IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミツバの特許一覧

特開2022-161254モータ制御装置、モータ制御方法、およびモータ制御システム
<>
  • 特開-モータ制御装置、モータ制御方法、およびモータ制御システム 図1
  • 特開-モータ制御装置、モータ制御方法、およびモータ制御システム 図2
  • 特開-モータ制御装置、モータ制御方法、およびモータ制御システム 図3
  • 特開-モータ制御装置、モータ制御方法、およびモータ制御システム 図4
  • 特開-モータ制御装置、モータ制御方法、およびモータ制御システム 図5
  • 特開-モータ制御装置、モータ制御方法、およびモータ制御システム 図6
  • 特開-モータ制御装置、モータ制御方法、およびモータ制御システム 図7
  • 特開-モータ制御装置、モータ制御方法、およびモータ制御システム 図8
  • 特開-モータ制御装置、モータ制御方法、およびモータ制御システム 図9
  • 特開-モータ制御装置、モータ制御方法、およびモータ制御システム 図10
  • 特開-モータ制御装置、モータ制御方法、およびモータ制御システム 図11
  • 特開-モータ制御装置、モータ制御方法、およびモータ制御システム 図12
  • 特開-モータ制御装置、モータ制御方法、およびモータ制御システム 図13
  • 特開-モータ制御装置、モータ制御方法、およびモータ制御システム 図14
  • 特開-モータ制御装置、モータ制御方法、およびモータ制御システム 図14A
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161254
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】モータ制御装置、モータ制御方法、およびモータ制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/083 20160101AFI20221014BHJP
   H02P 25/092 20160101ALI20221014BHJP
【FI】
H02P25/083
H02P25/092
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065921
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】市原 怜
(72)【発明者】
【氏名】平田 智司
(72)【発明者】
【氏名】笛木 正弘
(72)【発明者】
【氏名】大兼 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 直也
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501CC01
5H501DD09
5H501GG05
5H501HA08
5H501HB07
5H501HB16
5H501JJ03
5H501JJ17
5H501KK06
5H501KK08
5H501LL22
5H501LL35
(57)【要約】
【課題】モータの回転数が高くなった場合においても安定した電流の供給が可能なモータ制御装置等を提供する。
【解決手段】モータの力行動作状態において、所定周期ごとに通電パターンを算出し、駆動回路を介して通電パターンを切り換える、定周期通電切換を実行する周期処理実行部と、所定周期ごとの処理タイミングとは異なる割り込み処理タイミングを、ロータの角度に対応付けて設定する設定部と、モータの力行動作状態において、角度検出センサの検出結果に基づいて、設定部により設定された割り込み処理タイミングに対応付けられたロータの角度に合わせて、割り込み通電切換を実行する通電切換実行部と、通電パターンとしての既定パターンと、既定パターンを継続させる通電区間とを記憶する記憶部と、を備え、通電切換実行部は、割り込み通電切換により、駆動回路を介して、通電パターンを記憶部に記憶された既定パターンに切り換え、既定パターンを記憶部に記憶された通電区間が経過するまで継続させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突極を有するステータコアと、
前記ステータコアの突極に巻き回されたコイルと、
前記コイルにより発生する磁界により磁化されるロータと、
を備えるモータ、を制御するモータ制御装置であって、
前記ロータの角度を検出する角度検出センサと、
各相の前記コイルと電源との間の接続状態を切り換える駆動回路と、
前記モータの力行動作状態において、所定周期ごとに通電パターンを算出し、前記駆動回路を介して前記通電パターンを切り換える、定周期通電切換を実行する周期処理実行部と、
前記所定周期ごとの処理タイミングとは異なる割り込み処理タイミングを、前記ロータの角度に対応付けて設定する設定部と、
前記モータの力行動作状態において、前記角度検出センサの検出結果に基づいて、前記設定部により設定された前記割り込み処理タイミングに対応付けられた前記ロータの角度に合わせて、割り込み通電切換を実行する通電切換実行部と、
前記通電パターンとしての既定パターンと、前記既定パターンを継続させる既定通電区間とを記憶する記憶部と、
を備え、
前記通電切換実行部は、前記割り込み通電切換により、前記駆動回路を介して、前記通電パターンを前記記憶部に記憶された前記既定パターンに切り換え、前記既定パターンを前記記憶部に記憶された前記既定通電区間が経過するまで継続させる、モータ制御装置。
【請求項2】
前記既定通電区間が経過した後に、前記周期処理実行部による前記所定周期ごとの前記処理タイミングで前記定周期通電切換が実行される、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記通電切換実行部により前記割り込み通電切換が実行される際に、次の前記割り込み通電切換のための前記割り込み処理タイミングを設定する、請求項1または請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のモータ制御装置において、
前記角度検出センサの検出結果に基づいて、前記設定部により設定された前記割り込み処理タイミングを検出するタイミング検出部を備え、
前記通電切換実行部は、前記タイミング検出部により前記割り込み処理タイミングが検出されると、前記割り込み通電切換を実行し、
