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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160978
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】外科手術システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20221013BHJP
   A61B 17/29 20060101ALI20221013BHJP
   B25J 3/00 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
A61B34/35
A61B17/29
B25J3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118459
(22)【出願日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2021065114
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 薫
【テーマコード(参考)】
3C707
4C160
【Fターム(参考)】
3C707AS35
3C707BS13
3C707BS26
3C707CS08
3C707CY29
3C707ES03
3C707ET02
3C707HS27
3C707HT04
3C707JT04
3C707JU12
3C707JU15
4C160GG32
4C160NN02
4C160NN03
4C160NN09
4C160NN10
(57)【要約】
【課題】手術器具の細長要素の経路長が変化する場合であっても、エンドエフェクタの剪断力や把持力の変化を抑制可能な手術支援システムを提供する。
【解決手段】外科手術システム100は、先端側に手術器具4が取り付けられるロボットアーム60を含む医療用マニピュレータ1と、手術器具4を動作させる操作を受け付ける操作用マニピュレータアーム21を含む遠隔操作装置2と、遠隔操作装置2からの指令に基づいて手術器具の動作を制御する制御部31とを備える。そして、制御部31は、エンドエフェクタ部材430aと回転部材44cとの間の第1細長要素W1の経路長が変化する条件を監視し、条件に応じて補正した回転角度で回転部材44cが回転するようにアクチュエータ712cを制御する。
【選択図】図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に手術器具が取り付けられる取付部を含むロボットアームを備えた患者側装置と、
前記手術器具を動作させる操作を受け付ける操作部を含む操作者側装置と、
前記操作部からの指令に基づいて前記手術器具の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記手術器具は、
シャフトと、
前記シャフトの遠位端に接続される第1支持体と、
前記第1支持体の遠位端に、前記シャフトの軸方向に対して直交する第1軸周りに回転可能に支持される第2支持体と、
前記第2支持体の遠位端に、前記シャフトの軸方向および前記第1軸に対して直交する第2軸周りに回転可能に支持される第1プーリ部を有する第1ジョー部材と、
前記第2支持体の遠位端に、前記シャフトの軸方向および前記第1軸に対して直交する前記第2軸周りに回転可能に支持される第2プーリ部を有する第2ジョー部材と、
前記第1ジョー部材を駆動するための第1細長要素と、
前記シャフトの近位端側に配置され、回転により前記第1細長要素を駆動する第1回転部材と、を備え、
前記取付部は、取り付けられた前記手術器具の前記第1回転部材を駆動する第1アクチュエータを含み、
前記制御装置は、前記第1ジョー部材と前記第1回転部材との間の前記第1細長要素の経路長が変化する条件を監視し、前記操作部から所定の回転角度で前記第1回転部材を回転させる指令を受けた場合に、前記条件に応じて補正した回転角度で前記第1回転部材が回転するように前記第1アクチュエータを制御する、外科手術システム。
【請求項2】
前記手術器具は、前記第1軸周りに回転可能に配置され、前記第1細長要素を案内するための第1プーリと、前記第2支持体の前記遠位端と近位端との間に配置され、前記第1細長要素を案内するための第2プーリと、を備え、
前記第1プーリおよび前記第2プーリは、前記シャフトと前記第1プーリ部との間で前記第1細長要素を案内するように配置されている、請求項1に記載の外科手術システム。
【請求項3】
前記第1軸を含み、かつ、前記第2軸に垂直な第1平面に対して、前記第1プーリの回転軸は第1の側に配置され、
第1の方向は、前記第2支持部材が前記第1軸周りに前記第1の側に向かって回転する方向である、請求項2に記載の外科手術システム。
【請求項4】
前記第1プーリおよび前記第2プーリは、前記第2軸を含み、かつ、前記第1軸に垂直な第2平面に対して第3の側に配置され、
前記医療器具は、
前記第1軸に回転可能に配置され、前記第2平面に対して前記第3の側と反対の第4の側に配置される第3プーリと、
前記第2支持体の前記遠位端と近位端との間に配置され、前記第2平面に対して前記第3の側と反対の前記第4の側に配置され、前記第1平面に対して前記第2の側に配置される第4プーリと、を備え、
前記第1細長要素は、前記エンドエフェクタに固定される第1固定部と、前記第1固定部と前記シャフトの間で前記第1および第2プーリによって案内される第1部分と、前記第1固定部と前記シャフトの間で前記第3および第4プーリによって案内される第2部分と、を備える、請求項2または3に記載の外科手術システム。
【請求項5】
前記エンドエフェクタは、前記第2軸に回転可能な前記第1プーリ部を有する前記第1ジョー部材および前記第2軸に回転可能な前記第2プーリ部を有する前記第2ジョー部材を含み、
前記第1プーリ部は、前記第1平面に対して前記第1の側に配置され、
前記第2プーリ部は、前記第1平面に対して前記第1の側の反対の第2の側に配置され、
前記第1細長要素は、前記第1ジョー部材を駆動する、請求項4に記載の外科手術システム。
【請求項6】
前記手術器具は、
前記第2プーリ部に固定される第2固定部、第3部分および第4部分を含み、前記第2ジョー部材を駆動するための第2細長要素と、
前記シャフトの近位端側に配置され、回転により前記第2細長要素を駆動する第2回転部材と、
前記第1軸周りに回転可能に配置され、前記第2平面に対して前記第4の側に配置され、前記第3部分を案内するための第5プーリと、
前記第2支持体の前記遠位端と近位端との間に配置され、前記第2平面に対して前記第4の側に配置され、前記第3部分を案内するための第6プーリと、
前記第1軸周りに回転可能に配置され、前記第2平面に対して前記第3の側に配置され、前記第4部分を案内するための第7プーリと、
前記第2支持体の前記遠位端と近位端との間に配置され、前記第2平面に対して前記第3の側に配置され、前記第4部分を案内するための第8プーリと、を備えており、
前記取付部は、取り付けられた前記手術器具の前記第2回転部材を駆動する第2アクチュエータを含み、
前記制御装置は、前記第2支持体が前記第1軸周りに前記第1の方向とは反対の第2の方向に所定の角度以上回転したか否かを判定し、前記第2支持体が前記所定の角度以上回転していない場合は、第1の回転条件で前記第2回転部材が回転するように前記第2アクチュエータを制御し、前記第2支持体が前記所定の角度以上回転した場合は、第2の回転条件で前記第2回転部材が回転するように前記第2アクチュエータを制御する、請求項5に記載の外科手術システム。
【請求項7】
前記手術器具は、
前記第2支持体に固定される第3固定部、第5部分および第6部分を含み、前記第2支持体を駆動するための第3細長要素と、
前記シャフトの近位端側に配置され、回転により前記第3細長要素を駆動する第3回転部材と、を備え、
前記取付部は、取り付けられた前記手術器具の前記第3回転部材を駆動する第3アクチュエータを含む、請求項1~6の何れか1項に記載の外科手術システム。
【請求項8】
前記条件は、前記第2支持体が前記第1軸周りに所定の角度以上回転したか否かであり、
前記制御部は、前記第2支持体が前記所定の角度以上回転していない場合、前記所定の回転角度で前記第1回転部材が回転するように前記第1アクチュエータを制御し、前記第2支持体が前記所定の角度以上回転した場合、前記第2支持体の回転角度に応じて前記所定の回転角度より大きな回転角度で前記第1回転部材が回転するように前記第1アクチュエータを制御する、請求項1~7の何れか1項に記載の外科手術システム。
