更に好ましくは分岐状ポリエチレンイミンとポリイソブテン無水コハク酸との縮合物である。
【0024】
反応物Xにおけるポリアルキレンイミン(x-1)のポリオレフィン(x-2)に対する質量比〔ポリアルキレンイミン(x-1)/ポリオレフィン(x-2)〕は、好ましくは3/97以上、より好ましくは5/95以上、更に好ましくは10/90以上であり、そして、好ましくは20/80以下、より好ましくは15/85以下である。
なお、質量比〔ポリアルキレンイミン(x-1)/ポリオレフィン(x-2)〕はNMRで測定できるが、反応物Xの製造において、反応に供したポリアルキレンイミン(x-1)のポリオレフィン(x-2)に対する質量比を、質量比〔ポリアルキレンイミン(x-1)/ポリオレフィン(x-2)〕とみることもできる。
【0025】
ポリアルキレンイミン(x-1)と反応性の官能基を有するポリオレフィン(x-2)との反応は、例えば、有機溶媒中でポリアルキレンイミン(x-1)と反応性の官能基を有するポリオレフィン(x-2)とを150~160℃で反応させた後、有機溶媒を減圧留去する方法が挙げられる。反応の終点は、例えば、ポリオレフィン(x-2)としてポリオレフィン無水コハク酸を用いる場合には、IR分析による酸無水物由来のピークの消失によって確認することができる。
【0026】
顔料分散剤Aは、本発明の効果を阻害しない範囲で、反応物X以外の他の顔料分散剤を含んでもよい。
他の顔料分散剤としては、反応物X以外の高分子分散剤、界面活性剤等が挙げられる。具体的には、ポリエステルポリイミン、ポリエステルポリアミン、ポリエーテルポリアミン、ポリアルキロールアミノアマイドとその塩、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、水酸基含有カルボン酸エステル、高分子量不飽和酸エステル、高分子量ポリカルボン酸の塩、変性ポリウレタン、変性ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等が挙げられる。
他の顔料分散剤の市販品としては、日本ルーブリゾール(株)製のソルスパース(商品名)シリーズ;BASF社製のエフカ(商品名)シリーズ;楠本化成(株)製のディスパロン(商品名)シリーズ、花王(株)製のデモール(商品名)シリーズ、ポイズ(商品名)シリーズ、ホモゲノール(商品名)シリーズ:第一工業製薬(株)製のディスコール(商品名)シリーズ等が挙げられる。
【0027】
顔料分散剤A中の反応物Xの含有量は、インク吐出性を向上させる観点、及び画像のにじみを抑制する観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、上限は100質量%であり、より更に好ましくは100質量%である。
【0028】
本発明の油性インク中の顔料分散剤Aの含有量は、インク吐出性を向上させる観点、及び画像のにじみを抑制する観点から、顔料100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは70質量部以上、更に好ましくは90質量部以上であり、そして、好ましくは150質量部以下、より好ましくは130質量部以下、更に好ましくは110質量部以下である。
顔料分散剤Aは、予め非水系溶媒等に分散又は溶解させて油性インクに配合してもよい。
なお、顔料分散剤Aを非水系溶媒等に分散又は溶解させて油性インクに配合する場合には、上記の油性インク中の顔料分散剤Aの含有量は、非水系溶媒等を除いた有効分の含有量である。
【0029】
<非水系溶媒B>
本発明の油性インクは、非水系溶媒Bを含む。
非水系溶媒Bは、1種を単独で用いてもよく、単一の連続する相を形成する限り2種以上を組み合わせて用いることもできる。非水系溶媒Bとしては、油性インクに通常用いられる、非極性溶媒、極性溶媒が挙げられる。
【0030】
非極性溶媒としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、フッ素系炭化水素等のハロゲン化炭化水素等の炭化水素系溶媒;シリコン系溶媒等が挙げられる。
非極性溶媒の市販品としては、アイソパー(商品名)シリーズ、エクソール(商品名)シリーズ(いずれも、エクソンモービル社製);シェルゾール(商品名)シリーズ(Shell社製);AFソルベント(商品名)シリーズ、テクリーン(商品名)シリーズ、ナフテゾール(商品名)シリーズ、0号ソルベント(商品名)シリーズ、アイソゾール(商品名)シリーズ(いずれも、ENEOS(株)製);モレスコホワイト(商品名)シリーズ((株)MORESCO製)等が挙げられる。
【0031】
極性溶媒としては、エステル油、高級アルコール、高級脂肪酸等が挙げられる。
