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特開2022-161117自律移動物の配置最適化の方法、プログラム、および、システム
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  • 特開-自律移動物の配置最適化の方法、プログラム、および、システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161117
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】自律移動物の配置最適化の方法、プログラム、および、システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20221014BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20221014BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20221014BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20221014BHJP
   G08G 1/0968 20060101ALI20221014BHJP
   G08G 5/00 20060101ALI20221014BHJP
   G05D 1/10 20060101ALI20221014BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20221014BHJP
   G16Y 40/60 20200101ALI20221014BHJP
【FI】
G05D1/02 H
B64C27/08
B64C39/02
G01C21/34
G08G1/0968
G08G5/00 A
G05D1/10
G16Y10/40
G16Y40/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065687
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】397073201
【氏名又は名称】株式会社電通国際情報サービス
(74)【代理人】
【識別番号】100139778
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 潔
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】岡田 敦
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129AA11
2F129AA20
2F129BB06
2F129BB08
2F129BB15
2F129BB50
2F129DD13
2F129DD15
2F129EE21
2F129EE52
2F129EE78
2F129EE79
2F129FF02
2F129FF20
2F129FF32
2F129FF62
2F129FF63
5H181AA01
5H181AA20
5H181AA26
5H181BB04
5H181CC02
5H181CC24
5H181FF07
5H181FF13
5H181MA41
5H301AA01
5H301AA06
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC04
5H301CC06
5H301CC07
5H301CC10
5H301DD05
5H301DD17
5H301FF10
5H301FF11
5H301GG08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自律的移動式家具等の移動物の配置を容易に最適化するための方法、プログラム、および、システムを提供する。
【解決手段】オフィス家具等の自律的移動体の自己位置測定用マーカーの設置場所を決定するための方法であって、ドローン等により実現される複数の設定用マーカーを候補位置に固定する仮固定ステップと、この複数の設定用マーカーの位置に基づいて、自律的移動体を目的位置に移動させる試行ステップと、自律的移動体が移動した位置と前記目的位置を比較する評価ステップとを含む方法である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律的移動体の自己位置測定用マーカーの設置場所を決定するための方法であって、
複数の設定用マーカーを候補位置に固定する仮固定ステップと、
前記複数の設定用マーカーの位置に基づいて、自律的移動体を目的位置に移動させる試行ステップと、
前記自律的移動体が移動した位置と前記目的位置を比較する評価ステップとを含む方法。
【請求項2】