【請求項9】
前記第2支持体が前記所定の角度以上回転した場合、前記第1細長要素は、前記第1プーリよりも、前記第2プーリに多く案内される、請求項8に記載の外科手術システム。
【請求項10】
前記シャフトは、前記シャフトの軸周りに回転可能に配置されており、
前記条件は、前記シャフトが初期位置から前記シャフトの軸周りに回転した回転角度であり、
前記制御部は、前記シャフトが前記初期位置から回転していない場合、前記所定の回転角度で前記第1回転部材が回転するように前記第1アクチュエータを制御し、前記シャフトが前記初期位置から回転した場合、前記シャフトの回転角度に応じて前記所定の回転角度より小さな回転角度で前記第1回転部材が回転するように前記第1アクチュエータを制御する、請求項1~7の何れか1項に記載の外科手術システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外科手術システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットアームと、ロボットアームの末端に接続されるツール(手術器具)と、入力ハンドル(操作部)とを備えるロボット外科用システムが知られている。例えば、特許文献1には、操作部が受け付けた操作に基づいて手術器具の動作をトルク制御するロボット外科用システムが開示されている。具体的にはロボットアームに設けられた手術器具取付部に配置された4つのモータで手術器具を4自由度で動作させるように構成されている。手術器具は、シャフトの先端側に開閉可能な2つのジョー部材を備え、シャフトの基端側に手術器具取付部の各モータによって回転される4つの被回転部材を備えている。2つの被回転部材と2つのジョー部材のそれぞれはケーブルで接続されている。このロボット外科用システムは、モータにかかるトルクが所定のトルクとなるまで被回転部材を回転させることによってジョー部材を動作させるトルク制御を行っている。ロボット外科用システムの患者側カートは、このようなロボットアームを3本備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6594552号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボット外科用システムの患者側カートの小型化が求められており、特に、助手の医師の術中の作業領域を確保できるように術野周辺のロボットアームの小型化が求められている。術野周辺のロボットアームを小型化するためには、手術器具取付部に配置された4つのモータを小型化することが有効である。モータを小型化するためには従来よりも小型のモータの出力を従来よりも減速比の高い減速機を用いて手術器具を動作させることが有効である。しかしながら、上記特許文献1記載のロボット外科システムのように手術器具を動作させるモータをトルク制御する場合、従来のものよりも減速比の高い減速機を使用すると、手術器具の先端側の挙動がモータのトルクや電流値の変化として反映されにくくなり、モータのトルクや電流値の変化をモニターすることで手術器具の先端側の挙動を検知することが困難になるという問題があった。
【0005】
この問題を解決するためには手術器具を駆動するモータをトルク制御するのに代えて手術器具の動作をモータの回転角度(手術器具の被回転部材の回転角度)で制御することが有効である。手術器具のエンドエフェクタである2つのジョー部材がシザースの場合は、2つのジョー部材が閉じてからさらに所定の回転角度モータを回転させることにより2つのジョー部材間に剪断力が付与される。また、手術器具のエンドエフェクタである2つのジョー部材がグラスパ―の場合は、2つのジョー部材が閉じてからさらに所定の回転角度モータを回転させることにより2つのジョー部材間に把持力が付与される。
【0006】
しかしながら、このような制御で手術器具を動作させる場合、例えば、ジョー部材と被回転部材の間のケーブルの経路長が変化すると、シザースの場合は剪断力が、グラスパ―の場合は把持力が変化するという問題が生じる。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ジョー部材と被回転部材の間のケーブルの経路長が変化する場合でもジョー部材による剪断力や把持力の変化を低減可能な外科手術システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による外科手術システムは、先端側に手術器具が取り付けられる取付部を含むロボットアームを備えた患者側装置と、手術器具を動作させる操作を受け付ける操作部を含む操作者側装置と、操作部からの指令に基づいて手術器具の動作を制御する制御装置と、を備え、手術器具は、シャフトと、シャフトの遠位端に接続される第1支持体と、第1支持体の遠位端に、シャフトの軸方向に対して直交する第1軸周りに回転可能に支持される第2支持体と、第2支持体の遠位端に、シャフトの軸方向および第1軸に対して直交する第2軸周りに回転可能に支持される第1プーリ部を有する第1ジョー部材と、第2支持体の遠位端に、シャフトの軸方向および第1軸に対して直交する第2軸周りに回転可能に支持される第2プーリ部を有する第2ジョー部材と、第1ジョー部材を駆動するための第1細長要素と、シャフトの近位端側に配置され、回転により第1細長要素を駆動する第1回転部材と、を備え、取付部は、取り付けられた手術器具の第1回転部材を駆動する第1アクチュエータを含み、制御装置は、第1ジョー部材と第1回転部材との間の第1細長要素の経路長が変化する条件を監視し、操作部から所定の回転角度で第1回転部材を回転させる指令を受けた場合に、条件に応じて補正した回転角度で第1回転部材が回転するように第1アクチュエータを制御する。
【0009】
この発明の一の局面による外科手術システムでは、上記のように、制御部は、第1ジョー部材と第1回転部材との間の第1細長要素の経路長が変化する条件を監視し、操作部から所定の回転角度で第1回転部材を回転させる指令を受けた場合に、条件に応じて補正した回転角度で第1回転部材が回転するように第1アクチュエータを制御する。これにより、第1細長要素の経路長が変化した場合、補正した回転角度で第1回転部材が回転するように第1アクチュエータを制御するので、ジョー部材間の剪断力や把持力の変化を低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、手術器具の動作をモータの回転角度(手術器具の被回転部材の回転角度)によって制御する場合であっても、手術器具の剪断力や把持力の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態による外科手術システムの構成を示す図である。
図2】一実施形態による患者側装置の構成を示す図である。
図3】一実施形態による患者側装置のロボットアームの構成を示す図である。
図4】一実施形態によるロボットアームにアダプタを介して手術器具が取り付けられた状態を示した斜視図である。
図5】一実施形態によるロボットアームにアダプタを介して手術器具が取り付けられる状態を示した分解斜視図である。
図6】一実施形態による手術器具を下方から見た斜視図である。
図7】一実施形態による手術器具の基体からカバー部を取り外した状態を示した斜視図である。
図8】一実施形態によるアダプタを下方から見た斜視図である。
図9】一実施形態によるアクチュエータを示す図である。
図10】一実施形態による手術器具の基体からカバー部を取り外した状態を示した平面図である。
図11】一実施形態による手術器具のエンドエフェクタを示した斜視図である。
図12】一実施形態による手術器具のエンドエフェクタを示した斜視図である。
図13】一実施形態による手術器具のエンドエフェクタを示した斜視図である。
図14】一実施形態による外科手術システムの制御部の構成を示すブロック図である。
図15】一実施形態による手術器具のエンドエフェクタの手首が屈曲した状態を示した斜視図である。
図16】屈曲角度とワイヤのたるみの関係を示す図である。
図17】一実施形態による手術器具のエンドエフェクタの手首が屈曲した状態を示した斜視図である。
図18】一実施形態による外科手術システムの制御方法を説明するためのフロー図である。
