(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161113
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】リードブッシュ、モータ装置及びファン
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065682
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】日本電産サーボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002723
【氏名又は名称】高法弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】水上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】金子 純也
(72)【発明者】
【氏名】岡部 俊宏
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA02
5H605BB05
5H605BB14
5H605BB17
5H605CC01
5H605CC06
5H605DD16
5H605DD32
5H605EC01
5H605EC03
5H605EC04
(57)【要約】
【課題】モータを収容するケース内の防水性を改善することである。
【解決手段】互いに嵌め合わされる第1ケースと第2ケースとの間の収容部に収容されたモータからのリードを覆うリードブッシュであって、前記リードは、前記第1ケースと前記第2ケースとの間に形成されたリード口から外部へ引き出され、前記リードブッシュは、前記リードを前記リードの径方向外側から覆う円筒形状の筒状部を有し、前記筒状部の少なくとも一部が前記リード口に収容され、前記リード口よりも外部側に、前記リードと直交する面における前記リード口の径よりも大径の水除部、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌め合わされる第1ケースと第2ケースとの間の収容部に収容されたモータからのリードを覆うリードブッシュであって、
前記リードは、前記第1ケースと前記第2ケースとの間に形成されたリード口から外部へ引き出され、
前記リードブッシュは、前記リードを前記リードの径方向外側から覆う円筒形状の筒状部を有し、
前記筒状部の少なくとも一部が前記リード口に収容され、
前記リード口よりも外部側に、前記リードと直交する面における前記リード口の径よりも大径の水除部を備える、
リードブッシュ。
【請求項2】
前記水除部は、前記リード口に密着する
請求項1に記載のリードブッシュ。
【請求項3】
前記水除部は、ラビリンス構造を構成する
請求項2に記載のリードブッシュ。
【請求項4】
前記第1ケースと前記第2ケースとの間に介在し、前記収容部を外部から密閉するパッキンを備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載のリードブッシュ。
【請求項5】
前記パッキンと前記リードブッシュは単一の部材の部分である、
請求項4に記載のリードブッシュ。
【請求項6】
前記第1ケースと前記第2ケースとが嵌め合わされる箇所にラビリンス構造を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のリードブッシュ。
【請求項7】
前記リードは、被覆部で覆われて多芯ケーブルを構成する、
請求項1から6のいずれか1項に記載のリードブッシュ。
【請求項8】
前記被覆部と前記リードブッシュは同一の素材である、
請求項7に記載のリードブッシュ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の前記リードブッシュと、
前記リードと、
前記第1ケースと、
前記第2ケースと、
前記モータと、
AC電源をDC電源に変換するAC/DC変換部と、
を備え、
前記収容部は、前記AC/DC変換部を収容し、
前記リードは、前記AC/DC変換部にAC電源を供給するリードであり、
前記モータは、前記AC/DC変換部によって変換されたDC電源により駆動するDCモータである、
モータ装置。
【請求項10】
請求項9に記載の前記モータ装置と、
前記DCモータによって回転するインペラと、
を備える、
ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードブッシュ、モータ装置及びファンに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータやステータをケースに収容して成るモータが知られている。このようなモータでは、例えば電源供給のためのリードをケース内から外へ引き出す必要がある。このため、ケース内の防水を確保するためには、リードを引き出すケースのリード口における防水も必要になる。
