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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161138
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】ボイスコイルモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/18 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
H02K33/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065724
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】505056742
【氏名又は名称】ピーエス特機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】春山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小林 義明
【テーマコード(参考)】
5H633
【Fターム(参考)】
5H633BB02
5H633GG03
5H633GG07
5H633HH02
5H633HH05
5H633HH09
5H633HH15
5H633HH20
5H633HH25
(57)【要約】
【課題】最小限のサイズアップ及び重量増加で推力を向上することができるボイスコイルモータを提供する。
【解決手段】一対のメインヨーク21a、21bを含む各辺の厚さが同等である矩形ヨーク2と、一方のサイドヨーク21aの内周面に固定された永久磁石3と、永久磁石3の表面に沿って移動可能に支持される駆動コイル4を備え、永久磁石3が固定されている側のメインヨーク21aのコーナー部に固定されたサブヨーク23a、23bを有し、サブヨーク23a、23bの厚さ(t2)は、メインヨーク21aの厚さ(t1)より小さく設定されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のメインヨークを含む各辺の厚さ(t1)が同等である矩形ヨークと、前記メインヨークの一方の内周面に固定された永久磁石と、前記永久磁石の表面に沿って移動可能に支持される駆動コイルを備え、前記永久磁石が固定されている側の前記メインヨークのコーナー部に固定されたサブヨークを有し、前記サブヨークの厚さは、前記ヨークの厚さより小さいことを特徴とするボイスコイルモータ。
【請求項2】
前記サブヨークの厚さは、前記メインヨークの厚さの0.4~0.6倍の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のボイスコイルモータ。
【請求項3】
厚さが同じである一対のサイドヨークと、前記サイドヨークの間に位置し、厚さが前記サイドヨークの厚さと同じである2つの部材からなるセンターヨークと、前記一対のサイドヨークの内周面に固定された永久磁石と、前記永久磁石の表面に沿って移動可能に支持される駆動コイルを備え、前記サイドヨークの各コーナー部に固定されたサブヨークを有し、前記サブヨークの厚さは、前記サイドヨークの厚さより小さいことを特徴とするボイスコイルモータ。
【請求項4】
前記サブヨークの厚さは、前記ヨークの厚さ(t1)の0.4~0.6倍の範囲にある請求項3に記載のボイスコイルモータ。
【請求項5】
一対のメインヨークを有する矩形ヨークと、前記メインヨークの一方の内周面に固定された永久磁石と、前記永久磁石の表面に沿って移動可能に支持される駆動コイルを備え、前記サイドヨークの前記永久磁石が固定されている側のコーナー部の厚さが他の部分の厚さより大きいことを特徴とするボイスコイルモータ。
【請求項6】
コーナー部以外の厚さが同じである一対のサイドヨークと、前記サイドヨークの間に位置し、2つの部材からなるセンターヨークを有する矩形ヨークと、前記サイドヨークの内周面に固定された永久磁石と、前記永久磁石の表面に沿って移動可能に支持される駆動コイルを備え、前記サイドヨークの各コーナー部の厚さが他の部分の厚さより大きいことを特徴とするボイスコイルモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学機器のレンズ駆動手段等に使用されるボイスコイルモータに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラなどの撮像用光学機器では、撮影レンズやフォーカスレンズを所定方向に直線的に駆動するために、可動コイル型のボイスコイルモータが使用されている。