前記複数の設定用マーカーの少なくとも一部は、空中停止機能を備えたドローンである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の設定用マーカーの少なくとも一部は、壁面吸着機能を備えたロボットである、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の設定用マーカーの少なくとも一部は、壁面または天井への投影画像である、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
さらに、前記候補位置を変更する候補位置変更ステップと、
前記仮固定ステップと前記試行ステップ前記評価ステップを再度実行する再試行ステップとを含む、
請求項1、請求項2、請求項3、または、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
自律的移動体の自己位置測定用マーカーの設置場所を決定するためのプログラムであって、
複数の設定用マーカーを候補位置に固定する仮固定命令群と、
前記複数の設定用マーカーの位置に基づいて、自律的移動体を目的位置に移動させる試行命令群と、
前記自律的移動体が移動した位置と前記目的位置を比較する、あるいは、比較数値を入力させる評価命令群とを、
コンピューターに実行させるプログラム。
【請求項7】
前記複数の設定用マーカーの少なくとも一部は、空中停止機能を備えたドローンである、
請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記複数の設定用マーカーの少なくとも一部は、壁面吸着機能を備えたロボットである、
請求項6に記載のプログラム。
【請求項9】
前記複数の設定用マーカーの少なくとも一部は、壁面または天井への投影画像である、
請求項6に記載のプログラム。
【請求項10】
さらに、前記候補位置を変更した新たな候補位置を入力させる位置変更命令群と、
前記仮固定命令群と前記試行命令群と前記評価命令群を再度コンピューターに実行させる再試行命令群とをコンピューターに実行させる、
請求項6、請求項7、請求項8、または、請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
請求項2に記載の方法で使用されるドローンであって、
飛行部と、
接続部と、
仮マーカー部とを備え、
前記仮マーカー部に基づき、前記移動体が自己の位置決めを行なう、ドローン。
【請求項12】
前記接続部は、外部からの指令により方向を変更可能なユニバーサルジョイントとして構成されている請求項11に記載のドローン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、自律的に移動可能な移動物の配置の技術に関し、より具体的には、自律的に移動可能なオフィス向けの椅子やテーブルの家具等の配置を容易に最適化するための方法、プログラム、および、システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車輪などの移動手段を備えた移動可能な家具の技術は公知である。たとえば、特許文献1では、データベースに保存されたレイアウト情報に基づいて、自律的に移動する家具に指令を与えて、家具の配置を自動化する技術が開示されている。特許文献2では、会議の参加者や特性に応じて、最適なレイアウトを決定する技術が開示されている。これらの技術は特に家具レイアウトの変更が頻繁に発生するオフィスの会議室等において、家具の配置作業を自動化できる点でメリットが大きい。
【0003】
この技術を現実に適用するためには、各家具が自己の位置を数センチメートル単位の精度で把握できる必要があるが、この技術が主に屋内で使用されることを考えると一般的なGPSによる測位では十分な精度が提供されない。各家具にLiDARなどの距離センサーを備えて、自己の位置を推定できるようにすることが考えられるが、複数の家具が同時に動く環境では、距離センサーの情報だけでは家具の??位置推定が正確かつ迅速に行なえないという課題があった。その他の方式として超音波やビーコンを使った屋内位置推定技術の活用が考えられるが、超音波を発生するスピーカやビーコンを空間内に多数配置する必要があり、配置コストや電源・電池のメンテナンスなど保守の面で実装が容易ではない。天井や壁にマーカーを設置することで、位置の推定の精度を向上することも考えられるが、現実の環境ではマーカーの適切な設置場所を決定することが困難という課題があった。
【0004】
本願発明はこれらの課題に対応するものであり、家具をはじめとする自律的に移動できる物体の位置決めを正確に行なうための解決策を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許公開公報 特開2004-195217
【特許文献2】特許公開公報 特開2016-1443
