(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161143
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】室内環境管理装置、及び、室内環境管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20120101AFI20221014BHJP
【FI】
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065731
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】丹▲羽▼ 健二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 清
(72)【発明者】
【氏名】菊本 悦司
(72)【発明者】
【氏名】太田 望
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】室内環境の快適性と省エネルギーとの両立を実現可能とする室内環境管理装置を提供する。
【解決手段】室内環境管理装置1は、室内空間が仮想的に分割された区画毎に、複数の環境指標値を所定の設定値にそれぞれ調節可能な複数の環境調節装置3を制御して室内環境を管理する。室内環境管理装置1は、グループ情報115として、グループに属する利用者の人数と、グループに適する室内環境を実現する設定値の組合せとをグループ毎に取得するグループ情報取得部121と、複数の環境調節装置をそれぞれ使用したときのエネルギー消費量を区画別及び設定値別に定めるエネルギー消費情報116を環境調節装置3毎に取得するエネルギー消費情報取得部122と、グループ情報115及びエネルギー消費情報116に基づいて、エネルギー消費量が最小となるように、各グループの配置と、各区画の設定値の組合せとを決定する配置決定部122とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間が仮想的に分割された区画毎に、前記室内空間の室内環境を表す複数の環境指標値を所定の設定値にそれぞれ調節可能な複数の環境調節装置を制御して、前記室内環境を管理する室内環境管理装置であって、
前記室内空間を利用する複数の利用者を所定の分類基準で複数のグループに分類したときのグループ情報として、前記グループに属する前記利用者の人数と、前記グループに適する前記室内環境を実現する前記設定値の組合せとを前記グループ毎に取得するグループ情報取得部と、
複数の前記環境調節装置をそれぞれ使用したときのエネルギー消費量を前記区画別及び前記設定値別に定めるエネルギー消費情報を前記環境調節装置毎に取得するエネルギー消費情報取得部と、
前記グループ情報及び前記エネルギー消費情報に基づいて、前記エネルギー消費量が最小となるように、複数の前記区画に対する各前記グループの配置と、複数の前記環境調節装置に対する各前記区画の設定値の組合せとを決定する配置決定部とを備える、
室内環境管理装置。
【請求項2】
前記グループ情報取得部は、
複数の前記利用者が前記室内空間を利用したときの利用実績情報を所定のクラスタリング手法で分類することで前記グループ情報を取得する、
請求項1に記載の室内環境管理装置。
【請求項3】
前記エネルギー消費情報取得部は、
前記室内空間を構成する建物の建物仕様情報と、複数の前記環境調節装置の装置仕様情報と、前記建物の位置における気象情報とを用いたシミュレーション処理に基づいて、前記エネルギー消費情報を取得する、
請求項1又は請求項2に記載の室内環境管理装置。
【請求項4】
前記配置決定部により決定された各前記グループの配置を表示装置に表示させる表示情報を出力する表示情報出力部をさらに備える、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の室内環境管理装置。
【請求項5】
複数の前記環境調節装置は、
前記環境指標値として前記室内空間の温度を調節する空調装置、及び、
前記環境指標値として前記室内空間の照度を調節する照明装置を少なくとも含む、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の室内環境管理装置。
【請求項6】
室内空間が仮想的に分割された区画毎に、前記室内空間の室内環境を表す複数の環境指標値を所定の設定値にそれぞれ調節可能な複数の環境調節装置を制御して、前記室内環境を管理する室内環境管理方法であって、
