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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161162
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20221014BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20221014BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065760
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】515185924
【氏名又は名称】株式会社プロギア
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】中原 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】松田 誠一
(72)【発明者】
【氏名】三枝 宏
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH01
2C002MM01
2C002MM02
2C002MM04
(57)【要約】
【課題】反発係数の低下量が少なく高初速エリアの拡大を図る上で有利なゴルフクラブヘッドを提供すること。
【解決手段】フェース裏面14Bに接触する接触部34と、接触部34から互いに離れる方向に延在する少なくとも2つの脚部36、38とを有する接触部材32を設け、上脚部36および下脚部38は、打球時のフェース部14の変形をほぼ阻害しない大きさの力で接触部34をフェース裏面14Bに常時接触させ、かつ、フェース部14が変形する際に接触部34がフェース裏面14Bに常時接触しつつフェース裏面14Bに対して変位できるように接触部34を支持している。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェース部、クラウン部、ソール部、サイド部を含むヘッド本体を備え、それらフェース部とクラウン部とソール部とサイド部とで囲まれた内部が中空部であるゴルフクラブヘッドであって、
前記フェース部のフェース裏面に接触する接触部と、
前記接触部から互いに離れる方向に延在する少なくとも2つの脚部とを有する接触部材を備え、
前記各脚部の先端は、前記フェース部、前記クラウン部、前記ソール部、前記サイド部の何れかの箇所または異なった箇所に取り付けられ、
前記脚部は、打球時のフェース部の変形をほぼ阻害しない大きさの力で前記接触部を前記フェース裏面に常時接触させ、かつ、前記フェース部が変形する際に前記接触部が前記フェース裏面に常時接触しつつ前記フェース裏面に対して変位できるように前記接触部を支持している、
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記接触部の肉厚は、前記脚部の肉厚よりも大きな寸法で形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記接触部は、前記フェース裏面に接触する本体と、前記本体を支持すると共に前記脚部に接続される支持体とを備え、
前記本体と前記支持体とが異なる材料で形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
打球時における前記接触部のトウヒール方向の変位量は、打球時における前記接触部のクラウンソール方向に沿った変位量よりも大である、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において、フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース中心基準断面とし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ方向に20mm離間した平面を第1平面とし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール方向に20mm離間した平面を第2平面とし、
前記水平面と平行し前記中心点から前記クラウン部方向に15mm離間した平面を第3平面とし、
前記水平面と平行し前記中心点から前記ソール部方向に15mm離間した平面を第4平面としたとき、
前記接触部は、該接触部の中心点が前記第1平面と前記第2平面と前記第3平面と前記第4平面で区画された範囲内で前記フェース裏面に当接し、
前記接触部が前記フェース裏面に当接する面積は3mm以上400mm以下であり、
前記接触部が前記フェース裏面に当接している前記当接部の部分の肉厚Δt2は、1mm以上7mm以下である、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記接触部が当接する前記フェース裏面の部分に対応する前記フェース部の肉厚を肉厚Δt1とし、
前記接触部が前記フェース裏面に接触している前記接触部の部分の肉厚を肉厚Δt2としたとき、以下の式(1)が満たされる、
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項記載のゴルフクラブヘッド。
0.5≦Δt1/Δt2≦2.0 (1)
【請求項7】
前記接触部と前記フェース裏面との間に挟まれ前記接触部と一体に変位するエラストマーまたは合成樹脂材料からなる中間部材が設けられ、
前記接触部の前記フェース裏面に対する接触は前記中間部材を介してなされ、
前記中間部材の肉厚は、0.5mm以上5.0mm以下であり、
前記中間部材の弾性率は、1GPa以上50GPa以下である、
ことを特徴とする請求項1、2、4、5、6の何れか1項記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記中間部材は、球状を呈し、
前記接触部は、前記中間部材を支持する球状の湾曲面を有している、
ことを特徴とする請求項7記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記フェース部、前記クラウン部、前記ソール部、前記サイド部の何れかに対する前記脚部の先端の取り付けは、溶接、接着、ろう付け、ねじ止めの何れかによってなされている、
ことを特徴とする請求項1から8の何れか1項記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記接触部材は、金属材料、繊維強化樹脂材料、合成樹脂材料、エラストマーの何れかの材料で形成されている、
ことを特徴とする請求項1から9の何れか1項記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
前記接触部から前記各脚部は、前記フェース裏面の法線に対して斜めに延在している、
ことを特徴とする請求項1から10の何れか1項記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
前記少なくとも2つの脚部は、前記接触部の互いに離れた箇所からそれぞれ延在している、
ことを特徴とする請求項1から11の何れか1項記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ソール部に取り付けられた支持部と、支持部の端部から起立されフェース裏面に当接する作用部を備える弾性板を設けたゴルフクラブヘッドが提案されている(特許文献1参照)。
このゴルフクラブヘッドでは、打球時のフェース部のたわみに追従して変形する弾性板の弾性を利用して飛距離の向上を図ろうとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-84325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、打球時にフェース部がフェースバック方向へたわむように変形すると、フェース裏面に当接した弾性板の弾性によりフェース部の変形(たわみ)が阻害される。
このようにフェース部の変形量(たわみ量)が低下すると、反発係数が低下するので飛距離も低下し、したがって、高初速エリアも狭くなることが懸念される。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、反発係数の低下量が少なく高初速エリアの拡大を図る上で有利なゴルフクラブヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、フェース部、クラウン部、ソール部、サイド部を含むヘッド本体を備え、それらフェース部とクラウン部とソール部とサイド部とで囲まれた内部が中空部であるゴルフクラブヘッドであって、前記フェース部のフェース裏面に接触する接触部と、前記接触部から互いに離れる方向に延在する少なくとも2つの脚部とを有する接触部材を備え、前記各脚部の先端は、前記フェース部、前記クラウン部、前記ソール部、前記サイド部の何れかの箇所または異なった箇所に取り付けられ、前記脚部は、打球時のフェース部の変形をほぼ阻害しない大きさの力で前記接触部を前記フェース裏面に常時接触させ、かつ、前記フェース部が変形する際に前記接触部が前記フェース裏面に常時接触しつつ前記フェース裏面に対して変位できるように前記接触部を支持していることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記接触部の肉厚は、前記脚部の肉厚よりも大きな寸法で形成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記接触部は、前記フェース裏面に接触する本体と、前記本体を支持すると共に前記脚部に接続される支持体とを備え、前記本体と前記支持体とが異なる材料で形成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、打球時における前記接触部のトウヒール方向の変位量は、打球時における前記接触部のクラウンソール方向に沿った変位量よりも大であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において、フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース中心基準断面とし、前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ方向に20mm離間した平面を第1平面とし、前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール方向に20mm離間した平面を第2平面とし、前記水平面と平行し前記中心点から前記クラウン部方向に15mm離間した平面を第3平面とし、前記水平面と平行し前記中心点から前記ソール部方向に15mm離間した平面を第4平面としたとき、前記接触部は、該接触部の中心点が前記第1平面と前記第2平面と前記第3平面と前記第4平面で区画された範囲内で前記フェース裏面に当接し、前記接触部が前記フェース裏面に当接する面積は3mm以上400mm以下であり、前記接触部が前記フェース裏面に当接している前記当接部の部分の肉厚Δt2は、1mm以上7mm以下であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記接触部が当接する前記フェース裏面の部分に対応する前記フェース部の肉厚を肉厚Δt1とし、前記接触部が前記フェース裏面に接触している前記接触部の部分の肉厚を肉厚Δt2としたとき、以下の式(1)が満たされることを特徴とする。
