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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161341
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】復調装置、基地局および復調方法
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20221014BHJP
   H04L 27/22 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
H04J99/00 100
H04L27/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066070
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 雅文
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 賢一
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 敦
(72)【発明者】
【氏名】児島 史秀
(57)【要約】
【課題】電波の伝搬路の変動に追従可能な通信方式を提供する。
【解決手段】復調装置は、複数の送信装置から到来する無線信号を受信し、これらの無線信号のうち、差動位相変調された第1の受信信号を復調し、復調された復調信号を差動位相変調による変調信号に変調し、受信した無線信号と変調信号とに基づき、それぞれの送信装置から受信回路に至る伝搬路を推定し、推定された伝搬路を基に、1つの送信装置からの第1の受信信号を疑似する第1の疑似信号を生成し、無線信号から第1の疑似信号を除去し、復調が可能な限度でこれらの処理を繰り返す。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信装置から到来する、変調された無線信号を受信する受信回路と、
前記受信回路で受信された無線信号のうち、差動位相変調された第1の受信信号を復調する第1の復調回路と、
前記第1の復調回路で復調された復調信号を差動位相変調による変調信号に変調する変調回路と、
前記無線信号と前記変調回路で変調された変調信号とに基づき、前記送信装置から前記受信回路に至る伝搬路での伝搬信号の振幅および位相の変動量を推定する推定回路と、
前記推定回路によって推定された前記変動量を基に、前記変調信号から前記第1の受信信号を疑似する第1の疑似信号を生成する第1の生成回路と、
前記受信回路で受信された無線信号から前記第1の疑似信号を除去した信号を抽出する除去回路と、
前記第1の復調回路による復調が可能な限度で、前記第1の復調回路、前記変調回路、前記推定回路、前記第1の生成回路、および前記除去回路による処理を繰り返す第1の制御回路と、を備える復調装置。
【請求項2】
前記受信回路で受信された無線信号のうち、コヒーレント位相変調された第2の受信信号を復調する第2の復調回路と、
前記第2の復調回路で復調された復調信号を基に前記第2の受信信号を疑似する第2の疑似信号を生成する第2の生成回路と、
第2の制御回路と、を備え、
前記除去回路は、前記受信信号または前記抽出された信号から前記第2の疑似信号を除去した信号を抽出し、
前記第2の制御回路は、前記第2の復調回路による復調が可能な限度で、前記第2の復調回路、前記第2の生成回路、および前記除去回路による処理を繰り返す請求項1に記載の復調装置。
【請求項3】
複数の送信装置から到来する、変調された無線信号を受信する受信回路と、
前記受信回路で受信された無線信号のうち、差動位相変調された第1の受信信号を復調する第1の復調回路と、
前記第1の復調回路で復調された復調信号を差動位相変調による変調信号に変調する変調回路と、
前記無線信号と前記変調回路で変調された変調信号とに基づき、前記送信装置から前記受信回路に至る伝搬路での伝搬信号の振幅および位相の変動量を推定する推定回路と、
前記推定回路によって推定された前記変動量を基に、前記変調信号から前記第1の受信信号を疑似する第1の疑似信号を生成する第1の生成回路と、
前記受信回路で受信された無線信号のうち、コヒーレント位相変調された第2の受信信号を復調する第2の復調回路と、
前記第2の復調回路で復調された復調信号を基に前記第2の受信信号を疑似する第2の疑似信号を生成する第2の生成回路と、
前記受信回路で受信された無線信号から前記第1の疑似信号または前記第2の疑似信号を除去した信号を抽出する除去回路と、
制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記第1の復調回路による復調が可能な限度で、前記第1の復調回路、前記変調回路、前記推定回路、前記第1の生成回路、および前記除去回路による第1の処理または前記第2の復調回路による復調が可能な限度で、前記第2の復調回路、前記第2の生成回路、および前記除去回路による第2の処理を繰り返す、復調装置。
