(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161333
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20221014BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20221014BHJP
B60C 9/06 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B60C11/03 E
B60C11/13 C
B60C11/03 200A
B60C11/03 C
B60C9/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066060
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】一柳 豊
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC20
3D131BC33
3D131BC43
3D131BC44
3D131CB05
3D131CB07
3D131DA03
3D131DA09
3D131EB07U
3D131EB27V
3D131EB28V
3D131EB32U
3D131EB33U
3D131EB46U
3D131EB52U
3D131EB53U
3D131EB66U
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐偏摩耗や耐振動性を損ねることなく排水性を向上させることができる自動二輪車用タイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部2に複数の第1横溝8が形成された自動二輪車用タイヤ1である。第1横溝8は、クラウン部Crに配された第1溝部11と、第1ショルダー部S1に配された第2溝部12と、第1溝部11と第2溝部12とを繋ぐ第3溝部13とを含んでいる。第3溝部13の溝深さ及び溝幅は、第1溝部11及び第2溝部12の溝深さ及び溝幅よりも小さい。第3溝部13のタイヤ軸方向の長さの80%以上が、第1ショルダー部S1に配されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有する自動二輪車用タイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ赤道を中心とするトレッド展開幅の50%の領域であるクラウン部と、前記クラウン部の外側の領域である第1ショルダー部とを含み、
前記トレッド部には、複数の第1横溝が形成されており、
前記第1横溝のそれぞれは、前記クラウン部に配された第1溝部と、前記第1ショルダー部に配された第2溝部と、前記第1溝部と前記第2溝部とを繋ぐ第3溝部とを含み、
前記第3溝部の溝深さ及び溝幅は、それぞれ、前記第1溝部及び前記第2溝部の溝深さ及び溝幅よりも小さく、
前記第3溝部のタイヤ軸方向の長さの80%以上が、前記第1ショルダー部に配されている、
自動二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記第1溝部は、タイヤ赤道を跨ぐことなく配されている、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記第1溝部、前記第2溝部及び前記第3溝部は、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している、請求項1又は2に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記第3溝部の溝幅は、前記第1溝部の溝幅及び前記第2溝部の溝幅の15%~50%である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記第3溝部の溝深さは、前記第1溝部の溝深さ及び前記第2溝部の溝深さの15%~50%である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記第1溝部は、タイヤ周方向の一方側に位置する第1溝縁と、タイヤ周方向の他方側に位置する第2溝縁とを含み、
前記第2溝部は、タイヤ周方向の一方側に位置する第1溝縁と、タイヤ周方向の他方側に位置する第2溝縁とを含み、
前記第3溝部は、前記第1溝部の前記第2溝縁側に寄せて配され、かつ、前記第2溝部の前記第1溝縁側に寄せて配されている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項7】
前記第1横溝は、前記第2溝部からタイヤ軸方向の外側に延びる第4溝部をさらに含み、
前記第4溝部の溝深さ及び溝幅は、それぞれ、前記第1溝部及び前記第2溝部の溝深さ及び溝幅よりも小さい、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項8】