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自律的移動式家具等の移動物の配置を容易に最適化するための方法、プログラム、および、システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、自律的移動体の自己位置測定用マーカーの設置場所を決定するための方法であって、複数の設定用マーカーを候補位置に固定する仮固定ステップと、前記複数の設定用マーカーの位置に基づいて、自律的移動体を目的位置に移動させる試行ステップと、前記自律的移動体が移動した位置と前記目的位置を比較する評価ステップとを含む方法を提供することで上記課題を解決する。
【0008】
また、本願発明は、前記複数の設定用マーカーの少なくとも一部は、空中停止機能を備えたドローンである、段落0007に記載の方法を提供することで上記課題を解決する。
【0009】
また、本願発明は、前記複数の設定用マーカーの少なくとも一部は、壁面吸着機能を備えたロボットである、段落0007に記載の方法を提供することで上記課題を解決する。
【0010】
また、本願発明は、前記複数の設定用マーカーの少なくとも一部は、壁面または天井への投影画像である、段落0007に記載の方法を提供することで上記課題を解決する。
【0011】
また、本願発明は、さらに、前記候補位置を変更する候補位置変更ステップと、前記仮固定ステップと前記試行ステップ前記評価ステップを再度実行する再試行ステップとを含む、
段落0007、段落0008、段落0009、または、段落0010に記載の方法を提供することで上記課題を解決する。
【0012】
また、本願発明は、自律的移動体の自己位置測定用マーカーの設置場所を決定するためのプログラムであって、複数の設定用マーカーを候補位置に固定する仮固定命令群と、前記複数の設定用マーカーの位置に基づいて、自律的移動体を目的位置に移動させる試行命令群と、前記自律的移動体が移動した位置と前記目的位置を比較する、あるいは、比較数値を入力させる評価命令群とを、コンピューターに実行させるプログラムを提供することで上記課題を解決する。
【0013】
また、本願発明は、前記複数の設定用マーカーの少なくとも一部は、空中停止機能を備えたドローンである、段落0012に記載のプログラムを提供することで上記課題を解決する。
【0014】
また、本願発明は、前記複数の設定用マーカーの少なくとも一部は、壁面吸着機能を備えたロボットである、段落0012に記載のプログラムを提供することで上記課題を解決する。
【0015】
また、本願発明は、前記複数の設定用マーカーの少なくとも一部は、壁面または天井への投影画像である、段落0012に記載のプログラムを提供することで上記課題を解決する。
【0016】
また、本願発明は、さらに、前記候補位置を変更した新たな候補位置を入力させる位置変更命令群と、前記仮固定命令群と前記試行命令群と前記評価命令群を再度コンピューターに実行させる再試行命令群とをコンピューターに実行させる、段落0012、段落0013、段落0014、または、段落0015に記載のプログラムを提供することで上記課題を解決する。
【0017】
また、本願発明は、段落0008に記載の方法で使用されるドローンであって、飛行部と、接続部と、マーカー部とを備え、前記マーカー部は、前記移動体の位置決めに使用される物であるドローンを提供することで上記課題を解決する。
【0018】
また、本願発明は、前記接続部は、外部からの指令により方向を変更可能なユニバーサルジョイントとして構成されている段落0017に記載のドローンを提供することで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0019】
自律的移動式家具等の移動物の配置を容易に最適化するための方法、プログラム、および、システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願発明の実施例に係る方法が実行された環境を表す図である。
図2】本願発明の実施例に係る移動式家具の機能概要を表す図である。
図3】本願発明の第1の実施例に係る方法の実行環境を表す図である。
図4】本願発明の第1の実施例に係る方法で使用される設定用マーカーの模式図である。
図5】本願発明の第1の実施例に係る方法を使用したマーカー位置決定プログラムの概要フローチャートである。
図6】本願発明の第2の実施例に係る方法の実行環境を表す図である。
図7】本願発明の第2の実施例に係る方法を使用したマーカー位置決定プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図を参照しながら本願発明の実施例について説明する。図はすべて例示である。
【0022】
本願発明の実施例に係る方法が実行された後の環境を示す。部屋(100)は、1つまたは複数の移動式家具(101)が配置される場所であり、典型的にはオフィスの会議室であるが、これに限定されない。また、本願発明が屋外(たとえば、公園、庭園、野外舞台等)で実施されてもよい。移動式家具(101)は、具体的には、オフィスや会議室等の環境で使用される椅子、机、ホワイトボード、講演台、ディスプレイスタンド、棚等であるが、これらに限定されず、自律的に移動可能な家具・設備・什器・機器・装置類(たとえば、ベッド、タンス、移動式壁、テレビや冷蔵庫などの家電製品、台車、講演台、楽器、ロボット等)であってもよい。
