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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161001
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】樹脂粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/85 20060101AFI20221013BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20221013BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20221013BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
A61K8/85
A61K8/37
A61Q1/12
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030545
(22)【出願日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2021065042
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】徳村 幸子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC391
4C083AC392
4C083AC441
4C083AC442
4C083AD091
4C083AD092
4C083BB21
4C083CC01
4C083DD17
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】 本発明は、肌上でのしっとり感に優れ、皮膚感覚が良好な樹脂粒子を提供することを目的とする。
【解決手段】 ポリエステル系樹脂を主成分とし、前記ポリエステル系樹脂100重量部に対し、多価アルコール脂肪酸エステルを0.01~10重量部含有する、樹脂粒子。前記多価アルコール脂肪酸エステルのHLB値が1~13であると好ましく、前記多価アルコール脂肪酸エステルが、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種を含むと好ましい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂を主成分とし、前記ポリエステル系樹脂100重量部に対し、多価アルコール脂肪酸エステルを0.01~10重量部含有する、樹脂粒子。
【請求項2】
前記多価アルコール脂肪酸エステルのHLB値が1~13である、請求項1に記載の樹脂粒子。
【請求項3】
前記多価アルコール脂肪酸エステルが、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の樹脂粒子。
【請求項4】
前記ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート及びポリヒドロキシアルカノエートからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂粒子。
【請求項5】
平均粒子径が1~200μmである、請求項1~4のいずれかに記載の樹脂粒子。
【請求項6】
体積基準測定による頻度の累積が90%の粒子径(D90)を体積基準測定による頻度の累積が50%の粒子径(D50)で除した値が3.0以下である、請求項1~5のいずれかに記載の樹脂粒子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の樹脂粒子の製造方法であって、
ポリエステル系樹脂と、多価アルコール脂肪酸エステルと、水溶性高分子と水を混合する工程と、加熱分散液を得る工程と、前記加熱分散液を冷却する工程を含む、樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の樹脂粒子を含む、化粧料。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載の樹脂粒子を含む、コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌上でのしっとり感およびソフト感に優れ、皮膚感覚が良好な樹脂粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体は、化粧品、塗料、光学用途、樹脂、建材などへ多く使用されている。粉体に求められる機能としては、光拡散性、隠蔽性、塗工性、感触付与などがある。粉体の中でも樹脂粒子は無機粉末と比較してソフトな感触を有することから、化粧品や塗料などにおいて、べたつき低減、塗布時の広がり性、滑り性、感触付与などの点で好ましく用いられている。
樹脂粒子の素材としては、例えば、アクリル系、スチレン系、ウレタン系、シリコーン系などが挙げられる。しかし、近年、環境への関心が高まる中で、環境への負荷の少ない樹脂粒子が求められている。
例えば特許文献1では、環境負荷低減の樹脂粒子として、非石油原料由来のポリ乳酸からなるポリ乳酸系樹脂微粒子の製造方法およびポリ乳酸系樹脂微粒子が記載されている。また特許文献2では、生分解性を有するポリエステル系熱可塑性樹脂からなる多孔質樹脂微粒子が記載されている。しかし、これらの粒子は、アクリル系、スチレン系、ウレタン系、シリコーン系の粒子と比較して、滑り性や、ソフトな感触において劣るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2012/105140号公報
