(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161118
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】湯種麺類、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20221014BHJP
【FI】
A23L7/109 B
A23L7/109 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065688
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】591018534
【氏名又は名称】奥本製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舩川 弘万
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 文菜
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA02
4B046LB01
4B046LC02
4B046LG16
4B046LG29
4B046LP03
(57)【要約】
【課題】湯種配合による弾力性(ハリ、コシ)の低下を抑制し、改善するための技術として、湯種を用いた麺類の新しい製造方法と、その製造方法により得られる改善された弾力性を有する麺類を提供する。
【解決手段】小麦粉に加水混合してそぼろ状になった生地に、湯種を添加混合して麺生地を調製する工程を有することを特徴とする、麺類の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉に加水混合してそぼろ状になった生地に、湯種を添加混合して麺生地を調製する工程を有することを特徴とする、麺類の製造方法。
【請求項2】
前記そぼろ状の生地が、小麦粉100質量部に対して20~42質量部の水を加えて撹拌調製されるものである、請求項1に記載する製造方法。
【請求項3】
前記湯種の添加量が、そぼろ状生地に含まれる小麦粉100質量部に対して5~30質量部である、請求項1又は2に記載する製造方法。
【請求項4】
前記湯種の水分含量が35~75質量%である、請求項1~3のいずれかに記載する、麺類の製造方法。
【請求項5】
麺生地を麺帯状にして切り出す工程を有する、請求項1~4のいずれかに記載する製造方法。
【請求項6】
切り出し工程で得られた生麺を、さらに水分存在下で加熱処理し、必要に応じて、冷凍処理する工程を有する請求項5に記載する製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載する製造方法で製造される麺類であって、
水分存在下で加熱処理した麺類の破断強度を測定した場合に、
得られる破断曲線のピーク曲線下面積(被験面積)が、湯種を配合しない以外は同じ方法で製造した麺の同破断曲線のピーク曲線下面積(対照面積)と同じ若しくはそれよりも大きいことを特徴とする麺:
ここで破断曲線のピーク曲線下面積は、クリープメーターを用いて麺類の破断強度を測定し、歪率(%)を横軸、荷重(N)を縦軸にしてグラフを描いた場合に、荷重(N)が0からピークに達するまでの曲線下面積(破断強度曲線下面積)を意味する。
【請求項8】
前記対照面積に対する被験面積の比(被験面積/対照面積)が1.00~1.10である、請求項7に記載する麺類。
【請求項9】
麺類に粘弾性を付与又は強化する方法であって、小麦粉に加水混合してそぼろ状になった生地に、湯種を添加混合する工程を有する方法で、麺生地を製造することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湯種麺類、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
うどん、中華麺、パスタ、及びそば等の麺類は、年齢や性別を問わず、古くから多くの人々に親しまれ、広く食されている食品であるが、近年、滑らかで、ソフトでモチモチとした、粘弾性に富んだ食感が好まれるようになっている。こうした市場の要望に応えるため、麺類に粘弾性に富んだ食感を付与する各種の技術が提案されている。
【0003】
例えば、その一つとして、小麦粉を水とミキシングする工程において、水に代えて熱水又は温水を用いて麺生地を作製する「湯捏ね製法」が挙げられる。湯捏ね製法よると、小麦粉を熱水又は温水でミキシングすることで、麺生地の澱粉の一部が糊化(α化)され、その結果、粘弾性に富む食感になると考えられている。しかし、製造過程での糊化にバラツキが生じるため常時均質な製品を得ることが難しいという短所もある。また、他の方法として、予め小麦粉と水とを40~150℃の温度で混捏して調製した前生地(湯種)に、小麦粉をさらに加えて混合又は混捏することで麺生地を作製する「湯種製法」が挙げられる(例えば、特許文献1。その改良法として特許文献2及び3等参照)。
【0004】
