(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161169
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】半導体受光素子
(51)【国際特許分類】
H01L 31/10 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
H01L31/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065770
(22)【出願日】2021-04-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発/高温動作可能なシリコンフォトニクス光モジュール技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】517177464
【氏名又は名称】アイオーコア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】芝 和宏
(72)【発明者】
【氏名】木下 啓藏
(72)【発明者】
【氏名】藏田 和彦
【テーマコード(参考)】
5F849
【Fターム(参考)】
5F849AA04
5F849AB03
5F849AB17
5F849BA01
5F849BA03
5F849CB01
5F849FA12
5F849GA05
5F849HA13
5F849KA12
5F849KA13
5F849XB04
5F849XB37
(57)【要約】 (修正有)
【課題】受光効率の高い半導体受光素子を提供する。
【解決手段】半導体受光素子100は、基板上に形成されたp型半導体層102と、i型半導体層103と、n型半導体層104と、第1金属電極105と、p型半導体層102に接続された第2金属電極と、を備え、第1金属電極105は、n型半導体層104の上面の周縁部のうちの周方向の一部分にのみ形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたp型半導体層と、
前記p型半導体層上に形成されたi型半導体層と、
前記i型半導体層上に形成されたn型半導体層と、
前記n型半導体層上に形成された第1金属電極と、
前記p型半導体層に接続された第2金属電極と、
を備え、前記第1金属電極は、前記n型半導体層の上面の周縁部のうちの周方向の一部分にのみ形成されている、半導体受光素子。
【請求項2】
前記第1金属電極は、複数の電極からなる、請求項1に記載の半導体受光素子。
【請求項3】
前記i型半導体層は、エピタキシャル成長によって形成された半導体層である、請求項1又は2に記載の半導体受光素子。
【請求項4】
前記第2金属電極は、トランスインピーダンスアンプに接続される、請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体受光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体受光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上にp型半導体層、i型半導体層、及びn型半導体層を積層して構成されたpin構造の受光素子が知られている。従来、最上層であるn型半導体層の表面に、i型半導体層に電界を印加するためのリング状の電極が用いられている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リング状の電極は、n型半導体層の上面においてその周縁部の全周にわたって設けられているため、光吸収層であるi型半導体層へ入射する光を遮蔽してしまう面積が大きく、受光素子の受光効率が低下してしまうという課題を有していた。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、受光効率の高い半導体受光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、基板上に形成されたp型半導体層と、前記p型半導体層上に形成されたi型半導体層と、前記i型半導体層上に形成されたn型半導体層と、前記n型半導体層上に形成された第1金属電極と、前記p型半導体層に接続された第2金属電極と、を備え、前記第1金属電極は、前記n型半導体層の上面の周縁部のうちの周方向の一部分にのみ形成されている、半導体受光素子である。
【0007】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記第1金属電極は、複数の電極からなる、半導体受光素子である。
【0008】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記i型半導体層は、エピタキシャル成長によって形成された半導体層である、半導体受光素子である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体受光素子の受光効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る半導体受光素子の模式的な構成を示した図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る半導体受光素子の模式的な構成を示した図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る半導体受光素子の模式的な断面構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体受光素子100の模式的な構成を示した図である。
図1(A)は、半導体受光素子100の上面図を表しており、
図1(B)は、半導体受光素子100の断面図を表している。
【0013】
