(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161312
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】過給機ガスケーシング及び過給機
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20221014BHJP
F01D 25/24 20060101ALI20221014BHJP
F01D 1/08 20060101ALI20221014BHJP
F01D 9/06 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
F02B39/00 E
F01D25/24 E
F01D1/08
F01D9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066025
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷口 直
(72)【発明者】
【氏名】平谷 文人
(72)【発明者】
【氏名】辻 剛志
【テーマコード(参考)】
3G005
3G202
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA14
3G005GB02
3G005GB09
3G005GB24
3G005GB86
3G202GA01
3G202GA07
3G202GB04
(57)【要約】
【課題】ダブルスクロール構造のタービンにおける動翼のエロージョンを抑制することが可能な過給機ガスケーシングを提供する。
【解決手段】過給機ガスケーシングであって、タービンの軸方向における同一の位置に複数のスクロール流路を形成するスクロール部を備え、複数のスクロール流路は、第1スクロール流路を含み、タービンの軸方向に直交する断面において、第1スクロール流路の排ガスの入口におけるタービンの回転軸線から最も遠い位置と、第1スクロール流路の内周側に形成される舌部の先端の位置とを結ぶ線分の延長線がタービンの動翼と交差しないように、第1スクロール流路が構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機のタービンの過給機ガスケーシングであって、
前記タービンの軸方向における同一の位置に複数のスクロール流路を形成するスクロール部を備え、
前記複数のスクロール流路は、第1スクロール流路を含み、
前記タービンの軸方向に直交する断面において、前記第1スクロール流路の排ガスの入口における前記タービンの回転軸線から最も遠い位置と、前記第1スクロール流路の内周側に形成される舌部の先端の位置とを結ぶ線分の延長線が前記タービンの動翼と交差しないように、前記第1スクロール流路が構成された、過給機ガスケーシング。
【請求項2】
前記第1スクロール流路は、前記タービンにおける前記動翼に流れを導くノズル翼と前記延長線とが交差しないように構成された、請求項1に記載の過給機ガスケーシング。
【請求項3】
前記第1スクロール流路の内壁面は、
前記タービンの径方向における外側を向く外向き面部と、
前記タービンの径方向における内側を向く内向き面部であって、前記外向き面部よりも表面粗さRaが大きい内向き面部と、
を含む、請求項1又は2に記載の過給機ガスケーシング。
【請求項4】
前記内向き面部の表面粗さRaは、25μm以上である、請求項3に記載の過給機ガスケーシング。
【請求項5】
前記第1スクロール流路の内壁面は、
前記タービンの径方向における外側を向く外向き面部と、
前記タービンの径方向における内側を向く内向き面部と、
を含み、
前記外向き面部は、前記径方向における外側に向けて突出する突起部を含む、請求項1乃至4の何れか1項に記載の過給機ガスケーシング。
【請求項6】
前記突起部は、前記舌部の先端の位置よりも上流側に位置する、請求項5に記載の過給機ガスケーシング。
【請求項7】
前記突起部は、前記第1スクロール流路における前記軸方向と直交する方向の流路幅の20%以上の高さを有する、請求項5又は6に記載の過給機ガスケーシング。
【請求項8】
前記第1スクロール流路は、前記軸方向の流路高さが前記軸方向に直交する方向の流路高さよりも大きい流路断面を含む、請求項1乃至7の何れか1項に記載の過給機ガスケーシング。
【請求項9】
前記流路断面の形状は、楕円形又は矩形である、請求項8に記載の過給機ガスケーシング。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の過給機ガスケーシングと、
タービンホイールと、
前記タービンホイールに回転軸を介して連結されたコンプレッサインペラと、
を備える、過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過給機ガスケーシング及び過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
過給機では、エンジンの燃焼残渣物がタービンに衝突することによるエロージョン(浸食)が発生する。
【0003】
特許文献1には、過給機におけるタービンのスクロール流路のエロージョンを抑制するために、流路壁面に衝突する燃焼残渣物を分散させるように、スクロール流路の流路壁面に径方向内側に向けて突出する突出部を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、タービンの軸方向における同一の位置に複数のスクロール流路を有するダブルスクロール構造のタービンでは、スクロール流路に流入したエンジンの燃焼残渣物がタービンの動翼に衝突しやすくなるため、タービンの動翼のエロージョンが発生しやすい。この点に関して、特許文献1には、ダブルスクロール構造のタービンにおける動翼のエロージョンを抑制するための知見は開示されていない。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、ダブルスクロール構造のタービンにおける動翼のエロージョンを抑制することが可能な過給機ガスケーシング及びこれを備える過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る過給機ガスケーシングは、
