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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161327
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】車両用スライドレール装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
B60N2/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066048
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大輔
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA01
3B087BB02
3B087BC27
(57)【要約】
【課題】一例として、部品のガタを抑制可能な車両用スライドレール装置を得る。
【解決手段】実施形態に係る車両用スライドレール装置は、雄ネジを有したロッドと、前記雄ネジと噛み合う雌ネジと、モータによって前記ロッドまわりの第1の回転方向に回転させられることが可能な第1の回転部品と、前記第1の回転部品と前記雌ネジとの間に設けられて前記第1の回転部品の回転に応じて前記雌ネジを回転させることが可能な第2の回転部品と、を有する駆動部と、前記第1の回転部品及び前記第2の回転部品のうち一方に設けられた、第1の当接部と、前記第1の回転部品及び前記第2の回転部品のうち他方に設けられ、前記第1の回転部品が前記第1の回転方向に回転するときに前記第1の当接部に当接して前記第1の回転部品と前記第2の回転部品とがレールに沿う方向に互いに離間するように当該第1の当接部を押す第1の斜面を有する、第2の当接部と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールと、
前記レールに沿って移動可能に当該レールに取り付けられた、スライダと、
前記レールに沿って延び、雄ネジを有した、ロッドと、
前記雄ネジと噛み合うことが可能な雌ネジと、モータによって前記ロッドまわりの第1の回転方向に回転させられることが可能な第1の回転部品と、前記第1の回転部品と前記雌ネジとの間に設けられて前記第1の回転部品の回転に応じて前記雌ネジを回転させることが可能な第2の回転部品と、を有し、前記レール及び前記スライダのうち一方に保持された、駆動部と、
前記第1の回転部品及び前記第2の回転部品のうち一方に設けられた、第1の当接部と、
前記第1の回転部品及び前記第2の回転部品のうち他方に設けられ、前記第1の回転部品が前記第1の回転方向に回転するときに前記第1の当接部に当接して前記第1の回転部品と前記第2の回転部品とが前記レールに沿う方向に互いに離間するように当該第1の当接部を押す第1の斜面を有する、第2の当接部と、
を具備する車両用スライドレール装置。
【請求項2】
前記第1の回転方向において前記第1の当接部と前記第2の当接部との間に位置し、前記第1の回転部品が前記第1の回転方向に回転するときに前記第1の当接部と前記第2の当接部との間で回転を伝達可能な、弾性部材、
をさらに具備する請求項1の車両用スライドレール装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記雌ネジを有するとともに、前記雌ネジが前記雄ネジから離間した離間位置と、前記雌ネジが前記雄ネジと噛み合った係合位置と、の間で移動可能な、ナット、をさらに有し、
前記第2の回転部品は、前記ナットを前記離間位置と係合位置との間で移動可能に支持する、
請求項1又は請求項2の車両用スライドレール装置。
【請求項4】
前記第2の当接部は、前記第1の回転部品が前記第1の回転方向の反対の第2の回転方向に回転するときに前記第1の当接部に当接して前記第1の回転部品と前記第2の回転部品とが互いに離間するように当該第1の当接部を押す第2の斜面、をさらに有する、
請求項1乃至請求項3のいずれか一つの車両用スライドレール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両用スライドレール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のフロアに設けられるレールと、シートに固定されるとともにレールに移動可能に取り付けられるスライダと、を備える車両用スライドレール装置が知られる。また、モータの駆動によりレールとスライダとを相対的にスライド移動させる、いわゆるパワーシートも知られる。
【0003】
パワーシートの機構は、例えば、レールとスライダに取り付けられるスクリューロッドとナットとを有する。スクリューロッド又はナットがモータにより駆動されることで、レールとスライダとが相対的にスライド移動する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-79850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、モータからナットへの回転の伝達経路において、複数の部品が設けられる。複数の部品にはそれぞれ、寸法公差が設定される。このため、部品間の隙間が大きくなると、各部品のガタ(振動)が騒音を生じる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は上記に鑑みてなされたものであり、部品のガタを抑制可能な車両用スライドレール装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る車両用スライドレール装置は、一例として、レールと、前記レールに沿って移動可能に当該レールに取り付けられた、スライダと、前記レールに沿って延び、雄ネジを有した、ロッドと、前記雄ネジと噛み合うことが可能な雌ネジと、モータによって前記ロッドまわりの第1の回転方向に回転させられることが可能な第1の回転部品と、前記第1の回転部品と前記雌ネジとの間に設けられて前記第1の回転部品の回転に応じて前記雌ネジを回転させることが可能な第2の回転部品と、を有し、前記レール及び前記スライダのうち一方に保持された、駆動部と、前記第1の回転部品及び前記第2の回転部品のうち一方に設けられた、第1の当接部と、前記第1の回転部品及び前記第2の回転部品のうち他方に設けられ、前記第1の回転部品が前記第1の回転方向に回転するときに前記第1の当接部に当接して前記第1の回転部品と前記第2の回転部品とがレールに沿う方向に互いに離間するように当該第1の当接部を押す第1の斜面を有する、第2の当接部と、を備える。よって、一例としては、第1の回転部品の回転によって、第1の回転部品及び第2の回転部品を囲む筐体のような部品に、第1の回転部品及び第2の回転部品が近付く。これにより、当該部品と第1の回転部品又は第2の回転部品との間の隙間が縮まり、第1の回転部品及び第2の回転部品のガタが抑制される。
【0008】
上記車両用スライドレール装置は、一例として、前記第1の回転方向において前記第1の当接部と前記第2の当接部との間に位置し、前記第1の回転部品が前記第1の回転方向に回転するときに前記第1の当接部と前記第2の当接部との間で回転を伝達可能な、弾性部材をさらに備える。よって、一例としては、第1の回転部品と第2の回転部品とが過剰に離間することが抑制される。
【0009】
上記車両用スライドレール装置では、一例として、前記駆動部は、前記雌ネジを有するとともに、前記雌ネジが前記雄ネジから離間した離間位置と、前記雌ネジが前記雄ネジと噛み合った係合位置と、の間で移動可能な、ナット、をさらに有し、前記第2の回転部品は、前記ナットを前記離間位置と係合位置との間で移動可能に支持する。よって、一例としては、スライドレール装置は、モータの駆動に応じてシートを移動させることが可能なパワーシートとしての態様と、手動でシートを移動させることが可能なマニュアルシートとしての態様と、の間で切り替えることができる。
【0010】
上記車両用スライドレール装置では、一例として、前記第2の当接部は、前記第1の回転部品が前記第1の回転方向の反対の第2の回転方向に回転するときに前記第1の当接部に当接して前記第1の回転部品と前記第2の回転部品とが互いに離間するように当該第1の当接部を押す第2の斜面、をさらに有する。よって、一例としては、スライドレール装置は、第1の回転部品が第1の回転方向と第2の回転方向とのいずれに回転したとしても、筐体のような部品と第1の回転部品又は第2の回転部品との間の隙間を縮め、第1の回転部品及び第2の回転部品のガタを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1の実施形態のシート装置を概略的に示す斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態のスライドレール装置の一部を概略的に示す断面図である。
図3図3は、第1の実施形態のスライドレール装置の一部を分解して示す斜視図である。
図4図4は、第1の実施形態の切替機構の一部と、ナットと、ヘリカルギヤと、ガイド部材とを示す斜視図である。
図5図5は、第1の実施形態のスライドレール装置の一部を図2のF5-F5線に沿って示す断面図である。
図6図6は、第1の実施形態のナットが離間位置に位置するスライドレール装置の一部を示す断面図である。
図7図7は、第1の実施形態のナット、ヘリカルギヤ、及びガイド部材を示す断面図である。
図8図8は、第1の実施形態のヘリカルギヤの嵌合部及びガイド部材の嵌合部を示す図である。
図9図9は、第1の実施形態の相対的に回転したヘリカルギヤ及びガイド部材の一部を示す図である。
図10図10は、第2の実施形態に係るヘリカルギヤの嵌合部及びガイド部材の嵌合部を模式的に示す図である。
図11図11は、第2の実施形態の相対的に回転したヘリカルギヤ及びガイド部材の一部を模式的に示す図である。
図12図12は、第2の実施形態の凸部が斜面を乗り越えたヘリカルギヤ及びガイド部材の一部を模式的に示す図である。
図13図13は、第2の実施形態の凸部が次の斜面を乗り越えたヘリカルギヤ及びガイド部材の一部を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について、図1乃至図9を参照して説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0013】
図1は、第1の実施形態のシート装置10を概略的に示す斜視図である。シート装置10は、四輪自動車のような車両1に搭載され、スライドレール装置11と、シート12とを有する。シート12は、シートクッション12aと、当該シートクッション12aに回動可能に取り付けられたシートバック12bとを有する。
【0014】