前記第1溝部、前記第2溝部、前記第3溝部及び前記第4溝部は、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している、請求項7に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項9】
前記トレッド部は、タイヤ回転方向が指定されており、
前記第1溝部は、前記第2溝部よりもタイヤ回転方向に位置する、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項10】
バイアス構造のカーカスを備える、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載された自動二輪車用タイヤを前輪用タイヤ及び後輪用タイヤとする自動二輪車用タイヤ対であって、
前記後輪用タイヤの前記トレッド部のランド比は、前記前輪用タイヤの前記トレッド部のランド比よりも大きい、
自動二輪車用タイヤ対。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部に、主溝と細溝とが設けられた自動二輪車用タイヤが記載されている。前記主溝は、第1主溝と、前記第1主溝よりもタイヤ軸方向外側に配された第2主溝とを含み、前記細溝は、オープン細溝とセミオープン細溝とを含んでいる。前記オープン細溝は、一端が前記第1主溝に、他端が前記第2主溝に接続されるように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、タイヤの排水性を向上させるためには、トレッド部の接地面内に、トレッド部のクラウン領域からショルダー領域に亘る太く長い溝を配置することが有効である。一方、このような溝は、接地時にトレッド部の表面を大きく変形させ、走行中の振動や、偏摩耗を招くおそれがある。特に、ラジアルタイヤに比べてトレッド剛性が低いバイアスタイヤでは、このような傾向が顕著である。したがって、耐偏摩耗や耐振動性を損ねずに、排水性を向上させることが求められていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、耐偏摩耗や耐振動性を損ねることなく排水性を向上させることができる自動二輪車用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有する自動二輪車用タイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ赤道を中心とするトレッド展開幅の50%の領域であるクラウン部と、前記クラウン部の外側の領域である第1ショルダー部とを含み、前記トレッド部には、複数の第1横溝が形成されており、前記第1横溝のそれぞれは、前記クラウン部に配された第1溝部と、前記第1ショルダー部に配された第2溝部と、前記第1溝部と前記第2溝部とを繋ぐ第3溝部とを含み、前記第3溝部の溝深さ及び溝幅は、それぞれ、前記第1溝部及び前記第2溝部の溝深さ及び溝幅よりも小さく、前記第3溝部のタイヤ軸方向の長さの80%以上が、前記第1ショルダー部に配されている。
【0007】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第1溝部が、タイヤ赤道を跨ぐことなく配されている、のが望ましい。
【0008】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第1溝部、前記第2溝部及び前記第3溝部が、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している、のが望ましい。
【0009】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第3溝部の溝幅が、前記第1溝部の溝幅及び前記第2溝部の溝幅の15%~50%である、のが望ましい。
【0010】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第3溝部の溝深さが、前記第1溝部の溝深さ及び前記第2溝部の溝深さの15%~50%である、のが望ましい。
【0011】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第1溝部が、タイヤ周方向の一方側に位置する第1溝縁と、タイヤ周方向の他方側に位置する第2溝縁とを含み、前記第2溝部は、タイヤ周方向の一方側に位置する第1溝縁と、タイヤ周方向の他方側に位置する第2溝縁とを含み、前記第3溝部は、前記第1溝部の前記第2溝縁側に寄せて配され、かつ、前記第2溝部の前記第1溝縁側に寄せて配されている、のが望ましい。
