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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160926
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】通水装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
A47K3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065456
(22)【出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 純也
【テーマコード(参考)】
2D132
【Fターム(参考)】
2D132FA01
2D132FC04
2D132FJ15
2D132FJ30
(57)【要約】
【課題】通水部材の形状の複雑化及び大型化の抑制と、操作アームの変形の抑制とを両立する。
【解決手段】シャワーヘッドは、内部に通水路を有する弁ケース21と、通水路を流通する湯水の流れを制御するスライド部材60と、スライド部材60を操作する揺動ボタン70とを備えている。揺動ボタン70には、スライド部材60に連結されるとともに、揺動ボタン70を変位させる操作に基づいてスライド部材60を動かす操作アーム75が設けられている。シャワーヘッドは、弁ケース21を収容するケース部材としての第1ケース14を備えている。操作アーム75は、スライド部材60と第1ケース14との間に配置されている。第1ケース14には、スライド部材60との間に操作アーム75を挟む位置に配置されて、スライド部材60から離間する方向への操作アーム75の変形を規制する規制部81が設けられている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に通水路を有する通水部材と、前記通水路を流通する湯水の流れを制御する弁体と、前記弁体を操作するための操作部材とを備え、
前記操作部材には、前記弁体に連結されるとともに当該操作部材を変位させる操作に基づいて前記弁体を動かす操作アームが設けられている通水装置であって、
前記通水部材を収容するケース部材を備え、
前記操作アームは、前記弁体と前記ケース部材との間に配置され、
前記ケース部材には、前記弁体との間に前記操作アームを挟む位置に配置されて、前記弁体から離間する方向への前記操作アームの変形を規制する規制部が設けられていることを特徴とする通水装置。
【請求項2】
前記ケース部材は、前記通水部材を囲む周壁を備え、
前記規制部は、前記周壁から突出する突出部分である請求項1に記載の通水装置。
【請求項3】
前記ケース部材は、第1ケース及び第2ケースを組み合わせることにより構成され、
前記規制部は、前記第1ケースに設けられ、
前記第2ケースには、前記操作アームとの間に前記規制部を挟む位置に配置されて、前記弁体から離間する方向への前記規制部の変形を規制する補助規制部が設けられている請求項2に記載の通水装置。
【請求項4】
前記第2ケースは、前記通水部材を囲む周壁を備え、
前記補助規制部は、前記周壁から突出する突出部分である請求項3に記載の通水装置。
【請求項5】
前記操作部材は、揺動ボタンであり、
前記操作アームは、前記弁体に設けられた係合凸部が摺動可能に挿入される係合溝を備え、前記操作部材を揺動させる操作に基づいて前記弁体を直線的に往復移動させる請求項1~4のいずれか一項に記載の通水装置。
【請求項6】
シャワーヘッドとして適用され、前記ケース部材は、前記シャワーヘッドの把持部である請求項1~5のいずれか一項に記載の通水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シャワー吐水とストレート吐水とを切り換え可能に構成された水栓の吐水切換機構が開示されている。特許文献1の吐水切換機構は、内部に流路を有する通水部材と、通水部材の内部で湯水の吐水状態を切り換える切換弁体と、切換弁体の位置を操作するシーソー形の切換ボタンと、通水部材を収容するケース部材とを備えている。切換ボタンは、通水部材の外側面に対して揺動可能に支持されている。切換ボタンは、切換弁体の外側面に設けられたピンに外側から係合する一対の操作アームを有している。特許文献1の吐水切換機構は、切換ボタンの揺動に基づいて切換弁体が開閉方向にスライド移動することにより、通水部材の内部の吐水状態が切り換わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-036637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、切換操作などにより切換ボタンに負荷が加わった際に、切換弁体に係合している操作アームに対して、通水部材から離間する方向に変形する力が働く。通水部材から離間する方向への操作アームの変形は、操作アームと通水部材のピンとの係合関係が不安定な状態になる原因になる。そのため、通水部材から離間する方向へ操作アームが過度に変形すると、切換ボタンを操作した際に切換弁体をスムーズに移動させることができなくなる。