各図面に示されるように、本明細書において、便宜上、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。X軸は、車両1の左右方向に沿って設けられる。Y軸は、車両1の前後方向に沿って設けられる。Z軸は、車両1の上下方向に沿って設けられる。
【0015】
さらに、本明細書において、X方向、Y方向及びZ方向が定義される。X方向は、X軸に沿う方向であって、X軸の矢印が示す+X方向(右方向)と、X軸の矢印の反対方向である-X方向(左方向)とを含む。Y方向は、Y軸に沿う方向であって、Y軸の矢印が示す+Y方向(前方向)と、Y軸の矢印の反対方向である-Y方向(後方向)とを含む。+Y方向及び-Y方向のうち一方は、第1の方向とも称され得る。+Y方向及び-Y方向のうち他方は、第2の方向とも称され得る。Z方向は、Z軸に沿う方向であって、Z軸の矢印が示す+Z方向(上方向)と、Z軸の矢印の反対方向である-Z方向(下方向)とを含む。
【0016】
スライドレール装置11は、シート12を、車両1のフロア1aに対してY方向にスライド移動させることができる。スライドレール装置11は、二つのレール15と、二つのスライダ16と、駆動装置17とを有する。
【0017】
レール15は、ロアレールとも称され得る。レール15は、ロアレールと、他の部品と、を含んでも良い。レール15は、Y方向(+Y方向及び-Y方向)に延びるように車両1のフロア1aに取り付けられる。フロア1aは、略+Z方向に向く。なお、フロア1aは、他の方向に向く部分を有しても良い。二つのレール15は、X方向に互いに離間して配置される。
【0018】
スライダ16は、アッパレールとも称され得る。スライダ16は、アッパレールと、他の部品と、を含んでも良い。スライダ16は、Y方向に延びるとともに、レール15に沿うY方向にスライド移動可能に、レール15に取り付けられる。二つのスライダ16は、シート12を支持する。
【0019】
図2は、第1の実施形態のスライドレール装置11の一部を概略的に示す断面図である。図2に示すように、レール15は、例えば、曲げ加工された板金により作られ、略C字状の断面を有する。なお、レール15はこの例に限られない。レール15は、底壁21と、二つの外側壁22と、二つの連結壁23と、二つの内側壁24とを有する。
【0020】
底壁21は、X‐Y平面に沿って広がる略板状の部分である。底壁21は凹凸を有しても良い。底壁21は、例えばボルトにより、フロア1aに取り付けられる。底壁21は、例えば、ブラケットを介してフロア1aに取り付けられても良い。
【0021】
二つの外側壁22は、X方向における底壁21の両端部から、略+Z方向に延びている。二つの内側壁24は、二つの外側壁22の間に位置し、略Z方向に延びている。X方向において、二つの内側壁24は、互いに離間するとともに、二つの外側壁22からも離間している。連結壁23は、+Z方向における外側壁22の端部と、+Z方向における内側壁24の端部との間で延びている。-Z方向における内側壁24の端は、底壁21から離間している。
【0022】
略C字状に形成されたレール15の内部に、内部空間27が設けられる。また、レール15において、X方向における二つの内側壁24の間に、開口28が設けられる。開口28は、内部空間27とレール15の外部とを連通し、Y方向に延びる溝である。
【0023】
スライダ16は、例えば、曲げ加工された板金により作られる。なお、スライダ16はこの例に限られない。スライダ16は、上壁31と、二つの挿通壁32と、二つの曲壁33とを有する。
【0024】
上壁31は、X‐Y平面に沿って広がる略板状の部分であり、Y方向に延びている。上壁31は、レール15の外に位置する。二つの挿通壁32は、X方向における上壁31の両端から、略-Z方向に延びている。二つの挿通壁32は、レール15の開口28を通り、レール15の内部と外部との間に亘って配置されている。
【0025】
曲壁33は、-Z方向における挿通壁32の端部から延び、レール15の内部空間27に位置する。曲壁33は、-Z方向における挿通壁32の端部から、レール15の外側壁22と内側壁24との間の空間に向かって延びるよう曲げられている。
【0026】
図3は、第1の実施形態のスライドレール装置11の一部を分解して示す斜視図である。図3に示すように、駆動装置17は、ロッド41と、回転駆動機構42と、切替機構43と、筐体44と、二つの軸受45,46とを有する。ロッド41は、スクリューロッドとも称され得る。回転駆動機構42は、駆動部の一例である。駆動装置17は、ワッシャのような他の部品をさらに有しても良い。
【0027】
ロッド41は、例えば、金属によって作られる。ロッド41は、Y方向に延びる略円柱状に形成される。言い換えると、ロッド41は、レール15に沿って延びている。例えば、二つの端ブラケット47が、ロッド41の両端をレール15の底壁21に固定する。
【0028】
図2に示すように、ロッド41は、レール15の内部空間27又は開口28に位置し、レール15の底壁21及び内側壁24から離間している。ロッド41は、雄ネジ41aを有する。雄ネジ41aは、ロッド41の外周面に設けられる。ロッド41の雄ネジ41aが設けられた部分は、Y方向に延びている。
【0029】
回転駆動機構42は、図2に示すモータ51、ギヤボックス52、及びシャフト53と、図3に示す複数のナット54、ウォーム55、中間ギヤ56、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58と、を有する。ヘリカルギヤ57は、第1の回転部品の一例である。ガイド部材58は、第2の回転部材の一例である。
【0030】
シャフト53、ナット54、ウォーム55、中間ギヤ56、及びヘリカルギヤ57は、例えば、金属によって作られる。ガイド部材58は、例えば、合成樹脂によって作られる。なお、シャフト53、ナット54、ウォーム55、中間ギヤ56、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58は、この例に限られず、他の材料によって作られても良い。
【0031】
図2に示すモータ51は、例えば、サーボモータであり、車両1のECU(Electronic Control Unit)の制御に応じて駆動させられる。例えば、モータ51は、駆動軸を正転又は逆転させる。
【0032】
ギヤボックス52は、例えば、モータ51の駆動軸の回転を、他の方向の回転に変換する。また、ギヤボックス52は、減速機を含んでも良い。シャフト53は、X方向に延びている。モータ51の駆動軸の回転は、ギヤボックス52を介してシャフト53に伝達される。言い換えると、モータ51は、ギヤボックス52を介してシャフト53を回転駆動させる。
【0033】
図4は、第1の実施形態の切替機構43の一部と、ナット54と、ヘリカルギヤ57と、ガイド部材58とを示す斜視図である。図4に示すように、本実施形態における回転駆動機構42は、三つのナット54を有する。なお、ナット54の数は、一つ、二つ、又は四つ以上であっても良い。
【0034】
三つのナット54は、ロッド41の中心軸Ax1の周方向に並べられる。中心軸Ax1の周方向は、中心軸Ax1まわりに回転する方向である。別の表現によれば、三つのナット54は、ロッド41の中心軸Ax1まわりに並んでいる。
【0035】
図5は、第1の実施形態のスライドレール装置11の一部を図2のF5-F5線に沿って示す断面図である。図4及び図5に示すように、ナット54はそれぞれ、内面54aと、第1の外面54bと、二つの第2の外面54cと、二つの端面54dと、雌ネジ54eとを有する。
【0036】
内面54aは、ロッド41に向くとともに、Y方向に延びる略半円筒状の曲面である。言い換えると、内面54aは、中心軸Ax1の径方向の内側に向く。径方向は、中心軸Ax1と直交する方向である。
【0037】
第1の外面54b及び第2の外面54cは、内面54aの反対側に位置する。第1の外面54b及び第2の外面54cは、Y方向に延びる略半円筒状の曲面である。第1の外面54b及び第2の外面54cは、中心軸Ax1の径方向の外側に向く。
【0038】
Y方向において、第1の外面54bは、二つの第2の外面54cの間に位置する。第1の外面54bは、第2の外面54cよりも内面54aに近い。言い換えると、第1の外面54bの半径は、第2の外面54cの半径よりも小さい。
【0039】
端面54dは、Y方向におけるナット54の両端に位置する。二つの端面54dのそれぞれに、凹部54fが設けられる。凹部54fは、例えば、中心軸Ax1の周方向に延びる有底の溝である。
【0040】
雌ネジ54eは、内面54aに設けられる。雌ネジ54eは、ロッド41の雄ネジ41aと噛み合うことが可能なように形成される。例えば、雄ネジ41aと雌ネジ54eとにおける種類、内径、外径、及びピッチは、略同一に設定される。
【0041】
三つのナット54は、例えば、雌ネジ54eを有する一つのナットを、中心軸Ax1の周方向に三つに分割することで作られる。なお、三つのナット54は、他の方法で作られても良い。
【0042】
図5に示すように、ナット54は、種々の部品を介して、スライダ16に取り付けられる。ナット54は、スライダ16に力を伝達可能に、スライダ16の内部又はスライダ16の近傍に配置されていれば良く、スライダ16に固定されている必要は無い。本実施形態では、ナット54は、スライダ16に対し中心軸Ax1の径方向に相対的に移動可能に、スライダ16の内部に配置されている。
【0043】
本実施形態におけるナット54は、スライダ16に対して所定の位置に保たれることが可能なように、支持、保持、締結、又は他の方法により取り付けられていれば良い。所定の位置は、複数の位置を含んでも良い。
【0044】
ウォーム55は、シャフト53の端部に取り付けられる。ウォーム55は、シャフト53と一体に、シャフト53の中心軸Ax2まわりに回転する。シャフト53の中心軸Ax2は、X方向に延びている。さらに、シャフト53の中心軸Ax2は、ロッド41の中心軸Ax1から、+Z方向に離間している。このため、ロッド41の中心軸Ax1と、シャフト53の中心軸Ax2とは、互いにねじれの位置にある。
【0045】
図4に示すように、ヘリカルギヤ57は、筒57aと、内面57bと、外歯57cと、嵌合部57dとを有する。嵌合部57dは、第1の当接部又は第2の当接部の一例である。
【0046】
筒57aは、Y方向に延びる略円筒状に形成される。ロッド41が、筒57aの内部を通る。内面57bは、略円筒状に形成され、ロッド41に向く。内面57bは、ロッド41から離間し、又はロッド41に部分的に接触する。
【0047】
ロッド41とヘリカルギヤ57とは、Y方向に相対的に移動可能である。さらに、ロッド41とヘリカルギヤ57とは、中心軸Ax1まわりに相対的に回転可能である。ヘリカルギヤ57は、ロッド41の雄ネジ41aと直接的に噛み合う歯を持っておらず、ロッド41との間で直接的には回転を伝達しない。ただし、後述するように、ナット54の雌ネジ54eとロッド41の雄ネジ41aとが噛み合うことで、ロッド41とヘリカルギヤ57とは、ナット54を介して間接的に回転を伝達することができる。