図19】一実施形態による把持型エンドエフェクタを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1図18を参照して、本実施形態による外科手術システム100の構成について説明する。外科手術システム100は、患者側装置である医療用マニピュレータ1と、医療用マニピュレータ1を操作するための操作者側装置である遠隔操作装置2とを備えている。医療用マニピュレータ1は医療用台車3を備えており、移動可能に構成されている。遠隔操作装置2は、医療用マニピュレータ1から離間した位置に配置されており、医療用マニピュレータ1は、遠隔操作装置2により遠隔操作されるように構成されている。術者は、医療用マニピュレータ1に所望の動作を行わせるための指令を遠隔操作装置2に入力する。遠隔操作装置2は、入力された指令を医療用マニピュレータ1に送信する。医療用マニピュレータ1は、受信した指令に基づいて動作する。また、医療用マニピュレータ1は、滅菌された滅菌野である手術室内に配置されている。
【0014】
遠隔操作装置2は、たとえば、手術室の中または手術室の外に配置されている。遠隔操作装置2は、操作用マニピュレータアーム21と、操作ペダル22と、タッチパネル23と、モニタ24と、支持アーム25と、支持バー26とを含む。操作用マニピュレータアーム21は、術者が指令を入力するための操作用のハンドルを構成する。操作用マニピュレータアーム21は、手術器具4に対する操作量を受け付ける。モニタ24は、内視鏡により撮影された画像を表示するスコープ型表示装置である。支持アーム25は、モニタ24の高さを術者の顔の高さに合わせるようにモニタ24を支持する。タッチパネル23は、支持バー26に配置されている。医療用マニピュレータ1は、モニタ24近傍に設けられた図示しないセンサにより術者の頭部を検知することにより、遠隔操作装置2による操作が可能になる。術者は、モニタ24により患部を視認しながら、操作用マニピュレータアーム21および操作ペダル22を操作する。これにより、遠隔操作装置2に指令が入力される。遠隔操作装置2に入力された指令は、医療用マニピュレータ1に送信される。なお、操作用マニピュレータアーム21は、特許請求の範囲の「操作部」の一例である。
【0015】
医療用台車3には、医療用マニピュレータ1の動作を制御する制御部31と、医療用マニピュレータ1の動作を制御するためのプログラムなどが記憶される記憶部32とが設けられている。そして、遠隔操作装置2に入力された指令に基づいて、医療用台車3の制御部31は、医療用マニピュレータ1の動作を制御する。なお、制御部31は、特許請求の範囲の「制御装置」の一例である。
【0016】
また、医療用台車3には、入力装置33が設けられている。入力装置33は、主に施術前に手術の準備を行うために、ポジショナ40、アームベース50、および、複数のロボットアーム60(以下、アーム60)の移動や姿勢の変更の操作を受け付けるように構成されている。
【0017】
図1および図2に示す医療用マニピュレータ1は、手術室内に配置されている。医療用マニピュレータ1は、医療用台車3と、ポジショナ40と、アームベース50と、複数のアーム60とを備えている。アームベース50は、ポジショナ40の先端に取り付けられている。アームベース50は、比較的長い棒形状(長尺形状)を有する。また、複数のアーム60は、各々のアーム60の根元部が、アームベース50に取り付けられている。複数のアーム60は、折り畳まれた姿勢(収納姿勢)をとることが可能に構成されている。アームベース50と、複数のアーム60とは、滅菌ドレープにより覆われて使用される。
【0018】
ポジショナ40は、たとえば、7軸多関節ロボットにより構成されている。また、ポジショナ40は、医療用台車3上に配置されている。ポジショナ40は、アームベース50を移動させる。具体的には、ポジショナ40は、アームベース50の位置を3次元に移動させるように構成されている。
【0019】
また、ポジショナ40は、ベース部41と、ベース部41に連結された複数のリンク部42とを含む。複数のリンク部42同士は、関節部43により連結されている。
【0020】
図1に示すように、複数のアーム60の各々の先端には、手術器具4が取り付けられている。手術器具4は、たとえば、取り換え可能なインストゥルメント、内視鏡6などを含む。
【0021】
図3に示すように、インストゥルメントの先端には、エンドエフェクタ430としての鉗子が設けられている。なお、鉗子は、2つのエンドエフェクタ部材(ジョー部材)430aおよび430bを有している。なお、エンドエフェクタ部材430aおよび430bは、それぞれ、特許請求の範囲の「第1ジョー部材」および「第2ジョー部材」の一例である。
【0022】
次に、アーム60の構成について詳細に説明する。
【0023】
図3に示すように、アーム60は、アーム部61(ベース部62、リンク部63、関節部64)と、アーム部61の先端に設けられる並進移動機構部70とを含む。アーム60は、アーム60の根元側(アームベース50)に対して先端側を3次元に移動させるように構成されている。アーム60は8自由度を有している。なお、複数のアーム60は、互いに同様の構成を有する。
【0024】
並進移動機構部70は、アーム部61の先端側に設けられるとともに手術器具4が取り付けられている。また、並進移動機構部70は、手術器具4を患者Pに挿入する方向に並進移動させる。また、並進移動機構部70は、手術器具4をアーム部61に対して相対的に並進移動させるように構成されている。具体的には、並進移動機構部70には、手術器具4を保持するホルダ71が設けられている。ホルダ71には、サーボモータM2(図14参照)が収容されている。サーボモータM2は、手術器具4に設けられた回転体を回転させるように構成されている。手術器具4の回転体が回転されることにより、鉗子が動作される。
【0025】
アーム部61は、7軸多関節ロボットアームから構成されている。また、アーム部61は、アーム部61をアームベース50に取り付けるためのベース部62と、ベース部62に連結された複数のリンク部63とを含む。複数のリンク部63同士は、関節部64により連結されている。
【0026】
並進移動機構部70は、ホルダ71をY方向に沿って並進移動させることにより、ホルダ71に取り付けられた手術器具4をY方向(シャフト420が延びる方向)に沿って並進移動させるように構成されている。具体的には、並進移動機構部70は、アーム部61の先端に接続される基端側リンク部72と、先端側リンク部73と、基端側リンク部72と先端側リンク部73との間に設けられる連結リンク部74とを含む。また、ホルダ71は、先端側リンク部73に設けられている。
【0027】
そして、並進移動機構部70の連結リンク部74は、基端側リンク部72に対して、先端側リンク部73を、Y方向に沿って相対的に移動させる倍速機構として構成されている。また、基端側リンク部72に対して先端側リンク部73がY方向に沿って相対的に移動されることにより、ホルダ71に取り付けられた手術器具4が、Y方向に沿って並進移動するように構成されている。また、アーム部61の先端は、基端側リンク部72を、Y方向に直交するX方向を軸として回動させるように基端側リンク部72に接続されている。
【0028】
また、図1に示すように、複数のアーム60のうちの一つのアーム60(たとえば、アーム60b)には内視鏡6が取り付けられ、残りのアーム60(たとえば、アーム60a、60cおよび60d)には、内視鏡6以外の手術器具4が取り付けられる。具体的には、手術において、4つのアーム60のうちの1つのアーム60に内視鏡6が取り付けられ、3つのアーム60に内視鏡6以外の手術器具4(鉗子など)が取り付けられる。そして、内視鏡6が取り付けられているアーム60に対して、内視鏡6が取り付けられた状態でピボット位置が教示される。また、内視鏡6以外の手術器具4が取り付けられるアーム60に対して、図示しないピボット位置教示器具が取り付けられた状態でピボット位置が教示される。なお、内視鏡6は、互いに隣り合うように配置されている4つのアーム60のうちの、中央に配置される2つのアーム60(アーム60bおよび60c)のうちのいずれかに取り付けられる。すなわち、ピボット位置は、複数のアーム60毎に個別に設定される。
【0029】
図4図13を参照して、手術器具4、アダプタ500およびドレープ600の構成について説明する。
【0030】
ここで、手術器具4の延びる方向(シャフト420の軸S方向)をY方向とする。手術器具4とアダプタ500とが隣接する方向をZ方向とし、Z方向のうち手術器具4側をZ1方向とし、Z1方向の反対側をZ2方向とする。また、Y方向およびZ方向に直交する方向をX方向とし、X方向のうち一方側をX1方向とし、X方向のうち他方側をX2方向とする。
【0031】
