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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160923
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】マルチチャンネルクロック発生器
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/22 20060101AFI20221013BHJP
   H03L 7/07 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
H03L7/22
H03L7/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065453
(22)【出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】浅見 幸司
【テーマコード(参考)】
5J106
【Fターム(参考)】
5J106AA04
5J106CC19
5J106CC30
5J106CC42
5J106CC52
5J106CC59
5J106DD24
5J106FF09
5J106KK05
(57)【要約】
【課題】高精度に位相同期された複数のクロック信号を生成可能なクロック発生器を提供する。
【解決手段】クロック発生器100は、複数N個のPLL回路200を備える。位相比較回路210は、第1端子T1に入力される第1クロックCLKaと、第2端子T2に入力される第2クロックCLKbの位相差に応じた制御信号S1を生成する。ループフィルタ220は、制御信号S1を受け、所定の周波数帯域を通過させる。発振器230は、ループフィルタ220を通過した制御信号S2に応じた周波数で発振する。分周器240は、発振器230の出力クロックを分周し、分周後のクロック信号CLKcを第3端子T3から出力する。N個のPLL回路200の第1端子T1には、共通の基準クロックが入力される。i番目(1≦i≦N)のPLL回路200_iの第3端子T3は、(i+1)番目のPLL回路200_(i+1)の第2端子T2と接続される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数N個のPLL(Phase Locked Loop)回路を備え、
前記PLL回路は、
第1端子と、
第2端子と、
第3端子と、
第1端子に入力される第1クロックと、第2端子に入力される第2クロックの位相差に応じた制御信号を生成する位相比較回路と、
前記制御信号を受け、所定の周波数帯域を通過させるループフィルタと、
前記ループフィルタを通過した制御信号に応じた周波数で発振する発振器と、
前記発振器の出力クロックを分周し、分周後のクロック信号を前記第3端子から出力する分周器と、
を含み、
前記N個のPLL回路の前記第1端子には、共通の基準クロックが入力され、
i番目(1≦i≦N)のPLL回路の前記第3端子は、(i+1)番目のPLL回路の前記第2端子と接続されることを特徴とするマルチチャンネルクロック発生器。
【請求項2】
前記N個のPLL回路の少なくともひとつは、前記分周器の出力と前記第3端子の間に設けられる第1遅延回路をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のマルチチャンネルクロック発生器。
【請求項3】
前記N個のPLL回路の少なくともひとつは、前記発振器の出力と前記分周器の入力の間に設けられる第2遅延回路をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載のマルチチャンネルクロック発生器。
【請求項4】
前記N個のPLL回路の少なくともひとつは、前記第1端子と前記位相比較回路の入力の間に設けられる第3遅延回路をさらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマルチチャンネルクロック発生器。
【請求項5】
前記N個のPLL回路の少なくともひとつは、前記ループフィルタの前段または後段に設けられ、前記制御信号にオフセットを重畳するオフセット回路をさらに含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマルチチャンネルクロック発生器。
【請求項6】
前記N個のPLL回路の前記分周器の分周比はすべて等しいことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマルチチャンネルクロック発生器。
【請求項7】
前記N個のPLL回路の前記分周器の分周比は、独立に設定可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマルチチャンネルクロック発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クロック発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
数百MHz~数GHzの高速なクロック信号が必要な機器や装置では、低速なクロック信号をPLL(Phase Locked Loop)回路によって周波数逓倍することにより、高速なクロック信号を生成するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002-540669号公報
【特許文献2】特開2001-036404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
互いに位相同期した複数のクロック信号を利用したい場合がある。図1は、本発明者が検討したマルチチャンネルのクロック発生器10Rのブロック図である。クロック発生器10Rは、複数N個(N≧2)のPLL回路20_1~20_Nを備える。
【0005】
PLL回路20_1~20_Nはそれぞれ、共通の基準クロックCLKREFを受け、基準クロックCLKREFを逓倍したクロック信号CLK1~CLKNを出力する。PLL回路20は、位相比較器22、ループフィルタ24、VCO(電圧制御発振器)26および分周器28を含む。
【0006】
本発明者は、図1のクロック発生器10Rについて検討し、以下の課題を認識するに至った。
【0007】