【0005】
こうした問題を解決するために、特許文献1の吐水切換機構では、切換弁体を収容する通水部材に操作アームを収容する凹部を設けて、通水部材と切換弁体との間に操作アームを位置させている。そして、凹部の内面を操作アームに近接する位置に設けている。この場合、通水部材の凹部の内面に操作アームが当接することにより、通水部材から離間する方向へ操作アームの変形を抑制できる。しかしながら、通水部材に上記凹部を設けることは、通水部材の形状の複雑化及び大型化を招く。そのため、通水部材が収容されるケース部材の形状によっては、上記凹部を通水部材に設けることが難しいという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する通水装置は、内部に通水路を有する通水部材と、前記通水路を流通する湯水の流れを制御する弁体と、前記弁体を操作するための操作部材とを備え、前記操作部材には、前記弁体に連結されるとともに当該操作部材を変位させる操作に基づいて前記弁体を動かす操作アームが設けられている通水装置であって、前記通水部材を収容するケース部材を備え、前記操作アームは、前記弁体と前記ケース部材との間に配置され、前記ケース部材には、前記弁体との間に前記操作アームを挟む位置に配置されて、前記弁体から離間する方向への前記操作アームの変形を規制する規制部が設けられている。
【0007】
上記構成によれば、操作アームが弁体から離間する方向に変形しようとした場合に、操作アームが規制部に当接することにより、それ以上の操作アームの変形が規制される。規制部は、通水部材を収容するケース部材に設けられているため、規制部を設けることによる通水部材の形状の複雑化及び大型化を抑制できる。
【0008】
上記通水装置において、前記ケース部材は、前記通水部材を囲む周壁を備え、前記規制部は、前記周壁から突出する突出部分であることが好ましい。
規制部は、操作アームに押されて変形してしまう場合がある。上記構成によれば、通水部材を囲む周壁とは別に規制部を設けているため、規制部の変形の影響が周壁にまで及び、周壁も変形してしまうことを抑制できる。したがって、規制部の変形に起因して、通水装置の外観が損なわれることを抑制できる。
【0009】
上記通水装置において、前記ケース部材は、第1ケース及び第2ケースを組み合わせることにより構成され、前記規制部は、前記第1ケースに設けられ、前記第2ケースには、前記操作アームとの間に前記規制部を挟む位置に配置されて、前記弁体から離間する方向への前記規制部の変形を規制する補助規制部が設けられていることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、規制部が弁体から離間する方向に変形しようとした場合に、規制部が補助規制部に当接することにより、それ以上の規制部の変形が規制される。これにより、操作アームに押されて規制部が変形してしまい、規制部による操作アームの変形を抑制する効果が低減することを抑制できる。
【0011】
上記通水装置において、前記補助規制部は、前記周壁から突出する突出部分であることが好ましい。
補助規制部は、規制部に押されて変形してしまう場合がある。上記構成によれば、通水部材を囲む周壁とは別に補助規制部を設けているため、補助規制部の変形の影響が周壁にまで及び、周壁も変形してしまうことを抑制できる。したがって、補助規制部の変形に起因して、通水装置の外観が損なわれることを抑制できる。
【0012】
上記通水装置において、前記操作部材は、揺動ボタンであり、前記操作アームは、前記弁体に設けられた係合凸部が摺動可能に挿入される係合溝を備え、前記操作部材を揺動させる操作に基づいて前記弁体を直線的に往復移動させることが好ましい。
【0013】