0.5≦Δt1/Δt2≦2.0 (1)
また、本発明の一実施の形態は、前記接触部と前記フェース裏面との間に挟まれ前記接触部と一体に変位するエラストマーまたは合成樹脂材料からなる中間部材が設けられ、前記接触部の前記フェース裏面に対する接触は前記中間部材を介してなされ、前記中間部材の肉厚は、0.5mm以上5.0mm以下であり、前記中間部材の弾性率は、1GPa以上50GPa以下であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記中間部材は、球状を呈し、前記接触部は、前記中間部材を支持する球状の湾曲面を有していることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記フェース部、前記クラウン部、前記ソール部、前記サイド部の何れかに対する前記脚部の先端の取り付けは、溶接、接着、ろう付け、ねじ止めの何れかによってなされていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記接触部材は、金属材料、繊維強化樹脂材料、合成樹脂材料、エラストマーの何れかの材料で形成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記接触部から前記各脚部は、前記フェース裏面の法線に対して斜めに延在していることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記少なくとも2つの脚部は、前記接触部の互いに離れた箇所からそれぞれ延在していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、打球時におけるフェース部の変形を阻害する力をフェース部にかけておらず、打球時に接触部はフェース裏面に接触しつつ変位するようにしたので、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを拡大する上で有利となり、また、フェース裏面に接触部が接触していることで、打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる。さらに、CT値を低下させる方向に調整することが可能となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、接触部の肉厚は、脚部の肉厚よりも大きな寸法で形成されているため、フェース部が変形した際に接触部のフェース裏面に対する接触を確実に維持しつつ、脚部の変形により接触部の変位を確保することができるため、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ、打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる。さらに、CT値の調整を行なう上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、本体を振動が減衰しやすい材料で形成する一方、支持体を耐久性の高い金属材料で構成することにより、打球時のフェース部の振動を減衰させることができ、打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる。さらに、振動がCT値に与える影響を抑制する上で有利となり、CT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、打球時における前記接触部のトウヒール方向の変位量は、打球時における前記接触部のクラウンソール方向に沿った変位量よりも大としたので、高初速エリアをトウヒール方向に広く確保する上で有利となる。
また、接触部の中心点が、第1平面と第2平面と第3平面と第4平面で区画された範囲内でフェース裏面に当接するようにすると、反発係数の低下量が少なく、打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる。さらに、実際に使用されるフェース部の部分のCT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
この場合、当接面がフェース裏面に当接する面積を3mm以上400mm以下とすると、CT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
また、接触部がフェース裏面に当接している接触部の部分の肉厚Δt2を1mm以上7mm以下とすると、反発係数の低下量が少なく、打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる。さらに、CT値の調整を効率的に行なう上で有利である。
また、接触部が当接するフェース裏面の部分に対応するフェース部の肉厚を肉厚Δt1とし、接触部がフェース裏面に当接している接触部の部分の肉厚を肉厚Δt2としたとき、以下の式(1)が満たされるようにすると、CT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
0.5≦Δt1/Δt2≦2.0 (1)
また、接触部とフェース裏面との間に挟まれ接触部と一体に変位するエラストマーまたは合成樹脂材料からなる中間部材を設けると、エラストマーまたは合成樹脂材料によって打球時のフェース部の振動を減衰させることができ、反発係数の低下量が少なく、打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる。さらに、振動がCT値に与える影響を抑制する上で有利となり、CT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
この場合、中間部材の肉厚を0.5mm以上5.0mm以下とすると、CT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
また、中間部材の弾性率を、1GPa以上50GPa以下とすると、CT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
また、中間部材を球状とすると、接触部が球状の中間部材を介してフェース裏面に接触しつつフェース面に沿って変位しやすくなり、高初速エリアを拡大する上でより有利となる。
また、フェース部、クラウン部、ソール部、サイド部の何れかに対する脚部の先端の取り付けは、溶接、接着、ろう付け、ねじ止めの何れかによって行なうことができる。
また、接触部材は、金属材料、繊維強化樹脂材料、合成樹脂材料、エラストマーの何れかの材料で形成することができる。
また、接触部から脚部は、フェース裏面の法線に対して斜めに延在しているため、打球時にフェース部が変形した際に、接触部のフェース裏面に対する接触を確実に維持しつつ、脚部の変形により接触部の変位を確保することができ、高初速エリアを確保しつつCT値の調整を行なう上で有利となる。
また、少なくとも2つの脚部を、接触部の互いに離れた箇所からそれぞれ延在させると、接触部を安定した状態で支持でき、フェース部が変形した際、フェース裏面に接触させつつ変位させる上で有利となり、高初速エリアを確保しつつCT値の調整を行なう上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態に係るゴルフクラブヘッドをフェース面の前方から見た正面図である。
図2図1のA矢視図である。
図3図1のB矢視図である。
図4図3のC矢視図である。
図5】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第1の説明図である。
図6】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第2の説明図である。
図7】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第3の説明図である。
図8】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第4の説明図である。
図9】ゴルフクラブヘッドの重心点G0とフェース面上重心点FGとの関係を示すゴルフクラブヘッドの断面図である。
図10】フェース面の輪郭線Iの定義を説明するゴルフクラブヘッドの正面図である。
図11】フェース面の輪郭線Iの定義を説明するゴルフクラブヘッドの断面図である。
図12】フェース面の中心点Pcの定義を説明するゴルフクラブヘッドの正面図である。
図13】(A)はヘッド本体とヘッド本体に設けられた接触部材を図1の平面Xで破断したフェース中心基準断面Pfcの断面図であり、フェース部の下部、ソール部およびクラウン部の前部を描いており、(B)は接触部材の本体と支持体とが異なる材料で構成された第1の変形例を示す同断面図である。
図14】(A)は接触部材の斜視図、(B)は同平面図、(C)は同下面図、(D)はトウヒール方向の一方から見た同側面図、(E)は同正面図、(F)はトウヒール方向の他方から見た同側面図である。