半導体受光素子100は、基板101上に形成されたp型半導体層102と、p型半導体層102上に形成されたi型半導体層103と、i型半導体層103上に形成されたn型半導体層104とを備えている。p型半導体層102は、p型の不純物がドープされた半導体層である。i型半導体層103は、不純物がドープされていない半導体層である。n型半導体層104は、n型の不純物がドープされた半導体層である。p型半導体層102及びn型半導体層104は、例えばシリコン(Si)から構成され、i型半導体層103は、例えばゲルマニウム(Ge)又はシリコンゲルマニウム(SixGe1-x)から構成される。このように、半導体受光素子100は、p型半導体層102とn型半導体層104でi型半導体層103を挟み込んだpin構造を有している。
【0014】
半導体受光素子100は更に、n型半導体層104上に形成された第1金属電極105と、p型半導体層102に接続された第2金属電極(
図1において不図示)を備える。第1金属電極105は、半導体受光素子100に電圧を印加する電極であり、通常、2~10V程度の電圧が印加される。第2金属電極は、電気信号を取り出すための電極であり、光電変換により生じた微小電流を電圧信号に変換および増幅するためのトランスインピーダンスアンプに接続される。半導体受光素子100を動作させる際、第1金属電極105と第2金属電極を介してp型半導体層102とn型半導体層104間に逆バイアス電圧が印加され、これによりi型半導体層103に空乏層が形成される。また、半導体受光素子100の上方(
図1(B)における上側)からn型半導体層104を介してi型半導体層103へ光が入射され、この光がi型半導体層103に吸収されることにより、i型半導体層103内にフォトキャリア(電子及びホール)が発生する。i型半導体層103で発生した電子とホールは、空乏層内の電界の作用を受けて、i型半導体層103からそれぞれn型半導体層104又はp型半導体層102へと移動する。こうして半導体受光素子100に光電流が流れる。
【0015】
ここで、第1金属電極105は、n型半導体層104の上面において、その周縁部104aを周方向Cに分割した部分的領域である第1領域104a-1に形成されている。周縁部104aの周方向Cにおける残りの部分的領域である第2領域104a-2には、金属電極は形成されていない。換言すれば、第1金属電極105は、n型半導体層104の上面の周縁部104a全周ではなく、周縁部104aのうちの周方向Cの一部分にのみ形成されている。周縁部104a全体の面積に対する第1金属電極105の面積(又は第1領域104a-1の面積)の比は、特に限定されないが、例えば、1/10~1/20程度であってよい。一例として、n型半導体層104の上面が直径10μmの円形である場合、第1金属電極105は、2μm×2μm程度の大きさの矩形の形状に形成されてよい。
【0016】
このように、本実施形態の半導体受光素子100では、第1金属電極105がn型半導体層104の上面(すなわち受光面)の周縁部104a全周ではなく、周縁部104aのうちの周方向Cの一部分にのみ形成されているので、n型半導体層104上の金属電極によって半導体受光素子100への入射光が遮蔽されてしまう面積が小さく、したがって、より多くの光を受光面から光吸収層(即ちi型半導体層103)へ取り込むことができる。そのため、半導体受光素子100の受光効率を向上させることが可能である。
【0017】
なお、第1金属電極105がpin構造に対して片寄った位置に設けられていることにより、i型半導体層103内の電界は不均一となる。より具体的には、i型半導体層103内の電界は、第1金属電極105の近傍(
図1(A)に示す位置P)で最大電界E
maxとなり、第1金属電極105から最も遠い場所(
図1(A)に示す位置Q)で最小電界E
minとなる。
【0018】
ここで一般に、良好な周波数特性を持つ高速応答可能な半導体受光素子を実現するためには、キャリア(電子及びホール)が光吸収層中を飽和速度で走行できるように、光吸収層内の最小電界が20kV/cm以上であることが必要である。本実施形態の半導体受光素子100においても、第1金属電極105から最も遠い場所における最小電界Eminについて、Emin≧20kV/cmの条件が成立し得ることを数値例で以下検証する。
【0019】
i型半導体層103の厚さを0.8μmとすると、上記の電界条件を満たすには、位置Qにおけるi型半導体層103の上面と下面間の印加電圧は、1.6V(=20kV/cm×0.8μm)以上である必要がある。また、半導体受光素子100からの光電流を増幅するトランスインピーダンスアンプの入力端電圧を0.7V、電源電圧を3.3Vとすると、n型半導体層104中の電圧降下(即ち第1金属電極105から位置Qまでの電圧降下)の許容値は、1.0V(=3.3V-0.7V-1.6V)となる。更に、i型半導体層103から発生する光電流の最大値を1mAとすると、n型半導体層104の位置PQ間の許容抵抗値は1000Ωと決定される。ここで、n型半導体層104のシート抵抗を50Ω/sq、第1金属電極105と位置Qの距離を10μmとすると、n型半導体層104の位置PQ間の実際の抵抗値は600Ω以下となるので、i型半導体層103の位置Q、即ち第1金属電極105から最も遠い場所においても、20kV/cmの電界を達成することが可能である。したがって、本実施形態の半導体受光素子100によれば、受光効率の向上のみならず、高速な応答、即ち良好な周波数特性を実現することができる。
【0020】
図2は、本発明の第2実施形態に係る半導体受光素子110の模式的な構成を示した図である。
図2(A)は、半導体受光素子110の上面図を表しており、
図2(B)は、半導体受光素子110の断面図を表している。
図2において、前述した第1実施形態に係る半導体受光素子100と同一の構成要素には同一の符号を付した。半導体受光素子110は、図示されるように、2つの第1金属電極105を備える。2つの第1金属電極105は、n型半導体層104の上面の周縁部104aにおいて、互いに反対の位置に配置されている。このような構成でも、第1実施形態の半導体受光素子100と同様の効果を得ることができる。なお、