【0012】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第1横溝が、前記第2溝部からタイヤ軸方向の外側に延びる第4溝部をさらに含み、前記第4溝部の溝深さ及び溝幅は、それぞれ、前記第1溝部及び前記第2溝部の溝深さ及び溝幅よりも小さい、のが望ましい。
【0013】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第1溝部、前記第2溝部、前記第3溝部及び前記第4溝部が、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している、のが望ましい。
【0014】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記トレッド部が、タイヤ回転方向が指定されており、前記第1溝部は、前記第2溝部よりもタイヤ回転方向に位置する、のが望ましい。
【0015】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、バイアス構造のカーカスを備える、のが望ましい。
【0016】
本発明は、請求項1ないし10のいずれか1項に記載された自動二輪車用タイヤを前輪用タイヤ及び後輪用タイヤとする自動二輪車用タイヤ対であって、前記後輪用タイヤの前記トレッド部のランド比は、前記前輪用タイヤの前記トレッド部のランド比よりも大きい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の自動二輪車用タイヤは、上記の構成を採用することで、耐偏摩耗や耐振動性を損ねることなく排水性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態を示すトレッド部の展開図である。
【
図2】(a)は、
図1の第1横溝の拡大図、(b)は、
図1のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の自動二輪車用タイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乾燥アスファルト路面などのオンロード走行に好適に用いられる。但し、本発明のタイヤ1は、このような使用態様に限定されるものではない。
【0020】
トレッド部2は、本実施形態では、タイヤ赤道Cを中心とするトレッド展開幅TWeの50%の領域であるクラウン部Crと、クラウン部Crの外側(図では、クラウン部Crの左側)の領域である第1ショルダー部S1とを含んでいる。また、トレッド部2は、タイヤ赤道Cを挟んで第1ショルダー部S1とは逆側(図では、クラウン部Crの右側)の領域である第2ショルダー部S2を含んでいる。クラウン部Crは、主に直進走行時に接地する領域である。第1ショルダー部S1及び第2ショルダー部S2は、主に旋回走行時に接地する領域である。トレッド展開幅TWeは、本明細書では、トレッド部2を平面に展開したときのトレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離である。
【0021】
本実施形態のトレッド部2には、複数の第1横溝8が形成されている。第1横溝8は、クラウン部Crに配された第1溝部11と、第1ショルダー部S1に配された第2溝部12と、第1溝部11と第2溝部12とを繋ぐ第3溝部13とを含んでいる。第1横溝8は、クラウン部Crから第1ショルダー部S1まで延びているので、直進走行から旋回走行に至る広範囲で接地するため、排水性を向上する。また、このような第1横溝8は、走行時の接地領域よりも大きいので、路面と溝との間に挟まれた空気が非接地部分から排出されるため、騒音性を高めることができる。
【0022】
図2(a)は、第1横溝8の拡大図である。
図2(b)は、
図1のA-A線断面図である。
図2に示されるように、第3溝部13の溝深さD3及び溝幅W3は、それぞれ、第1溝部11及び第2溝部12の溝深さD1、D2及び溝幅W1、W2よりも小さく形成されている。このような第3溝部13は、走行時の第1溝部11及び第2溝部12の変形や第1横溝8が撓むことを抑制するので、耐偏摩耗や耐振動性を損ねることがない。また、トレッド部2のゴムの厚さが小さくなりやすい幅広のタイヤ1においては、第3溝部13を設けることで、旋回走行時のハンドリングの安定性である過渡特性を高めることができる。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、正規状態のタイヤ1で測定された値である。
【0023】
前記「正規状態」は、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である。
【0024】
前記「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0025】
前記「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0026】
