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  • 特開-側面衝突検知装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161091
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】側面衝突検知装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/0136 20060101AFI20221014BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B60R21/0136 310
B60R21/00 310B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065638
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】塩出 亮
(57)【要約】
【課題】Gセンサを追加することなく、衝突検知エリアを拡大できる、側面衝突検知装置を提供する。
【解決手段】車両2の側面に衝撃が入力されたときに、その衝撃の入力により車両2に生じる角加速度の大きさおよび向きが検出される。そして、その検出された角加速度の大きさおよび向きから、衝撃が入力された領域が推定される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側面への衝撃の入力により前記車両に生じる角加速度の大きさおよび向きを検出する検出部と、
前記検出部により検出された角加速度の大きさおよび向きから、衝撃が入力された領域を推定する推定部と、を含む、側面衝突検知装置。
【請求項2】
前記側面内の領域と当該領域に応じた制御とを対応づけて記憶する記憶部と、
前記推定部により衝撃が入力された領域が推定された場合に、その推定された領域と対応づけて前記記憶部に記憶されている制御を行う制御部と、をさらに含む、請求項1に記載の側面衝突検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面衝突検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、側面衝突による衝撃から乗員を保護するため、側面衝突時に運転席、助手席および後部座席の側方で展開するサイドエアバッグやカーテンエアバッグを設けたものがある。側面衝突検知用のGセンサ(加速度センサ)は、一般的には、フロントドア開口とリヤドア開口との間のBピラーおよびリヤドア開口の後端縁に沿ったCピラーに配置される。Bピラーに配置されたGセンサに一定以上のGが入ると、サイドエアバッグが展開し、Cピラーに配置されたGセンサに一定以上のGが入ると、カーテンエアバッグが展開する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-195230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各Gセンサは、車両の横滑りなどによる電柱との側面衝突などの局所変形型の側面衝突に対して、検知エリア付近の感度は高いが、検知エリアを外すと感度が低い。そのため、2個のGセンサだけでは、衝突検知の遅れや非検知を生じるおそれがある。Gセンサを追加すれば、衝突を検知できる衝突検知エリアが拡大するが、コストがアップする。
【0005】
本発明の目的は、Gセンサを追加することなく、衝突検知エリアを拡大できる、側面衝突検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係る側面衝突検知装置は、車両の側面への衝撃の入力により車両に生じる角加速度の大きさおよび向きを検出する検出部と、検出部により検出された角加速度の大きさおよび向きから、衝撃が入力された領域を推定する推定部とを含む。
【0007】
この構成によれば、車両の側面に衝撃が入力されたときに、その衝撃の入力により車両に生じる角加速度の大きさおよび向きが検出される。そして、その検出された角加速度の大きさおよび向きから、衝撃が入力された領域が推定される。これにより、Gセンサを追加することなく、衝突検知エリアを拡大することができる。
【0008】
側面衝突検知装置は、側面内の領域と当該領域に応じた制御とを対応づけて記憶する記憶部と、推定部により衝撃が入力された領域が推定された場合に、その推定された領域と対応づけて記憶部に記憶されている制御を行う制御部とをさらに含む構成であってもよい。
【0009】
この構成により、車両の側面に衝撃が入力されたときに、その衝撃が入力された領域に応じた制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、Gセンサを追加することなく、衝突検知エリアを拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る側面衝突検知装置の機能が組み込まれたエアバッグシステム1の構成を示すブロック図である。