図4および図5に示すように、手術器具4は、外科手術システム100のアーム60のホルダ71に着脱可能に接続される。具体的には、手術器具4は、アーム60にアダプタ500を介して取り外し可能に接続される。アダプタ500は、アーム60を覆うための滅菌処理されたドレープ600をホルダ71との間に挟み込むためのドレープアダプタである。
【0032】
手術器具4は、アダプタ500のZ1方向側に取り付けられる。アダプタ500は、アーム60のZ1方向側に取り付けられる。
【0033】
図5に示すように、ドレープ600は、アーム60を覆う本体部610と、アーム60とアダプタ500との間に挟み込まれる取付部620とを備えている。本体部610は、フィルム状に形成された可撓性フィルム部材により構成されている。可撓性フィルム部材は、熱可塑性ポリウレタンやポリエチレンなどの樹脂材料からなる。本体部610には、ホルダ71とアダプタ500とが互いに係合可能なように、開口部が設けられている。本体部610の開口部には、取付部620が設けられている。取付部620は、樹脂成形部材により構成されている。樹脂成形部材は、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂材料からなる。取付部620は、本体部610に比べて硬く(撓みにくく)形成されている。取付部620は、ホルダ71とアダプタ500とが互いに係合可能なように、開口部が設けられている。
【0034】
図5および図6に示すように、手術器具4は、複数(4個)の回転部材44a、44b、44cおよび44dを有している。回転部材44a~44dは、ハウジング410内に設けられ、Z方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に設けられている。複数の回転部材44a~44dは、エンドエフェクタ430を操作(駆動)するために設けられている。回転部材44b~44dは、シャフト420内に挿通された細長要素W(ワイヤ)により、エンドエフェクタ430と接続されている。これにより、回転部材44b~44dの回転に応じて細長要素W(ワイヤ)が駆動されるとともに、細長要素Wの駆動に応じてエンドエフェクタ430が操作(駆動)される。また、回転部材44aは、ギア42a(図7参照)を介してシャフト420に接続されている。これにより、回転部材44aの回転に応じてシャフト420が回転される。なお、回転部材44c、44dおよび44bは、それぞれ、特許請求の範囲の「第1回転部材」、「第2回転部材」および「第2回転部材」の一例である。
【0035】
複数の回転部材44a~44dの各々は、ホルダ71からの駆動力をエンドエフェクタ430に伝達させるために、アダプタ500の駆動伝達部材510と係合する突起441および442を含む係合部440を含んでいる。突起441および442は、回転部材44a~44dのZ2方向側の表面からアダプタ500側(Z2方向側)に向かって突出している。また、突起441および442は、直線状に複数並んでいる。また、回転部材44aおよび44bに設けられた突起441と、回転部材44cおよび44dに設けられた突起442とは、互いに異なる形状を有している。
【0036】
図5に示すように、アダプタ500は、複数(4個)の駆動伝達部材510を有している。駆動伝達部材510は、アーム60からの駆動力を手術器具4の回転部材44a~44dに伝達するように構成されている。つまり、駆動伝達部材510は、手術器具4の回転部材44a~44dに対応するように設けられている。駆動伝達部材510は、Z方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に設けられている。
【0037】
複数の駆動伝達部材510は、各々、手術器具4の回転部材44a~44dの突起441および442と係合する係合凹部を含む係合部511を含んでいる。係合部511に設けられた係合凹部は、駆動伝達部材510の手術器具4側(Z1方向側)に設けられているとともに、駆動伝達部材510のZ1方向側の表面から手術器具4側とは反対側(Z2方向側)に向かって窪んでいる。複数の駆動伝達部材510は、各々、Z2方向側の面に、ホルダ71の駆動部71bの係合部711に設けられた凸部と係合する係合凹部を含む図8に示す係合部512を含んでいる。
【0038】
アーム60のホルダ71は、複数(4個)の駆動部71bを有している。複数の駆動部71bは、アダプタ500の複数(4個)の駆動伝達部材510に対応するように設けられている。駆動部71bは、係合部711と、アクチュエータ712とを含んでいる。また、アクチュエータ712は、4つのアクチュエータ712a~712dを含む。図9に示すように、アクチュエータ712aは、サーボモータ712a1および減速機712a2を含み、アクチュエータ712bは、サーボモータ712b1および減速機712b2を含み、アクチュエータ712cは、サーボモータ712c1および減速機712c2を含み、アクチュエータ712dは、サーボモータ712d1および減速機712d2を含む。減速機712a2~712d2の減速比は10~150であり、サーボモータ712a1~712d1の回転量(回転角度)を1/10~1/150にして出力し、各係合部711、各係合部711に係合した各駆動伝達部材510、各駆動伝達部材510に係合した各係合部440および各係合部440に接続された回転部材44a~44dを回転させる。減速機712a2~712d2の減速比は30~120が好ましく、減速機712a2の減速比が100、減速機712b2~712d2の減速比が50である。なお、アクチュエータ712c、712dおよび712bは、それぞれ、特許請求の範囲の「第1アクチュエータ」、「第2アクチュエータ」および「第3アクチュエータ」の一例である。
【0039】
係合部711に設けられた係合凸部は、駆動伝達部材510の係合部512に設けられた係合凹部と係合する。係合部711係合凸部は、駆動部71bのZ1方向側の表面からZ1方向側(アダプタ500側)に向かって突出している。
【0040】
アクチュエータ712は、サーボモータ712a1~712d1と減速機712a2~712d2とサーボモータ712a1~712d1の回転角を検出するエンコーダ(図14のエンコーダE2)を有している。アクチュエータ712を構成するサーボモータ712a1~712d1と減速機712a2~712d2とは、係合部711をZ方向に延びる回転軸線回りに回転させるように構成されている。これにより、係合部711と係合したアダプタ500の駆動伝達部材510をZ方向に延びる回転軸線回りに回転させることができるとともに、駆動伝達部材510と係合した手術器具4の回転部材44a~44dを回転軸線回りに回転させることができる。
【0041】
図7および図10に示すように、手術器具4の回転部材44b~44dは、細長要素Wが巻き止められている。具体的には、回転部材44bの上部には、第3細長要素W3の第1部分W3a1の端部が時計回りに巻き止められ、回転部材44bの下部には、第3細長要素W3の第2部分W3a2の端部が反時計回りに巻き止められている。
【0042】
また、第1細長要素W1は、第1部分W1a1、第2部分W1a2および第1部分W1a1と第2部分W1a2との間に設けられた留め具W1b(図13参照)を備えている。留め具W1bが、エンドエフェクタ部材430aに固定されている。また、回転部材44cの上部には、第1細長要素W1の第1部分W1a1の端部が反時計回りに巻き止められ、回転部材44bの下部には、第1細長要素W1の第2部分W1a2の端部が時計回りに巻き止められている。なお、留め具W1bは、特許請求の範囲の「第1固定部」の一例である。
【0043】
また、第2細長要素W2は、第1部分W2a1、第2部分W2a2および第1部分W2a1と第2部分W2a2との間に設けられた留め具W2b(図12参照)を備えている。留め具W2bが、エンドエフェクタ部材430bに固定されている。また、回転部材44dの上部には、第2細長要素W2の第1部分W2a1の端部が反時計回りに巻き止められ、回転部材44dの下部には、第2細長要素W2の第2部分W2a2の端部が時計回りに巻き止められている。なお、留め具W2bは、特許請求の範囲の「第2固定部」の一例である。
【0044】
細長要素Wは、回転部材44b~44dの各々から、シャフト420を通り、エンドエフェクタ430に掛けられて、再びシャフト420を通り、回転部材44b~44dに到達している。また、細長要素Wは、内蔵プーリ450に掛けられている。内蔵プーリ450は、プーリ保持部451により保持されている。
【0045】
