(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161093
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】産業用ロボットのティーチング方法
(51)【国際特許分類】
B25J 9/22 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
B25J9/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065640
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 伸二
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS06
3C707BS01
3C707DS01
3C707ES04
3C707EU19
3C707EV02
3C707EW11
3C707JS06
3C707JU08
3C707KS19
3C707KS36
3C707KV05
3C707KX08
3C707LS14
3C707LT12
3C707MS05
3C707MT04
3C707NS07
(57)【要約】
【課題】安全かつ容易にティーチングを行う方法を提供する。
【解決手段】ティーチング時には、第1のワークを、前記ガイドと同心、かつ、第1の治具に対して摺動可能に配置し、連動駆動型3つ爪チャックを所定の初期位置に移動させたうえで、三つのフィンガを閉鎖し、各フィンガがワークに接触する実接触時間を取得し、理想時間と実接触時間との差分時間を前記三つのフィンガそれぞれについて算出し、差分時間と閉鎖速度と、に基づいて補正量を算出し、前記補正量を、前記初期位置から減算した値を、新たな初期位置に設定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用ロボットのティーチング方法であって、
マニピュレータに設けられた連動駆動型3つ爪チャックの中心軸と、第1のワークを保持する第1の治具のガイドの中心軸と、のズレ量を補正する補正量を求める補正ステップを、前記補正量が規定の許容値以下になるまで繰り返しており、
前記補正ステップは、
前記第1のワークを、前記ガイドと同心、かつ、第1の治具に対して摺動可能に配置し、
前記連動駆動型3つ爪チャックに設けられた三つのフィンガが前記第1のワークを取り囲むにように、前記三つのフィンガを開いた状態で、連動駆動型3つ爪チャックを所定の初期位置に移動させ、
前記三つのフィンガを閉鎖していくとともに、前記閉鎖を開始してから前記三つのフィンガそれぞれが前記第1のワークに接触または近接するまでの時間を、実接触時間として取得し、
前記連動駆動型3つ爪チャックと前記ガイドとが同心の場合に前記三つのフィンガそれぞれが前記第1のワークに接触または近接するまでの時間である理想時間と、前記実接触時間と、の差分時間を前記三つのフィンガそれぞれについて算出し、
前記三つのフィンガそれぞれの前記差分時間と、前記三つのフィンガの閉鎖方向への移動速度と、に基づいて前記補正量を算出し、
前記補正量を、前記初期位置から減算した値を、新たな初期位置に設定する、
ことを特徴とする産業用ロボットのティーチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットのティーチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットの自動で行うティーチング方法としては、特許文献1が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
上記特許文献1において、産業用ロボットのハンドに把持させた第1のワークが、所定位置に置かれた第2のワークに設けられた挿入穴に挿入されたか否かを検出する検出手段により、第1のワークが前記挿入穴に挿入されたときのロボット位置を記憶し、同じ動作を自動で繰り返し行わせて、前記ロボット位置の平均値をティーチング位置とする方法が公開されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この方法では、挿入穴に入らない時は、第1のワークが第2のワークに干渉して、ハンドの把持位置がずれたり、双方のワークを傷つけたり、ハンドを破損させたりする可能性があり、自動で動作させるのは危険である。
【0006】
本発明では、産業用ロボットにて、安全かつ容易にティーチングを行う方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