【請求項4】
前記推定回路は、所定期間において推定された前記変動量の推定値を統計処理し、
前記第1の生成回路は、前記統計処理された推定値により前記第1の疑似信号を生成する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の復調装置。
【請求項5】
前記受信回路で受信される無線信号は、コヒーレント位相変調された第2の受信信号のための参照信号と重複するリソースにおいて、前記参照信号を超える電力の差動位相変調された前記第1の受信信号を含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の復調装置。
【請求項6】
前記複数の送信装置それぞれからの指定、または前記複数の送信装置および前記復調装置の通信状況に応じて、前記第1の復調回路および第2の復調回路のいずれか一方を動作させ、他方を停止させる制御部を備える請求項1、2、4、または5に記載の復調装置。
【請求項7】
前記制御回路は、複数の送信装置それぞれからの指定、または前記複数の送信装置および前記復調装置の通信状況に応じて、前記第1の復調回路および第2の復調回路のいずれか一方を動作させ、他方を停止させる請求項3に記載の復調装置。
【請求項8】
複数の送信装置から到来する、変調された無線信号を受信する受信回路と、
前記受信回路で受信された無線信号のうち、差動位相変調された第1の受信信号を復調する第1の復調回路と、
前記第1の復調回路で復調された復調信号を差動位相変調による変調信号に変調する変調回路と、
前記無線信号と前記変調回路で変調された変調信号とに基づき、前記送信装置から前記受信回路に至る伝搬路での伝搬信号の振幅および位相の変動量を推定する推定回路と、
前記推定回路によって推定された前記変動量を基に、前記変調信号から前記第1の受信信号を疑似する第1の疑似信号を生成する第1の生成回路と、
前記受信回路で受信された無線信号から前記第1の疑似信号を除去した信号を抽出する除去回路と、
前記第1の復調回路による復調が可能な限度で、前記第1の復調回路、前記変調回路、前記推定回路、前記第1の生成回路、および前記除去回路による処理を繰り返す第1の制御回路と、を備える受信装置と、
前記複数の送信装置に無線信号を送信する送信装置と、を有する基地局。
【請求項9】
前記受信回路で受信された無線信号のうち、コヒーレント位相変調された第2の受信信号を復調する第2の復調回路と、
前記第2の復調回路で復調された復調信号を基に前記第2の受信信号を疑似する第2の疑似信号を生成する第2の生成回路と、
第2の制御回路と、を備え、
前記除去回路は、前記受信信号または前記抽出された信号から前記第2の疑似信号を除去した信号を抽出し、
前記第2の制御回路は、前記第2の復調回路による復調が可能な限度で、前記第2の復調回路、前記第2の生成回路、および前記除去回路による処理を繰り返す請求項8に記載の基地局。
【請求項10】
前記推定回路は、所定期間において推定された前記変動量の推定値を統計処理し、
前記第1の生成回路は、前記統計処理された推定値により前記第1の疑似信号を生成する請求項8または9に記載の基地局。
【請求項11】
前記受信回路で受信される無線信号は、コヒーレント位相変調された第2の受信信号のための参照信号と重複するリソースにおいて、前記参照信号を超える電力の差動位相変調された前記第1の受信信号を含む請求項8乃至10のいずれか1項に記載の基地局。
【請求項12】
前記複数の送信装置それぞれからの指定、または前記複数の送信装置および前記基地局の通信状況に応じて、前記第1の復調回路および第2の復調回路のいずれか一方を動作させ、他方を停止させる制御部をさらに備える請求項8乃至11のいずれか1項に記載の基地局。
【請求項13】
復調装置が、
複数の送信装置から到来する、変調された無線信号を受信回路で受信する受信工程と、
前記受信回路で受信された無線信号のうち、差動位相変調された第1の受信信号を復調する第1の復調工程と、
前記第1の復調工程で復調された復調信号を差動位相変調による変調信号に変調する変調工程と、
前記無線信号と前記変調工程で変調された変調信号とに基づき、前記送信装置から前記受信回路に至る伝搬路での伝搬信号の振幅および位相の変動量を推定する推定工程と、
前記推定工程によって推定された前記変動量を基に、前記変調信号から前記第1の受信信号を疑似する第1の疑似信号を生成する第1の生成工程と、
前記受信工程で受信された無線信号から前記第1の疑似信号を除去した信号を抽出する第1の除去工程と、
前記第1の復調工程による復調が可能な限度で、前記第1の復調工程、前記変調工程、前記推定工程、前記第1の生成工程、および前記第1の除去工程を繰り返す復調方法。
【請求項14】