前記室内空間を利用する複数の利用者を所定の分類基準で複数のグループに分類したときのグループ情報として、前記グループに属する前記利用者の人数と、前記グループに適する前記室内環境を実現する前記設定値の組合せとを前記グループ毎に取得するグループ情報取得工程と、
複数の前記環境調節装置をそれぞれ使用したときのエネルギー消費量を前記区画別及び前記設定値別に定めるエネルギー消費情報を前記環境調節装置毎に取得するエネルギー消費情報取得工程と、
前記グループ情報及び前記エネルギー消費情報に基づいて、前記エネルギー消費量が最小となるように、複数の前記区画に対する各前記グループの配置と、複数の前記環境調節装置に対する各前記区画の設定値の組合せとを決定する配置決定工程とを備える、
室内環境管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内環境管理装置、及び、室内環境管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の利用者が利用する室内空間に対して温度や照度等の室内環境を制御することで快適な室内空間を提供するシステムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、室内空間を分割した制御単位毎に温度及び照度をそれぞれ調節する空調装置及び照明装置を用いて、室内環境を制御する室内環境制御装置が開示されている。特許文献1に開示された室内環境制御装置は、室内空間をカメラで撮影した画像データから制御単位毎の在室者の有無を取得し、在室者有りの制御単位に対する温度及び照度と、在室者無しの制御単位に対する温度及び照度とを変更するように、空調装置及び照明装置をそれぞれ制御する装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された室内環境制御装置は、上記のように、制御単位毎の在室者の有無に応じて、空調装置及び照明装置を制御する。しかしながら、特許文献1に開示された室内環境制御装置では、温度及び照度が、在室者有りの制御単位に対して一律の値に調節されるため、各在室者に適した室内環境を提供することができなかった。また、各在室者に適した室内環境を提供するに際して、快適性の観点だけでなく、省エネルギーの観点についても考慮することで環境負荷やランニングコストの低減を図ることが望まれている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、室内環境の快適性と省エネルギーとの両立を実現可能とする室内環境管理装置、及び、室内環境管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであって、本発明の一実施形態に係る室内環境管理装置は、
室内空間が仮想的に分割された区画毎に、前記室内空間の室内環境を表す複数の環境指標値を所定の設定値にそれぞれ調節可能な複数の環境調節装置を制御して、前記室内環境を管理する室内環境管理装置であって、
前記室内空間を利用する複数の利用者を所定の分類基準で複数のグループに分類したときのグループ情報として、前記グループに属する前記利用者の人数と、前記グループに適する前記室内環境を実現する前記設定値の組合せとを前記グループ毎に取得するグループ情報取得部と、
複数の前記環境調節装置をそれぞれ使用したときのエネルギー消費量を前記区画別及び前記設定値別に定めるエネルギー消費情報を前記環境調節装置毎に取得するエネルギー消費情報取得部と、
前記グループ情報及び前記エネルギー消費情報に基づいて、前記エネルギー消費量が最小となるように、複数の前記区画に対する各前記グループの配置と、複数の前記環境調節装置に対する各前記区画の設定値の組合せとを決定する配置決定部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態に係る室内環境管理装置、及び、室内環境管理方法によれば、グループ情報取得部が、グループ情報として、グループに属する利用者の人数と、グループに適する室内環境を実現する設定値の組合せとをグループ毎に取得し、エネルギー消費情報取得部が、複数の環境調節装置をそれぞれ使用したときのエネルギー消費量を区画別及び設定値別に定めるエネルギー消費情報を環境調節装置毎に取得し、配置決定部が、グループ情報及びエネルギー消費情報に基づいて、エネルギー消費量が最小となるように、複数の区画に対する各グループの配置と、複数の環境調節装置に対する各区画の設定値の組合せとを決定する。
【0009】