図10および図11に示すように、回転部材44cは、回転軸を中心に回転することにより、エンドエフェクタ430の一対のエンドエフェクタ部材430aおよび430bのうちのエンドエフェクタ部材430aを操作する。具体的には、回転部材44cは、サーボモータ712c1によって回転されることにより、第1細長要素W1を駆動させる。第1細長要素W1は、シャフト420の内部を介してエンドエフェクタ部材430aと回転部材44cとを接続する。回転部材44cは、C1方向(図10参照)に回転することにより、第1細長要素W1の第1部分W1a1を引っ張ってエンドエフェクタ部材430aをエンドエフェクタ部材430aが開く方向であるC1a方向(図12参照)に駆動する。また、回転部材44cは、C1方向とは反対方向であるC2方向(図10参照)に回転することにより、第1細長要素W1の第2部分W1a2を引っ張ってエンドエフェクタ部材430aをエンドエフェクタ部材430aが閉じる方向であるC2a方向(図12参照)に駆動する。なお、図11においては第2細長要素W2を省略している。
【0046】
回転部材44dは、回転軸を中心に回転することにより、エンドエフェクタ430の一対のエンドエフェクタ部材430aおよび430bのうちのエンドエフェクタ部材430bを操作する。具体的には、回転部材44dは、サーボモータ712d1によって回転されることにより、第2細長要素W2を駆動させる。第2細長要素W2は、シャフト420の内部を介してエンドエフェクタ部材430bと回転部材44dとを接続する。回転部材44dは、C3方向(図10参照)に回転することにより、第2細長要素W2の第1部分W2a1を引っ張ってエンドエフェクタ部材430bをエンドエフェクタ部材430bが開く方向であるC3a方向(図12参照)に駆動する。また、回転部材44dは、C3方向とは反対方向であるC4方向(図10参照)に回転することにより、第2細長要素W2の第2部分W2a2を引っ張ってエンドエフェクタ部材430bをエンドエフェクタ部材430bが閉じる方向であるC4a方向(図12参照)に駆動する。
【0047】
回転部材44bは、回転軸を中心に回転することにより、エンドエフェクタ430の手首部である遠位クレビス460を操作する。具体的には、回転部材44bは、回転することにより、第3細長要素W3を駆動させる。回転部材44bは、C5方向(図10参照)に回転することにより、第3細長要素W3の第1部分W3a1を引っ張って遠位クレビス460をC5a方向(図12参照)に駆動する。また、回転部材44bは、C5方向とは反対方向であるC6方向(図10参照)に回転することにより、遠位クレビス460をC5a方向とは反対方向であるC6a方向(図12参照)に駆動する。
【0048】
ギア443を有する回転部材44aは、シャフト420の近位端に接続されたギア42aとギア443が係合した状態で、回転軸を中心に回転することにより、シャフト420を操作回転させて、エンドエフェクタ430を回転させる。具体的には、回転部材44aは、C7方向(図10参照)に回転することにより、シャフト420およびエンドエフェクタ430を第1の方向に回転させる。また、回転部材44aは、C8方向(図10参照)に回転することにより、シャフト420およびエンドエフェクタ430を第1の方向とは反対の第2方向に回転させる。また、シャフト420は、アクチュエータ712aの回転により回転する。
【0049】
すなわち、図10に示すように、回転部材44cは、シャフト420の近位端側に配置されており、アクチュエータ712cの回転により第1細長要素W1を駆動する。回転部材44dは、シャフト420の近位端側に配置されており、アクチュエータ712dの回転により第2細長要素W2を駆動する。また、エンドエフェクタ部材430aおよびエンドエフェクタ部材430bは、シャフト420の遠位端に遠位クレビス460を介して配置されている。
【0050】
また、シャフト420の内部において、シャフト420の回転角度が0の状態で、エンドエフェクタ部材430aを駆動する第1細長要素W1の第2部分W1a2と、エンドエフェクタ部材430bを駆動する第2細長要素W2の第2部分W2a2とが交差するように配置されている。なお、エンドエフェクタ部材430aを駆動する第1細長要素W1の第1部分W1a1と、エンドエフェクタ部材430bを駆動する第2細長要素W2の第1部分W2a1とは、シャフト420の回転の軸Sに沿うように、かつ、互いに平行に配置されている。
【0051】
図11において、第1細長要素W1の第1部分W1a1は、第1プーリ群462aおよび第2プーリ群463aの第2平面P2に近い側のプーリである下側プーリに案内されてシャフト420の軸Sに沿うように回転部材44cに導かれる。一方、図13において、第1細長要素W1の第2部分W1a2は、第1プーリ群462bおよび第2プーリ群463bの第2平面P2に遠い側のプーリである上側プーリに案内されてシャフト420の回転の軸Sを横切って回転部材44cに導かれる。このため、図10に示されるように第1部分W1a1は軸Sに略平行に配置され、第2部分W1a2は、軸Sに交差するように配置される。第2細長要素W2ついても同様の理由により、第1部分W2a1は軸Sに略平行に配置され、第2部分W2a2は、軸Sに交差するように配置される。なお、第1プーリ群462aは、特許請求の範囲の「第2プーリ」および「第8プーリ」の一例である。また、第1プーリ群462bは、特許請求の範囲の「第4プーリ」および「第6プーリ」の一例である。また、第2プーリ群463aは、特許請求の範囲の「第1プーリ」および「第7プーリ」の一例である。また、第2プーリ群463bは、特許請求の範囲の「第3プーリ」および「第5プーリ」の一例である。
【0052】
さらに、図10に示す状態から、第1細長要素W1および第2細長要素W2は、シャフト420内において、エンドエフェクタ部材430aおよびエンドエフェクタ部材430bとの間で、シャフト420の回転の軸Sに対して180度ねじれるように配置されている。具体的には、第1細長要素W1の留め具W1bおよび第2細長要素W2の留め具W2bをエンドエフェクタ部材430aおよびエンドエフェクタ部材430bに取り付けた後、エンドエフェクタ部材430aおよびエンドエフェクタ部材430bが取り付けられた遠位クレビス460をシャフト420の回転の軸S回りに180度回転させた状態で、第1細長要素W1の第1部分W1a1の端部および第2部分W1a2の端部を回転部材44cに巻き止め、第2細長要素W2の第1部分W2a1の端部および第2部分W2a2の端部を回転部材44dに巻き止めている。
【0053】
図11図13に示すように、手術器具4は、例えばモノポーラカーブドシザーズなどの電気手術器具(Electrosurgical Instrument)であり、導電性のエンドエフェクタ430と、エンドエフェクタ430を第1軸A1回りに回動可能に支持する導電性の遠位クレビス460と、遠位クレビス460を第2軸A2回りに回動可能に支持する導電性の近位クレビス470とを備えている。手術器具4は、近位クレビス470に接続される円筒状のシャフト420を備えている。
【0054】
図11に示すように、エンドエフェクタ430は、2個のエンドエフェクタ部材430aおよび430bを有している。エンドエフェクタ部材430aおよび430bは、たとえばステンレス鋼等の導電性部材から成るジョー部材である。
【0055】
エンドエフェクタ部材430aは、プーリ部431aを有しており、エンドエフェクタ部材430bは、プーリ部431bを有している。エンドエフェクタ部材430aは、プーリ部431aに架け渡される第1細長要素W1(第1部分W1a1および第2部分W1a2)の移動に伴って姿勢を変化させるように構成されている。より詳細には、図13に示すように、エンドエフェクタ部材430aのプーリ部431aに第1細長要素W1の円柱形状の留め具W1bが係合しており、第1細長要素W1が移動することにより、プーリ部431aが後述する第1軸A1回りに回転し、その結果、エンドエフェクタ部材430aが第1軸A1回りに回転する。図12に示すように、エンドエフェクタ部材430bは、プーリ部431bを有している。エンドエフェクタ部材430bは、プーリ部431bに架け渡される第2細長要素W2(第1部分W2a1および第2部分W2a2)の移動に伴って姿勢を変化させるように構成されている。ここで、エンドエフェクタ430は、シザースであることを例示したが、例えば図19に示すグラスパー(把持鉗子)700のようにシザース以外のエンドエフェクタであってもよい。図19に示すように、手術器具730の第1エンドエフェクタ部材730aおよび第2エンドエフェクタ部材730bは、対象物を把持するための把持型エンドエフェクタを構成している。なお、プーリ部431aおよびプーリ部431bは、それぞれ、特許請求の範囲の「第1プーリ部」および「第2プーリ部」の一例である。