産業用ロボットのティーチング方法は、マニピュレータに設けられた連動駆動型3つ爪チャックの中心軸と、第1のワークを保持する第1の治具のガイドの中心軸と、のズレ量を補正する補正量を求める補正ステップを、前記補正量が規定の許容値以下になるまで繰り返しており、前記補正ステップは、前記第1のワークを、前記ガイドと同心、かつ、第1の治具に対して摺動可能に配置し、前記連動駆動型3つ爪チャックに設けられた三つのフィンガが前記第1のワークを取り囲むにように、前記三つのフィンガを開いた状態で、連動駆動型3つ爪チャックを所定の初期位置に移動させ、前記三つのフィンガを閉鎖していくとともに、前記閉鎖を開始してから前記三つのフィンガそれぞれが前記第1のワークに接触または近接するまでの時間を、実接触時間として取得し、前記連動駆動型3つ爪チャックと前記ガイドとが同心の場合に前記三つのフィンガそれぞれが前記第1のワークに接触または近接するまでの時間である理想時間と、前記実接触時間と、の差分時間を前記三つのフィンガそれぞれについて算出し、前記三つのフィンガそれぞれの前記差分時間と、前記三つのフィンガの閉鎖方向への移動速度と、に基づいて前記補正量を算出し、前記補正量を、前記初期位置から減算した値を、新たな初期位置に設定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成することで、前記差分の時間と前記連動駆動型3つ爪チャックの速度から、チャック中心とガイドのズレ量を自動で求めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1のワークを搬送する際の産業用ロボットの
図2のO-Q断面図である。
【
図3】理想状態における産業用ロボットの信号タイムチャートである。
【
図4】非理想状態における産業用ロボットの信号タイムチャートである。
【
図5】本発明の産業用ロボットの信号ブロック図である。
【
図6】ティーチング時の産業用ロボットの
図2のO-Q断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
図2は、本発明の産業用ロボットの下視図である。
図1は、第1のワーク30を搬送する際の産業用ロボットの
図2のO-Q断面図である。図示しないマニピュレータの先端には、連動駆動型3つ爪チャック6がネジ固定されている。この連動駆動型3つ爪チャック6には、フィンガ2A,2B,2Cが周方向に3等配でねじ固定されている。このフィンガ2A,2B,2Cには、それぞれ把持対象のワーク30との接点付近に近接センサ1a,1b,1cが取り付けられている。ワーク30を搬送する時、マニピュレータは、連動駆動型3つ爪チャック6の中心軸が、第1の治具4のガイド5の中心軸と一致するように、ティーチング時にプログラムされた目標位置に移動し、その後、連動駆動型3つ爪チャック6を開閉することでフィンガ2A,2B,2Cによって第1のワークを掴み、第1の治具4のガイド5に前記ワークを出し入れする。
【0011】
図6は、ティーチング時における産業用ロボットの断面図である。
図3、
図4は本発明の産業用ロボットの信号タイムチャートである。
図5は本発明の産業用ロボットの信号ブロック図である。
【0012】
ティーチング時には、第1のワーク30と側面形状が同じで上面が平らな第2の治具40を、あらかじめ、第1の治具4のガイド5の中に入れて置く。第2の治具40の側面形状(外形)は、ガイド5と僅かな隙間の嵌め合い寸法とすることで、第2の治具40とガイド5と、を同心配置できる。また、第2の治具40の上面は、第1の治具4の上面より高くしておく。そして、この第2の治具40の上面に、第1のワーク30を、その側面が互いに一致するように載置することで、第1のワーク30を、ガイド5と同心で、かつ、第1の治具4に対して摺動可能に配置できる。
【0013】
次に、制御装置20は、三つのフィンガ2A,2B,2Cを開いた状態で、マニピュレータ21を駆動し、連動駆動型3つ爪チャック6を、所定の初期位置(Xa,Ya)まで移動させる。この初期位置(Xa,Ya)は、開状態の三つのフィンガ2A,2B,2Cが、第1のワーク30を取り囲める位置であればよく、連動駆動型3つ爪チャック6の中心軸とガイド5の中心軸とがズレていてもよい。初期位置(Xa,Ya)まで移動すれば、制御装置20は、連動駆動型3つ爪チャック6に閉指令を出す。これにより、フィンガ2A,2B,2Cは、一定の閉鎖速度Vで連動駆動型3つ爪チャック6の中心に向かって動く。
【0014】
ここで、フィンガ2A,2B,2Cを閉鎖する前の段階で、ガイド5の中心軸と連動駆動型3つ爪チャック6の中心軸とが一致する理想状態の場合、フィンガ2A,2B,2Cが閉じていく過程で、フィンガ2A,2B,2Cは、同じタイミングで第1のワーク30に接触する。したがって、理想状態の場合、三つの近接センサ1a,1b,1cがONとなるタイミングが互いに一致する。
図3は、理想状態における信号タイミングチャートである。
図3に示すように、理想状態では、三つの近接センサ1a,1b,1cは、閉信号が出力されてから、一定の時間T*が経過して、ONとなる。この時間T*は、開状態のフィンガ2A,2B,2Cの内径φ1と第1のワーク30の外径φ2との差分の1/2を、連動駆動型3つ爪チャック6の閉鎖速度Vで割った時間となる。つまり、T*=(R1-R2)/(2×V)となる。以下では、このT*を、「理想時間」と呼ぶ。