そのため、複数の利用者が利用する室内空間の各区画の室内環境指標値は、複数の環境調節装置によりエネルギー消費量の最小化を図りつつ、複数の利用者が分類された各グループに適する室内環境を実現する設定値の組合せに調節される。したがって、室内環境の快適性と省エネルギーとを両立させた状態で複数の利用者に室内空間を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る室内環境管理システム100の一例を示す全体構成図である。
【
図2】建物2の室内空間20の一例を示す概略平面図である。
【
図3】実施形態に係る室内環境管理装置1の一例を示すブロック図である。
【
図4】利用者Uのクラスタリング手法と、グループ情報取得部121が取得したグループ情報115の一例を示す概要説明図である。
【
図5】エネルギー消費情報取得部122が取得したエネルギー消費情報116の一例を示す概要説明図である。
【
図6】配置決定部123が生成した配置情報117の一例を示す概要説明図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る室内環境管理装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る室内環境管理システム100の一例を示す全体構成図である。
図2は、建物2の一例を示す概略平面図である。
【0013】
室内環境管理システム100は、複数の利用者Uが利用する建物2の室内空間20の室内環境を、快適性と省エネルギーとを両立させた状態で管理し、複数の利用者Uに提供するシステムである。なお、
図1及び
図2では、建物2の詳細な構造は省略しているが、建物2は、例えば、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、木造等の任意の工法で建築されている。
【0014】
建物2は、例えば、複数階のフロアで構成され、所定の位置に窓22を有する。室内空間20は、建物2の内部に形成される空間であり、例えば、オープンスペースやシェアリングオフィスとして利用される空間である。そのため、室内空間20は、壁や間仕切り等を極力省略したものであり、椅子、テーブル、ホワイトボード、プロジェクタ等の設備(不図示)がレイアウト変更可能に配置される。
【0015】
室内空間20の室内環境は、例えば、温度、湿度、風速、照度、照明色(色温度)、音(騒音)等の複数の環境指標値により表される。室内空間20の室内環境は、仮想的に分割された区画21毎に管理される。区画21は、室内空間20が、例えば、メッシュ状に分割されたときの各区画21である。
図2には、室内空間20が、15個の区画21(縦に3分割、横に5分割)に分割された場合が図示されており、各区画21には、固有の区画ID(A1~C5)が付与されて管理される。なお、室内空間20を複数の区画21に分割するときの大きさ、形状、分割方法は、上記の例に限られず、適宜変更してもよい。
【0016】
室内環境管理システム100は、その具体的な構成として、室内空間20の室内環境を表す複数の環境指標値を調節する複数の環境調節装置3と、複数の環境調節装置3を制御して室内空間20の室内環境を管理する室内環境管理装置1と、室内空間20の室内環境や利用状況等の各種の情報を利用者Uに表示する情報表示装置4と、各装置間を相互に通信可能に接続するネットワーク5とを備える。
【0017】
環境調節装置3は、室内空間20の区画21毎に、室内環境の環境指標値を所定の設定値にそれぞれ調節可能な装置として構成される。環境調節装置3は、例えば、環境指標値として室内空間20の温度、湿度、風速を調節する空調装置、環境指標値として室内空間20の湿度を調節する調湿装置、環境指標値として室内空間20の風速を調節する換気装置や送風装置、環境指標値として室内空間20の照度、照明色(色温度)を調節する照明装置、環境指標値として室内空間20の照度、照明色(色温度)、音(騒音)を調節するブラインド装置、環境指標値として室内空間20の温度、湿度、風速、音(騒音)を調節する窓自動開閉装置等で構成される。環境調節装置3は、1つの装置にて特定の環境指標値を調節するものでもよいし、複数の環境指標値を調節するものでもよい。本実施形態では、複数の環境調節装置3は、
図1に示すように、室内空間20の温度を調節する空調装置30と、室内空間20の照度を調節する照明装置31で構成される場合について説明する。
【0018】
空調装置30は、
図1に示すように、各区画21に対応する位置に配置された複数の吹出口300及び吸込口(不図示)と、各吹出口300から吹き出す空気の温度、流量、風向等を制御する空調制御装置301とを備える。なお、吹出口300及び吸込口(不図示)が配置される数や位置は、適宜変更してもよく、天井の他に壁や床に配置されていてもよい。また、空調装置30は、任意の空調方式を採用してもよく、躯体蓄熱を利用した空調装置30を採用してもよい。