なかでも後者の湯種製法は、粘弾性に優れ、ソフトでモチモチとした食感に優れた麺類が得られるだけでなく、小麦粉本来の風味に優れた麺が得られるという点に加えて、前者の湯捏ね製法における欠点がないことから、好適な方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-105150号公報
【特許文献2】特開2016-127813号公報
【特許文献3】特開2016-127814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述するように、湯種製法により得られた麺類は、ソフトでモチモチとした食感を有し、しかも小麦粉本来の風味に優れるという好ましい特性を有するものの、一方で、湯種を配合することで、麺固有の弾力性、言い換えれば表面のハリと芯部のコシが低下する傾向が認められる。
本発明は、こうした湯種配合による弾力性(ハリ、コシ)の低下を抑制し、改善するための技術を提供することを目的とする。当該技術として、本発明は、湯種を用いた麺類の新しい製造方法を提供することを目的とする。また本発明は、当該製造方法により得られる新しい特性、特に改善された弾力性(ハリ、コシ)を有する麺類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねていたところ、麺生地の製造工程において、湯種に粉体状の小麦粉を混合する従来の湯種方法に代えて、小麦粉に予め加水してそぼろ状にしたものに湯種を配合して混合若しくは混捏する方法を採用することで、従来の湯種製法で得られるもちもちとした粘弾性に加えて、麺類に求められる弾力性(表面のハリ、芯部のコシ)を有する麺類が得られることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねて完成したものであり、下記の実施態様を包含するものである。
【0008】
(I)湯種麺類の製造方法
(I-1)小麦粉に加水混合してそぼろ状になった生地に、湯種を添加混合して麺生地を調製する工程を有することを特徴とする、麺類の製造方法。
(I-2)前記そぼろ状の生地が、小麦粉100質量部に対して20~42質量部の水を加えて撹拌調製されるものである、(I-1)に記載する製造方法。
(I-3)前記湯種の添加量が、そぼろ状生地に含まれる小麦粉100質量部に対して5~30質量部である、(I-1)又は(I-2)に記載する製造方法。
(I-4)前記湯種の水分含量が35~75質量%である、(I-1)~(I-3)のいずれかに記載する、麺類の製造方法。
(I-5)麺生地を麺帯状にして切り出す工程を有する、(I-1)~(I-4)のいずれかに記載する製造方法。
(I-6)切り出し工程で得られた生麺を、さらに水分存在下で加熱処理し、必要に応じて、冷凍処理する工程を有する(I-6)に記載する製造方法。
【0009】
(II)湯種麺類
(II-1)(I-1)~(I-4)のいずれか一項に記載する製造方法で製造される麺類であって、
水分存在下で加熱処理した麺類の破断強度を測定した場合に、
得られる破断曲線のピーク曲線下面積(被験面積)が、湯種を配合しない以外は同じ方法で製造した麺の同破断曲線のピーク曲線下面積(対照面積)と同じ若しくはそれよりも大きいことを特徴とする麺:
ここで破断曲線のピーク曲線下面積は、クリープメーターを用いて麺類の破断強度を測定し、歪率(%)を横軸、荷重(N)を縦軸にしてグラフを描いた場合に、荷重(N)が0からピークに達するまでの曲線下面積(破断強度曲線下面積)を意味する。
(II-2)前記対照面積に対する被験面積の比(被験面積/対照面積)が1.00~1.10である、(II-1)に記載する麺類。
【0010】
(III)麺類への粘弾性付与又は強化方法
(III-1)麺類に粘弾性を付与又は強化する方法であって、小麦粉に加水混合してそぼろ状になった生地に、湯種を添加混合する工程を有する方法で、麺生地を製造することを特徴とする方法。
(III-2)前記そぼろ状の生地を、小麦粉100質量部に対して20~42質量部の水を加えて撹拌調製することを特徴とする、(III-1)に記載する方法。
(III-3)前記湯種の添加量が、そぼろ状生地に含まれる小麦粉100質量部に対して5~30質量部である、(III-1)又は(III-2)に記載する方法。
(III-4)前記湯種の水分含量が35~75質量%である、(III-1)~(III-3)のいずれかに記載する方法。
なお、当該方法は、湯種麺類における弾力性の低下抑制方法又は改善方法ということもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、従来の湯種製法で得られるもちもちとした食感及び小麦粉特有の甘味のある風味に加えて、麺類に求められる弾力性(表面のハリ、芯部のコシ)を有する麺類を得ることができる。このため、本発明によれば、小麦粉特有の甘味のある風味に加えて、もちもちとしながらも、弾力性(表面のハリ、芯部のコシ)のある良好な食感を有する麺類とその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実験例4で、被験試料の麺の破断強度をクリープメーターで測定した結果を、歪率(%)を横軸、荷重(N)を縦軸に設定したグラフに示した、破断強度曲線を示す。
【
