(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161293
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】締結構造体
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20221014BHJP
F16B 31/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
G01L5/00 103B
F16B31/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065994
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 淳一
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AB02
(57)【要約】
【課題】締結部材の着座具合を簡単に判断できるようにする。
【解決手段】締結構造体10,110,210は、頭部3aと頭部3aより小径のねじ部3bとを有するねじ3と、ねじ部3bが締結されるパワーモジュール1及びプリント基板2と、ねじ3がパワーモジュール1及びプリント基板2に締結されたときに、頭部3aとプリント基板2との間で押圧されることで、着色剤を放出する着色部材4と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と、前記頭部より小径の締結部と、を有する締結部材と、
前記締結部が締結される被締結部材と、
前記締結部材が前記被締結部材に締結されたときに、前記頭部と前記被締結部材との間で押圧されることで、着色剤を放出する着色部材と、を備えることを特徴とする締結構造体。
【請求項2】
請求項1に記載された締結構造体であって、
前記着色部材は、
前記着色剤を内包する複数のマイクロカプセルと、
複数の前記マイクロカプセルを分散状態で保持するための結合剤と、を有することを特徴とする締結構造体。
【請求項3】
請求項1または2に記載された締結構造体であって、
前記着色部材は、前記締結部を囲むように設けられることを特徴とする締結構造体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載された締結構造体であって、
前記被締結部材は、前記着色部材を囲む溝を有することを特徴とする締結構造体。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載された締結構造体であって、
前記被締結部材は、前記着色部材の外縁が位置する付近から放射状に延びる溝を有することを特徴とする締結構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プリント基板上に第1着座電極、第2着座電極、第1着座電極と導通する第1検査用電極、及び第2着座電極と導通する第2検査用電極を設けた電子機器が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された発明では、タッピングネジを締め付けたときにタッピングネジの頭部が第1着座電極及び第2着座電極に接触し、測定機器によって第1着座電極と第2着座電極との間の抵抗値を測定することで、タッピングネジの着座具合を判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、抵抗値などを測定するための測定機器が必要になるとともに、測定するための手間もかかってしまう。
【0006】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、締結部材の着座具合を簡単に判断できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、締結構造体は、頭部と頭部より小径の締結部とを有する締結部材と、締結部が締結される被締結部材と、締結部材が被締結部材に締結されたときに、頭部と被締結部材との間で押圧されることで、着色剤を放出する着色部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この態様によれば、締結部材が被締結部材に締結されたときに、着色部材が締結部材の頭部と被締結部材との間で押圧され、着色剤が放出される。これにより、締結部材の着座具合を着色剤の広がりによって簡単に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る締結構造体の断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る締結構造体において締結部材を除いた状態での上面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る締結構造体において締結部材を締結した状態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る締結構造体において締結部材を締結した状態を示す上面図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る締結構造体において締結部材を除いた状態での上面図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る締結構造体において締結部材を傾いて締結した状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、他の変形例に係る締結構造体において締結部材を除いた状態での上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1から
図4を参照して、本実施形態に係る締結構造体10について説明する。
図1は、本実施形態の締結構造体10の主要部の断面図である。
図2は、ねじ3を締結する前の締結構造体10の主要部の上面図である。
【0011】
