(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161007
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】モータ装置および車両
(51)【国際特許分類】
H02P 21/06 20160101AFI20221013BHJP
【FI】
H02P21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048765
(22)【出願日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】202110371715.8
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】300052246
【氏名又は名称】日本電産エレシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】小池上 貴
(72)【発明者】
【氏名】島津 学史
(72)【発明者】
【氏名】中田 雄飛
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB06
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE41
5H505GG02
5H505GG04
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ28
5H505KK05
5H505LL22
5H505LL41
5H505LL58
5H505MM12
(57)【要約】
【課題】回転角センサの物理的なずれをソフトウェア的に容易に検出することができ、別途外部装置を必要としないモータ装置を提供する。
【解決手段】本発明は、ロータとステータとを有するモータ部と、入力電圧を三相交流電圧に変換して前記モータ部に供給するインバータ部と、前記インバータ部を制御するインバータ制御部と、前記モータ部に固定され、前記モータ部の回転角を検出する回転角センサとを備え、前記インバータ制御部は、前記モータ部の電圧位相の実測値と理論値との差に基づいて、前記回転角センサの取付位置のずれ角を算出する演算部を備えるモータ装置に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ装置であって、
ロータとステータとを有するモータ部と、
入力電圧を三相交流電圧に変換して前記モータ部に供給するインバータ部と、
前記インバータ部を制御するインバータ制御部と、
前記モータ部に固定され、前記モータ部の回転角を検出する回転角センサと、を含み、
前記インバータ制御部は、前記モータ部の電圧位相の実測値と理論値との差に基づいて、前記回転角センサの取付位置のオフセット角を算出する演算部を含む、
ことを特徴とするモータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ装置であって、
前記インバータ制御部は、前記演算部による演算を許可するか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記演算部は、前記判定部により前記演算が許可された場合に、前記回転角センサの取付位置のオフセット角を演算する、
ことを特徴とするモータ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ装置であって、
前記判定部は、前記モータ部に流れる電流と、システム状態と、前記モータ部の回転数とに基づいて、前記演算部による演算を許可するか否かを判定する、
ことを特徴とするモータ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のモータ装置であって、
前記モータ装置は、車両制御部を有する車両に搭載され、
前記インバータ制御部は、診断部と制御部とをさらに備え、
診断部は、オフセット角が所定値を超えた場合に、制御部および車両制御部に異常を通知する、
ことを特徴とするモータ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のモータ装置であって、
前記インバータ部は、上アーム及び下アームを含むモータ駆動回路を有し、
前記制御部は、前記上アームおよび前記下アームに含まれるスイッチング素子をオンオフ制御し、
診断部は、モータ部の回転数が閾値を超えた場合に制御部に異常を通知し、制御部はフェールセーフ制御を実行する、
ことを特徴とするモータ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のモータ装置であって、
フェールセーフ制御は、上アームおよび下アームの一方を全相オンし、他方を全相オフする制御である、
ことを特徴とするモータ装置。
【請求項7】