【0048】
外歯57cは、筒57aから中心軸Ax1の径方向の外側に突出する。図5に示すように、外歯57cは、中間ギヤ56と噛み合っている。また、中間ギヤ56は、ウォーム55とも噛み合っている。このため、ウォーム55の回転が、中間ギヤ56を介して、ヘリカルギヤ57に伝達される。
【0049】
図4に示す嵌合部57dは、例えば、ヘリカルギヤ57とガイド部材58との間の回転の伝達に用いられる。嵌合部57dは、+Y方向におけるヘリカルギヤ57の端部に設けられる。なお、嵌合部57dは、ヘリカルギヤ57の他の部分に設けられても良い。
【0050】
図4に示す回転駆動機構42において、モータ51により駆動された駆動軸の回転は、ギヤボックス52により、シャフト53に伝達される。シャフト53とウォーム55とは、一体に中心軸Ax2まわりに回転する。
【0051】
シャフト53の回転は、ウォーム55及び中間ギヤ56により、ヘリカルギヤ57に伝達される。ヘリカルギヤ57は、中心軸Ax1まわりに回転する。すなわち、ウォーム55、中間ギヤ56、及びヘリカルギヤ57は、モータ51から伝達された中心軸Ax2まわりの回転を、中心軸Ax1まわりの回転に変換する。
【0052】
上述のように、ヘリカルギヤ57は、ロッド41まわりに配置され、モータ51によって回転させられることが可能である。ヘリカルギヤ57は、モータ51の回転方向に応じて、図4に示す第1の回転方向Dr1又は第2の回転方向Dr2に回転させられる。
【0053】
第1の回転方向Dr1は、中心軸Ax1まわりに回転する一方向である。言い換えると、第1の回転方向Dr1は、ロッド41まわりの一方向である。第2の回転方向Dr2は、第1の回転方向Dr1の反対方向である。例えば、モータ51が駆動軸を正転させると、ヘリカルギヤ57が第1の回転方向Dr1に回転させられる。一方、モータ51が駆動軸を逆転させると、ヘリカルギヤ57が第2の回転方向Dr2に回転させられる。
【0054】
ガイド部材58は、Y方向に延びる略円筒状に形成される。ロッド41が、ガイド部材58の内部を通る。ガイド部材58は、内面58aと外面58bとを有する。内面58aは、ロッド41に向く。外面58bは、内面58aの反対側に設けられる。
【0055】
ロッド41とガイド部材58とは、Y方向に相対的に移動可能である。さらに、ロッド41とガイド部材58とは、中心軸Ax1まわりに相対的に回転可能である。ロッド41とガイド部材58とは、直接的には回転を伝達しない。ただし、ロッド41とガイド部材58とは、ナット54を介して間接的に回転を伝達することができる。
【0056】
ガイド部材58に、複数のガイド孔58cが設けられる。本実施形態では、ガイド部材58に、三つのガイド孔58cが設けられる。ガイド孔58cはそれぞれ、ガイド部材58を中心軸Ax1の径方向に貫通し、内面58a及び外面58bに開口する。三つのガイド孔58cは、中心軸Ax1の周方向に間隔を介して並んでいる。
【0057】
三つのガイド孔58cに、対応するナット54が配置される。ガイド部材58は、ナット54を支持する。ガイド部材58は、ナット54が当該ガイド部材58に対して相対的にY方向に移動することと、ナット54が当該ガイド部材58に対して相対的に中心軸Ax1の周方向に移動することと、を制限する。このため、ナット54とガイド部材58とは、中心軸Ax1まわりに略一体に回転できる。
【0058】
図6は、第1の実施形態のナット54が離間位置Psに位置するスライドレール装置11の一部を示す断面図である。ガイド部材58は、ナット54が、当該ガイド部材58に対して相対的に、図5に示す係合位置Pcと、図6に示す離間位置Psとの間で、中心軸Ax1の径方向に摺動(移動)可能なように、ナット54を支持する。言い換えると、ガイド部材58は、ナット54を径方向にガイドする。
【0059】
図5に示すように、係合位置Pcにおいて、ナット54の雌ネジ54eと、ロッド41の雄ネジ41aとが噛み合っている。このため、係合位置Pcにおけるナット54と、ロッド41とは、互いに力を伝達できる。
【0060】
図6に示すように、離間位置Psにおいて、ナット54の雌ネジ54eは、ロッド41の雄ネジ41aから中心軸Ax1の径方向に離間している。このため、離間位置Psにおけるナット54と、ロッド41とは、力の伝達を伴わず、相対的に中心軸Ax1まわりに回転可能である。
【0061】
図7は、第1の実施形態のナット54、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58を示す断面図である。図7に示すように、-Y方向におけるガイド部材58の端部に、嵌合部58dが設けられる。嵌合部58dは、第1の当接部又は第2の当接部の一例である。嵌合部58dは、ガイド部材58の他の部分に設けられても良い。
【0062】
ガイド部材58の嵌合部58dと、ヘリカルギヤ57の嵌合部57dとが嵌り合う。これにより、ガイド部材58とヘリカルギヤ57とは、互いに回転を伝達し、中心軸Ax1まわりに略一体に回転できる。
【0063】
上述のように、モータ51の回転は、ヘリカルギヤ57に伝達される。ガイド部材58は、ヘリカルギヤ57と略一体に、中心軸Ax1まわりに回転する。さらに、ナット54がガイド部材58と略一体に、中心軸Ax1まわりに回転する。すなわち、ヘリカルギヤ57は、モータ51の回転をナット54に伝達する。
【0064】
以上のように、ガイド部材58は、ナット54を支持するとともに、嵌合部58dにおいてヘリカルギヤ57に嵌合する。このため、ガイド部材58は、ヘリカルギヤ57とナット54の雌ネジ54eとの間に設けられる。そして、ガイド部材58は、ヘリカルギヤ57の回転に応じてナット54を回転させ、ひいてはナット54の雌ネジ54eを回転させることが可能である。
【0065】
図3に示すように、切替機構43は、二つの板バネ61と、二つの保持部材62と、コイルバネ63と、二つの操作部材64と、レバー65と、二つのブロック66と、二つのガイドバー67と、二つのコイルバネ68とを有する。
【0066】
図4に示すように、板バネ61はそれぞれ、環部61aと、複数の突出部61bとを有する。環部61a及び突出部61bは、一体に形成される。環部61aは、中心軸Ax1の周方向に延びる略円環状に形成される。ロッド41及びヘリカルギヤ57の筒57aが、環部61aの内側を通る。環部61aは、ヘリカルギヤ57の筒57aに支持され、ロッド41から離間している。
【0067】
本実施形態の板バネ61は、三つの突出部61bを有する。突出部61bは、中心軸Ax1の周方向に互いに離間して配置され、環部61aから突出する。突出部61bは、例えば、環部61aから遠ざかるに従って先細る略三角形状に形成される。
【0068】
突出部61bは、例えば、荷重が作用しない自然状態において、環部61aから遠ざかるに従って中心軸Ax1から遠ざかるように延びている。突出部61bは、環部61aと突出部61bとの接続部分を支点として、中心軸Ax1の径方向に曲がるように弾性変形することができる。二つの板バネ61のバネ定数は、略同一である。
【0069】
二つの板バネ61は、Y方向に互いに離間して配置される。二つの板バネ61の突出部61bは、互いに近付くように延びている。Y方向において、二つの板バネ61の環部61aの間に、ガイド部材58及びナット54が位置する。
【0070】
図5に示すように、二つの板バネ61の突出部61bの先端部は、ナット54の二つの凹部54fに挿入される。これにより、板バネ61の突出部61bは、ナット54を、少なくとも中心軸Ax1の径方向に支持する。
【0071】
板バネ61の突出部61bは、例えば、荷重が作用しない自然状態において、ナット54を図6の離間位置Psに保持する。なお、自然状態ではなく弾性変形している突出部61bが、ナット54を離間位置Psに保持しても良い。
【0072】
ナット54が図5の係合位置Pcに位置する場合、突出部61bは弾性変形している。突出部61bは、復元力により、ナット54を、係合位置Pcから離間位置Psに向かう方向に押す(付勢する)。なお、付勢は、押すことだけでなく、引くことも含む。
【0073】
保持部材62は、中心軸Ax1の周方向に延びる略円環状に形成される。二つの保持部材62の中心軸Ax1の径方向内側に、ガイド部材58及び三つのナット54が配置される。言い換えると、保持部材62は、ガイド部材58及びナット54を囲む。二つの保持部材62は、Y方向に互いに離間して並べられる。
【0074】
二つの保持部材62は、ナット54に対して相対的に、図5に示す保持位置Phと、図6に示す解除位置Prとの間で、Y方向に移動可能である。図5に示すように、保持位置Phにおいて、保持部材62は、ナット54を係合位置Pcに保持する。例えば、保持位置Phにおいて、保持部材62が、係合位置Pcに位置するナット54の第2の外面54cに当接する。
【0075】
上述のように、板バネ61は、ナット54を係合位置Pcから離間位置Psに向かう方向に押す。しかし、保持部材62は、ナット54の第2の外面54cに接触することで、ナット54が係合位置Pcから離間位置Psに移動することを制限する。これにより、保持位置Phにおける保持部材62は、ナット54を係合位置Pcに保持する。
【0076】
図6に示すように、解除位置Prにおいて、保持部材62は、ナット54をロッド41から離間可能にする。例えば、解除位置Prにおける保持部材62は、ナット54の第2の外面54cから離れ、例えば第1の外面54bに面する。
【0077】
コイルバネ63は、二つの保持部材62の間に位置する。コイルバネ63の両端は、二つの保持部材62に接触している。コイルバネ63は、二つの保持部材62を、互いに離間する方向に押す(付勢する)。
【0078】
解除位置Prにおける二つの保持部材62の間の距離は、保持位置Phにおける二つの保持部材62の間の距離よりも短い。このため、コイルバネ63は、保持部材62を、解除位置Prから保持位置Phに向かう方向に付勢する。
【0079】
例えばコイルバネ63の復元力により、保持部材62が、解除位置Prから保持位置Phに移動する。保持部材62が解除位置Prから保持位置Phに移動する間、保持部材62は、ナット54を中心軸Ax1の径方向の内側に向かって押す。言い換えると、保持部材62が解除位置Prから保持位置Phに移動する間、保持部材62は、三つのナット54を離間位置Psから係合位置Pcに向かう方向に押す。
【0080】
コイルバネ63に押される保持部材62は、板バネ61の復元力に抗して、ナット54を離間位置Psから係合位置Pcに移動させる。保持部材62が保持位置Phに到達するとき、ナット54は係合位置Pcに位置している。
【0081】