図1に示す締結構造体10は、例えば、被締結部材としての車載用インバータのパワーモジュール1と、駆動回路が設けられた被締結部材としてのプリント基板2と、プリント基板2をパワーモジュール1に締結するための締結部材としてのねじ3と、を備える。ねじ3は、例えば、タッピングねじである。
【0012】
パワーモジュール1は、樹脂などによって外形が形成される。パワーモジュール1には、ねじ3を締結するための下穴1aが設けられている。
【0013】
プリント基板2には、銅箔などの導電体により回路配線パターン等があらかじめ形成されている。プリント基板2上には、回路配線パターンと電気的に接続される半導体素子(図示せず)などが載置される。
【0014】
ねじ3は、締結されたときにプリント基板2の上面2aに着座する頭部3aと、頭部3aより小径で外周におねじが形成されたねじ部3bと、を有する。
【0015】
締結構造体10は、ねじ3がパワーモジュール1に締結されたときに、ねじ3の頭部3aとプリント基板2との間で押圧されることで、着色剤を放出する着色部材4をさらに備える。
【0016】
図1及び
図2に示すように着色部材4は、ねじ3の締結部としてのねじ部3bが挿通される貫通孔4aを有する円環形状に形成される。着色部材4は、着色剤を内包する複数のマイクロカプセルと、複数のマイクロカプセルを分散状態で保持するための結合剤と、を有する。本実施形態では、着色部材4は、複数のマイクロカプセルを内部に分散させた結合剤をプリント基板2上に塗布することにより形成される。
【0017】
着色剤は、例えば、顔料、染料などである。着色剤の色は、特に制約はないが、例えば、赤、橙色、黄色、青など、視認性の良好な色が用いられる。着色剤は、樹脂やフィルムなどによって形成されたマイクロカプセルに内包される。
【0018】
結合剤は、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン系樹脂などである。
【0019】
図1及び
図2に示すように、プリント基板2の上面2aには、着色部材4を囲む略円環状の溝2bが設けられる。
【0020】
このように構成された締結構造体10におけるねじ3の締結状態(着座状態)の確認方法について説明する。
【0021】
まず、パワーモジュール1上にプリント基板2を載置して、ねじ3をプリント基板2に形成された貫通孔2cに通して、パワーモジュール1に形成された下穴1aにねじ込んでいく(
図1)。
【0022】
図1に示す状態から、ねじ3をさらにねじ込んでいくと、着色部材4は、ねじ3の頭部3aとプリント基板2との間で押圧される。そして、ねじ3の締付力が所定値以上になる、別の言い方をすると、ねじ3の頭部3aとプリント基板2との間の押圧力が所定値以上になると、着色部材4の複数のマイクロカプセルが破裂し、内包された着色剤が外部に放出される。このとき、着色剤がねじ3の頭部3aとプリント基板2との間から径方向外側に向かって広がっていく。これにより、
図3及び
図4に示すように、ねじ3の頭部3aの周辺が着色される。そして、着色剤の広がり方や、溝2bが着色されているか否かを確認することで、ねじ3の着座状態(ねじ3が着座しているか否か)を簡単に判断することができる。なお、本実施形態では、着色部材4を囲むように溝2bが形成されているので、広がった着色剤は溝2bによって捕捉され、それ以上広がることを防止できる。
【0023】
このように、本実施形態の締結構造体10では、ねじ3を締結したときに、ねじ3の頭部3aがプリント基板2の上面2aに接触することで、ねじ3の頭部3a周辺が着色されるので、ねじ3の頭部3aが着座しているかを簡単に確認することができる。
【0024】
また、締結構造体10では、着色部材4を囲む溝2bが設けられているので、ねじ3の頭部3aの周りに流れた着色剤を溝2bによって捕捉することができる。これにより、プリント基板2に広範囲にわたって着色剤が広がってしまうことを防止できる。
【0025】
なお、上記実施形態では、プリント基板2に塗布するようにして着色部材4を設けたが、これに限らず、例えば、ねじ3の頭部3aに塗布するようにして着色部材4を設けるようにしてもよい。また、プリント基板2とねじ3の間にワッシャを設け、このワッシャに塗布するようにして着色部材4を設けるようにしてもよい。
【0026】
また、マイクロカプセルの粒子径は、プリント基板2及びねじ3の表面粗さを考慮して決定するとよい。具体的には、プリント基板2及びねじ3のそれぞれにおける着色部材4との接触部分の表面粗さ(最大高さRy)よりも、マイクロカプセルの粒子径を大きくする。これにより、プリント基板2とねじ3の頭部3aが接触したときに、マイクロカプセルがプリント基板2とねじ3の頭部3aの表面の窪みに入り込み破裂しないといった状況を回避することができる。
【0027】
さらに、マイクロカプセルが破裂する荷重は、ねじ3の締め付けトルクなどを勘案して設定される。これにより、ねじ3を締め付けた際に、着色部材4から確実に着色剤を放出させることができる。
【0028】
以上のように構成された締結構造体10によれば、以下の効果を奏する。
【0029】
従来技術のように、ねじ3がプリント基板2に着座(接触)しているか否かを抵抗値などを測定することによって判断する場合には、測定機器が必要になるとともに、測定する時間を確保する必要がある。これに対し、締結構造体10によれば、目視によってねじ3の着座具合を簡単に判断できる。
【0030】
また、ねじ3がプリント基板2に着座(接触)しているか否かを目視や隙間ゲージを使用する場合には、複数の方向から確認する必要があるため作業時間がかかる。これに対し、締結構造体10によれば、上方から目視するだけでねじ3がプリント基板2に着座(接触)しているか否かを確認できるので、作業時間を短縮することができる。
【0031】
さらに、隙間ゲージを用いる場合には、隙間ゲージを隙間に入れるための空間の確保が必要となる。これに対し、締結構造体10によれば、このような空間を確保する必要がないので、小型化することができる。
【0032】
次に、
図5及び