前記受信工程で受信された無線信号のうち、コヒーレント位相変調された第2の受信信号を復調する第2の復調工程と、
前記第2の復調工程で復調された復調信号を基に前記第2の受信信号を疑似する第2の疑似信号を生成する第2の生成工程と、
前記受信信号または前記抽出された信号から前記第2の疑似信号を除去した信号を抽出する第2の除去工程と、を繰り返す請求項13に記載の復調方法。
【請求項15】
前記推定工程では、所定期間において推定された前記変動量の推定値が統計処理され、
前記第1の生成工程では、前記統計処理された推定値により前記第1の疑似信号が生成される請求項13または14に記載の復調方法。
【請求項16】
前記受信工程で受信される無線信号は、コヒーレント位相変調された第2の受信信号のための参照信号と重複するリソースにおいて、前記参照信号を超える電力の差動位相変調された前記第1の受信信号を含む請求項13乃至15のいずれか1項に記載の復調方法。
【請求項17】
前記複数の送信装置それぞれからの指定、または前記複数の送信装置および前記復調装置の通信状況に応じて、前記第1の復調工程および第2の復調工程のいずれか一方のみを実行させる工程を含む請求項13乃至16のいずれか1項に記載の復調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、復調装置、基地局および復調方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今後、無線通信ネットワークに接続される端末数の増加が予測されている。そのため、例えば、アップリンク(上り回線)のひっ迫が懸念されている。そこで、アップリンクで接続できる端末数を増加させることを目的として、無線信号の直交性が緩和された技術の利用が期待されている。この技術は、アップリンクにおける電力差を利用した非直交多元接続(Power Domain-UplinkNon-Orthogonal Mul
tiple Access: PD-UL-NOMA)と呼ばれる。
【0003】
図1に、PD-UL-NOMAが適用された無線通信ネットワークにおける無線信号の状況を例示する。図1の上部は、端末に割り当てられたリソースを例示する。PD-UL-NOMAでは、アップリンクの同一のリソースが重複して複数の端末に割り当てられる。
【0004】
なお、無線通信ネットワークでは、伝搬路の推定、基地局と端末との同期等の目的で基地局と端末間で参照信号が授受される。PD-UL-NOMAにおいても、複数の参照信号は直交する。例えば、時分割多重の通信では、時間軸でデータ信号は重複するが、参照信号は分離され直交する。このようにして、参照信号を用いることで、通信手順が複雑化するが、端末間の干渉信号またはノイズ等に対する耐性が向上する。
【0005】
しかしながら、PD-UL-NOMAでは電波の伝搬路の推定精度が通信の成功率(あるいは誤り率)に影響する。特に端末が高速で移動する環境では、電波の伝搬路の変動速度が速くなることから、その変動速度に追従した通信手段が望まれる。
【0006】
ところで、従来の無線通信ネットワークでは、変調方式としては、例えば、位相偏移変調(Phase Shift Keying PSK)が利用されてきた。このPSKは
、コヒーレントPSK(CPSK)と差動(DPSK)に大別される。干渉信号またはノイズ等に対する耐性の観点では、CPSKはDPSKよりも優れている。このため、CPSKは従来の無線通信で広く利用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】B.Sklar ”Digital Communications: Fundamentals and Applications 2nd Edition,” (米国) Prentice Hall、2017年2月
【非特許文献2】Moriyama,et al. “Experimental Evaluation of a Novel Up-Link NOMA System for IoT Communication Equipping Repetition Transmission and Receive Diversity” IEICE TRANS. COMMUN. Aug. 2019 Vol.E102-B, No.8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、CPSKでは、受信局は、参照信号により基準信号と同期していること
が前提であり、手順が複雑となる。このため、CPSKでは、電波の伝搬路の変動が速い場合に、その変動による影響を受けやすい。そこで、本発明の目的は、電波の伝搬路の変動に追従可能な通信方式を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の実施形態は、復調装置によって例示される。本復調装置は、
