(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161316
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 9/04 20060101AFI20221014BHJP
F04B 9/02 20060101ALI20221014BHJP
F04B 13/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
F04B9/04 C
F04B9/02 C
F04B13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066034
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100210251
【弁理士】
【氏名又は名称】大古場 ゆう子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】長濱 正宗
【テーマコード(参考)】
3H075
【Fターム(参考)】
3H075AA01
3H075BB03
3H075CC34
3H075DA03
3H075DA04
3H075DB03
3H075DB24
(57)【要約】
【課題】小型化が容易なピストンポンプを提供する。
【解決手段】ポンプは、シリンダと、カム部材と、凸面部と、ピストン基部と、カム付勢部材と、ピストンとを備える。シリンダは、一端が閉塞されており、軸線に沿って延びるポンプ室と、軸線を中心として互いに180度離れて位置し、ポンプ室の内外を連通させる吸入ポート及び吐出ポートとを有する。カム部材は、シリンダの他端側に配置される。カム部材は、軸線に直交する基準面と、軸線を中心とした回転角度が増加するにつれて、基準面からの軸線方向の距離が連続的に増加するカム面とを有する。凸面部は、軸線に対して偏心した位置において、カム面に対面する凸面を有する。ピストン基部は、凸面部と連結される。ピストン基部は、軸線に沿って延び、軸線を中心として回転運動し、これに伴って凸面部がカム面上を運動すると、軸線に沿ってシリンダに対する前進及び後退を繰り返す。カム付勢部材は、凸面部をカム部材に向かって付勢する。ピストンは、ピストン基部と連結され、先端部がポンプ室内に達する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が閉塞されたシリンダであって、軸線に沿って延びるポンプ室と、前記軸線を中心として互いに180度離れて位置し、前記ポンプ室の内外を連通させる吸入ポート及び吐出ポートとを有するシリンダと、
前記シリンダの他端側に配置されるカム部材であって、前記軸線に直交する基準面と、前記軸線を中心とした回転角度が増加するにつれて、前記基準面からの前記軸線方向の距離が連続的に増加するカム面とを有するカム部材と、
前記軸線に対して偏心した位置において、前記カム面に対面する凸面を有する凸面部と、
前記凸面部と連結され、前記軸線に沿って延びるピストン基部であって、前記軸線を中心として回転運動し、前記回転運動に伴って前記凸面部が前記カム面上を運動すると、前記軸線に沿って前記シリンダに対する前進及び後退を繰り返すピストン基部と、
前記凸面が前記カム面に接するように、前記凸面部を前記カム部材に向かって付勢するカム付勢部材と、
前記ピストン基部と連結され、前記軸線に沿って延び、先端部が前記ポンプ室内に達するピストンと、
を備え、
前記ピストンの前記先端部は、円柱の外周面の一部である曲面と、前記円柱の一部を前記軸線方向に切り欠いて生じる切欠き面とから構成される外周面を有し、
前記ピストンは、前記ピストン基部の運動に伴って、前記吸入ポート及び前記吐出ポートに前記曲面を対面させつつ最も前進した第1ポジション、前記吸入ポートに前記切欠き面を対面させつつ前記第1ポジションよりも後退した第2ポジション、前記吸入ポート及び前記吐出ポートに前記曲面を対面させつつ最も後退した第3ポジション、及び前記吐出ポートに前記切欠き面を対面させつつ前記第3ポジションよりも前進した第4ポジションの間を移動し、
前記ピストンは、前記第1ポジションから前記第2ポジションを経て前記第3ポジションへと移動する工程において、前記吸入ポートを介して、外部から前記ポンプ室の内壁面と前記先端部の外面とにより画定される空間を漸次拡大することにより当該空間内に流体を流入させ、前記第3ポジションから前記第4ポジションを経て前記第1ポジションへと移動する工程において前記空間を漸次縮小することにより、前記空間内に流入した前記流体を前記吐出ポートを介して外部に吐出する、
ポンプ。
【請求項2】
前記凸面部は、前記ピストン基部とは別体として構成される球状部材により構成され、前記球状部材は、前記カム面上を回転可能に前記ピストン基部に支持される、
請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記吐出ポートは、前記吸入ポートよりもわずかに大きい内径を有する、
請求項1又は2に記載のポンプ。
【請求項4】
前記吸入ポートは、前記シリンダに取り付けられた第1シール部材によって画定され、
前記吐出ポートは、前記シリンダに取り付けられた第2シール部材によって画定され、
前記ピストンは、前記第1ポジション、前記第2ポジション、前記第3ポジション及び前記第4ポジションを移動する間、前記先端部を前記第1シール部材及び前記第2シール部材の少なくとも一方に密着させ、前記吸入ポート及び前記吐出ポートの少なくとも一方をシールする、
請求項1から3のいずれかに記載のポンプ。
