(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161251
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】電線用ストッパー及びそれを用いた鳥害防止具の設置工法
(51)【国際特許分類】
H02G 7/00 20060101AFI20221014BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20221014BHJP
A01M 29/32 20110101ALI20221014BHJP
【FI】
H02G7/00
H02G1/02
A01M29/32
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065917
(22)【出願日】2021-04-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】390009999
【氏名又は名称】日動電工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】木村 英生
(72)【発明者】
【氏名】元家 正信
(72)【発明者】
【氏名】宮古 尚
【テーマコード(参考)】
2B121
5G352
5G367
【Fターム(参考)】
2B121AA07
2B121BB32
2B121EA21
2B121FA13
5G352AC02
5G367BB11
(57)【要約】
【課題】電線に移動自在に取付けられる鳥害防止具等の電線付設器具の固定に有用な電線用ストッパー及びそれを用いた鳥害防止具の設置工法を提供する
【解決手段】電線1の外周面を把持する把持部4を有し、且つ、把持部4への電線導入用の開口8を形成可能な揺動開閉式の一対の把持部材2,3と、一対の把持部材2,3を開口閉止位置に閉じ付勢する閉じ付勢部5と、一対の把持部材2,3を開口閉止位置よりも閉じ側に揺動させた電線把持位置で把持固定するロック部6と、を備えた電線用ストッパー。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の外周面を把持する把持部を有し、且つ、前記把持部への電線導入用の開口を形成可能な揺動開閉式の一対の把持部材と、一対の前記把持部材を開口閉止位置に閉じ付勢する閉じ付勢部と、一対の前記把持部材を前記開口閉止位置よりも閉じ側に揺動させた電線把持位置で把持固定するロック部と、を備えた電線用ストッパー。
【請求項2】
少なくとも一方の前記把持部材には、一対の前記把持部材の開き揺動で形成された開口に前記電線を導入案内する導入案内部が設けられている請求項1記載の電線用ストッパー。
【請求項3】
前記閉じ付勢部は、一対の前記把持部材における電線長手方向の両側部位に配設されている請求項1又は2記載の電線用ストッパー。
【請求項4】
前記把持部には、一対の前記把持部材による前記電線把持位置への閉じ揺動に伴って前記電線の外周面との間で圧縮される弾性体が設けられている請求項1~3のいずれか1項に記載の電線用ストッパー。
【請求項5】
前記閉じ付勢部は、一対の前記把持部材における揺動方向で相対向する部位に、一対の前記把持部材の開き揺動に伴って互いに当接する撓み片を設けて構成されている請求項1~4のいずれか1項に記載の電線用ストッパー。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電線用ストッパーを用いた鳥害防止具の設置工法であって、前記電線に移動自在に取付けられる所定数の前記鳥害防止具を準備し、先行の前記鳥害防止具と後続の前記鳥害防止具とを連結しながら、所定数の前記鳥害防止具を順番に前記電線に取付けて所定設置位置に送り込む設置作業工程と、最終順位の前記鳥害防止具を挟む状態で前記電線用ストッパーを前記電線に取付ける固定作業工程と、を備える鳥害防止具の設置工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線に移動自在に取付けられる鳥害防止具等の電線付設器具の固定技術に関し、具体的には鳥害防止具等の電線付設器具の固定に有用な電線用ストッパー及びそれを用いた鳥害防止具の設置工法に関する。
【背景技術】
【0002】
電線に移動自在に取付けられる電線付設器具の一例として、特許文献1に示す鳥害防止具がある。この鳥害防止具には、電線の長手方向に間隔を隔てて電線に取付け自在な一対の線条支持体と、電線の上方側に位置する状態で一対の線条支持体に亘って張設自在な線条体とが備えられている。一対の線条支持体の夫々には、電線を挿通自在な挿通孔部と、その挿通孔部を開口させる開口状態と閉塞させる閉塞状態とに切替自在な開閉部とが備えられている。さらに、電線の長手方向の一方側に位置する線条支持体には、別の鳥害防止具の線条支持体の第2連結部と連結自在な第1連結部が備えられている。電線の長手方向の他方側に位置する線条支持体には、別の鳥害防止具の線条支持体の第1連結部と連結自在な第2連結部が備えられている。
【0003】