請求項5に記載のモータ装置であって、
フェールセーフ制御は、上アームおよび下アームの両方を完全にオフにする制御である、
ことを特徴とするモータ装置。
【請求項8】
車両であって,その特徴は,請求項1から7のいずれか一項に記載のモータ装置を含むことである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置に関し、特に、モータ部の回転角を検出する回転角センサを備えたモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用モータ等の回転角を検出するために、レゾルバが一般的に用いられている。
【0003】
しかしながら、車載用モータを搭載した車両のピッチング走行等の外的要因により、レゾルバに異常が発生する場合がある。
【0004】
レゾルバに異常が発生した場合には、回転角を正確に検出することができないため、モータ制御を正確に行うことができない。
【0005】
レゾルバの異常診断方法として、例えば、特許文献1には、レゾルバから出力される1周期内の複数のサンプリング値の和と0値との差をオフセット値とし、オフセット値が閾値を超えた場合にレゾルバに異常が発生したと判定することが開示されている。
また、特許文献2には、レゾルバから出力される信号に基づいて第1電気角および第2電気角をそれぞれ算出し、第1電気角および第2電気角が一致しない場合にレゾルバに異常が発生したと判定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術では、レゾルバの出力ずれ等の異常しか検出できず、レゾルバの物理的なずれ(角度ずれ)を検出することができなかった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、回転角センサの物理的なずれをソフトウェア的に容易に検出することができ、別途外部装置を必要としないモータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るモータ装置の第1の態様は、ロータとステータとを有するモータ部と、入力電圧を三相交流電圧に変換して前記モータ部に供給するためのインバータ部と、前記インバータ部を制御するためのインバータ制御部と、前記モータ部に固定され、前記モータ部の回転角を検出するための回転角センサとを備え、前記インバータ制御部は、前記モータ部の電圧位相の実測値と理論値との差に基づいて、前記回転角センサの取付位置のオフセット角を算出する演算部を備える。
【0010】
本発明のモータ装置によれば、別途外部装置を必要とすることなく、回転角センサの物理的なずれをソフトウェア的に容易に検出することができる。
【0011】
本発明に係るモータ装置の第2の態様は、第1の態様において、前記インバータ制御部は、前記演算部による演算を許可するか否かを判定する判定部をさらに備え、前記演算部は、前記判定部により前記演算部による演算が許可された場合に、前記回転角センサの取付位置のオフセット角を算出することが好ましい。
【0012】
本発明のモータ装置によれば、前記回転角センサの取付位置のオフセット角を算出する必要がある場合にのみ、インバータ制御部の演算部で算出することができるので、演算部の動作をより効率的にして、前記回転角センサの取付位置のオフセット角を不要な場合に算出することを回避することができる。
【0013】
本発明に係るモータ装置の第3の態様は、上記第2の態様において、前記判定部は、前記モータ部に流れる電流と、システム状態と、前記モータ部の回転数とに基づいて、前記演算部による演算を許可するか否かを判定することが好ましい。
【0014】
本発明のモータ装置によれば、前記モータ部に流れる電流と、システム状態と、前記モータ部の回転数との3つの条件が全て合致した場合にのみ前記演算部による前記回転角センサの取付位置のずれ角の算出を許可するので、演算部の動作をより効率的にして、前記回転角センサの取付位置のずれ角を不要な場合に算出することを回避することができる。
【0015】
本発明に係るモータ装置の第4の態様は、前記第1の態様において、前記モータ装置は車両に搭載され、前記車両は車両制御部を有し、前記インバータ制御部は、診断部と制御部とをさらに含み、前記診断部は、前記オフセット角が所定値を超えた場合に、前記制御部及び前記車両制御部に異常を通知することが好ましい。
【0016】
本発明のモータ装置によれば、回転角センサの取付位置のずれ角が所定値を超えた場合に、インバータ制御部の制御部および車両制御部に異常を通知するので、回転角センサのずれによるモータ装置の制御不良を防止するための措置をとるように当該制御部に通知することができる。
【0017】