可動コイル型のボイスコイルモータは、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載されたボイスコイルモータは、駆動コイルを挿入するセンターヨークと、永久磁石を取り付けるサイドヨークとを、一体にしてU字形に成形し、一辺のヨーク内側には、永久磁石を取り付け、U字形に成形したヨークの内、永久磁石を取り付けていないヨーク部を、背中合わせに2個組み合わせてW形のヨークを形成し、W形のヨークの中心をセンターヨークとして駆動コイルを挿入し、W形ヨークの開放端面には、切り欠きを持つカウンタヨークを用い接続して閉磁気回路を形成した磁気回路を備えている。
【0004】
特許文献2には、センターヨークと、センターヨークを挟んで両側に配置された一対の外側ヨークと、センターヨークと外側ヨークと対向する面のそれぞれに設置されたマグネットと、各外側ヨークの両端部を磁気的結合する一対の端部外ヨークと、マグネットから構成される2組の磁気空隙に移動可能に挿入された1個の電機子コイルから構成されたボイスコイルアクチュエータにおいて、対向する2枚のマグネットを磁気空隙に垂直かつ推力発生方向に互いにずらして設置して磁気空隙に分布する磁束密度に任意の角度を持たせ、かつマグネットをセンターヨークに対し線対称となるように設置したボイスコイルアクチュエータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平5-5832号公報
【特許文献2】特開2006-81342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、このボイスコイルモータは、組立時における動作点と組立立ち上がり時の動作点が同一となるので、空隙磁束密度を安定化することができるとされている。また特許文献2では、このボイスコイルアクチュエータは、マグネット投入量及びモータの大きさを変更せずにサイドフォースを低減することができるとされている。しかるに光学機器などの小型の電子機器では、さらなるサイズダウンや軽量化が望まれているので、磁気回路部の改良が必要となる。
【0007】
すなわちサイドヨークとセンターヨークを有する矩形状のヨークを用いて磁気回路部を組立てた場合は、ヨークの端部に磁束が集中するため、ヨークの磁気飽和に起因して、空隙磁束密度が低下し、発生推力の低下により、所定の駆動動作を実現することができないという問題がある。そこで、磁気飽和を緩和するために、ヨークの厚さを増大させると、モータの重量及び大きさが増大することになり、実用に供しえない。
【0008】
したがって本発明の目的は、最小減のサイズアップと重量増加により推力を向上することができるボイスコイルモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明のボイスコイルモータは、一対のメインヨークを含む各辺の厚さ(t1)が同等である矩形ヨークと、前記メインヨークの一方の内周面に固定された永久磁石と、前記永久磁石の表面に沿って移動可能に支持される駆動コイルを備え、前記メインヨークの前記永久磁石が固定されている側のコーナー部に固定されたサブヨークを有し、前記サブヨークの厚さ(t2)は、前記ヨークの厚さ(t1)より小さいことを特徴とするものである。
【0010】
第1の発明において、前記サブヨークの厚さ(t2)は、前記矩形ヨークの厚さ(t1)の0.4~0.6倍の範囲にあることが好ましい。
【0011】
第2の発明のボイスコイルモータは、厚さ(t4)が同じである一対のサイドヨークと、前記サイドヨークの間に位置し、厚さが前記サイドヨークの厚さと同じである2つの部材からなるセンターヨークと、前記サイドヨークの内周面に固定された永久磁石と、前記永久磁石の表面に沿って移動可能に支持される駆動コイルを備え、前記サイドヨークの各コーナー部に固定されたサブヨークを有し、前記サブヨークの厚さ(t5)は、前記サイドヨークの厚さ(t4)より小さいことを特徴とするものである。
【0012】
第2の発明において、前記サブヨークの厚さ(t5)は、前記サイドヨークの厚さ(t4)の0.4~0.6倍の範囲にあることが好ましい。
【0013】
第3の発明のボイスコイルモータは、一対のメインヨークを有する矩形ヨークと、前記メインヨークの一方の内周面に固定された永久磁石と、前記永久磁石の表面に沿って移動可能に支持される駆動コイルを備え、前記メインヨークの前記永久磁石が固定されている側のコーナー部の厚さ(t8)が他の部分の厚さ(t7)より大きいことを特徴とするものである。