【特許文献2】WO2017/056908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、肌上でのしっとり感およびソフト感に優れ、皮膚感覚が良好な樹脂粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、特定の成分を含有したポリエステル系樹脂粒子であれば、肌上でのしっとり感およびソフト感に優れ、皮膚感覚が良好になることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明の樹脂粒子は、ポリエステル系樹脂を主成分とし、前記ポリエステル系樹脂100重量部に対し、多価アルコール脂肪酸エステルを0.01~10重量部含有する、樹脂粒子である。
【0007】
前記多価アルコール脂肪酸エステルのHLB値が1~13であると好ましい。
前記多価アルコール脂肪酸エステルが、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種を含むと好ましい。
前記ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート及びポリヒドロキシアルカノエートからなる群から選択される少なくとも1種を含むと好ましい。
平均粒子径が1~200μmであると好ましい。
体積基準測定による頻度の累積が90%の粒子径(D90)を体積基準測定による頻度の累積が50%の粒子径(D50)で除した値が3.0以下であると好ましい。
【0008】
本発明の樹脂粒子の製造方法は、上記樹脂粒子の製造方法であって、ポリエステル系樹脂と、多価アルコール脂肪酸エステルと、水溶性高分子と水を混合する工程と、加熱分散液を得る工程と、前記加熱分散液を冷却する工程を含む、樹脂粒子の製造方法である。
【0009】
本発明の化粧料は、上記樹脂粒子を含む。
本発明のコーティング組成物は、上記樹脂粒子を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂粒子は、肌上でのしっとり感およびソフト感に優れ、皮膚感覚が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の樹脂粒子1の電子顕微鏡写真
図2】実施例1の樹脂粒子1の粒度分布
図3】実施例4の樹脂粒子4の粒度分布
図4】比較例1の樹脂粒子9の粒度分布
図5】実施例1の樹脂粒子1の水分散液の光学顕微鏡写真
図6】比較例3の樹脂粒子11の水分散液の光学顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の樹脂粒子は、ポリエステル系樹脂を主成分とし、前記ポリエステル系樹脂100重量部に対し、多価アルコール脂肪酸エステルを0.01~10重量部含有する樹脂粒子である。以下では樹脂粒子を構成する成分について詳しく説明する。
【0013】
〔ポリエステル系樹脂〕
ポリエステル系樹脂は、エステル結合を有する樹脂であり、構造により、芳香族ポリエステル系樹脂と脂肪族ポリエステル系樹脂に分けられる。
ポリエステル系樹脂の製造方法としては、例えば、重縮合法、開環重合法、微生物生産法などが挙げられる。
【0014】
重縮合法としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールを重縮合する方法、多価カルボン酸、多価アルコール及びヒドロキシカルボン酸を重縮合する方法、ヒドロキシカルボン酸を重縮合する方法等が挙げられる。
上記多価カルボン酸としては、例えば、o-フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンジカルボン酸、これらの無水物や低級アルキルエステル等が挙げられる。これらの多価カルボン酸は1種または2種以上を併用してもよい。
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール)、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらの多価アルコールは1種または2種以上を併用してもよい。
上記ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシジメチル酪酸、ヒドロキシメチル酪酸等が挙げられる。これらのヒドロキシカルボン酸は1種または2種以上を併用してもよい。
【0015】
開環重合法としては、例えば、上記ヒドロキシカルボン酸を重合して得られた環状エステル、カプロラクタム等を開環重合する方法等が挙げられる。
微生物生産法としては、糖類や脂質を微生物発酵すること等により、微生物の体内でポリマーを合成する方法等が挙げられる。
【0016】
ポリエステル系樹脂としては、特に限定はないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートカーボネート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートラクテート、ポリブチレンサクシネートヒドロキシカプロエート、ポリブチレンサクシネートカルボネート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリテトラメチレンサクシネート;ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリヒドロキシブチレートバリレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバリレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシアシル)、ポリヒドロキシアシル等のポリヒドロキシアルカノエート;ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸-グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトンブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートカプロラクトン、ポリプロピオラクトンとこれらの塩や誘導体、ポリエステルエラストマー等が挙げられる。
【0017】
本発明の樹脂粒子は、ポリエステル系樹脂を主成分とする。主成分とは、樹脂粒子中に含まれる成分の中で一番含有量が多いことを示す。本発明の樹脂粒子は、上記ポリエステル系樹脂より選ばれる1種または2種以上のポリエステル系樹脂を含有していてもよい。