【0056】
遠位クレビス460は、プーリ部461と、第1軸部464aに回転可能に配置された2つのプーリを含む第1プーリ群462aと、第1軸部464bに回転可能に配置された2つのプーリを含む第1プーリ群462bと、第2軸部465に回転可能に配置された2つのプーリを含む第2プーリ群463aおよび463bと、第3軸部466とを有している。第1プーリ群462a、第2プーリ群463aおよび第1軸部464aは、図11において、遠位クレビス460の第2平面P2の一方側に配置されており、第1プーリ群462b、第2プーリ群463bおよび第1軸部464bは、遠位クレビス460の第2平面P2の他方側に配置されている。第1プーリ群462aおよび462bに含まれる各プーリは、第2プーリ群463aおよび463bに含まれる各プーリよりも小さい直径を有している。
【0057】
遠位クレビス460の遠位端側(エンドエフェクタ430側)には、エンドエフェクタ部材430aのプーリ部431aおよびエンドエフェクタ部材430bのプーリ部431bを回転可能に支持する第3軸部466が挿入される一対の軸孔が形成されている。第3軸部466は、第1軸A1に沿った方向に延びる円柱形状の軸部材である。第3軸部466は、一対の軸孔に支持されている。第1軸A1は、シャフト420の軸である軸Sに略直交する方向に沿って延びている。第1軸A1は、第1平面P1に対して略直交する方向に沿って延びており、第2平面P2と略平行な方向に延びている。
【0058】
プーリ部461は、遠位クレビス460の近位端側(シャフト420側)に設けられており、第2軸A2回りに回転可能に近位クレビス470に支持されている。より詳細には、プーリ部461は、近位クレビス470に支持された第2軸部465に回転可能に支持されている。第2軸A2は、シャフト420の軸Sに略直交する方向に沿って延び、かつ第1軸A1に平行な方向に略直交する方向に沿って延びている。第2軸A2は、第1平面P1に略直平行な方向に沿って延びており、第2平面P2と略直交する方向に延びている。プーリ部461は、第2軸A2の周方向に沿って形成されたプーリ溝を有している。遠位クレビス460は、プーリ部461に架け渡される第3細長要素W3の移動に伴って姿勢を変化させるように構成されている。より詳細には、プーリ部461に第3細長要素W3の円柱形状の留め具が係合しており、第3細長要素W3が移動することにより、プーリ部461が第2軸A2回りに回転し、その結果、遠位クレビス460が第2軸A2回りに回転する。円柱形状の留め具は第3細長要素W3の第1部分W3a1と第2部分W3a2の間に設けられている。なお、第3細長要素W3は、アクチュエータ712bにより駆動される。
【0059】
第1プーリ群462aの2つのプーリは、第1軸部464aに回転可能に支持されている。第2プーリ群463aの2つのプーリは、第2軸部465に回転可能に支持されている。図11において、第1プーリ群462aの第2平面P2に近い側のプーリ(下側プーリ)および第2プーリ群463aの第2平面P2に近い側のプーリ(下側プーリ)は、エンドエフェクタ部材430aのプーリ部431aに係合した第1細長要素W1の第1部分W1a1をガイドしている。一方、図13において、第1プーリ群462bの第2平面P2から遠い側のプーリ(上側プーリ)および第2プーリ群463bの第2平面P2から遠い側のプーリ(上側プーリ)は、エンドエフェクタ部材430bのプーリ部431bに係合した第1細長要素W1の第2部分W1a2をガイドしている。第1プーリ群462aおよび462bは、第2軸A2と第1軸A1との間に配置されている。第2プーリ群463aおよび463bは、第2軸A2上に配置されている。より詳細には、プーリ部431aに第1細長要素W1の円柱形状の留め具W1bが係合しており、第1細長要素W1が移動することにより、プーリ部431aが第1軸A1回りに回転し、その結果、エンドエフェクタ部材430aが第1軸A1回りに回転する。また、図12に示されるように、プーリ部431bに第2細長要素W2の円柱形状の留め具W2bが係合しており、第2細長要素W2が移動することにより、プーリ部431bが第1軸A1回りに回転し、その結果、エンドエフェクタ部材430bが第1軸A1回りに回転する。第1プーリ群462bの第2平面P2から遠い側のプーリ(上側プーリ)および第2プーリ群463bの第2平面P2から遠い側のプーリ(上側プーリ)は、エンドエフェクタ部材430bのプーリ部431bに係合した第2細長要素W2の第2部分W2a2をガイドしている。
【0060】
第1軸部464aは、第2軸A2に略平行な回転中心軸線に沿って延びており、第1平面P1に対してプーリ部431aと同じ側に配置されている。第1軸部464bは、第1平面P1に対してプーリ部431bと同じ側に配置されている。第2軸部465は、第2軸A2に沿った方向に延びる円柱形状の軸部材である。第2軸部465は、近位クレビス470の一対の軸孔に挿入されて支持されている。
【0061】
ここで、第1細長要素W1、第2細長要素W2および第3細長要素W3は、ワイヤまたはケーブルにより構成されている。第1細長要素W1、第2細長要素W2および第3細長要素W3は、ステンレスまたはタングステンなどの金属により構成されたワイヤまたはケーブルである。第3細長要素W3は、プーリ部461に対応して設けられている。第1細長要素W1および第2細長要素W2は、エンドエフェクタ部材430aおよび430bに対応して設けられている。なお、第1細長要素W1、第2細長要素W2および第3細長要素W3は、一部がロッドなどにより構成されていてもよい。
【0062】
図11に示すように、近位クレビス470は、シャフト420に接続される接続基部470aを含んでいる。
【0063】
また、図14に示すように、アーム60には、アーム部61の複数の関節部64に対応するように、複数のサーボモータM1と、エンコーダE1と、減速機(図示せず)とが設けられている。エンコーダE1は、サーボモータM1の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM1の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0064】
また、図14に示すように、並進移動機構部70には、手術器具4に設けられた回転部材44a~44dを回転させるための4つのサーボモータM2(図9に示すサーボモータ712a1~712d1に対応)と、手術器具4を並進移動させるためのサーボモータM3と、4つのエンコーダE2およびエンコーダE3と、減速機(図9に示すサーボモータ712a1~712d1に対応する減速機712a2~712d2と、サーボモータM3に対応する図示しない減速機)とが設けられている。4つのエンコーダE2は、図9に示すサーボモータ712a1~712d1の回転角を検出するように構成されている。E3は、サーボモータM3の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM2およびサーボモータM3の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0065】
また、ポジショナ40には、ポジショナ40の複数の関節部43に対応するように、複数のサーボモータM4と、エンコーダE4と、減速機(図示せず)とが設けられている。エンコーダE4は、サーボモータM4の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM4の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0066】
また、医療用台車3には、医療用台車3の複数の前輪(図示せず)の各々を駆動するサーボモータM5と、エンコーダE5と、減速機(図示せず)とが設けられている。エンコーダE5は、サーボモータM5の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM5の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0067】