鳥害防止具の設置工法では、電線に移動自在に取付けられる所定数の鳥害防止具を準備する。先行の鳥害防止具と後続の鳥害防止具とを第1連結部及び第2連結部で連結しながら、所定数の鳥害防止具を順番に電線に取付けて所定設置位置に送り込む設置作業が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の鳥害防止具の設置工法では、一箇所の設置作業場所において、所定数の鳥害防止具を、先行の鳥害防止具と連結しながら順番に電線に取付けて所定設置位置に送り込むことができる。これにより、作業工具を用いた高所作業であっても、鳥害防止具の設置作業を能率良く実施することができる。しかし、電線に取付けられた所定数の鳥害防止具は、隣接するもの同士が相互に連結されているものの、電線に沿って移動可能な状態にある。そのため、風等の影響で所定数の鳥害防止具が電線の所定設置位置から移動してしまう可能性がある。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、電線に移動自在に取付けられる鳥害防止具等の電線付設器具の固定に有用な電線用ストッパー及びそれを用いた鳥害防止具の設置工法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、電線用ストッパーであって、電線の外周面を把持する把持部を有し、且つ、前記把持部への電線導入用の開口を形成可能な揺動開閉式の一対の把持部材と、一対の前記把持部材を開口閉止位置に閉じ付勢する閉じ付勢部と、一対の前記把持部材を前記開口閉止位置よりも閉じ側に揺動させた電線把持位置で把持固定するロック部と、を備えた点にある。
【0008】
本構成によれば、開口閉止位置にある一対の把持部材を、閉じ付勢部の閉じ付勢力に抗して開き側に揺動操作し、一対の把持部材間に形成された開口から電線を把持部内に導入案内する。電線導入後に、一対の把持部材に加えられていた開き操作力を解除すると、一対の把持部材は、閉じ付勢部の閉じ付勢力で開口閉止位置に揺動復帰する。この開口閉止位置では、把持部内に導入された電線は、一対の把持部材から外部に抜け出すことはできない。換言すれば、一対の把持部材は電線に仮固定されるので脱落することは無い。電線に仮固定された一対の把持部材を開口閉止位置から電線把持位置に揺動操作すると、ロック部が作動し、一対の把持部材は把持部を介して電線に把持固定される。
したがって、一対の把持部材を開き操作し、それの開口から電線を把持部内に導入したのち、一対の把持部材に加えられていた開き操作力を解除するだけで、一対の把持部材を電線に素早く仮固定することができる。それ故に、作業工具を用いた高所作業であっても、電線に対するストッパーの固定作業を能率良く、容易に行うことができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、少なくとも一方の前記把持部材には、一対の前記把持部材の開き揺動で形成された開口に前記電線を導入案内する導入案内部が設けられている点にある。
【0010】
一対の把持部材間に形成された開口から電線を把持部内に導入案内する際、少なくとも一方の把持部材に設けられた導入案内部に沿って電線を把持部内に確実、スムーズに導入案内することができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、前記閉じ付勢部は、一対の前記把持部材における電線長手方向の両側部位に配設されている点にある。
【0012】
本構成によれば、一対の把持部材における電線長手方向の両側部位に閉じ付勢部を配設することにより、開閉揺動時に、一対の把持部材の両側部位での拗れが抑制される。これにより、一対の把持部材をバランス良くスムーズに開閉揺動させることができる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、前記把持部には、一対の前記把持部材による前記電線把持位置への閉じ揺動に伴って前記電線の外周面との間で圧縮される弾性体が設けられている点にある。
【0014】
本構成によれば、電線に仮固定された一対の把持部材を開口閉止位置から電線把持位置に揺動操作すると、把持部に設けられた弾性体が電線の外周面との間で圧縮される。これにより、電線の外径が少し変動しても、電線用ストッパーを電線に密着状態で強力に把持固定することができる。
【0015】
本発明の第5特徴構成は、前記閉じ付勢部は、一対の前記把持部材における揺動方向で相対向する部位に、一対の前記把持部材の開き揺動に伴って互いに当接する撓み片を設けて構成されている点にある。
【0016】
本構成によれば、開口閉止位置にある一対の把持部材を開き側に揺動操作したとき、一対の把持部材における揺動方向で相対向する部位に設けた撓み片が当接し、その当接以降の開き操作に伴って一対の撓み片の撓み変形量が増加する。この一対の撓み片の撓み変形量が、一対の把持部材を開口閉止位置に戻し揺動させる閉じ付勢力となる。
したがって、一対の把持部材を開口閉止位置に閉じ付勢する閉じ付勢部を、一対の撓み片といった簡単、安価な構造で構成することができる。しかも、開口閉止位置では、一対の撓み片が無負荷で接触又は非接触の状態にあり、付勢力解除構造を設けることなく付勢力を確実に解除することができる。
【0017】
本発明の第1~5特徴構成のいずれか一つに記載の電線用ストッパーを用いた鳥害防止具の設置工法であって、前記電線に移動自在に取付けられる所定数の前記鳥害防止具を準備し、先行の前記鳥害防止具と後続の前記鳥害防止具とを連結しながら、所定数の前記鳥害防止具を順番に前記電線に取付けて所定設置位置に送り込む設置作業工程と、最終順位の前記鳥害防止具を挟む状態で前記電線用ストッパーを前記電線に取付ける固定作業工程と、を備える点にある。