エステル油としては、炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなる脂肪酸モノエステル、炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数2以上12以下の多価アルコールとからなる脂肪酸エステル、炭素数4以上18以下のジカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるジカルボン酸ジエステル等の脂肪酸エステルが挙げられる。
炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなる脂肪酸モノエステルとしては、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソステアリル、イソパルミチン酸イソオクチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸イソブチル、オレイン酸ヘキシル、オレイン酸2-エチルヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソブチル、大豆油脂肪酸メチル、大豆油脂肪酸イソブチル、トール油脂肪酸メチル、トール油脂肪酸イソブチル等が挙げられる。
炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数2以上12以下の多価アルコールとからなる脂肪酸エステルとしては、モノカプリン酸プロピレングリコール、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、天然油脂等が挙げられる。天然油脂としては、菜種油、ベニバナ油、ヒマワリ油、ゴマ油、大豆油、パーム油、パーム核油、ココナッツ油等が挙げられる。
炭素数4以上18以下のジカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるジカルボン酸ジエステルとしては、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル等が挙げられる。
【0032】
高級アルコールとしては、ヘキシルデカノール、ヘキサデカノール、イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等の炭素数12以上20以下の高級アルコールが挙げられる。
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等の炭素数12以上22以下の高級脂肪酸が挙げられる。
【0033】
非水系溶媒Bの25℃における粘度は、インク吐出性を向上させる観点、及び画像のにじみを抑制する観点から、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは1.5mPa・s以上、更に好ましくは2mPa・s以上であり、そして、好ましくは7mPa・s以下、より好ましくは6mPa・s以下、更に好ましくは4mPa・s以下である。前記粘度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0034】
これらの中でも、非水系溶媒Bは、インク吐出性を向上させる観点、及び画像のにじみを抑制する観点から、好ましくは非極性溶媒であり、より好ましくは炭化水素系溶媒であり、更に好ましくは脂肪族炭化水素であり、より更に好ましくはパラフィン系炭化水素である。
【0035】
本発明の油性インク中の非水系溶媒Bの含有量は、インク吐出性を向上させる観点、及び画像のにじみを抑制する観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。
【0036】
本発明の油性インクは、更に必要に応じて、油性インクに通常用いられる添加剤を含有してもよい。該添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、粘度調整剤、定着助剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等が挙げられる。
【0037】
(インクジェット記録用油性インクの製造)
本発明の油性インクは、顔料、顔料分散剤A、及び非水系溶媒Bを含有する顔料混合物を分散処理することにより得ることができる。また、顔料混合物を調製する際に、顔料分散剤Aは、予め非水系溶媒等に分散又は溶解させた後、配合してもよい。
分散処理は、得られる油性インク中の顔料粒子の体積中位粒径(D50)が所望の粒径とするように制御して行うことが好ましい。分散処理は、剪断応力による本分散だけで顔料粒子の体積中位粒径(D50)を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、均一な油性インクを得る観点から、顔料混合物を予備分散して予備分散液を得た後、さらに該予備分散液を本分散することが好ましい。