二つの操作部材64はそれぞれ、支持環64aと操作柱64bとを有する。支持環64aは、中心軸Ax1の周方向に延びる略円環状に形成される。図5に示すように、支持環64aの中心軸Ax1の径方向内側に、ガイド部材58が配置される。二つの操作部材64の支持環64aは、Y方向に互いに離間して並べられる。二つの操作部材64の支持環64aの間に、二つの保持部材62及びコイルバネ63が配置される。
【0082】
操作柱64bは、+Z方向における支持環64aの端部に接続され、Z方向に延びている。操作柱64bは、例えば、円柱状に形成される。なお、操作柱64bは、他の形状に形成されても良い。
【0083】
二つの操作部材64は、ナット54に対して相対的に、図5に示す非操作位置Puと、図6に示す操作位置Poとの間で、Y方向に平行移動可能である。図5に示すように、非操作位置Puの操作部材64の支持環64aは、保持位置Phに位置する保持部材62に当接している。なお、非操作位置Puの支持環64aは、保持位置Phの保持部材62から離間した位置に配置されても良い。
【0084】
図6に示すように、操作位置Poの操作部材64の支持環64aは、解除位置Prの保持部材62に接触する。操作位置Poにおける二つの操作部材64の間の距離は、非操作位置Puにおける二つの操作部材64の間の距離よりも短い。
【0085】
操作部材64は、非操作位置Puから操作位置Poへ移動する間に、保持部材62を保持位置Phから解除位置Prへ押す。操作部材64は、保持部材62に当接することで、保持部材62と略一体的に移動することができる。
【0086】
二つの操作部材64の操作柱64bが,レバー65に取り付けられる。レバー65は、例えば、ハーネス又はリンクを介して、ハンドル又はストラップに接続される。ユーザが当該ハンドル又はストラップを操作することで、レバー65は、二つの操作部材64を互いに近づけ、非操作位置Puから操作位置Poへ移動させる。二つの操作部材64は、コイルバネ63の復元力に抗して、二つの保持部材62を互いに近づくように押す。
【0087】
操作部材64に押されることで、保持部材62は、保持位置Phから解除位置Prに移動する。このように、操作部材64は、操作されることで、保持部材62を保持位置Phから解除位置Prに移動させる。
【0088】
解除位置Prにおける保持部材62は、ナット54の第2の外面54cから離間し、第2の外面54cを保持しない。このため、板バネ61の復元力により、ナット54が係合位置Pcから離間位置Psへ移動する。
【0089】
レバー65の操作が解除されると、コイルバネ63が保持部材62を介して操作部材64を押す(付勢する)ことで、二つの操作部材64が互いに遠ざかり、操作部材64が操作位置Poから非操作位置Puへ移動する。また、保持部材62が保持位置Phに移動し、ナット54が係合位置Pcに移動する。
【0090】
二つのブロック66はそれぞれ、対応する操作部材64の操作柱64bに取り付けられる。ガイドバー67は、Y方向に延び、ブロック66に設けられた貫通孔に通される。ブロック66は、ガイドバー67に沿ってY方向に移動することができる。ブロック66及びガイドバー67は、操作部材64をY方向に移動可能にガイドする。
【0091】
ガイドバー67は、コイルバネ68の内側を通る。コイルバネ68は、二つのブロック66の間に位置する。コイルバネ68は、ブロック66を介して、二つの操作部材64を互いに遠ざかるように押す(付勢する)。これにより、コイルバネ68は、レバー65が操作されていないときに、操作部材64を操作位置Poから非操作位置Puへ移動させることができる。操作部材64は、複数のコイルバネ63,68に付勢されることで、Y方向に平行移動することができる。
【0092】
以上説明したように、切替機構43は、ナット54を係合位置Pcと離間位置Psとの間で移動させる。例えば、ユーザは、ナット54を係合位置Pcに配置することで、スライダ16をレール15に対して、モータ51により自動的に移動させることができる。これにより、シート装置10は、パワーシートとして利用され得る。さらに、ユーザは、ナット54を離間位置Psに配置することで、スライダ16をレール15に対して、手動で移動させることができる。これにより、シート装置10は、マニュアルシートとして利用され得る。
【0093】
ナット54が係合位置Pcに位置する場合、モータ51から、シャフト53、ウォーム55、中間ギヤ56、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58を介して、ナット54に回転が伝達する。ナット54は、雌ネジ54eと雄ネジ41aとが噛み合った状態で、ロッド41に対して相対的に中心軸Ax1まわりに回転する。
【0094】
スライダ16に取り付けられたナット54が回転することにより、スライダ16は、ナット54の回転方向に応じて、レール15に対してY方向に移動する。言い換えると、ナット54の回転が、スライダ16のY方向における直動に変換される。これにより、スライダ16がレール15に対して自動的に移動する。
【0095】
ナット54が離間位置Psに位置する場合、ナット54がロッド41から離間する。このため、ロッド41とナット54とは、Y方向に相対的に自由に移動することができる。このため、スライダ16がレール15に対して手動で移動することができる。
【0096】
筐体44は、略直方体状の箱型に形成される。筐体44は、例えば、金属により作られるが、剛性樹脂で作られても良い。筐体44は、切替機構43と、ナット54と、ウォーム55と、中間ギヤ56と、ヘリカルギヤ57と、ガイド部材58と、軸受45,46とを収容する。筐体44に、挿通孔70と、第1の部屋71と、第2の部屋72とが設けられる。
【0097】
挿通孔70は、Y方向に筐体44を貫通する孔である。挿通孔70に、ナット54、ヘリカルギヤ57、ガイド部材58、板バネ61、保持部材62、コイルバネ63、及び操作部材64の支持環64aが収容される。さらに、ロッド41が挿通孔70を通る。言い換えると、ロッド41は、筐体44の内部を通される。
【0098】
筐体44は、挿通孔70を形成(規定、区画)する内面73をさらに有する。内面73は、内周面73aと、支持面73b,73cとを有する。内周面73aは、内面73のうち、中心軸Ax1の径方向の内側に向く部分である。挿通孔70及び内周面73aの断面形状は、一定ではなく、内部に収容される部品に応じて変化する。
【0099】
支持面73bは、-Y方向における筐体44の端部の近傍に位置し、+Y方向に向く。支持面73cは、+Y方向における筐体44の端部の近傍に位置し、-Y方向に向く。二つの支持面73b,73cは、互いに向かい合っている。
【0100】
Y方向において、二つの支持面73b,73cの間に、軸受45,46、ナット54、ヘリカルギヤ57、ガイド部材58、板バネ61、保持部材62、コイルバネ63、及び操作部材64の支持環64aが配置される。なお、例えば、軸受45,46、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58の一部が、二つの支持面73b,73cの間の領域の外に位置しても良い。
【0101】
第1の部屋71は、挿通孔70とZ方向に連通する。第1の部屋71に、ウォーム55及び中間ギヤ56が収容される。中間ギヤ56は、挿通孔70と第1の部屋71との接続部分を通って、ヘリカルギヤ57と噛み合う。
【0102】
第2の部屋72は、挿通孔70とZ方向に連通する。第2の部屋72は、第1の部屋71から+Y方向に離間している。第2の部屋72に、操作部材64の操作柱64bと、レバー65と、ブロック66と、ガイドバー67と、コイルバネ68とが収容される。レバー65の一部は、第2の部屋72に開口する孔を通って、筐体44の外部へ突出している。
【0103】
筐体44は、操作部材64が操作位置Poと非操作位置Puとの間で平行移動可能なように、操作部材64及びブロック66を支持する。また、筐体44は、レバー65を回転可能に支持する。筐体44は、他の部材を支持しても良い。
【0104】
軸受45,46は、例えば、合成樹脂によって作られたブッシュである。軸受45は、-Y方向における挿通孔70の端部に配置される。軸受46は、+Y方向における挿通孔70の端部に配置される。なお、軸受45,46の位置は、この例に限られない。
【0105】
軸受45は、中心軸Ax1の径方向において内周面73aとヘリカルギヤ57の筒57aとの間に介在する。軸受46は、中心軸Ax1の径方向において、内周面73aとガイド部材58の外面58bとの間に介在する。挿通孔70の内周面73aは、軸受45,46を介して、ヘリカルギヤ57及びガイド部材58を、筐体44に対して中心軸Ax1まわりに回転可能に支持する。
【0106】
ロッド41は、ヘリカルギヤ57、ガイド部材58、及び軸受45,46を介して、筐体44に支持されることができる。ロッド41は、ヘリカルギヤ57及びガイド部材58から離間しても良い。すなわち、筐体44は、当該筐体44に対して相対的に回転可能にロッド41を支持しても良いし、ロッド41を支持しなくても良い。
【0107】
挿通孔70の内周面73aは、ナット54、ヘリカルギヤ57、ガイド部材58、板バネ61、保持部材62、及びコイルバネ63から離間している。なお、内周面73aが、ヘリカルギヤ57、ガイド部材58、保持部材62、及びコイルバネ63を支持しても良い。
【0108】
軸受45は、Y方向において、内面73の支持面73bとヘリカルギヤ57との間に介在する。軸受46は、Y方向において、内面73の支持面73cとガイド部材58との間に介在する。軸受45とヘリカルギヤ57との間、及び軸受46とガイド部材58との間に、ワッシャのような部材が介在しても良い。
【0109】
ヘリカルギヤ57及びガイド部材58は、軸受45,46を介して、筐体44の二つの支持面73b,73cによりY方向に支持されることが可能である。なお、ヘリカルギヤ57及びガイド部材58は、Y方向において若干移動可能であっても良い。
【0110】
例えば、Y方向において、二つの支持面73b,73cの間に、軸受45,46、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58が位置する。軸受45,46、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58のそれぞれに、寸法公差が設定される。このため、軸受45,46、ヘリカルギヤ57、ガイド部材58、及び支持面73b,73cの間に隙間が生じ得る。当該隙間により、軸受45,46、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58は、Y方向において若干移動可能となる。
【0111】
筐体44は、例えば、スライダ16の上壁31に設けられた孔31aを貫通して、スライダ16の内部に配置される。筐体44は、例えば、ブラケット75を介して、スライダ16に取り付けられる。