【0018】
本構成によれば、一箇所の設置作業場所において、所定数の鳥害防止具を、先行の鳥害防止具と連結しながら順番に電線に取付けて所定設置位置に送り込むことができる。これにより、作業工具を用いた高所作業であっても、鳥害防止具の設置作業を能率良く実施することができる。しかも、所定設置位置に設置された所定数の鳥害防止具のうち、最終順位の鳥害防止具を挟む状態で少なくとも二個の電線用ストッパーを電線に取付けることにより、鳥害防止具の設置作業場所において、連結された所定数の鳥害防止具を電線に同時に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】一対の把持部材を電線把持位置に操作した時の縦断面図
【
図5】一対の把持部材を開口閉止位置に操作した時の縦断面図
【
図6】一対の把持部材を最大開き位置に操作した時の縦断面図
【
図9】(a)挿通孔部を開口状態とした支持体を長手方向の一方側から見た斜視図、(b)挿通孔部を閉塞状態とした支持体を長手方向の一方側から見た斜視図
【
図10】(a)挿通孔部を開口状態とした支持体を長手方向の他方側から見た斜視図、(b)挿通孔部を閉塞状態とした支持体を長手方向の他方側から見た斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1~
図4は、
図14に示す電線1に移動自在に取付けられている鳥害防止具B(電線付設器具の一例)を固定する場合に用いられる電線用ストッパーAを示す。この電線用ストッパーAは、電線1の外周面を把持する把持部4を有し、且つ、把持部4への電線導入用の開口8(
図6参照)を形成可能な揺動開閉式の一対の把持部材2,3と、一対の把持部材2,3を開口閉止位置P2(
図5参照)に閉じ付勢する閉じ付勢部5と、一対の把持部材2,3を開口閉止位置P2よりも閉じ側に揺動させた電線把持位置P1(
図4、
図7参照)で把持固定するロック部6と、を備える。
【0021】
一対の把持部材2,3は、ポリカーボネート系樹脂(PC/PETアロイ)製で、全長が少し長い固定操作側(
図4の左側)の把持部材2と、全長が少し短い可動操作側(
図4の右側)の把持部材3とに分かれる。
固定操作側の把持部材2は、
図1~
図4に示すように、電線1の外径よりも大きな半径で略半円形状に湾曲する弧状把持面21aを有する弧状把持板部21と、この弧状把持板部21の下端から下方に一体的に延設される操作板部22と、弧状把持板部21の上端で、且つ、電線1の長手方向に沿う幅方向の中央部に一体形成される軸受部23と、を備える。
操作板部22の下半側部位22Bには、一対の把持部材2,3を
図5に示す開口閉止位置P2から
図4に示す電線把持位置P1に揺動操作したとき、可動操作側の把持部材3における操作板部32の細幅の下半側部位32Bが入り込み可能な貫通孔24が形成されている。
また、操作板部22の下半側部位22Bで、且つ、可動操作側の把持部材3における操作板部32の下半側部位32Bと相対向する内側面22aには、
図13に示す作業用工具C等での挟持操作時における滑り止め用の複数条の滑り止め突起25が形成されている。
【0022】
また、
図1に示すように、弧状把持板部21及び操作板部22の幅方向両側部には、弧状把持板部21の上端から操作板部22の下端までの全域にわたる長さの左右一対の側板部26が一体形成されている。左右一対の側板部26の外面は、電線1に取付けられた鳥害防止具Bと当接して移動を阻止する平滑なストッパー面26aに構成されている。左右一対の側板部26のうち、弧状把持板部21に対応する円弧状側板部分26Aは、操作板部22に対応する直線状側板部分26Bよりも幅広に構成され、鳥害防止具Bと電線長手方向で適切に当接するようにしている。
【0023】
可動操作側の把持部材3は、
図1~
図4に示すように、電線1の外径よりも大きな半径で略半円形状に湾曲する弧状把持面31aを有する弧状把持板部31と、この弧状把持板部31の下端から下方に一体的に延設される操作板部32と、弧状把持板部31の上端で、且つ、電線1の長手方向に沿う幅方向の中央部に一体形成される円柱状の揺動支点軸部33と、を備える。
操作板部32の下半側部位32Bは、下方ほど固定操作側の把持部材2における操作板部22に近接する傾斜姿勢に構成されている。そのため、一対の把持部材2,3を
図5に示す開口閉止位置P2から
図4に示す電線把持位置P1に揺動操作するとき、一対の把持部材2,3における操作板部22,32の下半側部位22B,32Bを、
図13に示す作業用工具C等で容易に挟持操作することができる。
また、可動操作側の把持部材3における操作板部32の下半側部位32Bの外側面には、
図13に示す作業用工具C等での挟持操作時における滑り止め用の複数条の滑り止め突起34が形成されている。
【0024】
また、
図2に示すように、可動操作側の把持部材3における弧状把持板部31及び操作板部32の幅方向両側部には、弧状把持板部31の上端から操作板部32の上下中間位置までわたる長さの左右一対の側板部35が一体形成されている。左右一対の側板部35の外面は、固定操作側の把持部材2と同様に、電線1に取付けられた鳥害防止具Bと当接して移動を阻止する平滑なストッパー面35aに構成されている。左右一対の側板部35のうち、弧状把持板部31に対応する円弧状側板部分35Aは、操作板部32に対応する直線状側板部分35Bよりも幅広に構成され、鳥害防止具Bと電線長手方向で適切に当接するようにしている。