過給機のタービンの過給機ガスケーシングであって、
前記タービンの軸方向における同一の位置に複数のスクロール流路を形成するスクロール部を備え、
前記複数のスクロール流路は、第1スクロール流路を含み、
前記タービンの軸方向に直交する断面において、前記第1スクロール流路の排ガスの入口における前記タービンの回転軸線から最も遠い位置と、前記第1スクロール流路の内周側に形成される舌部の先端の位置とを結ぶ線分の延長線が前記タービンの動翼と交差しないように、前記第1スクロール流路が構成される。
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る過給機は、
上記過給機ガスケーシングと、
タービンホイールと、
前記タービンホイールに回転軸を介して連結されたコンプレッサインペラと、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、ダブルスクロール構造のタービンにおける動翼のエロージョンを抑制することが可能な過給機ガスケーシング及びこれを備える過給機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る過給機2を模式的に示した図である。
【
図2】
図1に示したタービン6における軸方向に直交する断面を模式的に示す図である。
【
図3】スクロール流路024及びスクロール流路26の各々における微細粒子の軌跡(CFD結果)を示す図である。
【
図4】スクロール流路024及びスクロール流路26の各々における粗大粒子の軌跡(CFD結果)を示す図である。
【
図5】スクロール流路24及びスクロール流路26の各々における粗大粒子の軌跡を示す図である。
【
図6】
図2に示すタービン6の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図6に示す突起部40,42の効果を説明するための模式的な断面図である。
【
図8】
図2に示すタービン6の構成の幾つかの例を説明するための断面図である。
【
図9A】
図8におけるA1-A1断面の一例及びA2-A2断面の一例を示す模式図である。
【
図9B】
図8におけるB1-B1断面の他の一例及びB2-B2断面の他の一例を示す模式図である。
【
図9C】
図8におけるC1-C1断面の一例及びC2-C2断面の一例を示す模式図である。
【
図10A】
図8におけるA1-A1断面の他の一例及びA2-A2断面の他の一例を示す模式図である。
【
図10B】
図8におけるB1-B1断面の他の一例及びB2-B2断面の他の一例を示す模式図である。
【
図10C】
図8におけるC1-C1断面の他の一例及びC2-C2断面の他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係る過給機2を模式的に示した図である。過給機2は、舶用の過給機であってもよい。
図1に示すように、過給機2は、相互に連結されたコンプレッサ4及びタービン6を備える。コンプレッサ4のコンプレッサインペラ8とタービン6のタービンホイール10とは回転軸9を介して連結されており、一体的に回転するように構成されている。
【0013】
タービンホイール10が不図示のエンジンから排出された排ガスによって駆動されると、タービンホイール10の回転が回転軸9を介してコンプレッサインペラ8に伝達されてコンプレッサインペラ8が回転し、コンプレッサインペラ8の回転により空気が圧縮される。コンプレッサ4から吐出された圧縮空気は不図示のエンジンに供給される。
【0014】
以下、タービン6の軸方向すなわち回転軸9の軸方向を単に「軸方向」と記載し、タービン6の周方向すなわち回転軸9の周方向を単に「周方向」と記載し、タービン6の径方向すなわち回転軸9の径方向を単に「径方向」と記載する。また、不図示のエンジンから排出されてタービン6に供給される排ガスを単に「排ガス」と記載する。
【0015】
図2は、
図1に示したタービン6における軸方向に直交する断面を模式的に示す図である。
図2に示すように、タービン6は、タービンホイール10と、複数のノズル翼12と、ガスケーシング14(過給機ガスケーシング)とを含む。
【0016】
タービンホイール10は、ハブ16と、ハブ16の外周面に周方向に間隔を空けて設けられた複数の動翼18とを含む。
【0017】
複数のノズル翼12は、タービンホイール10の外周側に周方向に間隔を空けて設けられている。
【0018】
ガスケーシング14は、タービンホイール10を収容するホイール収容部20と、複数のノズル翼12が配置されるノズル通路部22と、軸方向における同一の位置に複数のスクロール流路24,26を形成するスクロール部23とを含む。複数のスクロール流路24,26は、スクロール流路24とスクロール流路26とを含む。このように、タービン6は、軸方向における同一の位置に2つのスクロール流路24,26を有する構造であるダブルスクロール構造のタービンである。
【0019】
ホイール収容部20は、軸方向に沿って筒状に延在し、タービンホイール10を通る排ガスをタービン6の排ガス出口に導くように構成されている。
【0020】
ノズル通路部22は、スクロール部23とホイール収容部20との間に環状の空間を形成している。ノズル通路部22は、周方向の第1範囲(図示する例示的形態では180度の範囲)においてスクロール流路24とホイール収容部20とを接続し、周方向のうち第1範囲を除いた範囲である第2範囲(図示する形態では第1範囲を除いた180度の範囲)においてスクロール流路26とホイール収容部20とを接続する。スクロール流路24又はスクロール流路26を通過した排ガスは、ノズル通路部22に配置された複数のノズル翼12によってタービンホイール10に導かれる。