第3溝部13は、そのタイヤ軸方向の長さL3の80%以上が第1ショルダー部S1に配されている。したがって、旋回走行時、大きなキャンバースラストの作用する第1ショルダー部S1の剛性が高く維持され、走行中の振動や偏摩耗が抑制される。また、このようなタイヤ1は、撓み集中が緩和されるので、溝底クラックの発生が抑制される。本実施形態の第3溝部13は、そのタイヤ軸方向の長さL3の100%が第1ショルダー部S1に配されている。
【0027】
本実施形態のトレッド部2は、自動二輪車の前輪用タイヤに好適に用いられる。なお、本実施形態のトレッド部2は、後輪用タイヤに用いられても良い。
【0028】
図3は、
図1のB-B線断面図である。
図3に示されるように、タイヤ1は、キャンバー角が大きい旋回時においても十分な接地面積が得られるように、トレッド部2の踏面2aがタイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲している。
【0029】
タイヤ1は、例えば、ビード部4、4間に架け渡されるカーカス6と、カーカス6のタイヤ半径方向の外側であってトレッド部2の内部に配されるバンド層7とを含んでいる。
【0030】
カーカス6は、例えば、タイヤ半径方向の内外に配される2枚のカーカスプライ6A、6Bからなる。各カーカスプライ6A、6Bは、例えば、カーカスコード(図示省略)がタイヤ周方向に対して30~45度の角度で配列されたバイアス構造をなしている。各カーカスプライ6A、6Bには、周知の材料が採用される。なお、バイアス構造のタイヤ1は、所謂ラジアル構造のタイヤ1に比して、トレッド部2の剛性が小さく撓みやすい特性がある。本発明では、上述の構成を有していることにより、ラジアル構造のタイヤ1は勿論、バイアス構造のタイヤ1においても、耐振動性や耐偏摩耗を高めることができる。
【0031】
バンド層7は、バンドコード(図示省略)をタイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋巻きした1枚以上、本実施形態では、1枚のバンドプライからなる。前記バンドプライには、周知の材料が採用される。
【0032】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、タイヤ回転方向Nが指定されている。そして、第1溝部11は、本実施形態では、第2溝部12よりもタイヤ回転方向Nに位置している。このため、第1横溝8内の水は、タイヤ1の回転を利用して、タイヤ赤道C側からトレッド端Te側に流れてスムーズに排出されるので、排水性が高められる。
【0033】
第1横溝8は、例えば、タイヤ赤道Cの両側に設けられている。本実施形態の第1横溝8は、タイヤ赤道Cを挟んでタイヤ周方向に交互に配されている。第1横溝8は、本実施形態では、タイヤ赤道Cを跨ぐことなく配されている。換言すると、第1溝部11は、タイヤ赤道Cを跨ぐことなく配されている。このようなレイアウトは、大きな接地圧の作用するタイヤ赤道C付近のトレッド剛性を維持して、耐偏摩耗や耐振動性を維持する。本明細書では、タイヤ赤道Cの両側に配される同じ形状の溝やサイプ(以下、「溝等」という)については、第1ショルダー部S1側の溝等が説明されて、第2ショルダー部S2側の溝等については、その説明が省略される場合がある。
【0034】
図2(a)に示されるように、第1溝部11、第2溝部12及び第3溝部13は、例えば、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。これにより、第1横溝8内の水の流れがよりスムーズになる。第1溝部11のタイヤ軸方向に対する角度θ1、第2溝部12のタイヤ軸方向に対する角度θ2、及び、第3溝部13のタイヤ軸方向に対する角度θ3は、それぞれ、20~60度である。第1溝部11の角度θ1、第2溝部12の角度θ2及び第3溝部13の角度θ3のそれぞれの差の絶対値(|θ1-θ2|、|θ2-θ3|、|θ3-θ1|)は、30~50度である。各溝部11~13の角度θ1~θ3は、本明細書では、その最大値と最小値との平均値である。
【0035】
第1溝部11は、例えば、タイヤ周方向の一方側(図では下側)に位置する第1溝縁11eと、タイヤ周方向の他方側(図では上側)に位置する第2溝縁11iとを含んでいる。第1溝部11の第2溝縁11iは、例えば、屈曲部Fを含んでおり、屈曲部Fを介してタイヤ軸方向に対する角度αが局所的に変化している。第2溝縁11iは、屈曲部Fからタイヤ軸方向の外側に位置する外側部15と、屈曲部Fからタイヤ軸方向の内側に位置する内側部16とを含んでいる。第1溝部11の第1溝縁11eは、屈曲部を有することなく滑らかに延びている。第1溝縁11e及び第2溝縁11iは、例えば、第1横溝8の内端8iに繋がっている。内端8iは、本明細書では、第1横溝8の溝中心線8cの最もタイヤ軸方向の内側の端である。また、内端8iは、本明細書では、曲率半径rが2mm以下の円弧部を含んでいる。