図2には2つの第1金属電極105が示されているが、半導体受光素子110は、3つ以上の第1金属電極105を備えていてもよい。なお、これら複数の第1金属電極105は、受光面以外の箇所で互いに電気的に接続されている。
【0021】
図3は、本発明の第3実施形態に係る半導体受光素子200の模式的な断面構成を示した図である。半導体受光素子200は、前述した半導体受光素子100のより詳細な構成を示したものである。半導体受光素子200は、埋め込み酸化膜層(BOX層)202上に形成されたp型シリコン層203と、p型シリコン層203上に形成されたi型ゲルマニウム層204と、i型ゲルマニウム層204上に形成されたn型シリコン層205とを備えており、p型シリコン層203、i型ゲルマニウム層204、及びn型シリコン層205によるpin構造を有している。p型シリコン層203、i型ゲルマニウム層204、及びn型シリコン層205は、それぞれ、
図1に示された半導体受光素子100のp型半導体層102、i型半導体層103、n型半導体層104に対応する。半導体受光素子200は、シリコン基板201、BOX層202、及びBOX層202上のSOI(Silicon On Insulator)層からなる、SOI基板を利用して作製されている。
【0022】
p型シリコン層203は、p型の不純物がドープされたシリコン(Si)からなる層である。p型の不純物として、例えばホウ素(B)を用いることができる。p型シリコン層203は、BOX層202上のSOI層にp型不純物をドープすることによって形成されている。
【0023】
p型シリコン層203は、第1領域203aと第2領域203bとを有している。第1領域203aは、平面視においてp型シリコン層203の部分的な領域であり、当該領域上にi型ゲルマニウム層204が結晶成長することとなる領域である。第2領域203bは、平面視においてp型シリコン層203の部分的な領域であり、第1領域203aの端部から側方に延設されている領域である。第2領域203bにドープされているp型不純物の濃度は、第1領域203aにドープされているp型不純物の濃度よりも、高濃度である。
【0024】
i型ゲルマニウム層204は、不純物がドープされていないゲルマニウム(Ge)からなる層である。ゲルマニウム層はシリコンゲルマニウム(SixGe1-x)層の一例(即ちx=0)である。半導体受光素子200のi型半導体層は、シリコンゲルマニウム層の一種であるゲルマニウム層から構成されている。i型ゲルマニウム層204は、p型シリコン層203の第1領域203a上にゲルマニウムの結晶層をエピタキシャル成長させることによって形成されている。
【0025】
n型シリコン層205は、n型の不純物がドープされたシリコンからなる層である。n型の不純物として、例えばリン(P)やヒ素(As)等を用いることができる。n型シリコン層205は、i型ゲルマニウム層204の上面及び側面を覆うようにシリコンの結晶層205aをエピタキシャル成長させ、更にこのシリコン層205aのうちi型ゲルマニウム層204の上面部分にn型不純物をドープすることによって形成されている。なお、i型ゲルマニウム層204の側面を覆っている部分のシリコン層205aは、i型ゲルマニウム層204の表面に存在する結晶欠陥に起因して生じるリーク電流を低減させるための保護膜として機能する。
【0026】
半導体受光素子200の表面は、絶縁膜(例えばSiO
2膜)206によって覆われている。絶縁膜206のうちn型シリコン層205の上部には、n型シリコン層205の表面に達する開口が設けられており、当該開口内に第1金属電極207が形成されている。また、絶縁膜206のうちp型シリコン層203の第2領域203bの上部には、p型シリコン層203(第2領域203b)の表面に達する開口が設けられており、当該開口内に第2金属電極208が形成されている。第1金属電極207と第2金属電極208は、それぞれ、
図1の半導体受光素子100に関して説明した第1金属電極105、第2金属電極に対応する。
【0027】
半導体受光素子200は、n型シリコン層205の上方向からの光が絶縁膜206とn型シリコン層205を介してi型ゲルマニウム層204へ入射するように構成されている。半導体受光素子200を動作させる際、第1金属電極207と第2金属電極208を介してp型シリコン層203とn型シリコン層205間に逆バイアス電圧が印加され、これによりi型ゲルマニウム層204に空乏層が形成される。i型ゲルマニウム層204への入射光は、i型ゲルマニウム層204に吸収され、これにより、i型ゲルマニウム層204内にフォトキャリア(電子及びホール)が発生する。i型ゲルマニウム層204で発生した電子とホールは、空乏層内の電界の作用を受けて、i型ゲルマニウム層204からそれぞれn型シリコン層205又はp型シリコン層203へと移動する。こうして半導体受光素子200に光電流が流れる。
【0028】
半導体受光素子200の第1金属電極207は、前述した半導体受光素子100の第1金属電極105と同様に、n型シリコン層205の上面(すなわち受光面)において、その周縁部のうちの周方向の一部分にのみ形成されている。そのため、半導体受光素子200は、より多くの光を受光面から光吸収層(即ちi型ゲルマニウム層204)へ取り込むことができる。したがって半導体受光素子200の受光効率を向上させることが可能である。
【0029】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、その要旨を逸脱しない範囲内において様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
100 半導体受光素子
101 基板
102 p型半導体層
103 i型半導体層
104 n型半導体層
105 第1金属電極
104a 周縁部
110 半導体受光素子
200 半導体受光素子
201 シリコン基板
202 BOX層
203 p型シリコン層
204 i型ゲルマニウム層
205 n型シリコン層
206 絶縁膜
207 第1金属電極
208 第2金属電極