【0021】
スクロール流路24とスクロール流路26とは軸方向における同一の位置において周方向に並んで配置されている。図示する例示的形態では、スクロール流路24の入口24a(スクロール流路24の入口側の開口)の位置におけるスクロール流路24の延在する方向とスクロール流路26の入口26a(スクロール流路26の入口側の開口)の位置におけるスクロール流路26の延在する方向とは180度以下(図示する例では90度程度)の角度をなしている。
【0022】
図2に示すように、タービン6における軸方向に直交する断面において、スクロール流路24の排ガスの入口24aにおけるタービン6の回転軸線Oから最も遠い位置をP1、スクロール流路24の内周側に形成される舌部25の先端の位置をQ1、位置P1と位置Q1とを結ぶ線分L1を直線状に延長した延長線をL1aとすると、過給機2が組み立てられた状態において延長線L1aがタービン6の動翼18と交差しないように、スクロール流路24が曲がっている。すなわち、スクロール流路24の排ガスの入口24aからスクロール流路24の内部を見たときに、入口24aからタービン6の動翼18が見えないようにスクロール流路24が曲がっている。なお、舌部25の先端の位置Q1は、スクロール流路26の下流端とスクロール流路24とが接続する位置に相当する。
【0023】
図示する例示的形態では、スクロール流路24は、直線状に延在する直線状流路部28と、周方向に沿ってスクロール状に延在するスクロール流路部30とを含み、直線状流路部28に形成された排ガスの入口24aからスクロール流路24の内部を見たときに、入口24aからタービン6の動翼18が見えないようにスクロール流路部30が曲がっている。
【0024】
また、タービン6における軸方向に直交する断面において、上記延長線L1aがノズル翼12と交差しないようにスクロール流路24が曲がっている。すなわち、スクロール流路24の排ガスの入口24aからスクロール流路24の内部を見たときに、入口24aからノズル翼12が見えないようにスクロール流路24が曲がっている。
【0025】
図2に示すように、タービン6における軸方向に直交する断面において、スクロール流路26の排ガスの入口26aにおけるタービン6の回転軸線Oから最も遠い位置をP2、スクロール流路26の内周側に形成される舌部32の先端の位置をQ2、位置P2と位置Q2とを結ぶ線分L2の延長線をL2aとすると、過給機2が組み立てられた状態において延長線L2aがタービン6の動翼18と交差しないように、スクロール流路26が曲がっている。すなわち、スクロール流路26の排ガスの入口26aからスクロール流路26の内部を見たときに、入口26aからタービン6の動翼18が見えないようにスクロール流路26が曲がっている。なお、舌部32の先端の位置Q2は、スクロール流路24の下流端とスクロール流路26とが接続する位置に相当する。
【0026】
図示する例示的形態では、スクロール流路26は、直線状に延在する直線状流路部33と、周方向に沿ってスクロール状に延在するスクロール流路部34とを含み、直線状流路部33に形成された排ガスの入口26aからスクロール流路26の内部を見たときに、入口26aからタービン6の動翼18が見えないようにスクロール流路部34が曲がっている。スクロール流路部34はスクロール流路部30の外周側に沿って延在してノズル通路部22に接続する。スクロール流路部34の下流側端部は、スクロール流路24の直線状流路部28の内周側を通ってスクロール流路24の内周端に接続することで上述の舌部25を形成する。スクロール流路部30の下流側端部は、スクロール流路26のスクロール流路部34の内周側を通ってスクロール流路部34の内周端に接続することで上述の舌部32を形成する。
【0027】
また、タービン6における軸方向に直交する断面において、上記延長線L2aがノズル翼12と交差しないようにスクロール流路26が曲がっている。すなわち、スクロール流路26の排ガスの入口26aからスクロール流路26の内部を見たときに、入口26aからノズル翼12が見えないようにスクロール流路26が曲がっている。
【0028】
図2に示すように、タービン6における軸方向に直交する断面において、スクロール流路24の内壁面36(スクロール流路24の流路壁面)は、径方向における外側を向く外向き面部36oと、径方向における内側を向く内向き面部36iとを含む。
図2に示す断面において、スクロール流路24の入口24aのうちタービン6の回転軸線Oから最も近い位置をP3とすると、外向き面部36oは、スクロール流路24の内壁面36のうち、位置P3と位置Q1とを結ぶ部分である。外向き面部36oは、スクロール流路24の内壁面36のうち、スクロール流路24の内周側に位置する壁面に相当する。また、
図2に示す断面において、内向き面部36iは、スクロール流路24の内壁面36のうち、スクロール流路24における位置P1と位置Q2とを結ぶ部分である。内向き面部36iは、スクロール流路24の内壁面36のうち、スクロール流路24の外周側に位置する壁面に相当する。
【0029】
ここで、内向き面部36iの表面粗さRa(内向き面部36iの算術平均粗さ)は、外向き面部36oの表面粗さRa(外向き面部36oの算術平均粗さ)よりも大きく、例えば25μm以上であってもよい。
【0030】
図2に示すように、タービン6における軸方向に直交する断面において、スクロール流路26の内壁面38(スクロール流路26の流路壁面)は、径方向における外側を向く外向き面部38oと、径方向における内側を向く内向き面部38iとを含む。
