(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161226
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】化粧用パフの製造方法及び化粧用パフ
(51)【国際特許分類】
A45D 33/34 20060101AFI20221014BHJP
A45D 33/36 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A45D33/34 J
A45D33/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065867
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】597090996
【氏名又は名称】株式会社丸信商会
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】特許業務法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】高橋 儀臣
(57)【要約】 (修正有)
【課題】製造効率及び生産性の高い構造を有する把持部材を具備する化粧用パフ、並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】第一の面2a及び第二の面2bを有する化粧用パフ部材2と、前記第一の面2aに積層された熱溶融性の樹脂シート4と、前記樹脂シート4に積層されたシート状の支持部材8と、前記支持部材のうちの前記樹脂シート4とは反対側の面に配置され、その両端部が前記支持部材8と前記樹脂シート4との間に挟持されている略帯状の把持部材6と、を具備することを特徴とする化粧用パフ1、並びにその製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第一の面及び第二の面を有する化粧用パフ部材の前記第一の面側に、熱溶融性の樹脂シートを積層して熱融着により接着する工程と、
(B)前記パフ部材の前記第二の面側に略帯状の把持部材を配置し、前記把持部材の両端部をそれぞれ前記第一の面側まで延ばした状態で、前記第一の面側に、シート状の支持部材を積層して、前記両端部とともに熱融着により接着する工程と、
(C)前記把持部材に対して、接着された前記支持部材、前記樹脂シート及び前記パフ部材を返すことにより、前記把持部材を前記第二の面側から前記第一の面側に移動させ、化粧用パフを得る工程と、
を含むこと、
を特徴とする化粧用パフの製造方法。
【請求項2】
前記工程(A)において、前記第一の面に前記樹脂シートの周縁部分を熱融着により接着すること、
を特徴とする請求項1に記載の化粧用パフの製造方法。
【請求項3】
前記工程(B)において、治具を用いて、前記パフ部材の第二の面に前記把持部材を配置し、前記把持部材の両端部をそれぞれ前記第一の面側まで延ばした状態とすること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の化粧用パフの製造方法。
【請求項4】
前記工程(B)において、前記樹脂シートの周縁部分と前記支持部材の周縁部分とを熱融着により接着すること、
を特徴とする請求項1~3のうちのいずれかに記載の化粧用パフの製造方法。
【請求項5】
第一の面及び第二の面を有する化粧用パフ部材と、
前記第一の面に積層された熱溶融性の樹脂シートと、
前記樹脂シートに積層されたシート状の支持部材と、
前記支持部材のうちの前記樹脂シートとは反対側の面に配置され、その両端部が前記支持部材と前記樹脂シートとの間に挟持されている略帯状の把持部材と、
を具備すること、
を特徴とする化粧用パフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料の塗布に使用する化粧用パフの製造方法及び当該製造方法により得られる化粧用パフに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、主に女性がファンデーションや頬紅等の化粧料を顔面に塗布する際に使用される化粧用パフが知られている。このような化粧用パフとしては、パフの材質や形状を工夫した種々のものがあり、その製造方法についても種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2015-058170号公報)においては、角部が丸められた星形形状の平板状の化粧用パフが提案されており、また、特許文献2(特開2015-188577号公報)においては、瓢箪状の立体的な形状を有する化粧用パフが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-058170号公報
【特許文献2】特開2015-188577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び2等で提案されている従来の化粧用パフは、手で直接把持して使用しなければならないために手が汚れたりしてしまうことから、本出願人は略帯状の把持部材を具備する化粧用パフを製造販売してきたが、把持部材の取付け作業が煩雑であり、製造効率及び生産性の観点から、未だ改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、製造効率及び生産性の高い構造を有する把持部材を具備する化粧用パフ、並びにその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、
(A)第一の面及び第二の面を有する化粧用パフ部材の前記第一の面側に、熱溶融性の樹脂シートを積層して熱融着により接着する工程と、
(B)前記パフ部材の前記第二の面側に略帯状の把持部材を配置し、前記把持部材の両端部をそれぞれ前記第一の面側まで延ばした状態で、前記第一の面側に、シート状の支持部材を積層して、前記両端部とともに熱融着により接着する工程と、