図1の構成では、複数のPLL回路20_1~20_N間に、回路定数の誤差およびばらつきが存在する。また複数のPLL回路20_1~20_Nにおいて、位相ノイズも独立に発生する。
【0008】
これらの理由から、図1のクロック発生器10Rでは、複数のクロック信号CLK1~CLKNを、高精度に位相同期させることが難しい。
【0009】
本開示はかかる状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の目的のひとつは、高精度に位相同期された複数のクロック信号を生成可能なクロック発生器の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のある態様のマルチチャンネルクロック発生器は、複数N個のPLL(Phase Locked Loop)回路を備える。PLL回路は、第1端子と、第2端子と、第3端子と、第1端子に入力される第1クロックと、第2端子に入力される第2クロックの位相差に応じた制御信号を生成する位相比較回路と、制御信号を受け、所定の周波数帯域を通過させるループフィルタと、ループフィルタを通過した制御信号に応じた周波数で発振する発振器と、発振器の出力クロックを分周し、分周後のクロック信号を第3端子から出力する分周器と、含む。N個のPLL回路の第1端子には、共通の基準クロックが入力され、i番目(1≦i≦N)のPLL回路の第3端子は、(i+1)番目のPLL回路の第2端子と接続される。
【0011】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本開示のある態様によれば、複数のクロック信号を高精度で位相同期することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明者が検討したマルチチャンネルのクロック発生器のブロック図である。
図2】実施形態に係るクロック発生器のブロック図である。
図3】PLL回路の構成例を示すブロック図である。
図4】変形例1に係るクロック発生器のブロック図である。
図5】変形例2に係るクロック発生器のブロック図である。
図6】変形例3に係るクロック発生器のブロック図である。
図7】変形例4に係るクロック発生器のブロック図である。
図8】変形例5に係るクロック発生器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0015】
この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素または重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。その唯一の目的は、後で提示するより詳細な説明の前置きとして、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化した形で提示することである。
【0016】
(実施形態の概要)
一実施形態に係るマルチチャンネルクロック発生器は、複数N個のPLL(Phase Locked Loop)回路を備える。PLL回路は、第1端子と、第2端子と、第3端子と、第1端子に入力される第1クロックと第2端子に入力される第2クロックの位相差に応じた制御信号を生成する位相比較回路と、制御信号を受け、所定の周波数帯域を通過させるループフィルタと、ループフィルタを通過した制御信号に応じた周波数で発振する発振器と、発振器の出力クロックを分周し、分周後のクロック信号を第3端子から出力する分周器と、を含む。N個のPLL回路の第1端子には、共通の基準クロックが入力され、i番目(1≦i≦N)のPLL回路の第3端子は、(i+1)番目のPLL回路の第2端子と接続される。
【0017】
上記構成によると、複数のPLL回路が位相同期して動作するため、位相同期した高速な複数のクロック信号を生成できる。なお、N番目と0番目は等価として扱うものとし、したがって(N+1)番目は、1番目と読み替え可能である。
【0018】
一実施形態において、N個のPLL回路の少なくともひとつは、分周器の出力と第3端子の間に設けられる第1遅延回路をさらに含んでもよい。これにより、第1遅延回路の遅延時間に応じて、複数のクロック信号の位相差を制御できる。
【0019】
一実施形態において、N個のPLL回路の少なくともひとつは、発振器の出力と分周器の入力の間に設けられる第2遅延回路をさらに含んでもよい。これにより、第2遅延回路の遅延時間に応じて、複数のクロック信号の位相差を制御できる。
【0020】
一実施形態において、N個のPLL回路の少なくともひとつは、第1端子と位相比較回路の入力の間に設けられる第3遅延回路をさらに含んでもよい。これにより、第3遅延回路の遅延時間に応じて、複数のクロック信号の位相差を制御できる。
【0021】
一実施形態において、N個のPLL回路の少なくともひとつは、ループフィルタの前段または後段に設けられ、制御信号にオフセットを重畳するオフセット回路をさらに含んでもよい。この構成によれば、PLL回路のセトリング時間を短縮できる。
【0022】
一実施形態において、N個のPLL回路の分周器の分周比はすべて等しくてもよい。
【0023】
一実施形態において、N個のPLL回路の分周器の分周比は、独立に設定可能であってもよい。
【0024】
(実施形態)
図2は、実施形態に係るクロック発生器100のブロック図である。クロック発生器100は、基準クロックCLKREFを受け、Nチャンネル(N≧2)のクロック信号CLK1~CLKNを発生する。
【0025】
クロック発生器100は、複数N個のPLL回路200_1~200_Nを備える。PLL回路200はそれぞれ、第1端子T1~第3端子T3、出力端子OUT、位相比較回路210、ループフィルタ220、発振器230、分周器240を備える。
【0026】
PLL回路200_i(1≦i≦N)それぞれにおいて、位相比較回路210は、第1端子T1に入力される第1クロックCLKaと、第2端子T2に入力される第2クロックCLKbの位相差に応じた制御信号S1を生成する。ループフィルタ220は、位相比較回路210の出力信号をフィルタリングする。発振器230は、ループフィルタ220を通過した制御信号S2に応じた周波数で発振する。発振器230の出力信号は、クロック信号CLKiとして出力端子OUTから出力される。分周器240は、クロック信号CLKを分周し、分周後のクロック信号CLKcを、第3端子T3から出力する。
【0027】