図2に示す断面において、スクロール流路26の入口26aのうちタービン6の回転軸線Oから最も近い位置をP4とすると、外向き面部38oは、スクロール流路26の内壁面38のうち、位置P4と位置Q2とを結ぶ部分である。外向き面部38oは、スクロール流路26の内壁面38のうち、スクロール流路26の内周側に位置する壁面に相当する。また、
図2に示す断面において、内向き面部38iは、スクロール流路26の内壁面38のうち、スクロール流路26における位置P2と位置Q1とを結ぶ部分である。内向き面部38iは、スクロール流路26の内壁面38のうち、スクロール流路26の外周側に位置する壁面に相当する。
【0031】
ここで、内向き面部38iの表面粗さRa(内向き面部38iの算術平均粗さ)は、外向き面部38oの表面粗さRa(外向き面部38oの算術平均粗さ)よりも大きく、例えば25μm以上であってもよい。
【0032】
ここで、
図2に示したガスケーシング14が奏する効果について、
図3に示す構成と対比して説明する。
【0033】
図3に示す形状のスクロール流路024(上記延長線L1aがタービン6の動翼18と交差するように、スクロール流路024の入口024aと動翼18とが直線的に連通しているスクロール流路024)をタービン6が備えている場合において、不図示のエンジンの排ガスに含まれる燃焼残渣物のうち数μm以下の微細粒子は、
図3に示すように、排ガスの流れに追随することで、動翼18の圧力面(腹面)側に流入して、動翼18間を通過する。一方、
図3に示す構成において、エンジンの排ガスに含まれる燃焼残渣物のうち10μm以上の粗大粒子は、慣性力が大きいために排ガスの流れに追随せず、
図4に示すように、タービンホイール10の動翼18の負圧面(背面)に衝突してしまうため、動翼18のエロージョンが発生してしまう。
【0034】
これに対し、
図2に示したガスケーシング14によれば、上記延長線L1aがタービン6の動翼18と交差しないようにスクロール流路24が曲がっているため、排ガスに含まれる粗大粒子は、
図5の矢印a1に示すように、動翼18に衝突する前にスクロール流路24の内壁面36に衝突する。また、本願発明者の知見によれば、スクロール流路24の内壁面36に衝突した粗大粒子は、その後に下流に流れても動翼18のエロージョンに与える影響は限定的であると考えられる。このため、スクロール流路24に流入した排ガス中の粗大粒子がタービン6の動翼18に直接衝突することを抑制して、タービン6の動翼18のエロージョンを抑制することができる。
【0035】
また、上記延長線L1aがタービン6のノズル翼12と交差しないようにスクロール流路24が曲がっているため、排ガスに含まれる粗大粒子は、
図5の矢印a1に示すように、互いに隣接するノズル翼12の間を通過する前にスクロール流路24の内壁面36に衝突する。このため、排ガスに含まれる粗大粒子がノズル翼12によってタービン6の動翼18に導かれることを抑制し、タービン6の動翼18のエロージョンを効果的に抑制することができる。
【0036】
また、内向き面部36iの表面粗さRaが、外向き面部36oの表面粗さRaよりも大きいため、内向き面部36iに衝突した粒子は、下流側に流れるにつれて内向き面部36iとの摩擦により微細化しやすくなる。また、スクロール流路24の内壁面36の表面粗さRaを均等に大きくする場合と比較して、スクロール流路24での圧力損失の増大を抑制することができる。このため、エンジンの燃焼残渣物に起因するタービン6の動翼18のエロージョンを効果的に抑制しつつ、スクロール流路24での圧力損失の増大を抑制することができる。
【0037】
また、本願発明者の知見によれば、動翼18のエロージョンに対して大きな影響を及ぼす粒子の直径は50μm程度であると考えられ、内向き面部36iの表面粗さRaを25μm以上とすることにより、内向き面部36iとの摩擦による粒子の微細化の効果を高めてタービン6の動翼18のエロージョンを効果的に抑制することができる。
【0038】
また、
図2に示したガスケーシングによれば、上記延長線L2aがタービン6の動翼18と交差しないようにスクロール流路26が曲がっているため、排ガスに含まれる粗大粒子は、
図5の矢印a2に示すように、動翼18に衝突する前にスクロール流路26の内壁面38に衝突する。また、本願発明者の知見によれば、スクロール流路26の内壁面38に衝突した粗大粒子は、その後に下流に流れても動翼18のエロージョンに与える影響は限定的であると考えられる。このため、スクロール流路26に流入した排ガス中の粗大粒子がタービン6の動翼18に直接衝突することを抑制して、タービン6の動翼18のエロージョンを抑制することができる。
【0039】
また、上記延長線L2aがタービン6のノズル翼12と交差しないようにスクロール流路24が曲がっているため、排ガスに含まれる粗大粒子は、
図5の矢印a2に示すように、互いに隣接するノズル翼12の間を通過する前にスクロール流路26の内壁面38に衝突する。このため、排ガスに含まれる粗大粒子がノズル翼12によってタービン6の動翼18に導かれることを抑制し、タービン6の動翼18のエロージョンを効果的に抑制することができる。
【0040】
また、内向き面部38iの表面粗さRaが、外向き面部38oの表面粗さRaよりも大きいため、内向き面部38iに衝突した粒子は、下流側に流れるにつれて内向き面部38iとの摩擦により微細化しやすくなる。また、スクロール流路26の内壁面38の表面粗さRaを均等に大きくする場合と比較して、スクロール流路26での圧力損失の増大を抑制することができる。このため、エンジンの燃焼残渣物に起因するタービン6の動翼18のエロージョンを効果的に抑制しつつ、スクロール流路26での圧力損失の増大を抑制することができる。
【0041】