上記構成とした場合、揺動ボタンの変位方向と、弁体の変位方向が異なることになるため、揺動ボタンと弁体との連結部分である操作アームにより大きな負荷が加わりやすい。そのため、操作アームは、その負荷から逃げる方向に変形しやすくなる。したがって、上記構成とした場合には、操作アームの変形を抑制する効果がより顕著に得られる。
【0014】
上記通水装置は、シャワーヘッドとして適用され、前記ケース部材は、前記シャワーヘッドの把持部である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通水部材の形状の複雑化及び大型化の抑制と、操作アームの変形の抑制とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】シャワーヘッドの正面図。
図2】シャワーヘッドの分解斜視図。
図3】止水状態を示す図1のA-A線部分断面図。
図4】吐水状態を示す図1のA-A線部分断面図。
図5】揺動ボタンの斜視図。
図6】第1ケースの斜視図。
図7図1のB-B線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の通水装置をシャワーヘッドに具体化した一実施形態を説明する。シャワーヘッドは、一般的に、キッチン、洗面所、浴室等の水栓にホースを介して接続して使用される。本実施形態のシャワーヘッドは、操作部材を操作することにより、ホースからシャワーヘッドに供給された湯水を吐出する吐水状態と、湯水の吐出を停止する止水状態とに切り換え可能である。
【0018】
図1に示すように、シャワーヘッド10は、その基端側の部分である棒状の把持部11と、その先端側の部分である円板状のヘッド部12とを備える。把持部11は、使用者がシャワーヘッド10を使用する際に手で把持する部分であり、図示しないホースに接続される部分である。ヘッド部12は、シャワーヘッド10に供給された湯水を吐出する部分であり、把持部11の先端側に設けられている。なお、以下、シャワーヘッド10及びこれを構成する各部材において基端側、先端側とは、図1に示す方向をいう。
【0019】
図1及び図2に示すように、シャワーヘッド10は、ヘッド部12の前側部分を構成するフェイス部13と、把持部11の前側部分を構成する第1ケース14と、ヘッド部12の後側部分及び把持部11の後側部分を構成する第2ケース15とを備えている。フェイス部13は、シャワーヘッド10に供給された湯水をシャワー状の水流に変換して吐水するための構成である。
【0020】
第1ケース14及び第2ケース15は、前後方向に組み合わせることによりシャワーヘッド10の外殻をなす中空のケース部材を形成する。第1ケース14及び第2ケース15における把持部11を構成する部分は、それぞれ断面略円弧状であり、互いに組み合わせることにより断面環状の周壁11aを形成する。また、第1ケース14には、後述する揺動ボタン70を外部に露出させるための窓部14aが設けられている。
【0021】
図2図4に示すように、シャワーヘッド10は、内部に湯水の通水路を有する通水部材として、インナーパイプ20及び弁ケース21を備えている。なお、図3及び図4では、第1ケース14及び第2ケース15の図示を省略している。
【0022】
インナーパイプ20は、両端が開口する略円筒状の部材であり、把持部11内の基端側の部分に配置される。インナーパイプ20の基端側の端部は、ホースが接続される部分である。インナーパイプ20の先端側の端部には、雄ネジ20aが形成されている。
【0023】
弁ケース21は、両端が開口する略円筒状の部材であり、把持部11内の基端側の部分に配置される。弁ケース21の基端側の端部には、インナーパイプ20の雄ネジ20aに螺合する雌ネジ21aが形成されている。弁ケース21の内周面には、基端側(上流側)から先端側(下流側)に向かって段差状に縮径する縮径部22が設けられている。縮径部22の基端側の面は、後述する主弁40の弁座として機能する主弁座22aである。
【0024】
弁ケース21の内部における縮径部22よりも基端側の部分には、ケース体30が固定されている。ケース体30は、先端側に開口する有底筒状の部材であり、底壁31と、底壁31の周縁に沿って形成される筒状の周壁32とを備えている。ケース体30の周壁32の外径は、ケース体30が固定される部位における弁ケース21の内径よりも小さい。ケース体30の底壁31の中央部には、底壁31を貫通する貫通孔31aが形成されている。ケース体30は、弁ケース21の内周面の周方向の一部に設けられる段差部21bと、インナーパイプ20の先端との間に挟持されることにより、弁ケース21内に固定されている。
【0025】