【0018】
本発明の樹脂粒子に含まれるポリエステル系樹脂は、特に限定はないが、環境への負荷低減の観点より生分解性ポリエステル系樹脂を含むと好ましい。芳香族ポリエステル系樹脂の場合は、芳香族多価カルボン酸を由来とするユニットが40ユニットmol%以下であると生分解性の観点で好ましく、脂肪族ポリエステル系樹脂であると、生分解性に優れ、さらに好ましい。
また、ポリエステル系樹脂は、特に限定はないが、本発明の効果を奏する点で、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート及びポリヒドロキシアルカノエートからなる群から選択される少なくとも1種を含むと、好ましい。
【0019】
本発明の樹脂粒子に含まれるポリエステル系樹脂の割合は、特に限定はないが、樹脂粒子100重量部に対し、50重量部以上であると好ましい。より好ましくは60重量部以上、さらに好ましくは70重量部以上、最も好ましくは80重量部以上である。
【0020】
本発明の樹脂粒子に含まれるポリエステル系樹脂は、特に限定はないが、融点が40~200℃であると、好ましい。融点が40℃より低い場合は、化粧料などに配合した場合に、肌上での使用時に粒子が変形し、感触が変化する場合がある。一方、融点が200℃より高い場合は、粒子の感触が硬く感じる場合がある。ポリエステル系樹脂の融点の下限は、より好ましくは50℃、さらに好ましくは60℃、最も好ましくは70℃である。ポリエステル系樹脂の融点の上限は、より好ましくは190℃、さらに好ましくは180℃、最も好ましくは165℃である。
【0021】
〔多価アルコール脂肪酸エステル〕
多価アルコール脂肪酸エステルは、エステル結合を有する化合物であり、例えば、多価アルコールと脂肪酸とのエステル化反応、多価アルコールと油脂のエステル交換反応等の公知の方法により製造することができる。
上記多価アルコールとしては、特に限定はないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,6-ヘキサメチレングリコール、ソルバイト等の二価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリグリセリン(グリセリンの2~20量体等)、ソルビタン、アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビトールグリセリン縮合物、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース、ショ糖等の三価以上の多価アルコール等が挙げられる。これらの多価アルコールは1種または2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記脂肪酸、油脂としては、特に限定はないが、例えば、カプロン酸、カプリル酸、オクチル酸、2-エチルへキサン酸、イソノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、イソアラキジン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸;デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレイン酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸;魚油脂肪酸、牛脂脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、水添ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の動植物性油脂を起源とする混合脂肪酸等が挙げられる。これらの脂肪酸、油脂は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0023】
多価アルコール脂肪酸エステルは、有機酸(例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸等)が結合していてもよく、ポリオキシアルキレン構造を有している化合物を含んでいてもよい。多価アルコール脂肪酸エステルは、本発明の効果を奏する点で、ポリオキシアルキレン構造を有さないものであると、より好ましい。
【0024】
多価アルコール脂肪酸エステルは、特に限定はないが、本発明の効果を奏する点で、酸価が0.1~50mgKOH/gであると好ましい。酸価の下限は、より好ましくは0.5mgKOH/g、さらに好ましくは1.0mgKOH/g、特に好ましくは2.0mgKOH/g、最も好ましくは3.0mgKOH/gである。酸価の上限は、より好ましくは40mgKOH/g、さらに好ましくは30mgKOH/g、特に好ましくは25mgKOH/g、最も好ましくは20mgKOH/gである。
酸価は、例えば、JIS-K0070に準じて測定することができる。
【0025】
多価アルコール脂肪酸エステルは、特に限定はないが、本発明の効果を奏する点で、水酸基価が1~800mgKOH/gであると好ましい。水酸基価の下限は、より好ましくは5mgKOH/g、さらに好ましくは10mgKOH/g、特に好ましくは20mgKOH/g、最も好ましくは30mgKOH/gである。水酸基価の上限は、より好ましくは、600mgKOH/g、さらに好ましくは500mgKOH/g、特に好ましくは450mgKOH/g、最も好ましくは400mgKOH/gである。
水酸基価は、例えば、JIS-K0070に準じて測定することができる。
【0026】