【0003】
従来、リード口においてケースにグロメットを嵌め込むことで、ケース内の防水を確保しようとした技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ケースにグロメットを嵌め込む構造の場合、例えばリード口に水が掛かるとケースとグロメットの境に水が溜まり、ケース内に水が浸入するおそれがあった。このため、従来ケース内の防水性に改善の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、モータを収容するケース内の防水性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の例示的な第1発明は、互いに嵌め合わされる第1ケースと第2ケースとの間の収容部に収容されたモータからのリードを覆うリードブッシュであって、前記リードは、前記第1ケースと前記第2ケースとの間に形成されたリード口から外部へ引き出され、前記リードブッシュは、前記リードを前記リードの径方向外側から覆う円筒形状の筒状部を有し、前記筒状部の少なくとも一部が前記リード口に収容され、前記リード口よりも外部側に、前記リードと直交する面における前記リード口の径よりも大径の水除部、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本願の例示的な第1発明によれば、モータを収容するケース内の防水性を改善することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るモータ装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1のモータ装置10のうち第1ケース110及び第2ケース120を示す斜視図である。
【
図3】
図1のモータ装置10のうち多芯ケーブル200及びリードブッシュ300を示す斜視図である。
【
図4】
図3の多芯ケーブル200及びリードブッシュ300を+X側から見た側面図である。
【
図5】
図1のモータ装置10を、X軸と直交し多芯ケーブル200の中心軸を通る面で切断して示す側断面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータ装置について説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。
【0011】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、
図1の上下方向とする。Y軸方向は、
図1の左右方向であって多芯ケーブル200が延びる方向と平行な方向とする。X軸方向は、Z軸方向とY軸方向との両方と直交する方向とする。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のいずれにおいても、図中に示す矢印が指す側を+側、反対側を-側とする。
【0012】
なお、本明細書において、「X、Y又はZ方向に延びる」とは、厳密にX、Y又はZ軸方向に延びる場合に加えて、X、Y又はZ軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また「平行」とは、厳密に平行な場合に加えて、互いに成す角が45°未満の範囲で傾いた場合も含む。
【0013】
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るモータ装置を示す斜視図である。
モータ装置10は、互いに嵌め合わされる第1ケース110と第2ケース120とを有する。第1ケース110は-Z側端に、端部111を有する。第2ケース120は+Z側端に、端部121を有する。端部111は、パッキン350(
図3参照)を挟んで端部121と嵌め合わされる。第1ケース110及び第2ケース120は、互いに嵌め合わされた状態で、収容部130(
図5参照)内を外部へと開放するリード口150を有する。
【0014】
モータ装置10は、モータを有する。モータ装置10は、第1ケース110及び第2ケース120内に、モータを収容する収容部130を有する。パッキン350は、第1ケース110と第2ケース120との間に介在し、収容部130を外部から密閉する。本実施形態において、モータはDC電源により駆動するDCモータである。モータ装置10は、リード210(
図3参照)を有する。モータ装置10は、リード210によって供給されたAC電源をDC電源に変換するAC/DC変換部を有する。収容部130は、AC/DC変換部を収容する。AC/DC変換部は、モータにDC電源を供給する。リード210は、リード口150において、Y軸方向に延びる。なお、本実施形態においては、モータ及びAC/DC変換部については既知の構成を用いればよいため、簡単のためモータ及びAC/DC変換部の図示を省略している。
【0015】