前記設定部は、前記割り込み通電切換のタイミングに対応する電気角を算出して、算出した電気角を機械角に変換し、変換した機械角に基づいて、前記割り込み処理タイミングを設定する、モータ制御装置。
【請求項5】
前記既定パターンは、前記コイルに前記電源からの電流が継続的に供給される状態である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
突極を有するステータコアと、
前記ステータコアの突極に巻き回されたコイルと、
前記コイルにより発生する磁界により磁化されるロータと、
を備えるモータ、を制御するモータ制御方法であって、
前記ロータの角度を検出する角度検出ステップと、
各相の前記コイルと電源との間の接続状態を切り換える切換ステップと、
前記モータの力行動作状態において、所定周期ごとに通電パターンを算出し、前記切換ステップを介して前記通電パターンを切り換える、定周期通電切換を実行する周期処理実行ステップと、
前記所定周期ごとの処理タイミングとは異なる割り込み処理タイミングを、前記ロータの角度に対応付けて設定する設定ステップと、
前記モータの力行動作状態において、前記角度検出ステップでの検出結果に基づいて、前記設定ステップにより設定された前記割り込み処理タイミングに対応付けられた前記ロータの角度に合わせて、割り込み通電切換を実行する通電切換実行ステップと、
前記通電パターンとしての既定パターンと、前記既定パターンを継続させる通電区間とを記憶する記憶ステップと、
を備え、
前記通電切換実行ステップでは、前記割り込み通電切換により、前記切換ステップを介して、前記通電パターンを前記記憶ステップにより記憶された前記既定パターンに切り換え、前記既定パターンを前記記憶ステップにより記憶された前記通電区間が経過するまで継続させる、モータ制御方法。
【請求項7】
モータと、前記モータを制御するモータ制御装置と、を備えるモータ制御システムであって、
前記モータは、
突極を有するステータコアと、
前記ステータコアの突極に巻き回されたコイルと、
前記コイルにより発生する磁界により磁化されるロータと、
を備え、
前記モータ制御装置は、
前記ロータの角度を検出する角度検出センサと、
各相の前記コイルと電源との間の接続状態を切り換える駆動回路と、
前記モータの力行動作状態において、所定周期ごとに通電パターンを算出し、前記駆動回路を介して前記通電パターンを切り換える、定周期通電切換を実行する周期処理実行部と、
前記所定周期ごとの処理タイミングとは異なる割り込み処理タイミングを、前記ロータの角度に対応付けて設定する設定部と、
前記モータの力行動作状態において、前記角度検出センサの検出結果に基づいて、前記設定部により設定された前記割り込み処理タイミングに対応付けられた前記ロータの角度に合わせて、割り込み通電切換を実行する通電切換実行部と、
前記通電パターンとしての既定パターンと、前記既定パターンを継続させる通電区間とを記憶する記憶部と、
を備え、
前記通電切換実行部は、前記割り込み通電切換により、前記駆動回路を介して、前記通電パターンを前記記憶部に記憶された前記既定パターンに切り換え、前記既定パターンを前記記憶部に記憶された前記通電区間が経過するまで継続させる、モータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを制御するモータ制御装置およびモータ制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータに永久磁石を使用しないスイッチト・リラクタンス・モータ(Switched Reluctance Motor)が知られている(例えば、特許文献1参照)。このモータでは、ステータに設けられたコイルに通電することにより磁界を発生させ、この磁界による吸引力を利用して回転力を得ている。永久磁石を使用しないシンプルな構成とすることができるため、堅牢で高温や高速回転に対するロバスト性が高いモータを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-208890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スイッチト・リラクタンス・モータの制御が制御周期に従った周期処理として実行される場合、通電パターンを切り換える通電切換も、この制御周期によるタイミングに拘束される。このため、モータの回転数が高くなった場合に、通電切換のタイミングが遅れ、電流の供給にばらつきが生ずるおそれがある。
【0005】
本発明は、モータの回転数が高くなった場合においても安定した電流の供給が可能なモータ制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、
突極を有するステータコアと、
前記ステータコアの突極に巻き回されたコイルと、
前記コイルにより発生する磁界により磁化されるロータと、
を備えるモータ、を制御するモータ制御装置であって、
前記ロータの角度を検出する角度検出センサと、
各相の前記コイルと電源との間の接続状態を切り換える駆動回路と、
前記モータの力行動作状態において、所定周期ごとに通電パターンを算出し、前記駆動回路を介して前記通電パターンを切り換える、定周期通電切換を実行する周期処理実行部と、
前記所定周期ごとの処理タイミングとは異なる割り込み処理タイミングを、前記ロータの角度に対応付けて設定する設定部と、
前記モータの力行動作状態において、前記角度検出センサの検出結果に基づいて、前記設定部により設定された前記割り込み処理タイミングに対応付けられた前記ロータの角度に合わせて、割り込み通電切換を実行する通電切換実行部と、
前記通電パターンとしての既定パターンと、前記既定パターンを継続させる通電区間とを記憶する記憶部と、
を備え、
前記通電切換実行部は、前記割り込み通電切換により、前記駆動回路を介して、前記通電パターンを前記記憶部に記憶された前記既定パターンに切り換え、前記既定パターンを前記記憶部に記憶された前記通電区間が経過するまで継続させる、モータ制御装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、モータの回転数が高くなった場合においても安定した電流の供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】3相のスイッチト・リラクタンス・モータおよびスイッチト・リラクタンス・モータを制御するモータ制御装置の構成を示す図である。