【0036】
第1溝縁11e及び外側部15は、例えば、タイヤ周方向のいずれか一方に凸の円弧状となる円弧状部Rを含んでいる。第1溝縁11e及び外側部15の円弧状部Rは、本実施形態では、タイヤ回転方向Nの後着側へ凸で形成されている。本実施形態の内側部16は、直線状に延びている。
【0037】
図4は、第1横溝8の拡大図である。
図4に示されるように、内側部16のタイヤ軸方向に対する角度α1は、第1溝縁11eのタイヤ軸方向に対する角度α2よりも小さく形成されている。換言すると、内側部16で形成される第1溝部11は、内端8iに向かって溝幅wが小さくなるように形成されている。このような第1溝部11は、クラウン部Crのトレッド剛性の低下を抑えつつ、タイヤ1の回転を利用して第1溝部11内に水や空気をスムーズに誘導することができる。
【0038】
第2溝部12は、例えば、タイヤ周方向の一方側に位置する第1溝縁12eと、タイヤ周方向の他方側に位置する第2溝縁12iとを含んでいる。第1溝縁12e及び第2溝縁12iは、例えば、タイヤ周方向のいずれかに凸の円弧状となる円弧状部Rを含んでいる。第1溝縁12e及び第2溝縁12iの円弧状部Rは、本実施形態では、タイヤ回転方向Nの後着側へ凸で形成されている。
【0039】
第3溝部13は、本実施形態では、第1溝部11の第2溝縁11i側に寄せて配され、かつ、第2溝部12の第1溝縁12e側に寄せて配されている。換言すると、本実施形態の第1横溝8は、第2溝部12の溝中心線12cをタイヤ軸方向の内側へ滑らかに延長させた仮想線12kが第3溝部13よりもタイヤ回転方向Nの後着側に位置するように形成されている。このような態様では、第1横溝8が接地時に歪む位置をタイヤ周方向に位置ずれさせることができるので、溝底クラックの発生を抑制することができる。
【0040】
第3溝部13は、例えば、タイヤ周方向の一方側に位置する第1溝縁13eと、タイヤ周方向の他方側に位置する第2溝縁13iとを含んでいる。第3溝部13の第1溝縁13eは、例えば、第3溝部13の第2溝縁13i側に向かってクランク状に延びるクランク状部Kを含んで形成されている。第3溝部13の第2溝縁13iは、例えば、第1溝部11の第2溝縁11iとは、逆側に凸の円弧状部Rを含んで形成されている。
【0041】
第3溝部13は、本明細書では、第1溝部11と第2溝部12との間で、溝幅wが急に小さくなっている箇所で定義される。第3溝部13は、溝の単位長さに対する溝幅wの変化の割合が0.4以上である部分をいう。
【0042】
図2(a)に示されるように、第3溝部13の溝幅W3は、第1溝部11の溝幅W1及び第2溝部12の溝幅W2の15%以上が望ましく、20%以上がさらに望ましく、50%以下が望ましく、45%以下がさらに望ましい。第3溝部13の溝幅W3が第1溝部11の溝幅W1及び第2溝部12の溝幅W2の15%以上であるので、排水性が維持される。第3溝部13の溝幅W3が第1溝部11の溝幅W1及び第2溝部12の溝幅W2の50%以下であるので、耐偏摩耗や振動性が向上する。第3溝部13の溝幅W3は、本明細書では、第3溝部13の最小の溝幅である。第1溝部11の溝幅W1及び第2溝部12の溝幅W2は、本明細書では、第1溝部11及び第2溝部12の最大の溝幅である。特に限定されるのものではないが、第1溝部11の溝幅W1は、3.5~7.0mmである。
【0043】
図2(b)に示されるように、同様の観点より、第3溝部13の溝深さD3は、第1溝部11の溝深さD1及び第2溝部12の溝深さD2の15%以上が望ましく、20%以上がさらに望ましく、50%以下が望ましく、45%以下がさらに望ましい。第3溝部13の溝深さD3は、本明細書では、第3溝部13の最小の溝深さである。第1溝部11の溝深さD1及び第2溝部12の溝深さD2は、本明細書では、第1溝部11及び第2溝部12の最大の溝深さである。特に限定されるのものではないが、第1溝部11の溝深さD1は、3.0~7.5mmである。
【0044】
図2(a)に示されるように、第3溝部13の長さL3は、第1ショルダー部S1のタイヤ軸方向の展開幅Ws(
図1に示す)の10%以上が望ましく、15%以上がさらに望ましく、30%以下が望ましく、25%以下がさらに望ましい。また、第3溝部13のタイヤ軸方向の外端13aとクラウン部Crの外端Ceとの間のタイヤ軸方向の距離La(
図1に示す)は、例えば、第1ショルダー部S1の幅Wsの
【0045】
第1横溝8は、例えば、第2溝部12からタイヤ軸方向の外側に延びる第4溝部14をさらに含んでいる。第4溝部14の溝深さD4及び溝幅W4は、それぞれ、第1溝部11及び第2溝部12の溝深さD1、D2及び溝幅W1、W2よりも小さく形成されている。このような第4溝部14も排水性を高めつつ、耐偏摩耗と振動性の低下を抑制する。また、第4溝部14は、キャンバー角が大きくなる旋回走行時に接地する。このような第4溝部14の溝深さD4及び溝幅W4を上述の通りとすることで、キャンバー角が大きな旋回走行時においても、接地時のトレッド表面(踏面2a)の剛性低下を防ぐため、車体をスムーズに起こすことができるので、ハンドリングが軽快になる。