また、本願発明者の知見によれば、動翼18のエロージョンに対して大きな影響を及ぼす粒子の直径は50μm程度であると考えられ、内向き面部38iの表面粗さRaを25μm以上とすることにより、内向き面部38iとの摩擦による粒子の微細化の効果を高めてタービン6の動翼18のエロージョンを効果的に抑制することができる。
【0042】
幾つかの実施形態では、上記スクロール流路24の外向き面部36oは、例えば
図6に示すように、径方向における外側に向けて突出する突起部40を含んでいてもよい。すなわち、上記スクロール流路24の外向き面部36oは、内向き面部36iに向けて突出する突起部40を含んでいてもよい。図示する例では、タービン6における軸方向に直交する断面において、突起部40は三角形状に形成されている。また、突起部40は、舌部25の先端の位置Q1よりも上流側に位置する。
【0043】
また、スクロール流路24における突起部40の位置での軸方向と直交する方向の流路幅をW1とすると、突起部40は、流路幅W1の20%以上の高さh1を有する。図示する例では、流路幅W1は、スクロール流路24における突起部40の先端の位置での軸方向と直交する方向の流路幅である。
【0044】
このように外向き面部36oに突起部40を設けることにより、突起部40が無い場合と比較して、
図7の矢印a1に示すように、スクロール流路24の内壁面36におけるより上流側の位置に粒子を衝突させることができ、内壁面36からの摩擦力を受ける時間及び距離を増加させることによって粒子の微細化を促進することができる。したがって、動翼18のエロージョンを効果的に抑制することができる。また、突起部40の高さh1を流路幅W1の20%以上とすることにより、流路幅W1の20%未満とする場合と比較して、粒子の微細化を促進する効果を高めることができる。
【0045】
幾つかの実施形態では、上記スクロール流路26の外向き面部38oは、例えば
図6に示すように、径方向における外側に向けて突出する突起部42を含んでいてもよい。すなわち、上記スクロール流路26の外向き面部38oは、内向き面部38iに向けて突出する突起部42を含んでいてもよい。図示する例では、タービン6における軸方向に直交する断面において、突起部42は三角形状に形成されている。また、突起部42は、舌部32の先端の位置Q2よりも上流側に位置する。
【0046】
また、スクロール流路26における突起部42の位置での軸方向と直交する方向の流路幅をW2とすると、突起部42は、流路幅W2の20%以上の高さh2を有する。図示する例では、流路幅W2は、スクロール流路26における突起部42の先端の位置での軸方向と直交する方向の流路幅である。
【0047】
このように外向き面部38oに突起部42を設けることにより、突起部42が無い場合と比較して、
図7の矢印a2に示すように、スクロール流路26の内壁面38におけるより上流側の位置に粒子を衝突させることができ、内壁面38からの摩擦力を受ける時間及び距離を増加させることによって粒子の微細化を促進することができる。したがって、動翼18のエロージョンを効果的に抑制することができる。また、突起部42の高さh2を流路幅W2の20%以上とすることにより、流路幅W2の20%未満とする場合と比較して、粒子の微細化を促進する効果を高めることができる。
【0048】
図9Aは、
図2に示したタービン6について、
図8に示すA1-A1断面の一例及びA2-A2断面の一例を示す模式図である。
図9Bは、
図2に示したタービン6について、
図8に示すB1-B1断面の一例及びB2-B2断面の一例を示す模式図である。
図9Cは、
図2に示したタービン6について、
図8に示すC1-C1断面の一例及びC2-C2断面の一例を示す模式図である。A1-A1断面、B1-B1断面、C1-C1断面の各々は、スクロール流路24におけるスクロール流路24の延在する方向に直交する流路断面を模式的に示している。A2-A2断面、B2-B2断面、C2-C2断面の各々は、スクロール流路26におけるスクロール流路26の延在する方向に直交する流路断面を模式的に示している。
【0049】
幾つかの実施形態では、
図9Aに示すように、スクロール流路24の直線状流路部28は、円形の流路断面を含む。また、
図9B及び
図9Cに示すように、スクロール流路24のスクロール流路部30は、軸方向における流路高さHが軸方向に直交する方向(軸方向及びスクロール流路24の延在する方向の各々に直交する流路幅方向)における流路幅Wよりも大きい流路断面を含む。
【0050】
図9B及び
図9Cに示す例では、スクロール流路24のスクロール流路部30は、軸方向における流路高さHが軸方向に直交する方向における流路幅Wよりも大きくなるように、楕円形の流路断面を含む。図示する例では、該楕円形の流路断面における長軸が軸方向に沿って延在し、該楕円形の流路断面における短軸が軸方向に直交する方向に沿って延在する。該楕円形の流路断面における長軸が軸方向に平行に延在し、該楕円形の流路断面における短軸が軸方向に直交する方向に延在していてもよい。
【0051】
また、スクロール流路24の流路断面は、直線状流路部28における全体の区間に亘って円形に形成され、スクロール流路部30における全体の区間に亘って軸方向における流路高さHが軸方向に直交する方向における流路幅Wよりも大きくなるように楕円形に形成されていてもよい。
【0052】
また、スクロール流路24は、
図9B及び
図9Cに示すように、スクロール流路部30における下流側に向かうにつれて、軸方向における流路高さHと軸方向に直交する方向における流路幅Wとの比H/Wが大きくなるように形成されていてもよい。
【0053】
上記のように、スクロール流路24におけるスクロール流路部30の流路断面において軸方向の流路高さHを流路幅Wよりも大きくすることにより、スクロール流路24の内壁面36における粒子が衝突する部分の寄与度を増加させて、スクロール流路24の内壁面36と粒子との摩擦による粒子の微細化を促進し、タービン6の動翼18のエロージョンを効果的に低減することができる。