【0025】
固定操作側の把持部材2の軸受部23は、
図3、
図4、
図6に示すように、可動操作側の把持部材3の揺動支点軸部33が電線1の長手方向に沿う水平姿勢で上方から嵌入する軸受溝23Aを有する。この軸受溝23Aの溝底部23aは、揺動支点軸部33の外径よりも僅かに大なる内径に形成されている。この溝底部23aにおいて、揺動支点軸部33を水平な揺動軸芯X周りで回転自在に支承する。軸受溝23Aのうち、溝底部23a及び上方広がりの溝開口部23cを除く中間溝部23bは、揺動支点軸部33の外径よりも僅かに小なる溝幅に形成されている。中間溝部23bは、揺動支点軸部33を無理嵌め可能で、溝底部23aに挿入された揺動支点軸部33の抜け出し移動を阻止する。
【0026】
把持部4は、
図1~
図4に示すように、一対の把持部材2,3における弧状把持板部21A,31Aの弧状把持面21a,31aに、二分割構造のゴム状の弾性体41を設けて構成されている。弾性体41は、例えば、オレフィン系エラストマー(TPO)製で、一対の同一形状の半円筒状に成形された分割弾性体42から構成されている。一対の分割弾性体42は、
図7に示すように、一対の把持部材2,3による電線把持位置P1への閉じ揺動に伴って電線1の外周面との間で圧縮される。この一対の分割弾性体42の圧縮により、電線1の外径が少し変動しても、電線用ストッパーAを電線1に密着状態で強力に把持固定することができる。
一対の分割弾性体42の分割面42aの中心部には、電線1に対する位置決め用の半円状の位置決め溝43が電線長手方向に沿って形成されている。
【0027】
図3に示すように、両弧状把持板部21A,31Aの弧状把持面21a,31aの幅方向両側部には、一対の分割弾性体42の幅方向の移動を規制する部分円弧状の一対の移動規制突起44が一体形成されている。一対の分割弾性体42の各々は、幅方向中央側の大径筒部42Aと幅方向両端側の小径筒部42Bと、を備える。そのうち、大径筒部42Aが、弧状把持面21a,31aの両移動規制突起44間に嵌合し、大径筒部42Aと両小径筒部42Bと間の段差面42Cが、弧状把持面21a,31aの両移動規制突起44の内側面44aに当接する。この分割弾性体42の両段差面42Cと両移動規制突起44の内側面44aとの当接によって、弧状把持板部21A,31Aに対する分割弾性体42の電線長手方向での移動が規制される。
【0028】
また、
図3に示すように、両弧状把持板部21A,31Aの幅方向中央位置で、且つ、周方向の中央位置には、弾性体41の径方向で貫通する円形状の係合孔45が形成されている。各分割弾性体42の大径筒部42Aの外周面における幅方向中央位置で、且つ、周方向の中央位置には、それに対応する弧状把持板部21A,31Aの係合孔45に係合する円柱状の係合突起46が一体形成されている。
【0029】
閉じ付勢部5は、
図1~
図4に示すように、一対の把持部材2,3における電線長手方向(幅方向)の両側部位の対称位置に配設されている。このように閉じ付勢部5を対称配設することで、開閉揺動時に、一対の把持部材2,3の幅方向両側部位での拗れが抑制される。これにより、一対の把持部材2,3をバランス良くスムーズに開閉揺動させることができる。
【0030】
閉じ付勢部5は、一対の把持部材2,3における揺動方向で相対向する部位に、一対の把持部材2,3の開き揺動に伴って互いに当接して撓み変形量が増加する撓み片51,52を設けて構成されている。
固定操作側の把持部材2に設けられる一方の撓み片51は、
図1、
図3に示すように、弧状把持板部21の幅方向両側の下側部位から外面側に弧状に突出する状態で片持ち状に一体形成されている。可動操作側の把持部材3に設けられる他方の撓み片52は、
図1~
図3に示すように、弧状把持板部31の上端の幅方向両側で、且つ、揺動支点軸部33の両端を支持する大径軸部36から一方の撓み片51に対向突出する状態で略「へ」の字状に一体形成されている。固定操作側の把持部材2に対する可動操作側の把持部材3の開き揺動によって、
図5、
図6に示すように、一方の撓み片51の外面に他方の撓み片52の先端部が当接する。
【0031】
図5に示すように、固定操作側の把持部材2の撓み片51に対して、可動操作側の把持部材3の撓み片52が無負荷で接触した状態では、一対の把持部材2,3に閉じ付勢力は発生していない。そのため、この閉じ付勢力が消滅した位置が一対の把持部材2,3の開口閉止位置P2となる。一対の把持部材2,3を開口閉止位置P2から開き側に揺動操作すると、その開き揺動に伴って当接状態にある両撓み片51,52の撓み変形量が増加する。一対の把持部材2,3の開き操作力を解除した時の両撓み片51,52の弾性復元力が閉じ付勢力として作用する。
図6は、一対の把持部材2,3の最大開き位置P3を示す。この最大開き位置P3は、固定操作側の把持部材2における軸受部23の外周面に形成した揺動規制突起37と、可動操作側の把持部材3における弧状把持板部31の外面31bとの当接によって規制される。
【0032】