【0046】
第4溝部14の溝深さD4及び溝幅W4は、例えば、第3溝部13の溝深さD3及び溝幅W3と実質的に同じである。このような第4溝部14は、上述の作用を効果的に発揮する。前記「実質的に同じ」とは、第4溝部14の溝深さD4と第3溝部13の溝深さD3との差が2mm以内の場合を意味する。また、第4溝部14の溝幅W4と第3溝部13の溝幅W3との差が2mm以内を意味する。
【0047】
第4溝部14は、本実施形態では、タイヤ周方向に対して第2溝部12と同じ向きに傾斜している。このような第4溝部14は、第1横溝8内のスムーズな水の流れを維持する。
【0048】
第4溝部14のタイヤ軸方向の外端14aは、第1ショルダー部S1に配されている。換言すると、第4溝部14は、トレッド端Teを跨ることなく第1ショルダー部S1で終端している。このような第4溝部14は、大きな横力の作用するトレッド端Te上のトレッド部2の剛性の低下を抑制する。
【0049】
第4溝部14は、第2溝部12の第2溝縁12i側に寄せて配されている。第4溝部14は、タイヤ周方向の一方側に位置する第1溝縁14eと、タイヤ周方向の他方側に位置する第2溝縁14iとを含んでいる。第4溝部14の第2溝縁14iは、第2溝部12の第2溝縁12iと1つの円弧を形成するように延びている。第4溝部14の第1溝縁14eは、第4溝部14の第2溝縁14i側に向かってクランク状に延びるクランク状部Kを含んで形成されている。
【0050】
図2(b)に示されるように、第1溝部11の溝底11sと第3溝部13の溝底13sとは、滑らかに繋がっている。第2溝部12の溝底12sと第3溝部13の溝底13sとは、滑らかに繋がっている。さらに、第2溝部12の溝底12sと第4溝部14の溝底14sとは滑らかに繋がっている。このような第1横溝8は、溝底クラックの発生を抑制するとともに、溝内の水の流れをスムーズにする。前記「滑らかに繋がる」とは、それぞれの溝底11s~14sが、タイヤ半径方向の内側に凸となる内側円弧部17aと、内側円弧部17aよりもタイヤ半径方向の外側に配されかつタイヤ半径方向の外側に凸となる外側円弧部17bとで形成される態様をいう。
【0051】
図1に示されるように、トレッド部2は、例えば、さらに、周方向溝20、第2横溝21、第3横溝22及びサイプ23が設けられている。本明細書では、第1横溝8や周方向溝20などの溝は、溝幅の最大値が1.5mmを超える溝状体である。サイプは、本明細書では、幅の最大値が1.5mm以下の切込み状体である。
【0052】
周方向溝20は、例えば、タイヤ赤道C上をタイヤ周方向に連続して延びている。周方向溝20は、本実施形態では、タイヤ周方向に対して一方側に傾斜(図では左下がり)する第1部分20Aと、第1部分20Aに繋がり、かつ、第1部分20Aとはタイヤ周方向に逆向きに傾斜する第2部分20Bとが交互に並ぶジグザグ状に形成されている。
【0053】
周方向溝20は、長手に延びる一対の溝縁20e、20eを含んでいる。周方向溝20は、タイヤ赤道C上をジグザグに延びているので、各溝縁20e、20eは、いずれか一方がタイヤ軸方向の外側となる外側部25と、外側部25よりもタイヤ軸方向の内側となる内側部26とがタイヤ周方向に交互に形成される。第1部分20Aと第2部分20Bとの接続部において、外側部25は、タイヤ軸方向に延びる軸方向部Jを含むように形成される。このような軸方向部Jは、路面と踏面2aとの間の水を周方向溝20内に集めて排水性を高める。
【0054】
第2横溝21、第3横溝22及びサイプ23は、本実施形態では、それぞれ、タイヤ赤道Cの両側に配されている。第2横溝21、第3横溝22及びサイプ23は、例えば、それぞれ、タイヤ赤道Cからトレッド端Te側に向かってタイヤ回転方向Nの後着側に傾斜している。第2横溝21、第3横溝22及びサイプ23は、本実施形態では、それぞれ、タイヤ回転方向Nの後着側に凸の円弧状に延びている。第2横溝21、第3横溝22及びサイプ23は、例えば、トレッド端Teに連通することなく第1ショルダー部S1内で終端している。
【0055】
第2横溝21は、例えば、クラウン部Crから第1ショルダー部S1まで延びている。第2横溝21は、本実施形態では、第1横溝8よりもタイヤ軸方向の長さが大きく形成されている。第2横溝21の内端21iは、例えば、第1横溝8の内端8iよりもタイヤ赤道C側に配されている。
【0056】
第3横溝22は、例えば、クラウン部Crから第1ショルダー部S1まで延びている。第3横溝22は、第1横溝8よりもタイヤ軸方向の長さが小さく形成されている。第3横溝22の内端22iは、第1横溝8の内端8iよりもトレッド端Te側に配されている。第3横溝22のタイヤ軸方向の外端22eは、第1横溝8の外端8e(