【0019】
照明装置31は、
図1に示すように、各区画21に対応する位置に配置された複数の照明機器310と、各照明機器310を点灯させたときの照度、点灯色等を制御する照明制御装置311とを備える。なお、照明機器310が配置される数や位置は、適宜変更してもよい。
【0020】
室内環境管理装置1は、複数の環境調節装置3(本実施形態では、空調装置30及び照明装置31)を制御して、室内空間20の室内環境を管理する。室内環境管理装置1は、例えば、サーバやクラウドとして機能する汎用又は専用のコンピュータ等で構成される。なお、室内環境管理装置1の詳細は後述する。
【0021】
情報表示装置4は、例えば、建物2の管理室(遠隔でもよい)等に設置された管理者端末装置40、室内空間20の入口等に設置されたデジタルサイネージ等の看板装置41、利用者Uが所持するスマートフォン、タブレット等の利用者端末装置42等で構成される。情報表示装置4は、入力画面を介して各種の操作入力を受け付けるとともに、表示画面を介して各種の情報を表示する。
【0022】
ネットワーク5は、任意の通信方式を採用すればよく、有線でもよいし無線でもよい。
【0023】
(室内環境管理装置1の構成)
図3は、本発明の実施形態に係る室内環境管理装置1の一例を示すブロック図である。
【0024】
室内環境管理装置1は、キーボード、タッチパネル等により構成される入力部10と、HDD、SDD、メモリ等により構成される記憶部11と、CPU、MPU、GPU等のプロセッサにより構成される制御部12と、ネットワーク5との通信インターフェースである通信部13と、ディスプレイ、スピーカ等により構成される出力部14とを備える。なお、入力部10や出力部14は省略されてもよく、その場合には、情報表示装置4を、入力部10や出力部14として機能させてもよい。
【0025】
記憶部11には、室内環境管理プログラム110、建物仕様情報111、装置仕様情報112、気象情報113、利用者情報114、グループ情報115、エネルギー消費情報116、及び、配置情報117が記憶されている。なお、記憶部11に記憶された上記の各種の情報は、記憶部11に記憶される代わりに、室内環境管理装置1と通信可能な1又は複数の記憶装置に記憶されていてもよい。
【0026】
制御部12は、室内環境管理プログラム110を実行することにより、情報管理部120、グループ情報取得部121、エネルギー消費情報取得部122、配置決定部123、制御情報出力部124、及び、表示情報出力部125として機能する。
【0027】
建物仕様情報111は、建物2の仕様を表す情報として、例えば、室内空間20の間口、奥行、天井高及び断熱性能、窓22の位置及び寸法等を含む。建物仕様情報111は、例えば、管理者端末装置40から入力された建物2の設計データ等から取得される。
【0028】
装置仕様情報112は、複数の環境調節装置3の各々の仕様を表す情報として、例えば、環境調節装置3の装置種類、設置位置及び消費電力等を含む。装置仕様情報112は、例えば、管理者により管理者端末装置40から入力された建物2の設計データ等から取得される。
【0029】
気象情報113は、建物2の位置における気象状況を表す情報として、例えば、外気温度、外気湿度、天候、日射量等を含む。気象情報113は、外部の気象情報提供サービスから取得されてもよいし、建物2に設置された気象観測センサ(例えば、外気温度計、外気湿度計、日射計、日照計、雨量計等)で観測された観測データでもよい。
【0030】
利用者情報114は、利用者Uに関する情報として、例えば、利用者Uの所属組織等の個人情報、利用者Uのスケジュール情報、複数の利用者Uが過去に室内空間20を利用したときの日時や区画21を示す利用実績情報等を含む。各利用者Uには、固有の利用者IDが付与されて、上記の情報が管理される。個人情報及びスケジュール情報は、例えば、利用者Uにより利用者端末装置42から入力されることで取得される。利用実績情報は、例えば、利用者Uの入退室記録、利用者端末装置42の位置検出記録、カメラ画像による人物認識結果等に基づいて取得される。
【0031】
情報管理部120は、上記の建物仕様情報111、装置仕様情報112、気象情報113及び利用者情報114を取得し、記憶部11に記憶する。情報管理部120は、建物仕様情報111及び装置仕様情報112については、例えば、建物完成時や建物改修時のタイミングで取得し、気象情報113及び利用者情報114については、所定の時間が経過する度(例えば、1時間周期、1日周期等)や情報更新時のタイミングで取得すればよい。その際、情報管理部120は、新たに取得した情報に応じて、情報を追加してもよいし、情報を更新してもよい。
【0032】