そして、上述のように、一対の把持部材2,3を開口閉止位置P2に閉じ付勢する閉じ付勢部5を、一対の撓み片51,52といった簡単、安価な構造で構成することができる。しかも、開口閉止位置P2では、一対の撓み片51,52が無負荷で接触する又は非接触の状態にあり、付勢力解除構造を設けることなく付勢力を確実に解除することができる。
【0033】
ロック部6は、
図3~
図5に示すように、固定操作側の把持部材2における操作板部22に一体形成したロックアーム61と、可動操作側の把持部材3における操作板部32の上半側部位32Aに貫通形成したロック孔62と、を備える。ロックアーム61は、揺動軸芯Xを中心とする半径の円弧状に形成されている。ロックアーム61の幅は、ロック孔62を通過移動可能な幅に設定されている。ロックアーム61の上面における円弧方向に沿った電線把持領域の三箇所には、電線1の外径に応じてロック孔62の外面側の上側開口縁62aと選択的に係合可能なロック爪63が一体形成されている。
【0034】
一対の把持部材2,3を開口閉止位置P2から電線把持位置P1に閉じ操作した時、ロックアーム61の撓み変形によって各ロック爪63はロック孔62を通過移動する。そのため、この通過移動時に接触する各ロック爪63の背面は、
図6に示すように、上方ほど固定操作側の把持部材2における操作板部22側に位置する傾斜面63aに形成されている。各ロック爪63の傾斜面63aに接触するロック孔62の上側内面は、上方ほど固定操作側の把持部材2における操作板部22側に位置する傾斜面62bに形成されている。
【0035】
そして、一対の把持部材2,3が電線把持位置P1の一つで、最大閉じ位置に揺動した最小径ロック位置にあるとき、ロックアーム61の基端側に位置するロック爪63とロック孔62の外面側の上側開口縁62aとが係合する。一対の把持部材2,3が電線把持位置P1の一つで、中間閉じ位置に揺動した中間径ロック位置にあるとき、ロックアーム61の中間に位置するロック爪63とロック孔62の外面側の上側開口縁62aとが係合する。一対の把持部材2,3が電線把持位置P1の一つで、最小閉じ位置に揺動した最大径ロック位置にあるとき、ロックアーム61の先端側に位置するロック爪63とロック孔62の外面側の上側開口縁62aとが係合する。
【0036】
また、
図5に示すように、中間位置のロック爪63の先端部及び先端位置のロック爪63の先端部には、可動操作側の把持部材3における上半側部位32Aの外面に形成した係合凹部38に係合する係合凸部63bが形成されている。
図4は、一対の把持部材2,3が電線把持位置P1の一つである最小径ロック位置にある操作状態を示す。この
図4では、電線1が存在しない。そのため、一対の分割弾性体42は圧縮されていないので、一対の分割弾性体42の拡径側への弾性復元力は生じていない。したがって、
図4においては、ロックアーム61の基端側に位置するロック爪63とロック孔62の外面側の上側開口縁62aとの間に隙間が発生した状態で表現されている。
しかし、電線1が存在する場合には、一対の分割弾性体42の拡径側への弾性復元力が発生する。その弾性復元力により、各ロック爪63とロック孔62の外面側の上側開口縁62aが当接する。
【0037】
図5、
図6に示すように、一対の把持部材2,3の少なくとも一方には、一対の把持部材2,3の開き揺動で形成された開口8に電線1を導入案内する導入案内部7が設けられている。これにより、一対の把持部材2,3間に形成された開口8から電線1を把持部4内に導入案内する際、把持部材2,3の少なくとも一方に設けられた導入案内部7に沿って電線1を把持部4内に確実、スムーズに導入案内することができる。
【0038】
本実施形態では、導入案内部7は両把持部材2,3に設けられている。導入案内部7は、
図5、
図6に示すように、固定操作側の把持部材2における操作板部22と、この操作板部22に形成されたロックアーム61と、可動操作側の把持部材3における操作板部32とから兼用構成されている。
図5に示すように、一対の把持部材2,3が開口閉止位置P2にある場合には、固定操作側の把持部材2のロックアーム61の先端が、可動操作側の把持部材3のロック孔62内に入り込んだ開口閉止状態にある。この開口閉止状態では、固定操作側の把持部材2における操作板部22の内側面22aと、ロックアーム61の弧状下面61aと、可動操作側の把持部材3における操作板部32の内側面32aとにより、電線1を上方から掛け止め可能な下向き開口の掛止凹部71が形成されている。
【0039】
掛止凹部71内に掛け止められた電線1は、
図5に示すように、ロックアーム61の弧状下面61aに沿って可動操作側の把持部材3における操作板部32側に滑り移動する。つまり、電線1は、ロックアーム61の弧状下面61aと可動操作側の把持部材3における操作板部32の内側面32aとで形成される入隅部72に滑り移動する。
【0040】
次に、電線1が入隅部72に位置する状態で、固定操作側の把持部材2における操作板部22を、
図13に示す作業用工具C等で挟持して下方に押し下げる。これにより、
図6に示すように、電線1に当接している可動操作側の把持部材3が揺動軸芯X周りで開き揺動する。この開き揺動に伴って、ロックアーム61の先端部と可動操作側の把持部材3における操作板部32の内側面32aとの間に開口8が形成される。電線1は、可動操作側の把持部材3における操作板部32の内側面32aに沿って開口8から分割弾性体42の分割面42aの中心部の位置決め溝43に導入案内される。