【請求項5】
前記吐出ポートに接続される可撓性の吐出側チューブと、
前記軸線方向に延びる基台を有するとともに、前記シリンダ及び前記ピストン基部を支持する基台部と、
をさらに備え、
前記吐出側チューブは、長手方向の少なくとも一部が前記基台と前記ピストン基部との間に配置され、
前記ピストン基部は、径方向外側に突出する突出部をさらに有し、
前記ピストン基部は、前記ピストンが前記第1ポジションから前記第2ポジションを経て前記第3ポジションに至るまでの所定の位置に位置するとき、前記突出部によって前記吐出側チューブを前記基台に押し付けることにより、前記吐出側チューブを閉塞するように構成される、
請求項1から3のいずれかに記載のポンプ。
【請求項6】
前記基台部は、前記基台と前記ピストン基部との間に配置される板状の板状部材と、
前記基台と前記板状部材との間に配置され、前記板状部材を前記ピストン基部に向かって付勢する付勢部材と、
をさらに有し、
前記吐出側チューブは、長手方向の少なくとも一部が前記基台と前記板状部材との間に配置され、
前記ピストン基部は、前記ピストンが前記第1ポジションから前記第2ポジションを経て前記第3ポジションに至るまでの所定の位置に位置するとき、前記突出部によって前記板状部材を前記基台に押し付けることにより、前記吐出側チューブを閉塞するように構成される、
請求項5に記載のポンプ。
【請求項7】
前記付勢部材は、弾性を有するとともに、前記吐出側チューブの外周面の少なくとも一部を径方向外側から覆うチューブから構成される、
請求項6に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ、特にピストンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シリンダ内に往復移動可能に設けたピストンを、その軸線周りに回動させることにより定量の液体を給送するポンプを開示する。シリンダには液体を吸入するための吸入ポートと、液体を吐出するための吐出ポートとが設けられている。ピストンは、一端側の外周面に切り欠き部を有する。ピストンがシリンダ内で回転すると、各ポートに対して切欠き部が偏向する。これにより、定量の液体が吸入ポートを介してシリンダ内の流入室に吸入され、その後、吐出ポートを介して吐出される。ピストンは、他端側に係合ピンを有する。係合ピンは、モータの駆動軸の先端に連結された回転ブロックに嵌め込まれてユニバーサル連結される。この連結は、ピストンの軸線がモータの駆動軸の軸線に対して傾斜するように行われ、これにより、ピストンがモータにより回転駆動されるとともに、シリンダの軸線に沿って往復運動する。
【0003】
特許文献2も、周方向に互いに離間して配置される流体出入口が形成されたシリンダと、シリンダ内に挿入され、駆動源によって回転しつつ往復運動をするピストンとを備える。シリンダの内周面には、カム突起が形成されている。ピストンの外周面には、シリンダの中心軸に対して傾斜しつつ連続して環状となるカム溝が形成されており、シリンダのカム突起がこれに嵌め込まれる。これにより、ピストンがカム突起に案内され、ピストンがシリンダ内で回転運動しつつ往復運動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-132140号公報
【特許文献2】特開2006-063850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2のように、流体の吸入及び吐出を行うためにピストンがシリンダ内で回転しつつ往復運動するように構成されるポンプでは、シリンダの内径、ピストンの外径、及びピストンの往復距離によって扱う流体の流量が制約される。このため、特に微小な流量での流体の流れを実現するためには、シリンダの内径、ピストンの外径及びピストンの往復距離を流量に合わせて小型化する必要がある。この点、特許文献1のポンプでは、ピストンの係合ピン及び係合ピンを受け入れる回転ブロックをともに小さく構成し、さらにシリンダの軸線とモータの駆動軸の軸線との傾斜角度を微小に調節する必要があり、小型化が容易でない。また、特許文献2のポンプでは、シリンダ及びピストンの一方にカム溝を、他方にカム突起をそれぞれ形成する必要があるため、シリンダの内径及びピストンの外径を小径化するのが容易ではない。
【0006】
本開示は、小型化が容易なピストンポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点に係るポンプは、シリンダと、カム部材と、凸面部と、ピストン基部と、カム付勢部材と、ピストンとを備える。シリンダは、一端が閉塞されており、軸線に沿って延びるポンプ室と、軸線を中心として互いに180度離れて位置し、ポンプ室の内外を連通させる吸入ポート及び吐出ポートとを有する。カム部材は、シリンダの他端側に配置される。カム部材は、軸線に直交する基準面と、軸線を中心とした回転角度が増加するにつれて、基準面からの軸線方向の距離が連続的に増加するカム面とを有する。凸面部は、軸線に対して偏心した位置において、カム面に対面する凸面を有する。ピストン基部は、凸面部と連結される。ピストン基部は、軸線に沿って延び、軸線を中心として回転運動し、これに伴って凸面部がカム面上を運動すると、軸線に沿ってシリンダに対する前進及び後退を繰り返す。カム付勢部材は、凸面がカム面に接するように、凸面部をカム部材に向かって付勢する。ピストンは、ピストン基部と連結され、軸線に沿って延び、先端部がポンプ室内に達する。