本発明に係るモータ装置の第5の態様は、前記第4の態様において、前記インバータ部は、ゲートドライバと、上アーム及び下アームを含むモータ駆動回路とを有し、前記制御部は、ゲートドライバに信号を出力することにより、前記上アーム及び前記下アームに含まれるスイッチング素子をオンオフ制御し、前記診断部は、前記モータ部の回転数が閾値を超えた場合に、前記制御部に異常を通知し、場合に前記制御部がフェールセーフ制御を実行することが好ましい。
【0018】
本発明に係るモータ装置の第6の態様は、第5の態様において、前記フェールセーフ制御は、前記上アームおよび前記下アームの一方を全相オンし、他方を全相オフするアクティブショート回路(ASC)制御であることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るモータ装置の第7の態様は、第5の態様において、前記フェールセーフ制御は、前記上アームと前記下アームの両方を全相遮断するシャットダウン(SD)制御であることを特徴とする。
【0020】
モータが高速回転するとスイッチング素子が発熱し、このとき回転角センサがずれてモータを正確に制御できなくなると、モータがさらに加速してしまう。
【0021】
本発明のモータ装置によれば、回転角センサがオフセットしてモータが高速回転しているときにフェールセーフ制御(ASC制御やSD制御)を行うことにより、スイッチング素子やバッテリの故障を防止することができる。
【0022】
本発明に係る車両の第8の態様は、請求項1から7のいずれかに記載のモータ装置を備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明のモータ装置によれば、別途外部装置を必要とすることなく、回転角センサの物理的なずれをソフトウェア的に容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明に係るモータ装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明のモータ装置における演算実行条件判定部およびレゾルバオフセット角演算部の詳細な構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明のフェールセーフ制御におけるモータ装置の一部の構成を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、本発明のフェールセーフ制御におけるASC制御およびSD制御を説明するための模式図である。
【
図5A】
図5Aは、ロータ回転軸に対するレゾルバの物理的な角度ずれを説明するための模式図である。
【
図5B】
図5Bは、ロータ回転軸に対するレゾルバの物理的な角度ずれを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るモータ装置の好適な実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
各図において、同一または相当部分には同一符号を付して説明する。
【0027】
図1は、本発明に係るモータ装置の構成を示す模式図である。
【0028】
本発明のモータ装置10は、一例として、モータ部300と、インバータ部200と、インバータ制御部(CPU)110と、回転角センサ301とを備える。
【0029】
モータ部300は、ロータとステータとを有し、三相交流の供給により回転駆動されるモータである。
【0030】
モータ部300としては、例えば永久磁石同期モータを用いることができる。
【0031】
回転角センサ301は、モータ部300に固定されており、モータ部300の回転角を検出するものである。
【0032】
なお、回転角センサ301は、例えばレゾルバである。
【0033】
図5は、ロータ回転軸に対するレゾルバの物理的な角度ずれを説明するための模式図である。
【0034】
図5(a)は、レゾルバ301がモータ部300のロータ軸に対して角度ずれしていない正常な場合を示しており、
図5(b)は、レゾルバ301がモータ部300のロータ軸に対して反時計回りに角度αずれた異常な場合を示している。
【0035】
レゾルバ301は、検出した正弦信号及び余弦信号を含むレゾルバ信号をRDC(Rotary Digital Converter)コンバータ400に送信し、RDCコンバータ400は、レゾルバ信号をデジタル信号に変換してレゾルバオフセット角演算部104に送信する。
【0036】
また、RDCコンバータ400は、レゾルバ信号から得られるモータ部の回転数を演算実行条件判定部103に送る。
【0037】
インバータ部200は、バッテリ(
図1には図示せず)に蓄えられた直流電力を可変電圧および可変周波数の三相交流電力に変換してモータ部300に供給する。
【0038】
インバータ部200には電流センサ201が含まれており、この電流センサ201はインバータ部200における三相電流を検出し、検出した三相電流をインバータ制御部110に供給する。
【0039】