弁ケース21の内部における縮径部22から基端側の部分には、主弁40が収容されている。主弁40は、全体として筒状の部材であり、基端側に位置する大径部41と、先端側に位置する小径部42とを備える。主弁40の大径部41は、ケース体30の周壁32の内側に挿入されており、ケース体30との間に圧力室Pを形成する。主弁40の大径部41の外周面には、ケース体30の周壁32の内周面との間をシールする環状のシール部材S1が取り付けられている。
【0026】
主弁40の小径部42は、弁ケース21の縮径部22に挿入されている。主弁40の小径部42の外周面には、主弁40の軸方向に延びる複数のリブ43が設けられている。リブ43は、主弁40の小径部42が縮径部22内を移動する際のがたつきを抑制するための部位であり、小径部42の外周面の周方向に沿って略等間隔となる位置に複数、設けられている。小径部42の外径は、弁ケース21の縮径部22の内径よりも小さい。主弁40のリブ43と弁ケース21の縮径部22の内周面との間には、僅かな隙間が設けられている。
【0027】
主弁40の大径部41の外周面には、シール部材S2が取り付けられている。シール部材S2は、大径部41を囲む環状であり、弁ケース21に設けられる主弁座22aに対向する対向部分を有している。主弁40の内周面には、基端側から先端側に段差状に縮径部44が設けられている。縮径部44は、ケース体30の底壁31に対向する環状の面を有している。当該環状の面には、止水状態において、後述する副弁50との間をシールするための環状のシール部材S3が取り付けられている。シール部材S3におけるケース体30の底壁31に対向する面は、後述する副弁50の弁座として機能する副弁座44aである。
【0028】
主弁40とケース体30との間に形成される圧力室Pの内部には、副弁50が収容されている。副弁50は、主弁40の軸方向に延びる棒状の部材である。副弁50の基端部は、ケース体30の底壁31の貫通孔31aに挿入されている。副弁50の基端部と貫通孔31aの内周面との間には、湯水が浸入可能な僅かな隙間が設けられている。副弁50の先端部は、主弁40の小径部42内に挿入されている。副弁50の先端部と、主弁40の小径部42の内周面との間には、湯水が浸入可能な僅かな隙間が設けられている。
【0029】
副弁50の軸方向の中央部には、径方向外方に突出する鍔部51が設けられている。鍔部51は、主弁40の縮径部44の内径よりも大きく形成されるとともに、主弁40に設けられる副弁座44aに対向する面を有している。
【0030】
副弁50の鍔部51とケース体30の底壁31との間には、スプリングなどにより構成される付勢部材F1が配置されている。付勢部材F1は、鍔部51を副弁座44aに向かって付勢する。副弁50の鍔部51が副弁座44aに当接している状態(図3に示す止水状態)にあるとき、副弁50の先端は、主弁40よりも先端側に突出している。
【0031】
弁ケース21の内部における縮径部22よりも先端側の部分には、スライド部材60が弁ケース21の軸方向にスライド移動可能に収容されている。スライド部材60は、弁ケース21の軸方向に延びるとともに両端が開口する略円筒状の部材である。スライド部材60の周壁61の内部は、湯水が流れる通水路である。スライド部材60の周壁61の外径は、弁ケース21の内部における縮径部22よりも先端側の部分の内径よりも小さい。スライド部材60の外周面には、弁ケース21の内周面との間をシールする環状のシール部材S4が取り付けられている。スライド部材60の先端側の端部は、フェイス部13に対して水密に接続されている。
【0032】
スライド部材60の周壁61の内部には、板状の押込部62が周壁61と一体に形成されている。押込部62は、主弁40及び副弁50を主弁座22a及び副弁座44aから離間する方向に押し込む部位である。押込部62は、周壁61よりも基端側に突出するとともに、主弁40及び副弁50の両方の先端側の端面に当接可能な大きさに形成されている。
【0033】
スライド部材60の軸方向中央部の外周面には、径方向外方へ突出する円柱状の係合凸部63が設けられている。係合凸部63は、スライド部材60の周壁61の外周面における180度離れた二箇所に設けられるとともに、これら二つの係合凸部63は、互いに反対となる方向に突出している。また、弁ケース21には、スライド部材60の係合凸部63を径方向外方に露出させるための取付孔23が設けられている。取付孔23は、係合凸部63に対応する二箇所にそれぞれ設けられている。
【0034】