(C)前記把持部材に対して、接着された前記支持部材、前記樹脂シート及び前記パフ部材を返すことにより、前記把持部材を前記第二の面側から前記第一の面側に移動させ、化粧用パフを得る工程と、
を含むこと、
を特徴とする化粧用パフの製造方法、を提供する。
【0008】
前記工程(A)においては、前記第一の面に前記樹脂シートの周縁部分を熱融着により接着すること、が好ましい。
【0009】
また、前記工程(B)においては、所定の治具を用いて、前記パフ部材の第二の面に前記把持部材を配置し、前記把持部材の両端部をそれぞれ前記第一の面側まで延ばした状態とすること、が好ましい。
【0010】
また、前記工程(B)においては、前記樹脂シートの周縁部分と前記支持部材の周縁部分とを熱融着により接着すること、が好ましい。
【0011】
更に、本発明は、
第一の面及び第二の面を有する化粧用パフ部材と、
前記第一の面に積層された熱溶融性の樹脂シートと、
前記樹脂シートに積層されたシート状の支持部材と、
前記支持部材のうちの前記樹脂シートとは反対側の面に配置され、その両端部が前記支持部材と前記樹脂シートとの間に挟持されている略帯状の把持部材と、
を具備すること、
を特徴とする化粧用パフ、をも提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造効率及び生産性の高い構造を有する把持部材を具備する化粧用パフ、並びにその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る化粧用パフの製造方法の工程を説明するための概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る化粧用パフの製造方法において、治具を用いて工程(B)を実施する様子を説明するための概略図である。
【
図3】本発明において好適に用いることのできる化粧用パフの基材(化粧用パフ部材)の一例の縦断面図である。
【
図4】従来の化粧用パフの製造方法の工程を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明の化粧用パフの製造方法及び化粧用パフの一実施形態を、図面を参照しながら説明するが、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
【0015】
ここで、本出願人の従来の化粧用パフ11の製造方法を説明すると、まず、
図4の(1)に示すように、リボン16と、両端にスリット18a及び18bを設けた円形状の合皮シート18と、を準備し、同(2)に示すように、リボン16をスリット18a及び18bに差し込む(工程a)。
【0016】
他方、
図4の(3)に示すように、円盤状のスポンジ体等の化粧用パフ部材(基材)12を準備し、同(4)に示すように、一方の面12aに円形状の熱溶融性の樹脂シート18を熱融着により接着する(工程b)。
【0017】
そして、
図4の(2)のリボン16付合皮シート18を、同(4)の樹脂シート18付パフ部材12の樹脂シート18側に熱融着により接着し、同(5)の構成を有する化粧用パフ11を得るのである(工程c)。
【0018】
しかしながら、この従来の化粧用パフの製造方法においては、上記の工程aにおいて、リボン16をスリット18a及び18bに差し込む作業が煩雑で、相応の時間や熟練度を必要とするため、製造効率及び生産性の観点から改善の余地があった。また、化粧用パフ11では、リボン16がスリット18a及び18bから出ている部分の長さを確保しにくく、したがって指を通しにくく使用時の利便性に劣るという問題もあった。
【0019】
これに対し、本発明者は、化粧用パフの構造及び製造工程について試作や実験を繰り返して鋭意検討をした結果、
図1に示すような製造効率及び生産性並びに使用時の利便性に優れる化粧用パフの製造方法を発明するに至った。以下、本発明の一実施形態に係る化粧用パフの製造方法の工程を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
工程(A)
まず、
図1の(1)に示すように、第一の面2a及び第二の面2b(
図1の(3)参照)を有する略円盤状の化粧用パフ部材(基材)2の第一の面2a側に、熱溶融性の樹脂シート4を積層して熱融着により接着し、樹脂シート4付パフ部材2を得る(
図1の(2))。
【0021】
ここで、パフ部材2としては、柔軟性及び弾力性を有するものであり、従来公知の化粧用パフに用いられているポリウレタン製のスポンジ体等を使用することができる。第一の面2aと第二の面2bとは互いに対向している面であり、略水平状に形成されている。なお、本実施形態においては、略円盤状のパフ部材2を用いているが、平面視した場合に、略矩形状又は略多角形状のパフ部材であってもよい。
【0022】
熱溶融性の樹脂シート4としては、加熱によって溶融して他の部材と接着し得るもの、例えば熱可塑性ホットメルト樹脂シートであれば、特に制限なく使用することができる。かかる熱可塑性ホットメルト樹脂としては、例えば、ABS、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、プロピレン-エチレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、エチレン/ブテン-1共重合体、エチレン/オクテン共重合体等のポリオレフィン、シクロペンタジエンとエチレン及び/又はプロピレンとの共重合体等の環状ポリオレフィン、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体等の極性基が導入されたポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、アクリル酸変性ポリプロピレン、スチレン系エラストマー、ゴム等の酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。