図2】低速モードにおける駆動信号生成部の機能を示す図である。
図3】高速モードにおける駆動信号生成部の機能を示す図である。
図4】ロータの回転角θと、力行領域および回生領域との関係を示す図である。
図5】励磁区間におけるu相の駆動回路の状態を示す図である。
図6】還流区間におけるu相の駆動回路の状態を示す図である。
図7】回生区間におけるu相の駆動回路の状態を示す図である。
図8】還流区間におけるu相の駆動回路の状態を示す図である。
図9】モータの力行動作時の通電パターンを示す図である。
図10】割り込み信号発生部の動作を示すフローチャートである。
図11】次の通電切換のタイミングに対応するレゾルバ角を割り込み信号発生部に設定する設定部の動作を示すフローチャートである。
図12】通電切換実行部の動作を示すフローチャートである。
図13】高速モードにおける通電切換の動作を示すタイムチャートである。
図14】所定周期ごとの処理タイミングと、割り込み処理タイミングとの関係を例示するタイムチャートである。
図14A】所定周期ごとの処理タイミングと、割り込み処理タイミングとの関係を例示するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0010】
図1は、3相のスイッチト・リラクタンス・モータおよびスイッチト・リラクタンス・モータを制御するモータ制御装置の構成を示す図である。
【0011】
図1に示すように、モータ制御システムMは、モータ10と、モータ10を駆動する駆動回路20と、を備える。
【0012】
モータ10は、突極11Aを有するステータコア11と、突極12A(図1図4A)を有するロータ12と、ステータコア11の突極11Aに巻き回された各相(u相、v相およびw相)のコイル13u、13v、13wと、を備える。図1に示すように、コイル13uは互いに向かい合う2つの突極11Aにそれぞれ巻き回され、2つのコイル13uは互いに直列に接続される。同様に、コイル13vは互いに向かい合う2つの突極11Aにそれぞれ巻き回され、2つのコイル13vは互いに直列に接続される。コイル13wは互いに向かい合う2つの突極11Aにそれぞれ巻き回され、2つのコイル13wは互いに直列に接続される。なお、図1は6極モータを例示しているが、モータの極数は任意である。
【0013】
互いに直列に接続された各コイル13u、13v、13wに電流を流すと、各コイル13u、13v、13wに対応する突極11Aには、ロータ12の中心軸に対して回転対象の磁場が形成される。
【0014】
ロータ12の回転角は、角度検出センサとしてのレゾルバ15によって検出される。
【0015】
駆動回路20は、各相(u相、v相およびw相)の駆動回路20u、20v、20wを備える。駆動回路20uはコイル13uを、駆動回路20vはコイル13vを、駆動回路20wはコイル13wを、それぞれ独立駆動する。
【0016】
駆動回路20uは、直列接続されたコイル13uの一端に接続される高電位側スイッチング素子21uおよび低電位側スイッチング素子22uと、直列接続されたコイル13uの他端に接続される高電位側スイッチング素子23uおよび低電位側スイッチング素子24uと、を備える。
【0017】
本実施例では、各スイッチング素子21u~24uとしてn型FET(Field effect transistor)を用いた例を示しているが、任意の素子を用いることができる。駆動回路20v、20wを構成する後述のスイッチング素子も同様である。
【0018】
駆動回路20vは、直列接続されたコイル13vの一端に接続される高電位側スイッチング素子21vおよび低電位側スイッチング素子22vと、直列接続されたコイル13vの他端に接続される高電位側スイッチング素子23vおよび低電位側スイッチング素子24vと、を備える。
【0019】
駆動回路20wは、直列接続されたコイル13wの一端に接続される高電位側スイッチング素子21wおよび低電位側スイッチング素子22wと、直列接続されたコイル13wの他端に接続される高電位側スイッチング素子23wおよび低電位側スイッチング素子24wと、を備える。
【0020】
図1に示すように、高電位側スイッチング素子21u、21v、21wおよび高電位側スイッチング素子23u、23v、23wのドレインは、電源25の正極に、低電位側スイッチング素子22u、22v、22wおよび低電位側スイッチング素子24u、24v、24wのソースは、電源25の負極に、それぞれ接続される。
【0021】
また、電源25にはコンデンサ26が並列に接続されている。
【0022】
各相のコイル13u、コイル13v、コイル13wに流れる電流の値は、電流検出センサ28により検出される。
【0023】
本実施例のモータ制御システムMは、上述した駆動回路20と、上述したレゾルバ15と、マイクロコンピュータ等を含む処理装置1を含む。モータ制御装置には、上位ECU(Electronic Control Unit)(図示せず)から各種の指令値が与えられる。なお、モータ制御装置は、上位ECUの機能の一部又は全部を実現してもよい。
【0024】
図1に示すように、処理装置1は、レゾルバ15から出力されるレゾルバ角(ロータ回転角)に基づいて、後述する割り込み信号を出力する位置割り込み信号発生部2(タイミング検出部の一例)と、トルクや速度を指示する指令値に応じた駆動信号を出力する駆動信号生成部5と、処理装置1の動作に必要なデータを格納する記憶部6と、を備える。記憶部6には、後述する既定パターン、既定パターンを継続させる既定通電区間としての通電角θ1、および、既定パターン以外の複数の通電パターン、その他の情報が記憶されている。
【0025】
なお、指令値は、モータ10が生み出すべきトルク値やモータ10の目標回転速度をリアルタイムで規定する値であり、処理装置1は、モータ10のトルク値やモータ10の回転速度が指令値に追従するように、駆動回路20を制御する。なお、指令値がトルク値である場合、トルク値はコイルに供給される目標電流値と対応付けられ、例えば、テーブルとして記憶部6に格納される。指令値がトルク値の場合には、当該テーブルを参照して、電流検出センサ28により検出される電流検出値(図1)が目標電流値に近づくように制御される。
【0026】