N個のPLL回路200_1~200_Nの第1端子T1には、共通の基準クロックCLKREFが入力されている。また、i番目(1≦i≦N)のPLL回路200_iの第3端子T3は、(i+1)番目のPLL回路200_(i+1)の第2端子T2と接続される。0番目とN番目を等価として扱うから、N番目のPLL回路200_Nの第3端子T3は、1番目のPLL回路200_1の第2端子T2と接続される。
【0028】
図3は、PLL回路200の構成例を示すブロック図である。一実施例において、PLL回路200は、アナログPLL回路で構成することができる。位相比較回路210は、位相周波数比較器(Phase Frequency Detector)212およびチャージポンプ回路214を含む。ループフィルタ220はアナログフィルタであり、発振器230は、VCO(Voltage Controlled Oscillator)で構成される。分周器240の分周比(M/N)は整数であってもよいし(つまりN=1)、分数であってもよい(N≧2)。分周器240の出力CLKcの周波数は、発振器230の出力の周波数の、N/M倍となる。
【0029】
一実施例においてPLL回路200は、デジタルPLL回路であってもよい。デジタルPLL回路では、位相比較回路210および分周器240がデジタル回路で構成される。
【0030】
一実施例においてPLL回路200は、AD(All Digital)PLL回路であってもよい。ADPLL回路では、PLL回路200のすべての構成要素がデジタル回路で構成される。具体的には、位相比較回路210がTDC(時間デジタル変換器)とカウンタで構成され、ループフィルタ220がデジタルフィルタで構成され、発振器230がDCO(Digital Controlled Oscillator)で構成される。
【0031】
つまりPLL回路200の構成は、アナログ、デジタルを問わない。
【0032】
以上がクロック発生器100の構成である。続いてその動作を説明する。
【0033】
図2において、複数のPLL回路200_1~200_Nにおける分周器240の分周比M/Nは等しいものとする。また基準クロックCLKREFの周波数をfREFとする。クロック発生器100において、すべてのPLL回路200で位相ロックがかかった状態では、複数のクロック信号CLK1~CLKNの周波数は等しく、fREF×M/Nに安定化される。
【0034】
また、複数のPLL回路200_1~200_Nは独立に動作するのではなく、ループを形成しているので、すべてのクロック信号CLK1~CLKNの位相を高精度で同期させることができる。
【0035】
実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにさまざまな変形例が存在すること、またそうした変形例も本開示に含まれ、また本発明の範囲を構成しうることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例を説明する。
【0036】
図4は、変形例1に係るクロック発生器100Aのブロック図である。変形例1において、複数の分周器240の分周比K(=M/N)は異なっている。その他は図2と同様である。
【0037】
変形例1において、基準クロックCLKREFの周波数をfREF、クロック信号CLK1~CLKNの周波数をf~fとすると以下の関係式が成り立つ。
×1/K=f×1/K=f×1/K=…=f×1/K=fREF
【0038】
したがって、複数のクロック信号CLK1~CLKNの周波数f~fは以下のように表される。
=fREF×K
=fREF×K

=fREF×K
したがって、変形例1によれば、周波数が異なる複数のクロック信号CLK~CLKを生成できる。
【0039】
図5は、変形例2に係るクロック発生器100Bのブロック図である。この変形例において、PLL回路200は、分周器240の出力と第3端子T3の間に接続される第1遅延回路250を備える。分周器240の分周比K~Kは等しくてもよいし異なっていてもよい。
【0040】
変形例2によれば、チャンネルごとの第1遅延回路250の遅延量φ~φに応じて、出力クロックCLK1~CLKNの位相を任意にシフトさせることができる。
【0041】
図6は、変形例3に係るクロック発生器100Cのブロック図である。この変形例において、PLL回路200は、発振器230の出力と分周器240の入力の間に接続される第2遅延回路252を備える。
【0042】
変形例3によれば、チャンネルごとの第2遅延回路252の遅延量φ~φに応じて、出力クロックCLK1~CLKNの位相を任意にシフトさせることができる。
【0043】
図7は、変形例4に係るクロック発生器100Dのブロック図である。この変形例において、PLL回路200は、第1端子T1と位相比較回路210の間に設けられ、クロックCLKaに遅延を与える第3遅延回路254を備える。
【0044】
変形例4によれば、チャンネルごとの第3遅延回路254の遅延量φ~φに応じて、出力クロックCLK1~CLKNの位相を任意にシフトさせることができる。
【0045】
図8は、変形例5に係るクロック発生器100Eのブロック図である。この変形例において、PLL回路200には、オフセット回路260を備える。オフセット回路260は、ループフィルタ220の前段に設けられ、位相比較回路210の出力信号に、オフセットVθを重畳する。
【0046】
変形例5によれば、オフセット量Vθを最適化することにより、PLL回路200のセトリング時間を短縮できる。第1遅延回路250は省略してもよいし、その代わりに、第2遅延回路252もしくは254を設けてもよい。
【0047】
実施形態および変形例1~5では、すべてのPLL回路200が同一の構成を有するものとして説明したがその限りでなく、PLL回路200の構成は異なっていてもよい。
【0048】
実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を離脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
100 クロック発生器
200 PLL回路
T1 第1端子
T2 第2端子
T3 第3端子
OUT 出力端子
210 位相比較回路
220 ループフィルタ
230 発振器
240 分周器
250 第1遅延回路
252 第2遅延回路
254 第3遅延回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8