図2】麺の破断強度曲線において、「荷重が0Nからピークに達するまでの曲線下面積」(破断強度曲線下面積)に相当する領域に網掛けした図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(用語の説明)
本発明が対象とする麺類は、小麦粉を主成分として製造される小麦粉加工食品である。小麦粉に加えて、必要に応じて、蕎麦粉、米粉、及び大麦粉等の小麦以外の穀物の粉や、澱粉を含有するものであってもよい。また、製造する麺類の種類に応じて、食塩、かん水、増粘多糖類などの成分を、適宜配合して製造されるものであってもよい。かかる麺類には、うどん、きしめん、中華麺、パスタ(スパゲッティ、マカロニを含む)、そば、ひやむぎ、及びそうめん等の麺、並びに餃子の皮等の皮ものが含まれる。好ましくは、うどん、きしめん、中華麺、パスタであり、より好ましくはうどん、きしめん、及び中華麺である。なお、これらの麺の形態は、制限されず、生麺、半生麺、茹で麺、蒸し麺、乾燥麺、半乾燥麺、冷蔵麺、冷凍麺、LL(ロングライフ)麺、及び即席麺などの形態を有することができる。
【0014】
麺の製造に使用される小麦粉としては、制限されず、薄力粉、中力粉、強力粉、全粒粉、及びデュラム・セモリナ粉からなる群より選択される少なくとも1種を挙げることができ、製造する麺の種類に応じて、常法に従って、選択することができる。
【0015】
湯種は、小麦粉と水とを40~125℃の範囲の温度条件で混捏して調製した前生地をいう。温度条件は、上記の範囲であれば特に制限されないが、好ましくは50~100℃、より好ましくは60~80℃を挙げることができる。
また、湯種の調製に使用される小麦粉と水の割合は、小麦粉100質量部に対して水55~300質量部の範囲から選択することができる。好ましくは小麦粉100質量部に対して水100~250質量部、より好ましくは水120~150質量部である。これを湯種中の水分含量に換算すると、約35~75質量%、好ましくは約50~70質量%、より好ましくは約55~60質量%になる。
湯種は、上記温度条件で小麦粉と水とを混捏して得られるものであればよく、その限りにおいて特に制限されないが、具体的には、例えば、小麦粉を水分の存在下で加熱しながら混捏する方法、小麦粉と水を加圧条件下で加熱しながら混捏する方法、小麦粉を熱水又は温水とともに混捏する方法等を例示することができる。
湯種は、混捏後、常温以下に冷却され、後述する本発明の製造方法で使用されるまで保存されていてもよい。保存は、冷蔵保存(例えば、0~5℃)でも、パーシャル冷凍保存(-3~0℃)、また冷凍保存(例えば、―25~-18℃)でもよいが、本発明の製造で使用する際には、品温0~25℃、好ましくは3~15℃になるように調整しておくことが好ましい。
【0016】
(I)湯種麺類の製造方法
一般的に、麺類は、(1)小麦粉を必要に応じて副原料とともに水と混合撹拌してそぼろ状の塊にする工程(原料ミキシング工程)、(2)そぼろ状の多数の塊を延機(例えば1対のロール2台からなる機械)にかけて2枚の粗麺帯にする工程(粗延工程)、(3)2枚の粗麺帯を重ねてロールに通して(複合)、厚い1枚の麺帯を作製する工程(複合工程)、(4)厚い麺帯をロールにかけて、所定の均一な厚さになるように圧延し、薄い麺帯を作製する工程(圧延工程)、及び(5)調製した麺帯を所定形状に切り出す工程(切出工程)を経て、製造される。麺にコシを付与するために、(3)複合工程と(4)の圧延工程の間に、麺帯を寝かして熟成する工程(熟成工程)を実施する場合もある。従来の湯種製法は、前記(1)原料ミキシング工程において、主原料の小麦粉に、予め作製した湯種を副原料の一つとして添加し、水と一緒にミキシングして、そぼろ状の塊を調製し、その後、(2)粗延工程に供し、以後の工程を経て製麺する方法である。
【0017】
これに対して、本発明の製造方法は、前記(1)原料ミキシング工程と前記(2)粗延工程との間に、湯種を配合してミキシングする工程を有することを特徴とする。つまり、本発明の製造方法は、前記(1)原料ミキシング工程後、当該工程により小麦粉と水が混合されてそぼろ状になった生地に対して、湯種を添加してミキシングする工程(湯種添加混合工程)を有し、斯くして調製した生地(粗めのそぼろ状)を、前記(2)粗延工程に供し、以後の工程を経て、製麺することを特徴とする製造方法である。こうした一連の製麺工程は、制限されないものの、ロール式製麺機を用いて行うことができる。
【0018】
以下、各製麺工程を説明する。
(1)原料ミキシング工程
前述する通り、(1)の工程は、小麦粉を必要に応じて副原料とともに水と混合撹拌してそぼろ状の塊にする工程である。
副原料は任意成分であり、製造する麺類の種類に応じて適宜選択配合することができる。例えば、麺類がうどん、きしめん、ひやむぎ、及び素麺等の場合は食塩;中華麺の場合はかん水(例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、ポリリン酸塩など);蕎麦の場合は蕎麦粉などを例示することができる。これらの含有量は、各麺類の種類に応じて常法に従って調整設定することができる。制限されないものの、例えば、うどん等の場合、小麦粉100質量部に対して食塩の割合が2~5質量部程度になるように配合するのが一般的である。