図15】接触部材がヘッド本体部材の開口に組み付けられた状態を示す斜視図である。
図16】フェース部材の斜視図である。
図17】ヘッド本体部材の開口に接触部材およびフェース部材が溶接された状態を示す斜視図である。
図18】ゴルフクラブヘッドのトウヒール方向の位置と、その位置で打球した場合のボール初速との関係を模式的に示す線図である。
図19】ゴルフクラブヘッドの第2の変形例を示す分解斜視図である。
図20】ゴルフクラブヘッドの第3の変形例を示し、(A)はゴルフクラブヘッドの分解斜視図、(B)は接触部材が取り付けられたヘッド本体部材の正面図、(C)は接触部材が取り付けられたヘッド本体部材の斜視図である。
図21】ゴルフクラブヘッドの第4の変形例を示す分解斜視図である。
図22】条件1における実験例の評価結果を示す図である。
図23】条件2における実験例の評価結果を示す図である。
図24】条件3における実験例の評価結果を示す図である。
図25】条件4における実験例の評価結果を示す図である。
図26】条件5における実験例の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
次に本発明の実施の形態について説明する。
図1図5に示すように、本実施の形態において、ゴルフクラブヘッド10は、中空のウッド型ゴルフクラブヘッド(ドライバー)であり、ヘッド本体12と、接触部材32とを含んで構成されている。
ヘッド本体12は、主に金属材料により構成される。
前記金属材料としては、例えばステンレス鋼、マルエージング鋼、純チタン、チタン合金又はアルミニウム合金等の1種又は2種以上が用いられる。
ヘッド本体12は、フェース部14と、クラウン部16と、ソール部18と、サイド部20とを備えている。
図13に示すように、ヘッド本体12は、それらフェース部14とクラウン部16とソール部18とサイド部20とで囲まれた内部が中空部28とされた中空構造を呈している。
フェース部14は、上下の高さを有して左右に延在している。
クラウン部16は、フェース部14よりも小さい肉厚でフェース部14の上部から後方に延在している。
例えば、クラウン部16の肉厚は、0.4mm-1.2mmであり、フェース部14の肉厚は、2.0mm-4.5mmであり、ソール部18の肉厚は、0.6mm-1.5mmである。
図13(A)に示すように、フェース部14の外側に露出する表面がボールを打撃するフェース面14Aであり、フェース部14の中空部28に面した裏面がフェース裏面14Bとなっている。
クラウン部16の外側に露出する表面がクラウン面16Aであり、クラウン部16の中空部28に面した裏面がクラウン裏面16Bである。
図1に示すように、クラウン部16には、フェース面14A側でかつヒール24寄りの位置にシャフトSに接続するホーゼル30が設けられ、ホーゼル30にシャフトSが接続されることでゴルフクラブ100が構成される。
図13(A)に示すように、ソール部18は、フェース部14の下部から後方に延在している。
ソール部18の外側に露出する表面がソール面18Aであり、ソール部18の中空部28に面した裏面がソール裏面18Bである。
図1図2に示すように、サイド部20は、クラウン部16とソール部18の間でフェース部14のトウ22側縁とヒール24側縁との間をフェースバック26を通って延在している。
図2に示すように、サイド部20の外側に露出する表面がサイド面20Aであり、図13(A)に示すように、サイド部20の中空部28に面した裏面がサイド裏面20Bである。
図中、符号19はリーディングエッジを示す。
【0009】
(フェース面14Aの中心点Pc)
次に、接触部材32について説明する前に、フェース面14Aの中心点Pcの規定方法について説明する。
フェース面14Aの中心点Pcは、フェース面14Aの幾何学的中心であり、中心点Pcの規定方法としては以下に例示する第1の規定方法、第2の規定方法を含め従来公知のさまざまな方法が採用可能である。
【0010】
[A]フェース面14Aの中心点Pcの第1の規定方法:
フェース面14Aと他のゴルフクラブヘッド10の部分との境目が明確である場合、言い換えると、フェース面14Aの周縁が稜線によって特定される場合における中心点Pcの規定方法である。この場合はフェース面14Aが明瞭に定義されることになる。図5図8はフェース面14Aの中心点Pcの規定方法を示す説明図である。
【0011】
(1)まず、図5に示すように、ライ角およびフェース角が規定値となるように水平面HP上にゴルフクラブヘッド10を載置する。このときのゴルフクラブヘッド10の状態を基準状態とする。なお、ライ角およびフェース角の設定値は、例えば製品カタログに記載された値である。
【0012】
(2)次にクラウン部16及びソール部18を結ぶ方向における仮中心点c0を求める。
すなわち、図5に示すように、トウ22およびヒール24を結ぶ水平面HPと平行な線(以下水平線という)の概略中心点と交差する垂線f0を引く。
この垂線f0とフェース面14Aの上縁とが交差するa0点と、垂線f0とフェース面14Aの下縁とが交差するb0点の中点を仮中心点c0とする。
【0013】
(3)次に図6に示すように仮中心点c0を通る水平線g0を引く。
(4)次に図7に示すように水平線g0とフェース面14Aのトウ22側の縁とが交差するd0点と、水平線g0とフェース面14Aのヒール24側の縁とが交差するe0点の中点を仮中心点c1とする。
【0014】
(5)次に図8に示すように仮中心点c1を通る垂線f1を引き、この垂線f1とフェース面14Aの上縁とが交差するa1点と、垂線f1とフェース面14Aの下縁とが交差するb1点の中点を仮中心点c2とする。
ここで、仮中心点c1とc2とが合致したならばその点をフェース面14Aの中心点Pcとして規定する。
仮中心点c1とc2が合致しなければ、(2)乃至(5)の手順を繰り返す。
なお、フェース面14Aは曲面を呈しているため、水平線g0の中点、垂線f0、f1の中点を求める場合の水平線g0の長さ、垂線f0、f1の長さはフェース面14Aの曲面に沿った長さを用いるものとする。
そして、フェースセンターラインCLは、中心点Pcを通りかつトウヒール方向と直交する方向に延在する直線で定義される。
【0015】
[B]フェース面14Aの中心点Pcの第2の規定方法:
次に、フェース面14Aの周縁と他のゴルフクラブヘッド10の部分との間が曲面で接続されておりフェース面14Aが明瞭に定義できない場合の中心点Pcの定義を説明する。
【0016】
図9に示すように、ゴルフクラブヘッド10は中空であり、符号G0はゴルフクラブヘッド10の重心点を示し、符号Lpは重心点G0とフェース面上重心点FGとを結ぶ直線であり、言い換えると、直線Lpは重心点G0を通るフェース面14Aの垂線である。
すなわち、ゴルフクラブヘッド10の重心点G0をフェース面14Aに投影した点がフェース面上重心点FGである。
ここで、図10に示すように、重心点G0とフェース面上重心点FGとを結ぶ直線Lpを含む多数の平面H1、H2、H3、…、Hnを考える。
【0017】
ゴルフクラブヘッド10を各平面H1、H2、H3、…、Hnに沿って破断したときの断面において、図11に示されるように、ゴルフクラブヘッド10の外面の曲率半径r0を測定する。
曲率半径r0の測定に際して、フェース面14A上のフェースライン、パンチマーク等が無いものとして扱う。
曲率半径r0は、フェース面14Aの中心点Pcから外方向(図11における上方向、下方向)に向かって連続的に測定される。
そして、測定において曲率半径r0が最初に所定の値以下となる部分をフェース面14Aの周縁を表わす輪郭線Iとして定義する。
所定の値は例えば200mmである。
多数の平面H1、H2、H3、…、Hnに基づいて決定された輪郭線Iによって囲まれた領域が、図10図11に示すように、フェース面14Aとして定義される。
【0018】
次に、図12に示すように、ライ角およびフェース角が規定値となるように水平な地面上(水平面HP)にゴルフクラブヘッド10を載置する。
直線LTは、フェース面14Aのトウ22側点PTを通過して鉛直方向に延在する。
直線LHは、フェース面14Aのヒール24側点PHを通過して鉛直方向に延在する。
直線LCは、直線LTおよび直線LHと平行である。直線LCと直線LTとの距離は、直線LCと直線LHとの距離と等しい。
符号Puは、フェース面14Aの上側点を示し、符号Pdはフェース面14Aの下側点である。上側点Puおよび下側点Pdは、いずれも直線LCと輪郭線Iとの交点である。
中心点Pcは、上側点Puと下側点Pdとを結ぶ線分の中点で定義される。
【0019】
次に、ゴルフクラブヘッド10の各部の規定について詳細に説明する。
図1図5に示すように、ゴルフクラブヘッド10を水平面HPに対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態とする。なお、以下では、ゴルフクラブヘッド10の基準状態を単に「基準状態」という。
図1図13(A)に示すように、基準状態において、フェース面14Aの中心点Pcを通る法線を含みかつ水平面HPと直交する平面Xでヘッド本体12を破断した断面をフェース中心基準断面Pfcとする。言い換えると、フェース中心基準断面Pfcは、基準状態において、フェースセンターラインCLを含みかつ水平面HPと直交する平面Xでヘッド本体12を破断した断面である。
また、フェース中心基準断面Pfcと平行な任意の平面でヘッド本体12を破断した断面をフェース基準断面Pfとする。したがって、フェース基準断面Pfはフェース中心基準断面Pfcを含む。
【0020】
(接触部材32)
次に接触部材32について説明する。
なお、以下では、接触部材32として第1接触部材32A-第5接触部材32Eの5つの形態について個別に説明するが、それら各接触部材を総称して接触部材32という場合がある。
図13(A)、図14(A)-(F)に示すように、第1接触部材32Aは、中空部28内に設けられてヘッド本体12に取り付けられ、接触部34と、少なくとも2つ以上設けられた脚部とを有しており、本実施の形態では、弾性変形可能な2つの脚部36、38を有している。
本実施の形態では、第1接触部材32Aはチタンなどの金属材料で形成されているが、接触部材32は、金属材料、繊維強化樹脂材料、合成樹脂材料、エラストマーの何れかの材料で形成することができる。