ピストンの先端部は、円柱の外周面の一部である曲面と、円柱の一部を軸線方向に切り欠いて生じる切欠き面とから構成される外周面を有する。ピストンは、ピストン基部の運動に伴って、吸入ポート及び吐出ポートに曲面を対面させつつ最も前進した第1ポジション、吸入ポートに切欠き面を対面させつつ第1ポジションよりも後退した第2ポジション、吸入ポート及び吐出ポートに曲面を対面させつつ最も後退した第3ポジション、及び吐出ポートに切欠き面を対面させつつ第3ポジションよりも前進した第4ポジションの間を移動する。ピストンは、第1ポジションから第2ポジションを経て第3ポジションへと移動する工程において、吸入ポートを介して、外部からポンプ室の内壁面と先端部の外面とにより画定される空間を漸次拡大することにより当該空間内に流体を流入させ、第3ポジションから第4ポジションを経て第1ポジションへと移動する工程において当該空間を漸次縮小することにより、当該空間内に流入した流体を吐出ポートを介して外部に吐出する。
【0008】
第2観点に係るポンプは、第1観点に係るポンプであって、凸面部は、ピストン基部とは別体として構成される球状部材により構成され、球状部材は、カム面上を回転可能にピストン基部に支持される。
【0009】
第3観点に係るポンプは、第1観点または第2観点に係るポンプであって、吐出ポートは、吸入ポートよりもわずかに大きい内径を有する。
【0010】
第4観点に係るポンプは、第1観点から第3観点のいずれかに係るポンプであって、吸入ポートはシリンダに取り付けられた第1シール部材によって画定され、吐出ポートはシリンダに取り付けられた第2シール部材によって画定される。ピストンは、第1ポジション、第2ポジション、第3ポジション及び第4ポジションを移動する間、先端部を第1シール部材及び第2シール部材の少なくとも一方に密着させ、吸入ポート及び吐出ポートの少なくとも一方をシールする。
【0011】
第5観点に係るポンプは、第1観点から第3観点のいずれかに係るポンプであって、吐出ポートに接続される可撓性の吐出側チューブと、軸線方向に延びる基台を有するとともに、前記シリンダ及び前記ピストン基部を支持する基台部とをさらに備える。吐出側チューブは、長手方向の少なくとも一部が基台とピストン基部との間に配置される。ピストン基部は、径方向外側に突出する突出部をさらに有する。ピストン基部は、ピストンが第1ポジションから第2ポジションを経て第3ポジションまでに至るまでの所定の位置に位置するとき、突出部によって吐出側チューブを基台に押し付けることにより、吐出側チューブを閉塞するように構成される。
【0012】
第6観点に係るポンプは、第5観点に係るポンプであって、基台部は、基台とピストン基部との間に配置される板状の板状部材と、基台と板状部材との間に配置され、板状部材をピストン基部に向かって付勢する付勢部材とをさらに有する。吐出側チューブは、長手方向の少なくとも一部が基台と板状部材との間に配置される。ピストン基部は、ピストンが第1ポジションから第2ポジションを経て第3ポジションまでに至るまでの所定の位置に位置するとき、突出部によって板状部材を基台に押し付けることにより、吐出側チューブを閉塞するように構成される。
【0013】
第7観点に係るポンプは、第6観点に係るポンプであって、付勢部材は、弾性を有するとともに、吐出側チューブの外周面の少なくとも一部を径方向外側から覆うチューブから構成される。
【発明の効果】
【0014】
以上の観点によれば、ピストン及びシリンダが簡易な構成であるため、シリンダの内径及びピストンの外径を小径化するのが容易である。また、ピストン基部と連結される凸面部と、カム部材のカム面との接触によってピストンの前進及び後退を含む往復運動が制御されるため、軸線に沿ったピストンの往復運動の距離を小さくすることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るポンプについて説明する。
【0017】
<1.ポンプの構成>
図1に、本実施形態に係るポンプ1の平面図を示す。同図に示す通り、ポンプ1は、流体を貯蔵するタンク2と、タンク2の下流側に配置され、タンク2内の流体を吸引し、吐出するポンプ機構3と、ポンプ機構3を動作させるための駆動部4と、駆動部4を駆動するための制御部10および電力源5とを備える。なお、ここでの説明において、上流及び下流とは、流体の流れに沿って定義されるものとする。ポンプ機構3は、吸入側チューブ6を介してタンク2と接続されている。また、ポンプ機構3は、可撓性の吐出側チューブ7を介して外部に流体を送り出す。ポンプ1は、タンク2、ポンプ機構3、駆動部4、制御部10、電力源5及び吸入側チューブ6を収容するケーシング8をさらに備える。ポンプ1は、吐出側チューブ7がケーシング8を貫通して、ケーシング8の外部に延びるように構成される。
【0018】
なお、ポンプ1は、駆動部4の動きをON/OFFするための図示しない操作部をさらに備えてもよい。操作部は、ボタンやスイッチ等から構成され、ユーザの操作を受け付けるように構成されることができる。これにより、ポンプ1は、ユーザの操作により駆動部4をONしてポンプ機構3を動作させたり、駆動部4をOFFしてポンプ機構3の動作を停止させたりするように構成される。
【0019】
これに限定されないが、本実施形態のポンプ1は、持ち運びが可能であり、好ましくは体のどこかに装着することができるウェアラブルな小型又は超小型ポンプであるとともに、微少な流量での流体の流れを実現する。定量的には、ポンプ1は、流量が100μl/h以下に設定される小型ポンプとすることができる。しかし、ポンプ1は、さらに小型であってもよく、その目標流量が50μl/h以下に設定されるものであってもよく、さらに目標流量が10μl/h以下に設定されるものであってもよい。