本実施例のモータ制御装置は、低速モードと高速モードのいずれかから選択されたモードでモータ10を駆動する。駆動信号生成部5には、低速モードと高速モードのいずれかを選択するモード切換部50が設けられている。モード切換部50は、ロータ回転角に基づいて、低速モードと高速モードのいずれかを選択する。例えば、モード切換部50は、ロータ回転角の時間当たりの変化量からロータの回転速度を算出し、回転速度が一定値を超える高速時に高速モードを選択し、この一定値を超えない低速時に低速モードを選択する。なお、モード切換部50を設けずに、ロータの回転角度に係わりなく、常時、後述する高速モードに相当する動作を実行してもよい。
【0027】
図2は、低速時、すなわち一定の制御周期での制御が行われる場合における駆動信号生成部5の機能を示す図である。
【0028】
低速時には、駆動信号生成部5は、一定の制御周期での制御を繰り返し、この制御周期で通電切換を実行する。低速時における制御では、割り込み信号発生部2は関与しない。
【0029】
図2に示すように、駆動信号生成部5は、一定の制御周期での制御を行う場合の機能として、通電パターン制御部52(周期処理実行部の一例)と、駆動信号出力部53と、を備える。
【0030】
通電パターン制御部52は、上記の制御周期で、処理装置1に与えられる上記指令値と、レゾルバ15によって検出されるロータ12の回転角(および/またはロータ12の角速度)および電流検出値などに基づいて、記憶部6に記憶された通電パターンの中から適切な通電パターンを選択(算出)する。具体的には、コイルに供給される電流の値(電流検出値)を目標電流値に追従させるように、フィードバック制御が実行されてもよい。例えば、パルス幅変調によってスイッチング素子をオンさせるデューティー値(オン時間の比率)を介して通電区間における電圧値(コイルに印加する電圧の値)を制御することができる。この場合、通電パターンは、後述する通電区間および非通電区間を規定するとともに、通電区間における上記電圧値(デューティー値)を規定するものとなる。
【0031】
図3は、高速時における駆動信号生成部5の機能を示す図である。
【0032】
高速モードでは、上記の制御周期での制御に加え、駆動信号生成部5は割り込み信号発生部2からの割り込み信号をトリガとする制御を実行する。
【0033】
図3に示すように、駆動信号生成部5は、高速モードにおける機能として、割り込み信号発生部2からの割り込み信号が入力されると、次の通電切換の切換角度を算出する設定部55と、割り込み信号発生部2からの割り込み信号が入力されると、駆動信号出力部53および駆動回路20を介して通電切換を実行する通電切換実行部56と、を備える。
【0034】
図4は、ロータ12の回転角(電気角)θと、力行領域および回生領域との関係を示す図である。図4のグラフの縦軸に示すコイル13uのインダクタンスは、ロータ12の突極12Aとステータコア11との磁気的な結合の度合いに対応する。コイル13uのインダクタンスが最も高くなるθ=θ0の状態は、ロータ12の突極12Aとステータコア11の突極11Aとが正対する状態に相当する。
【0035】
図4に示すように、ロータ12の回転に従ってコイル13uのインダクタンスが増加する領域に力行領域が、ロータ12の回転に従ってコイル13uのインダクタンスが減少する領域に回生領域が、それぞれ位置付けられる。力行領域および回生領域はロータ12の回転角について、約120°ずつ確保され、基本的には力行領域においてコイル13uに通電することによりロータ12に正のトルクが与えられ、回生領域においてコイル13uに通電することによりロータ12に負のトルクが与えられる。
【0036】
コイル13uへの通電区間は、要求されるモータの特性等に応じて設定でき、例えば、力行動作に対して図4に示す通電区間100を、回生動作に対して図4に示す通電区間200を、それぞれ設定することができる。この場合、通電区間100は、その開始角が、力行領域の開始角に先行する角度幅に相当する進角Δθ1と、通電区間100の長さに相当する通電角θ1とにより規定される。同様に、通電区間200は、その開始角が、回生領域の開始角に先行する角度幅に相当する進角Δθ2と、通電区間200の長さに相当する通電角θ2とにより規定される。
【0037】
コイル13uへ通電する通電区間、すなわち、進角Δθ1、通電角θ1、進角Δθ2および通電角θ2は、指令値やロータの回転速度(角速度)などに応じて変化する。進角Δθ1、通電角θ1、進角Δθ2および通電角θ2は、指令値やロータの回転速度(角速度)などに対応付けられて、記憶部6に記憶される。
【0038】
コイル13v、13wについても、コイル13uと同様に通電区間が規定される。
【0039】
図5図8は、u相の駆動回路20u(スイッチング素子21u~24u)の状態を示す図である。力行動作および回生動作における通電区間では、駆動回路20uは、図5図8に示すいずれかの状態をとる。なお、以下の説明では、u相について述べるが、v相、w相についても同様の動作が行われる。
【0040】
図5は、電源25またはコンデンサ26からコイル13uへ電流が供給される励磁区間を示している。
【0041】
励磁区間では、スイッチング素子21uと、スイッチング素子24uがオンしており、他のスイッチング素子22u、23uがオフしている。励磁区間では、コイル13uへ電流によりステータコア11の突極11Aが励磁される。
【0042】
図6は、コイル13uが電源25の正極から切り離され、コイル13uの電流が閉回路を還流する還流区間を示している。
【0043】
この還流区間では、スイッチング素子22uと、スイッチング素子24uがオンしており、他のスイッチング素子21u、23uがオフしている。
【0044】
図7は、コイル13uから電源25またはコンデンサ26へ電流が供給される回生区間を示している。
【0045】
回生区間では、スイッチング素子22uと、スイッチング素子23uがオンしており、他のスイッチング素子21u、24uがオフしている。
【0046】
図8は、コイル13uが電源25の負極から切り離され、コイル13uの電流が閉回路を還流する還流区間を示している。
【0047】
この還流区間では、スイッチング素子21uと、スイッチング素子23uがオンしており、他のスイッチング素子22u、24uがオフしている。
【0048】
次に、モータの力行動作について説明する。
【0049】