なお、接触部34と脚部36、38とをそれぞれ別の材料で形成してもよいが、本実施の形態のように同一の材料で形成すると、簡単に確実に製作でき、コストダウンを図る上で有利となる。
接触部34は、フェース裏面14Bに接触する箇所である。
図14(A)-(F)に示すように、本実施の形態では、接触部34は、正面から見てトウヒール方向に長辺を合致させたほぼ長方形の板状を呈しており、フェース裏面14Bに接触するほぼ長方形状の接触面3402を有している。
接触部34の肉厚は各脚部36、38の肉厚よりも大きな寸法で形成されている。
【0021】
各脚部36、38は、接触部34の互いに離れた箇所からそれぞれ離れる方向に延在しており、詳細には、接触部34を構成する一対の長辺からそれぞれ互いに離れる方向に延在している。
なお、各脚部36、38は、接触部34の同一の箇所からそれぞれ離れる方向に延在させてもよいが、本実施の形態のように、接触部34の互いに離れた箇所からそれぞれ離れる方向に延在させると、接触部34を安定した状態で支持でき、後述するように、フェース部14が変形した際、フェース裏面14Bに接触させつつ変位させる上で有利となる。
各脚部36、38の先端は、フェース部14、クラウン部16、ソール部18、サイド部20の何れかの箇所または異なった箇所に取り付けられる。
本実施の形態では、図13(A)に示すように、2つの脚部のうち一方の脚部36の先端はフェース部14のうちトウヒール方向のほぼ中央でクラウン部16寄りの箇所に溶接により接合され、他方の脚部38の先端はフェース部14のうちトウヒール方向のほぼ中央でソール部18寄りの箇所に溶接により接合されている。
なお、接触部材32のヘッド本体12への取り付け方法については後述する。
【0022】
図14(D)に示すように、各脚部36、38は、接触部34を構成する一対の長辺からそれぞれ互いに離れる方向に延在しており、言い換えると、接触部34の上部および下部にそれぞれ設けられた上脚部36および下脚部38で構成されている。
上脚部36は、接触部34の上部から上方(クラウン部16方向)へ向かうにつれてフェースバック方向に傾斜する上傾斜部3602と、上傾斜部3602の上端からフェース部14に向かって屈曲された上屈曲部3604と、上屈曲部3604の前端から上方に屈曲された上係合部3606とを備えている。
下脚部38は、接触部34の下部から下方(ソール部18方向)へ向かうにつれてフェースバック方向に傾斜する下傾斜部3802と、下傾斜部3802の下端からフェース部14に向かって屈曲された下屈曲部3804と、下屈曲部3804の前端から下方に屈曲された下係合部3806とを備えている。
したがって、接触部34から上脚部36および下脚部38は、フェース裏面14Bの法線に対して斜めに延在している。
【0023】
ここで、第1接触部材32Aのヘッド本体12への取り付け方法の一例について説明する。
図15図16に示すように、フェース部14は、ヘッド本体部材40とフェース部材42とを含んで構成されている。
フェース部14には、開口4002が形成されており、ヘッド本体部材40は、フェース部14から開口4002を除いた箇所である。
フェース部材42は、開口4002を閉塞する部材である。
したがって、フェース部14のフェース面14Aは、フェース部材42で構成される部分と、ヘッド本体部材40の開口4002の周囲の部分で構成される部分とを含んで構成される。
このようなヘッド本体部材40とフェース部材42を用意する。
図15に示すように、第1接触部材32Aは、接触面3402を開口4002内でヘッド本体部材40の前方に向けると共に、上係合部3606および下係合部3806を開口4002の上側のヘッド本体部材40の縁部および下側のヘッド本体部材40の縁部に係合させた状態で、上係合部3606および下係合部3806をヘッド本体部材40の各縁部に点溶接することで、第1接触部材32Aがヘッド本体部材40に組み付けられる。
次に、フェース部材42で開口4002を閉塞する。
図16に示すように、上係合部3606および下係合部3806に対応するフェース部材42の上下の縁部には、それぞれ上係合部3606および下係合部3806に円滑に位置決めさせて係合させるため、上係合部3606および下係合部3806と係合する上凹部4202および下凹部4204が形成されている。
図17に示すように、第1接触部材32Aがヘッド本体部材40に組み付けられた状態でフェース部材42によって開口4002を閉塞し、上係合部3606および下係合部3806と上凹部4202および下凹部4204とをそれぞれ嵌合させた状態とする。
このとき、フェース部材42側のフェース面14Aを構成する部分を約1mm程度、ヘッド本体部材40の開口4002の周囲のフェース面14Aを構成する部分に対して浮き上がる状態とし、フェース部材42のフェース面14Aを構成する部分から力をかけて、フェース部材42のフェース面14Aを構成する部分とヘッド本体部材40のフェース面14Aを構成する部分とを面一にした状態でスポット溶接を10点程度行う。
このことで、接触部34は、フェース裏面14Bに当たって応力が発生している状態になり、言い換えると、接触部34はテンションがかかってフェース裏面14Bに接触している状態となる。
そして、このときの応力(テンション)は、打球時のフェース部14の変形をほぼ阻害しない大きさの力である。
そして、フェース部材42の縁部と開口4002の縁部とを全周にわたって溶接(プラズマやレーザー溶接)し、フェース部材42をヘッド本体部材40に一体的に接合し、これによりフェース部14が形成される。
次いで、溶接によりフェース面14Aに生じたビードを研磨により除去することで凹凸の無いなめらかなフェース面14Aが形成され、ヘッド本体12が完成する。
【0024】
この結果、図13(A)に示すように、第1接触部材32Aの上脚部36および下脚部38の先端(上係合部3606および下係合部3806)がフェース部14に取り付けられ、接触部34(接触面3402)がフェース裏面14Bに接触した状態で、接触部34が上脚部36および下脚部38によって支持される。
すなわち、上脚部36および下脚部38は、打球時のフェース部14の変形をほぼ阻害しない大きさの力で接触部34(接触面3402)をフェース裏面14Bに常時接触させ、かつ、フェース部14が変形する際に接触部34(接触面3402)がフェース裏面14Bに常時接触しつつフェース裏面14Bに対して変位できるように接触部34を支持している。
言い換えると、接触部34がフェース裏面14Bに沿って接触しつつ移動するように脚部36、38で支持されており、打球によりフェース部14が変形した際、接触部34の少なくとも一部は、フェース裏面14Bに接触しつつフェース裏面14Bに沿って移動し、フェース部14が当初の形状に復帰した際、接触部34もフェース裏面14Bに沿って接触しつつ移動して当初の位置に復帰する。
なお、本明細書において上脚部36および下脚部38は、打球時のフェース部14の変形をほぼ阻害しない大きさの力で接触部34をフェース裏面14Bに常時接触させの文言中の打球時のフェース部14の変形をほぼ阻害しない大きさの力とは、打球時、フェース裏面14Bに接触する接触部34が設けられていない場合と同様にフェース部14が接触部34による影響をほぼ受けることなく変形できる大きさの力である。
詳細には、打球時にフェース部14が変形するには、上脚部36と下脚部38とで付勢された接触部34を移動させる必要があるが、打球時のフェース部14の変形をほぼ阻害しない大きさの力とは、打球時にフェース部14が変形する力に比べて、上脚部36と下脚部38とで付勢された接触部34をフェース部14の変形に追従させて移動させる力が小さく、打球時、接触部34が設けられていない場合とほぼ同様にフェース部14が変形できる大きさの力である。
また、本明細書において常時接触とは、実質的に接触部34の少なくとも一部がフェース裏面14Bに常に接触している状態であり、瞬間的(約1~2/10000秒)に接触部34がフェース裏面14Bから離間する場合を含むものとする。
また、打球時における接触部34のクラウンソール方向に沿った変位量(接触部34のフェース裏面14Bに対する相対的な変位量)が、打球時における接触部34のトウヒール方向の変位量よりも大であると、そうでない場合に比較して、高初速エリアをトウヒール方向に広く確保する上で有利となる。
一般的に、クラウンソール方向における打点のばらつきに比較して、トウヒール方向における打点のばらつきが大きい。
したがって、このように高初速エリアがトウヒール方向に広く確保されると、高初速エリアによって打点のばらつきをカバーすることができ、ユーザが初心者であっても飛距離を確保する上で有利となる。
【0025】
ここで、図18を参照して実施の形態のゴルフクラブヘッドの高初速エリアについて説明する。
なお、高初速エリア(スイートエリア)とは、フェース面14Aのスイートスポットから外れた打点でゴルフボールを打撃しても、スイートスポットで打撃した場合とほぼ同等の飛距離(例えば、ボールの最大初速の98%程度)を得ることができる領域をいう。
そのため、初心者のように打点のばらつきが大きなユーザでは、高初速エリアを拡大することで平均的な飛距離を確保する上で有利となる。
図18は、ゴルフクラブヘッド10のトウヒール方向の位置と、その位置で打球した場合のボール初速Vbとの関係を模式的に示す線図である。
曲線V0は、フェース裏面14Bに接触あるいは当接する部材が無い一般的なゴルフクラブヘッドで打球した場合のボール初速を示す。
曲線V1は、先行技術で説明したフェース裏面14Bに対して弾性板が当接した比較例としてのゴルフクラブヘッドで打球した場合のボール初速を示す。
曲線V2は、実施の形態の第1接触部材32Aを有するゴルフクラブヘッド10で打球した場合のボール初速を示す。
図中、COR0.81とは、反発係数を示し、ここでは、COR0.81以上の初速が得られる範囲を、高初速エリアとする。
図18から明らかなように、曲線V0の高初速エリアA0、および、曲線V1の高初速エリアA1に対して曲線V2の高初速エリアA2が最も広く確保されており、高初速エリアを拡大する上で有利となっている。
すなわち、曲線V2は初速の低下を極力小さくし、ピークの幅が広いのに対して、曲線V1は、曲線V0全体をボール初速Vbが低下する方向に平行移動させた曲線とほぼ一致しており、さらに初速の低下も大きく、ピークの幅は、曲線V2に比較して狭くなっている。