【0020】
また、これに限定されないが、本実施形態のポンプ1は、液体、特にインスリン等の薬液を搬送の対象とする。そのため、本実施形態では、吐出側チューブ7の先端に針9が接続されており、針9が患者の腕に穿刺されることにより、タンク2内の薬液が患者に投与される。従って、ポンプ1のユーザには、ポンプ1を使用する患者が含まれる。
【0021】
電力源5は、ポンプ機構3を駆動する駆動部4及び駆動部4の動作を制御する制御部10に接続され、駆動部4及び制御部10に電力を適宜供給する。制御部および電力源5に用いられる電力源は、これに限定されないが、充電式電池または使い切り電池である。駆動部4は、これに限定されないが、回転軸40を有するモータである。
【0022】
制御部10は、マイクロコンピュータであり、CPU、ROM、RAM及び不揮発性の記憶装置等から構成される。制御部10は、RAMまたは不揮発性の記憶装置に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、ここで説明される動作を実行する。
【0023】
ポンプ1は、これに限定されないが、使用期間が予め定められている、ディスポーザブルなポンプとして構成されることができる。また、タンク2、ポンプ機構3、駆動部4、制御部10及び電力源5のうち少なくとも1つは、各々がディスポーザブルに構成されてもよい。例えば、ポンプ機構3が駆動部4から取り外し可能に構成され、ポンプ機構3がディスポーザブルである一方で、駆動部4がディスポーザブルでない構成とすることが可能である。
【0024】
<2.ポンプ機構の構成>
以下、ポンプ機構3の構成について詳細に説明する。
図2は、ポンプ機構3の全体構造を示す斜視図である。同図に示す通り、ポンプ機構3は、基台部80を介して支持されるとともに、ケーシング8内に位置決めされる。また、基台部80の後端側には駆動部4が取り付けられる。駆動部4は、軸線A1を中心として回転する回転軸40を有する。ポンプ機構3は、回転軸40に接続され、回転軸40とともに回転する回転ブロック35を備え、これにより、ポンプ機構3の他の要素に回転軸40の回転が伝えられる。以下、ポンプ機構3については
図2の左側を後端、右側を先端とする。
【0025】
ポンプ機構3は、最も先端側に配置されるシリンダ30と、シリンダ30の後端側に配置されるカム部材31と、カム部材31に対面する凸面部32と、凸面部32と連結されるピストン基部33と、ピストン基部33に連結されるピストン34とをさらに備える。シリンダ30、カム部材31、ピストン基部33、ピストン34及び回転ブロック35は、それぞれ軸線A1方向から見て円形を有し、中心軸が軸線A1に一致するように位置決めされる。これにより、ポンプ機構3は、全体としては軸線A1に沿って延びる概ね円柱形の外観形状を有する。以下、各部材について説明する。
【0026】
[シリンダ]
シリンダ30は、軸線A1に沿って延びる、略円柱形の空間であるポンプ室300を画定する。シリンダ30の先端は閉塞されており、これにより、ポンプ室300も先端が閉塞された空間となる。ポンプ室300は、その内部で後述するピストン34の先端部340が回転及び往復することにより、タンク2内から流体を吸入し、また吸入した流体を吐出側チューブ7に吐出するための空間を先端部340とともに画定する。シリンダ30は、ポンプ室300に連通する吸入ポート301及び吐出ポート302をさらに有する。吸入ポート301及び吐出ポート302は、ポンプ室300の内外を連通させる断面円形の通路である。吸入ポート301及び吐出ポート302は、軸線A1を中心として、周方向に180度離れて位置する。吸入ポート301には、吸入側チューブ6が接続される。これにより、タンク2とポンプ室300とが連通する。また、吐出ポート302には、吐出側チューブ7が接続される。これにより、ポンプ室300と、例えば針9とが連通する。
【0027】
本実施形態のシリンダ30は、吐出ポート302の内径が、吸入ポート301の内径よりもわずかに大きくなるように構成される。これにより、ピストン34が後述するような流体の吐出を行う際に、ポンプ室300内の流体をより確実に吐出側チューブ7に送り出すことができる。
【0028】
[カム部材]
カム部材31は、シリンダ30の後端に配置され、後述するピストン基部33の回転運動を、前進及び後退を含む往復運動に変換するための部材である。
図3はカム部材31の斜視図である。カム部材31は、平面視円形を有し、中心には後述するピストン34が貫通するピストン貫通穴312が形成される。カム部材31は、基準面310とカム面311とを有する。基準面310は平らな面であり、カム部材31は、基準面310がシリンダ30に対面し、軸線A1に直交するように配置される。
【0029】
カム面311は、基準面310の反対側に形成される面であり、軸線A1を中心とした回転角度θが増加するにつれて、基準面310からの軸線A1方向の距離が連続的に増加する面である。本実施形態のカム面311は、これに限定されないが、sinθを含む関数で表される曲面である。カム面311は、軸線A1を中心とする距離が一定である場合、θ=0°の位置で基準面310からの距離が最も近くなり、θ=180°の位置で基準面310からの距離が最も遠くなる。例えば、軸線A1方向の基準面310からの高さをyとしたとき、y=a+b×sinθ (a,bともに定数)と任意の回転角度θにおいては径方向の値によらず基準面310からの高さが一定といったように表される。