【0112】
筐体44に収容された切替機構43、ナット54、ウォーム55、中間ギヤ56、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58は、軸受45,46及び筐体44を介してスライダ16に保持される。さらに、モータ51、ギヤボックス52、及びシャフト53もスライダ16に直接的又は間接的に保持される。これにより、回転駆動機構42及び切替機構43は、スライダ16に保持される。なお、回転駆動機構42は、この例に限られない。
【0113】
図4に示すように、ヘリカルギヤ57の嵌合部57dは、複数の凸部80を有する。凸部80は、例えば、+Y方向における筒57aの端から+Y方向に突出している。複数の凸部80は、中心軸Ax1まわりに互いに離間して配置される。
【0114】
嵌合部57dは、上述の例に限られない。例えば、嵌合部57dは、筒57aから中心軸Ax1の径方向に突出する突起を有しても良いし、凹部が設けられても良い。また、凸部80の数は、三つに限られない。嵌合部57dは、一つ、二つ、又は四つ以上の凸部80を有しても良い。
【0115】
図8は、第1の実施形態のヘリカルギヤ57の嵌合部57d及びガイド部材58の嵌合部58dを示す図である。図8に示すように、複数の凸部80はそれぞれ、端面81と、二つの側面82,83と、二つの斜面84,85とを有する。斜面84,85はそれぞれ、第1の斜面又は第2の斜面の一例である。
【0116】
端面81は、+Y方向における凸部80の端部に設けられる。端面81は、略平坦に形成され、+Y方向に向く。なお、凸部80は、曲面状の端面81を有しても良いし、端面81を省略しても良い。
【0117】
側面82は、第1の回転方向Dr1における凸部80の端部に設けられる。側面82は、略平坦に形成され、第1の回転方向Dr1に向く。側面83は、第2の回転方向Dr2における凸部80の端部に設けられる。言い換えると、側面83は、側面82の反対側に位置する。側面83は、略平坦に形成され、第2の回転方向Dr2に向く。なお、側面82,83は、この例に限られず、曲面状であっても良いし、他の方向に向いても良い。
【0118】
斜面84は、第1の回転方向Dr1における端面81の端と、+Y方向における側面82の端と、の間で延びている。斜面84は、中心軸Ax1の軸方向に対して斜めに傾いている。中心軸Ax1の軸方向は、中心軸Ax1に沿う方向であり、Y方向である。
【0119】
斜面84は、-Y方向に向かって第1の回転方向Dr1に回転する、又は+Y方向に向かって第2の回転方向Dr2に回転する、略螺旋状の曲面である。すなわち、斜面84は、略一定の半径で中心軸Ax1まわりに斜めに延び、+Y方向における端が端面81に接続され、-Y方向における端が側面82に接続される。Y方向において、-Y方向における斜面84の端は、+Y方向における斜面84の端よりも、筐体44の支持面73bに近い。
【0120】
斜面85は、第2の回転方向Dr2における端面81の端と、+Y方向における側面83の端と、の間で延びている。斜面85は、中心軸Ax1の軸方向に対して斜めに傾いている。
【0121】
斜面85は、-Y方向に向かって第2の回転方向Dr2に回転する、又は+Y方向に向かって第1の回転方向Dr1に回転する、略螺旋状の曲面である。すなわち、斜面85は、略一定の半径で中心軸Ax1まわりに斜めに延び、+Y方向における端が端面81に接続され、-Y方向における端が側面83に接続される。Y方向において、-Y方向における斜面85の端は、+Y方向における斜面85の端よりも、筐体44の支持面73bに近い。このため、二つの斜面84,85は、+Y方向に先細るように延びている。
【0122】
ガイド部材58の嵌合部58dに、複数の凹部90が設けられる。凹部90は、例えば、-Y方向におけるガイド部材58の端部に設けられる。凹部90は、内面58aから、中心軸Ax1の径方向の外側に窪んでいる。さらに、凹部90は、-Y方向におけるガイド部材58の端部から、+Y方向に窪んでいる。複数の凹部90は、中心軸Ax1まわりに互いに離間して配置される。複数の凹部90の数及び間隔は、凸部80の数及び間隔と略等しい。
【0123】
嵌合部58dは、上述の例に限られない。例えば、嵌合部58dは、外面58bから中心軸Ax1の径方向の内側に窪む凹部を有しても良いし、-Y方向に延びる突起を有しても良い。
【0124】
ヘリカルギヤ57の複数の凸部80が、ガイド部材58の対応する凹部90に嵌る。言い換えると、凸部80が、凹部90に収容される。これにより、ヘリカルギヤ57の嵌合部57dと、ガイド部材58の嵌合部58dとが、互いに嵌り合う。
【0125】
ガイド部材58は、複数の凹部90のそれぞれの底面91、二つの側面92,93、及び二つの斜面94,95を有する。斜面94,95はそれぞれ、第1の斜面又は第2の斜面の一例である。底面91、側面92,93、及び斜面94,95は、凹部90を少なくとも部分的に形成(規定、区画)する。
【0126】
底面91は、+Y方向における凹部90の端部に設けられる。底面91は、略平坦に形成され、-Y方向に向く。底面91は、凸部80の端面81と略平行に形成される。底面91は、端面81に向くことができる。中心軸Ax1の周方向において、底面91の長さ(幅)は、凸部80の端面81の長さ(幅)よりも長い。なお、凹部90は、曲面状の底面91を有しても良いし、底面91を省略しても良い。
【0127】
側面92は、第1の回転方向Dr1における凹部90の端部に設けられる。側面92は、略平坦に形成され、第2の回転方向Dr2に向く。側面92は、中心軸Ax1の周方向において、間隔を介して凸部80の側面82に向く。
【0128】
側面93は、第2の回転方向Dr2における凹部90の端部に設けられる。側面93は、略平坦に形成され、第1の回転方向Dr1に向く。側面93は、中心軸Ax1の周方向において、間隔を介して凸部80の側面83に向く。なお、側面92,93は、この例に限られず、曲面状であっても良いし、他の方向に向いても良い。
【0129】
中心軸Ax1の周方向において、凹部90の側面92,93の間の距離は、凸部80の側面82,83の間の距離よりも長い。言い換えると、中心軸Ax1の周方向において、凹部90の幅は、凸部80の幅よりも広い。このため、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とは、凸部80が凹部90の内部で中心軸Ax1の周方向に移動するように、中心軸Ax1まわりに相対的に回転することができる。
【0130】
斜面94は、第1の回転方向Dr1における底面91の端と、+Y方向における側面92の端と、の間で延びている。斜面94は、中心軸Ax1の軸方向に対して斜めに傾いている。斜面94は、凸部80の斜面84と略平行に形成される。斜面94は、斜面84に向くことができる。
【0131】
斜面94は、-Y方向に向かって第1の回転方向Dr1に回転する、又は+Y方向に向かって第2の回転方向Dr2に回転する、略螺旋状の曲面である。すなわち、斜面94は、略一定の半径で中心軸Ax1まわりに斜めに延び、+Y方向における端が底面91に接続され、-Y方向における端が側面92に接続される。Y方向において、-Y方向における斜面94の端は、+Y方向における斜面94の端よりも、筐体44の支持面73bに近い。
【0132】
斜面95は、第2の回転方向Dr2における底面91の端と、+Y方向における側面93の端と、の間で延びている。斜面95は、中心軸Ax1の軸方向に対して斜めに傾いている。斜面95は、凸部80の斜面85と略平行に形成される。斜面95は、斜面85に向くことができる。
【0133】
斜面95は、-Y方向に向かって第2の回転方向Dr2に回転する、又は+Y方向に向かって第1の回転方向Dr1に回転する、略螺旋状の曲面である。すなわち、斜面95は、略一定の半径で中心軸Ax1まわりに斜めに延び、+Y方向における端が底面91に接続され、-Y方向における端が側面93に接続される。Y方向において、-Y方向における斜面95の端は、+Y方向における斜面95の端よりも、筐体44の支持面73bに近い。このため、二つの斜面94,95は、+Y方向に先細るように延びている。
【0134】
図4に示すように、スライドレール装置11は、クッション部材100をさらに有する。クッション部材100は、弾性部材の一例である。クッション部材100は、例えば、合成ゴムのようなエラストマーによって作られる。このため、クッション部材100の縦弾性係数は、金属によって作られたヘリカルギヤ57と合成樹脂によって作られたガイド部材58とのいずれの縦弾性係数よりも低い。クッション部材100は、例えば、環部101と、複数の介在部102とを有する。
【0135】
環部101は、中心軸Ax1の周方向に延びる略円環状に形成される。環部101の中心軸Ax1の径方向内側に、ロッド41が配置される。図7に示すように、環部101の内径は、ヘリカルギヤ57の内面57bの直径、及びガイド部材58の内面58aの直径と略等しい。
【0136】
Y方向において、環部101は、+Y方向における筒57aの端部と、ガイド部材58と、の間に位置する。環部101は、Y方向に圧縮されない。このため、環部101と筒57aとの間、及び環部101とガイド部材58との間、の少なくとも一方に隙間が設けられても良い。なお、環部101は、筒57aとガイド部材58によって、Y方向に圧縮されても良い。
【0137】
複数の介在部102は、環部101から+Y方向に突出する。複数の介在部102は、中心軸Ax1まわりに互いに離間して配置される。複数の介在部102は、凸部80とともに、凹部90に収容される。例えば、一つの凹部90に、一つの凸部80と、二つの介在部102とが収容される。
【0138】
図8に示すように、一つの凹部90において、凸部80は、二つの介在部102の間に位置する。当該二つの介在部102のうち一方が、凸部80の側面82と、凹部90の側面92との間に位置する。すなわち、中心軸Ax1の周方向(第1の回転方向Dr1又は第2の回転方向Dr2)において、介在部102は、ヘリカルギヤ57の嵌合部57dと、ガイド部材58の嵌合部58dとの間に位置する。介在部102は、側面82,92に当接しても良いし、側面82,92から離間しても良い。
【0139】
二つの介在部102のうち他方は、凸部80の側面83と、凹部90の側面93との間に位置する。介在部102は、側面83,93に当接しても良いし、側面83,93から離間しても良い。
【0140】
上述のように、寸法公差により、軸受45,46、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58の間に、隙間が生じることがある。この場合、軸受45,46、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58の少なくとも一つがY方向にガタつく(振動する)ことにより、騒音が生じる虞がある。しかし、本実施形態のスライドレール装置11は、軸受45,46、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58の間の隙間を縮め、騒音の発生を抑制できる。