すなわち、本発明者らは、打球時にフェース部14が変形する際に接触部34がフェース裏面14Bに接触しつつフェース面14Aに沿って変位することによって高初速エリアA2を拡大することができるという知見を得た。
これに対して、比較例では、打球時のフェース部14の変形が生じた際、弾性板がフェース部のたわみを抑制するので、高初速エリアA1が縮小している。
【0026】
以上説明したように、本実施の形態によれば、フェース裏面14Bに接触する接触部34と、接触部34から互いに離れる方向に延在する少なくとも2つの脚部36、38とを有する接触部材32を設け、上脚部36および下脚部38は、打球時のフェース部14の変形をほぼ阻害しない大きさの力で接触部34をフェース裏面14Bに常時接触させ、かつ、フェース部14が変形する際に接触部34がフェース裏面14Bに常時接触しつつフェース裏面14Bに対して変位できるように接触部34を支持している。
したがって、本実施の形態では、従来技術のように、打球時におけるフェース部14の変形を抑制する力、すなわち、打球時におけるフェース部14の変形を阻害する大きな力をフェース部14にかけておらず、打球時に接触部34はフェース裏面14Bに接触しつつ変位するので、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを拡大する上で有利となり、また、フェース裏面14Bに接触部34が常時接触していることで、打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる。さらに、CT値を低下させる方向に調整することが可能となる。
【0027】
また、本実施の形態では、接触部34の肉厚は、脚部36、38の肉厚よりも大きな寸法で形成されているため、打球時のフェース部14が変形した際に接触部34のフェース裏面14Bに対する接触を確実に維持しつつ、脚部36、38の変形により接触部34の変位を確保することができる。
そのため、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる。さらにCT値の調整を行なう上で有利となる。
【0028】
また、本実施の形態では、接触部34から脚部36、38は、フェース裏面14Bの法線に対して斜めに延在しているため、打球時にフェース部14が変形した際に、接触部34のフェース裏面14Bに対する接触を確実に維持しつつ、脚部36、38の変形により接触部34の変位を確保することができる。
そのため、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる。さらにCT値の調整を行なう上で有利となる。
【0029】
図13(B)は、第1の変形例であり、第2接触部材32Bを設けたゴルフクラブヘッド10を示す。
なお、以下の変形例の説明では、実施の形態と同様の部分、部材については同一の符号を付してその説明を簡略化し、異なる部分を重点的に説明する。
第2接触部材32Bの接触部34は、フェース裏面14Bに接触する本体44と、本体44を支持すると共に脚部36、38に接続される支持体46とを備え、本体44と支持体46とが異なる材料で形成されている。
この場合、フェース裏面14Bに接触する接触面3402は本体44の面で構成されている。
このようにすると、例えば、本体44を振動が減衰しやすい材料(エラストマーや合成樹脂材料)で形成すると共に、支持体46を耐久性の高い金属材料で構成することにより、打球時のフェース部14の振動を減衰させることができ、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる。さらに振動がCT値に与える影響を抑制する上で有利となり、CT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
この場合、本体44の肉厚を0.5mm以上5.0mm以下とすると、後述する中間部材52A、52Bの場合と同様に、CT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
また、本体44の弾性率を本体44の弾性率を1GPa以上50GPa以下とすると、CT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
【0030】
図19は、第2の変形例であり、第3接触部材32Cを用いたゴルフクラブヘッド10を示す。
第3接触部材32Cの接触部34は前方から見て円形の円盤状を呈し、接触部34の前方に位置する面がフェース裏面14Bに接触する接触面3402となっている。
接触部34の上部から2つの上脚部34が上方に延び、それらの先端が開口4002の縁部の上部に溶接により接合されている。
また、接触部34の下部から1つの下脚部38が下方に延び、その先端が開口4002の縁部の下部に溶接により接合されている。
接触部34の肉厚は、脚部36、38の肉厚よりも大きな寸法で形成され、接触部34から脚部36、38は、フェース裏面14Bの法線に対して斜めに延在している。
このような変形例においても上記実施の形態と同様の効果が奏される。
【0031】
(各パラメータ)
次に、接触部34がフェース裏面14Bに接触する箇所の範囲、接触部34がフェース裏面14Bに接触する面積S、後述する中間部材52A、52Bの肉厚Δtp、弾性係数E、接触部34がフェース裏面14Bに接触している接触部34の部分の肉厚Δt2、フェース部14の肉厚Δt1と接触部34の肉厚Δt2に関する規定について説明する。
【0032】
(接触部34が接触するフェース裏面14Bの範囲)
図1に示すように、フェース中心基準断面Pfcと平行しフェース中心基準断面Pfcからトウ方向に20mm離間した平面を第1平面P1とする。
フェース中心基準断面Pfcと平行しフェース中心基準断面Pfcからヒール方向に20mm離間した平面を第2平面P2とする。
水平面HPと平行し中心点Pcからクラウン部16方向に15mm離間した平面を第3平面P3とする。
水平面HPと平行し中心点Pcからソール部18方向に15mm離間した平面を第4平面P4とする。
この場合、接触部34(接触面3402)の中心点34P(接触部34(接触面3402)の幾何学的な中心点)が、第1平面P1と第2平面P2と第3平面P3と第4平面P4で区画された範囲内でフェース裏面14Bに接触するようにすると、実際に使用されるフェース部14の部分の反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる。さらに振動がCT値に与える影響を抑制する上で有利となり、CT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
これは、上記範囲が、一般的なゴルファーが打球した際のフェース面14A上における打点の分布範囲をほぼ含んでいるためである。
また、接触部34が上記範囲外でフェース裏面14Bに接触すると、実際に使用されるフェース部14の部分の反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなるという効果が低下する。さらに振動がCT値に与える影響を抑制し、CT値の調整を効率的に行なうという効果が低下する。
【0033】
(面積S)
接触部34がフェース裏面14Bに接触する面積Sは3mm以上400mm以下であることが、高初速エリアを確保しつつCT値の調整を効率的に行なう上で有利である。
接触部34がフェース裏面14Bに接触する面積Sが上記範囲を下回ると、高初速エリアを確保する効果が低下し、接触部34からフェース裏面14Bに加わる荷重を加える効果が低下し、CT値の調整を効率的に行なう効果が低下する。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなるという効果も低下する。
接触部34がフェース裏面14Bに接触する面積Sが上記範囲を上回ると、高初速エリアを確保できる一方、接触部34からフェース裏面14Bに加わる荷重が過剰となり、CT値の調整を効率的に行なう効果が低下する。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなるという効果も低下する。
【0034】
(肉厚Δt2)
また、接触部34がフェース裏面14Bに接触している接触部34の部分の肉厚Δt2は、1mm以上7mm以下であることが、初速エリアを確保しつつCT値の調整を効率的に行なう上で有利である。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる効果がある。
上記肉厚Δt2が上記範囲を下回ると、初速エリアを確保する効果が低下し、CT値の調整を効率的に行なう効果が低下する。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなるという効果が低下する。
上記肉厚Δt2が上記範囲を上回ると、初速エリアを確保することができる一方、CT値の調整を効率的に行なう効果が低下する。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなるという効果が低下する。
なお、後述する中間部材52A、52Bがフェース裏面14Bと接触部34との間に配置されている場合は、上記面積Sは、中間部材52A、52Bを介して接触部34がフェース裏面14Bに接触する面積であり、上記肉厚Δt2は、中間部材を介してフェース裏面14Bに接触している接触部34の部分の肉厚である。
【0035】
(中間部材)
図20は、第3の変形例であり、第4接触部材32Dと中間部材52Aを設けたゴルフクラブヘッドである。
図20に示すように、ゴルフクラブヘッド10は、カップフェース構造であり、フェース部14の縁部からクラウン部16の一部あるいはソール部18の一部を構成する係合部4802をフェースバック方向に延在して設けるとともに、このような係合部4802を有するフェース部材(カップフェース)48をヘッド本体部材50の開口5002に溶接したものである。