本発明の効果を妨げないことを限度として、副原料として、蕎麦粉以外の穀物類の粉、増粘多糖類、調味成分などの任意成分を配合することができる。但し、副原料に湯種は含まれない。
【0019】
小麦粉に対する水の配合割合は、小麦粉等に水を配合し、混合撹拌した場合に、そぼろ状の塊ができるような割合であればよい。そぼろ状とは、水を含んだ小麦粉が互いにひっつき合ってダマになった状態である。(1)工程で調製されるそぼろ状の塊は、制限されないものの、最大径が約4.5cm未満、好ましくは3.5cm以下であり、小さくてもそぼろ状の生地を見開き1mmの篩にかけた場合に、篩の上に一定量が残留する大きさを有することが好ましい。小麦粉100質量部に対して配合する水の割合として、制限されないものの、20~42質量部の範囲を挙げることができる。好ましくは24~42質量部、より好ましくは29~40質量部である。また麺類がうどん等の場合、特に好ましくは34~40質量部である。
【0020】
小麦粉等と水とのミキシング(混合)は、ピンミキサーなどの慣用のミキサーを用いて行うことができる。ミキシング条件は、制限されないものの、生地温が22~28℃となるような範囲で行うことが好ましい。その限りにおいて加水に用いる水の温度は、制限されない。ミキシングは、大気圧条件下または減圧条件下で実施することができる。減圧条件下でのミキシングは、制限されないものの、例えば真空ミキサーを用いて行うことができる。減圧条件下でミキシングすることで、小麦粉の水和が促進され、また、生地の熟成時間を短縮若しくは不要することができるという利点がある。
ミキシング時間及び回数は、小麦粉等と水とが混合することで前述するそぼろ状の塊ができる時間及び回数であればよく、小麦粉等の量、使用するミキサーの種類、ミキシング条件(温度、減圧の有無)などに応じて、適宜設定することができる。制限されないものの、例えば、5~30分程度のミキシングを、1~3回程度行う方法を例示することができる。
【0021】
湯種添加混合工程
当該工程は、前記(1)工程で調製されたそぼろ状の生地に、湯種を添加し、ミキシングする工程である。湯種としては、前述したものを用いることができる。好ましくは、添加配合時の品温が3~15℃に調整した湯種を用いることが好ましい。そぼろ状の生地に対する湯種の配合割合は、制限されないものの、そぼろ状生地に含まれる小麦粉100質量部に対して5~30質量部を挙げることができる。かかる範囲で湯種を配合することで、麺に湯種製法特有のもちもちとした粘りと小麦粉特有の甘い風味を付与するとともに、麺表面にハリ及び麺芯部にコシを付与することができる。湯種の配合量を10質量部以上とすることで、小麦粉特有の甘い風味をより強化することができ、また麺芯部のコシを強化することができる。麺の食感(麺表面のハリ、麺芯部のコシ、もちもちとした粘り)及び風味から、より好ましい湯種の配合量は10~20質量部である。
【0022】
そぼろ状生地と湯種との混合は、前記(1)原料ミキシング工程と同じく、慣用のミキサーを用いて行うことができる。また、その条件(温度、減圧の有無)、ミキシング時間及び回数も、前記(1)で説明した条件を用いることができる。
また、そぼろ状生地と湯種との混合時に、必要に応じて、水を配合してもよい。水を配合するか否かは、最終的に調製する生地(最終生地)中の含水量を基準として判断することができる。最終生地中の含水量としては、最終生地に含まれる小麦粉100質量部に対する水の量に換算して22~46質量部、好ましくは35~42質量部を挙げることができる。この量に満たない場合は、そぼろ状生地と湯種との混合時に水を追加で添加することが好ましい。
【0023】
(2)~(5)の製麺工程
前記湯種添加混合工程で、そぼろ状生地と湯種とを混合して調製された生地は、次いで(2)粗延工程に供され、順次、(2)粗延工程、(3)複合工程、(4)圧延工程、及び(5)切出工程を経て、所定の麺類に調製することができる。前述するように、(3)複合工程と(4)圧延工程との間に、複合した生地を所定時間(例えば30分以上)寝かすことで生地を熟成する工程(熟成工程)を実施することもできる。これらの一連の工程は、簡便にはロール式製麺機を用いて連続的に実施することができる。これらの各工程で実施される操作、及びその際に採用される条件は、定法に従うことができ、特に制限されない。
あ (4)圧延工程で得られる麺帯の厚さは、麺類の種類に応じて、適宜設定することができる。(5)切出工程は、麺を製造する場合、(4)圧延工程で得られる麺帯を線状に切り出し、麺線を調製する工程である。餃子等の皮を製造する場合は、(4)圧延工程で得られる麺帯を、所定形状に切断するか、又は打ち抜きカットすることで所定形状の麺皮を調製する工程である。(5)切出工程で得られる麺線の幅や麺皮の形や大きさも、麺類の種類に応じて、適宜設定することができる。
【0024】
その後の製麺工程
前記の工程により調製された生の麺類は、包装後、そのまま生麺として市場に供給することもできる。また、市場に共有する麺類の態様に応じて、前記で調製した生麺を、さらに乾燥工程、油揚工程、水分存在下で加熱する工程(茹で工程、蒸し工程)、冷蔵工程、及び/又は冷凍工程に供し、半生麺、乾燥麺、茹で麺、蒸し麺、冷蔵麺、冷凍麺、LL麺、及び即席麺などの形態に調製することもできる。かかる形態への調製は、定法に従って行うことができる。例えば、冷凍麺は、生麺を水分存在下で加熱した後、速やかに冷凍処理することで調製することができる。