図4に示す)よりもタイヤ赤道C側に配されている。
【0057】
図4に示されるように、サイプ23は、第1ショルダー部S1に配されている。サイプ23のタイヤ軸方向の内端23iは、第1ショルダー部S1に配されている。サイプ23のタイヤ軸方向の外端23eは、第1横溝8の外端8eと第3横溝22の外端22eとの間に配されている。
【0058】
図5は、他の実施形態のトレッド部2の展開図である。本実施形態の構成と同じ構成には、同じ符号が付されてその説明が省略される場合がある。この実施形態のトレッド部2は、自動二輪車の後輪用タイヤに好適に用いられる。なお、このトレッド部2は、前輪用タイヤに用いられても良い。
【0059】
図5に示されるように、この実施形態のトレッド部2は、第1横溝8、第2横溝21、第3横溝22及びサイプ23を含んでいる。トレッド部2は、この実施形態では、周方向溝が形成されていない。サイプ23は、例えば、第1横溝8と第2横溝21との間に2本設けられている。
【0060】
この実施形態では、第2横溝21の内端21iが、本実施形態の第2横溝21の内端21iよりもタイヤ軸方向の内側に位置している。これにより、排水性の低下が抑制される。第2横溝21の内端21iとタイヤ赤道Cとの間の最短距離Lbは、クラウン部Crの展開幅Wcの0.5%以上が望ましく、0.7%以上がさらに望ましく、2.5%以下が望ましく、2.0%以下がさらに望ましい。
【0061】
自動二輪車には、前輪用タイヤと後輪用タイヤとが装着される(図示省略)。後輪用タイヤは、ライダーのハンドル操作にあまり影響の受けないタイヤである。このようなタイヤは、グリップ性能がハンドリング性能よりも重要視される。このため、後輪用タイヤのトレッド部2のランド比は、前輪用タイヤのトレッド部2のランド比よりも大きいのが望ましい。とりわけ、後輪用タイヤのトレッド部2のランド比は、80%以上が望ましい。
【0062】
以上、本発明の特に好ましい形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例0063】
図1の基本パターンを有するの自動二輪車用タイヤが試作された。そして、各試供タイヤのハンドリング性能、排水性能、耐偏摩耗性能及び高速耐久性能がテストされた。各試供タイヤの共通の仕様及びテスト方法は、以下の通りである。
【0064】
<ハンドリング性能・耐偏摩耗・耐久性・耐振動性・騒音性>
各試供タイヤが、下記の条件にて、自動二輪車(排気量1500cc)の前輪に装着された。後輪用タイヤには、同一パターンのタイヤが採用された。そして、テストライダーが、前記車両を用いて、乾燥アスファルト路面のテストコースを走行し、そのときのハンドリングの軽快性、振動及び騒音の程度が、テストライダーの官能により評価された。また、走行後の偏摩耗の発生状況及び溝底クラックやサイプ底のクラックの発生状況がテストライダーの官能により評価された。結果は、それぞれ、比較例1を100とする評点で示される。各性能は、数値が大きい方が、優れている。95以上が合格である。
前輪用タイヤの仕様(サイズ、リム、内圧):110/70-13M/C、13×3.00MT、200kPa
後輪用タイヤの仕様(サイズ、リム、内圧):130/70-13M/C、13×3.50MT、225kPa
【0065】
<排水性>
上記車両を用いて、テストライダーが、ウェットアスファルト路面のテストコースを走行し、そのときの走行のしやすさがテストライダーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点で示された。数値の大きい方が、排水性に優れている。95以上が合格である。
テストの結果が表1に示される。
表1の「A」は、第2溝部が
図1の位置することを意味する。
同「B」は、第2溝部がクラウン部に位置することを意味する。
同「C」は、第3溝部が
図1の位置することを意味する。
同「D」は、第3溝部がクラウン部に位置することを意味する。
同「E」は、第3溝部の長さの80%が第1ショルダー部に位置することを意味する。
同「F」は、第3溝部の長さの70%が第1ショルダー部に位置することを意味する。
同「G」は、第1横溝の各溝部の溝底が
図2(b)に示される態様であることを意味する。
同「H」は、第1横溝の各溝部の溝底が直線状に繋がっていることを意味する。
同「I」は、第1溝部の内側部が
図1の態様であることを意味する。
同「J」は、第1溝部の内側部が等幅で延びていることを意味する。
第3溝部の長さは同じである。
【0066】
【0067】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて、耐偏摩耗や耐振動性が損なわれることなく排水性が向上していることが理解される。
【0068】
1 自動二輪車用タイヤ
2 トレッド部
8 第1横溝
11 第1溝部
12 第2溝部
13 第3溝部
Cr クラウン部
S1 第1ショルダー部
L3 第3溝部の長さ