グループ情報取得部121は、室内空間20を利用する複数の利用者Uを所定の分類基準で複数のグループに分類したときのグループ情報115として、グループGに属する利用者Uの人数と、グループGに適する室内環境を実現する設定値の組合せとをグループG毎に取得する。
【0033】
例えば、グループ情報取得部121は、所定の分類基準として、所定のクラスタリング手法を採用してもよく、記憶部11に記憶された利用者情報114の利用実績情報を所定のクラスタリング手法で分類することでグループ情報115を取得する。このとき、グループ情報取得部121は、利用者情報114の利用実績情報を参照する際、分類対象とする条件として、例えば、曜日や時間帯を定めることで、特定の曜日や時間帯における利用実績情報を抽出し、その特定の曜日や時間帯に利用した利用者Uを複数のグループGに分類したときのグループ情報115を取得するようにしてもよい。この場合、グループ情報取得部121は、室内空間20を、例えば、毎週月曜日9時から12時の時間帯(毎週ではなく、1か月に3回以上のように、所定の割合でもよい)に利用した利用者Uを複数のグループGに分類したときのグループ情報115を取得するようにしてもよい。
【0034】
図4は、利用者Uのクラスタリング手法と、グループ情報取得部121が取得したグループ情報115の一例を示す概要説明図である。クラスタリング手法は、例えば、
図4に示すようなk平均法等の非階層的クラスタリング手法や階層的クラスタリング手法等の任意の手法を採用することが可能である。
【0035】
図4には、グループ情報取得部121が、利用者情報114の使用実績情報から、各利用者Uが過去に室内空間20を利用したときの区画21の場所と、その区画21の温度及び照度とを取得して、クラスタリング処理を実行したときに、グループ情報115として、3つのグループG1~G3に分類された場合が図示されている。
【0036】
第1のグループG1は、10人の利用者Uで構成され、第1のグループG1に適する室内環境の設定値の組合せは、温度24℃、照度500lxである。第2のグループG2は、6人の利用者Uで構成され、第2のグループG2に適する室内環境の設定値の組合せは、温度26℃、照度600lxである。第3のグループG3は、14人の利用者Uで構成され、第3のグループG3に適する室内環境の設定値の組合せは、温度28℃、照度700lxである。
【0037】
なお、グループ情報取得部121は、所定の分類基準として、例えば、各利用者Uが行う作業の目的や内容に応じてグループ情報115を取得してもよい。具体的には、グループ情報取得部121は、記憶部11に記憶された利用者情報114のスケジュール情報を利用し、例えば、各利用者Uが、作業の目的や内容として、執務、会議、休憩等の作業を予定している時間帯を解析することで、各日の時間帯毎にグループ情報115を取得してもよい。
【0038】
エネルギー消費情報取得部122は、複数の環境調節装置3をそれぞれ使用したときのエネルギー消費量を区画21別及び設定値別に定めるエネルギー消費情報116を環境調節装置3毎に取得する。例えば、エネルギー消費情報取得部122は、記憶部11に記憶された建物仕様情報111と、装置仕様情報112と、気象情報113とを用いた所定のシミュレーション処理に基づいて、エネルギー消費情報116を環境調節装置3毎に取得する。
【0039】
具体的には、エネルギー消費情報取得部122は、建物仕様情報111及び気象情報113に基づいて、例えば、伝熱、放熱、蓄熱等の状況を反映させた温熱環境予測モデルを用いるとともに、装置仕様情報112を参照することで、各区画21の温度を設定値に調節するために必要な空調装置30のエネルギー消費量を算出する。また、エネルギー消費情報取得部122は、建物仕様情報111に基づいて、例えば、日光が差し込む範囲等の状況を反映させた視環境予測モデルを用いるとともに、装置仕様情報112を参照することで、各区画21の照度を設定値に調節するために必要な照明装置31のエネルギー消費量を算出する。なお、エネルギー消費量が時間の推移で変化することを考慮する場合には、エネルギー消費情報取得部122は、時間帯別にエネルギー消費量を算出することで、時間帯毎にエネルギー消費情報116を取得する。
【0040】
図5は、エネルギー消費情報取得部122が取得したエネルギー消費情報116の一例を示す概要説明図である。
図5には、室内空間20が15個の区画21(縦に3分割、横に5分割)に分割されたときのエネルギー消費情報116として、空調装置30のエネルギー消費情報116Aと、照明装置31のエネルギー消費情報116Bとが図示されている。また、
図5に示す区画21内の各数値は、例えば、kWh単位のエネルギー消費量を表している。