【0030】
[凸面部]
凸面部32は、カム面311に対面し、軸線A1に対して一定の距離だけ偏心した位置にピストン基部33に連結される。凸面部32は、凸面320を有する部材であり、ピストン基部33が軸線A1を中心として回転すると、凸面320が頂点においてカム面311に接しながら、カム面311上を滑らかに移動する。凸面320は、特に限定されないが、例えば球面の一部を構成する面とすることができる。後述するように、ピストン基部33は軸線A1に沿って往復可能に支持されており、凸面部32がカム面311上において軸線A1方向に変位するのに連動して、シリンダ30に対して前進及び後退を繰り返す。
【0031】
凸面部32は、カム面311上を滑らかに移動することが可能であれば、ピストン基部33と一体的に構成されてもよいし、ピストン基部33とは別体の部材として構成されてもよい。本実施形態では、凸面部32はピストン基部33とは別体として構成される球状部材である。球状部材は、これに限定されないが、典型的には金属、セラミックス等から構成されるベアリング球である。凸面部32は、ピストン基部33に形成された円形穴に一部が突出するように埋め込まれ、ピストン基部33に自転可能に支持される。さらに、円形穴の内部にはコイルバネ等がセットされ、球状部材をカム面311に押し付けるようにしてもよい。これにより、凸面部32は、ピストン基部33の回転に従動してカム面311上を転がりながら移動することができるので、カム面311との間の摩擦抵抗がより軽減され、ひいてはポンプ機構3のより滑らかな動作が実現される。
【0032】
[ピストン基部]
図4はピストン基部33及びこれに連結されるピストン34の斜視図である。ピストン基部33は、凸面部32と連結され、軸線A1に沿って延びる部材である。同図に示すように、ピストン基部33の後端には断面非円形の差込穴330が形成される。差込穴330には、回転ブロック35の図示しない回転軸が差し込まれる。回転軸は、軸線A1を中心軸として延びる軸であり、差込穴330の断面形状に対応した非円形の断面形状を有する。これにより、ピストン基部33は回転ブロック35を介して駆動部4の回転を伝えられ、軸線A1を中心として回転する。さらに、差込穴330の内壁面にはガイド溝3300が形成される一方、回転ブロック35の回転軸の外周面には、ガイド溝3300に嵌まり込む、図示しないリブが形成される。これにより、ピストン基部33は、ガイド溝3300とリブとによって案内され、回転ブロック35の回転に連動して軸線A1周りに回転しつつ、軸線A1に沿って滑らかに往復運動することが可能である。
【0033】
ポンプ機構3は、凸面部32及びピストン基部33をカム部材31に向かって付勢するカム付勢部材36をさらに備える。カム付勢部材36は、ピストン基部33の回転角度によらず凸面部32の凸面320がカム面311に接した状態を維持するための部材である。本実施形態では、カム付勢部材36は、ピストン基部33の外周に巻かれたコイルバネである。カム付勢部材36により、ピストン基部33の回転に連動してピストン基部33が前進及び後退しても、凸面320がカム面311から離れることが防止される。
【0034】
[ピストン]
ピストン34は、ピストン基部33に連結され、ピストン基部33とともに運動する。本実施形態では、ピストン34はピストン基部33と一体的に形成される。ピストン34は、軸線A1に沿って延び、カム部材31のピストン貫通穴312を貫通して、その先端部340がポンプ室300内に達する。このため、ポンプ機構3はピストンシール部材37をさらに備える。ピストンシール部材37は、典型的にはゴムまたは熱可塑エラストマー製のパッキンであり、ピストン34の外周面と、ポンプ室300との隙間をシールするようにピストン34の外周に取り付けられる。
【0035】
ピストン34の先端部340は、軸線A1を中心軸とする円柱形の一部が、軸線A1方向に沿って切り欠かれて生じる切欠き円柱状を有する。切欠きの態様はこれに限定されないが、本実施形態の先端部340は、円柱形の一部を、軸線A1に平行な平面により切断したDカット円柱とも称される形状を有する。これにより、先端部340の外周面は、円柱形の外周面の一部を構成する曲面3400と、曲面3400に連続する平坦な切欠き面3401とから構成される。円柱形を切り欠く程度は特に限定されず、吸入ポート301及び吐出ポート302との内径等に応じて適宜定められてよい。本実施形態の先端部340は、軸線A1方向から見たときに、曲面3400が軸線A1を中心として、約270°分を占める。なお、本実施形態のピストン基部33及びピストン34は、凸面部32と切欠き面3401との軸線A1を基準とする周方向の位置が一致するように構成される。
【0036】
ピストン34は、ピストン基部33の回転及び往復運動に伴って、ポンプ室300内に貯められる流体の容積を変化させるとともに、吸入ポート301を介した流体の吸入及び吐出ポート302を介した流体の吐出を制御する。本実施形態のポンプ1は、予め定められた時間周期ごとにピストン34が1回転し、これに伴って後述する1回の搬送動作が行われるように構成される。より具体的には、ピストン34が軸線A1周りに1回転する間、予め定められた量の流体がポンプ室300内に吸入され、またポンプ室300から吐出される。これにより、ポンプ1は、予め定められた時間周期で、流体を間欠的に吐出する。
【0037】
<3.ポンプの動作>
次に、ポンプ1による流体の搬送動作の詳細について説明する。ポンプ1による流体の搬送動作は、例えばユーザの操作により駆動部4がONされると開始し、開始から所定の回数が繰り返されると、自動的に停止する。以下に説明する例では、ピストン基部33及びピストン34はポンプ機構3の後端から見て、右回りに回転するものとする。