多価アルコール脂肪酸エステルとしては、特に限定はないが、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノ12-ヒドロキシステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンジステアレート、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノミリステート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノオレート、ひまし油、硬化ひまし油等のグリセリン脂肪酸エステル;酢酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド等の有機酸モノグリセリド;テトラグリセリンステアレート、デカグリセリンラウレート、デカグリセリンステアレート、デカグリセリンオレート、ポリグリセリンポリリシノレート、トリラウリン酸ポリグリセリル、トリオレイン酸ポリグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタントリベヘネート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンカプリレート、ソルビタンココエート等のソルビタン脂肪酸エステル;プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノパルミテート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノオレート、プロピレングリコールモノベヘネート等のプロピレングリコール脂肪酸エステル;ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル;トリオクタン酸トリメチロールプロパン;トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン;ジオクタン酸ネオペンチルグリコール;ジカプリン酸ネオペンチルグリコール;ジオクタン酸2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール;トリエチルヘキサン酸ジトリメチロールプロパン;トリエチルヘキサン酸ぺンタエリスリチル;レシチンやその誘導体等が挙げられる。これらの多価アルコール脂肪酸エステルは1種または2種以上を併用してもよい。
グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種を含むと、より皮膚感覚に優れる点で好ましい。
【0027】
本発明の樹脂粒子に含まれる多価アルコール脂肪酸エステルの含有量は、ポリエステル系樹脂100重量部に対し、0.01~10重量部である。多価アルコール脂肪酸エステルの含有量が0.01重量部より少ないと、しっとり感に劣る。一方で10重量部より多いと、粉体としての流動性に劣る。多価アルコール脂肪酸エステルの含有量の下限は、好ましくは0.02重量部、更に好ましくは0.05重量部、最も好ましくは0.1重量部である。多価アルコール脂肪酸エステルの含有量の上限は、好ましくは7重量部、更に好ましくは5重量部、最も好ましくは3重量部である。
【0028】
本発明の樹脂粒子に含まれる多価アルコール脂肪酸エステルは、特に限定はないが、肌上でのしっとり感の観点から、HLB値が1~13であると好ましい。HLB値の下限は、より好ましくは1.5、さらに好ましくは2.0、特に好ましくは2.5、最も好ましくは3.0である。HLB値の上限は、より好ましくは、12、さらに好ましくは11、特に好ましくは10、最も好ましくは9である。
HLB値は、例えば、下記のグリフィン法による計算式(1)から算出することができる。
HLB=20×(親水基の分子量/全体の分子量) (1)
【0029】
本発明の樹脂粒子は、本発明の効果を阻害しない範囲で、ポリエステル系樹脂と多価アルコール脂肪酸エステル以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
他の成分としては、特に限定されないが、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、リン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、アミドエーテル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸エステル塩、N-アシルアミノ酸塩類、第四級アンモニウム塩、アルキルアミン塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェノール、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、アクリルグリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル、アルキロールアミド、アルキルポリグルコシド、アシルアミノ酸塩、グルタミン酸塩、アラニン塩、グリシン塩、高級アルコール、サポニン、タンパク質加水分解物、タンパク質加水分解物誘導体、変性シリコーン等の界面活性剤;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アラビアガム、タマリンドガム、ペクチン、プルラン、カゼイン、キサンタンガム、カラギナン、トラガントガム、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロプルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等の水溶性高分子;スクワランオイル、オリーブオイル、アーモンドオイル、コメヌカオイル、ミネラルオイル、流動パラフィンオイル、シリコンオイル、アルカン等のオイル系化合物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、ハイドロサルタイト、窒化ホウ素、硫酸カルシウム等の無機化合物;ベントナイト、ワラストナイト、パイロフィライト、ドロマイト、モンモリロナイト、スメクタイト、クレイ、カオリン、マイカ、タルク、セリサイト等の鉱物;ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、セロチン酸等の脂肪酸;ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カリウム、ミスチリン酸亜鉛、ミスチリン酸ナトリウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩;N-ラウロイル-L-アルギニン、N-ラウロイル-L-リジン、N-ヘキサノイル-L-リジン、N-オレイルイル-L-リジン、N-パルミトイル-L-リジン、N-ステアノイル-L-リジン、N-ヘキサノイル-L-リジン、N-ミリストノイル-L-リジン、N-カプリロイル-L-リジン、N-デカノイル-L-リジン等のアミノ酸系化合物;カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、蜜蝋、高級アルコール等のワックス;澱粉、セルロース、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアミド等の高分子化合物が挙げられる。