図2に示すように、弁ケース21の先端側の部分には、スライド部材60を操作する操作部材としての揺動ボタン70を取り付けるための取付部が設けられている。具体的には、弁ケース21の先端側の部分には、上記取付部として、外周面から突出する一対の軸支部24が設けられている。軸支部24のそれぞれには、貫通孔24aが設けられている。一対の軸支部24に設けられる各貫通孔24aは、弁ケース21の軸方向と直交する同一直線状に位置するように設けられている。各貫通孔24aには、回動軸25が挿入されている。
【0035】
弁ケース21における軸支部24よりも先端側には、上記取付部として、外周面から突出する係合筒部26が設けられている。係合筒部26には、回動軸25の軸方向と平行な方向に延びる貫通孔26aが設けられている。係合筒部26の貫通孔26aには、2つの鋼球28が収容されるとともに、2つの鋼球28の間には、スプリングなどにより構成される付勢部材F2が配置されている。付勢部材F2は、係合筒部26の両端の開口からそれぞれ鋼球28が突出するように2つの鋼球28を付勢する。
【0036】
図2及び図5に示すように、揺動ボタン70は、一方側に開口する箱状の部材であり、外壁71と、外壁71の周縁に沿って形成される周壁72とを備えている。周壁72の対向する二箇所には、回動軸25が挿通される軸孔73が設けられている。また、外壁71の内面には、回動軸25が挿通される軸孔(図示略)を有する軸支部74が設けられている。揺動ボタン70は、弁ケース21の軸支部24、並びに揺動ボタン70の周壁72の軸孔73及び軸支部74の軸孔(図示略)に挿通される回動軸25によって弁ケース21に取り付けられている。また、弁ケース21に取り付けられた揺動ボタン70は、回動軸25を中心に揺動可能である。
【0037】
揺動ボタン70は、周壁72の端縁から突出する一対の操作アーム75を備えている。操作アーム75は、先端部が他の部位に接続されていない自由端である片持ち形状のアーム部分である。操作アーム75の内面には、操作アーム75の突出方向に延びる係合溝75aが設けられている。操作アーム75の係合溝75a内に、スライド部材60の係合凸部63が摺動可能に挿入されることにより、操作アーム75とスライド部材60とが連結される。揺動ボタン70を揺動させる操作に伴って係合凸部63が係合溝75a内を摺動する。これにより、スライド部材60は、弁ケース21の軸方向にスライド移動、即ち、直線的に往復移動する。つまり、係合溝75aを有する操作アーム75と、スライド部材60の係合凸部63は、回動軸25を中心とする揺動ボタン70の回転運動(揺動)をスライド部材60の直線往復運動に変換するカム機構となっている。
【0038】
揺動ボタン70は、周壁72の端縁から突出する一対の保持アーム76を備えている。保持アーム76の内面には、保持アーム76の突出方向に並ぶ一対の凹部77が設けられている。凹部77は、弁ケース21の係合筒部26から突出する鋼球28が凹凸の関係により係合する部分である。凹部77に鋼球28が係合することにより、揺動ボタン70の位置が吐水位置又は止水位置に保持される。
【0039】
揺動ボタン70の吐水位置は、湯水が吐出される吐水状態とする位置であり、止水位置は、湯水の吐出が停止される止水状態とする位置である。なお、図3に示す揺動ボタン70の位置が止水位置であり、図4に示す揺動ボタン70の位置が吐水位置である。揺動ボタン70は、使用者の操作に基づいて回動軸25を中心に揺動することにより吐水位置と止水位置とを変位する。揺動ボタン70は、吐水位置と止水位置との間の範囲として設定される揺動範囲内で揺動する。
【0040】
図6及び図7に示すように、把持部11の前側部分を構成する第1ケース14は、把持部11の周壁11aを構成する第1周壁80と、第1周壁80の内面から弁ケース21側に向かって突出する板状の一対の規制部81とを備えている。一対の規制部81は、弁ケース21の軸方向に直交する方向において、窓部14aを間に挟んだ二箇所に設けられている。
【0041】
図7に示すように、各規制部81は、把持部11内において、弁ケース21の取付孔23を覆うように取付孔23の径方向外方に設けられている。したがって、各規制部81は、スライド部材60との間に揺動ボタン70の操作アーム75を挟む位置に配置されている。各規制部81は、操作アーム75に対して近接又は当接している。より具体的には、各規制部81は、操作アーム75における係合凸部63が摺動する範囲の部分に対して近接又は当接している。規制部81と操作アーム75との間の距離は、例えば、操作アーム75の厚さ以下である。また、各規制部81は、揺動ボタン70が揺動範囲内のいずれの位置にある場合にも、操作アーム75に対して近接又は当接するように、弁ケース21の軸方向に所定の長さを有する板状に形成されている。