【0041】
空調装置30のエネルギー消費情報116Aは、エネルギー消費量を区画21別及び設定値別に定める3つのエネルギー消費テーブル116A1~116A3からなる。エネルギー消費テーブル116A1には、各区画21の温度を設定値の24℃に調節するために必要な空調装置30のエネルギー消費量が定められる。エネルギー消費テーブル116A2には、各区画21の温度を設定値の26℃に調節するために必要な空調装置30のエネルギー消費量が定められる。エネルギー消費テーブル116A3には、各区画21の温度を設定値の28℃に調節するために必要な空調装置30のエネルギー消費量が定められる。なお、設定値別のエネルギー消費テーブル116A1~116A3は、
図5に示す例に限られず、例えば、24℃、26℃、28℃以外の設定値に対して定めるものでもよいし、4つ以上の設定値に対して定めるものもよい。
【0042】
照明装置31のエネルギー消費情報116Bは、エネルギー消費量を区画21別及び設定値別に定める3つのエネルギー消費テーブル116B1~116B3からなる。エネルギー消費テーブル116B1には、各区画21の照度を設定値の500lxに調節するために必要な照明装置31のエネルギー消費量が定められる。エネルギー消費テーブル116B2には、各区画21の照度を設定値の600lxに調節するために必要な照明装置31のエネルギー消費量が定められる。エネルギー消費テーブル116B3には、各区画21の照度を設定値の700lxに調節するために必要な照明装置31のエネルギー消費量が定められる。なお、設定値別のエネルギー消費テーブル116B1~116B3は、
図5に示す例に限られず、例えば、500lx、600lx、700lx以外の設定値に対して定めるものでもよいし、4つ以上の設定値に対して定めるものもよい。
【0043】
配置決定部123は、グループ情報115及びエネルギー消費情報116に基づいて、エネルギー消費量が最小となるように、複数の区画21に対する各グループGの配置と、複数の環境調節装置3に対する各区画21の設定値の組合せとを決定し、その決定した情報を含む配置情報117を生成する。
【0044】
配置決定部123は、配置情報117を生成する際、グループ情報115、エネルギー消費情報116、記憶部11に記憶された建物仕様情報111、及び、1つの区画21を利用可能な利用者Uの最大人数(1区画利用最大人数)等を制約条件とし、エネルギー消費量の最小化を目的関数とする所定の最適化手法を採用すればよい。所定の最適化手法としては、例えば、数理計画法や、進化的アルゴリズム等のメタヒューリスティクスな手法を採用することが可能である。なお、制約条件として、例えば、会議専用の区画21を固定してもよいし、目的関数として、エネルギー消費量だけでなく、例えば、利用者Uの快適性や業務効率についても考慮してもよい。また、1区画利用最大人数は、適宜変更してもよい。
【0045】
図6は、配置決定部123が生成した配置情報117の一例を示す概要説明図である。
図6には、15個の区画21(縦に3分割、横に5分割)に対して、1区画利用最大人数を4人としたときの配置情報117が図示されている。
【0046】
第1のグループG1は、10人の利用者Uで構成されるため、区画21の配置として、3つの区画21(A1、A2、A3)が割り当てられるともに、設定値の組合せとして、それら3個の区画21(A1、A2、A3)に、温度24℃、照度500lxが設定される。第2のグループG2は、6人の利用者Uで構成されるため、区画21の配置として、2つの区画21(B4、B5)が割り当てられるともに、設定値の組合せとして、それら2個の区画21(B4、B5)に、温度26℃、照度600lxが設定される。第3のグループG3は、14人の利用者Uで構成されるため、区画21の配置として、4つの区画21(C2、C3、C4、C5)が割り当てられるともに、設定値の組合せとして、それら4個の区画21(C2、C3、C4、C5)に、温度28℃、照度700lxが設定される。
【0047】
制御情報出力部124は、配置決定部123により決定された複数の環境調節装置3に対する各区画21の設定値の組合せに基づいて複数の環境調節装置3をそれぞれ動作させるための制御情報を出力する。制御情報出力部124は、制御情報を、例えば、ネットワーク5を介して複数の環境調節装置3(本実施形態では、空調装置30及び照明装置31)に送信する。制御情報は、いずれかのグループG1~G3が配置された区画21に対しては、上記の各区画21の設定値の組合せに従って環境調節装置3を動作させるような動作指令を含むものであるが、いずれのグループG1~G3も配置されなかった区画21に対しては、環境調節装置3の動作をオフするような動作指令を含むものでもよいし、デフォルトの設定値に従って環境調節装置3を動作させるような動作指令を含むものでもよい。