複数の送信装置から到来する、変調された無線信号を受信する受信回路と、
前記受信回路で受信された無線信号のうち、差動位相変調された第1の受信信号を復調する第1の復調回路と、
前記第1の復調回路で復調された復調信号を差動位相変調による変調信号に変調する変調回路と、
前記無線信号と前記変調回路で変調された変調信号とに基づき、前記送信装置から前記受信回路に至る伝搬路での伝搬信号の振幅および位相の変動量を推定する推定回路と、
前記推定回路によって推定された前記変動量を基に、前記変調信号から前記第1の受信信号を疑似する第1の疑似信号を生成する第1の生成回路と、
前記受信回路で受信された無線信号から前記第1の疑似信号を除去した信号を抽出する除去回路と、
前記第1の復調回路による復調が可能な限度で、前記第1の復調回路、前記変調回路、前記推定回路、前記第1の生成回路、および前記除去回路による処理を繰り返す第1の制御回路と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本基地局は、電波の伝搬路の変動に追従可能な通信方式で、移動局との通信を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1はPD-UL-NOMAが適用された無線通信ネットワークにおける無線信号の状況を例示する図である。
図2図2は、本実施形態の無線通信システムの構成を例示する図である。
図3図3は、本実施形態の無線通信システムにおける無線リソースの構成を例示する図である。
図4図4は、基地局のDPSK復調部の構成を詳細に例示する図である。
図5図5は、基地局のCPSK復調部の構成を詳細に例示する図である。
図6図6は、DPSK復調部の伝搬路推定部の処理を例示する図である。
図7図7は、DPSK信号が参照信号の無線リソースに重畳する構成を例示する図である。
図8図8は、シミュレーションで設定されたパラメータを例示する図である。
図9図9は、シミュレーション結果の一例である。
図10図10は、シミュレーションで設定されたパラメータを例示する図である。
図11図11は、シミュレーション結果の一例である。
図12図12は、無線端末が変調方式を決定する処理を例示する図である。
図13図13は基地局において、DPSKの通信方式と、CPSKの通信方式を切り替える処理を例示する図である。
図14図14は、基地局のハードウェア構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して一実施の形態の無線通信システムおよびこの無線通信システムにおける復調方法を説明する。この無線通信システム100は、基地局10を有する。また、基地局10は、復調装置を有する。この復調装置は、複数の送信装置から到来する、変
調された無線信号を受信する受信回路を有する。受信回路は、無線信号を受信し電気信号に変換する。受信回路は、例えば、アンテナを含む高周波回路である。
【0013】
また、この復調装置は、上記の受信回路で受信された無線信号のうち、差動位相変調された第1の受信信号を復調する第1の復調回路を有する。すなわち、第1の復調回路は、差動位相復調を実行する。第1の受信信号は、例えば、ある送信装置で差動位相復調された無線信号である。
【0014】
また、この復調装置は、第1の復調回路で復調された復調信号を差動位相変調による変調信号に変調する変調回路を有する。すなわち、変調回路は、上記のように、差動位相復調されたデータから、送信元の送信装置における送信信号を復元する。
【0015】
また、この復調装置は、受信回路で受信した無線信号と上記変調回路で変調された変調信号とに基づき、上記送信装置から上記受信回路に至る伝搬路での伝搬信号の振幅および位相の変動量を推定する推定回路を有する。伝搬路での伝搬信号の振幅および位相の変動量は、伝搬路のフェージング等の影響を示す伝達関数ということもできる。
【0016】
また、この復調装置は、上記推定回路によって推定された変動量を基に、上記変調信号から上記第1の受信信号を疑似する第1の疑似信号を生成する第1の生成回路を有する。変動量は、伝搬路のフェージング等の影響を示す伝達関数ということができるので、例えば、上記変調信号に変動量を乗算することで、上記受信回路に到来した第1の受信信号を疑似することが可能となる。
【0017】
また、この復調装置は、上記受信回路で受信された無線信号から上記第1の疑似信号を除去した信号を抽出する除去回路を有する。上述のように、第1の疑似信号は、第1の受信信号を模擬したものである。したがって、上記受信回路で受信された無線信号から上記第1の疑似信号を除去した信号では、第1の受信信号による干渉が除去される。すなわち、除去回路は、1つ目の送信装置から送信された送信信号による干渉を除去する。これにより、上記1つ目の送信装置以外の送信装置からの受信信号の復調が可能となる。
【0018】