【0030】
〔樹脂粒子〕
本発明の樹脂粒子は、特に限定されないが、DSC測定による最大の吸熱ピークが40~200℃であると、好ましい。最大の吸熱ピークが40℃より低い場合は、化粧料などに配合した場合に、肌上での使用時に粒子が変形し、感触が変化する場合がある。一方、最大の吸熱ピークが200℃より高い場合は、粒子の感触が硬く感じる場合がある。DSC測定による最大の吸熱ピークの下限は、より好ましくは50℃、さらに好ましくは60℃、最も好ましくは70℃である。DSC測定による最大の吸熱ピークの上限は、より好ましくは190℃、さらに好ましくは180℃、最も好ましくは165℃である。
DSC測定による最大の吸熱ピークとは、示差熱量計装置DSC(パーキンエルマー社製JADE DSC)を用いて、アルミニウム製測定容器に試料約10mgを充填し、窒素ガスを流量20ml/minの条件下で、10℃/minの速度で30℃から300℃まで昇温して測定した際に、最大の吸熱量を示す温度である。
【0031】
本発明の樹脂粒子は、特に限定されないが、平均粒子径(D50)が1~200μmであると好ましい。平均粒子径が1μm未満であると、粒子としての効果が不足することがある。一方で平均粒子径が200μm超であると、皮膚感覚に劣ることがある。平均粒子径の下限は、より好ましくは1.5μm、さらに好ましくは1.7μm、最も好ましくは2μmである。平均粒子径の上限は、より好ましくは150μm、さらに好ましくは100μm、特に好ましくは50μm、最も好ましくは30μmである。
平均粒子径(D50)は体積基準測定による頻度の累積が50%の値である。
本発明の樹脂粒子は、体積基準測定による頻度の累積が90%の粒子径(D90)を平均粒子径で除した値が3.0以下であると好ましい。より好ましくは2.8以下、さらに好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。
D50およびD90の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0032】
本発明の樹脂粒子の形状は、特に限定されないが、粒状、球状、楕円状、丸み状、塊状、鱗片状、板状、繊維状、扁平状、おわん状、凸または凹レンズ状などが挙げられる。おわん状等の異形状粒子は光散乱性に優れ、鱗片状等の板状粒子は皮膚への密着性に優れ、球状粒子はすべり性に優れる点で好ましい。粒子に求める効果により、樹脂粒子の形状を選定することができる。
【0033】
本発明の樹脂粒子の吸油量は、特に限定されないが、10~300ml/100gであると好ましい。吸油量が10ml/100g未満であると、化粧料へ配合した場合にべたつきを感じることがある。一方、吸油量が300ml/100g超であると、すべり性に劣ることがある。吸油量の下限は、(1)15ml/100g、(2)20ml/100g、(3)25ml/100g、(4)30ml/100g、(5)35ml/100g、(6)40ml/100g、の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。一方、該吸油量の上限は、(1)250ml/100g、(2)200ml/100g、(3)150ml/100g、(4)120ml/100g、(5)100ml/100g、(6)90ml/100g、(7)85ml/100gの順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。
なお、樹脂粒子の吸油量の測定方法は、JIS-K5101に準じて測定される方法によるものである。
【0034】
本発明の樹脂粒子の吸水量は、特に限定されないが、10~300ml/100gであると好ましい。吸水量が10ml/100g未満であると、しっとり感に劣ることがある。一方、吸水量が300ml/100g超であると、すべり性に劣ることがある。吸水量の下限は、(1)15ml/100g、(2)20ml/100g、(3)25ml/100g、(4)30ml/100g、(5)35ml/100g、(6)40ml/100g、の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。一方、該吸水量の好ましい上限は(1)250ml/100g、(2)200ml/100g、(3)150ml/100g、(4)120ml/100g、(5)100ml/100g、(6)90ml/100g、(7)85ml/100gの順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。
なお、樹脂粒子の吸水量の測定方法は、JIS-K5101に準じて測定される方法によるものである。
【0035】
〔樹脂粒子の製造方法〕
本発明の樹脂粒子の製造方法は、ポリエステル系樹脂と、多価アルコール脂肪酸エステルと、水溶性高分子と水を混合し、予備混合液を得る工程と、得られた予備混合液を加熱攪拌し、加熱分散液を得る工程と、得られた加熱分散液を冷却する工程を含む、樹脂粒子の製造方法であると好ましい。
【0036】
〔水溶性高分子〕