予備分散に用いる分散機としては、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。
本分散に用いる剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。
本発明の油性インクは、必要に応じて、前述の各種添加剤を更に添加し、フィルター等によるろ過処理を行うことにより得ることができる。
【0038】
(インクジェット記録用油性インクの物性)
本発明の油性インク中の顔料粒子の体積中位粒径(D50)は、粗大粒子を低減し、インク吐出性を向上させる観点、及び画像のにじみを抑制する観点から、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.45μm以下、更に好ましくは0.4μm以下、より更に好ましくは0.35μm以下であり、そして、生産性の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.15μm以上、更に好ましくは0.2μm以上である。前記体積中位粒径(D50)は、実施例に記載の方法により測定される。
【0039】
本発明の油性インクの25℃における粘度は、インクを低粘度化させてインク吐出性を向上させる観点から、好ましくは50mPa・s以下、より好ましくは40mPa・s以下、更に好ましくは30mPa・s以下、より更に好ましくは25mPa・s以下であり、そして、画像のにじみを抑制する観点から、好ましくは5mPa・s以上、より好ましくは10mPa・s以上、更に好ましくは15mPa・s以上である。前記粘度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0040】
本発明の油性インクは、該インクを公知のインクジェット記録装置に装填し、記録媒体にインク液滴として吐出させて画像等を印刷することができる。
インクジェット記録装置は、サーマル式、ピエゾ式等のいずれの方式でも用いることができる。
用いる記録媒体としては、普通紙等の高浸透性記録媒体;コート紙等の低浸透性記録遺体;樹脂フィルム等の非浸透性記録媒体が挙げられる。コート紙としては、汎用光沢紙、多色フォームグロス紙等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、好ましくはポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、及びポリエチレンフィルムから選ばれる少なくとも1種である。当該樹脂フィルムは、コロナ処理された基材を用いてもよい。
【実施例0041】
原料、インク等の物性は、以下の方法により測定した。
【0042】
〔ポリアルキレンイミン(x-1)の数平均分子量(Mn)〕
以下に示す、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量を求めた。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.2g/100mLになるように、ポリアルキレンイミン(x-1)を0.15mol/LでNa2SO4を1%酢酸水溶液に溶解させた溶液に溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液として0.15mol/LでNa2SO4を1%酢酸水溶液に溶解させた溶液を、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の標準プルラン(昭和電工(株)製のP-5(Mw 5.9×103)、P-50(Mw 4.73×104)、P-200(Mw 2.12×105)、P-800(Mw 7.08×105))を標準試料として作成したものを用いた。括弧内は重量平均分子量を示す。
測定装置:HLC-8320GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:α+α-M+α-M(東ソー(株)製)
【0043】
〔反応性の官能基を有するポリオレフィン(x-2)の数平均分子量(Mn)〕