図2】側面衝突処理の流れを示すフローチャートである。
図3】側面衝突処理の内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
<側面衝突検知装置>
図1は、本発明の一実施形態に係る側面衝突検知装置の機能が組み込まれたエアバッグシステム1の構成を示すブロック図である。
【0014】
エアバッグシステム1は、車両2に搭載されて、車両2が衝突による衝撃を受けたときに、その衝撃から乗員を保護するためのシステムである。
【0015】
車両2の左右の側面には、フロントドア開口およびリヤドア開口が前後に形成されている。また、車両2の左右の側面には、フロントドア3L,3Rがそれぞれ左右のフロントドア開口を開閉可能に設けられ、リヤドア4L,4Rがそれぞれ左右のリヤドア開口を開閉可能に設けられている。
【0016】
車両2は、その骨格の一部として、フロントガラス5と左右のフロントドア開口との間にそれぞれAピラー6L,6Rを有し、左右のフロントドア開口とリヤドア開口との間にそれぞれBピラー7L,7Rを有し、左右のリヤドア開口の後端に沿ってそれぞれCピラー8L,8Rを有している。
【0017】
左右のBピラー7L,7Rの下部には、それぞれサイドセンサ9L,9Rが配置されている。サイドセンサ9L,9Rは、左右方向(横方向)を検出軸として加速度を検出する1軸加速度センサ(BピラーGセンサ)である。
【0018】
エアバッグシステム1には、エアバッグコントロールユニット11が含まれる。エアバッグコントロールユニット11は、マイコン(マイクロコントローラユニット)を備えており、マイコンには、たとえば、CPU、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリおよびDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリが内蔵されている。
【0019】
また、エアバッグコントロールユニット11には、ヨーレートセンサ12が内蔵されている。ヨーレートセンサ12は、車両2の重心点を通る鉛直軸まわりの回転角速度(ヨーレート)に応じた検出信号を出力する。エアバッグコントロールユニット11は、ヨーレートセンサ12の検出信号から車両2の角加速度を求める。角加速度は、たとえば、車両2の重心点を通る鉛直軸まわりの右回転(時計回りの回転)により正の値をとり、左回転により負の値をとる。
【0020】
また、車両2の車室内には、エアバッグが設けられている。エアバッグには、左右両側のサイドエアバッグおよびカーテンエアバッグが含まれる。サイドエアバッグは、左右の前部座席の外側の側面に設けられて、作動時にはドアと乗員との間に展開する。カーテンエアバッグは、サイドウインドウ上部のルーフラインに沿って設けられ、作動時にはサイドウインドウを覆うように展開する。
【0021】
エアバッグコントロールユニット11は、車両2の側面に衝撃が入力されたときに、側面衝突処理を行い、サイドセンサ9L,9Rにより検出される加速度が基準値以上である場合に、ヨーレートセンサ12の検出信号から求められる角加速度の大きさおよび向きから衝撃が入力された領域を推定し、その推定した領域に応じた制御を行う。衝撃が入力された領域とその領域に応じた制御とは、互いに関連づけられて、エアバッグコントロールユニット11の不揮発性メモリに記憶されている。
【0022】
衝撃が入力された領域(衝突した領域)の推定には、しきい値A,B,C,Dが使用される。これらのしきい値A,B,C,Dは、次のようにして設定される。
【0023】
たとえば、右側のBピラー7R付近の領域A1に質量mの固体物が衝突した場合に、その衝突位置と車両2の重心との直線距離をrとし、衝突位置と重心とを通る直線と重心を通って左右方向に延びる直線とがなす角度をθとし、衝突により発生する加速度でエアバック展開すべき下限の加速度をaとして、質量Mの車両2が質量mの固体物から受ける力によりその重心まわりに角加速度dω/dtで回転したとして、運動方程式を立てて、それを角加速度dω/dtで解くと、
dω/dt=a*m*sinθ/(M*r) ・・・(1)
となる。
【0024】
同様に、右側のCピラー8R付近の領域A2に質量mの固体物が衝突した場合に、その衝突位置と車両2の重心との直線距離をrとし、衝突位置と重心とを通る直線と重心を通って左右方向に延びる直線とがなす角度をθとし、衝突により発生する加速度でエアバック展開すべき下限の加速度をaとして、質量Mの車両2が質量mの固体物から受ける力によりその重心まわりに角加速度dω/dtで回転したとして、運動方程式を立てて、それを角加速度dω/dtで解くと、
dω/dt=a*m*sinθ/(M*r) ・・・(2)
となる。
【0025】