【0042】
図2及び図7に示すように、把持部11の後側部分を構成する第2ケース15は、把持部11の周壁11aを構成する第2周壁82と、第2周壁82の内面から弁ケース21側に向かって突出する壁状の一対の補助規制部83とを備えている。図7に示すように、一対の補助規制部83はそれぞれ、把持部11内において、操作アーム75との間に第1ケース14の規制部81を挟む位置に配置されるとともに、規制部81に対して近接又は当接している。補助規制部83と規制部81との間の距離は、例えば、規制部81の厚さ以下である。
【0043】
次に、シャワーヘッド10の止水状態及び吐水状態について説明する。以下では、水栓及びホースからシャワーヘッド10のインナーパイプ20に湯水が供給されている状態を前提として説明する。
【0044】
図3は、インナーパイプ20に供給されている湯水の吐出を停止する止水状態にあるシャワーヘッド10の内部を示している。止水状態にあるとき、揺動ボタン70は、操作アーム75の先端部が弁ケース21の先端側に傾いた止水位置に保持される。このとき、スライド部材60は、操作アーム75により弁ケース21の先端側へと引き上げられて、主弁40及び副弁50から離れた位置に保持される。
【0045】
止水状態にあるとき、付勢部材F1の付勢力に基づいて、副弁50の鍔部51が主弁40に設けられる副弁座44aに当接した状態になる。副弁50の鍔部51と、シール部材S3により構成される副弁座44aとが当接することにより、主弁40の縮径部44の内周面と副弁50との間が止水される。このとき、圧力室Pは、弁ケース21の貫通孔26aを通じて湯水が入り込むのみで下流側へと排出されない。そのため、圧力室Pは、内圧が上昇した高圧状態になる。
【0046】
そして、高圧状態にある圧力室Pの内圧に基づいて、主弁40の大径部41の外周面に取り付けられたシール部材S2が、弁ケース21の縮径部22に設けられる主弁座22aに当接した状態になる。これにより、弁ケース21の縮径部22と主弁40との間が止水される。その結果、フェイス部13へ湯水が供給されず、フェイス部13からの湯水の吐水が停止される。
【0047】
図4は、インナーパイプ20に供給されている湯水を吐出する吐出状態にあるシャワーヘッド10の内部を示している。吐出状態にあるとき、揺動ボタン70は、操作アーム75の先端部が弁ケース21の基端側に傾いた吐水位置に保持される。このとき、スライド部材60は、操作アーム75により弁ケース21の基端側へと引き下げられて、スライド部材60に設けられた押込部62が主弁40及び副弁50に当接する。そして、スライド部材60は、圧力室Pの内圧及び付勢部材F1の付勢力に抗して主弁40及び副弁50を基端側に押し込む位置に保持される。
【0048】
吐水状態にあるとき、主弁40は、スライド部材60の押込部62により基端側へと押し込まれて、弁ケース21の縮径部22に設けられる主弁座22aから離間した状態になる。副弁50は、スライド部材60の押込部62により基端側へと押し込まれて、鍔部51が主弁40に設けられる副弁座44aから離間した状態になる。
【0049】
吐水状態にあるとき、インナーパイプ20に供給された湯水は、弁ケース21内の通水路へと流れる。弁ケース21に流れ込んだ湯水は、主に、主弁40及びケース体30の外側から縮径部22へと流れ、縮径部22と主弁40の小径部42との間を通って縮径部22よりも下流側に流れる。また、弁ケース21に流れ込んだ湯水の一部は、圧力室Pへと流れ込み、主弁40の内周面と副弁50との間を通って縮径部22よりも下流側に流れる。弁ケース21の縮径部22よりも下流側に流れ込んだ湯水は、スライド部材60の内部を通ってフェイス部13へと供給される。その結果、フェイス部13から湯水が吐出される。
【0050】
なお、副弁50は、止水状態から吐水状態へ移行する際に必要になる操作力を低減するために設けられている。図3に示す止水状態にあるとき、副弁50の先端は、主弁40よりも先端側に突出している。そのため、揺動ボタン70の操作に基づいて止水状態から吐水状態へ移行する際には、副弁50が先に押し込まれて副弁座44aから離間する。これにより、圧力室Pの湯水の一部が下流側へと流れて圧力室Pの圧力が低下する。その後、主弁40が押し込まれて主弁座22aから離間する。圧力室Pの圧力を低下させた後に主弁40が押し込まれるため、圧力室Pの圧力に抗して主弁40を押し込む際に必要になる操作力を低減できる。