さらに、この復調装置は、上記第1の復調回路による復調が可能な限度で、上記第1の復調回路、変調回路、推定回路、第1の生成回路、および除去回路による処理を繰り返す第1の制御回路を有する。復調装置は、このような処理を繰り返すことで、1つ目の送信装置、2つ目の送信装置、・・・のように、順次複数の送信装置からの受信信号を取得しつつ、それらの送信装置からの送信信号による干渉を除去できる。そして、復調装置は、複数の送信装置からの送信信号が混在した信号から、個々の送信装置から受信した信号を分離できる。
【0019】
<第1の実施形態>
(通信方式)
図2乃至図5を参照して第1の実施形態の無線通信システム100を説明する。図2は、本実施形態の無線通信システム100の構成を例示する図である。図2の例では、無線通信システム100は、基地局10と、無線端末3-1、3-2と、無線端末4-1、4-2とを有する。このうち、無線端末3-1、3-2は基地局10と、DPSKで通信している。一方、無線端末4-1、4-2は基地局10と、CPSKで通信している。このように、無線通信システム100では、基地局10は、DPSKで通信する無線端末3-1、3-2と、CPSKで通信する無線端末4-1、4-2の両方と同時接続可能である。
【0020】
また、無線端末3-1、3-2は、DPSK専用の無線端末であってもよいし、DPS
KとCPSKの両方を利用可能な無線端末であってもよい。無線端末3-1、3-2がDPSKとCPSKの両方を利用可能な場合、無線端末3-1、3-2は、基地局10に接続時に、最初にDPSKとCPSKのうちいずれか一方で、基地局10にアクセスする。そして、無線端末3-1、3-2と基地局10のいずれか一方が状況に応じて、通信方式の切り替えを決定する。そして、無線端末3-1、3-2と基地局10は、決定された通信方式で通信する。また、無線端末3-1、3-2の数は2台に限定される訳ではない。図2は単なる一例である。また、本実施形態およびその後の他の実施形態では、無線端末3-1、3-2を総称する場合に、単に無線端末3という。上述の通り、本実施形態では、無線端末3は、DPSKで通信する無線端末である。
【0021】
また、無線端末4-1、4-2は、CPSK専用の無線端末であってもよいし、CPSKとDPSKの両方を利用可能な無線端末であってもよい。無線端末4-1、4-2がCPSKとDPSKの両方を利用可能な場合、無線端末4-1、4-2は、基地局10に接続時に、最初にCPSKとDPSKのうちいずれか一方で、基地局10にアクセスする。そして、無線端末4-1、4-2と基地局10のいずれか一方が状況に応じて、通信方式の切り替えを決定する。そして、無線端末4-1、4-2と基地局10は、決定された通信方式で通信する。また、無線端末4-1、4-2の数は2台に限定される訳ではない。また、本実施形態およびその後の他の実施形態では、無線端末4-1、4-2を総称する場合に、単に無線端末4という。上述のように、本実施形態では、無線端末4は、CPSKで通信する無線端末である。
【0022】
図2のように、基地局10は、受信装置10Aと送信装置10Bと制御装置10Cを有する。受信装置10Aは、複数の無線端末3、4等と、PD-UL-NOMAによるアップリンク信号を受信する。受信装置10Aは、DPSKの復調回路とCPSKの復調回路とを有し、CPSKおよびDPSKのいずれの変調信号も受信可能である。送信装置10Bは、無線端末3、4等に無線信号を送信する。制御装置10Cは、受信装置10Aと送信装置10Bを制御する。例えば、制御装置10Cは、受信装置10AのDPSKの復調回路とCPSKの復調回路の動作を制御する。制御装置10Cは、Central Processing Unit(CPU)とメモリを有する。CPUは、メモリ上に実行可能に展開されたコンピュータプログラムにより処理を実行する。
【0023】
CPSKは、例えばLong Term Evolution(LTE)等に広く利用されている変調方式である。CPSKの利用には参照信号(RS)を別途送信する必要である。また、伝送される参照信号は他の信号と直交している。PD-UL-NOMAにおいて、CPSK方式では、以下の課題がある。
【0024】
CPSK方式の課題:
(1)CPSK方式では、NOMAの重畳数が増加すると、参照信号による無線リソース占有割合が増え、伝送効率の向上が妨げられる。
(2)フェージング速度が速い場合は参照信号により測定した伝搬路の推定値が有効でない可能性がある。
(3)基地局10から参照信号を割り当てられるまで無線端末4は送信できないため、この間が遅延となる。また、割り当てられた参照信号が他の無線端末4等の参照信号と重複すると通信品質が劣化する。
【0025】
そこで、本実施形態では、CPSKの課題をDPSKによって解決することが提案される。例えば、基地局10がCPSKとともにDPSKを併用することで、上記課題の解決が図られる。CPSKとDPSKの併用により、以下のように両者の長所を組み合わせることが可能となる。なお、CPSKとDPSKの併用の他、PD-UL-NOMAにおいて、CPSK方式に代えて、特定の条件において、DPSK方式を利用することも考えら