【0025】
(II)湯種麺類
前述する本発明の製造方法で製造される麺類は、調理した麺類の食感及び風味が、湯種を配合しないで調製した麺類と比べて、もちもちとして粘りがあり、小麦粉特有の甘い風味がすることを特徴とする。また従来の湯種製法で製造された麺類と比べて、表面のハリと芯部のコシが強い弾力性のある麺類であることを特徴とする。つまり、本発明の製造方法によれば、従来の湯種製法の短所である、弾力性(表面のハリと芯部のコシ)の低下を改善した麺類を製造することができる。
【0026】
麺類について、表面のハリと芯部のコシは、後述する実験例4に示すように、破断強度を測定する装置であるクリープメーターを用いて評価することができる。
実験例4で説明するように、クリープメーターを用いて破断強度を測定した場合に得られる破断曲線(横軸:歪率%、縦軸:荷重N)において、破断強度を示す最大荷重(N)(ピークの高さ)は麺芯部のコシの強さを反映し、ピークまでの曲線カーブの傾きは麺表面のハリの強さを反映する。つまり、麺芯部のコシが強いと破断強度が大きくなり(ピークが高くなり)、麺表面のハリが強いとピークまでの曲線カーブは急勾配になる。これらが大きくなるほど、弾力性の強い(ハリとコシが強い)麺と評価することができる。
【0027】
この評価に基づけば、本発明の麺類は、前記製造方法で製造される麺類であって、しかも、水分存在下で加熱処理した麺類の破断強度を測定した場合に、得られる破断曲線のピーク曲線下面積(被験面積)が、湯種を配合しない以外は同じ方法で製造した麺の同破断曲線のピーク曲線下面積(対照面積)と同じ若しくはそれよりも大きいことを特徴とする麺と規定することができる。
なお、ここで破断曲線のピーク曲線下面積は、クリープメーターを用いて麺類の破断強度を測定し、歪率(%)を横軸、荷重(N)を縦軸にしてグラフを描いた場合に、荷重(N)が0からピークに達するまでの曲線下面積(破断強度曲線下面積)を意味する。
【0028】
具体的には、前記対照面積に対する被験面積の比(被験面積/対照面積)が1.00~1.10であるような麺類を挙げることができる。好ましくは、1.00より大きく1.10未満である。より好ましくは1.01~1.09である。
クリープメーターを用いた麺類の破断強度の測定方法、測定条件、及び被験サンプルとして使用する麺類の調製方法(サンプル調製方法)は、実験例4の記載を参考にすることができる。
【0029】
(III)麺類への粘弾性付与方法
本発明は、麺類に粘弾性を付与する方法である。
ここで粘弾性とは、麺類を咀嚼した際に感じる食感であり、もちもちした粘りと弾力性とがあいまった食感を意味する。なお、弾力性は麺表面のハリと麺芯部のコシによってもたらされる。麺類への粘弾性付与又は強化は、小麦粉に加水混合してそぼろ状になった生地に、湯種を添加混合する工程を有する方法で、麺生地を製造することで行うことができる。かかる工程を経て製造される麺生地を用いて製麺することで、もちもちした粘りと弾力性とを兼ね備えた麺を調製することができる。
特に、上記方法で製造した麺生地を用いて製麺することで、湯種を添加混合することなく製造された麺生地を用いて製麺した場合と比較して、麺にもちもちした粘りの食感を付与することができる。また、上記方法で製造した麺生地を用いて製麺することで、従来の湯種製法を用いて製造した麺生地を用いて製麺した場合と比較して、麺に弾性力(表面のハリ、芯部のコシ)ある食感を付与することができる。
当該方法で採用する小麦粉の種類や量、水及び湯種の量、及び各方法及びその条件は、前記(I)に記載する通りであり、その記載はここに援用することができる。
【0030】
以上、本明細書において、「含む」及び「含有する」の用語には、「からなる」及び「から実質的になる」という意味が含まれる。
【実施例0031】
以下、本発明の構成及び効果について、その理解を助けるために、実験例を用いて本発明を説明する。但し、本発明はこれらの実験例によって何ら制限を受けるものではない。以下の実験は、特に言及しない限り、室温(25±5℃)、及び大気圧条件下で実施した。なお、特に言及しない限り、以下に記載する「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
【0032】
以下の実験で使用した原料は下記の通りである。
小麦粉1:かみぐるま(奥本製粉(株)製)(強力系パン用小麦粉、粗蛋白含量12.5%)
小麦粉2:麺京美人(奥本製粉(株)製)(中力系麺用小麦粉、粗蛋白含量8.9%)
小麦粉3:ゴールドピッケル(奥本製粉(株)製)(準強力系中華麺用小麦粉、粗蛋白含量11.0%)
精製塩:日本食塩製造株式会社製
加工でん粉:松谷さくら(松谷化学工業(株)製)(酢酸エステル化加工タピオカ澱粉)
かん水:かんすいOR(奥本製粉(株)製)(成分:炭酸ナトリウム60%、炭酸カリウム40%)
湯種:参考製造例参照
【0033】
参考製造例:湯種の製造