【0041】
鳥害防止具Bとしては、種々の形態のものが存在するが、本願発明の電線用ストッパーAは、いずれの鳥害防止具Bにも適用することができる。
次に、鳥害防止具Bの一例を、
図8~
図12に基づいて悦明する。
鳥害防止具Bには、
図8に示すように、電線1の長手方向に間隔を隔てて電線1に取付自在な一対の支持体80と、電線1の上方側に位置する状態で一対の支持体80に亘って架設自在な上方側架設体81と、電線1の下方側に位置する状態で一対の支持体80に亘って架設自在な下方側架設体82と、が備えられている。
【0042】
支持体80は、
図8~
図12に示すように、支持体本体83と可動体84との2つの部材を組み付けて構成されている。可動体84は、支持体本体83に対して上下方向に可動自在に組み付けられている。支持体本体83には、上下方向に沿って溝部85が形成されている。可動体84は、溝部85に係合する状態で組み付けられており、溝部85に案内される状態で支持体本体83に対して上下方向に移動自在に構成されている。
【0043】
支持体80には、電線1を挿通自在な挿通孔部86と、挿通孔部86を閉塞状態にロックするロック部87と、上方側架設体81の端部を固定する上方側固定部88と、下方側架設体82の端部を固定する下方側固定部89と、が備えられている。
挿通孔部86には、
図9(a)、(b)に示すように、その上方側の部分を構成する上方側凹部86aとその下方側の部分を構成する下方側凹部86bとが備えられている。挿通孔部86は、
図9(b)に示すように、上方側凹部86aと下方側凹部86bとにより円形状に構成されている。
図9に示すように、挿通孔部86の上方側凹部86aは、支持体本体83の上下中間部位に備えられている。挿通孔部86の下方側凹部86bは、可動体84に備えられている。
図9(a)に示すように、可動体84が支持体本体83に対して下方側に移動することで、下方側凹部86bと上方側凹部86aとが離間して挿通孔部86が開口する開口状態に切り替わり、
図9(b)に示すように、可動体84が支持体本体83に対して上方側に移動することで、下方側凹部86bと上方側凹部86aとが接近して挿通孔部86が閉塞する閉塞状態に切り替わる。
【0044】
上方側架設体81は、繊維強化プラスチック(FRP)製の直線状に延びる棒状の延設体により構成されている。このように、上方側架設体81を棒材によって構成することで、一対の支持体80の上部が互いに接近離間することを防止し、一対の支持体80の上部を適正姿勢の間隔に保持している。
図8に示すように、挿通孔部86に挿通されている電線1と上方側架設体81との上下方向の第1間隔D1は、鳥の進入を防止する間隔として予め設定された設定間隔以下となるように構成されている。また、挿通孔部86に挿通されている電線1と、下方側固定部89に固定されている下方側架設体82における電線長手方向の中央部との間隔が、設定間隔以下の第2間隔D2に設定されている。
【0045】
下方側架設体82は、繊維強化プラスチック(FRP)製の直線状に延びる上下方向に弾性変形自在な棒状の延設体により構成されている。この下方側架設体82は、上方側架設体81より重く構成されている。鳥害防止具Bは、下方側架設体82として上方側架設体81より太い棒材を採用する等により、
図8に示すように、鳥害防止具Bを電線1に取り付けた状態で鳥害防止具Bの重心が電線1より下方側に位置している。そのため、支持体80が電線1周りに回転したとしても、下方側架設体82の自重により、一対の支持体80の夫々が電線1周りに回転することで、鳥害防止具Bの姿勢が
図8に示す姿勢に復帰するようになっている。このように、鳥害防止具Bに下方側架設体82を備えることで、鳥害防止具Bの姿勢を安定させている。
【0046】
電線1に複数の鳥害防止具Bを取り付ける場合、電線長手方向で隣接する鳥害防止具Bの支持体80同士を連結している。次に、支持体80同士を連結する構成について説明する。
両支持体80は同一形状に構成されており、各支持体80は、電線長手方向の一方側の端部に第1連結部90を備え、電線長手方向の他方側の端部に第2連結部91を備えている。そのため、鳥害防止具Bに組付けられた状態では、電線長手方向の一端側に位置する支持体80の外方側に、電線長手方向に並ぶ別の鳥害防止具Bの支持体80の第2連結部91と連結自在な第1連結部90が配置される。また、鳥害防止具Bの電線長手方向の他端側に位置する支持体80の外方側には、電線長手方向に並ぶ別の鳥害防止具Bの支持体80の第1連結部90と連結自在な第2連結部91が配置される。
【0047】
第1連結部90には、
図9、
図11、
図12に示すように、電線長手方向で支持体本体83との間に挿脱用隙間90aを形成する状態で板状係合部90bが備えられている。挿脱用隙間90aは、電線長手方向に水平に直交する左右方向の外方側及び上下方向に開口された隙間となっている。
【0048】
第2連結部91には、
図10~
図12に示すように、支持体本体83の左右両端部から電線長手方向に折り曲げて延びる左右一対の第1折曲部91aと、その第1折曲部91aの先端部から左右方向の内方側に折り曲げて延びる左右一対の第2折曲部91bとが備えられている。これにより、第2連結部91には、支持体本体83と第1折曲部91aと第2折曲部91bとに囲まれた挿脱用空間91cが備えられている。挿脱用空間91cは、電線長手方向の他方側及び上下方向に開口する空間となっている。