れる。
【0026】
DPSKによる伝送の長所:
(1)参照信号用の無線リソースが不要である。参照信号は直交させる必要があり、CPSKは参照信号に多くの無線リソースを消費する。一方、DPSKは参照信号が不要である。これにより参照信号用の無線リソースをデータ用に割り当てることが可能になる。
(2)高速フェージングによる伝搬路推定値の誤差の影響を低減できる。フェージングの変動がある限度より速い場合、参照信号で測定した伝搬路推定値の精度が十分でない可能性がある。この場合には、CPSKの誤り率が劣化する。DPSKでは参照信号による伝搬路推定が不要であり、高速フェージングの影響が低減される。
(3)DPSKでは、低遅延が実現される。すなわち、DPSKは、参照信号の割り当てのための基地局-端末間のネゴシエーションなしに伝送可能である。このため、ネゴシエーションによる通信の遅延がない。
【0027】
CPSKによる伝送の長所:
(1)CPSKでは、送信端末の把握が可能である。すなわち、CPSKでは、受信参照信号の有無により、基地局10は復調前に送信端末の接続台数および識別情報(ID)等を把握可能である。
(2)CPSKでは、同一のビット誤り率を得るための信号対干渉雑音電力比(SINR)を小さくできる。すなわち、CPSKはDPSKよりも干渉およびノイズへの耐性が高い。このため、CPSKでは、重畳できる端末数を増加させることが可能となる。
(3)CPSKでは、Successive Interference Canceller(SIC)にしたがったループにおけるレプリカの作成が容易である。CPSKの場合には、参照信号から伝搬路推定値を得られていることからレプリカの生成が容易である。一方、DPSKでは参照信号が授受されないため、干渉除去用のレプリカ生成のための伝搬路推定値を得るために、本実施形態で述べる特別の処理が必要となる。
【0028】
図3に、本実施形態の無線通信システム100における無線リソースの構成を例示する。図3の例では、時間軸上で参照信号(RS)が分離し、直交する。一方、データ信号(DATA1乃至DATA5)は時間軸上で重複する。このうち、DATA1、DATA2、DATA4がCPSKの無線信号である。また、DATA3、DATA5がDPSKの無線信号である。図3のように、本実施形態では、DPSK信号は参照信号の無線リソースには重畳しない方式が採用される。このような構成により、CPSKで利用される参照信号は、DPSK信号の影響を受けない。図3のようなリソースの割り当てにおいて、DPSK信号の復調に必要な信号対干渉雑音電力比(SINR)はCPSK信号よりも大きくする必要がある。
【0029】
したがって、基地局10は、図3の例では、先に、DATA1、DATA2のCPSKの無線信号を復調し、これらの干渉を除去する。その後、基地局10は、DATA3のDPSKの無線信号を復調し、干渉を除去する。さらに、基地局10は、DATA4のCPSKの無線信号を復調し、干渉を除去する。そして、最後に基地局10は、DATA5のDPSKの無線信号を復調する。
【0030】
ただし、本実施形態では、基地局10は、DPSKの復調部と、CPSKの復調部を並列動作させる。DPSKの復調部とCPSKの復調部は、それぞれ独立に動作し、信号対干渉雑音電力比(SINR)の高い信号から復調し、干渉を除去する。したがって、例えば、図3のように、DATA1、DATA2の干渉が除去されない状態では、DPSKの復調部による復調結果は、エラーになる。そして、CPSKの復調部によって、DATA1、DATA2の干渉が除去された後、DPSKの復調部は、DATA3のDPSK信号を復調できる。このようなリソースの構成と復調手順により、基地局10は、DPSKで
通信する無線端末3-1、3-2と、CPSKで通信する無線端末4-1、4-2の両方と同時接続し、DPSKとCPSKとが混在した受信信号から、それぞれのデータを復調できる。
【0031】
(構成)
図4および図5に、本実施形態の無線通信システム100の構成を例示する。図4図5では、併せて、無線端末3と、無線端末4も例示されている。すでに述べたように、無線端末3はDPSKで通信している無線端末である。また、無線端末4はCPSKで通信している無線端末である。このうち、図4は、基地局10のDPSK復調部13の構成を詳細に例示している。また、図5は、基地局10のCPSK復調部14の構成を詳細に例示している。
【0032】