熱湯(90℃)を160質量部いれたミキサー(レオニーダーKH、株式会社カジワラ製)の中に、小麦粉1を100質量部、精製塩を10質量部の割合で投入し、6分間混合し、生地温70℃の湯種を製造した。これを包装し、0℃の冷水で、生地温が10℃程度になるまで冷却し、4℃で一晩冷蔵保管した後、―30℃まで急速凍結し、冷凍保存した。
使用に際して、用時、4℃の冷蔵庫に36時間いれて解凍し、品温を4℃に調整して使用した。
【0034】
実験例1:湯種麺(うどん)の製造と評価
湯種を使用して、各種方法でうどんを製造し、食感(ハリ、コシ、もちもち感)と風味(小麦粉特有の甘味)を評価した。
【0035】
(1)製麺方法
表1に記載する割合で各成分を用いて、後述する方法で各種のうどんを製造した。
【0036】
【0037】
対照例1:湯種も加工澱粉も使用しないうどん(コントロール)
小麦粉2を製麺用真空ミキサー(以降、ミキサーと称する)に投入した後、初期水に食塩を溶解して調製した食塩水(20℃)を加え、約-66661Paの減圧条件で脱気しながら、5分間のミキシングを2回行い、ソボロ状の生地を調製した。出来上がったソボロ状の生地を、ロール式製麺機に供して、粗延1回、複合1回、圧延1回を行い、厚さ3.0mmの麺帯を調製した。これを切り出し機に供して幅が3.3mmになるように麺線を切り出して、生麺(3.3mm×3.0mm)を調製した。
【0038】
比較例1:品質改良剤として加工でん粉を使用したうどん
小麦粉2と加工でん粉をミキサーに投入し、90秒間粉体混合した後、初期水に食塩を溶解して調製した食塩水(20℃)を加え、約-66661Paの減圧条件で脱気しながら、5分間のミキシングを2回行い、ソボロ状の生地を調製した。出来上がったソボロ状の生地を、前記比較例1と同じく、ロール式製麺機及び切り出し機に供して、生麺(3.3mm×3.0mm)を調製した。
【0039】
比較例2:湯種を使用したうどん(ミキシング前配合)
ミキサーに、小麦粉2及び湯種を入れて3分間ミキシングした後、初期水に食塩を溶解して調製した食塩水(20℃)を加え、約-66661Paの減圧条件で脱気しながら、5分間のミキシングを2回行い、ソボロ状の生地を調製した。出来上がったソボロ状の生地を、前記比較例1と同じく、ロール式製麺機及び切り出し機に供して、生麺(3.3mm×3.0mm)を調製した。
【0040】
実施例1及び2:湯種を使用したうどん(ミキシング後配合、後期水にて加水量調整)
小麦粉2をミキサーに投入後、初期水に食塩を溶解して調製した食塩水(20℃)を加え、約-66661Paの減圧条件で脱気しながら、5分間のミキシングを2回行い、ソボロ状の生地を調製した。このソボロ状の生地に、湯種と後期水を加え、再度、同減圧条件で脱気しながら、5分間のミキシングを1回行い、ソボロ状の生地を調製した。出来上がったソボロ状の生地を、前記比較例1と同じく、ロール式製麺機及び切り出し機に供して、生麺(3.3mm×3.0mm)を調製した。
【0041】
実施例3~6:湯種を使用したうどん(ミキシング後配合、後期水にて加水量調整なし)
小麦粉2をミキサーに投入後、初期水に食塩を溶解して調製した食塩水(20℃)を加え、約-66661Paの減圧条件で脱気しながら、5分間のミキシングを2回行い、ソボロ状の生地を調製した。このソボロ状の生地に、湯種を加え、再度、同減圧条件で脱気しながら、5分間のミキシングを1回行い、ソボロ状の生地を調製した。出来上がったソボロ状の生地を、前記比較例1と同じく、ロール式製麺機及び切り出し機に供して、生麺(3.3mm×3.0mm)を調製した。
【0042】
ちなみに、湯種配合前のそぼろ状生地は、小さい塊状の生地の集合物である。例えば、実施例5及び6の湯種配合前のそぼろ状生地(24℃前後)を、目開き5mmの篩で篩い分けした結果を表2に示す。これから、小麦粉に対する初期加水量が多くなるほど、そぼろ状の生地の粒(塊)が大きくなることがわかる。
【0043】
【0044】
(2)評価方法
上記で調整した生麺(対照例1、比較例1~2、実施例1~6)を沸騰水で9分間茹で、茹で麺を調製した。これを18℃の流水に30秒間晒した後、0℃の水に30秒間浸して粗熱を取った後、-30℃で急速冷凍し、-20℃で保存した。翌日に、常温のうどんスープと煮込んで解凍調理した麺を用いて、食感と風味を比較評価した。
麺の食感と風味の評価は、社内の官能評価者の基準を満たし、日常的に麺の官能評価を行っているパネル6名で行った。評価は、対照例1のうどん(コントロール)の食感及び風味を基準の中心におき、これとの対比で下記の基準に従って評価した。まず各パネルが各々評価した後、各自の評価結果をパネル間ですり合わせて、パネルの総意を、最終結果とした。
【0045】
[食感]
(1)麺表面のハリ
◎:コントロールよりも強いハリがある。
○:コントロールと同等のハリがある。
△:コントロールよりもやや弱い。
×:コントロールよりもかなり弱い。
【0046】
(2)麺芯部のコシ
◎:コントロールよりも強いコシがある。
○:コントロールと同等のコシがある。
△:コントロールよりも弱いがコシはある。
×:コシがない。
【0047】
(3)もちもりとした粘り
◎:コントロールよりも強いもちもちとした粘りがある。
○:コントロールと同等の粘りがある。
△:コントロールよりも粘りを感じない。