以下に示す、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量を求めた。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、ポリオレフィン(x-2)をテトラヒドロフランに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量分布測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(Mw 5.0×102)、A-1000(Mw 1.01×103)、A-2500(Mw 2.63×103)、A-5000(Mw 5.97×103)、F-1(Mw 1.02×104)、F-2(Mw 1.81×104)、F-4(Mw 3.97×104)、F-10(Mw 9.64×104)、F-20(Mw 1.90×105)、F-40(Mw 4.27×105)、F-80(Mw 7.06×105)、F-128(Mw 1.09×106))を標準試料として作成したものを用いた。括弧内は重量平均分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:TSKgel GMHXL+TSKgel G3000HXL(東ソー(株)製)
【0044】
〔油性インク中の顔料粒子の体積中位粒径(D50)〕
レーザー回折/散乱式粒径測定装置「マスターサイザー3000」(マルバーン・パナリティカル社製)を用いて、測定用セルをアイソパーL(エクソンモービル社製、イソパラフィン)で満たし、油性インクを散乱強度が5~15%になる濃度で投入し、粒子屈折率1.63、粒子吸収率0.50、粒子密度1.00g/cm3、分散媒屈折率1.42の条件にて、体積中位粒径(D50)を測定した。
【0045】
〔非水系溶媒B及び油性インクの25℃における粘度〕
10mL容のスクリュー管に測定液を6~7mL入れ、回転振動式粘度計「ビスコメイトVM-10A-L」((株)セコニック製、検出端子:チタン製、φ8mm)を用い、検出端子の先端部の15mm上に液面が来る位置にスクリュー管を固定し、25℃にて粘度を測定した。
【0046】
製造例1~6(顔料分散剤(A1)~(A6)の製造)
表1に示すポリアルキレンイミンを冷却管、窒素導入管、撹拌機、脱水管及び熱電対を装備した2L容の四つ口フラスコに入れ、窒素ガスで反応容器内を置換した。撹拌しながら、表1に示すポリイソブテン無水コハク酸(PIBSA)をキシレンに溶解した溶液を25℃で1時間かけて滴下した。滴下終了後、30分間25℃で保持した。その後、反応容器内を150℃に加温して1時間保持した後、160℃に昇温して1時間保持した。160℃で8.3kPaに減圧してキシレンを留去し、IR分析からPIBSA由来の酸無水物のピーク(1780cm-1)が消失し、イミド結合由来のピーク(1700cm-1)が生じた時点を反応終点として、表1に示す物性を有する顔料分散剤(A1)~(A6)を得た。
【0047】
製造例7(顔料分散剤(A7)の製造)
表1に示すポリアルキレンイミン、ポリプロピレン無水コハク酸(PPSA)、及び
キシレンを、冷却管、窒素導入管、撹拌機、脱水管及び熱電対を装備した2L容の四つ口フラスコに入れ、窒素ガスで反応容器内を置換した。その後、反応容器内を150℃に加温して1時間保持した後、160℃に昇温して1時間保持した。160℃で8.3kPaに減圧してキシレンを留去し、IR分析からPPSA由来の酸無水物のピーク(1780cm-1)が消失し、イミド結合由来のピーク(1700cm-1)が生じた時点を反応終点として、表1に示す物性を有する顔料分散剤(A7)を得た。
【0048】
【表1】
【0049】
比較製造例1(顔料分散剤(AC4)の製造)
溶媒(メチルエチルケトン)100gを、冷却管、窒素導入管、撹拌機及び熱電対を装備した2L容の四つ口フラスコに入れ、窒素ガスで反応容器内を置換した。反応容器内を80℃に加温して、表2に示す原料モノマーと重合開始剤の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、80℃でさらに3時間反応させた。80℃で溶媒を留去し、表2に示す物性を有するアミノ基を含有するDMAEMA/SMA共重合体(顔料分散剤(AC4))を得た。
なお、顔料分散剤(AC4)の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、前述の反応性の官能基を有するポリオレフィン(x-2)の数平均分子量(Mn)と同様の方法により求めた。また、顔料分散剤(AC4)のアミン価は、ASTM D2074の方法により、試料の溶解溶媒にはクロロホルムを用い、滴定溶液には0.1mol/L過塩素酸酢酸標準溶液を用いて測定した。
【0050】
【表2】
【0051】
実施例1
シアン顔料「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー15:3)8質量部と非水系溶媒「モレスコホワイトP-40」((株)MORESCO社製、流動パラフィン、25℃における粘度:4mPa・s)84質量部、及び顔料分散剤(A1)8質量部を500mL容のポリエチレン製容器に入れ、「T.K.ロボミックス」(プライミクス(株)製)を用いて、氷冷下、回転数10,000r/minにて30分間撹拌を行い、油性インク予備分散液を得た。