図4のように無線端末3は、CRC部31、スクランブル部32、誤り訂正符号化部33、差動位相変調部34を有する。これらの各部は、例えば、無線端末3のCPUにより提供される。CPUは、メモリに実行可能に展開されたコンピュータプログラムにより上記各部の処理を実行する。CRC部31は、無線端末3から送信されるデータにCyclic Redundancy Check(CRC)の誤り検出符号を付加する。スクランブル部32は、誤り検出符号化されたデータを擬似的にランダム化し、規則的なビットパターンの発生を低減する。ビットパターンがランダム化することでシンボルの偏りが解消される。その結果、例えば、伝搬路推定時の平均化の性能が向上する。
【0033】
誤り訂正符号化部33は、スクランブルされたデータを誤り訂正符号化する。差動位相変調部34は、誤り訂正符号化されたデータをDPSK変調する。DPSK変調されたデータは、送信アンテナから基地局10に送信される。
【0034】
また、無線端末4は、CRC部41、スクランブル部42、誤り訂正符号化部43、コヒーレント位相変調部44、およびRS(参照信号)生成部45を有する。これらの各部も、例えば、無線端末4のCPUにより提供される。このうち、CRC部41、スクランブル部42、誤り訂正符号化部43の処理は、無線端末3のCRC部31、スクランブル部32、誤り訂正符号化部33と同様である。また、コヒーレント位相変調部44は、誤り訂正符号化されたデータをCPSK変調する。RS生成部45は参照信号を生成する。生成された参照信号は、CPSK変調されたデータとともに、基地局10に送信される。
【0035】
また、図4、5のように、基地局10は、DPSK復調部13とCPSK復調部14とアンテナ19とレプリカ除去部18を有する。基地局10は、DPSK復調部13とCPSK復調部14を並列に動作させ、アンテナ19からの受信信号をそれぞれ復調させる。
【0036】
アンテナ19は、複数の送信装置から到来する、変調された無線信号を受信する。アンテナ19とこれに結合する回路は、受信工程を実行する受信回路ということができる。受信信号は、図3に例示した通り、参照信号がそれぞれ直交する。一方、データ信号は、DPSK信号およびCPSK信号の区別なく、リソースブロック(例えば時間軸)で重複する。DPSK復調部13は、受信信号から、SIC法により、DPSK方式の信号を順次抽出する。すなわち、DPSK復調部13は、例えば、図3に例示したDATA1乃至DATA5を搬送する受信信号のうち、DATA3とDATA5の受信信号を順次復調する。図3で述べたように、例えば、図3のDATA3のDPSK信号が復調に必要な信号対干渉雑音電力比(SINR)のものになるまでは、DPSK復調部13による復調は成功しない。したがって、DPSK復調部13によるDATA3のDPSK信号の復調は、DATA1、DATA2の干渉が除去された後となる。
【0037】
そのため、レプリカ除去部18は、例えば、レプリカが除去される前の信号(データ)
を保持するバッファと、バッファに保持された信号からレプリカを除去し、レプリカが除去された結果の信号を再度バッファに書き込む減算器を有数する。このような構成により、レプリカ除去部18は、アンテナ19で受信された無線信号から、複数の無線端末3、4等からの復号データに基づくレプリカを除去していく。SICのループでは、レプリカ除去部18は、信号対干渉雑音電力比(SINR)の高い順でレプリカを除去していく。
【0038】
図4のように、DPSK復調部13は、差動復調部131、誤り訂正復号化部132、デスクランブル部133、CRC部134、スクランブル部136、誤り訂正符号化部137、差動位相変調部138、レプリカ生成部139、および伝搬路推定部13Bを有する。図4の差動復調部131乃至レプリカ除去部18に至る各部は、SIC法を実行するSICループを形成する。
【0039】
DPSK復調部13は、差動位相変調(DPSK)された受信信号をSICのループで、信号対干渉雑音電力比(SINR)の高い第1の受信信号から順次復調する。このうち、差動復調部131は、アンテナ19で受信された受信信号をDPSK復調する。差動復調部131は、前回受信した信号の位相から、今回の受信信号における位相への変化量を検出する。ただし、今回の受信信号には、図3に例示するように、複数の端末の干渉信号が混在している。また、受信信号にはノイズも重畳している。したがって、差動復調部131は、前回受信した信号の位相からの異なる変化量の位相を示す複数の受信信号を処理することになる。差動復調部131は、それらの異なる変化量の位相を示す複数の受信信号のうち、最も強い受信信号から、位相の変化量を検出する。例えば、差動復調部131は、図3において、DATA1およびDATA2の干渉が除去された後、DATA3のDPSK受信信号を復調する。
【0040】
誤り訂正復号化部132は、復調されたデータを誤り訂正復号する。デスクランブル部133は、誤り訂正復号されたデータをデスクランブルし、スクランブル前のビット列に戻す。CRC部134は、デスクランブルされたデータでCRCによる誤り検出を実行する。CRC部134による誤り検出結果が正常であったデータは、基地局10の上位層へ送られるとともに、スクランブル部136に引き渡される。これらのうち、差動復調部131からCRC部134までの構成は、差動位相変調された第1の受信信号を復調し、基地局10の上位層へ引き渡すので、第1の復調工程を実行する第1の復調回路ということができる。また、アンテナ19で受信した受信信号のうち、このとき復調される受信信号を第1の受信信号と呼ぶことにする。