モータ装置10は、ファンに用いるものであってもよい。この場合、ファンは、モータ装置10と、モータ装置10が有するDCモータによって回転するインペラと有する。なお、本実施形態においては、インペラ及びファンについて既知の構成を用いればよいため、簡単のためインペラ及びファンの図示を省略している。
【0016】
モータ装置10は、多芯ケーブル200を有する。多芯ケーブル200は、リード210及び被覆部220(
図3参照)から成る。被覆部220は、2本のリード210を径方向外側から覆う。リード210の一端は、収容部130内でAC/DC変換部に接続される。リード210の他端は、収容部130外でAC電源に接続される。
【0017】
モータ装置10は、リードブッシュ300を有する。リードブッシュ300は、多芯ケーブル200を径方向外側から覆う。リードブッシュ300と多芯ケーブル200の被覆部220は、同一の素材である。リードブッシュ300の素材は、例えばポリ塩化ビニル樹脂である。被覆部220の素材は、例えばポリ塩化ビニル樹脂である。リードブッシュ300は、リード口150に嵌まる。
【0018】
リードブッシュ300は、多芯ケーブル200が筒孔を貫通することで、リード210をリード210の径方向外側から覆う円筒形状の筒状部301を有する。リードブッシュ300は、リードブッシュ300の可撓性を向上する蛇腹部302を有する。リードブッシュ300は、リード口150よりも外部側に、リード210が延びる方向と直交する面におけるリード口150の径よりも大径の水除部305を有する。
【0019】
図2は、
図1のモータ装置10のうち第1ケース110及び第2ケース120を示す斜視図である。
リード口150は、収容部130内から外部へと貫通する貫通孔151を有することで、第1ケース110と第2ケース120とが互いに嵌め合わされた状態で、収容部130内を外部へと開放する。
【0020】
図3は、
図1のモータ装置10のうち多芯ケーブル200及びリードブッシュ300を示す斜視図である。
図4は、
図3の多芯ケーブル200及びリードブッシュ300を+X側から見た側面図である。
リードブッシュ300は、パッキン350を有する。パッキン350とリードブッシュ300は単一の部材の部分である、リードブッシュ300は、凹部303を有する。リードブッシュ300の筒状部301は、蛇腹部302、水除部305及び凹部303を有する。
【0021】
蛇腹部302は、水除部305よりも-Y側に位置する。蛇腹部302は、筒状部301のY軸方向の一部が、筒状部301の周方向の少なくとも一部で、筒状部301の外周面よりも径方向内側に凹むことで形成されている。
【0022】
水除部305は、凹部303よりも-Y側に位置する。水除部305は、リード口150よりも-Y側に位置する。水除部305は、筒状部301のY軸方向の一部が、筒状部301の周方向の全周に亘って、筒状部301の外周面よりも径方向外側に突出することで形成されている。水除部305の+Y側端面は、リード口150の-Y側端面と密着する。水除部305の径方向外側端は、筒状部301の周方向の全周に亘って、水除部305とリード口150との密着面における貫通孔151の径方向外側端よりも径方向外側に位置する。
【0023】
図5は、
図1のモータ装置10を、X軸と直交し多芯ケーブル200の中心軸を通る面で切断して示す側断面である。
第1ケース110は、リード口150の貫通孔151内に凸部152aを有する。凸部152aは、+Z側の半周に亘って、貫通孔151の内周面よりも径方向内側に突出する。第2ケース120は、リード口150の貫通孔151内に凸部152bを有する。凸部152bは、-Z側の半周に亘って、貫通孔151の内周面よりも径方向内側に突出する。凸部152aは、凸部152bとY軸方向位置が一致する。
【0024】
リードブッシュ300の凹部303は、凸部152a及び凸部152bとY軸方向位置が一致する。第1ケース110と第2ケース120とを嵌め合わせると、凹部303に凸部152a及び凸部152bが嵌まる。リードブッシュ300とリード口150とは、ラビリンス構造160を有する。ラビリンス構造160は、収容部130の防水性を高める。ラビリンス構造160は、水除部305及びリード口150の-Y側端面、並びに、凹部303、凸部152a及び凸部152bによって構成される。リード210と直交する面におけるリード口150に密着する水除部305は、ラビリンス構造160の一部を構成する。
【0025】
リードブッシュ300は、補強部304を有する。補強部304は、金属製で螺旋状の部材をリードブッシュ300の成形時に内周面に埋め込んで構成される。補強部304は、リードブッシュ300の剛性を高め、リードブッシュ300に対する多芯ケーブル200の引抜強度を高める。補強部304は、リード口150の貫通孔151内に位置する。このことにより、リードブッシュ300に対する多芯ケーブル200の引抜強度をより高めることができる。
【0026】