第4接触部材32Dは、長方形の板状の接触部34と、接触部34を構成する一対の長辺のうち上側の長辺の両端からそれぞれ上方に延在し、それらの先端が開口5002の上部の縁部に溶接される一対の上脚部36A、36Bと、接触部34を構成する一対の長辺のうち下側の長辺の両端からそれぞれ下方に延在し、それらの先端が開口5002の下部の縁部に溶接される一対の下脚部38A、38Bとを備えている。
接触部34は、フェース裏面14Bに対向する長方形の接触面3402と、接触面3402の四辺に沿って前方に突出する矩形状の枠部3410とを備えている。
【0036】
中間部材52Aはエラストマーまたは合成樹脂材料から形成されている。
中間部材52Aは、平面視、接触部34より一回り小さい長方形の輪郭を有し、接触面3402と枠部3410の内側面で支持される形状の直方体を呈し、接触面3402と反対側の面がフェース裏面14Bに接触する中間部材側接触面5202となっている。
また、中間部材52Aは均一の肉厚Δtpで形成されている。
開口5002がフェース部材48によって閉塞された状態で、中間部材52Aは、接触部34とフェース裏面14Bとの間に挟まれ接触部34と一体に変位する。
すなわち、接触部34のフェース裏面14Bに対する接触は中間部材52Aを介してなされる。
また、前述の実施の形態と同様に、接触部34の肉厚は、脚部36A、36B、38A、38Bの肉厚よりも大きな寸法で形成され、接触部34から脚部36A、36B、38A、38Bは、フェース裏面14Bの法線に対して斜めに延在している。
【0037】
このような変形例においても上述した実施の形態と同様の効果が奏される。
また、接触部34とフェース裏面14Bとの間に挟まれ接触部34と一体に変位する中間部材52Aを設けると、エラストマーまたは合成樹脂材料によって打球時のフェース部14の振動を減衰させることができ、振動がCT値に与える影響を抑制する上で有利となり、CT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる効果を得る上で有利となる。
さらに、中間部材52Aが接触部34とソール裏面18Bとの間に介在することで接触部34とフェース裏面14Bとが直接接触することで摩耗することを抑制でき、ゴルフクラブヘッド10の耐久性の向上を図る上で有利となる。
この場合、中間部材52Aの肉厚Δtpを、0.5mm以上5.0mm以下とすると、CT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる効果を得る上で有利となる。
中間部材52Aの肉厚Δtpが上記範囲を下回ると、打球時のフェース部14の振動が抑制されにくくなるためCT値の調整を効率的に行なう効果が低下する。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなるという効果が低下する。
中間部材52Aの肉厚Δtpが上記範囲を上回ると、打球時のフェース部14の振動が抑制され過ぎるため、CT値の調整を効率的に行なう効果が低下する。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなるという効果が低下する。
また、中間部材52Aの弾性率Eは、1GPa以上50GPa以下とすると、CT値の調整を効率的に行なう上で有利となる。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる効果を得る上で有利となる。
中間部材52Aの弾性率Eが上記範囲を下回ると、打球時のフェース部14の振動が抑制されにくくなるためCT値の調整を効率的に行なう効果が低下する。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなるという効果が低下する。
中間部材52Aの弾性率Eが上記範囲を上回ると、打球時のフェース部14の振動が抑制され過ぎるため、CT値の調整を効率的に行なう効果が低下する。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなるという効果が低下する。
【0038】
図21は、図20の変形例(第4の変形例)であり、第5接触部材32Eを設けると共に、中間部材52Bが球状を呈しエラストマーまたは合成樹脂材料から形成されたゴルフクラブヘッド10を示す。
第5接触部材32Eは、接触部34と、接触部34の上部および下部から上下に延在する上脚部36および下脚部38とを備えている。
接触部34の肉厚は、脚部36、38の肉厚よりも大きな寸法で形成され、接触部34から脚部36、38は、フェース裏面14Bの法線に対して斜めに延在している。
接触部34は、中間部材52Bを支持する球状の湾曲面3420を有している。
上脚部36および下脚部36の先端は、ヘッド本体部材50の開口5002の縁部とフェース部材48の縁部との間に挟まれて溶接されることでヘッド本体44に取り付けられている。
したがって、中間部材52Bは、接触部34とフェース裏面14Bとの間に挟まれ接触部34と一体に変位し、接触部34のフェース裏面14Bに対する接触は中間部材52Bを介してなされている。
ここで、中間部材52Bの肉厚、言い換えると、中間部材52Bの直径は、0.5mm以上5.0mm以下であり、中間部材52Bの弾性率は、1GPa以上50GPa以下である。
このような図21の変形例においても図20の変形例と同様の効果が奏される。
また、図21の変形例では、中間部材52Bが球状を呈しているため、打球時におけるフェース部14の変形が生じた際に、接触部34が球状の中間部材52Bを介してフェース裏面14Bに接触しつつフェース面14Aに沿って変位しやすくなり、高初速エリアを拡大する上でより有利となる。
また、反発係数の低下量が少なく高初速エリアを確保しつつ打球音の残響が短くなり、打感が柔らかくなる効果を得る上で有利となる。
【0039】
また、上述した各実施の形態では、脚部36、38の先端のヘッド本体44への取り付けが溶接によってなされる場合について説明したが、脚部36、38の先端のフェース部14、クラウン部16、ソール部18、サイド部20の何れかに対する取り付けは、溶接、接着、ろう付け、ねじ止めなど、従来公知の様々な方法によってなされていてもよい。
【0040】
以下、本発明の実験例について説明する。
図22図26は、本発明に係るゴルフクラブヘッド10の実験結果を示す図である。
試料となるゴルフクラブヘッド10を各実験例毎に作成し、以下の4つの評価項目を測定し指数(評価点)を求めると共に、4つの指数の合計点を求めた。
【0041】
(1)CT値
ゴルフクラブヘッド10のCT値をUSGAで定められたペンデュラム試験によって測定し、接触部材32によるCT値の調整を行わない無い第1の状態でのCT値t1と、接触部材32によるCT値の調整を行った第2の状態でのCT値t2との差分Δt=t1-t2を測定し、比較例に相当する実験例1の差分Δtを100とする指数で評価した。
CT値の指数が大きいほどCT値をより大きく低下させることができ、言い換えると、CT値をより大きく調整することができ、したがって、CT値の調整を効率的に調整できることになり、CT値の評価が良いことを示す。
なお、フェース面14A上におけるCT値の測定位置は、接触部34とフェース裏面14Bが接触している図心を基準点とし、基準点を含め、基準点の上下左右5mmピッチで測定(全9点)した。各測定位置で5回ずつCT値を測定し、合計45回のCT値の平均値を、第1の状態および第2の状態でそれぞれ算出し(t1、t2)、差分Δt=t1-t2の指数を求めた。
【0042】
(2)高初速エリア(スイートエリア)
フェース面14Aの中心点Pcを中心に、トウヒール方向およびクラウンソール方向に等間隔をおいた45箇所を打点Piとして設定した。
専用のスイングロボットを用いて45の打点Piでゴルフクラブをスイングし、計測器によってゴルフボールの初速を計測した。ヘッドスピードは40m/sとした。
45打点の初速のデータを補間し、ゴルフボールの最大初速の98%以上となるフェース面14Aの高初速エリアの面積を指数化した。なお、中心点Pcより上打点(クラウン部16側)でのデータと、下打点(ソール部18側)でのデータは、ゴルファーの実使用打点位置に合わせて、上打点(クラウン部16側)でのデータの重み付けを重くした。
高初速エリアのデータは、実験例1のゴルフクラブヘッド10の測定結果を100とした指数で示した。指数が大きいほど高初速エリアの評価が良いことを示す。
【0043】
(3)耐久性
シャフトに固定したゴルフクラブヘッド10のフェース面14Aにエアキャノンにてゴルフボールを繰り返して当て、フェース部14の変形や割れ、接触部材32の破損が生じるまでに要した打撃回数を計測し、打撃回数を指数化した。ボールスピードは50m/sとした。打点位置はフェース面14Aの中心点Pcとした。
この場合、比較例に相当する実験例1のゴルフクラブヘッド10の測定結果を100とした指数で示した。指数が大きいほど耐久性の評価が良いことを示す。
【0044】
(4)打感
打感は、ゴルフクラブヘッド10でボールを打撃したときの打球音が支配的であり、一般的に、打球音の残響が短いと打感が柔らかく好ましいものとされ、ゴルファーの評価が高くなる。
打感の評価方法は以下の通りである。
専用のスイングロボットを用いて中心点Pcを打点としてゴルフクラブをヘッドスピード40m/sでスイングし、騒音計によってゴルフボールの打球音を計測し、打球音の振動波形データを所定のサンプリング周期でサンプリングして記録する。
次に、残響パラメータTを算出する。
残響パラメータTは、打球音の減衰の度合いを表すパラメータである。残響パラメータTの算出では、まず、記録された振動波形データを、時間軸上で一番最初のサンプルデータ(始点データ)を基準番号とし、この番号から所定のサンプル数、例えば、サンプル数100で音圧振動波形が順次区切られたブロック群αを作成する。
そして、ブロック群αのブロックAk毎に振動波形のレベルの二乗和を求め、各ブロック毎にこの二乗和の対数値(以降、ブロック値とする)を求める。
そして、ブロック群αの各ブロックから、ブロック値が最大となる最大音圧ブロックを、起点ブロックとして抽出する。そして、この最大音圧ブロックのブロック値から所定値(本実施形態では30dB)だけ低い値を終点ブロック値として設定し、起点ブロック以降の複数のブロックにおいて、ブロック値が最初に終点ブロック値以下となる終点ブロックを抽出する。