【0048】
表示情報出力部125は、配置決定部123により決定された複数の区画21に対する各グループGの配置を情報表示装置4に表示させる表示情報を出力する。表示情報出力部125は、表示情報を、例えば、ネットワーク5を介して情報表示装置4に送信する。
【0049】
表示情報は、例えば、
図6に示すように、各グループG1~G3のレイアウトを情報表示装置4の表示画面にて視認可能とする情報であればよく、任意のデータ形式を採用することが可能である。表示情報は、例えば、情報表示装置4にインストールされたウェブブラウザやアプリ用のデータでもよいし、電子メールやSNSのメッセージ等に添付可能な画像形式のデータでもよい。表示情報は、複数の区画21に対する各グループG1~G3の配置の割当だけでなく、複数の環境調節装置3に対する各区画21の設定値の組合せについても表示させるものでもよい。
【0050】
なお、表示情報出力部125は、特定の利用者Uに向けて表示情報を出力してもよい。その場合には、表示情報出力部125は、例えば、特定の利用者Uが所持する利用者端末装置42にネットワーク5を介して表示情報を送信すればよい。また、表示情報は、特定の利用者Uが属するグループGに割り当てられた区画21の位置を特定する情報を表示させるようにしてもよい。これにより、利用者Uは、自分に適した区画21の位置を把握し、その位置に移動して作業することができる。
【0051】
(室内環境管理装置1の動作)
次に、上記構成を有する室内環境管理装置1の動作について説明する。
【0052】
図7は、本発明の実施形態に係る室内環境管理装置1の動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、室内環境管理装置1が、複数の環境調節装置3を制御して室内環境を管理する室内環境管理方法を中心に説明し、室内環境管理方法を実行するために必要な情報(例えば、建物仕様情報111、装置仕様情報112、気象情報113及び利用者情報114)は、情報管理部120により取得されて、記憶部11に記憶されているものとして説明する。
【0053】
室内環境管理装置1は、所定の配置決定条件が満たされると、
図7に示す一連の処理を実行する。なお、所定の配置決定条件は、例えば、1日に1回又は複数回(例えば、9時、12時、15時)のように、定期的に満たされるものでもよいし、所定の時間(例えば、秒単位、分単位、時間単位、日単位等)が経過する度に周期的に満たされるものでもよい。また、所定の配置決定条件は、例えば、管理者端末装置40や室内環境管理装置1の上位装置(不図示)から所定の実行指令を受け付けたときに即時的に満たされるものでもよいし、室内空間20の利用状況が変化したとき(例えば、室内空間20を利用する利用者Uの人数が所定の数だけ変動したとき)に即時的に満たされるものでもよい。
【0054】
まず、ステップS100(グループ情報取得工程)では、グループ情報取得部121が、利用者情報114の利用実績情報に基づいて複数の利用者Uを所定の分類基準(例えば、所定のクラスタリング手法)で複数のグループに分類することで、グループ情報115として、グループGに属する利用者Uの人数と、グループGに適する室内環境を実現する設定値の組合せとをグループG毎に取得する。
【0055】
このとき、グループ情報取得部121は、例えば、配置決定条件が満たされたときの曜日や時間帯に基づいて、利用者情報114の利用実績情報を抽出し、配置決定条件と同一の曜日や時間帯に室内空間20を過去に利用した利用者Uを複数のグループGに分類したときのグループ情報115を取得する。これにより、複数の利用者Uが過去に室内空間20を利用したときの利用実績の傾向から現在又は直近の室内空間20の利用状況が推定された上で複数のグループGに分類されるので、利用者Uの利用状況に合わせて室内空間を適切に管理することができる。ここでは、
図4に示すグループ情報115が取得されたものとする。
【0056】
次に、ステップS110(エネルギー消費情報取得工程)では、エネルギー消費情報取得部122が、空調装置30を使用して各区画21を所定の設定値(24℃、26℃、28℃)に調節するためのエネルギー消費情報116Aと、照明装置31を使用して各区画21を所定の設定値(500lx、600lx、700lx)に調節するためのエネルギー消費情報116Bとを取得する。
【0057】
例えば、エネルギー消費情報取得部122は、配置決定条件が満たされた時点における気象情報113を反映させた温熱環境予測モデル及び視環境予測モデルを用いてシミュレーションを実行することにより、