第1ケース110の端部111は、-Z側端面に、段部111a、段部111b及び段部111cを有する。段部111aは、段部111bよりも+Y側に位置する。段部111bは、段部111cよりも+Y側に位置する。段部111aは、段部111bよりも-Z側端面が+Z側に位置する。段部111bは、段部111cよりも-Z側端面が+Z側に位置する。
【0027】
第2ケース120の端部121は、+Z側端面に、段部121a、段部121b及び段部121cを有する。段部121aは、段部121bよりも+Y側に位置する。段部121bは、段部121cよりも+Y側に位置する。段部121aは、段部121bよりも+Z側端面が+Z側に位置する。段部121bは、段部121cよりも+Z側端面が-Z側に位置する。
【0028】
段部111aは、段部121aとY軸方向幅が等しい。段部111bは、段部121bとY軸方向幅が等しい。パッキン350は、段部111bと段部121bとによりZ軸方向に圧縮される。パッキン350は、段部121aの-Y側面と段部111cの+Y側面とによりY軸方向に圧縮される。
【0029】
端部111と端部121とパッキン350とは、ラビリンス構造140を有する。ラビリンス構造140は、収容部130の防水性を高める。ラビリンス構造140は、段部111a、段部121a及びパッキン350、並びに、段部111c、段部121c及びパッキン350によって構成される。
【0030】
<リードブッシュ300、モータ装置10及びファン装置の作用・効果>
次に、リードブッシュ300、モータ装置10及びファン装置の作用・効果について説明する。
【0031】
上述の実施形態に係る発明においては、互いに嵌め合わされる第1ケースと第2ケースとの間の収容部に収容されたモータからのリードを覆うリードブッシュであって、前記リードは、前記第1ケースと前記第2ケースとの間に形成されたリード口から外部へ引き出され、前記リードブッシュは、前記リードを前記リードの径方向外側から覆う円筒形状の筒状部を有し、前記筒状部の少なくとも一部が前記リード口に収容され、前記リード口よりも外部側に、前記リードと直交する面における前記リード口の径よりも大径の水除部、を備える。
このため、水除部によってリード口から収容部への水等の侵入を防止することが出来る。
【0032】
また、前記水除部は、前記リード口に密着する。
このため、水除部によってリード口から収容部への水等の侵入を防止することが出来る。
【0033】
また、前記水除部は、ラビリンス構造を構成する。
このため、水除部によってリード口から収容部への水等の侵入を防止することが出来る。
【0034】
また、前記第1ケースと前記第2ケースとの間に介在し、前記収容部を外部から密閉するパッキンを備える。
このため、パッキンによって収容部への水等の侵入を防止することが出来る。
【0035】
また、前記パッキンと前記リードブッシュは単一の部材の部分である。
このため、パッキンとリードブッシュの間にずれが生じず、収容部の密閉度をより高めることが出来る。
【0036】
また、前記第1ケースと前記第2ケースとが嵌め合わされる箇所にラビリンス構造を有する。
このため、ラビリンス構造によって収容部の密閉度をより高めることが出来る。
【0037】
また、前記リードは、被覆部で覆われて多芯ケーブルを構成する。
このため、複数のリードの場合に、収容部の密閉度をより高めることが出来る。
【0038】
また、前記被覆部と前記リードブッシュは同一の素材である。
被覆部とリードブッシュの材質が同じで例えばポリ塩化ビニル樹脂であるので、親和性が高く、被覆部とリードブッシュとの間の密閉度をより高めることが出来る。
【0039】
また、上述の実施形態に係る発明においては、モータ装置であって、前記リードブッシュと、前記リードと、前記第1ケースと、前記第2ケースと、前記モータと、AC電源をDC電源に変換するAC/DC変換部と、を備え、前記収容部は、前記AC/DC変換部を収容し、前記リードは、前記AC/DC変換部にAC電源を供給するリードであり、前記モータは、前記AC/DC変換部によって変換されたDC電源により駆動するDCモータである。
このため、リードブッシュを用いたモータ装置において、水除部によってリード口から収容部への水等の侵入を防止することが出来る。
また、リードブッシュを用いたモータ装置において、収容部が密閉されていることで、AC/DC変換部に対する防水を実現することが出来る。
【0040】
また、上述の実施形態に係る発明においては、ファンであって、前記モータ装置と、前記DCモータによって回転するインペラと、を備える。
このため、リードブッシュを用いたDCモータによって回転するファンにおいて、水除部によってリード口から収容部への水等の侵入を防止することが出来る。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
10 モータ装置
110 第1ケース
120 第2ケース
200 多芯ケーブル
300 リードブッシュ