インバータ制御部110は、インバータ制御回路100に設けられ、インバータ部200を制御するものである。
【0040】
インバータ制御部110は、診断部101と、制御部102と、演算実行条件判定部103(判定部に相当)と、レゾルバオフセット角演算部104(演算部に相当)とを含む。
【0041】
演算実行条件判定部103は、モータ部300に流れる電流と、システム状態と、モータ部300の回転数とに基づいて、レゾルバオフセット角演算部104による演算を許可するか否かを判定する。
【0042】
レゾルバオフセット角演算部104は、モータ部300の電圧位相の実測値と理論値との差に基づいて、回転角センサ301の取付位置のオフセット角(ずれ角)を算出し、算出したオフセット角を診断部101に供給する。
【0043】
演算実行条件判定部103及びレゾルバオフセット角演算部104の具体的な動作については後に詳述する。
【0044】
診断部101は、オフセット角が所定値を超えると、制御部102および車両のマイコン500(車両制御部に相当)に異常を通知する。
【0045】
回転角センサ301の取付位置のずれ角が所定値を超えた場合には、インバータ制御部110の制御部102および車両制御部500に異常が通知されるので、回転角センサ301のずれによるモータ装置の制御不良を防止するための措置をとるように当該制御部に通知することができる。
【0046】
制御部102は、診断部101から故障通知を受けると、モータ部300の回転数が例えば4000rpmを超えたか否かを判定する。
【0047】
モータ部300の回転数が4000rpmを超えない場合には、トルク制御を維持したままとする。
【0048】
モータ部300の回転数が4000rpmを超えると、フェールセーフ制御が開始される。
【0049】
フェールセーフ制御の具体的な動作については後に詳述する。
【0050】
図2は、本発明のモータ装置における演算実行条件判定部およびレゾルバオフセット角演算部の詳細な構成を示す模式図である。
【0051】
演算実行条件判定部103は、モータ部300に流れる電流と、システム状態と、モータ部300の回転数とに基づいて、レゾルバオフセット角演算部104による演算を許可するか否かを判定する。
【0052】
具体的には、インバータ制御部110は、電流センサ201により検出された三相電流をd軸電流Idおよびq軸電流Iqに変換し、これらd軸電流Idおよびq軸電流Iqを演算実行条件判定部103に供給する。
【0053】
d軸電流Idおよびq軸電流Iqは、d軸成分およびq軸成分をベクトル合成した電圧ベクトルVdqを算出するために用いられる。
【0054】
d軸成分およびq軸成分の一方が大きすぎると、電圧位相を検出することができない。
【0055】
そのため、計算実施条件の一つとして、IdとIqのいずれか一方が過大にならないという条件(以下、Id・Iq条件と略す)を満たす必要がある。
【0056】
また、インバータ制御部110は、車両のマイコン(VCU)500からの状態を判定し、判定結果は演算実行条件判定部103に供給される。
【0057】
一般に、車両が運転を開始したときにのみ、レゾルバにオフセットが生じているか否かを検出することが望ましい。
【0058】
そこで、他の演算実行条件として、車両が運転を開始したという条件(以下、システム状態条件と略す)を満たす必要がある。
【0059】
また、モータの回転数が0rpm付近では、電圧位相を検出することができない。
【0060】
そこで、別の計算実施条件として、モータの回転数が0rpm付近にならないという条件(以下、単に回転数条件という)を満たす必要がある。
【0061】
すなわち、演算実行条件判定部103は、上述した「Id・Iq条件」、「システム状態条件」、「回転数条件」を同時に満たす場合にのみ、レゾルバオフセット角演算部104による演算を許可する。
【0062】
これにより、演算実行条件判定部の動作をより効率的なものとすることができ、不要な場合にレゾルバの取付位置のずれ角を演算することを回避することができる。
【0063】
演算実行条件判定部103がレゾルバオフセット角演算部104に算出を許可した場合、レゾルバオフセット角演算部104は、モータ部300の電圧位相の実測値と理論値との差に基づいて、回転角センサ301の取付位置のオフセット角を算出する。
【0064】
具体的には、レゾルバオフセット角演算部104は、d軸電流Id、q軸電流Iq、モータの巻線抵抗値R、モータの角速度(電気角の角速度)ω、鎖交磁束Φ、d軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLqに基づいて、以下の式1により理論値である電圧位相FFを算出する。
【0065】
電圧位相FF=tan^(-1)(RI_d-ωL_q I_q)/(RI_q+ω(Φ+L_d I_d))・・・(式1)
【0066】