【0015】
一方、閉鎖前の段階で、第1のワーク30の中心軸と連動駆動型3つ爪チャック6の中心軸とが一致しない非理想状態の場合、フィンガ2A,2B,2Cが閉じていく過程で、フィンガ2A,2B,2Cが第1のワーク30に接触するタイミングは、互いにズレる。また、非理想状態では、フィンガ2A,2B,2Cの閉じていく過程で、第1のワーク30は、フィンガ2A,2B,2Cに押されて第2の治具40の上を滑って動き、最終的に、連動駆動型3つ爪チャック6の中心軸と第1のワーク30の中心軸とが一致する位置で停止する。
【0016】
つまり、非理想状態の場合、三つの近接センサ1a,1b,1cがONとなるタイミングが互いにズレることになる。
図4は、非理想状態における信号タイミングチャートである。
図4の例では、時間Taが経過したタイミングで、近接センサ1aがONとなり、続いて、時間Tbが経過したタイミングで、近接センサ1bがONとなり、時間Tc=T*が経過したタイミングで、近接センサ1cがONとなっている。以下では、各近接センサ1a,1b,1cがONとなるまでの時間Ta,Tb,Tcを、「実接触時間」と呼び、この実接触時間Ta,Tb,Tcと理想時間T*との差分時間を、それぞれ、I,J,Kで表現する。
図4の例の場合、近接センサ1cの実接触時間Tcと理想時間T*との差分時間Kは、ゼロである。
【0017】
計数器3iは、フィンガ2A,2B,2Cが閉鎖動作を開始してから、近接センサ1aがONするまでの時間、すなわち、実接触時間Taとして求め、この実接触時間Taから理想時間T*を引いた差分時間I=T*-Taを算出する。同様に、計数器3j,3kも、フィンガ2A,2B,2Cが閉鎖動作を開始してから、近接センサ1b,1cがONするまでの時間である実接触時間Tb,Tcとして求め、この実接触時間Tb,Tcから理想時間T*を引いた差分時間J=T*-Tb、K=T*-Tcを算出する。
【0018】
また、近接センサ1a,1b,1cの出力信号は、論理積回路11に入力される。論理積回路11は、近接センサ1a,1b,1cの出力信号について論理積をとり、その結果を、補正計算のトリガ信号として演算器7に出力する。演算器7は、論理積回路11から出力されるトリガ信号で、計数器3i,3j,3kの計測値である時間I、J、Kをラッチする。そして、演算器7は、式1、式2の演算を行い、マニピュレータの位置の補正値であるx、yを求める。なお、式1および式2において、θa,θb,θcは、それぞれ、近接センサ1a,1b,1cの配置角度である。本例の場合、θa=π、θb=π×5/3、θc=π/3である。また、α、βは、いずれも、値一定の係数である。このα、βの値は、誤差が最も小さくなるように求めた近似値である。本例の場合、αは、1/1.5であり、βは、1/1.5である。
x=(I×cos(θa)+J×cos(θb)+K×cos(θc))×V×α ・・・式1
y=(I×sin(θa)+J×sin(θb)+K×sin(θc))×V×β ・・・式2
【0019】
減算器10は、初期位置(Xa,Ya)から、上記の補正値(x、y)を減算した値、すなわち、(Xa-x,Ya-y)を制御装置20に出力する。制御装置20は、この値を新たな初期位置として記憶する。すなわち、(Xa,Ya)=(Xa-x,Ya-y)として初期位置を更新する。そして、補正値(x,y)が、規定の許容値以下になるまで、上記の手順を再度繰り返す。すなわち、新たな初期位置(Xa,Ya)が得られれば、制御装置20は、フィンガ2A,2B,2Cを開いたうえで、連動駆動型3つ爪チャック6を、第1のワーク30と干渉しない位置に退避させる。作業者は、第1のワーク30が、第2の治具40と同心になるように、第1のワーク30の位置を修正する。その状態になれば、制御装置20は、連動駆動型3つ爪チャック6を、新たな初期位置(Xa,Ya)に移動させる。そして、再び、フィンガ2A,2B,2Cを閉鎖し、式1,式2に基づいて、新たな補正値(x,y)を求める。こうした手順を、補正値(x,y)が許容値を下回るまで繰り返すことで、最終的に、ガイド5と、連動駆動型3つ爪チャック6とがほぼ同心となる初期位置が得られる。そして、かかる初期位置が得られれば、この初期位置を、第1のワーク30を搬送する際の目標位置に設定することで、ティーチングは、完了となる。
【0020】
このように構成することで、ロボットが掴んだワーク30の芯と第1の治具4の芯のずれ量を容易に補正することができる。よって、ラフな調整で済むため手間がかからず効率的である。
【符号の説明】
【0021】
1a,1b,1c 近接センサ 、2A,2B,2C フィンガ、4 第1の治具、5 ガイド、6 連動駆動型3つ爪チャック、7 演算器、10 減算器、11 論理積回路、20 制御装置、21 マニピュレータ、30 第1のワーク、40 第2の治具。