図9は、モータ10の力行動作時の通電パターンを示す図である。図9に示すように、U相のコイル13uへの通電区間は励磁区間T1であり、非通電区間は還流区間T2である。V相、W相についても同様である。
【0050】
図9に示すように、通電区間(励磁区間T1)では、スイッチング素子21uと、スイッチング素子24uがオンする状態(図5に示す状態)が含まれる。通電区間(励磁区間T1)では、上記のデューティー値が1(100%)でない場合には、図5に示す状態と、スイッチング素子22uおよびスイッチング素子24uがオンする状態(図6に示す状態)とが繰り返される。なお、図19では、上記のデューティー値が1の場合を例示している。非通電区間ではスイッチング素子22uと、スイッチング素子24uがオンする状態(図6に示す状態)が維持される。
【0051】
通電区間(励磁区間T1)は、進角Δθ1および通電角θ1(図4)により規定される。したがって、設定部55には、進角Δθ1および通電角θ1がセットされ、上記の制御周期ごとに設定部55にセットされる進角Δθ1および通電角θ1が更新される。また、通電パターンも上記の制御周期ごとに切り換わる。すなわち、通電切換(定周期通電切換)は上記の制御周期に従って実行される。
【0052】
上記のように、非通電区間(還流区間T2)では、スイッチング素子22uと、スイッチング素子24uがオンする状態(図6に示す状態)が維持される。還流区間T2が終了すると、次の通電パターンに移行し、次の通電パターンの通電区間(励磁区間T1)となる。なお、非通電区間に、図7に示す状態が含まれてもよい。例えば、図6に示す状態を経由して、図7に示す状態に移行してもよい。
【0053】
同様に、モータの回生動作では、設定部55には、進角Δθ2および通電角θ2がセットされ、上記の制御周期ごとに設定部55にセットされる進角Δθ2および通電角θ2が更新される。また、通電パターンも上記の制御周期ごとに切り換わる。すなわち、通電切換は上記の制御周期に従って実行される。上記のように、還流区間T2では、スイッチング素子21uと、スイッチング素子23uがオンする状態(図8に示す状態)が維持される。還流区間T12が終了すると、次の通電パターンに移行し、次の通電パターンの通電区間(励磁区間T11)となる。なお、非通電区間に、図7に示す状態が含まれてもよい。例えば、図8に示す状態を経由して、図7に示す状態に移行してもよい。
【0054】
以上のように、低速時には、一定の制御周期(上記の制御周期)で、処理装置1に与えられるトルク指令値と、レゾルバ15によって検出されるロータ12の回転角(および/またはロータ12の角速度)に基づいて、記憶部6に記憶された通電パターンの中から適切な通電パターンが選択(算出)される。また、通電切換も上記の制御周期に従って実行される。
【0055】
一定の制御周期で通電パターンを算出し、通電切換を行う場合、モータ10の回転速度が非常に高くなると、上記の制御周期に対する通電切換の頻度が高くなり、通電切換が遅れるという問題が生ずる。この場合、通電区間の長さやタイミングにバラツキが生じ、想定している電流をモータ10に安定的に供給できなくなるとともに、トルクリップルやトルクリップルに起因する騒音の発生を招くおそれがある。このため、本実施例では、高速時には割り込み処理による通電切換(割り込み通電切換)を実行することにより、このような問題を解消している。
【0056】
次に、高速時には割り込み処理による通電切換(割り込み通電切換)を実行する場合における処理装置1の動作について説明する。上記のように、高速時には、駆動信号生成部5は割り込み信号発生部2からの割り込み信号をトリガとして割り込み通電切換を実行する。
【0057】
割り込み通電切換が行われる場合も、一定の制御周期での通電パターンの算出が並行して実行される。すなわち、通電パターン制御部52は、上記の制御周期に従って、指示値、電流検出値、レゾルバ角およびロータ回転速度などに基づいて、通電パターンを決定する。通電パターンは、記憶部6に記憶された通電パターンの中から選択(算出)され、必要に応じて設定部55にセットされる。通電パターン制御部52の機能は、低速時と同様である。
【0058】
図10は、割り込み信号発生部2の動作を示すフローチャートである。
【0059】
図10のステップS102では、割り込み信号発生部2は、設定部55からレゾルバ角(図3)が設定(後述のステップS208)されるのを待って、ステップS106へ処理を進める。このレゾルバ角は、次回の通電切換を行うべきタイミングをレゾルバ角として規定したものである。なお、本実施例では、レゾルバ角の1回転は、電気角の3回転に対応するが、モータの極数によりこれらの関係は変化する。
【0060】
ステップS106では、割り込み信号発生部2は、レゾルバ15から現在のレゾルバ角(ロータ回転角)を取得する(図1)。
【0061】
ステップS108では、割り込み信号発生部2は、ステップS106で取得されたレゾルバ角が、設定部55から設定されたレゾルバ角(後述のステップS208)に到達したか否か判断し、判断が肯定されれば、処理をステップS110へ進め、判断が否定されれば、処理をステップS106へ進める。
【0062】
ステップS110では、割り込み信号発生部2は、割り込み信号を設定部55および通電切換実行部56(図3)に出力し、処理をステップS102へ進める。
【0063】
図11は、次の通電切換のタイミングに対応するレゾルバ角を割り込み信号発生部2に設定する設定部55の動作を示すフローチャートである。
【0064】
図11のステップS202では、設定部55は、割り込み信号発生部2からの割り込み信号(ステップS110)が入力されるのを待って、その時のレゾルバ角を取得し、ステップS204へ処理を進める。
【0065】
ステップS204では、設定部55は、次の通電切換のタイミングに対応するレゾルバ角を算出する。
【0066】
具体的には、モータ10の力行動作時であって、通電区間(励磁区間T1)にある場合には、設定部55は、非通電区間(還流区間T2)へ移行するタイミングに対応する電気角を算出する。この場合、電気角は、
電気角=基準角-進角Δθ1+通電角θ1 ・・・(1式)
で算出される。基準角は各相に割り当てられた固定値であり、例えば、図4における力行領域の開始角に定められる。
【0067】