【0014】
第4の発明のボイスコイルモータは、コーナー部以外の厚さ(t10)が同じである一対のサイドヨークと、前記サイドヨークの間に位置し、2つの部材からなるセンターヨークと、前記サイドヨークの内周面に固定された永久磁石と、前記永久磁石の表面に沿って移動可能に支持される駆動コイルを備え、前記一対のサイドヨークの各コーナー部の厚さ(t11)が他の部分の厚さ(t10)よりも大きいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、最小限のサイズアップ及び重量増加で推力を向上することができるボイスコイルモータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るボイスコイルモータを示す斜視図である。
図2図1をA方向から見た矢視図である。
図3図1をB方向から見た矢視図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係るボイスコイルモータを示す斜視図である。
図5図4をC方向から見た矢視図である。
図6図4をD方向から見た矢視図である。
図7】本発明の第3の実施の形態に係るボイスコイルモータを示す側面図である。
図8】本発明の第4の実施の形態に係るボイスコイルモータを示す側面図である。
図9】本発明の第1の実施の形態に係るボイスコイルモータのサブヨークの厚さと推力との関係を示す図である。
図10】本発明の第2の実施の形態に係るボイスコイルモータのサブヨークの厚さと推力との関係を示す図である。
図11】本発明の第1の実施の形態に係るボイスコイルモータの磁束密度分布を示す図である。
図12】本発明の第1の実施の形態に係るボイスコイルモータにおいてサブヨークを除いた場合の磁束密度分布を示す図である。
図13】本発明の第2の実施の形態に係るボイスコイルモータの磁束密度分布を示す図である。
図14】本発明の第2の実施の形態に係るボイスコイルモータにおいてサブヨークを除いた場合の磁束密度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の詳細を添付図面により説明する。
【0018】
[第1の実施の形態]
図1図3に示すボイスコイルモータ1は、鋼板などの強磁性体からなる矩形ヨーク2と、矩形ヨーク2に固定される永久磁石3(厚さtm1)と、永久磁石3の表面に沿って移動可能に支持される駆動コイル4を有する。永久磁石3は厚さ方向に磁化されている。矩形ヨーク2は、メインヨーク21a、21bを有するU字形ヨーク20と、閉磁路を形成するためにU字形ヨーク20の開放端に結合されたエンドヨーク22を有する。U字形ヨーク20の開放端側には切り込みが設けられるとともに、エンドヨーク22にもこの切り込みと補完し得るような切り込みが設けられている。メインヨーク21aのコーナー部には、L字形のサブヨーク23a、23bが固定されている。駆動コイル4はメインヨーク21bを取り囲むように配置され、永久磁石3の表面から発生する磁束と鎖交するように巻回された巻線を有する。駆動コイル4に通電することにより、駆動コイル4に対向する永久磁石3は固定されているので、駆動コイル4にはフレミングの左手の法則に基づいて、永久磁石の磁束を横切る方向に推力が発生し、駆動コイル4は、永久磁石3の表面に沿って直線的に駆動される。
【0019】
このボイスコイルモータ1においては、メインヨーク21aのコーナー部に、L字形のサブヨーク23a、23bが固定されているので、磁束が集中するメインヨーク21aの端部での磁気飽和が緩和されることで、メインヨーク21bから永久磁石3へ戻る磁束量を増やすことが可能になり、その結果、駆動コイルへの磁束流入量を増やすことができ、サブヨークがない場合と比較して、推力を増大することができる。
【0020】
この矩形ヨーク2においては、メインヨーク21a、21bの厚さをt1とすると、サブヨーク23a、23bの厚さt2は、t1よりも小さい厚さでよく、具体的には、t2はt1の0.4~0.6倍の範囲にあれば、推力の向上に有効である。また製造コストの点から、エンドヨーク22の厚さt3はメインヨーク21a、21bの厚さt1と同等であることが好適である。
【0021】
ボイスコイルモータ1は、U字形ヨーク20、エンドヨーク22、サブヨーク23a、23b、永久磁石3及び駆動コイル4を含む各部材を準備し、例えば次の工程により組立てることができる。U字形ヨーク20の一方の長辺部(メインヨーク21a)の内周面に永久磁石3を固定し、U字形ヨーク20の他方の長辺部(メインヨーク21b)を取り囲むように駆動コイル4を設け、U字形ヨーク20の開放側端部にエンドヨーク22を固定し、次いで矩形ヨーク2のメインヨーク21a側のコーナー部にサブヨーク23a、23bを固定すればよい。