水溶性高分子としては、特に限定されないが、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル系重合体;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等のビニル系重合体;ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド;デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アラビアガム、タマリンドガム、ペクチン、プルラン、カゼイン、キサンタンガム、カラギナン、トラガントガム、ゼラチン等の多糖類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリエチレンオキサイド共重合体等が挙げられる。
上記水溶性高分子は、1種または2種以上併用してもよい。
【0037】
水溶性高分子は、特に限定されないが、目的とする樹脂粒子の粒子径サイズによって選定すると好ましい。取扱いの観点から、4重量%水溶液の20℃での粘度が2~200000mPa・sである水溶性高分子であると好ましい。粘度の低い水溶性高分子を使用すると粒子径の大きな樹脂粒子を安定して得られやすく、また粘度の高い水溶性高分子を使用すると微細な樹脂粒子を得ることができる。
【0038】
ポリエステル系樹脂と、多価アルコール脂肪酸エステルと、水溶性高分子と水を混合し、予備混合液を得る工程(以下、工程1ということがある)は、ポリエステル系樹脂と、多価アルコール脂肪酸エステルと、前記水溶性高分子と水を混合し、予備混合液を得る工程である。
本発明の樹脂粒子が、ポリエステル系樹脂と多価アルコール脂肪酸エステル以外の他の成分を含有する場合には、他の成分について、本工程で混合すると好ましい。
【0039】
ポリエステル系樹脂と多価アルコール脂肪酸エステルは、特に限定されないが、合計重量として、水100重量部に対し、1~150重量部の割合で混合すると好ましい。混合割合が、1重量部未満であると生産効率が悪くなることがある。混合割合が、150重量部超であると、分散液の粘度が高くなりすぎることがある。混合割合の下限は、より好ましくは3重量部、さらに好ましくは5重量部、最も好ましくは10重量部である。混合割合の上限は、より好ましくは120重量部、さらに好ましくは100重量部、最も好ましくは80重量部である。
【0040】
水溶性高分子の混合割合は、特に限定されないが、水100重量部に対し、0.1~100重量部の割合で混合すると好ましい。混合割合が、0.1重量部未満であると分散性が悪くなることがある。混合割合が、100重量部超であると、分散液の粘度が高くなりすぎることがある。混合割合の下限は、より好ましくは0.5重量部、さらに好ましくは1重量部、最も好ましくは2重量部である。混合割合の上限は、より好ましくは80重量部、さらに好ましくは70重量部、最も好ましくは60重量部である。
【0041】
加熱分散液を得る工程(以下、工程2ということがある)は、工程1で得られた予備混合液を加熱攪拌し、加熱分散液を得る工程である。
工程2においては、特に限定されないが、分布の均一な粒子を得られやすい点で、加圧下で行うと好ましく、その圧力は0.1~10MPaであると好ましい。該圧力の下限は加熱時の温度における水の飽和蒸気圧以上の圧力であるとさらに好ましい。
加熱温度は、特に限定されないが、80~300℃であると好ましく、ポリエステル系樹脂の融点以上の温度であると好ましい。加熱温度のより好ましい温度は、ポリエステル系樹脂の融点より5℃以上高い温度であり、さらに好ましくは10℃以上、最も好ましくは15℃以上高い温度である。ポリエステル系樹脂の融点未満の温度であると、分散が不均一になることがある。
攪拌方法は、特に限定されないが、混合物が混合する程度に攪拌されていればよい。
加熱時間は、特に限定されないが、1~30時間であると好ましい。加熱時間が1時間未満であると、ポリエステル系樹脂が十分に溶融せず、分散が不均一になることがある。加熱時間が30時間超であると、生産効率が悪くなることがある。加熱時間の下限は、より好ましくは2時間、さらに好ましくは3時間、最も好ましくは5時間である。加熱時間の上限は、より好ましくは25時間、さらに好ましくは20時間、最も好ましくは15時間である。
【0042】
加熱分散液を冷却する工程(以下、工程3ということがある)は、工程2で得られた加熱分散液を冷却する工程である。工程2の加熱分散液を冷却することで、樹脂粒子の分散液を得ることができる。
冷却方法は、特に限定されないが、工程2で得られた加熱分散液を5~50℃に冷却すると好ましい。冷却速度は特に限定されず、冷却設備により急冷してもよく、空気冷却により自然冷却してもよい。攪拌は、特に限定されないが、工程2の攪拌速度で攪拌していてもよく、攪拌を停止してもよい。
冷却後の分散液は、本発明の樹脂粒子を含む水分散液である。
【0043】
本発明の樹脂粒子の使用形態は、分散液でもよく、湿粉でもよく、乾燥粉体でもよい。
湿粉は、例えば、遠心分離機、加圧プレス機、真空脱水機等を用いて、工程3の分散液を脱水処理し、得ることができる。工程3で得られた分散液は、液粘度を下げる措置を実施した後に、脱水処理を行うと簡便である。液粘度を下げる方法としては、特に限定されないが、水を追加して希釈する方法、水溶性成分を塩析する方法、水溶性成分を酸化剤や酵素等により分解する方法等が挙げられる。
乾燥粉体は、上記湿粉を、棚型乾燥機、間接加熱乾燥機、流動乾燥機、真空乾燥機、振動乾燥機、気流乾燥機等により乾燥し、乾燥粉末とすることができる。また、工程3で得られた分散液を噴霧乾燥機、流動乾燥機等により乾燥し、乾燥粉末を得ることもできる。
【0044】
本発明の樹脂粒子は、化粧品、塗料、光学用途、樹脂、建材などへ使用することが可能である。なかでも、本発明の樹脂粒子は、分散性に優れ、皮膚感覚に優れることから、化粧料やコーティング組成物へ好適に用いることができる。
化粧料に用いる場合、公知の化粧料成分と組み合わせて使用することができる。化粧料成分としては、例えば、油剤、界面活性剤、アルコール類、水、保湿剤、ゲル化剤、増粘剤、本発明の樹脂粒子以外の粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤、機能性成分等が挙げられる。