図5に示すように、空調装置30のエネルギー消費情報116Aと、照明装置31のエネルギー消費情報116Bとを取得する。これにより、エネルギー消費情報116(116A、116B)は、時々刻々と変化する要因が考慮されて算出されるので、より正確なエネルギー消費情報116を動的に取得することができる。
【0058】
次に、ステップS120(配置決定工程)では、配置決定部123が、グループ情報115及びエネルギー消費情報116に基づいて、エネルギー消費量が最小となるように、複数の区画21に対する各グループGの配置と、複数の環境調節装置3に対する各区画21の設定値の組合せとを決定し、その決定した情報を含む配置情報117を生成する。ここでは、
図6に示す配置情報117が取得されたものとする。
【0059】
次に、ステップS130(制御情報出力工程)では、制御情報出力部124が、ステップS120において配置決定部123により決定された複数の環境調節装置3に対する各区画21の設定値の組合せに基づいて複数の環境調節装置3をそれぞれ動作させるための制御情報を出力する。その結果、空調装置30及び照明装置31は、制御情報に従って動作することにより、室内空間20の温度及び照度は、各区画21の設定値の組合せ通りに調節される。
【0060】
次に、ステップS140(表示情報出力工程)では、表示情報出力部125が、ステップS120において配置決定部123により決定された複数の区画21に対する各グループGの配置を情報表示装置4に表示させる表示情報を出力する。その結果、表示情報は、例えば、情報表示装置4の表示画面に、
図6に示すような各グループG1~G3のレイアウトとして表示されて、利用者Uや建物2の管理者に視認される。
【0061】
そして、
図7に示す一連の処理が終了する。なお、各ステップは、動作に影響がない範囲で入れ替えたり、省略したりしてもよく、例えば、ステップS130、S140を入れ替えてもよい。
【0062】
以上のようにして、本実施形態に係る室内環境管理装置1によれば、グループ情報取得部121が、グループ情報115として、グループGに属する利用者Uの人数と、グループGに適する室内環境を実現する設定値の組合せとをグループG毎に取得し、エネルギー消費情報取得部122が、複数の環境調節装置3をそれぞれ使用したときのエネルギー消費量を区画21別及び設定値別に定めるエネルギー消費情報116を環境調節装置3毎に取得し、配置決定部123が、グループ情報115及びエネルギー消費情報116に基づいて、エネルギー消費量が最小となるように、複数の区画21に対する各グループGの配置と、複数の環境調節装置3に対する各区画21の設定値の組合せとを決定する。
【0063】
そのため、室内空間20の各区画21の室内環境指標値は、複数の環境調節装置3によりエネルギー消費量の最小化を図りつつ、複数の利用者Uが分類された各グループGに適する室内環境を実現するように調節される。したがって、室内環境の快適性と省エネルギーとを両立させた状態で複数の利用者Uに室内空間20を提供することができる。
【0064】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0065】
上記実施形態では、室内環境管理プログラム110は、記憶部11に記憶されたものとして説明したが、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。また、室内環境管理プログラム110は、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…室内環境管理装置、
2…建物、3…環境調節装置、4…情報表示装置、5…ネットワーク、
10…入力部、11…記憶部、12…制御部、13…通信部、14…出力部、
20…室内空間、21…区画、22…窓、30…空調装置、31…照明装置、
40…管理者端末装置、41…看板装置、42…利用者端末装置、
100…室内環境管理システム、
110…室内環境管理プログラム、111…建物仕様情報、112…装置仕様情報、
113…気象情報、114…利用者情報、115…グループ情報、
116、116A、116B…エネルギー消費情報、
116A1~116A3、116B1~116B3…エネルギー消費テーブル、
117…配置情報、120…情報管理部、121…グループ情報取得部、
122…エネルギー消費情報取得部、123…配置決定部、
124…制御情報出力部、125…表示情報出力部、
300…吹出口、301…空調制御装置、310…照明機器、311…照明制御装置、
G、G1~G3…グループ、U…利用者