【0023】
化粧用パフ部材(基材)2の第一の面2a側に、熱溶融性の樹脂シート4を積層した後は、例えば熱融着により接着するが、この際には、加熱しながら押圧することができる金属製プレス機等を使用すればよい。なお、加熱の温度及び押圧の圧力については、パフ部材2及び樹脂シート4の材質や寸法等に応じて、適宜調整すればよい。
【0024】
また、この工程(A)においては、パフ部材2の第一の面2aに樹脂シート4の周縁部分のみを熱融着により接着することが、製造時の熱効率や、最終的に得られる化粧用パフ1の柔軟性、弾力性及び使い心地等の観点から好ましい。
【0025】
工程(B)
上記工程(A)の次に、パフ部材2の第二の面2b側に略帯状の把持部材6を配置し、把持部材6の両端部をそれぞれ第一の面2a側まで延ばした状態で、第一の面2a側に、シート状の支持部材8を積層して、前記両端部とともに熱融着により接着する(
図1の(3))。
【0026】
略帯状の把持部材6としては、例えば織布、不織布又は編布等で形成されたリボン等を用いればよく、その長さや幅等については、パフ部材2の形状や寸法に応じて適宜調整すればよい。
【0027】
ここで、本実施形態においては、
図2に示す構造を有する治具を用いて、パフ部材2の第二の面2bに把持部材6を配置し、把持部材6の両端部をそれぞれ第一の面2aまで延ばした状態とする。
【0028】
より具体的には、
図2の(1)に示すように、木、プラスチック又は金属で形成された平板状の治具21を用いるが、この治具21は、略中央部にパフ部材2と略同一の形状(径及び厚さ)並びに寸法を有する開口21aと、開口21aの両端から外側に延びる溝部21b及び21cと、が設けられた構造を有している。溝部21b及び21cの幅や深さについては、パフ部材2及び把持部材6の形状及び寸法に合わせて適宜選択すればよい。
【0029】
この治具21を用い、まずは開口21aの上を橋渡しするように、溝21b及び21cに沿って把持部材6を配置し(
図1の(2))、ついで、この把持部材6の上から、樹脂シート4付パフ部材2を開口21aに入れて、把持部材6の一方の端部6aを折り曲げ、更に、把持部材6の他方の端部6bも折り曲げる(
図1の(3)~(4))。
【0030】
このようにして「パフ部材2の第二の面2b側に略帯状の把持部材6を配置し、把持部材6の両端部をそれぞれ第一の面2a側まで延ばした状態」を形成することができ(
図1の(4))、この状態で、
図1の(3)に示すように、樹脂シート4付パフ部材2の第一の面2a側に、シート状の支持部材8を積層して、折り返した把持部材6の両端部とともに熱融着により接着する(
図1の(3))。
【0031】
シート状の支持部材8は、略円形状であり、最終的に得られる化粧用パフの取扱性に寄与するものであり、パフ部材2は柔軟性及び弾力性を有するものであるから、かかる支持部材8により剛性を付与することができ取扱性が向上する。支持部材8には、種々の樹脂製の合成皮革や天然皮革等を用いることが好ましい。
【0032】
また、この工程においても、加熱しながら押圧することができる金属製プレス機等を使用すればよい。なお、加熱の温度及び押圧の圧力については、パフ部材2、樹脂シート4及び支持部材8の材質や寸法等に応じて、適宜調整すればよい。
【0033】
更にこの工程(B)においては、パフ部材2の第一の面2aに接着された樹脂シート4の周縁部分のみに、支持部材8の周縁部分のみを熱融着により接着することが、製造時の熱効率や、最終的に得られる化粧用パフ1の柔軟性、弾力性及び使い心地等の観点から好ましい。
【0034】
工程(C)
工程(B)後には、
図1の(3)に示すように、把持部材6がパフ部材2の第二の面2b側に位置することになる。そこで、その後の工程(C)において、接着された支持部材8、樹脂シート4及びパフ部材2の積層体を、把持部材6に対して、回転させてひっくり返すことにより、把持部材6を第二の面2b側から第一の面2a側に移動させ、化粧用パフ1を得る。
【0035】
このようにして、第一の面2a及び第二の面2bを有する化粧用パフ部材2と、第一の面2aに積層された熱溶融性の樹脂シート4と、樹脂シート4に積層されたシート状の支持部材8と、支持部材8のうちの樹脂シート4とは反対側の面に配置され、その両端部が支持部材8と樹脂シート4との間に挟持されている略帯状の把持部材6と、を具備する化粧用パフ1が得られる。
【0036】
以上、本発明の化粧用パフの製造方法及び化粧用パフの一実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものでない。本発明の技術的思想を利用して種々の設計変更が可能であり、それら設計変更の内容もすべて本発明に含まれることは言うまでもない。
【0037】
例えば、化粧品パフ部材2としては、
図3に示す構造のものが、柔軟性、弾力性及び使い心地等の観点から好ましい。
図3に示すパフ部材2は、大円形状の織布22に、小円形状のスポンジ体23を積層し、外側に起毛部を有する起毛布帛25でこれらを下方から覆った構造を有している。起毛布帛25は、上方にスポンジ体23が曝露している状態で、織布22及びスポンジ体23の積層体を覆っている。
【0038】
以上のような本発明の化粧用パフ1は、製造効率及び生産性に優れた製造方法により製造することができる。また、本発明の化粧用パフ1では、把持部材6において指を通すことのできる部分(即ち、支持部材8上に出ている把持部材6の長さに相当)を確保でき、したがって指を通し易く使用時の利便性に優れる。
【符号の説明】
【0039】
1・・・化粧用パフ
2・・・パフ部材
2a・・・第一の面
2b・・・第二の面
4・・・樹脂シート
6・・・把持部材
6a,6b・・・端部
8・・・支持部材
21・・・治具
21a・・・開口
21b、21c・・・溝部
22・・・織布
23・・・スポンジ体
25・・・起毛布帛