また、モータ10の力行動作時であって、非通電区間(還流区間T2)にある場合には、設定部55は、通電区間(励磁区間T1)へ移行するタイミングに対応する電気角を算出する。この場合、電気角は、
電気角=基準角-進角Δθ1 ・・・(2式)
で算出される。
【0068】
(1式)または(2式)で算出された電気角が360°を超えたとき、(1式)または(2式)による算出結果から360°を減算した値を電気角の算出値とする。また、(1式)または(2式)で算出された電気角が0°未満のとき、(1式)または(2式)による算出結果に360°を加算した値を電気角の算出値とする。
【0069】
なお、モータ10の回生動作時にも、基準角(例えば、図4における回生領域の開始角)、進角Δθ2、および通電角θ2を用いて同様に電気角が算出される。すなわち、通電区間にある場合には、設定部55は、非通電区間へ移行するタイミングに対応する電気角を算出する。また、非通電区間にある場合には、設定部55は、通電区間へ移行するタイミングに対応する電気角を算出する。
【0070】
ステップS206では、設定部55は、ステップS204で算出された電気角をレゾルバ角へ変換する。具体的には、設定部55は、ステップS202で取得されたレゾルバ角、すなわち、割り込み信号発生部2からの割り込み信号(ステップS110)が入力されたときのレゾルバ角を電気角に変換する。次に、ステップS204で算出された電気角をレゾルバ角に変換する。
【0071】
ステップS208では、設定部55は、ステップS206において電気角から変換されたレゾルバ角を割り込み信号発生部2に設定し、処理をステップS202へ進める。
【0072】
図12は、通電切換実行部56の動作を示すフローチャートである。
【0073】
図12のステップS302では、通電切換実行部56は、割り込み信号発生部2から割り込み信号(ステップS110)が入力されるのを待って、ステップS304へ処理を進める。
【0074】
ステップS304では、通電切換実行部56は、割り込み通電切換を実行する。ここでは、モータ10の力行動作時であって、通電区間(励磁区間T1)にある場合には、通電切換実行部56は、非通電区間(還流区間T2)へ移行するように割り込み通電切換を実行する。
【0075】
また、モータ10の力行動作時であって、非通電区間(還流区間T2)にある場合には、通電切換実行部56は、通電区間(励磁区間T1)へ移行するように割り込み通電切換を実行する。その後、通電切換実行部56は、処理をステップS302へ進める。
【0076】
本実施例では、非通電区間(還流区間T2)から通電区間(励磁区間T1)へ移行する割り込み通電切り換えを行う場合には、通電区間(励磁区間T1)における通電パターンを記憶部6に記憶された既定パターンに切り換える。すなわち、割り込み通電切り換えにより通電区間(励磁区間T1)へ移行する場合、選択される通電パターンは、通電パターン制御部52により選択(算出)される通電パターンではなく、既定パターンとされる。既定パターンは、コイル13u、13v、13wに与える電圧の波形とともに、通電区間(通電開始時および通電終了時)を定義している。このため、通電パターン制御部52での演算と同様の演算、すなわち、上記指令値、ロータ12の回転角(および/またはロータ12の角速度)および電流検出値などに基づく演算が不要となり、迅速に通電切換(割り込み通電切換)を実行することが可能となる。
【0077】
既定パターンとしては、例えば、デューティー値が1(100%)、すなわち励磁区間(図5に示す状態)が維持される通電パターンとしてもよい。この場合、コイル13u、13v、13wへの電流が継続的に供給される状態となる。また、デューティー値を1未満の既定値としてもよい。
【0078】
図13は、割り込み通電切換の動作を示すタイムチャートである。
【0079】
図13に示すように、高速モードでは、時刻t1における通電区間から非通電区間に切り換わった通電切換の時点で、時刻t2における非通電区間から通電区間への通電切換のタイミングがレゾルバ角に対応して算出される。同様に、時刻t2における非通電区間から通電区間に切り換わった通電切換の時点で、時刻t3における通電区間から非通電区間への通電切換のタイミングがレゾルバ角に対応して算出される。
【0080】
図13に示すように、高速時には、実質的にレゾルバ角に応じたタイミングで、割り込み通電切換を上記の制御周期と同期せずに実行することができる。このため、通電切換が適切なタイミング、すなわち、適切な電気角で実行されるとともに、モータ10の高回転域においても狙った通りの通電区間が確保される。その結果、想定している電流をモータ10に正確に供給することができ、電流のばらつきを大幅に抑制できる。また、トルクリップルやトルクリップルに起因する騒音の発生を大幅に抑制できる。
【0081】
図14および図14Aは、所定周期ごとの処理タイミングと、割り込み処理タイミングとの関係を例示するタイムチャートである。図14および図14Aでは、既定パターンとして、デューティー値が1(100%)、すなわち励磁区間(図5に示す状態)が維持される通電パターンを例示している。既定パターンとして、1未満の所定のデューティー値の電圧パターンを用いてもよい。
【0082】
図14の例では、時刻t10に、通電切換実行部56に割り込み信号発生部2から通電を開始させるための割り込み信号が入力される。時刻t11に通電パターン制御部52での周期処理が終了すると、通電切換実行部56は割り込み処理を開始し、時刻t12に通電を開始させる割り込み通電切換が実行される。上記のように、通電切換実行部56では、通電パターンを算出する処理を行わずに、既定パターンが使用される。このため、時刻t11から短時間で(時刻t12に)、既定パターンによる通電が開始され、既定通電区間(通電角θ0)がほぼ正確に通電区間(時刻t12から時刻t15までの通電角)に反映される。なお、既定通電区間(通電角θ0)は、通電角θ1(図4)の開始直後の期間に設定することができるが、最長期間として通電角θ1と同一期間とすることもできる。例えば、モータの回転速度が上昇するにつれて、既定通電区間(通電角θ0)を延長してもよい。
【0083】
なお、割り込み処理による通電を行う場合に、通電パターンを算出するための処理、例えば、通電パターン制御部52における通電パターンの選択(算出)と同様の処理を実行することも考えられる。しかし、この場合には、割り込み処理に要する時間(例えば、時刻t11から時刻t12までの時間)が延長され、通電区間のずれが大きくなる。このため、本実施例では、通電パターンとして既定パターンを使用している。