【0054】
また、スクロール流路部30における下流側に向かうにつれて、軸方向における流路高さHと軸方向に直交する方向における流路幅Wとの比H/Wが大きくなるようにスクロール流路24を形成することにより、流路形状の変化に起因する圧力損失の増大を抑制しつつ、スクロール流路24の内壁面36と粒子との摩擦による粒子の微細化を促進することができる。
【0055】
幾つかの実施形態では、
図9Aに示すように、スクロール流路26の直線状流路部33は、円形の流路断面を含む。また、
図9B及び
図9Cに示すように、スクロール流路26のスクロール流路部34は、軸方向における流路高さHが軸方向に直交する方向(軸方向及びスクロール流路26の延在する方向の各々に直交する流路幅方向)における流路幅Wよりも大きい流路断面を含む。
図9B及び
図9Cに示す例では、スクロール流路26のスクロール流路部34は、軸方向における流路高さHが軸方向に直交する方向における流路幅Wよりも大きくなるように、楕円形の流路断面を含む。図示する例では、該楕円形の流路断面における長軸が軸方向に沿って延在し、該楕円形の流路断面における短軸が軸方向に直交する方向に沿って延在する。該楕円形の流路断面における長軸が軸方向に平行に延在し、該楕円形の流路断面における短軸が軸方向に直交する方向に延在していてもよい。
【0056】
また、スクロール流路26の流路断面は、
図9Aに示すように、直線状流路部33における全体の区間に亘って円形に形成され、
図9B及び
図9Cに示すように、スクロール流路部34における全体の区間に亘って軸方向における流路高さHが軸方向に直交する方向における流路幅Wよりも大きくなるように楕円形に形成されていてもよい。
【0057】
また、スクロール流路26は、
図9B及び
図9Cに示すように、スクロール流路部34における下流側に向かうにつれて、軸方向における流路高さHと軸方向に直交する方向における流路幅Wとの比H/Wが大きくなるように形成されていてもよい。
【0058】
上記のように、スクロール流路26におけるスクロール流路部34の流路断面において軸方向の流路高さHを流路幅Wよりも大きくすることにより、スクロール流路26の内壁面38における粒子が衝突する部分の寄与度を増加させて、スクロール流路26の内壁面38と粒子との摩擦による粒子の微細化を促進し、タービン6の動翼18のエロージョンを効果的に低減することができる。
【0059】
また、スクロール流路部34における下流側に向かうにつれて、軸方向における流路高さHと軸方向に直交する方向における流路幅Wとの比H/Wが大きくなるようにスクロール流路26を形成することにより、流路形状の変化に起因する圧力損失の増大を抑制しつつ、スクロール流路26の内壁面38と粒子との摩擦による粒子の微細化を促進することができる。
【0060】
図10Aは、
図2に示したタービン6について、
図8に示すA1-A1断面の他の一例及びA2-A2断面の他の一例を示す模式図である。
図10Bは、
図2に示したタービン6について、
図8に示すB1-B1断面の他の一例及びB2-B2断面の他の一例を示す模式図である。
図10Cは、
図2に示したタービン6について、
図8に示すC1-C1断面の他の一例及びC2-C2断面の他の一例を示す模式図である。A1-A1断面、B1-B1断面、C1-C1断面の各々は、スクロール流路24におけるスクロール流路24の延在する方向に直交する流路断面を模式的に示している。A2-A2断面、B2-B2断面、C2-C2断面の各々は、スクロール流路26におけるスクロール流路26の延在する方向に直交する流路断面を模式的に示している。
【0061】
幾つかの実施形態では、
図10Aに示すように、スクロール流路24の直線状流路部28は、円形の流路断面を含む。また、
図10B及び
図10Cに示すように、スクロール流路24のスクロール流路部30は、軸方向における流路高さHが軸方向に直交する方向(軸方向及びスクロール流路24の延在する方向の各々に直交する方向)における流路幅Wよりも大きい流路断面を含む。
図10B及び
図10Cに示す例では、スクロール流路24のスクロール流路部30は、軸方向における流路高さHが軸方向に直交する方向における流路幅Wよりも大きくなるように、長方形(矩形)の流路断面を含む。図示する例では、該長方形の流路断面における長辺が軸方向に沿って延在し、該長方形の流路断面における短辺が軸方向に直交する方向に沿って延在する。該長方形の流路断面における長辺が軸方向に平行に延在し、該長方形の流路断面における短辺が軸方向に直交する方向に延在していてもよい。
【0062】
また、スクロール流路24の流路断面は、
図10Aに示すように、直線状流路部28における全体の区間に亘って円形に形成され、
図10B及び
図10Cに示すように、スクロール流路部30における全体の区間に亘って軸方向における流路高さHが軸方向に直交する方向における流路幅Wよりも大きくなるように形成されていてもよい。
【0063】
また、スクロール流路24は、
図10B及び
図10Cに示すように、スクロール流路部30における下流側に向かうにつれて、軸方向における流路高さHと軸方向に直交する方向における流路幅Wとの比H/Wが大きくなるように形成されていてもよい。
【0064】
上記のように、スクロール流路24におけるスクロール流路部30の流路断面において軸方向の流路高さHを流路幅Wよりも大きくすることにより、スクロール流路24の内壁面36における粒子が衝突する部分の寄与度を増加させて、スクロール流路24の内壁面36と粒子との摩擦による粒子の微細化を促進し、タービン6の動翼18のエロージョンを効果的に低減することができる。
【0065】
また、スクロール流路部30における下流側に向かうにつれて、軸方向における流路高さHと軸方向に直交する方向における流路幅Wとの比H/Wが大きくなるようにスクロール流路24を形成することにより、流路形状の変化に起因する圧力損失の増大を抑制しつつ、スクロール流路24の内壁面36と粒子との摩擦による粒子の微細化を促進することができる。