そして、これら起点ブロックと終点ブロックそれぞれの、時間軸上で最前のサンプルデータ間での時間幅を残響パラメータTとする。
したがって、残響パラメータTは打球音の残響時間に対応しており、残響パラメータTが短いほど残響が短く、打感が柔らかく、打感の評価が高いことになる。
この場合、打感のデータは、比較例に相当する実験例1のゴルフクラブヘッド10の残響パラメータTの逆数1/Tを100とする指数で示した。指数が大きいほど打感の評価が良いことを示す。
なお、上記残響パラメータTの算出方法は、例えば特許第4840106号に記載されている方法を用いることができるが、打球音の残響時間をどのような方法で評価するかは限定されるものではなく、従来公知の様々な方法によって打球音の残響時間を求め、打感を評価することが可能である。
また、残響パラメータや残響時間を算出して打感を評価する以外に、実際にゴルファーがゴルフクラブをスイングしてボールを打撃し、その際の打球音を聴いて打感を評価するようにしてもかまわない。
【0045】
(5)合計点
上述したCT値、高初速エリア、耐久性、打感の4つの指数を合計したものを合計点とした。
比較例(実験例1)に相当する実験例の合計点を400とし合計点が大きいほど評価が良いことを示す。
【0046】
以下実験例のゴルフクラブヘッド10について説明する。
実験例1は、比較例であり、本発明の請求項1の規定を満たさないものである。
実験例1は、特許文献1に対応するものであって、中空型のウッド型ゴルフクラブヘッド10(ドライバー)において、フェース裏面14Bに当接する弾性板を設けたものである。
したがって、実験例1は、打球によりフェース部14が変形した際、弾性板はフェース裏面14Bに荷重をかけることでフェース部14の変形を阻害するものである。
実験例1の各部の仕様は以下の通りである。
ヘッド本体12の材料:チタン合金 Ti-8Al-1Mo-1V
フェース部14の材料:Ti-6Al-4V
ロフト角 10.5°
ライ角 59°
ヘッド体積 460cc
【0047】
実験例2-21で使用したゴルフクラブヘッド10は、本発明に対応するものであって、中空型のドライバーであり、各実験例で規定したパラメータを除き以下の仕様を共通としている。
ヘッド本体12の材料:チタン合金 Ti-8Al-1Mo-1V
フェース部14の材料:Ti-6Al-4V
ロフト角 10.5°
ライ角 59°
ヘッド体積 460cc
詳細に説明すると、実験例2-21は、請求項1の規定を満たすものであり、接触部材32を備えている。
また、実験例2-21は、請求項11、12の規定を満たすものであり、接触部34から各脚部は、フェース裏面14Bの法線に対して斜めに延在し、また、各脚部は、接触部34の互いに離れた箇所からそれぞれ延在している。
実験例2-18は、図13(A)、図14に示す金属製の第1接触部材32Aを設けたものである。
実験例19は、図13(B)に示す第3接触部材32Cを設けたものである。
実験例20は、図20に示す第4接触部材32Dと中間部材52Aを設けたものである。
実験例21は、図21に示す第5接触部材32Eと中間部材52Bを設けたものである。
【0048】
(条件1)
各実験例2-4について、図22に示すように、請求項2で規定する条件を変更した。
なお、請求項3-8で規定する条件は、以下に示す条件とした。
請求項3で規定する本体44と支持体46の材料は同一材料とした。
請求項4で規定する、打球時における接触部34のトウヒール方向の変位量は、打球時における接触部34のクラウンソール方向に沿った変位量よりも大であるものという条件を満たさないものとした。
請求項5で規定する接触部34の中心点34Pがフェース裏面14Bに接触する範囲は、第1平面P1と第2平面P2と第3平面P3と第4平面P4で区画された範囲内とし、具体的には接触部34の中心点34Pがフェース面14Aの中心点Pcに合致するものとした。
請求項5で規定する接触部34がフェース裏面14Bに接触する面積Sは25mmとして、3mm≦S≦400mmの範囲内とした。
請求項5で規定する接触部34がフェース裏面14Bに接触している接触部34の部分の肉厚Δt2は、2mmとして、1mm≦Δt2≦7mmの範囲内とした。
請求項6で規定する肉厚の比率は1.5とし、式(1)の0.5≦Δt1/Δt2≦2.0の範囲内とした。
請求項7、8で規定する中間部材52A、52Bは省略した。
なお、比較例としての実験例1も請求項3-8で規定する条件は、実験例2-4と同等の値とした。
【0049】
実験例1は、比較例であり、請求項1の規定を満たさないものであり、各評価点を100とし、合計点が400である。
【0050】
実験例2-4は、請求項1の規定を満たす。
実験例2は、請求項2で規定する脚部36、38の肉厚Δt1<接触部34の肉厚Δt2を満たすものである。
実験例3、4は、請求項2で規定する脚部36、38の肉厚Δt1<接触部34の肉厚Δt2を満たさない。
【0051】
したがって、図22に示すように、請求項1の規定を満たす実験例2-4は、CT値、高初速エリア、耐久性、打感、合計点が本発明の範囲外である実験例1を上回っている。
また、請求項1、2の規定を満たす実験例2は、請求項2の規定を満たさない実験例3、4に対してCT値、高初速エリア、耐久性、打感、合計点が同等以上である。
【0052】
(条件2)
各実験例について、図23に示すように、請求項4で規定する条件を変更した。
なお、請求項2、3、5-8で規定する条件は、以下に示す条件とした。
請求項2で規定する脚部36、38の肉厚Δt1(1.0mm)<接触部34の肉厚Δt2(3.0mm)を満たすものとした。
請求項3で規定する本体44と支持体46の材料は同一材料とした。
請求項5で規定する接触部34の中心点34Pがフェース裏面14Bに接触する範囲は、第1平面P1と第2平面P2と第3平面P3と第4平面P4で区画された範囲内とし、具体的には接触部34の中心点34Pがフェース面14Aの中心点Pcに合致するものとした。
請求項5で規定する接触部34がフェース裏面14Bに接触する面積Sは25mmとして、3mm≦S≦400mmの範囲内とした。
請求項5で規定する接触部34がフェース裏面14Bに接触している接触部34の部分の肉厚Δt2は、2mmとして、1mm≦Δt2≦7mmの範囲内とした。
請求項6で規定する肉厚の比率は1.5とし、式(1)の0.5≦Δt1/Δt2≦2.0の範囲内とした。
請求項7、8で規定する中間部材52A、52Bは設けていない。
実験例5は、請求項4で規定する、打球時における接触部34のトウヒール方向の変位量は、打球時における前記接触部34のクラウンソール方向に沿った変位量よりも大であるという条件を満たすものとした。
なお、図中記号×は条件を満たさず、記号○は条件を満たすことを示す。
【0053】
したがって、図23に示すように、請求項1、2、4の規定を全て満たす実験例5は、請求項1、2の規定を満たすが、請求項4の規定を満たさない実験例2に対してCT値、高初速エリア、耐久性、打感、合計点が優れている。
【0054】
(条件3)
各実験例について、図24に示すように、請求項5、6で規定する条件を変更した。
なお、請求項2-4、7、8で規定する条件は、以下に示す条件とした。
請求項2で規定する脚部36、38の肉厚Δt1(1.0mm)<接触部34の肉厚Δt2(3.0mm)を満たすものとした。
請求項3で規定する本体44と支持体46の材料は同一材料とした。
請求項4で規定する、打球時における接触部34のトウヒール方向の変位量は、打球時における前記接触部34のクラウンソール方向に沿った変位量よりも大であるという条件を満たすものとした。
請求項7、8で規定する中間部材52A、52Bは設けていない。
【0055】
実験例6は、請求項5で規定する接触部34の中心点34Pがフェース裏面14Bに接触するトウヒール方向の位置は、フェース面14Aの中心点Pcからトウ方向に23mm離間した箇所であり、接触部34の中心点34Pがフェース裏面14Bに接触するクラウンソール方向の位置はフェース面14Aの中心点Pcと合致し、第1平面P1と第2平面P2と第3平面P3と第4平面P4で区画された範囲外とした。
なお、図中T23/0は、中心点がトウ方向に23mm離れ、クラウンソール方向は中心点Pcと合致していることを示す。
実験例6は、請求項5で規定する接触部34がフェース裏面14Bに接触する面積Sは1mmであり、3mm以上400mm以下の範囲外である。
実験例6は、請求項5で規定する接触部34がフェース裏面14Bに接触している接触部34の部分の肉厚Δt2は3.8mmとして、1mm≦Δt≦7mmの範囲外とした。
実験例6は、請求項6で規定する接触部34が当接するフェース裏面14Bの部分に対応するフェース部14の肉厚を肉厚Δt1としたとき、Δt1/Δt2が3.8であり、以下の式(1)を満たさないものとした。
0.5≦Δt1/Δt2≦2.0 (1)
【0056】
実験例7は、請求項5で規定する接触部34の中心点34Pがフェース裏面14Bに接触するトウヒール方向の位置は、フェース面14Aの中心点Pcからヒール方向に23mm離間した箇所であり、接触部34の中心点34Pがフェース裏面14Bに接触するクラウンソール方向の位置はフェース面14Aの中心点Pcと合致し、第1平面P1と第2平面P2と第3平面P3と第4平面P4で区画された範囲外とした。
なお、図中H23/0は、中心点がヒール方向に23mm離れ、クラウンソール方向は中心点Pcと合致していることを示す。
実験例7は、請求項5で規定する接触部34がフェース裏面14Bに接触する面積Sは420mmであり、3mm以上400mm以下の範囲外である。
実験例7は、請求項5で規定する接触部34がフェース裏面14Bに接触している接触部34の部分の肉厚Δt2は0.4mmとして、1mm≦Δt≦7mmの範囲外とした。
実験例7は、実験例6で規定するΔt1/Δt2が0.4であり、以下の式(1)を満たさないものとした。
0.5≦Δt1/Δt2≦2.0 (1)
【0057】
実験例8は、請求項5で規定する接触部34の中心点34Pがフェース裏面14Bに接触するトウヒール方向の位置は、フェース面14Aの中心点Pcからトウ方向に18mm離間した箇所であり、接触部34の中心点34Pがフェース裏面14Bに接触するクラウンソール方向の位置はフェース面14Aの中心点Pcと合致し、第1平面P1と第2平面P2と第3平面P3と第4平面P4で区画された範囲内とした。