【0141】
図9は、第1の実施形態の相対的に回転したヘリカルギヤ57及びガイド部材58の一部を示す図である。図9に示すように、例えば、ヘリカルギヤ57がガイド部材58に対して第1の回転方向Dr1に回転すると、凸部80の斜面84が凹部90の斜面94に当接する。斜面84,94は、略平行であるため、互いに面接触することができる。
【0142】
ヘリカルギヤ57がさらに回転すると、凸部80の斜面84が凹部90の斜面94に沿って移動(摺動)する。これにより、ヘリカルギヤ57の斜面84は、ガイド部材58の斜面94を+Y方向に押す。さらに、ガイド部材58の斜面94は、ヘリカルギヤ57の斜面84を-Y方向に押す。これにより、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とが、Y方向に互いに離間するように移動する。なお、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とは、斜面84,94において互いに接触し続ける。
【0143】
ヘリカルギヤ57が-Y方向に押されることで、ヘリカルギヤ57と軸受45との間の隙間、及び軸受45と筐体44の支持面73bとの間の隙間、の少なくとも一方が縮まる。さらに、ガイド部材58が+Y方向に押されることで、ガイド部材58と軸受46との間の隙間、及び軸受46と筐体44の支持面73cとの間の隙間、の少なくとも一方が縮まる。
【0144】
以上のように、嵌合部57dの斜面84は、ヘリカルギヤ57が第1の回転方向Dr1に回転するときに、嵌合部58dの斜面94に当接して、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とがY方向に互いに離間するように、嵌合部58dの斜面94を押す。また、嵌合部58dの斜面94は、ヘリカルギヤ57が第1の回転方向Dr1に回転するときに、嵌合部57dの斜面84に当接して、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とがY方向に互いに離間するように、嵌合部57dの斜面84を押す。これにより、軸受45,46、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58の間の隙間が縮まる。
【0145】
ヘリカルギヤ57が第1の回転方向Dr1に回転するとき、ガイド部材58は当初、例えばナット54の雌ネジ54eとロッド41の雄ネジ41aとの間の静止摩擦力により、静止している。このため、ヘリカルギヤ57がガイド部材58に対して相対的に第1の回転方向Dr1に回転し、斜面84,94が互いを押すことができる。
【0146】
ヘリカルギヤ57が第1の回転方向Dr1に回転することで凸部80の側面82と凹部90の側面92とが互いに近づき、クッション部材100の介在部102を押す。これにより、側面82,92の間で介在部102が中心軸Ax1の周方向に圧縮される。介在部102が中心軸Ax1の周方向に潰れることで、凸部80の斜面84が凹部90の斜面94に沿って移動(摺動)することができる。
【0147】
介在部102から側面82,92に作用する反力(介在部102の復元力)は、介在部102が圧縮されるほど大きくなる。このため、介在部102が所定量まで圧縮されると、介在部102が凹部90の側面92を押す反力は、雌ネジ54eと雄ネジ41aとの間の静止摩擦力を超える。以降、ガイド部材58も、第1の回転方向Dr1に回転する。すなわち、介在部102は、ヘリカルギヤ57の側面82とガイド部材58の側面92との間で回転を伝達し、ヘリカルギヤ57及びガイド部材58と略一体に第1の回転方向Dr1に回転する。
【0148】
以上のように、クッション部材100の介在部102は、ヘリカルギヤ57が第1の回転方向Dr1に回転するときに、ヘリカルギヤ57の嵌合部57dと、ガイド部材58の嵌合部58dとの間で回転を伝達可能である。介在部102の縦弾性係数は、ヘリカルギヤ57が第1の回転方向Dr1に回転するときに、凸部80の斜面84が凹部90の斜面94に沿って所望の範囲で移動可能なように設定される。
【0149】
例えば、介在部102の縦弾性係数が過剰に大きく設定されると、介在部102がほとんど潰れず、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とがY方向に互いに離間しない。このため、介在部102の縦弾性係数は、ヘリカルギヤ57が第1の回転方向Dr1に回転するときに、介在部102が潰れ、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とがY方向に互いに離間できるように設定される。
【0150】
また、介在部102の縦弾性係数が過剰に小さく設定されると、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とは、Y方向に大きく離間し、軸受45,46を筐体44の支持面73b,73cに強く押し付ける。このため、介在部102の縦弾性係数は、例えば、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とが軸受45,46を支持面73b,73cに押し付ける前に、ヘリカルギヤ57、ガイド部材58、及びクッション部材100が略一体に回転できるように設定される。
【0151】
モータ51が停止すると、ヘリカルギヤ57の回転も停止する。このとき、圧縮された介在部102の復元力が、ヘリカルギヤ57を第2の回転方向Dr2に押すとともに、ガイド部材58を第1の回転方向Dr1に押す。しかし、例えば、雄ネジ41aと雌ネジ54eとの間の摩擦力と、モータ51のブレーキ力とが、ヘリカルギヤ57及びガイド部材58が回転すること制限する。なお、介在部102の復元力が、ヘリカルギヤ57及びガイド部材58を若干回転させても良い。
【0152】
一方、ヘリカルギヤ57が第2の回転方向Dr2に回転すると、凸部80の斜面85が凹部90の斜面95に当接する。斜面85,95は、略平行であるため、互いに面接触することができる。
【0153】
ヘリカルギヤ57がさらに回転すると、凸部80の斜面85が凹部90の斜面95に沿って移動する。これにより、ヘリカルギヤ57の斜面85は、ガイド部材58の斜面95を+Y方向に押す。さらに、ガイド部材58の斜面95は、ヘリカルギヤ57の斜面85を-Y方向に押す。これにより、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とが、Y方向に互いに離間するように移動する。なお、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とは、斜面85,95において互いに接触し続ける。
【0154】
以上のように、嵌合部57dの斜面85は、ヘリカルギヤ57が第2の回転方向Dr2に回転するときに、嵌合部58dの斜面95に当接して、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とがY方向に互いに離間するように、嵌合部58dの斜面95を押す。また、嵌合部58dの斜面95は、ヘリカルギヤ57が第2の回転方向Dr2に回転するときに、嵌合部57dの斜面85に当接して、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とがY方向に互いに離間するように、嵌合部57dの斜面85を押す。これにより、軸受45,46、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58の間の隙間が縮まる。
【0155】
ヘリカルギヤ57が第2の回転方向Dr2に回転するとき、ガイド部材58は当初、例えば雌ネジ54eと雄ネジ41aとの間の静止摩擦力により、静止している。このため、ヘリカルギヤ57がガイド部材58に対して相対的に第2の回転方向Dr2に回転し、斜面85,95が互いを押すことができる。
【0156】
ヘリカルギヤ57が第2の回転方向Dr2に回転することで凸部80の側面83と凹部90の側面93とが互いに近づき、クッション部材100の介在部102を押す。これにより、側面83,93の間で介在部102が中心軸Ax1の周方向に圧縮される。介在部102が中心軸Ax1の周方向に潰れることで、凸部80の斜面85が凹部90の斜面95に沿って移動することができる。
【0157】
介在部102から側面83,93に作用する反力は、介在部102が圧縮されるほど大きくなる。このため、介在部102が所定量まで圧縮されると、介在部102が凹部90の側面93を押す反力は、雌ネジ54eと雄ネジ41aとの間の静止摩擦力を超える。以降、ガイド部材58も、第2の回転方向Dr2に回転する。すなわち、介在部102は、ヘリカルギヤ57の側面83とガイド部材58の側面93との間で回転を伝達し、ヘリカルギヤ57及びガイド部材58と略一体に第2の回転方向Dr2に回転する。
【0158】
以上のように、クッション部材100の介在部102は、ヘリカルギヤ57が第2の回転方向Dr2に回転するときに、ヘリカルギヤ57の嵌合部57dと、ガイド部材58の嵌合部58dとの間で回転を伝達可能である。側面82,92の間の介在部102の縦弾性係数は、側面83,93の間の介在部102の縦弾性係数と略等しい。なお、複数の介在部102の縦弾性係数が異なっても良い。
【0159】
以上説明された第1の実施形態に係るスライドレール装置11において、回転駆動機構42は、雌ネジ54eと、ヘリカルギヤ57と、ガイド部材58とを有する。雌ネジ54eは、ロッド41の雄ネジ41aと噛み合うことが可能である。ヘリカルギヤ57は、モータ51によってロッド41まわりの第1の回転方向Dr1に回転させられることが可能である。ガイド部材58は、ヘリカルギヤ57と雌ネジ54eとの間に設けられてヘリカルギヤ57の回転に応じて雌ネジ54eを回転させることが可能である。嵌合部57dが、ヘリカルギヤ57に設けられる。嵌合部58dは、ガイド部材58に設けられ、斜面94を有する。斜面94は、ヘリカルギヤ57が第1の回転方向Dr1に回転するときに、嵌合部57dに当接してヘリカルギヤ57とガイド部材58とがレール15に沿うY方向に互いに離間するように当該嵌合部57dを押す。すなわち、ヘリカルギヤ57の回転によって、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とが互いに離間する。このため、例えば、ヘリカルギヤ57の回転によって、ヘリカルギヤ57及びガイド部材58を囲む筐体44及び軸受45,46のような部品に、ヘリカルギヤ57及びガイド部材58が近付く。これにより、当該部品とヘリカルギヤ57又はガイド部材58との間の隙間が縮まり、ヘリカルギヤ57及びガイド部材58のガタ(振動)による騒音が発生することが抑制される。