本発明の樹脂粒子を配合した化粧料の形態としては、粉末状、固形状、クリーム状、ゲル状、液状、ムース状、スプレー状等が挙げられる。化粧料全体に占める本発明の樹脂粒子の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.1~50重量%、より好ましくは0.5~30重量%、さらに好ましくは1~20重量%である。
コーティング組成物に用いる場合、公知のコーティング成分と組み合わせて使用することができる。コーティング組成物全体に占める本発明の粒子の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは0.5~20重量%、さらに好ましくは1~10重量%である。
【実施例0045】
以下に、本発明の樹脂粒子の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例及び比較例の粒子について次に示す要領で物性を測定し、さらに評価を行った。
【0046】
(粒子径の測定)
レーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分布計(型式9320-HRA)、日機装株式会社製)を使用し、湿式測定法により超音波を120秒照射し、測定を実施した。平均粒子径(D50)は体積基準測定による頻度の累積が50%の値を、D90は体積基準測定による頻度の累積が90%の値を採用した。
【0047】
(吸水量、吸油量の測定)
JIS-K5101に記載の吸油量の測定法に基づき、吸水量測定は油の代わりにイオン交換水を、吸油量測定はオレイン酸を用いて測定した。
【0048】
(水への分散性評価)
容積50mlのスクリュービンにイオン交換水20gを入れ、樹脂粒子0.1gを加えた。スクリュービンを密閉し、上下に6回逆さにすることで樹脂粒子を水に分散させた。樹脂粒子の分散した溶液を1滴採取し、光学顕微鏡で粒子の状態を確認した。目視にて、以下にて評価した。
粒子が均一に分散している:〇
粒子同士の重なり・凝集が多く確認される:×
【0049】
(感触評価)
パネラー5名により、乾燥粉体を肌上に塗布した際の粉感について、しっとり感、滑り性、ソフト感、べたつき感、ざらつき感の5項目について、1~5段階評価を行った。各々の評価項目における評価基準は以下とした。
しっとり感:しっとり感を感じるほど数値が大きい。
滑り性:滑り性がよいと感じるほど数値が大きい。
ソフト感:柔らかさを感じるほど数値が大きい。
べたつき感:べたつき感がないと感じるほど数値が大きい。
ざらつき感:ざらつき感がないと感じるほど数値が大きい。
【0050】
〔実施例1〕
水300重量部とポリブチレンサクシネートアジペート(融点90℃)100重量部とソルビタンモノラウレート(HLB値;8.6)2重量部とポリビニルアルコール(4重量%水溶液の20℃での粘度;25mPa・s)20重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を120℃まで昇温し、圧力0.5MPaにて、毎分400rpmで3時間攪拌した後、50℃まで冷却し、樹脂粒子の水分散液を得た。
水分散液に酸化剤を添加し、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、樹脂粒子1を得た。得られた樹脂粒子1の物性を表1に示す。また、樹脂粒子1の電子顕微鏡写真を図1に、粒度分布を図2に、水に分散した希薄液の光学顕微鏡写真を図5に示す。
樹脂粒子1は、粒子径が揃った球状粒子であり、水分散性に優れ、皮膚感覚に優れていた。
【0051】
〔実施例2〕
水300重量部とポリブチレンサクシネート(融点115℃)100重量部とソルビタンモノステアレート(HLB値;4.7)1重量部とポリビニルアルコール(4重量%水溶液の20℃での粘度;25mPa・s)20重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を140℃まで昇温し、圧力0.5MPaにて、毎分400rpmで3時間攪拌した後、50℃まで冷却し、樹脂粒子の水分散液を得た。
水分散液に酸化剤を添加し、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、樹脂粒子2を得た。得られた樹脂粒子2の物性を表1に示す。
【0052】
〔実施例3〕
ソルビタンモノステアレート(HLB値;4.7)1重量部を、ソルビタンセスキオレート(HLB値;3.7)1.5重量部に変更したこと以外は、実施例2と同様にして樹脂粒子3を得た。得られた樹脂粒子3の物性を表1に示す。
【0053】
〔実施例4〕
水300重量部とポリブチレンサクシネート(融点115℃)100重量部とグリセリンモノオレート(HLB値;2.8)5重量部とポリビニルアルコール(4重量%水溶液の20℃での粘度;10mPa・s)30重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を140℃まで昇温し、圧力0.5MPaにて、毎分400rpmで3時間攪拌した後、50℃まで冷却し、樹脂粒子の水分散液を得た。
水分散液に酸化剤を添加し、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、樹脂粒子4を得た。得られた樹脂粒子4の物性を表1に示す。また、樹脂粒子4の粒度分布を図3に示す。
【0054】
〔実施例5〕
グリセリンモノオレート(HLB値;2.8)5重量部をソルビタンモノステアレート(HLB値;4.7)0.5重量部に変更したこと以外は、実施例4と同様にして樹脂粒子5を得た。得られた樹脂粒子5の物性を表1に示す。
【0055】
〔実施例6〕
水300重量部とポリブチレンサクシネートアジペート(融点90℃)50重量部とポリブチレンサクシネート(融点115℃)50重量部とソルビタンモノステアレート(HLB値;4.7)0.1重量部とポリビニルアルコール(4重量%水溶液の20℃での粘度;100mPa・s)20重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を140℃まで昇温し、圧力0.5MPaにて、毎分400rpmで10時間攪拌した後、50℃まで冷却し、樹脂粒子の水分散液を得た。