【0066】
幾つかの実施形態では、
図10Aに示すように、スクロール流路26の直線状流路部33は、円形の流路断面を含む。また、
図10B及び
図10Cに示すように、スクロール流路26のスクロール流路部34は、軸方向における流路高さhが軸方向に直交する方向(軸方向及びスクロール流路26の延在する方向の各々に直交する方向)における流路幅Wよりも大きい流路断面を含む。
図10B及び
図10Cに示す例では、スクロール流路26のスクロール流路部34は、軸方向における流路高さhが軸方向に直交する方向における流路幅Wよりも大きくなるように、長方形の流路断面を含む。図示する例では、該長方形の流路断面における長辺が軸方向に沿って延在し、該長方形の流路断面における短辺が軸方向に直交する方向に沿って延在する。該長方形の流路断面における長辺が軸方向に平行に延在し、該長方形の流路断面における短辺が軸方向に直交する方向に延在していてもよい。
【0067】
また、スクロール流路26の流路断面は、
図10Aに示すように、直線状流路部33における全体の区間に亘って円形に形成され、
図10B及び
図10Cに示すように、スクロール流路部34における全体の区間に亘って軸方向における流路高さhが軸方向に直交する方向における流路幅Wよりも大きくなるように長方形に形成されていてもよい。
【0068】
また、スクロール流路26は、
図10B及び
図10Cに示すように、スクロール流路部34における下流側に向かうにつれて、軸方向における流路高さHと軸方向に直交する方向における流路幅Wとの比H/Wが大きくなるように形成されていてもよい。
【0069】
上記のように、スクロール流路26におけるスクロール流路部34の流路断面において軸方向の流路高さHを流路幅Wよりも大きくすることにより、スクロール流路26の内壁面38における粒子が衝突する部分の寄与度を増加させて、スクロール流路26の内壁面38と粒子との摩擦による粒子の微細化を促進し、タービン6の動翼18のエロージョンを効果的に低減することができる。
【0070】
また、スクロール流路部34における下流側に向かうにつれて、軸方向における流路高さHと軸方向に直交する方向における流路幅Wとの比H/Wが大きくなるようにスクロール流路26を形成することにより、流路形状の変化に起因する圧力損失の増大を抑制しつつ、スクロール流路26の内壁面38と粒子との摩擦による粒子の微細化を促進することができる。
【0071】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0072】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0073】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る過給機ガスケーシングは、
過給機(例えば上述の過給機2)のタービン(例えば上述のタービン6)の過給機ガスケーシング(例えば上述のガスケーシング14)であって、
前記タービンの軸方向における同一の位置に複数のスクロール流路(例えば上述のスクロール流路24及びスクロール流路26)を形成するスクロール部(例えば上述のスクロール部23)を備え、
前記複数のスクロール流路は、第1スクロール流路(例えば上述のスクロール流路24又はスクロール流路26)を含み、
前記タービンの軸方向に直交する断面において、前記第1スクロール流路の排ガスの入口(例えば上述の入口24a又は26a)における前記タービンの回転軸線から最も遠い位置(例えば上述の位置P1又はP2)と、前記第1スクロール流路の内周側に形成される舌部の先端の位置(例えば上述の位置Q1又はQ2)とを結ぶ線分の延長線(例えば上述の延長線L1a又はL2a)が前記タービンの動翼(例えば上述の動翼18)と交差しないように、前記第1スクロール流路が構成される。
【0074】
上記(1)に記載の過給機ガスケーシングによれば、上記延長線がタービンの動翼と交差しないように第1スクロール流路が構成されているため、排ガスに含まれる粗大粒子は、動翼に衝突する前に第1スクロール流路の内壁面に衝突する。また、本願発明者の知見によれば、第1スクロール流路の内壁面に衝突した粗大粒子は、その後に下流に流れても動翼のエロージョンに与える影響は限定的であると考えられる。このため、第1スクロール流路に流入した排ガス中に含まれる粗大粒子がタービンの動翼に直接衝突することを抑制して、タービンの動翼のエロージョンを抑制することができる。
【0075】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の過給機ガスケーシングにおいて、
前記第1スクロール流路は、前記タービンにおける前記動翼に流れを導くノズル翼(例えば上述のノズル翼12)と前記延長線とが交差しないように構成される。
【0076】
上記(2)に記載の過給機ガスケーシングによれば、排ガス中に含まれる粗大粒子は、互いに隣接するノズル翼の間を通過する前に第1スクロール流路の内壁面に衝突する。このため、排ガス中に含まれる粗大粒子がノズル翼によってタービンの動翼に導かれることを抑制し、タービンの動翼のエロージョンを効果的に抑制することができる。
【0077】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の過給機ガスケーシングにおいて、
前記第1スクロール流路の内壁面(例えば上述の内壁面36又は38)は、
前記タービンの径方向における外側を向く外向き面部(例えば上述の外向き面部36o又は38o)と、
前記タービンの径方向における内側を向く内向き面部であって、前記外向き面部よりも表面粗さRaが大きい内向き面部(例えば上述の内向き面部36i又は38i)と、