医療用台車3の制御部31は、指令に基づいて複数のアーム60の移動を制御するアーム制御部31aと、指令に基づいてポジショナ40の移動および医療用台車3の前輪(図示せず)の駆動を制御するポジショナ制御部31bとを含む。アーム制御部31aには、アーム60を駆動するためのサーボモータM1を制御するためのサーボ制御部C1が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C1には、サーボモータM1の回転角を検出するためのエンコーダE1が電気的に接続されている。
【0068】
また、アーム制御部31aには、手術器具4を駆動するためのサーボモータM2を制御するためのサーボ制御部C2が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C2には、サーボモータM2の回転角を検出するためのエンコーダE2が電気的に接続されている。また、アーム制御部31aには、並進移動機構部70を並進移動するためのサーボモータM3を制御するためのサーボ制御部C3が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C3には、サーボモータM3の回転角を検出するためのエンコーダE3が電気的に接続されている。
【0069】
そして、遠隔操作装置2に入力された動作指令が、アーム制御部31aに入力される。アーム制御部31aは、入力された動作指令と、エンコーダE1(E2、E3)により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、位置指令をサーボ制御部C1(C2、C3)に出力する。サーボ制御部C1(C2、C3)は、アーム制御部31aから入力された位置指令と、エンコーダE1(E2、E3)により検出された回転角とに基づいて、トルク指令を生成するとともに、トルク指令をサーボモータM1(M2、M3)に出力する。これにより、アーム60は、遠隔操作装置2に入力された動作指令に応じて移動する。
【0070】
アーム制御部31aは、操作部80からの入力信号に基づいてアーム60を操作するように構成されている。具体的には、アーム制御部31aは、操作部80から入力された入力信号(動作指令)と、エンコーダE1またはE3により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、位置指令をサーボ制御部C1またはC3に出力する。サーボ制御部C1またはC3は、アーム制御部31aから入力された位置指令と、エンコーダE1またはE3により検出された回転角とに基づいて、トルク指令を生成するとともに、トルク指令をサーボモータM1またはM3に出力する。これにより、アーム60は、操作部80に入力された動作指令に応じて移動する。
【0071】
また、図14に示すように、ポジショナ制御部31bには、ポジショナ40を移動するサーボモータM4を制御するためのサーボ制御部C4が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C4には、サーボモータM4の回転角を検出するためのエンコーダE4が電気的に接続されている。また、ポジショナ制御部31bには、医療用台車3の前輪(図示せず)を駆動するサーボモータM5を制御するためのサーボ制御部C5が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C5には、サーボモータM5の回転角を検出するためのエンコーダE5が電気的に接続されている。
【0072】
また、入力装置33からの動作指令が、ポジショナ制御部31bに入力される。ポジショナ制御部31bは、入力装置33から入力された動作指令と、エンコーダE4により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、位置指令をサーボ制御部C4に出力する。サーボ制御部C4は、ポジショナ制御部31bから入力された位置指令と、エンコーダE4により検出された回転角とに基づいて、トルク指令を生成するとともに、トルク指令をサーボモータM4に出力する。これにより、ポジショナ40は、入力装置33に入力された動作指令に応じて移動する。詳細な説明は省略するが、同様な手順により、ポジショナ制御部31bは、操作ハンドル34からの動作指令に応じて、医療用台車3を移動させる。
【0073】
図15は手術器具4の手首である遠位クレビス460を第2軸部465についてC6a方向(図12参照)に回動させた図である。手術器具4は、回転部材44cがC2方向(図10参照)に回転することにより、第1細長要素W1の第2部分W1a2を引っ張ってエンドエフェクタ部材430aを閉じる方向に駆動し、回転部材44dがC4方向(図10参照)に回転することにより、第2細長要素W2の第2部分W2a2を引っ張ってエンドエフェクタ部材430bを閉じる方向に駆動するように構成されている。手術器具4がシザースの場合は、エンドエフェクタ部材430aと430bが閉じてからさらに回転部材44cがC2方向に、回転部材44dがC4方向に所定の角度回転することで剪断力を生じさせる。手術器具4がグラスパ―の場合は、エンドエフェクタ部材430aと430bが閉じてからさらに回転部材44cがC2方向に、回転部材44dがC4方向に所定の角度回転することで把持力を生じさせる。
【0074】
図12に示されるように遠位クレビス460を第2軸部465について回動していないとき、エンドエフェクタ部材430bを閉じる方向に駆動する第2細長要素W2の第2部分W2a2は第1プーリ群462aの上側プーリと第2プーリ群463aの上側プーリの両方のプーリで案内されている(第1の状態)。一方、図15に示されるように遠位クレビス460を第2軸部465についてC6a方向(図12参照)に所定の角度回動させたとき、エンドエフェクタ部材430bを閉じる方向に駆動する第2細長要素W2の第2部分W2a2は第1プーリ群462aの上側プーリに巻き付いて案内されている(第2の状態)。第1プーリ群462aに含まれる各プーリは、第2プーリ群463aに含まれる各プーリよりも小さい直径を有している。このため第2細長要素W2の第2部分W2a2の経路長(エンドエフェクタ部材430bと回転部材44dの間の第2部分W2a2の長さ)は、第1の状態よりも第2の状態のほうが短くなる。このため第1の状態の時は、エンドエフェクタ部材430aと430bが閉じてからさらに回転部材44dがC4方向に所定の角度X°回転することで剪断力を生じさせることができるが、第2の状態の時は、第2部分W2a2の経路長が短くなって第2部分W2a2が緩むので所定の角度X°回転させても剪断力が不十分になる。
【0075】
図16は、遠位クレビス460の第2軸部465についての回転角度と第2細長要素W2の第2部分W2a2余り量の関係を示した図である。図16において、横軸は遠位クレビス460の第2軸部465についての回転角度を示し、縦軸は第2細長要素W2の余り量を回転部材44dの回転角度に換算して示している。図16から遠位クレビス460がC6a方向(図12参照)に約50°回転すると第2部分W2a2にゆるみが生じ、回転角度が大きくなると徐々にあまり量が大きくなることがわかる。これは遠位クレビス460がC6a方向に回転するにつれて第1プーリ群462aの上側プーリ(小径)の第2部分W2a2のガイド量が増加し、第2プーリ群463aの上側プーリ(大径)の第2部分W2a2のガイド量が減少することに起因している。このためシザースにおいては所定の剪断力を発揮させるためには、第2部分W2a2のゆるみ量を遠位クレビス460がC6a方向の回転角度に応じて補正する必要がある。具体的には、制御部31は、回転部材44dのC4方向の回転量(回転角度)が遠位クレビス460の回転角度に対応するゆるみ量に相当する分だけ増加するように回転部材44dに対応するアクチュエータ712dの駆動を制御する。なお、遠位クレビス460がC5a方向に回転する場合は、第1細長要素W1の第2部分W1a2にゆるみが生じるため、制御部31は、回転部材44cのC2方向の回転量(回転角度)が遠位クレビス460の回転角度に対応するゆるみ量に相当する分だけ増加するように回転部材44cに対応するアクチュエータ712の駆動を制御する。図17は、図15に示されたエンドエフェクタ430を図11に示す第2平面P2について逆側から見た図である。図17に示されるように遠位クレビス460を第2軸部465についてC6a方向(図12参照)に所定の角度回動させたとき、第1細長要素W1の第2部分W1a2は第1プーリ群462bの上側プーリと第2プーリ群463bの上側プーリの両方にガイドされている。このためエンドエフェクタ部材430aを閉じるために駆動する第1細長要素W1の第2部分W1a2の経路長は変化しないので、回転部材44cのC2方向の回転量を補正する必要はない。