【0051】
本実施形態では、インナーパイプ20の内部、及び弁ケース21内部かつスライド部材60の内部となる部分が通水路となる。また、本実施形態では、主弁40、副弁50、及びスライド部材60により、通水路を流通する湯水の流れを制御する弁体が構成される。
【0052】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図7に示すように、本実施形態では、第1ケース14に対して、操作アーム75の径方向外方側に配置される規制部81を設けている。この規制部81は、操作アーム75に対して近接又は当接している。そのため、操作アーム75がスライド部材60から離間する方向に変形しようとした場合に、操作アーム75が規制部81に当接することにより、それ以上の操作アーム75の変形が規制される。なお、操作アーム75がスライド部材60から離間する方向は、換言すると、一対の操作アーム75が開いてスライド部材60の係合凸部63から操作アーム75が外れる方向である。
【0053】
さらに、本実施形態では、第2ケース15に対して、規制部81の径方向外方側に配置される補助規制部83を設けている。この補助規制部83は、規制部81に対して近接又は当接している。そのため、操作アーム75に押されて、スライド部材60から離間する方向に規制部81が変形しようとした場合に、規制部81が補助規制部83に当接することにより、それ以上の規制部81の変形が規制される。
【0054】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)シャワーヘッド10は、内部に通水路を有する弁ケース21と、通水路を流通する湯水の流れを制御する主弁40、副弁50、及びスライド部材60と、スライド部材60を操作するための操作部材としての揺動ボタン70とを備えている。揺動ボタン70には、スライド部材60に連結されるとともに、揺動ボタン70を変位させる操作に基づいてスライド部材60を動かす操作アーム75が設けられている。シャワーヘッド10は、弁ケース21を収容するケース部材としての第1ケース14を備えている。操作アーム75は、スライド部材60と第1ケース14との間に配置されている。第1ケース14には、スライド部材60との間に操作アーム75を挟む位置に配置されて、スライド部材60から離間する方向への操作アーム75の変形を規制する規制部81が設けられている。
【0055】
上記構成によれば、スライド部材60から離間する方向への操作アーム75の変形が規制部81により規制される。規制部81は、弁ケース21を収容する第1ケース14に設けられているため、規制部81を設けることによる弁ケース21の形状の複雑化及び大型化を抑制できる。したがって、上記構成によれば、弁ケース21に規制部81を形成することが難しい場合であっても、操作アーム75の変形を効果的に抑制できる。
【0056】
(2)第1ケース14は、弁ケース21を囲む第1周壁80を備え、規制部81は、第1周壁80から突出する突出部分である。
規制部81は、操作アーム75に押されて変形してしまう場合がある。上記構成によれば、弁ケース21を囲む第1周壁80とは別に規制部81を設けているため、規制部81の変形の影響が第1周壁80にまで及び、第1周壁80も変形してしまうことを抑制できる。したがって、規制部81の変形に起因して、シャワーヘッド10の外観が損なわれることを抑制できる。
【0057】
(3)弁ケース21を収容するケース部材は、第1ケース14及び第2ケース15を組み合わせることにより構成されている。第2ケース15には、操作アーム75との間に規制部81を挟む位置に配置されて、スライド部材60から離間する方向への規制部81の変形を規制する補助規制部83が設けられている。
【0058】
上記構成によれば、スライド部材60から離間する方向への規制部81の変形が補助規制部83により規制される。これにより、操作アーム75に押されて規制部81が変形してしまい、規制部81による操作アーム75の変形を抑制する効果が低減することを抑制できる。また、操作アーム75に押されて規制部81が変形することに伴って、規制部81が設けられている第1周壁80も変形してしまい、シャワーヘッド10の外観が損なわれることを抑制できる。
【0059】
(4)第2ケース15は、弁ケース21を囲む第2周壁82を備え、補助規制部83は、第2周壁82から突出する突出部分である。