次に、得られた油性インク予備分散液を250mL容のポリエチレン製容器に入れ、直径0.2mmのジルコニアビーズを用いて、体積充填率60体積%にて、ペイントシェーカー(淺田鉄工(株)製)で体積中位粒径(D50)が0.29μmになるまで湿式分散した。ビーズをろ過により除去した後、ろ液100質量部に対し非水系溶媒「モレスコホワイトP-40」33質量部を加えて希釈して顔料の含有量が6質量%となるように調整し、表3に示す油性インクを得た。得られた油性インク中の顔料粒子の体積中位粒径(D50)は、0.29μmであった。
【0052】
実施例2~6,9、比較例3~4
顔料分散剤を表3に示すものに変更した以外は実施例1と同様の方法で、表3に示す油性インクを得た。
なお、比較例3では、顔料分散剤として「ソルスパース28000」(日本ルーブリゾール(株)製、有効分:ポリアミド、有効分の含有量:100質量%)を用いた。
【0053】
実施例7
非水系溶媒をラウリン酸エチル(東京化成工業(株)製、25℃における粘度:3mPa・s)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、表3に示す油性インクを得た。
【0054】
実施例8
顔料をマゼンタ顔料「Cinquasia Magenta D4570」(BASF社製、キナクリドン顔料)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、表3に示す油性インクを得た。
【0055】
実施例10
油性インク予備分散液の調製に用いる顔料分散剤の量を6.4質量部に変更し、非水系溶媒の使用量を85.6質量部に変更した以外は実施例1と同様の方法で、表3に示す油性インクを得た。
【0056】
実施例11
油性インク予備分散液の調製に用いる顔料分散剤の量を9.6質量部に変更し、非水系溶媒の使用量を82.4質量部に変更した以外は実施例1と同様の方法で、表3に示す油性インクを得た。
【0057】
比較例1
油性インク予備分散液の調製に用いる顔料分散剤を「ソルスパース11200」(日本ルーブリゾール(株)製、有効分:ポリエチレンイミンと12-ヒドロキシステアリン酸縮合体との縮合物(以下、「PEI/p-12HSAの縮合物」とも表記する)、有効分の含有量:50質量%、溶媒:シェルゾールD40(脂肪族炭化水素))16質量部に変更し、非水系溶媒の使用量を76質量部に変更した以外は実施例1と同様の方法で、表3に示す油性インクを得た。
【0058】
比較例2
油性インク予備分散液の調製に用いる顔料分散剤を「ソルスパース13940」(日本ルーブリゾール(株)製、有効分:ポリエチレンイミンと12-ヒドロキシステアリン酸縮合体との縮合物(PEI/p-12HSAの縮合物)、有効分の含有量:40質量%、溶媒:240/260(℃)脂肪族留出物)20質量部に変更し、非水系溶媒の使用量を72質量部に変更した以外は実施例1と同様の方法で、表3に示す油性インクを得た。
【0059】
実施例及び比較例で得られた油性インクを用いて、インク吐出性及び画像のにじみの評価を行った。
試験例1〔インク吐出性〕
ピエゾ式インクジェットプリンター「PX-105」(セイコーエプソン(株)製)のカートリッジに油性インクを充填し、上質紙「J紙A4サイズ」(富士ゼロックス(株)製)を用いて画質優先モードでベタ画像を印刷した。画像部分の画像濃度を分光濃度・測色計「X-Rite eXact」(エックスライト社製)を用いて各3点測定し、その平均値を画像濃度(OD)として算出した。結果を表3に示す。画像濃度が大きいほどインク吐出性に優れることを示す。
【0060】
試験例2〔画像のにじみ〕
上質紙「J紙A4サイズ」(富士ゼロックス(株)製)上にマイクロピペット「フィンピペットF1」(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)を用いて油性インクを30μL滴下し、30分後に滴下後のドットの中心部分の画像濃度を分光濃度・測色計「X-Rite eXact」(エックスライト社製)を用いて測定し、中心画像濃度とした。結果を表3に示す。中心画像濃度が大きいほどインクのにじみが少ない画像を形成できることを示す。
【0061】
【表3】
【0062】
表3から、実施例1~11は、比較例1~4に比べて、インク吐出性に優れ、インクのにじみが少ない画像を形成できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、インク吐出性に優れ、かつ高浸透性の記録媒体に印刷した際においてもにじみが少ない画像を形成することができる油性インクを得ることができ、インクジェット記録用として有用である。