【0049】
先行の鳥害防止具Bに後続の鳥害防止具Bを連結する場合は、
図9~
図12に示すように、先行の鳥害防止具Bの第2連結部91に対して後続の鳥害防止具Bの第1連結部90を上下方向に移動操作する。このとき、第2連結部91の挿脱用空間91cが上下方向に開口しているので、第1連結部90の板状係合部90bが、第2連結部91における挿脱用空間91cに挿入される。また、第1連結部90の挿脱用隙間90aが上下方向に開口しているので、第2連結部91の第2折曲部91bが、第1連結部90における挿脱用隙間90aに挿入される。これにより、
図12に示すように、第1連結部90と第2連結部91とが係合することになり、先行の鳥害防止具Bに後続の鳥害防止具Bを連結させることができる。
【0050】
次に、上述の電線用ストッパーAを用いた鳥害防止具Bの設置工法について説明する。
[設置作業工程]
図11の右側の鳥害防止具Bのように、作業者9は、鳥害防止具Bの支持体本体83に対して可動体84を下方側に移動させ、
図9(a)、
図10(a)に示すように、下方側凹部86bと上方側凹部86aとを上下方向に離間させて、挿通孔部86を開口状態としておく。
そして、
図13に示すように、一箇所の設置作業場所に駐車した高所作業車のバスケット10において、作業者9は、挿通孔部86が開口状態にある鳥害防止具Bを作業用工具Cで挟持する。挟持された鳥害防止具Bを、それの挿通孔部86の開口が電線1に水平方向で対面する高さ位置に持ち上げたのち、電線1側に水平に移動操作する。
図11の右側の鳥害防止具B、及び、
図9(a)、
図10(a)に示すように、鳥害防止具Bの一対の支持体80の挿通孔部86に電線1を挿通させる。
【0051】
次に、作業者9は、
図12、及び、
図9(b)、
図10(b)に示すように、電線1に掛け止められた鳥害防止具Bの各支持体80の支持体本体83を下方側に移動操作する。この支持体本体83の下方側への移動操作に伴って、下方側に移動される支持体本体83に対して、可動体84が電線1によって上方側への押圧力を受けることになる。よって、可動体84が支持体本体83に対して相対的に上方側に移動して、
図12の鳥害防止具Bのように、下方側凹部86bと上方側凹部86aとが接近して挿通孔部86が開口状態から閉塞状態に切り替えられる。この挿通孔部86が閉塞状態となるのに伴って、ロック部87は、挿通孔部86を閉塞状態にロックするロック状態に切り替えられる。
【0052】
上述の手順により、
図13、
図14に示すように、所定数の鳥害防止具Bを順番に電線1に取付けて所定設置位置に送り込む。このとき、先行の鳥害防止具Bの電線長手方向の他端側の第2連結部91と、後続の鳥害防止具Bの電線長手方向の一端側の第1連結部90とが連結されている。先行の鳥害防止具Bに後続の鳥害防止具Bを連結する場合は、
図11に示すように、先行の鳥害防止具Bの第2連結部91に対して、後続の鳥害防止具Bの第1連結部90を上下方向に移動操作する。これにより、第1連結部90の板状係合部90bが、第2連結部91における挿脱用空間91cに挿入される。また、第2連結部91の第2折曲部91bが、第1連結部90における挿脱用隙間90aに挿入される。これにより、
図12に示すように、第1連結部90と第2連結部91とが係合連結される。
【0053】
[固定作業工程]
図14に示すように、最終順位の鳥害防止具Bにおける電線長手方向の他端側の支持体80を挟む状態で二個の電線用ストッパーAを電線1に取付ける。一方の電線用ストッパーAの側板部26,35のストッパー面26a、35a(
図1、
図2参照)は、他端側の支持体80における外方側の第2連結部91に接当又は近接配置される。他方の電線用ストッパーAの側板部26,35のストッパー面26a、35aは、他端側の支持体80における内方側の第1連結部90に接当又は近接配置される。
【0054】
電線用ストッパーAを電線1に取付ける場合は、
図5に示すように、電線用ストッパーAの一対の把持部材2,3を開口閉止位置P2に設定する。一対の把持部材2,3が開口閉止位置P2にある状態では、固定操作側の把持部材2における操作板部22の内側面22aと、ロックアーム61の弧状下面61aと、可動操作側の把持部材3における操作板部32の内側面32aとにより、電線1を上方から掛け止め可能な下向き開口の掛止凹部71が形成されている。
【0055】
電線用ストッパーAの固定操作側の把持部材2の下端部を作業用工具Cで挟持する。挟持された電線用ストッパーAを、それの掛止凹部71の開口が電線1の上側に位置する高さ位置に持ち上げたのち、電線用ストッパーAの掛止凹部71を電線1に掛け止める。
掛止凹部71内に掛け止められた電線1は、
図5に示すように、ロックアーム61の弧状下面61aに沿って可動操作側の把持部材3における操作板部32側に滑り移動する。つまり、電線1は、ロックアーム61の弧状下面61aと可動操作側の把持部材3における操作板部32の内側面32aとで形成される入隅部72に滑り移動する。
【0056】
次に、電線1が入隅部72に位置する状態で、固定操作側の把持部材2における操作板部22を、
図13に示す作業用工具Cで下方に押し下げ操作する。これにより、