×:粘りが全くない。
【0048】
[風味]
(4)小麦粉特有の甘味
◎:コントロールよりも強い甘味がある。
○:コントロールと同等の甘味がある。
△:コントロールよりも甘味が弱い。
×:甘味がない。
【0049】
(3)評価結果
結果を表3に示す。
【0050】
【0051】
表3に示すように、生地調製に品質改良剤として知られている加工でん粉を用いると、麺表面のハリと芯部のコシが強くなり弾力性のある麺が得られた。しかし、もちもちとした粘りは弱く、また小麦粉特有の甘味はなくなり、風味の悪い麺となった(比較例1)。これに対して、生地調製に湯種を用いると、湯種の配合時期の別を問わず、湯種製法特有のもちもちとした粘りのある食感と、小麦粉特有の甘味の強い風味が良好な麺が得られた(比較例2、実施例1~6)。しかし、湯種を、小麦粉の加水ミキシング時に配合すると、従来の湯種製法の短所であるハリとコシの低下が認められた(比較例2)。一方、小麦粉を加水ミキシングしてそぼろ状になった後に、湯種を配合すると、湯種製法の特徴(もちもちした食感と小麦粉特有の甘味)を維持したままで、湯種製法の短所であるコシの低下が抑制できることが確認された(実施例1~6)。特に、小麦粉への初期加水量を、小麦粉100質量部に対して34質量部以上に調整することで、コシが強い麺が得られることが確認された(実施例3~6)。また、初期加水量を、小麦粉100質量部に対して29~40質量部に調整することで、湯種製法の短所であるコシの低下が抑制でき、ハリとコシの両面から弾力性のある麺が得られることが確認された(実施例2~5)。
【0052】
上記の結果は、茹で麺を冷凍後解凍した麺を評価した結果であるが、生麺を茹でた直後に評価した結果も同様の評価を得ることができた。
【0053】
実験例2:湯種麺(うどん)の製造と評価
実験例1の結果を踏まえて、実施例3の処方(初期加水量)及び製法を基準として、湯種の配合割合を代えて種々のうどんを製造し、実験例1と同様に食感と風味を評価した。
【0054】
(1)製麺方法
表4に記載する割合で各成分を用いて、前述する対照例1、及び実施例3とそれぞれ同じ製麺方法で各種の生麺(対照例1、実施例7~10)を製造した。
【0055】
【0056】
(2)評価方法及び評価結果
上記で調整した生麺(対照例1、実施例7~10)を実験例1と同様に茹で、冷凍後、解凍調理した麺を用いて、食感と風味を比較評価した。評価方法及びその判断基準も、実験例1と同じである。結果を表5に示す。
【0057】
【0058】
表5に示すように、加水後そぼろ状に調製した小麦粉100質量部に対して少なくとも5質量部の割合で湯種を配合することで、湯種製法の特徴(もちもちした食感と小麦粉特有の甘味)を維持したままで、湯種製法の短所であるコシの低下が抑制できることが確認された(実施例7~10)。特に、小麦粉100質量部に対して湯種を10質量部以上配合することで、湯種製法の特徴である小麦粉特有の甘い風味を増強することができた。また小麦粉100質量部に対して湯種を5~20質量部、特に10~20質量部配合することで、湯種製法の短所であるコシの低下が抑制若しくは増強することができ、ハリとコシの両面から弾力性のある麺が得られることが確認された(実施例7~9)。
【0059】
上記の結果は、茹で麺を冷凍後解凍した麺を評価した結果であるが、生麺を茹でた直後に評価した結果も同様の評価を得ることができた。
【0060】
実験例3:湯種麺(中華麺)の製造と評価
湯種を使用して、各種方法で中華麺を製造し、食感(ハリ、コシ、もちもち感)と風味(小麦粉特有の甘味)を評価した。
【0061】
(1)製麺方法
表6に記載する割合で各成分を用いて、後述する方法で各種の中華麺を製造した。
【0062】
【0063】
対照例2:湯種を使用しない中華麺(コントロール)
小麦粉3をミキサーに投入した後、初期水にかんすいを溶解した練り水(20℃)を加え、約-66661Paの減圧条件で脱気しながら、5分間のミキシングを2回行い、ソボロ状の生地を調製した。出来上がったソボロ状の生地を、ロール式製麺機に供して、粗延1回、複合1回、圧延1回を行い、厚さ1.65mmの麺帯を調製した。これを切り出し機に供して幅が1.67mmになるように麺線を切り出して、生麺(1.67mm×1.65mm)を調製した。
【0064】
比較例3:湯種を使用した中華麺(ミキシング前配合)
ミキサーに、小麦粉3及び湯種を入れて3分間ミキシングした後、初期水にかんすいを溶解した練り水(20℃)を加え、約-66661Paの減圧条件で脱気しながら、5分間のミキシングを2回行い、ソボロ状の生地を調製した。出来上がったソボロ状の生地を、前記対照例2と同じく、ロール式製麺機及び切り出し機に供して、生麺(1.67mm×1.65mm)を調製した。
【0065】
実施例11:湯種を使用した中華麺(ミキシング後配合)
小麦粉3をミキサーに投入後、初期水にかん水を溶解した練り水(20℃)を加え、約-66661Paの減圧条件で脱気しながら、5分間のミキシングを1回行い、ソボロ状の生地を調製した。このソボロ状の生地に、湯種を加え、再度、同減圧条件で脱気しながら、5分間のミキシングを1回行い、ソボロ状の生地を調製した。出来上がったソボロ状の生地を、前記対照例と同じく、ロール式製麺機及び切り出し機に供して、生麺(1.67mm×1.65mm)を調製した。