【0022】
[第2の実施の形態]
図4図6に示すボイスコイルモータ31は、鋼板などの強磁性体からなる矩形ヨーク32と、矩形ヨーク32に固定された永久磁石33a、33b(厚さtm2)と、永久磁石33a、33bの表面に沿って移動可能に支持される駆動コイル34を有する。永久磁石33a、33bは厚さ方向に磁化されている。矩形ヨーク32は、一対のU字形ヨーク40a、40bと、閉磁路を形成するためにU字形ヨーク40a、40bの開放端に結合されたエンドヨーク43a、43bを有する。U字形ヨーク40aは、サイドヨーク41aとセンターヨーク42aを有し、U字形ヨーク40bは、サイドヨーク41bとセンターヨーク42bを有する。サイドヨーク41aの各コーナー部にはL字形のサブヨーク44a、44bが固定され、サイドヨーク41bの各コーナー部には、L字形のサブヨーク44c、44dが固定されている。組立を容易に行えるようにするために、U字形ヨーク40aの開放端側には切り込みが設けられ、エンドヨーク43aにもこの切り込みと補完し得るような切り込みが設けられている。同様にU字形ヨーク40bの開放端側にも切り込みが設けられ、エンドヨーク43bにもこの切り込みに嵌合し得るような切り込みが設けられている。駆動コイル34はセンターヨーク42a、42bを取り囲むように配置され、永久磁石33a、33bの表面から発生する磁束と鎖交するように巻回された巻線を有する。駆動コイル34に通電することにより、駆動コイル34は直線的に移動する。
【0023】
このボイスコイルモータ31においては、サイドヨーク41a、41bのコーナー部には各々、L字形のサブヨーク44a、44b、44c、44dが固定されているので、磁束が集中するサイドヨーク41a、41bの端部での磁気飽和が緩和されるようになり、センターヨーク42aから永久磁石33aへ戻る磁束量、及びセンターヨーク42bから永久磁石33bへ戻る磁束量を増やすが可能になり、その結果、駆動コイルへの磁束流入量を増やすことができ、サブヨークがない場合と比較して、推力を増大することができる。
【0024】
この矩形ヨーク32においては、サイドヨーク41a、41b(センターヨーク42a、42b)の厚さをt4とすると、サブヨーク44a、44b、44c、44dの厚さt5は、t4よりも小さい厚さでよく、具体的には、t5はt4の0.5~0.8倍の範囲にあれば、推力の向上に有効である。また製造コストの点から、エンドヨーク43a、43bの厚さt6はサイドヨーク41a、41bの厚さt4と同じでもあるいは異なっていてもよい。各センターヨーク42a、42bの厚さもサイドヨーク41a、41bの厚さと同じである。
【0025】
ボイスコイルモータ31は、各部材を準備し、例えば次の工程により組立てることができる。U字形ヨーク40aの一方の長辺部(サイドヨーク41a)の内周面に永久磁石33aを固定し、同様にU字形ヨーク40bの一方の長辺部(サイドヨーク41b)の内周面に永久磁石33bを固定し、U字形ヨーク40a、40bの他方の長辺部(センターヨーク42a、42b)を背中合せになるように接合し、センターヨーク42a、42bを取り囲むように駆動コイル34を取付け、U字形ヨーク40aの開放側端部にエンドヨーク43aを固定し、U字形ヨーク40bの開放側端部にエンドヨーク43bを固定してから、矩形ヨーク32の各コーナー部にサブヨーク44a、44b、44c、44dを固定すればよい。
【0026】
[第3の実施の形態]
図7に示すボイスコイルモータ51は、一対のメインヨーク61a、61bを有する矩形ヨーク52と、メインヨーク61a、61bの端部間に固定されたエンドヨーク63と、一方のメインヨーク61aの内周面に固定された永久磁石53(厚さtm3)と、他方のメインヨーク61bを取り囲むように設けられた駆動コイル54を有する。永久磁石53は厚さ方向に磁化されている。一方のメインヨーク61aの各コーナー部に形成された段差部62a、62bの厚さ(t8)は、幅L7、L8の範囲だけメインヨーク61aの厚さ(t7)よりも大きく形成されている。駆動コイル54は、永久磁石53から発生する磁束線と鎖交するように巻回された巻線を有する。駆動コイル54に通電することにより、直線的に駆動される。
【0027】
この矩形ヨーク52においては、メインヨーク61a、61bの厚さをt7とすると、コーナー部の厚さt8は、t7よりも大きい厚さでよく、具体的には、t8はt7の1.4~1.6倍の範囲にあれば、推力の向上に有効である。またエンドヨーク63のメインヨーク61a側に、厚さt9の段差部64がL9の範囲だけ厚肉に形成されている。