図6に示すように、電線1に当接している可動操作側の把持部材3が揺動軸芯X周りで開き揺動する。この開き揺動に伴って、ロックアーム61の先端部と可動操作側の把持部材3における操作板部32の内側面32aとの間に開口8が形成される。電線1は、可動操作側の把持部材3における操作板部32の内側面32aに沿って開口8から分割弾性体42の分割面42aの中心部の位置決め溝43に導入案内される。
【0057】
電線1が一対の分割弾性体42間に導入案内されたのち、一対の把持部材2,3に対する開き操作力を解除する。一対の把持部材2,3は、両撓み片51,52の弾性復元力によって一対の分割弾性体42を圧縮しながら開口閉止位置P2に閉じ揺動する。これにより、一対の把持部材2,3を電線1に素早く仮固定することができる。
【0058】
次に、一対の把持部材2,3における操作板部22,32の下端部を作業用工具Cで挟持し、一対の把持部材2,3を、一対の分割弾性体42を更に圧縮しながら開口閉止位置P2から電線把持位置P1に閉じ操作する。この閉じ操作によってロックアーム61の一つのロック爪63とロック孔62の外面側の上側開口縁62aとが係合し、電線用ストッパーAを電線1に密着状態で強力に把持固定することができる。
【0059】
〔別実施形態〕
(1)上述の実施形態では、導入案内部7を、固定操作側の把持部材2における操作板部22と、この操作板部22に形成されたロックアーム61と、可動操作側の把持部材3における操作板部32とから兼用構成した。しかし、この構成に限定されない。例えば、一対の把持部材2,3の開き揺動で形成された開口8に電線1を導入案内する専用の導入案内部材を、一対の把持部材2,3の少なくとも一方に設けて実施してもよい。
【0060】
(2)上述の実施形態では、閉じ付勢部5を、一対の把持部材2,3における揺動方向で相対向する部位に、一対の把持部材2,3の開き揺動に伴って互いに当接する撓み片51,52を設けて構成した。しかし、この構成に限定されない。例えば、閉じ付勢部5をコイルバネや板バネ等から構成してもよい。
【0061】
(3)上述の実施形態では、閉じ付勢部5を、一対の把持部材2,3における電線長手方向(幅方向)の両側部位の対称位置に配設した。しかし、この構成に限定されない。例えば、閉じ付勢部5を、一対の把持部材2,3における電線長手方向の中央位置に配設して実施してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 電線
2 把持部材
3 把持部材
4 把持部
5 閉じ付勢部
6 ロック部
7 導入案内部
8 開口
41 弾性体
51 撓み片
52 撓み片
A 電線用ストッパー
B 鳥害防止具
P1 電線把持位置
P2 開口閉止位置
【手続補正書】
【提出日】2022-05-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の外周面を把持する把持部を有し、且つ、前記把持部への電線導入用の開口を形成可能な揺動開閉式の一対の把持部材と、一対の前記把持部材を開口閉止位置に閉じ付勢する閉じ付勢部と、一対の前記把持部材を前記開口閉止位置よりも閉じ側に揺動させた電線把持位置で把持固定するロック部と、を備え、
前記閉じ付勢部は、当接部を有し、一対の前記把持部材が前記開口閉止位置に位置する場合に前記当接部が無負荷で接触する又は非接触の状態となって閉じ付勢力が消滅し、一対の前記把持部材を前記開口閉止位置から開き側への揺動に伴って当接状態にある前記当接部の撓み変形量が増加して閉じ付勢力が作用し、一対の前記把持部材が前記開口閉止位置よりも閉じ側に揺動させた前記電線把持位置に位置する場合に、前記当接部が非接触の状態にある電線用ストッパー。
【請求項2】
電線の外周面を把持する把持部を有し、且つ、前記把持部への電線導入用の開口を形成可能な揺動開閉式の一対の把持部材と、一対の前記把持部材を開口閉止位置に閉じ付勢する閉じ付勢部と、一対の前記把持部材を前記開口閉止位置よりも閉じ側に揺動させた電線把持位置で把持固定するロック部と、を備え、
前記閉じ付勢部は、一対の前記把持部材における電線長手方向の両側部位に配設されている電線用ストッパー。
【請求項3】
電線の外周面を把持する把持部を有し、且つ、前記把持部への電線導入用の開口を形成可能な揺動開閉式の一対の把持部材と、一対の前記把持部材を開口閉止位置に閉じ付勢する閉じ付勢部と、一対の前記把持部材を前記開口閉止位置よりも閉じ側に揺動させた電線把持位置で把持固定するロック部と、を備え、
前記閉じ付勢部は、一対の前記把持部材における揺動方向で相対向する部位に、一対の前記把持部材の開き揺動に伴って互いに当接する撓み片を設けて構成されている電線用ストッパー。
【請求項4】
電線の外周面を把持する把持部を有し、且つ、前記把持部への電線導入用の開口を形成可能な揺動開閉式の一対の把持部材と、一対の前記把持部材を開口閉止位置に閉じ付勢する閉じ付勢部と、一対の前記把持部材を前記開口閉止位置よりも閉じ側に揺動させた電線把持位置で把持固定するロック部と、を備えた電線用ストッパーを用いた鳥害防止具の設置工法であって、前記電線に移動自在に取付けられる所定数の前記鳥害防止具を準備し、先行の前記鳥害防止具と後続の前記鳥害防止具とを連結しながら、所定数の前記鳥害防止具を順番に前記電線に取付けて所定設置位置に送り込む設置作業工程と、最終順位の前記鳥害防止具を挟む状態で前記電線用ストッパーを前記電線に取付ける固定作業工程と、を備える鳥害防止具の設置工法。