補助規制部83は、規制部81に押されて変形してしまう場合がある。上記構成によれば、弁ケース21を囲む第2周壁82とは別に補助規制部83を設けているため、補助規制部83の変形の影響が第2周壁82にまで及び、第2周壁82も変形してしまうことを抑制できる。したがって、補助規制部83の変形に起因して、シャワーヘッド10の外観が損なわれることを抑制できる。
【0060】
(5)操作部材は、揺動ボタン70であり、操作アーム75は、スライド部材60に設けられた係合凸部63が摺動可能に挿入される係合溝75aを備え、揺動ボタン70を揺動させる操作に基づいてスライド部材60を直線的に往復移動させる。
【0061】
上記構成とした場合、揺動ボタン70の変位方向と、スライド部材60の変位方向が異なる。そのため、揺動ボタン70とスライド部材60との連結部分である操作アーム75により大きな負荷が加わる。これにより、一対の操作アーム75は、その負荷から逃げる方向、即ち、一対の操作アーム75が開く方向に変形しやすくなる。したがって、上記構成とした場合には、操作アーム75の変形を抑制する効果がより顕著に得られる。
【0062】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・第2ケース15に規制部81を設けるとともに、第1ケース14に補助規制部83を設ける構成としてもよい。
【0063】
・第1周壁80から突出する規制部81の突出方向、及び第2周壁82から突出する補助規制部83の突出方向は上記実施形態に限定されない。なお、操作アーム75が変形する方向とは異なる方向に突出する規制部81及び補助規制部83とすることが好ましい。この場合、規制部81及び補助規制部83の変形の影響が第1周壁80及び第2周壁82に及び難くなる。
【0064】
・補助規制部83の形状を変更してもよい。例えば、第2ケース15の第2周壁82から突出する突起状の補助規制部83としてもよいし、第2ケース15の第2周壁82の一部を部分的に肉厚に形成し、第2周壁82の内面の一部を補助規制部83としてもよい。また、補助規制部83の数を変更してもよい。例えば、片側に2個以上の補助規制部83を設けてもよい。また、補助規制部83を省略してもよい。
【0065】
・規制部81の形状を変更してもよい。例えば、弁ケース21の軸方向の長さが短い形状の規制部81として、揺動ボタン70が特定の位置にある場合にのみ、操作アーム75に対して近接又は当接する形状としてもよい。この場合、少なくとも吐水位置、即ち、弁体に作用する付勢力に抗する位置に弁体が位置するときの揺動ボタン70の位置において、操作アーム75に対して近接又は当接する形状とすることが好ましい。また、第1ケース14の第1周壁80から突出する突起状の規制部81としてもよい。また、補助規制部83を省略した構成において、第1ケース14の第1周壁80の一部を部分的に肉厚に形成し、第1周壁80の内面の一部を規制部81としてもよい。
【0066】
・上記実施形態では、第1ケース14及び第2ケース15の二つの分割ケースを組み合わせることによりケース部材が構成されていたが、ケース部材を構成する分割ケースの数及び分割方法は上記実施形態に限定されない。また、ケース部材は、一つの部材により構成されていてもよい。
【0067】
・通水路を流通する湯水の流れを制御する弁体及び通水部材の構成は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、主弁40とスライド部材60とが一体に形成されている構成であってもよいし、副弁50を備えない構成であってもよい。
【0068】
・操作部材は、回動軸25を中心に揺動する揺動ボタン70に限定されるものではなく、弁体に連結される操作アーム75を備える構成であればよい。例えば、操作部材は、弁ケース21の軸方向にスライド移動するスライドボタンであってもよい。
【0069】
・弁体及び操作部材は、湯水の吐水及び止水を切り換える構成に限定されるものではなく、通水路を流通する湯水の流れを制御する構成全般に適用できる。例えば、シャワー吐水とストレート吐水とを切り換えるための弁体及び操作部材であってもよい。
【0070】
・上記実施形態の構成は、シャワーヘッド10に限定されず、通水路を流通する湯水の流れを制御する弁体及び操作部材を備える通水装置全般に適用できる。
【符号の説明】
【0071】
10…シャワーヘッド、14…第1ケース、15…第2ケース、21…弁ケース、60…スライド部材、70…揺動ボタン、75…操作アーム、81…規制部、83…補助規制部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7