【0066】
(2)評価方法及び評価結果
上記で調整した生麺(対照例2、比較例3、実施例11)を実験例1と同様に茹で、冷凍後、解凍調理した麺を用いて、食感と風味を比較評価した。評価方法及びその判断基準も、実験例1と同じである。結果を表7に示す。
【0067】
【0068】
表7に示すように、中華麺もうどんと同様に、加水後そぼろ状に調製した小麦粉100質量部に対して湯種を配合することで、湯種製法の特徴(もちもちした食感と小麦粉特有の甘味)を維持したままで、湯種製法の短所であるハリとコシの低下が抑制できることが確認された(対照例2、比較例3、及び実施例11)。
【0069】
上記の結果は、茹で麺を冷凍後解凍した麺を評価した結果であるが、生麺を茹でた直後に評価した結果も同様の評価を得ることができた。
【0070】
実験例4:麺のハリ及びコシの評価
実験例1の表1に記載する対照例1(湯種非配合なし)、比較例2(湯種ミキシング前配合)、及び実施例3(湯種ミキシング後配合)と同じ処方からなる麺を、実験例1に記載する方法と同様の方法で製造した。但し、麺線のサイズが、厚さ2.0mm、幅3.0mmになるように調製した。得られた生麺を、沸騰水で6分間茹でた後、18℃の流水に30秒間晒し、20℃まで冷却して茹で麺を調製した。この茹で麺の破断強度を、クリープメーターを用いて下記条件で測定した。
【0071】
[破断強度測定条件]
・クリープメーター:RHEONER II(株式会社三電製)
測定条件:プランジャー 楔形No.49
測定速度 0.5mm/sec。
【0072】
歪率(%)を横軸、荷重(N)を縦軸にして、破断強度を測定した結果を
図1に示す。
図1に示す破断曲線において、ピークの高さ(ピーク時の荷重(N)、つまり破断強度)は麺の芯部のコシの強さを反映し、またピークまでの曲線カーブの傾きは麺表面のハリを反映する。コシとハリが強いほど弾力のある麺になる。
【0073】
図1から、湯種を配合しない対照例1の麺(
図1中、符号1)と比較して、湯種をミキシング前に配合して製造した比較例2の麺(
図1中、符号2)は、コシを反映するピーク高さ及びハリを反映するカーブ傾斜がともに低下するのに対して、湯種をミキシング後に配合して製造した実施例3の麺(
図1中、符号3)は、それらの低下がいずれも抑制され、対照例1の麺のピーク高さとカーブ傾斜に近づくこと、なかでもピーク高さは対照例1よりも若干強くなる傾向が認められた。この結果は、表3に示す実験例1の官能評価試験のコシとハリの評価結果の傾向と一致した。
【0074】
このことから、破断曲線のピークに達するまでの曲線下面積(
図2で示す網掛け領域)から、麺のコシとハリの強さ(麺の弾力性)が評価できることが確認された。つまり、破断曲線(横軸:歪率、縦軸:荷重)において、ピークに達するまでの曲線下面積が大きいほど、麺の弾力性が強いことを示す。
【0075】
実験例5:湯種麺の弾力性(ハリ及びコシ)の評価
実験例4の結果を利用して、湯種使用麺の弾力性(ハリ及びコシ)を破断曲線から評価した。
(1)製麺方法
表8に記載する処方及び製法に従って製麺し、生麺(うどん)を調製した。
【0076】
【0077】
(2)破断強度の測定とその結果
上記で調製した各生麺を実験例1と同様に茹で、冷凍後、解凍調理した麺を用いて、実験例4に記載するクリップメーターとその条件を用いて、破断強度を測定した。得られた破断曲線から、ピークに達するまでの曲線下面積を算出した。
結果を表9及び10に示す。なお、結果は対照例のピークに達するまでの曲線下面積を100にした場合の相対比として示す。
【0078】
【0079】
【0080】
この結果からわかるように、湯種を、小麦粉と水とのミキシング前に配合する従来の湯種製法で得られる麺は、対照例の麺(コントロール)と比較して、ピークに達するまでの曲線下面積が小さく弾力性が弱いのに対して、湯種を、小麦粉と水とのミキシング後に配合する本発明の製法で得られる麺は、対照例の麺(コントロール)と比較して、ピークに達するまでの曲線下面積が大きくなり弾力性が同等以上になることが確認された。
【0081】
実験例6:湯種麺の弾力性(ハリ及びコシ)の評価
実験例5の結果に基づいて、湯種の配合量による影響を同様に破断曲線から評価した。
(1)製麺方法
表11に記載する処方及び製法に従って製麺し、生麺(うどん)を調製した。
【0082】
【0083】
(2)破断強度の測定とその結果
上記で調製した各生麺を実験例1と同様に茹で、冷凍後、解凍調理した麺を用いて、実験例4に記載するクリップメーターとその条件を用いて、破断強度を測定した。得られた破断曲線から、ピークに達するまでの曲線下面積を算出した。
結果を表12に示す。なお、結果は対照例Cのピークに達するまでの曲線下面積を100にした場合の相対比として示す。
【0084】
【0085】
この結果からわかるように、小麦粉と水とのミキシング後に、湯種を小麦粉100質量部に対して5質量部以上の割合で配合することで(実施例C1及びC2)、対照例Cの麺(コントロール)と比較して、ピークに達するまでの曲線下面積が大きくなり弾力性が強い麺が得られることが確認された。