水分散液に酸化剤を添加し、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、樹脂粒子6を得た。得られた樹脂粒子6の物性を表1に示す。
【0056】
〔実施例7〕
水300重量部と、ポリヒドロキシアルカノエート(融点140℃)100重量部とソルビタンモノラウレート(HLB値;8.6)3重量部とポリビニルアルコール(4重量%水溶液の20℃での粘度;25mPa・s)20重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を160℃まで昇温し、圧力1.0MPaにて、毎分400rpmで10時間攪拌した後、50℃まで冷却し、樹脂粒子の水分散液を得た。
水分散液に酸化剤を添加し、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、樹脂粒子7を得た。得られた樹脂粒子7の物性を表1に示す。
【0057】
〔実施例8〕
水300重量部と、ポリ乳酸(融点170℃)100重量部とソルビタンモノラウレート(HLB値;8.6)2重量部とポリビニルアルコール(4重量%水溶液の20℃での粘度;25mPa・s)20重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を200℃まで昇温し、圧力2.0MPaにて、毎分400rpmで5時間攪拌した後、50℃まで冷却し、樹脂粒子の水分散液を得た。
水分散液に酸化剤を添加し、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、樹脂粒子8を得た。得られた樹脂粒子8の物性を表1に示す。
【0058】
〔実施例9〕
水300重量部と、ポリブチレンアジペートテレフタレート(融点120℃)100重量部とソルビタンモノラウレート(HLB値;8.6)1重量部とポリビニルアルコール(4重量%水溶液の20℃での粘度;25mPa・s)50重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を140℃まで昇温し、圧力1.0MPaにて、毎分400rpmで5時間攪拌した後、50℃まで冷却し、粒子の水分散液を得た。
水分散液に酸化剤を添加し、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、樹脂粒子12を得た。得られた樹脂粒子12の物性を表1に示す。
【0059】
〔実施例10〕
水300重量部と、ポリブチレンアジペートテレフタレート(融点120℃)70重量部とポリブチレンサクシネート(融点115℃)30重量部とソルビタンモノステアレート(HLB値;4.7)0.5重量部とポリビニルアルコール(4重量%水溶液の20℃での粘度;35mPa・s)30重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を140℃まで昇温し、圧力2.0MPaにて、毎分400rpmで5時間攪拌した後、50℃まで冷却し、粒子の水分散液を得た。
水分散液に酸化剤を添加し、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、樹脂粒子13を得た。得られた樹脂粒子13の物性を表1に示す。
【0060】
〔比較例1〕
ソルビタンモノラウレートを用いない以外は、実施例1と同様にして樹脂粒子9を得た。
得られた樹脂粒子9の物性を表1に示す。また、樹脂粒子9の粒度分布を図4に示す。
【0061】
〔比較例2〕
ソルビタンモノステアレート1重量部を11重量部に変更したこと以外は、実施例2と同様にして樹脂粒子10を得た。得られた樹脂粒子10の物性を表1に示す。
【0062】
〔比較例3〕
ポリ乳酸(融点170℃)30重量部とオリゴ糖50重量部とペンタエリスリトール20重量部を混合した組成物をラボプラストミルにて、200℃で5分間混練した。得られた混練物を30℃まで冷却後、60℃の温水に入れて攪拌し、樹脂粒子の分散液を得た。
さらに60℃の温水で洗浄した後、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、樹脂粒子11を得た。得られた樹脂粒子11の物性を表1に示す。また、樹脂粒子11を水に分散した希薄液の光学顕微鏡写真を図6に示す。樹脂粒子11は、水分散液において、粒子同士の重なりが多く確認されており、粒子同士の凝集性が強く、容易に分散しにくいものであった。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例1~10の樹脂粒子は、分散性に優れ、感触評価5項目において、いずれの評価も3以上の評価であり、皮膚感覚に優れる粒子であった。
一方、比較例1の樹脂粒子は、しっとり感やソフト感に劣り、ざらつき感を感じる粒子であった。また比較例2の樹脂粒子は、しっとり感には優れるが、滑り性に劣り、べたつき感を感じる粒子であった。比較例3の樹脂粒子は、しっとり感やソフト感に劣り、分散性に劣るものであった。
水への分散性評価において、実施例1~10の樹脂粒子は、均一に分散しており、容易に分散しやすく、分散性に優れる粒子であった。分散性に優れる点は、肌上での粒子の広がりやすさに影響を与えていると考えられ、皮膚感覚に優れる結果になったと考えられる。
本発明の樹脂粒子は、特定の成分を特定の割合で含有することで、しっとり感とソフト感を感じる粒子特性を有しながら、分散性に優れるという特徴も有する。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の樹脂粒子は、滑り性を保有しつつしっとり感およびソフト感を感じる樹脂粒子であり、またべたつき感やざらつき感は少なく、皮膚感覚良好な樹脂粒子であるので、粉末化粧料、固形化粧料、液状化粧料、クリーム状化粧料、スプレー状化粧料等の化粧料に好適に用いることができる。また、分散性に優れることから、樹脂や塗料用の改質剤や、意匠性付与剤等としてコーティング組成物に好適に用いることができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6