【0038】
図5Aは、凸面部32がカム面311においてθ=0°の位置にあるときのポンプ機構3の様子を示す。このとき、同図に示すように、ピストン34はシリンダ30に対して最も前進し、先端がポンプ室300の奥に最接近する。先端部340の切欠き面3401は、吸入ポート301及び吐出ポート302との間に位置し、曲面3400は吸入ポート301及び吐出ポート302に対面する。これをピストン34の第1ポジションと称する。
【0039】
ピストン34が第1ポジションに位置するとき、ピストン34の先端とポンプ室300の奥の壁との隙間はわずかであり、ポンプ室300の内壁面と先端部340の外面とで画定される空間の容積は最も小さい。このため、ポンプ室300内に流体が残っていると、流体が縮小された空間により高圧になり、吸入ポート301側に逆流する可能性がある。しかし、すでに述べたように、吐出ポート302の内径が、吸入ポート301の内径よりもわずかに大きいため、吸入ポート301側よりも吐出ポート302側がより低圧となり易い。従って、流体の逆流が抑制されるとともに、ポンプ室300内の流体をより確実に吐出側チューブ7に送り出すことができる。
【0040】
図5Aの状態からピストン基部33がさらに回転すると、ピストン34はシリンダ30に対して徐々に後退する。これにより、ポンプ室300の内壁面と先端部340の外面とで画定される空間が漸次拡大する。また、先端部340の切欠き面3401の少なくとも一部が吸入ポート301に対面し始め、拡大した空間の容積に相当する体積の流体が、吸入ポート301を介して空間内に流入し始める。
【0041】
図5Bは、凸面部32がカム面311においてθ=90°の位置にあるときのポンプ機構3の様子を示す。このとき、同図に示すように、ピストン34は切欠き面3401を吸入ポート301に対面させつつ、第1ポジションよりもシリンダ30に対して後退している。一方、曲面3400は吐出ポート302に対面したままである。これをピストン34の第2ポジションと称する。
【0042】
図5Bの状態からピストン基部33がさらに回転すると、ピストン34はシリンダ30に対してさらに後退する。これにより、ポンプ室300の内壁面と先端部340の外面とで画定される空間がさらに拡大し、流体がさらに空間内に流入する。また、切欠き面3401が吸入ポート301に対面する位置から徐々にずれていく。
【0043】
図5Cは、凸面部32がカム面311においてθ=180°の位置にあるときのポンプ機構3の様子を示す。このとき、同図に示すように、ピストン34はシリンダ30に対して最も後退し、ポンプ室300の内壁面と先端部340の外面とで画定される空間の容積が最大となる。また、切欠き面3401は吸入ポート301及び吐出ポート302との間に位置し、曲面3400は吸入ポート301及び吐出ポート302に対面する。これをピストン34の第3ポジションと称する。ピストン34が第3ポジションに位置すると、タンク2からの流体の吸入が終了し、空間からの流体の吐出が開始する。
【0044】
図5Cの状態からピストン基部33がさらに回転すると、ピストン34はシリンダ30に対して前進し始める。これにより、ポンプ室300の内壁面と先端部340の外面とで画定される空間が漸次縮小する。また、先端部340の切欠き面3401の少なくとも一部が吐出ポート302に対面し始め、縮小した空間の容積に相当する体積の流体が、吐出ポート302を介して空間内から吐出され始める。
【0045】
図5Dは、凸面部32がカム面311においてθ=270°の位置にあるときのポンプ機構3の様子を示す。このとき、同図に示すように、ピストン34は切欠き面3401を吐出ポート302に対面させつつ、第3ポジションよりもシリンダ30に対して前進している。一方、曲面3400は吸入ポート301に対面したままである。これをピストン34の第4ポジションと称する。
【0046】
図5Dの状態からピストン基部33がさらに回転すると、ピストン34はシリンダ30に対してさらに前進する。これにより、ポンプ室300の内壁面と先端部340の外面とで画定される空間がさらに縮小し、流体がさらに空間内から吐出される。また、切欠き面3401が吐出ポート302に対面する位置から徐々にずれていく。こうしてピストン34は第1ポジションに戻る。ピストン34が第1ポジションに戻ると、流体の吐出が終了し、再び流体の吸引が開始する。
【0047】
以上のように、ピストン34は、第1ポジションから第4ポジションへと順に移動する。ポンプ1は、ピストン34が第1ポジションから第2ポジションを経由して第3ポジションに移動するまでの間、ポンプ室300への吸入が行われ、予め定められた量の流体がポンプ室300内に流入するように構成される。また、ポンプ1は、ピストン34が第3ポジションから第4ポジションを経由して第1ポジションに移動するまでの間、ポンプ室300からの吐出が行われ、予め定められた量の流体が、ポンプ室300の外へ送り出されるように構成される。
【0048】
<4.他の実施形態>