【0076】
手術器具4の遠位クレビス460を第2軸部465についてC5a方向(図12参照)に回動した場合は、制御部31は、回転部材44cのC2方向の回転量(回転角度)がゆるみ量に相当する分だけ増加するように回転部材44cに対応するアクチュエータ712の駆動を制御する。この場合は、エンドエフェクタ部材430bを閉じるために駆動する第2細長要素W2の第2部分W2a2の経路長は変化しないので、回転部材44dのC4方向の回転量を補正する必要はない。
【0077】
次に、図18を参照して、外科手術システム100の制御方法について説明する。
【0078】
まず、ステップS1において、制御部31は、遠隔操作装置2による医療用マニピュレータ1のアーム60の操作が可能か否かを判定する。具体的には、制御部31は、モニタ24近傍に設けられた図示しないセンサで術者の頭部を検知した状態で術者によって操作用マニピュレータアーム21が操作されることにより、遠隔操作装置2によるアーム60の操作が可能と判定する。
【0079】
次に、ステップS2において、制御部31は、手術器具4に対する遠隔操作装置2の操作用マニピュレータアーム21の操作を受け付ける。
【0080】
次に、ステップS3において、制御部31は、受け付けられた操作によって、遠位クレビス460が第2軸部465(第2軸A2)についてC5a方向に所定角度以上回転するかどうかを判定する。具体的には、制御部31は、回転部材44bを回転させるアクチュエータ712bのサーボモータ712b1の回転方向と回転角度をエンコーダE2によって監視しており、その結果に基づいて遠位クレビス460が第2軸部465についてC5a方向に所定角度以上回転するかどうかの判定を行っている。遠位クレビス460がC5a方向に所定角度以上回転する場合はS4に進み、回転しない場合はS5に進む。
【0081】
次に、ステップS4において、制御部31は、回転部材44cのC2方向の回転量(回転角度)が第1細長要素W1の第2部分W1a2のゆるみ量に相当する分だけ増加するように回転部材44cに対応するアクチュエータ712cの駆動を制御する。なお、上述したように第1細長要素W1の第2部分W1a2のゆるみ量は、遠位クレビス460が第2軸部465についてC5a方向に所定角度以上回転したときの回転角度に対応している。
【0082】
そして、ステップS5において、制御部31は、受け付けられた操作によって、遠位クレビス460が第2軸部465(第2軸A2)についてC6a方向に所定角度以上回転するかどうかを判定する。遠位クレビス460がC6a方向に所定角度以上回転する場合はS6に進み、回転しない場合はS1に進む。
【0083】
ステップS6において、制御部31は、回転部材44dのC4方向の回転量(回転角度)が第2細長要素W2の第2部分W2a2のゆるみ量に相当する分だけ増加するように回転部材44dに対応するアクチュエータ712dの駆動を制御する。なお、第2細長要素W2の第2部分W2a2のゆるみ量は、遠位クレビス460が第2軸部465についてC6a方向に所定角度以上回転したときの回転角度に対応している。
【0084】
上記のステップS2~S6の動作は、2つの操作用マニピュレータアーム21のそれぞれに対応するアーム60毎に行なわれる。
【0085】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0086】
本実施形態では、上記のように、制御部31は、遠位クレビス460が第2軸部(第2軸A2)について所定角度以上回転するかどうかを判定し、所定の角度以上回転する場合には、回転部材44cまたは回転部材44dの回転角度を増加させるように対応するアクチュエータ712cまたは712dを制御する。これにより、細長要素Wのゆるみによるシザースの剪断力の低下やグラスパ―の把持力低下を抑制することができる。
【0087】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0088】
たとえば、制御部31がシャフト420の回転角度を監視し、シャフト420の回転角度に応じて回転部材44cおよび回転部材44dの回転角度を制御するようにしても良い。具体的には、シャフト420が初期位置の状態よりも、シャフト420の軸S周りに回転した状態のほうが、第1細長要素W1の第2部分W1a2の経路長および第2細長要素W2の第2部分W2a2の経路長が長くなる。これは、第1細長要素W1およびW2がシャフト420の中心以外を通っているためである。このため制御部31は、回転部材44cおよび回転部材44dの回転量(回転角度)を、シャフト420の初期位置からの回転角度に応じて減少させるように制御する。
【0089】
また、上記実施形態では、手術器具4は、回転部材44cがC2方向(図10参照)に回転することにより、第1細長要素W1の第2部分W1a2を引っ張ってエンドエフェクタ部材430aを閉じる方向に駆動し、回転部材44dがC4方向(図10参照)に回転することにより、第2細長要素W2の第2部分W2a2を引っ張ってエンドエフェクタ部材430bを閉じる方向に駆動するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。第1細長要素W1およびW2の経路を変更し、回転部材44cがC1方向(図10参照)に回転することにより、エンドエフェクタ部材430aを閉じる方向に駆動し、回転部材44dがC3方向(図10参照)に回転することによりエンドエフェクタ部材430bを閉じる方向に駆動するようにしてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、アーム60が4つ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アーム60の数は、少なくとも1つ以上設けられていれば他の任意の数であってもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、アーム部61およびポジショナ40が7軸多関節ロボットから構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、アーム部61およびポジショナ40が7軸多関節ロボット以外の軸構成(例えば、6軸や8軸)の多関節ロボットなどから構成されていてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、医療用マニピュレータ1が、医療用台車3と、ポジショナ40と、アームベース50と、アーム60とを備えている例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、医療用台車3と、ポジショナ40と、アームベース50は必ずしも必要なく、医療用マニピュレータ1がアーム60だけで構成されてもよい。
【0093】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【符号の説明】
【0094】
1 医療用マニピュレータ(患者側装置)
2 遠隔操作装置(操作者側装置)
4 手術器具
21 操作用マニピュレータアーム(操作部)
31 制御部(制御装置)
44b 回転部材(第3回転部材)
44c 回転部材(第1回転部材)
44d 回転部材(第2回転部材)
60 アーム(ロボットアーム)
71 ホルダ(取付部)
100 外科手術システム
420 シャフト
430 エンドエフェクタ
430a エンドエフェクタ部材(第1ジョー部材)
430b エンドエフェクタ部材(第2ジョー部材)
431a プーリ部(第1プーリ部)
431b プーリ部(第2プーリ部)
460 第1支持体(遠位クレビス)
462a 第1プーリ群(第2プーリ、第8プーリ)
462b 第1プーリ群(第4プーリ、第6プーリ)
463a 第2プーリ群(第1プーリ、第7プーリ)
463b 第2プーリ群(第3プーリ、第5プーリ)
470 第2支持体(近位クレビス)
712b アクチュエータ(第3アクチュエータ)
712c アクチュエータ(第1アクチュエータ)
712d アクチュエータ(第2アクチュエータ)
A1 第1軸(第2軸)
A2 第2軸(第1軸)
P1 第1平面
P2 第2平面
W1 第1細長要素
W1b 留め具(第1固定部)
W1a1 第1部分
W1a2 第2部分
W2 第2細長要素
W2b 留め具(第2固定部)
W2a1 第3部分
W2a2 第4部分
W3 第3細長要素
W3a1 第5部分
W3a2 第6部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19