【0028】
このボイスコイルモータ51もボイスコイルモータ1と同様の原理で駆動されるので、その動作説明を省略する。
【0029】
ボイスコイルモータ51の組立は、各部材を準備し、例えば次の工程により行うことができる。2か所に厚肉部を有するU字ヨーク60をプレス成形あるいは絞り加工などにより作製し、一方の端部に厚肉部を有するエンドヨーク63もプレス成形等により作製し、U字ヨーク60の内周面に永久磁石53を固定し、U字ヨーク60の他方の長辺部に駆動コイル54を挿通してから、U字ヨーク60の開放端にエンドヨーク63を固定すればよい。段差部を有するU字形ヨーク60及びエンドヨーク63は、鋼板に絞り加工、プレス加工などの機械加工を施すことにより作製することができる。
【0030】
このボイスコイルモータ51においては、メインヨーク61aのコーナー部には、他の部分よりも厚い段差部が形成されているので、磁束が集中するメインヨーク61aの端部での磁気飽和が緩和されるようになり、メインヨーク61bから永久磁石53へ戻る磁束量を増やすが可能になり、その結果、駆動コイルへの磁束流入量を増やすことができ、サブヨークがない場合と比較して、推力を増大することができる。
【0031】
[第4の実施の形態]
図8に示すボイスコイルモータ71は、鋼板などの強磁性体からなる矩形ヨーク72と、矩形ヨーク72に固定された永久磁石73a、73b(厚さtm4)と、永久磁石73a、73bの表面に沿って移動可能に支持される駆動コイル74を有する。永久磁石73a、73bは厚さ方向に磁化されている。矩形ヨーク72は、一対のU字形ヨーク80a、80bと、閉磁路を形成するためにU字形ヨーク80a、80bの開放端に結合されたエンドヨーク84a、84bを有する。U字形ヨーク80aは、サイドヨーク81aとセンターヨーク83aを有し、U字形ヨーク80bは、サイドヨーク81bとセンターヨーク83bを有する。一方のサイドヨーク81aの各コーナー部には段差部82a―1、82a-2が形成され、他方のサイドヨーク81bの各コーナー部にも、段差部82b-1、82b-2が形成されている。駆動コイル74はセンターヨーク83a、83bを取り囲むように配置され、永久磁石73a、73bの表面から発生する磁束と鎖交するように巻回された巻線を有する。駆動コイル74に通電することにより、駆動コイル74は直線的に移動する。
【0032】
この矩形ヨーク71においては、サイドヨーク81a、81b、センターヨーク83a、83bのコーナー部を除いた部分の厚さをt10とし、段差部82a―1、82a-2、82b-1、82b-2の厚さをt11とすると、段差部の厚さt11は、t10の1.5~2倍の範囲にあれば、推力の向上に有効である。またエンドヨーク84a、84bの段差部85a、85bの厚さt13はt11よりも厚く設定すればよい。U字形ヨーク80a、80b及びエンドヨーク84a、84bは、鋼板に絞り加工、プレス加工などの機械加工を施すことにより作製することができる。
【0033】
ボイスコイルモータ71は、各部材を準備し、例えば次の工程により組立てることができる。ボイスコイルモータ71は、各部材を準備し、例えば次の工程により組立てることができる。U字形ヨーク80aの一方の長辺部(サイドヨーク81a)の内周面とU字形ヨーク80bの一方の長辺部(サイドヨーク81b)の内周面に永久磁石73a、73bを固定し、U字形ヨーク80aの他方の長辺部(センターヨーク83a)及びU字形ヨーク80bの他方の長辺部(センターヨーク83b)を接合し、これらを取り囲むように駆動コイル74を設け、U字形ヨーク80a及びU字形ヨーク80bの開放側端部にエンドヨーク84a、84bを固定すればよい。
【0034】
このボイスコイルモータ71においては、サイドヨーク81a、81bのコーナー部には、厚肉部が形成されているので、磁束が集中するサイドヨーク81a、81bの端部での磁気飽和が緩和されるようになり、センターヨーク83bから永久磁石73aへ戻る磁束量、及びセンターヨーク83bから永久磁石73bへ戻る磁束量を増やすが可能になり、その結果、駆動コイルへの磁束流入量を増やすことができ、サブヨークがない場合と比較して、推力を増大することができる。
【0035】
本発明において、永久磁石は、公知の永久磁石材料(例えば希土類焼結磁石)で形成することができる。本発明において使用される希土類焼結磁石は、希土類磁石粉末(表面を樹脂で被覆してもよい)を用いて、粉末冶金法により作成することができる。この希土類焼結磁石はコンパクトなVCMを構成しかつ補正レンズの駆動に必要な推力を得るために、例えば358~437kJ/m[45~55MGOe]の最大エネルギー積を有することが好ましい。