ポンプ1は、ピストン34の回転及び往復運動により、流体の吸入及び吐出を行うように構成される。このような構成では、ポンプ室300とピストン34との間のクリアランスにより、吸入ポート301と吐出ポート302とが互いに連通する。このため、吸入ポート301と吐出ポート302との間に流体の圧力差が生じると、ポンプ1のポンピング機能に依存しない流体の吸入もしくは吐出(フリーフロー)が生じる可能性がある。特に、ポンプ1が微小な流量を扱うように構成される場合は、このフリーフローが無視できない影響を生じる恐れがある。また、ポンプ1がウェアラブルポンプとして構成される場合、ポンプ1は様々な姿勢で使用され得るため、吸入ポート301と吐出ポート302との間の圧力差に影響を及ぼす可能性がある。この観点から、以下では第2実施形態及び第3実施形態に係るポンプ1A及び1Bについて説明する。ポンプ1A及び1Bは、フリーフローを抑制するための構成を備える。以下、上記実施形態のポンプ1と共通の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
【0049】
[第2実施形態]
図6に、第2実施形態に係るポンプ1Aに係るポンプ機構3Aの構成を示す。
図6に示すように、ポンプ機構3Aにおいては、吸入ポート301及び吐出ポート302が、シリンダ30Aに取り付けられる第1シール部材305及び第2シール部材306によってそれぞれ画定される。同図に示すように、この例に係るシリンダ30Aは、吸入ポート301に代わり、ポンプ室300に連通する吸入通路303を画定し、吐出ポート302に代わり、ポンプ室300に連通する吐出通路304を画定する。第1シール部材305は吸入通路303に嵌め込まれて吸入通路303の内壁面に密着し、第2シール部材306は吐出通路304に嵌め込まれて吐出通路304の内壁面に密着する。これにより、第1シール部材305は吸入ポート301を画定し、第2シール部材306は吐出ポート302を画定する。
【0050】
第1シール部材305及び第2シール部材306の構成は共通であり、ともにゴムまたは熱可塑性エラストマー等の弾性部材から構成されることができる。以下、第1シール部材305の構成について説明するが、同様の説明は第2シール部材306にも該当する。第1シール部材305は、環状のリップ部3050と、リップ部3050の基端に連続し、平面状に広がるリップ基部3051とを有する。リップ部3050の先端部は、ピストン34の先端部340において、切欠き面3401の端と、曲面3400とにフィットする曲面を構成する。これにより、切欠き面3401が少なくとも一部において吸入ポート301に対面する場合を除き、吸入ポート301がピストン34の先端部340によってシールされる。リップ基部3051は、シリンダ30の側面部に形成される凹部に嵌め込まれ、吸入側チューブ6との間をシールする。
【0051】
ピストン34は、第1ポジションから第2ポジションを経由して第3ポジションに移動するまでの間、先端部340を第2シール部材306に密着させて吐出ポート302をシールする。また、ピストン34は、第3ポジションから第4ポジションを経由して第1ポジションに移動するまでの間、先端部340を第1シール部材305に密着させて吸入ポート301をシールする。さらに、ピストン34は、第1ポジション及び第3ポジションに位置するとき、先端部340を第1シール部材305及び第2シール部材306の両方に密着させ、ポンプ室300自体を閉塞する。つまり、ピストン34は、第1~第4ポジションを移動する間、先端部340を第1シール部材305及び第2シール部材306の少なくとも一方に密着させ、吸入ポート301及び吐出ポート302の少なくとも一方をシールする。
【0052】
なお、ピストン34は、第3ポジションに位置するとき、先端がリップ部3050の最も奥の部分と同じ位置か、それよりも奥に位置するように構成されるため、第3ポジションにおいても吸入ポート301及び吐出ポート302がシールされ、フリーフローが抑制される。
【0053】
シリンダ30Aは、吸入通路303の内径と吐出通路304の内径とが同一になるよう構成される。しかしながら、シリンダ30Aは、第1実施形態に係るシリンダ30と同様に、吐出通路304の内径が吸入通路303の内径よりもわずかに大きくなるように構成されてもよく、第1シール部材305の寸法及び第2シール部材306のサイズも、それぞれ吸入通路303と吐出通路304のサイズに合わせて構成されてもよい。
【0054】
[第3実施形態]
図7に、第3実施形態に係るポンプ1Bの構成を示す。ポンプ1Bは、ピストン基部33及び基台部80の構成が第1実施形態と異なっている。
図7に示すように、基台部80Bは、軸線A1方向に延びる基台800と、軸線A1方向に延びる平板状の板状部材801と、2本のボルト部材803,803とを有する。板状部材801は、両端に2本のボルト部材803,803が通される貫通孔を有しており、基台800との間の間隔が可変となるように、ボルト部材803,803を介して基台800に固定される。基台部80Bは、基台800と板状部材801との間に配置され、板状部材801をピストン基部33Bに向かって付勢する付勢部材802をさらに有する。
図7に示す例では、付勢部材802は、弾性を有するチューブであるが、付勢部材802は、基台800と板状部材801との間に配置され、軸線A1に直交するように延びるコイルバネ等であってもよい。
【0055】
吐出ポート302に接続された吐出側チューブ7は、長手方向の少なくとも一部が基台800と板状部材801との間に配置され、さらに付勢部材802のチューブ内を貫通するように配置される。すなわち、付勢部材802のチューブは、径方向外側から吐出側チューブ7の外周面の一部を覆うように構成される。ピストン基部33Bは、軸線A1を中心として径方向外側に突出する、凸面状の突出部331をさらに有する。突出部331は、凸面部32がカム面311においてθ=180°の位置にあるとき、つまり、ピストン34が第3ポジションに位置するときに、板状部材801を基台800に向かって押圧するように構成される。これにより、ピストン基部33Bは、突出部331によって板状部材801及び吐出側チューブ7を基台800に押し付け、吐出側チューブ7を閉塞するように構成される。ピストン基部33Bがさらに回転すると、突出部331による押圧力が解除され、付勢部材802のチューブは復元力により再び板状部材801をピストン基部33Bに向かって付勢する。これにより、吐出側チューブ7の閉塞状態が解除される。