を含む。
【0078】
上記(3)に記載の過給機ガスケーシングによれば、内向き面部の表面粗さRaが、外向き面部の表面粗さよりも大きいため、内向き面部に衝突した粒子は、下流側に流れるにつれて内向き面部との摩擦により微細化しやすくなる。また、第1スクロール流路の内壁面の表面粗さを全体的に大きくする場合と比較して、第1スクロール流路での圧力損失の増大を抑制することができる。このため、エンジンの燃焼残渣物に起因するタービンの動翼のエロージョンを効果的に抑制しつつ、第1スクロール流路での圧力損失の増大を抑制することができる。
【0079】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の過給機ガスケーシングにおいて、
前記内向き面部の表面粗さRaは、25μm以上である。
【0080】
本願発明者の知見によれば、動翼のエロージョンに対して大きな影響を及ぼす粒子の直径は50μm程度であると考えられ、上記(4)に記載のように内向き面部の表面粗さRaを25μm以上とすることにより、内向き面部との摩擦による粒子の微細化の効果を高めてタービンの動翼のエロージョンを効果的に抑制することができる。
【0081】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかに記載の過給機ガスケーシングにおいて、
前記第1スクロール流路の内壁面(例えば上述の内壁面36又は38)は、
前記タービンの径方向における外側を向く外向き面部(例えば上述の外向き面部36o又は38o)と、
前記タービンの径方向における内側を向く内向き面部(例えば上述の内向き面部36i又は38i)と、
を含み、
前記外向き面部は、前記径方向における外側に向けて突出する突起部(例えば上述の突起部40又は42)を含む。
【0082】
上記(5)に記載の過給機ガスケーシングによれば、突起部が無い場合と比較して、第1スクロール流路の内壁面におけるより上流側の位置に粒子を衝突させることができ、内壁面からの摩擦力を受ける時間及び距離を増加させることによって粒子の微細化を促進することができる。したがって、動翼のエロージョンを効果的に抑制することができる。
【0083】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の過給機ガスケーシングにおいて、
前記突起部は、前記舌部の先端の位置よりも上流側に位置する。
【0084】
上記(6)に記載の過給機ガスケーシングによれば、舌部の先端の位置よりも上流側に突起部が無い場合と比較して、第1スクロール流路の内壁面におけるより上流側の位置に粒子を衝突させることができ、内壁面からの摩擦力を受ける時間及び距離を増加させることによって粒子の微細化を促進することができる。したがって、動翼のエロージョンを効果的に抑制することができる。
【0085】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)又は(6)に記載の過給機ガスケーシングにおいて、
前記突起部は、前記第1スクロール流路における前記軸方向と直交する方向の流路幅(例えば上述の流路幅W1又はW2)の20%以上の高さ(例えば上述の高さh1又はh2)を有する。
【0086】
上記(7)に記載の過給機ガスケーシングによれば、突起部の高さを第1スクロール流路における軸方向と直交する方向の流路幅の20%未満とする場合と比較して、粒子の微細化を促進する効果を高めることができる。
【0087】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかに記載の過給機ガスケーシングにおいて、
前記第1スクロール流路は、前記軸方向の流路高さ(例えば上述の流路高さH)が前記軸方向に直交する方向の流路幅(例えば上述の流路幅W)よりも大きい流路断面を含む。
【0088】
上記(8)に記載の過給機ガスケーシングによれば、第1スクロール流路の流路断面において軸方向の流路高さを流路幅よりも大きくすることにより、第1スクロール流路の内壁面における粒子が衝突する部分の寄与度を増加させて、第1スクロール流路の内壁面と粒子との摩擦による粒子の微細化を促進し、タービンの動翼のエロージョンを効果的に低減することができる。
【0089】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)に記載の過給機ガスケーシングにおいて、
前記流路断面の形状は、楕円形又は矩形である。
【0090】
上記(9)に記載の過給機ガスケーシングによれば、簡素な形状で上記(8)に記載の効果を得ることができる。
【0091】
(10)本開示の少なくとも一実施形態に係る過給機は、
上記(1)乃至(9)の何れかに記載の過給機ガスケーシングと、
タービンホイール(例えば上述のタービンホイール10)と、
前記タービンホイールに回転軸を介して連結されたコンプレッサインペラ(例えば上述のコンプレッサインペラ8)と、
を備える。
【0092】
上記(10)に記載の過給機によれば、上記(1)乃至(9)の何れかに記載の過給機ケーシングを備えるため、タービンの動翼のエロージョンを抑制することができ、過給機の信頼性を向上することができる。
【符号の説明】
【0093】
2 過給機
4 コンプレッサ
6 タービン
8 コンプレッサインペラ
9 回転軸
10 タービンホイール
12 ノズル翼
14 ガスケーシング
16 ハブ
18 動翼
20 ホイール収容部
22 ノズル通路部
23 スクロール部
24 第1スクロール流路
24a 入口
25 舌部
26 第2スクロール流路
26a 入口
28 直線状流路部
30 スクロール流路部
32 舌部
33 直線状流路部
34 スクロール流路部
36 内壁面
36i 内向き面部
36o 外向き面部
38 内壁面
38i 内向き面部
38o 外向き面部
40 突起部
42 突起部