【0084】
次に、時刻t13に、通電切換実行部56に割り込み信号発生部2から通電を終了させるための割り込み信号が入力される。時刻t14において、通電パターン制御部52での周期処理の終了と同時に、通電切換実行部56は割り込み処理を開始し、時刻t15に通電を開始させる割り込み通電切換が実行される。
【0085】
図14の例では、上記のように、既定パターンによる通電区間の長さが通電角θ1(時刻t10から時刻t13に相当する区間)に既定されており、これに応答して時刻t12から時刻t15まで既定パターンでの通電が継続される。
【0086】
時刻t15以降は、通電パターン制御部52での周期処理により選択(算出)された通電パターンが適用されてもよい。ここでは、時刻t20に終了した通電パターン制御部52での周期処理で選択(算出)されたデューティー値が、既定パターンでの通電が終了した直後の通電パターンに反映される例を示している。なお、時刻t20以降は、順次、通電パターン制御部52での周期処理により新たに選択(算出)される通電パターンが適用される。これにより、電流検出センサ28により検出される電流検出値(図1)が目標電流値に近づくように制御される。
【0087】
図14では、通電パターン制御部52での周期処理のタイミングと、通電切換実行部56での通電を開始させるための割り込み処理のタイミングが重なる例を示している。これらの場合、通電切換実行部56における割り込み処理は、通電パターン制御部52での周期処理の終了を待って開始される。しかし、通電パターン制御部52での周期処理に重ならない時刻に、割り込み信号発生部2から通電を開始させるための割り込み信号が入力された場合には、通電切換実行部56での割り込み処理が割り込み信号の入力と同時に開始される。このため、既定通電区間(通電角θ0)がより正確に通電区間(時刻t12´から時刻t15´までの通電角)に反映される。
【0088】
図14Aは、周期処理と割り込み処理が重ならない例を示している。
【0089】
図14Aの例では、時刻t10における割り込み信号の入力と同時に通電切換実行部56が割り込み処理を開始するため、図14における時刻t11が時刻t10と実質的に同時となる。このため、割り込み通電による通電開始時刻(時刻t12´)がより早まる。
【0090】
割り込み信号発生部2から通電を終了させるための割り込み信号が入力される場合も同様である。すなわち、図14Aにおいて、時刻t13における割り込み信号の入力と同時に通電切換実行部56が割り込み処理を開始し、割り込み通電による通電終了時刻(時刻t15´)がより早まる。なお、割り込み通電による通電開始または割り込み通電による通電終了のいずれか一方のみで、周期処理と割り込み処理が重なる場合も発生し得る。本実施例では、いずれの場合においても、既定通電区間(通電角θ0)が実質的に正しく通電区間に反映される。結果として、力行動作状態での高速時における通電角θ1(図4)が、実際の通電区間に対し、正確かつ安定的に反映される。
【0091】
以上説明したように、本実施例では、モータの力行動作状態における高速時に、通電切換実行部56は、割り込み通電切換により、通電パターンを記憶部6に記憶された既定パターンに切り換えている。このため、モータの回転数が高くなった場合においても安定した電流の供給が可能となる。
【0092】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部または複数を組み合わせることも可能である。
【0093】
なお、以上の実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0094】
[付記1]
突極を有するステータコア(11)と、
前記ステータコアの突極に巻き回されたコイル(13u、13v、13w)と、
前記コイルにより発生する磁界により磁化されるロータ(12)と、
を備えるモータ(10)、を制御するモータ制御装置であって、
前記ロータの角度を検出する角度検出センサ(15)と、
各相の前記コイルと電源との間の接続状態を切り換える駆動回路(20)と、
前記モータの力行動作状態において、所定周期ごとに通電パターンを算出し、前記駆動回路を介して前記通電パターンを切り換える、定周期通電切換を実行する周期処理実行部(52)と、
前記所定周期ごとの処理タイミングとは異なる割り込み処理タイミングを、前記ロータの角度に対応付けて設定する設定部(55)と、
前記モータの力行動作状態において、前記角度検出センサの検出結果に基づいて、前記設定部により設定された前記割り込み処理タイミングに対応付けられた前記ロータの角度に合わせて、割り込み通電切換を実行する通電切換実行部(56)と、
前記通電パターンとしての既定パターンと、前記既定パターンを継続させる既定通電区間とを記憶する記憶部(6)と、
を備え、
前記通電切換実行部は、前記割り込み通電切換により、前記駆動回路を介して、前記通電パターンを前記記憶部に記憶された前記既定パターンに切り換え、前記既定パターンを前記記憶部に記憶された前記既定通電区間が経過するまで継続させる、モータ制御装置。
【0095】
付記1の構成によれば、割り込み処理タイミングに対応付けられたロータの角度に合わせて、通電切換を実行するので、モータが高速回転する場合でも、通電切換の遅れが大幅に抑制される。このため、通電切換が適切なタイミング、すなわち、適切な電気角で実行されるとともに、モータの高回転域においても狙った通りの通電区間が確保される。その結果、想定している電流をモータに正確に供給することができ、電流のばらつきを大幅に抑制できる。また、トルクリップルやトルクリップルに起因する騒音の発生を大幅に抑制できる。通電切換実行部は、通電パターンを記憶部に記憶された既定パターンに切り換えるので、迅速に通電パターンを切り換えることができる。
【0096】
[付記2]
前記既定通電区間が経過した後に、前記周期処理実行部による前記所定周期ごとの次の前記処理タイミングで前記定周期通電切換が実行される、付記1に記載のモータ制御装置。
【0097】
付記2の構成によれば、定周期通電切換に移行することにより、電流を正確に制御できる。
【0098】
[付記3]
前記設定部は、前記通電切換実行部により前記割り込み通電切換が実行される際に、次の前記割り込み通電切換のための前記割り込み処理タイミングを設定する、付記1または付記2に記載のモータ制御装置。