【0036】
(実験例1)
図1において、SS材製U字形ヨーク(厚さ=1.4mm)及びSS材製サブヨークを使用するとともに、駆動用磁石(厚さ=2mm)として希土類焼結磁石(358~397kJ/m[45~50MGOe]の最大エネルギー積を有する。)を使用し、駆動用コイル(自己融着線、線径=φ0.09mm、ターン数=295、抵抗32.5Ω、有効長13mm)を用いて、0.67Tの空隙磁束密度を有するボイスコイルモータを作製し、駆動コイルに通電(4.2V、0.129A)を行い、推力を測定した。
【0037】
厚さの異なる3種類のサブヨークを使用した場合の推力をそれぞれ算出し、その結果を図9に示す。図9からサブヨークの厚さが、サイドヨークの厚さの0.4~0.6倍の範囲で推力が大幅に向上することがわかる。
【0038】
(実験例2)
図4において、SS材製U字形ヨーク(厚さ=0.7mm)及びSS材製サブヨークを使用するとともに、駆動用磁石(厚さ=0.9mm)として希土類焼結磁石(358~397kJ/m3[45~50MGOe]の最大エネルギー積を有する。)を使用し、駆動用コイル(自己融着線、線径=φ0.09mm、ターン数=310、抵抗32.5Ω、有効長13mm)を用いて、0.798Tの空隙磁束密度を有するボイスコイルモータを作製し、駆動コイルに通電(4.2V、0.129A)を行い、推力を測定した。
【0039】
厚さの異なる3種類のサブヨークを使用した場合の推力をそれぞれ算出し、その結果を図10に示す。図10からサブヨークの厚さが、サイドヨークの厚さの0.5~0.8倍の範囲で推力が大幅に向上することがわかる。
【0040】
本発明において、ヨークの端部における磁気飽和が緩和されることを確認するために、磁場解析を行った。
【0041】
図1に示すボイスコイルモータの磁気回路部(矩形ヨーク及び永久磁石)の磁束密度分布(実験例1の境界条件)は、図11に示す状態となり、図1でサブヨークを除いたボイスコイルモータの磁気回路部(ヨーク)の磁束密度分布(図12)と比較して、コーナー部での磁束の集中が緩和されていることがわかる。
【0042】
図4に示すボイスコイルモータの磁気回路部(矩形ヨーク及び永久磁石)の磁束密度分布(実験例2の境界条件)は、図13に示す状態となり、図4でサブヨークを除いたボイスコイルモータの磁気回路部(ヨーク)の磁束密度分布(図14)と比較して、サイドヨーク端部での磁束の集中が緩和されていることがわかる。
【0043】
本発明は、上述した実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、第1の実施の形態及び第3の実施の形態では、U字形ヨークとエンドヨークを組み合わせて矩形ヨークを構成した例を説明したが、これに限定されず、種々の変更が可能である。例えば、4枚の平板状部材を組み合わせて矩形ヨークを構成してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1:ボイスコイルモータ、2:矩形ヨーク、3:永久磁石、4:駆動コイル、20:U字形ヨーク、21a、21b:メインヨーク、22:エンドヨーク、23a、23b:サブヨーク、
31:ボイスコイルモータ、32:矩形ヨーク、33a、33b:永久磁石、34:駆動コイル、40a、40b:U字形ヨーク、41a、41b:サイドヨーク、42a、42b:センターヨーク、43a、43b:エンドヨーク、44a、44b、44c、44d:サブヨーク、
51:ボイスコイルモータ、52:矩形ヨーク、53:永久磁石、54:駆動コイル、60:U字形ヨーク、61a、61b:メインヨーク、62a、62b:段差部、63:エンドヨーク、64:段差部、
71:ボイスコイルモータ、72:矩形ヨーク、73a、73b:永久磁石、74:駆動コイル、80a、80b:U字形ヨーク、81a、81b:サイドヨーク、82a、82b:段差部、83a、83b:センターヨーク、84a、84b:エンドヨーク、85a、85b:段差部、
t1、t7:メインヨークの厚さ、t4、t10:サイドヨークの厚さ、t2、t5:サブヨークの厚さ、t3、t6:エンドヨークの厚さ、t8:メインヨークの段差部の厚さ、t11:サイドヨークの段差部の厚さ、t9、t13:エンドヨークの段差部の厚さ、tm1、tm2、tm3、tm4:永久磁石の厚さ
図1
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