レゾルバオフセット角演算部 104は、実際に検出されたd軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqに基づいて、以下の式2により電圧位相FBを実測値として算出する。
【0067】
電圧位相FB=tan^(-1)V_d/V_q・・・(式2)
【0068】
そして、レゾルバオフセット角演算部104は、電圧位相FBと電圧位相FFとの差分を回転角センサ301の取付位置のオフセット角として算出する。
【0069】
レゾルバオフセット角演算部104は、算出したオフセット角を診断部101に供給する。
【0070】
診断部101は、オフセット角が所定の閾値(例えば30°)を超えた場合、制御部102及び車両のマイコン500(車両制御部に相当)に異常を通知する。
【0071】
したがって、本発明のモータ装置によれば、別途外部装置を必要とすることなく、回転角センサの物理的なずれをソフトウェア的に容易に検出することができる。
【0072】
図3は、本発明のフェールセーフ制御におけるモータ装置の一部の構成を説明するための模式図である。
【0073】
図4は、本発明のフェールセーフ制御におけるASC制御およびSD制御を説明するための模式図である。
【0074】
図3に示すように、インバータ部200は、ゲートドライバ24と、上アーム22および下アーム23を含むモータ駆動回路とを有する。
【0075】
高圧バッテリ13はインバータ部200に高電圧を供給し、低圧バッテリ14はインバータ制御部110に低電圧を供給する。
【0076】
ここでは、上アームおよび下アームのスイッチング素子としてIGBTを用いたが、これに限定されるものではない。
【0077】
インバータ制御部110の制御部102は、ゲートドライバ24に制御信号を出力することにより、上アーム22および下アーム23に含まれるスイッチング素子のオンオフを制御する。
【0078】
制御部102は、モータ部300の回転数が閾値を超えていない場合には、インバータ部200が高圧バッテリに蓄えられた直流電力を可変電圧および可変周波数を有する三相交流電力に変換してモータ部300に供給するように、インバータ部200におけるゲートドライバ24を介して上アーム22および下アーム23の6つのスイッチング素子のオンオフを制御する通常のトルク制御を行う。
【0079】
モータ部300の回転数が閾値を超えた場合、診断部101は制御部102に異常を通知し、制御部102は通常のトルク制御を終了し、フェールセーフ制御の実行を開始する。
【0080】
フェールセーフ制御は、
図4の左側に示すように、上アーム22および下アーム23の一方を全相オンとし、他方を全相オフとするASC制御であってもよい。
【0081】
ASC制御を採用することにより、モータに発生する逆起電力を還流させてバッテリの過充電を防止することができ、スイッチング素子やバッテリの故障を防止することができる。
【0082】
なお、上述したフェールセーフ制御は、
図4の右側に示すように、上アーム22および下アーム23の両方を全相オフするSD制御であってもよい。
【0083】
SD制御を採用することにより、スイッチング素子や電池の故障を防止することができる。
【0084】
モータが高速回転するとスイッチング素子が発熱し、このとき回転角センサがずれてモータを正確に制御できなくなると、モータがさらに加速してしまう。
【0085】
したがって、本発明のモータ装置によれば、回転角センサがオフセットしてモータが高速回転しているときにフェールセーフ制御(ASC制御やSD制御)を行うことにより、スイッチング素子やバッテリの故障を防止することができる。
【0086】
また、本発明に係る車両は、上述したモータ装置を備える。
【0087】
本発明は、その範囲内において、実施の形態における各構成要素を自由に組み合わせたり、適宜変形したり、省略したりすることが可能であることは言うまでもない。
【0088】
以上、本発明を詳細に説明したが、上記説明はあらゆる点で例示に過ぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
図示されていない無数の変形例が、本発明の範囲から逸脱することなく想定され得るものとして解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係るモータ装置は、EV(電気自動車)のモータ等の分野に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
10 モータ装置
100 インバータ制御回路
110 インバータ制御部(CPU)
101 診断部
102 制御部
103 演算実行条件判定部
104 レゾルバオフセット角演算部
200 インバータ部
201 電流センサ
300 モータ部
301 レゾルバ
400 RDCコンバータ
500 車両のマイコン
13 高圧バッテリ
14 低圧バッテリ
22 上アーム
23 下アーム
24 ゲートドライバ