【0023】
マーカー(102)は、部屋(100)の壁、天井、床等に設けられ、移動式家具(101)が読み取ることで、自己の位置を識別するガイドとなる手段である。無線タグ技術等を用いて実現してもよいが、二次元バーコード(たとえば、ArUco準拠マーカー、QRコード(登録商標))等、画像認識技術によって認識しやすいパターンにより実現されることが好ましい。パターンは赤外線等の不可視光によってのみ認識され、可視光により人間の目で見た場合には見えないような素材で作成することにより、部屋(100)等の美感を損ねないようにされていることが好ましい。各マーカーには、ユニークな識別子が割り当てられており、移動式家具(101)から読み取り可能になっていることが好ましい。
【0024】
制御用コンピューター(104)は、移動式家具(101)、および、設定用マーカー(後述)に指令を与えて、適切な位置に配置させるためのプログラムを稼働する手段であり、汎用のパーソナル・コンピューター、サーバー・コンピューター、タブレット端末、スマートフォン等であってよい。制御用コンピューター(104)の機能が、組織外のクラウド上のサーバー等を含む複数のコンピューターにより実現されていてもよい。制御用コンピューター(104)は、レイアウト実行プログラム(105)およびマーカー位置決定プログラム(106)を稼働し、無線LANやBluetooth(登録商標)等の無線通信技術を介して、移動式家具(101)と通信できることが好ましい。
【0025】
図2に、本願発明の実施例に係る移動式家具(101)の機能概要を示す。前述のとおり、移動式家具(101)には、自律的に移動可能な家具・設備・什器・機器・装置類を含む。移動手段(201)は、典型的にはキャスター等の車輪およびそれを駆動するモーターやバッテリー等であり、移動手段制御手段(202)により速度と方向を制御される。固定手段(203)は、移動手段(201)によって、移動した移動可能家具(101)を所定の位置に固定する手段であり、キャスター等の車輪に対するブレーキまたはロックとして実現されてもよいが、伸縮する脚として実現されてもよい。通信手段(204)は、制御用コンピューター(104)との情報交換を行なう手段であり、無線LAN、または、Bluetooth(登録商標)により実現されてよい。これに加えて、移動式家具(101)どうしが通信手段(204)を介して情報交換を行なうよう構成されていてもよい。マーカー読取手段(205)は、マーカー(102)および設定用マーカー(後述)を読み取り、移動式家具(101)が自己位置を把握できるようにするための手段であり、カメラであってよい。自己位置推定手段(206)は、マーカー読み取り手段(205)で読み取った複数のマーカー(103)または設定用マーカー(後述)との位置関係に基づいて、移動式家具(101)が自己の位置を推定するための手段である。自己の位置だけではなく、自己の向きも推定できることが好ましい。また、自己位置の推定と同時に環境(部屋の境界線、柱や梁の存在など)を把握して、環境地図を作成してもよい。環境地図は事前に作成され、保存されたものであってもよい。加えて、自己位置推定手段(206)は、後述のマーカー位置設定段階において自己の位置を正確に把握する手段、たとえば、床に付された印(マーカー(103)位置が確定した後には使用されないものであってよい)を読み取るセンサー等を含んでいてもよい。
【0026】
移動手段制御手段(202)、通信手段(204)、マーカー読み取り手段(205)、および、自己位置推定手段(206)は、コンピューターとその上で実行されるプログラムにより実現されてよい。当該コンピューターは、移動式家具(101)に内蔵されたものであってもよく、外部で提供されたものであってもよく、制御用コンピューター(104)と共通であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。
【0027】
レイアウト実行プログラム(105)を実行する制御用コンピューター(104)が通信手段(204)を介して、移動手段制御手段(202)に指令を出すことで、移動式家具(101)の自動レイアウトが実行される。これにより、移動式家具(101)は、たとえば、片付けられた状態から会議用レイアウトに、あるいは、ある会議(たとえば、大人数講演会)のレイアウトから別の会議(たとえば、少人数のビデオ会議)のレイアウト等へ自動的に配置を変更する。
【0028】