図6を参照して、締結構造体10の変形例について説明する。この変形例にかかる締結構造体110では、プリント基板2の上面2aに、円環状の溝2bに換えて、着色部材4の外縁が位置する付近から、貫通孔2cを中心として45°の間隔を置いて放射状に延びる複数の溝22bが設けられる。なお、
図5に示す変形例では、45°の間隔で8つの溝22bが設けられた場合を示しているが、これに限らない。例えば、90°の間隔で4つ設けてもよく、45°よりも間隔を狭めるようにして設けてもよい。
【0033】
締結構造体110では、ねじ3を締結したときに、ねじ3の頭部3aがプリント基板2の上面2aに接触することで、ねじ3の頭部3a周辺が着色されるので、ねじ3の頭部3aが着座しているかを簡単に確認することができる。さらに、ねじ3の頭部3aの周りに流れた着色剤を溝22bによって捕捉することができる。これにより、着色剤がプリント基板2上で広範囲にわたって広がってしまうことを防止できる。
【0034】
また、例えば、
図6に示すように、ねじ3が傾いてねじ込まれた場合には、ねじ3の頭部3aの一部のみがプリント基板2に接触することになる。着色部材4は、ねじ3の頭部3aが接触した部分しか押圧されず、他の接触していない部分では、押圧力が不足し、マイクロカプセルが破裂しない可能性がある。
【0035】
締結構造体110では、複数の溝22bが放射状に形成されているので、一部の溝22bにのみ着色剤が流れ込むことになる。これにより、ねじ3が傾いてねじ込まれていること、さらにはねじ3の傾いている方向を目視によって簡単に判断することができる。
【0036】
次に、
図7を参照して、締結構造体10の他の変形例について説明する。
図7に示す締結構造体210では、着色部材4を円周方向において複数の領域に分け(
図7では4つ)、領域ごとに異なる色の着色剤を内包したマイクロカプセルを保持させる。
【0037】
締結構造体210では、ねじ3が傾いてねじ込まれた場合には、ねじ3の頭部3aの一部のみがプリント基板2に接触することになる。着色部材4は、ねじ3の頭部3aが接触した領域しか押圧されず、他の接触していない領域では、押圧力が不足し、マイクロカプセルが破裂では、押圧力が不足し、マイクロカプセルが破裂しない可能性がある。
【0038】
締結構造体210では、着色部材4を円周方向において複数の領域に分け、領域ごとに異なる色の着色剤を内包したマイクロカプセルを保持させているので、頭部3aの色のみが広がることになる。これにより、ねじ3が傾いてねじ込まれていること、さらにはねじ3の傾いている方向を目視によって簡単に判断することができる。
【0039】
上記実施例及び変形例では、着色部材4が、マイクロカプセルを有した構成を例に説明したが、これに限らず、例えば、フィルム状の膜の内部に着色剤を内包したものであってもよい。
【0040】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0041】
締結構造体10,110,210は、頭部3aと頭部3aより小径のねじ部3b(締結部)とを有するねじ3(締結部材)と、ねじ部3b(締結部)が締結されるパワーモジュール1及びプリント基板2(被締結部材)と、ねじ3(締結部材)がパワーモジュール1及びプリント基板2(被締結部材)に締結されたときに、頭部3aとプリント基板2(被締結部材)との間で押圧されることで、着色剤を放出する着色部材4と、を備える。
【0042】
ねじ3(締結部材)がプリント基板2(被締結部材)に着座(接触)しているか否かを抵抗値などを測定することによって判断する場合には、測定機器が必要になるとともに、測定する時間を確保する必要がある。これに対し、締結構造体10によれば、目視によってねじ3(締結部材)の着座具合を簡単に判断できる。
【0043】
締結構造体10,110,210では、着色部材4は、着色剤を内包する複数のマイクロカプセルと、複数のマイクロカプセルを分散状態で保持するための結合剤と、を有する。
【0044】
この構成では、着色部材4を塗布などによって簡単に形成することができる。また、着色部材4の形状を適宜変更することができる。
【0045】
締結構造体10,110,210では、着色部材4は、ねじ部3b(締結部)を囲むように設けられる。
【0046】
この構成では、ねじ3がプリント基板2(被締結部材)に接触した際に、着色部材4からねじ3の頭部3aの周囲に均等に着色剤を放出させることができる。
【0047】
締結構造体10,210では、プリント基板2(被締結部材)は、着色部材4を囲む溝2bを有する。
【0048】
この構成では、流れ出た着色剤を溝2bによって捕捉することができるので、着色剤がプリント基板2上で広範囲にわたって広がってしまうことを防止できる。
【0049】
締結構造体110では、プリント基板2(被締結部材)は、着色部材4の外縁が位置する付近から放射状に延びる溝22bを有する。
【0050】
この構成では、ねじ3(締結部材)が傾いてねじ込まれた場合に、放射状に形成された溝22bの一部にのみ着色剤が流れ込むことになるので、ねじ3(締結部材)が傾いていることを目視によって簡単に判断することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0052】
上記実施例及び変形例では、被締結部材として、パワーモジュール1及びプリント基板2を例に説明したが、これに限らず、ねじ3が締結されるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0053】
また、上記実施例及び変形例では、締結部材としてタッピングねじを例に説明したが、締結部材は、これに限らず、例えば、なべ小ねじや六角ボルトなどであってもよい。さらに、締結部材は、ねじ部3bを有していない部材、例えば、リベット、釘などであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10,110,210 締結構造体
1 パワーモジュール(被締結部材)
2 プリント基板(被締結部材)
2b 溝
3 ねじ(締結部材)
3a 頭部
3b ねじ部(締結部)
4 着色部材
22b 溝