角加速度dω/dtは、領域A1に衝撃が入力されたときにエアバッグ展開すべき角加速度の最低値であり、角加速度dω/dtは、領域A2に衝撃が入力されたときにエアバッグ展開すべき角加速度の最低値であり、領域A2が領域A1よりも重心に対して遠い位置にあり、車両2の右回転により角加速度が正の値をとるので、角加速度dω/dtがしきい値Aとして設定され、角加速度dω/dtがしきい値Bとして設定される。
【0026】
式(1)を用いて、式(2)から「a*m」を消すと、
dω/dt=(sinθ/sinθ)*(r/r)*dω/dt
となるので、加速度aのときの角加速度dω/dtの実験値を取得すれば、しきい値Aを演算により設定することができる。
【0027】
しきい値C,Dについても、しきい値Bの場合と同様にして設定することができる。
【0028】
<側面衝突処理>
図2は、側面衝突処理の流れを示すフローチャートである。
【0029】
以下、車両2の右側面が固体物と衝突した場合の側面衝突処理について説明するが、車両2の左側面が固体物と衝突した場合についても、左右反転して、同様の処理により、衝突による衝撃が入力された領域を推定することができる。
【0030】
側面衝突処理では、サイドセンサ9Rにより検出される加速度が左向きで基準値以上であるか否かが判断される(ステップS1)。サイドセンサ9Rにより検出される加速度が左向きでないか、または、左向きであっても基準値未満である場合には(ステップS1のNO)、衝撃が入力された領域の推定は行われず、サイドエアバッグおよびカーテンエアバッグは展開されない。
【0031】
サイドセンサ9Rにより検出される加速度が左向きで基準値以上である場合、ヨーレートセンサ12の検出信号から求められる角加速度が車両右回転方向でしきい値A以上であるか否かが判断される(ステップS2)。この判断が肯定される場合(ステップS2のYES)、衝突による衝撃が入力された領域がCピラー8R付近の領域A2であると推定されて、その領域A2への衝突に応じた制御として、右側カーテンエアバッグが展開される(ステップS3)。
【0032】
ステップS2の判断が否定される場合、ヨーレートセンサ12の検出信号から求められる角加速度が車両右回転方向でしきい値B以上であるか否かが判断される(ステップS4)。この判断が肯定される場合(ステップS4のYES)、衝突による衝撃が入力された領域がBピラー7R付近の領域A1であると推定されて、その領域A1への衝突に応じた制御として、右側サイドエアバッグおよび右側カーテンエアバッグが展開される(ステップS5)。
【0033】
ステップS4の判断が否定される場合、ヨーレートセンサ12の検出信号から求められる角加速度が車両左回転方向でしきい値D以下であるか否かが判断される(ステップS6)。この判断が肯定される場合(ステップS6のYES)、衝突による衝撃が入力された領域がFrフェンダ(フロントフェンダ)付近の領域A4であると推定されて、その領域A4への衝突に応じた制御として、たとえば、エンジンコンパートメント内に搭載されているユニットであって、衝突による破壊の有無を検出する必要があるユニットに向けて、破壊検出のための信号が送信される。そして、破壊検出結果が得られると、その破壊検出結果が他のシステムに向けて出力される(ステップS7)。
【0034】
ステップS6の判断が否定される場合、ヨーレートセンサ12の検出信号から求められる角加速度が車両左回転方向でしきい値C以下であるか否かが判断される(ステップS8)。この判断が肯定される場合(ステップS8のYES)、衝突による衝撃が入力された領域がAピラー6R付近の領域A3であると推定されて、その領域A3への衝突に応じた制御として、右側カーテンエアバッグが展開される(ステップS9)。
【0035】
図3には、以上説明した内容が纏めて記載されている。
【0036】
<作用効果>
以上のように、車両2の側面に衝撃が入力されたときに、その衝撃の入力により車両2に生じる角加速度の大きさおよび向きが検出される。そして、その検出された角加速度の大きさおよび向きから、衝撃が入力された領域が推定される。これにより、Gセンサを追加することなく、衝突検知エリアを拡大することができる。
【0037】
また、衝撃が入力された領域が推定されると、その推定された領域に応じた制御が行われる。これにより、衝撃が入力された領域に適した制御を行うことができる。
【0038】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0039】
たとえば、演述の実施形態では、ヨーレートセンサ12の検出信号から車両2の角加速度が求められるとしたが、サイドセンサ9L,9Rに前後方向および左右方向を検出軸として加速度を検出する2軸加速度センサを採用して、サイドセンサ9L,9Rによりそれぞれ検出される前後方向および左右方向の加速度の合成ベクトルから、車両2の重心まわりの角加速度が求められてもよい。
【0040】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0041】
2:車両
11:エアバッグコントロールユニット(側面衝突検知装置、検出部、推定部、記憶部、制御部)
12:ヨーレートセンサ(検出部)
A1,A2,A3,A4:領域
図1
図2
図3