レイアウト実行プログラム(105)の実行ロジックの例を以下に示す。まず、ファイルやデータベースから目標のレイアウト情報を読み出す。各移動式家具(101)が自己位置推定手段(206)により推定した現在位置から、各移動式家具(101)の目標移動先を決定する。この場合、最もコスト(たとえば、移動距離の合計、あるいは、最長の移動距離等)が最小になるように目標移動先を決定することが望ましい。次に、レイアウト実行プログラム(105)は、各移動式家具(101)に移動開始の指令を送信する。各移動式家具(101)は、マーカー読み取り手段(205)により複数のマーカー(102)を読み取り、自己位置推定手段(206)が三角測量の原理等に基づいて、自己位置を定期的に把握する。移動中の他の移動式家具(101)と衝突を避けるために、レイアウト実行プログラム(105)は必要に応じて特定の移動式家具(101)の移動を中断することが望ましい。移動が完了すると、レイアウト実行プログラム(105)が、各移動式家具(101)の固定手段(203)に指令を出し、各移動式家具(101)を目的位置に固定する(容易に動かないようにする)ことが好ましい。
【0029】
ここで、レイアウトの決定においては、ソーシャルディスタンスの観点から、座席間の距離を自動で2メートル以上に保つ、ユーザーが会議素都の使用を終了して立ち去った際に使用していた椅子と椅子の間隔が近い場合、自動でソーシャルディスタンスを保つ配置に移動する、部屋(100)の使用目的がテレビ会議であることが、保存されたスケジュール情報等より予め明らかである場合、あるいは、ユーザーが制御用コンピューター(104)に対してそのような指示を出した場合には、椅子をテレビ画面やプロジェクタースクリーンに向けて配置する等のルールを適宜適用してよい。
【0030】
ここで、会議室等、現実に使用される部屋(100)の形状は様々であり、柱や梁などの障害物が存在する。したがって、複数のマーカー(102)をどの位置に設置するかが問題となる。また、マーカーは部屋(100)の美感を損ねるものであるため、マーカーの個数をできるだけ減らしたいという要請もある。最適なマーカー(102)の個数とその設置位置を机上の計算のみで最適化することは困難であることが発明者の実験により明らかになっており、実使用環境における試行錯誤が必要となるが、マーカー(102)の壁や天井への脱着は人手による作業を伴う。特に、天井への脱着は負担が大きいことから、マーカー(102)を実際に壁や天井に設置する前に、容易に移動できる仮のマーカーである設定用マーカー(後述)を使用して、マーカー(103)の最適な位置を発見しやすくすることが好ましい。
【0031】
図3に本願発明の第1の実施例に係る方法の実行環境を示す。設定用マーカー(303)は、マーカー(103)の位置を決定するために使用される仮のマーカーであり、この図では空中で停止(ホバリング)可能なドローンを使用することで仮のマーカーとして機能させる実施例が示されている。マーカー(103)の最終位置を決定するまでの試行錯誤段階(以降、マーカー位置設定段階と呼ぶ)において、設定用マーカー(303)を使用することで、マーカーの付け外しや位置変更に必要な負担を大幅に削減可能である。
【0032】
図4-a)に、本願発明の第1の実施例に係る方法で使用される、ドローンを利用した設定用マーカー(303)の実施例の構造を示す。図は機能を表現するための模式図であり、縮尺や細部の構造等は正確ではない。飛行手段(401)は、ドローンを、飛行、および、空中停止(ホバリング)させるための手段であり、一般的なドローンを流用してよい。飛行手段(401)は、ローター(プロペラ)、ローター制御手段、バッテリーなどの一般的なドローンが備える機能を備えていてよい。飛行手段(401)は、外部機器(好ましくは、制御用コンピューター(104))から制御でき、機体の位置、高度、向きを制御可能に構成されていることが好ましい。仮マーカー(402)は、マーカー(102)と同様の機能を有し、移動式家具(101)のマーカー読み取り手段(204)により読み取り可能な部材である。
【0033】
接続部(403)は、飛行手段(301)と仮マーカー(402)を接続する手段であり、仮マーカー(402)を水平の向きあるいは垂直の向きのいずれかに固定できることが好ましい。仮マーカー(402)が水平の向きの場合には天井に設けられるマーカー(103)の一時的代替として機能し、仮マーカー(402)が垂直の向きの場合には壁や柱等に設けられるマーカー(103)の一時的代替として機能する。さらに、仮マーカー(402)が水平位置と垂直位置の間の任意の角度で固定できるよう接続部(403)が構成されていてもよい。接続部(403)はユニバーサルジョイントとして構成されていてよい。さらに、仮マーカー(402)の固定方向を外部からの指令により調整できるように構成されていてよい。その際には、外部からの指令は制御用コンピューター(104)から送信できることが好ましい。
【0034】
図4-b)に、本願発明の第1の実施例に係る方法で使用される、壁面吸着ロボットを利用した設定用マーカー(303)の実施例の構造を示す。図は機能を表現するための模式図であり、縮尺や細部の構造等は正確ではない。吸着手段(404)は、設定用マーカー(303)を壁や天井に固定する手段であり、ポンプによる吸引力、(設定用マーカー(303)がきわめて小型である場合には)静電力、(壁や天井が磁性体を含む場合には)磁力を使用してよい。移動手段(405)は、設定用マーカー(303)を壁や天井上で移動する手段であり、車輪やベルト(無限軌道)等を使用して実現してよい。移動手段(405)は、外部機器(好ましくは、制御用コンピューター(104))から制御でき、位置、高度、向きを制御可能に構成されていることが好ましい。仮マーカー(406)は、マーカー(102)と同様の機能を有し、移動式家具(101)のマーカー読み取り手段(204)により読み取り可能である。