【0056】
この構成によれば、突出部331が軸線A1方向に延びる板状部材801を介して吐出側チューブ7を押圧するため、軸線A1方向の位置が、突出部331と吐出側チューブ7とで異なっていても、吐出側チューブ7により確実に押圧力を加えることができる。また、2本のボルト部材803,803は、吐出側チューブ7の位置決めを補助する。これにより、突出部331が吐出側チューブ7を基台800に押し付けるときに、吐出側チューブ7が逃げにくくなる。
【0057】
吐出側チューブ7の閉塞状態は、ポンプ1Bが吸入を行う間に実現されるが、その他、例えば薬液を搬送する必要がない場合に、ユーザの操作によって実現されるようにしてもよい。これにより、ユーザがポンプ1を装着した状態で体勢を変えたとしても、薬液が必要なくユーザの体に搬送されることが抑制される。
【0058】
<5.特徴>
以上の実施形態によれば、ピストン34とポンプ室300を画定するシリンダ30とをともに小型化することが容易となる。また、ピストン34の往復運動がカム部材31と凸面部32との接触によって変換されるため、駆動部4の回転軸40とピストン34の中心軸とを同軸にすることができ、ピストン34の往復距離を小さく設定することが容易となる。これらの点から、ひいてはポンプ機構3及び3Aの小型化が容易となり、持ち運び性に優れたポンプが提供される。また、ポンプ機構が小型化されることにより、ポンプ1Bのように、ポンプ全体としてのコンパクト性を維持しながらフリーフローを抑制するための構成を加えることが可能となる。
【0059】
<6.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。
【0060】
<6-1>
カム面311は、上記実施形態のような曲面に限定されない。カム面311は、例えば、中心軸に沿って延びる円柱を、中心軸に対して傾斜する面で切った時に形成される断面であってもよい。つまり、カム面311は、基準面310を底面とし、軸線A1を中心とする円柱の外周面上において、基準面310から最も遠い上死点と、最遠点から180°回転した位置にあり、基準面310から最も近い下死点とを滑らかに結ぶ軌道により画定される面であればよい。
【0061】
<6-2>
カム部材31は、シリンダ30と一体として構成されてもよい。また、カム付勢部材36は、ピストン基部33の外周に巻かれていなくてもよく、コイルバネでなくてもよい。つまり、カム付勢部材36は、凸面320とカム面311とが接するように凸面部32を付勢するものであれば、特に限定されない。
【0062】
<6-3>
ポンプ1、1A及び1Bは、特に微小な流量の流体を扱うのに好適であるが、これに限られず、すでに例示した流量の範囲以外の流体を扱うように構成されてもよい。
【0063】
<6-4>
ポンプ1、1A及び1Bは、予め決められた時間周期で駆動部4の回転軸40が1回転し、流体を間欠的に吐出するように構成された。しかし、ポンプ1、1A及び1Bは、予め決められた時間をかけて回転軸40が1回転するように駆動部4を低速制御し、流体を連続的に吐出するように構成されてもよい。
【0064】
<6-5>
第3実施形態に係るポンプ1Bは、さらに吸入側チューブ6を閉塞するような構成を備えてもよい。そのような構成は、ポンプ機構の反対側に基台部80Bと同様の基台部を設け、吸入側チューブ6を基台800と板状部材801との間に配置することにより実現することができる。
【0065】
<6-6>
第3実施形態に係るピストン基部33Bの突出部331は、ピストン34が第3ポジションに位置するときに板状部材801を基台800に向かって押圧し、吐出側チューブ7を閉塞するように構成されていた。つまり、突出部331は、軸線A1を基準とする周方向の位置が凸面部32と同じになるように形成されていた。しかしながら、突出部331の形成される周方向の位置は、凸面部32とずれた位置であってもよく、例えば凸面部32と180°ずれていてもよい。この場合、突出部331は、ピストン34が第1ポジションに位置するときに板状部材801を基台800に向かって押圧し、吐出側チューブ7を閉塞する。このように、突出部331は、ポンプ1Bが吸入を行う間、つまりピストン34が第1ポジションから第2ポジションを経て第3ポジションへと至るまでのいずれかの所定の位置で板状部材801を押圧し、吐出側チューブ7を閉塞するように構成されることができる。また、この場合もユーザの操作によって吐出側チューブ7の閉塞状態が実現されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1、1A、1B ポンプ
2 タンク
3、3A ポンプ機構
4 駆動部
6 吸入側チューブ
7 吐出側チューブ
30 シリンダ
31 カム部材
32 凸面部
33、33B ピストン基部
34 ピストン
36 カム付勢部材
37 ピストンシール部材
80、80B 基台部
300 ポンプ室
301 吸入ポート
302 吐出ポート
310 基準面
311 カム面
340 先端部
3400 曲面
3401 切欠き面
A1 軸線