【0099】
付記3の構成によれば、通電切換が実行される際に、次の通電切換のための割り込み処理タイミングを設定するので、通電パターンが変化しても通電切換のタイミングが通電パターンの変化に迅速に追従するので、常に、通電切換が適切なタイミング、すなわち、適切な電気角で実行されるとともに、モータの高回転域においても狙った通りの通電区間が確保される。
【0100】
[付記4]
付記1~付記3のいずれか1項に記載のモータ制御装置において、
前記角度検出センサの検出結果に基づいて、前記設定部により設定された前記割り込み処理タイミングを検出するタイミング検出部(2)を備え、
前記通電切換実行部は、前記タイミング検出部により前記割り込み処理タイミングが検出されると、前記割り込み通電切換を実行し、
前記設定部は、前記割り込み通電切換のタイミングに対応する電気角を算出して、算出した電気角を機械角に変換し、変換した機械角に基づいて、前記割り込み処理タイミングを設定する、モータ制御装置。
【0101】
付記4の構成によれば、設定部により設定された割り込み処理タイミングは、ロータの機械度に対応付けられ、ロータがこの機械角を示すことが検出されたときに通電切換が実行される。
【0102】
[付記5]
前記既定パターンは、前記コイルに前記電源からの電流が継続的に供給される状態である、付記1~付記4のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【0103】
付記5の構成によれば、割り込み処理により、コイルに前記電源からの電流が継続的に供給される状態に移行する。
【0104】
[付記6]
突極を有するステータコアと、
前記ステータコアの突極に巻き回されたコイルと、
前記コイルにより発生する磁界により磁化されるロータと、
を備えるモータ、を制御するモータ制御方法であって、
前記ロータの角度を検出する角度検出ステップと、
各相の前記コイルと電源との間の接続状態を切り換える切換ステップと、
前記モータの力行動作状態において、所定周期ごとに通電パターンを算出し、前記切換ステップを介して前記通電パターンを切り換える、定周期通電切換を実行する周期処理実行ステップと、
前記所定周期ごとの処理タイミングとは異なる割り込み処理タイミングを、前記ロータの角度に対応付けて設定する設定ステップと、
前記モータの力行動作状態において、前記角度検出ステップでの検出結果に基づいて、前記設定ステップにより設定された前記割り込み処理タイミングに対応付けられた前記ロータの角度に合わせて、割り込み通電切換を実行する通電切換実行ステップと、
前記通電パターンとしての既定パターンと、前記既定パターンを継続させる通電区間とを記憶する記憶ステップと、
を備え、
前記通電切換実行ステップでは、前記割り込み通電切換により、前記切換ステップを介して、前記通電パターンを前記記憶ステップにより記憶された前記既定パターンに切り換え、前記既定パターンを前記記憶ステップにより記憶された前記通電区間が経過するまで継続させる、モータ制御方法。
【0105】
付記6の構成によれば、割り込み処理タイミングに対応付けられたロータの角度に合わせて、通電切換を実行するので、モータが高速回転する場合でも、通電切換の遅れが大幅に抑制される。このため、通電切換が適切なタイミング、すなわち、適切な電気角で実行されるとともに、モータの高回転域においても狙った通りの通電区間が確保される。その結果、想定している電流をモータに正確に供給することができ、電流のばらつきを大幅に抑制できる。また、トルクリップルやトルクリップルに起因する騒音の発生を大幅に抑制できる。通電切換実行部は、通電パターンを記憶部に記憶された既定パターンに切り換えるので、迅速に通電パターンを切り換えることができる。
【0106】
[付記7]
モータと、前記モータを制御するモータ制御装置と、を備えるモータ制御システムであって、
前記モータは、
突極を有するステータコアと、
前記ステータコアの突極に巻き回されたコイルと、
前記コイルにより発生する磁界により磁化されるロータと、
を備え、
前記モータ制御装置は、
前記ロータの角度を検出する角度検出センサと、
各相の前記コイルと電源との間の接続状態を切り換える駆動回路と、
前記モータの力行動作状態において、所定周期ごとに通電パターンを算出し、前記駆動回路を介して前記通電パターンを切り換える、定周期通電切換を実行する周期処理実行部と、
前記所定周期ごとの処理タイミングとは異なる割り込み処理タイミングを、前記ロータの角度に対応付けて設定する設定部と、
前記モータの力行動作状態において、前記角度検出センサの検出結果に基づいて、前記設定部により設定された前記割り込み処理タイミングに対応付けられた前記ロータの角度に合わせて、割り込み通電切換を実行する通電切換実行部と、
前記通電パターンとしての既定パターンと、前記既定パターンを継続させる通電区間とを記憶する記憶部と、
を備え、
前記通電切換実行部は、前記割り込み通電切換により、前記駆動回路を介して、前記通電パターンを前記記憶部に記憶された前記既定パターンに切り換え、前記既定パターンを前記記憶部に記憶された前記通電区間が経過するまで継続させる、モータ制御装置。
【0107】
付記7の構成によれば、割り込み処理タイミングに対応付けられたロータの角度に合わせて、通電切換を実行するので、モータが高速回転する場合でも、通電切換の遅れが大幅に抑制される。このため、通電切換が適切なタイミング、すなわち、適切な電気角で実行されるとともに、モータの高回転域においても狙った通りの通電区間が確保される。その結果、想定している電流をモータに正確に供給することができ、電流のばらつきを大幅に抑制できる。また、トルクリップルやトルクリップルに起因する騒音の発生を大幅に抑制できる。通電切換実行部は、通電パターンを記憶部に記憶された既定パターンに切り換えるので、迅速に通電パターンを切り換えることができる。
【符号の説明】
【0108】
1 処理装置
2 割り込み信号発生部
6 記憶部
11 ステータコア
12 ロータ
13u コイル
13v コイル
13w コイル
15 レゾルバ
20 駆動回路
52 通電パターン制御部
55 設定部
56 通電切換実行部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図14A