【0160】
クッション部材100の介在部102は、第1の回転方向Dr1において嵌合部57dと嵌合部58dとの間に位置し、ヘリカルギヤ57が第1の回転方向Dr1に回転するときに嵌合部57dと嵌合部58dとの間で回転を伝達可能である。例えば、嵌合部57dは、クッション部材100の反力(弾性力)が雌ネジ54eと雄ネジ41aとの間の静止摩擦力を超えるまで、クッション部材100を圧縮しながら斜面94に沿って移動する。クッション部材100の反力が雌ネジ54eと雄ネジ41aとの間の静止摩擦力を超えると、クッション部材100のさらなる圧縮が抑制される。これにより、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とクッション部材100とが略一体的に回転し、ヘリカルギヤ57が斜面94に沿ってさらに移動することが抑制される。従って、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とが過剰に離間することが抑制され、ひいてはヘリカルギヤ57及びガイド部材58と、筐体44及び軸受45,46のような部品と、の間に強い摩擦力が生じることが抑制される。これにより、スライドレール装置11は、エネルギーロスや、ヘリカルギヤ57及びガイド部材58が損傷すること、を抑制できる。
【0161】
ナット54は、雌ネジ54eを有するとともに、雌ネジ54eが雄ネジ41aから離間した離間位置Psと、雌ネジ54eが雄ネジ41aと噛み合った係合位置Pcと、の間で移動可能である。ガイド部材58は、ナット54を離間位置Psと係合位置Pcとの間で移動可能に支持する。これにより、回転駆動機構42は、ナット54が係合位置Pcに位置するときに、モータ51から、ヘリカルギヤ57及びガイド部材58を通じて、ナット54の雌ネジ54eに回転を伝達させることで、スライダ16とレール15とを相対的に移動させる。この場合、スライドレール装置11を備えたシート装置10は、いわゆるパワーシートとして、モータ51の駆動に応じてシート12を移動させることができる。一方、ナット54が離間位置Psに位置するとき、スライダ16とレール15との相対的な移動を制限する雌ネジ54eと雄ネジ41aとの噛み合いが解除される。この場合、スライドレール装置11を備えるシート装置10は、いわゆるマニュアルシートとして、手動でシート12を移動させることができる。従って、スライドレール装置11は、シート装置10を、パワーシートとしての態様とマニュアルシートとしての態様との間で切り替えることができる。
【0162】
嵌合部58dは、ヘリカルギヤ57が第1の回転方向Dr1の反対の第2の回転方向Dr2に回転するときに嵌合部57dに当接してヘリカルギヤ57とガイド部材58とが互いに離間するように当該嵌合部57dを押す斜面95を有する。これにより、スライドレール装置11は、ヘリカルギヤ57が第1の回転方向Dr1と第2の回転方向Dr2とのいずれに回転したとしても、筐体44及び軸受45,46のような部品とヘリカルギヤ57又はガイド部材58との間の隙間を縮め、ヘリカルギヤ57及びガイド部材58のガタによる騒音が発生を抑制できる。
【0163】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態について、図10乃至図13を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
【0164】
図10は、第2の実施形態に係るヘリカルギヤ57の嵌合部57d及びガイド部材58の嵌合部58dを模式的に示す図である。図10に示すように、第2の実施形態のヘリカルギヤ57の嵌合部57dは、凸部80の代わりに、複数の凸部120を有する。凸部120は、例えば、+Y方向における筒57aの端から+Y方向に突出している。複数の凸部120は、中心軸Ax1まわりに互いに離間して配置される。複数の凸部120はそれぞれ、端面121と、二つの側面122,123と、斜面124とを有する。
【0165】
端面121は、+Y方向における凸部120の端部に設けられる。端面121は、略平坦に形成され、+Y方向に向く。なお、凸部120は、曲面状の端面121を有しても良い。
【0166】
側面122は、第1の回転方向Dr1における凸部120の端部に設けられる。側面122は、略平坦に形成され、第1の回転方向Dr1に向く。側面123は、第2の回転方向Dr2における凸部120の端部に設けられる。言い換えると、側面123は、側面122の反対側に位置する。側面123は、略平坦に形成され、第2の回転方向Dr2に向く。なお、側面122,123は、この例に限られず、曲面状であっても良いし、他の方向に向いても良い。
【0167】
斜面124は、第1の回転方向Dr1における端面121の端と、+Y方向における側面122の端と、の間で延びている。斜面124は、中心軸Ax1の軸方向に対して斜めに傾いている。
【0168】
斜面124は、-Y方向に向かって第1の回転方向Dr1に回転する、又は+Y方向に向かって第2の回転方向Dr2に回転する、略螺旋状の曲面である。すなわち、斜面124は、略一定の半径で中心軸Ax1まわりに斜めに延び、+Y方向における端が端面121に接続され、-Y方向における端が側面122に接続される。Y方向において、-Y方向における斜面124の端は、+Y方向における斜面124の端よりも、筐体44の支持面73bに近い。
【0169】
第2の実施形態のガイド部材58の嵌合部58dに、凹部90の代わりに、複数の凹部130が設けられる。凹部130は、例えば、-Y方向におけるガイド部材58の端部に設けられる。凹部130は、内面58aから、中心軸Ax1の径方向の外側に窪んでいる。さらに、凹部130は、-Y方向におけるガイド部材58の端部から、+Y方向に窪んでいる。複数の凹部130は、中心軸Ax1まわりに互いに離間して配置される。複数の凹部130の数及び間隔は、凸部120の数及び間隔と略等しい。
【0170】
ヘリカルギヤ57の複数の凸部120が、ガイド部材58の対応する凹部130に嵌る。言い換えると、凸部120が、凹部130に収容される。これにより、ヘリカルギヤ57の嵌合部57dと、ガイド部材58の嵌合部58dとが、互いに嵌り合う。
【0171】
ガイド部材58は、複数の凹部130のそれぞれの底面131,132,133、側面134,135、斜面136,137、及び制限面138,139を有する。底面132,133はそれぞれ、支持面の一例である。斜面136,137はそれぞれ、第1の斜面の一例である。底面131,132,133、側面134,135、斜面136,137、及び制限面138,139は、凹部130を少なくとも部分的に形成(規定、区画)する。
【0172】
底面131は、+Y方向における凹部130の端部に設けられる。Y方向において、底面132は、底面131と底面133との間に位置する。また、中心軸Ax1の周方向において、底面132は、底面131と底面133との間に位置する。底面131,132,133は、略平坦に形成され、-Y方向に向く。
【0173】
底面131,132,133は、凸部120の端面121と略平行に形成される。底面131,132,133は、端面121に向くことができる。中心軸Ax1の周方向において、底面131,132のそれぞれの長さ(幅)は、凸部120の端面121の長さ(幅)と略等しい。また、中心軸Ax1の周方向において、底面133の幅は、端面121の幅よりも長い。なお、凹部130は、曲面状の底面131,132,133を有しても良い。
【0174】
側面134は、第1の回転方向Dr1における凹部130の端部に設けられる。側面134は、略平坦に形成され、第2の回転方向Dr2に向く。側面134は、中心軸Ax1の周方向において、間隔を介して凸部120の側面122に向く。+Y方向における側面134の端は、第1の回転方向Dr1における底面133の端に接続される。
【0175】
側面135は、第2の回転方向Dr2における凹部130の端部に設けられる。側面135は、略平坦に形成され、第1の回転方向Dr1に向く。側面135は、中心軸Ax1の周方向において、間隔を介して凸部120の側面123に向く。+Y方向における側面135の端は、第2の回転方向Dr2における底面131の端に接続される。なお、側面134,135は、この例に限られず、曲面状であっても良いし、他の方向に向いても良い。
【0176】
中心軸Ax1の周方向において、凹部130の側面134,135の間の距離は、凸部120の側面122,123の間の距離よりも長い。このため、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とは、凸部120が凹部130の内部で中心軸Ax1の周方向に移動するように、中心軸Ax1まわりに相対的に回転することができる。
【0177】
斜面136は、第1の回転方向Dr1における底面131の端から延びている。斜面137は、第1の回転方向Dr1における底面132の端から延びている。斜面136,137は、中心軸Ax1の軸方向に対して斜めに傾いている。斜面136,137は、凸部120の斜面124と略平行に形成される。斜面136,137は、斜面124に向くことができる。
【0178】
斜面136,137は、-Y方向に向かって第1の回転方向Dr1に回転する、又は+Y方向に向かって第2の回転方向Dr2に回転する、略螺旋状の曲面である。斜面136は、略一定の半径で中心軸Ax1まわりに斜めに延び、+Y方向における端が底面131に接続される。斜面137は、略一定の半径で中心軸Ax1まわりに斜めに延び、+Y方向における端が底面132に接続される。Y方向において、-Y方向における斜面136,137の端は、+Y方向における斜面136,137の端よりも、筐体44の支持面73bに近い。
【0179】
制限面138は、-Y方向における斜面136の端と、第2の回転方向Dr2における底面132の端と、に接続される。言い換えると、制限面138は、斜面136と底面132との間に位置する。制限面138は、略平坦に形成され、第1の回転方向Dr1に向く。
【0180】
制限面139は、-Y方向における斜面137の端と、第2の回転方向Dr2における底面133の端と、に接続される。言い換えると、制限面139は、斜面137と底面133との間に位置する。制限面139は、略平坦に形成され、第1の回転方向Dr1に向く。制限面138,139は、凸部120の側面123と略平行に形成される。制限面138,139は、側面123に向くことができる。
【0181】