【0035】
図5に、本願発明の第1の実施例に係るドローンによる設定用マーカー(303)を使用したマーカー位置決定プログラム(106)の概要フローチャートを示す。S501からS505が、マーカー位置設定段階に相当する。最初に、複数のマーカー(103)設置の候補となる位置に、複数の設定用マーカー(303)を浮遊(ホバリング)させる(S501)。候補となる位置は任意に決定してよく、過去の事例に基づいたヒューリスティクスにしたがって決定してよい。ホバリングの位置は、ドローンに対する制御用コンピューター(104)からの指示と操作者の目視により、微調整できることが好ましい。次に、設定用マーカー(303)が備える仮マーカー(402)に基づいて、移動式家具(101)を所定の位置に移動させる(S502)。この場合の移動ロジックは、レイアウト実行プログラム(105)と同じものであることが望ましい。
【0036】
移動式家具(101)の移動が完了すると、移動式家具の目標位置と実際の移動位置を比較する評価を行なう(S503)。この評価は、人間の目視によって行なってもよいが、移動式家具(101)と制御用コンピューター(104)の連携により自動的に行なってもよい。たとえば、移動式家具(101)が備える移動手段(201)であるタイヤの回転数と方向を記録する等により、自動的に行なえるようにしてもよい。移動式家具(101)が備えるセンサーにより、目標位置の床に付された印(マーカー位置設定段階でのみ使用され、マーカー(103)の位置が確定した実働環境では使用されないもの)により、自動的に行なえるようにしてもよい。同様に、マーカー位置設定段階でのみ使用される、天井等に設けられたカメラを使用するようにしてもよい。評価においては、目標位置と実際の移動位置の差に加えて、移動が完了するまでの時間、移動の間に家具同士の衝突が起きた回数等を加味してもよい。
【0037】
所定の精度が達成されたと判定されなかった場合(S504)には、設定用マーカー(303)の位置、個数、またはその両方を変更(S505)して、S501、S502、S503、S504の処理を繰り返す。所定の精度が達成されたと判定された場合(S504)には、設定用マーカー(303)に相当する位置に、最終的に使用するマーカー(103)を設置する(S506)。所定の精度の判定においては、目標位置と実際の移動位置の差の平均値だけではなく、差の中で所定の閾値を超えているものがないか、移動式家具同士の衝突回数が所定の閾値を超えていないか、移動が完了するまでの時間が所定の閾値を超えていないか等の条件を加味してもよい。この方法に替えて、または、加えて、S501、S502、S503、S504の処理を繰り返す回数を事前に決めておき、最も精度が高かった設定用マーカーの位置を最終的なマーカー(103)の設置とするようにしてもよい。
【0038】
図6に、本願発明の第2の実施例に係る方法の実行環境を表す。マーカー(102)が、二次元バーコードのような可視光で認識可能な図形により実現されている場合には、物理的に飛行する設定用マーカー(103)ではなく、プロジェクター(601)により、室内の壁や天井にマーカー(602)の映像を投影することで、同等の役割を果たせるようにしてもよい。
【0039】
図7に、本願発明の第2の実施例に係る設定用マーカーを使用したマーカー位置決定プログラムのフローチャートを示す。S701からS705が、マーカー位置設定段階に相当する。仮マーカーの設置において、ドローンを浮遊させる代わりに、壁、天井、または、その両方にプロジェクター(601)による投影を行なう点が異なり、その他は第1の実施例と同等である。第1の実施例と第2の実施例を組み合わせて実施してもよい。
【0040】
以上では、会議室等の部屋(100)の内部における、家具をはじめとする自立式移動体を最適に配置するための、マーカー位置決め方法について説明してきたが、本願発明に係る方法は、屋外において適用してもよい。たとえば、公園やイベント会場等において、自律的に移動可能な機器や看板等の設備を配置させるために、マーカーをベンチ、該当、路面、ガードレール、柵、塀、建築物の外壁、樹木等に設置する際にその最適な位置を発見するために、本願発明に係る方法、プログラム、機器を使用できる。
【0041】
また、ヘッドマウントディスプレイ等を使用したAR(拡張現実)の技術を使用する際に、周囲の環境の把握を正確に行なえるようにするために、ユーザーの周囲にある壁、天井、部物体にマーカー(たとえば、ArUCO準拠のもの)を固定することが行なわれている。この場合に、マーカーの最適な位置を決定するために、本願発明に係る方法、プログラム、機器を使用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7