実験例8は、請求項5で規定する接触部34がフェース裏面14Bに接触する面積Sは5mmであり、3mm以上400mm以下の範囲内である。
実験例8は、請求項5で規定する接触部34がフェース裏面14Bに接触している接触部34の部分の肉厚Δt2は2.0mmとして、1mm≦Δt≦7mmの範囲内とした。
実験例8は、請求項6で規定するΔt1/Δt2が2.0であり、以下の式(1)を満たすものとした。
0.5≦Δt1/Δt2≦2.0 (1)
【0058】
実験例9は、請求項5で規定する接触部34の中心点34Pがフェース裏面14Bに接触するトウヒール方向の位置は、フェース面14Aの中心点Pcからヒール方向に18mm離間した箇所であり、接触部34の中心点34Pがフェース裏面14Bに接触するクラウンソール方向の位置はフェース面14Aの中心点Pcと合致し、第1平面P1と第2平面P2と第3平面P3と第4平面P4で区画された範囲内とした。
実験例9は、請求項5で規定する接触部34がフェース裏面14Bに接触する面積Sは380mmであり、3mm以上400mm以下の範囲内である。
実験例9は、請求項5で規定する接触部34がフェース裏面14Bに接触している接触部34の部分の肉厚Δt2は6.0mmとして、1mm≦Δt≦7mmの範囲内とした。
実験例9は、請求項6で規定するΔt1/Δt2が0.5であり、以下の式(1)を満たすものとした。
0.5≦Δt1/Δt2≦2.0 (1)
【0059】
したがって、図24に示すように、請求項1、2、4-6の規定を全て満たす実験例8、9は、CT値、高初速エリア、耐久性、打感、合計点が本発明の範囲内であるが請求項5、6の規定を満たさない実験例6、7を上回っている。
【0060】
(条件4)
各実験例について、図25に示すように、請求項7で規定する条件を変更した。
なお、請求項2-6、8で規定する条件は、以下に示す条件とした。
請求項2で規定する脚部36、38の肉厚Δt1(1.0mm)<接触部34の肉厚Δt2(3.0mm)を満たすものとした。
請求項3で規定する本体44と支持体46の材料は同一材料とした。
請求項4で規定する、打球時における接触部34のトウヒール方向の変位量は、打球時における前記接触部34のクラウンソール方向に沿った変位量よりも大であるという条件を満たすものとした。
請求項5で規定する接触部34の中心点34Pがフェース裏面14Bに接触する範囲は、第1平面P1と第2平面P2と第3平面P3と第4平面P4で区画された範囲内とし、具体的には接触部34の中心点34Pがフェース面14Aの中心点Pcに合致するものとした。
請求項5で規定する接触部34がフェース裏面14Bに接触する面積Sは25mmとして、3mm≦S≦400mmの範囲内とした。
請求項5で規定する接触部34がフェース裏面14Bに接触している接触部34の部分の肉厚Δt2は、2mmとして、1mm≦Δt2≦7mmの範囲内とした。
請求項6で規定する肉厚の比率は1.5とし、式(1)の0.5≦Δt1/Δt2≦2.0の範囲内とした。
請求項8で規定する球状の中間部材52Bは設けていない。
【0061】
実験例10-17は、エラストマーからなる板状の中間部材52Aを設けたものである(図20)。
実験例10は、請求項7で規定する中間部材52Aの肉厚Δtpを0.05mmとし、0.5mm≦Δtp≦5.0mmの範囲外とした。
実験例10は、請求項7で規定する中間部材52Aの弾性率Eを、0.5Gpaとし、1GPa≦E≦50GPaの範囲外とした。
実験例11は、請求項7で規定する中間部材52Aの肉厚Δtpを6.0mmとし、0.5mm≦Δtp≦5.0mmの範囲外とした。
実験例11は、請求項7で規定する中間部材52Aの弾性率Eを、0.5Gpaとし、1GPa≦E≦50GPaの範囲外とした。
【0062】
実験例12は、請求項7で規定する中間部材52Aの肉厚Δtpを1.0mmとし、0.5mm≦Δtp≦5.0mmの範囲内とした。
実験例12は、請求項7で規定する中間部材52Aの弾性率Eを、0.5Gpaとし、1GPa≦E≦50GPaの範囲外とした。
実験例13は、請求項7で規定する中間部材52Aの肉厚Δtpを4.7mmとし、0.5mm≦Δtp≦5.0mmの範囲内とした。
実験例13は、請求項7で規定する中間部材52Aの弾性率Eを、0.5Gpaとし、1GPa≦E≦50GPaの範囲外とした。
【0063】
実験例14は、請求項7で規定する中間部材52Aの肉厚Δtpを3.0mmとし、0.5mm≦Δtp≦5.0mmの範囲内とした。
実験例14は、請求項7で規定する中間部材52Aの弾性率Eを、0.4Gpaとし、1GPa≦E≦50GPaの範囲外とした。
実験例15は、請求項7で規定する中間部材52Aの肉厚Δtpを3.0mmとし、0.5mm≦Δtp≦5.0mmの範囲内とした。
実験例15は、請求項7で規定する中間部材52Aの弾性率Eを、55Gpaとし、1GPa≦E≦50GPaの範囲外とした。
【0064】
実験例16は、請求項7で規定する中間部材52Aの肉厚Δtpを3.0mmとし、0.5mm≦Δtp≦5.0mmの範囲内とした。
実験例16は、請求項7で規定する中間部材52Aの弾性率Eを、1.3Gpaとし、1GPa≦E≦50GPaの範囲内とした。
実験例17は、請求項7で規定する中間部材52Aの肉厚Δtpを3.0mmとし、0.5mm≦Δtp≦5.0mmの範囲内とした。
実験例17は、請求項7で規定する中間部材52Aの弾性率Eを、48Gpaとし、1GPa≦E≦50GPaの範囲内とした。
【0065】
したがって、図25に示すように、請求項1、2、4-7の規定を全て満たす実験例16、17は、CT値、高初速エリア、耐久性、打感、合計点が本発明の範囲内であるが請求項7の規定を満たさない実験例10-15を上回っている。
【0066】
(条件5)
第1、第2、第4、第5接触部材32A、32B、32D、32Eに対応する実験例について図26に示す。
なお、請求項2、4で規定する条件は、以下に示す条件とした。
請求項2で規定する脚部36、38の肉厚Δt1(1.0mm)<接触部34の肉厚Δt2(3.0mm)を満たすものとした。
請求項4で規定する、打球時における接触部34のトウヒール方向の変位量は、打球時における前記接触部34のクラウンソール方向に沿った変位量よりも大であるという条件を満たすものとした。
請求項5で規定する接触部34の中心点34Pがフェース裏面14Bに接触する範囲は、第1平面P1と第2平面P2と第3平面P3と第4平面P4で区画された範囲内とし、具体的には接触部34の中心点34Pがフェース面14Aの中心点Pcに合致するものとした。
請求項5で規定する接触部34がフェース裏面14Bに接触する面積Sは5mmまたは25mmとして、3mm≦S≦400mmの範囲内とした。
請求項5で規定する接触部34がフェース裏面14Bに接触している接触部34の部分の肉厚Δt2は、2mm~5mmとして、1mm≦Δt2≦7mmの範囲内とした。
請求項6で規定する肉厚の比率は0.5~1.5とし、式(1)の0.5≦Δt1/Δt2≦2.0の範囲内とした。
【0067】
実験例18は、中間部材52A、52Bを備えないものであり、図13(A)に示す第1接触部材32Aを用いている。
実験例19は、中間部材52A、52Bを備えないものであり、図13(B)に示すように、接触部34の本体44と支持部とを異なる材料で形成した第2接触部材32Bを用いており、具体的には、本体44を合成樹脂材料で形成し、支持体46を金属材料で形成したものである。
実験例19において、肉厚Δtpは本体44の肉厚を示し、肉厚tpを0.5mmとし、0.5mm≦Δtp≦5.0mmの範囲内とし、弾性率Eは本体44の弾性率を示し、弾性率Eを2GPaとし、1GPa≦E≦50GPaの範囲内とした。
実験例20は、図20に示すように、第4接触部材32Dを用い、直方体状の中間部材52Aを設けたものである。
実験例21は、図21に示すように、第5触部材32Eを用い、球状の中間部材52Bを設けたものである。
実験例20、21においては、請求項7で規定する中間部材52A、52Bの肉厚Δtpを3.0mm、4.0mmとし、0.5mm≦Δtp≦5.0mmの範囲内とし、中間部材52A、52Bの弾性率Eを、10Gpa、20Gpaとし、1GPa≦E≦50GPaの範囲内とした。
【0068】
図26に示すように、実験例18-21は、請求項1-7で規定する条件を全て満たすか、大半を満たすものであり、請求項1-7で規定する各数値を、上述した条件1-4に比較してより好適なものとした。
したがって、図26に示すように、実験例18-21は、CT値、高初速エリア、耐久性、打感、合計点が本発明の範囲内である他の実施例2-17を上回っている。
【0069】
また、本発明は、中空部を有するドライバー、中空部を有するフェアウェイウッド、中空部を有するユーテリティなどの様々な中空部を有するゴルフクラブヘッドに適用されることは無論のことである。
【符号の説明】
【0070】
10 ゴルフクラブヘッド
12 ヘッド本体
14 フェース部
14A フェース面
14B フェース裏面
16 クラウン部
16A クラウン面
16B クラウン裏面
18 ソール部
18A ソール面
18B ソール裏面
20 サイド部
20A サイド面
20B サイド裏面
19 リーディングエッジ
22 トウ
24 ヒール
26 フェースバック
28 中空部
30 ホーゼル
32 接触部材
32A 第1接触部材
32B 第2接触部材
32C 第3接触部材
32D 第4接触部材
32E 第5接触部材
34 接触部
3402 接触面
3410 枠部
3420 湾曲面
34P 接触部の中心点
36 上脚部(脚部)
3602 上傾斜部
3604 上屈曲部
3606 上係合部
36A、36B 上脚部(脚部)
38 下脚部(脚部)
3802 下傾斜部
3804 下屈曲部
3806 下係合部
38A、38B 下脚部(脚部)
40 ヘッド本体部材
4002 開口
42 フェース部材
4202 上凹部
4204 下凹部
44 本体
46 支持体
48 フェース部材
4802 係合部
50 ヘッド本体部材
5002 開口
52A、52B 中間部材
5202 中間部材側接触面
P1 第1平面
P2 第2平面
P3 第3平面
P4 第4平面
図1
図2
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