第2の実施形態のスライドレール装置11は、クッション部材100の代わりに、クッション部材140を有する。クッション部材140は、弾性部材の一例である。クッション部材140は、例えば、合成ゴムのようなエラストマーによって作られる。このため、クッション部材140の縦弾性係数は、金属によって作られたヘリカルギヤ57と合成樹脂によって作られたガイド部材58とのいずれの縦弾性係数よりも低い。クッション部材140は、例えば、環部141と、複数の介在部142とを有する。
【0182】
環部141は、中心軸Ax1の周方向に延びる略円環状に形成される。環部141の中心軸Ax1の径方向内側に、ロッド41が配置される。Y方向において、環部141は、+Y方向における筒57aの端部と、ガイド部材58と、の間に位置する。
【0183】
複数の介在部142は、環部141から+Y方向に突出する。複数の介在部142は、中心軸Ax1まわりに互いに離間して配置される。複数の介在部142は、凸部120とともに、凹部130に収容される。例えば、一つの凹部130に、一つの凸部120と、一つの介在部142とが収容される。
【0184】
複数の介在部142のうち一つが、凸部120の側面122と、凹部130の側面134との間に位置する。すなわち、中心軸Ax1の周方向(第1の回転方向Dr1又は第2の回転方向Dr2)において、介在部142は、ヘリカルギヤ57の嵌合部57dと、ガイド部材58の嵌合部58dとの間に位置する。介在部142は、側面122,134に当接している。
【0185】
例えば、スライドレール装置11の組み立て当初、凸部120の端面121は、凹部130の底面131に当接している。第2の実施形態のスライドレール装置11は、ヘリカルギヤ57が第1の回転方向Dr1に回転することで、軸受45,46、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58の間の隙間を縮めることができる。
【0186】
図11は、第2の実施形態の相対的に回転したヘリカルギヤ57及びガイド部材58の一部を模式的に示す図である。図11に示すように、例えば、ヘリカルギヤ57が第1の回転方向Dr1に回転すると、凸部120の斜面124が凹部130の斜面136に沿って移動する。
【0187】
ヘリカルギヤ57の斜面124は、ガイド部材58の斜面136を+Y方向に押す。さらに、ガイド部材58の斜面136は、ヘリカルギヤ57の斜面124を-Y方向に押す。これにより、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とが、Y方向に互いに離間するように移動する。
【0188】
以上のように、嵌合部58dの斜面136は、ヘリカルギヤ57が第1の回転方向Dr1に回転するときに、嵌合部57dの斜面124に当接して、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とがY方向に互いに離間するように、嵌合部57dの斜面124を押す。これにより、軸受45,46、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58の間の隙間が縮まる。
【0189】
ヘリカルギヤ57が第1の回転方向Dr1に回転することで、側面122,134の間でクッション部材140の介在部142が中心軸Ax1の周方向に圧縮される。介在部142の反力が、雌ネジ54eと雄ネジ41aとの間の静止摩擦力を超えると、介在部142は、ヘリカルギヤ57の嵌合部57dと、ガイド部材58の嵌合部58dとの間で回転を伝達可能である。これにより、ヘリカルギヤ57及びガイド部材58と略一体に第1の回転方向Dr1に回転する。
【0190】
図12は、第2の実施形態の凸部120が斜面136を乗り越えたヘリカルギヤ57及びガイド部材58の一部を模式的に示す図である。図12に示すように、例えば軸受45,46、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58の間の隙間が大きい場合、ヘリカルギヤ57の第1の回転方向Dr1の回転により、嵌合部57dの凸部120が斜面136を乗り越える。
【0191】
底面132は、斜面136を乗り越えた凸部120の端面121に当接することができる。すなわち、底面132は、斜面136を乗り越えた凸部120をY方向に支持し、軸受45,46、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58の間の隙間が再び拡大することを抑制できる。
【0192】
底面132が凸部120に当接すると、制限面138と、凸部120の側面123とが向かい合う。制限面138と側面123とは、略平行であるため、互いに面接触することができる。
【0193】
ヘリカルギヤ57が第2の回転方向Dr2に回転するとき、凸部120の側面123が、制限面138に当接する。このため、ヘリカルギヤ57が第2の回転方向Dr2に回転するとき、制限面138は、底面132に支持された凸部120をロッド41まわりに支持して、ヘリカルギヤ57とガイド部材58との相対的な回転を制限する。これにより、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とは、第2の回転方向Dr2に略一体的に回転する。
【0194】
図13は、第2の実施形態の凸部120が斜面137を乗り越えたヘリカルギヤ57及びガイド部材58の一部を模式的に示す図である。図13に示すように、例えば軸受45,46、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58の間の隙間が大きい場合、ヘリカルギヤ57の第1の回転方向Dr1の回転により、嵌合部57dの凸部120が斜面137を乗り越える。
【0195】
凸部120が斜面137を乗り越える間、凸部120の斜面124が凹部130の斜面137に沿って移動する。ヘリカルギヤ57の斜面124は、ガイド部材58の斜面137を+Y方向に押す。さらに、ガイド部材58の斜面137は、ヘリカルギヤ57の斜面124を-Y方向に押す。これにより、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とがY方向に互いに離間するように移動し、軸受45,46、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58の間の隙間が縮まる。
【0196】
底面133は、斜面137を乗り越えた凸部120の端面121に当接することができる。すなわち、底面133は、斜面137を乗り越えた凸部120をY方向に支持し、軸受45,46、ヘリカルギヤ57、及びガイド部材58の間の隙間が再び拡大することを抑制できる。
【0197】
底面133が凸部120に当接すると、制限面139と、凸部120の側面123とが向かい合う。制限面139と側面123とは、略平行であるため、互いに面接触することができる。
【0198】
ヘリカルギヤ57が第2の回転方向Dr2に回転するとき、凸部120の側面123が、制限面139に当接する。このため、ヘリカルギヤ57が第2の回転方向Dr2に回転するとき、制限面139は、底面132に支持された凸部120をロッド41まわりに支持して、ヘリカルギヤ57とガイド部材58との相対的な回転を制限する。これにより、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とは、第2の回転方向Dr2に略一体的に回転する。
【0199】
以上のように、嵌合部58dは、三つの底面131,132,133により、三段階に凸部120を支持可能である。しかし、嵌合部58dは、この例に限られず、二段階に凸部120を支持可能であっても良いし、四つ以上の段階で凸部120を支持可能であっても良い。
【0200】
以上説明された第2の実施形態のスライドレール装置11において、嵌合部58dは、底面132と制限面138とをさらに有する。底面132は、ヘリカルギヤ57の第1の回転方向Dr1の回転により斜面136を越えた嵌合部57dを、レール15に沿うY方向に支持可能である。制限面138は、底面132と斜面136との間に位置する。制限面138は、ヘリカルギヤ57が第1の回転方向Dr1の反対の第2の回転方向Dr2に回転するときに、底面132に支持された嵌合部57dをロッド41まわりに支持してヘリカルギヤ57とガイド部材58との相対的な回転を制限する。すなわち、嵌合部57dが底面132に支持された状態において、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とは第2の回転方向Dr2に一体的に回転することができる。これにより、ヘリカルギヤ57とガイド部材58とが相対的に移動することが抑制され、ヘリカルギヤ57及びガイド部材58のガタによる騒音が発生することが抑制される。
【0201】
以上の実施形態において、ロッド41がレール15に取り付けられ、回転駆動機構42がスライダ16に取り付けられる。しかし、ロッド41がスライダ16に取り付けられ、回転駆動機構42がレール15に保持されても良い。
【0202】
以上の実施形態において、ヘリカルギヤ57及びガイド部材58が第1の回転部品及び第2の回転部品の一例である。しかし、第1の回転部品及び第2の回転部品は、この例に限られない。例えば、ナットが第1の回転部品又は第2の回転部品の一例であっても良い。
【0203】
以上の説明において、抑制は、例えば、事象、作用、若しくは影響の発生を防ぐこと、又は事象、作用、若しくは影響の度合いを低減させること、として定義される。また、以上の説明において、制限は、例えば、移動若しくは回転を防ぐこと、又は移動若しくは回転を所定の範囲内で許容するとともに当該所定の範囲を超えた移動若しくは回転を防ぐこと、として定義される。
【0204】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態や変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各実施形態や各変形例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0205】
1…車両、11…スライドレール装置、15…レール、16…スライダ、41…ロッド、41a…雄ネジ、42…回転駆動機構、51…モータ、54…ナット、54e…雌ネジ、57…ヘリカルギヤ、57d…嵌合部、58…ガイド部材、58d…嵌合部、80,120…凸部、84,85,124…斜面、90,130…凹部、94,95,136,137…斜面、100…クッション部材、132,133…底面、138,139…制限面、Dr1…第1の回転方向、Dr2…第2の回転方向。
図1
図2
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図10
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図13