【0041】
なお、本実施形態では、CRC部134は、誤り検出を実行するが、CRCによる誤り検出符号を除去しない。CRC部134が検出符号を除去する場合には、CRC部134による誤り検出後に、デスクランブル部133によってデスクランブルされたデータがスクランブル部136に引き渡されるように回路を接続すればよい。また、CRC部134の後に、再度CRCによる誤り検出符号を付加する回路をスクランブル部136の前に設けてもよい。
【0042】
スクランブル部136、誤り訂正符号化部137および差動位相変調部138は、CRC部134による誤り検出でエラーなしと判定されたデータを基に、再度スクランブル、誤り訂正符号化、DPSK変調を実施する。これにより、SICを実行するための差動位相変調データが生成される。したがって、スクランブル部136、誤り訂正符号化部137および差動位相変調部138は、復調された復調信号を差動位相変調による変調信号に変調する変調工程を実行する変調回路ということができる。
【0043】
伝搬路推定部13Bは、アンテナ19で受信された受信信号と、差動位相変調部138から出力される差動位相変調信号とから伝搬路推定値hを算出する。伝搬路推定値hは、
それぞれの無線端末3からアンテナ19に至る伝搬路での伝搬信号の振幅および位相の変動量ということができる。そこで、伝搬路推定部13Bは、伝搬路での伝搬信号の振幅および位相の変動量を推定する推定工程を実行する推定回路ということができる。
【0044】
ただし、受信アンテナ19で受信された受信信号は、複数の無線端末からの受信信号を含んでいる。また、アンテナ19で受信された受信信号は、雑音を含んでいる。そこで、伝搬路推定部13Bは、伝搬路推定値hを受信信号が受信された複数期間において平均する。すなわち、伝搬路推定部13Bは、アンテナ19で得られた複数期間の受信信号[r1,r2,r3,…,rN]と、これを基に復号されたデータを基に差動位相変調部138が出力した差動位相変調データ[s1,s2,s3,…,sN]とを用いる。そして、伝搬路推定部13Bは、これらから算出される伝搬路推定値hn=rn/sn(n=1,2,3,…,N)を平均する。平均することによって、アンテナ19で受信された受信信号に含まれる、復調対象以外の他の無線端末からのランダムに近い干渉信号と雑音を除去する。
【0045】
レプリカ生成部139は、伝搬路推定部13Bが生成した伝搬路推定値hを基に、DPSK信号のレプリカを生成する。レプリカは、アンテナ19で受信される最大電力のDPSK変調信号(上記第1の受信信号)を模擬した模擬信号である。すなわち、レプリカは、ある1つの無線端末3からアンテナ19に到来するDPSK変調信号であって、信号対干渉雑音電力比(SINR)が最も高い信号を模擬したものである。ここでは、DPSK信号のレプリカを第1の疑似信号と呼ぶ。レプリカ生成部139は、第1の受信信号を疑似する第1の疑似信号を生成する第1の生成工程を実行する第1の生成回路ということができる。
【0046】
レプリカ除去部18は、アンテナ19で受信されたデータから第1の除去工程としてDPSK信号のレプリカを除去する。図4の例では、SICのループにより、受信信号から、最大電力のDPSK変調信号に相当する模擬信号が除去される。
【0047】
DPSK復調部13は、受信信号から、CRC部134による誤り検出でエラーのないデータが取得できなくなるまで、SICのループを繰り返す。このようにして、DPSK復調部13は、複数の無線端末からのDPSKによる受信信号とCPSKによる受信信号とが混在した信号からDPSKによる受信信号を復調する。すなわち、DPSK復調部13は、DPSKで通信する個々の無線端末3からのDPSKによる受信信号を復調し基地局10の上位レイヤに引き渡す。例えば、基地局10の制御装置10Cは、CPUを有し、DPSK復調部13の各部の処理およびSICのループの制御を実行する。DPSK復調部13として処理を実行する基地局10のCPUは、処理を繰り返す第1の制御回路と呼ぶ場合がある。ただし、DPSK復調部13がCPUを有し、SICのループを制御するようにしてもよい。
【0048】
図4のように、SICのループにより、受信信号から、最大電力のDPSK変調信号に相当する模擬信号が除去された信号は、再度SICのループに戻されるとともに、CPSK復調部14にも引き渡される。図5のように、CPSK復調部14は、復調部141、誤り訂正復号化部142、デスクランブル部143、CRC部144、スクランブル部146、誤り訂正符号化部147、コヒーレント位相変調部148、レプリカ生成部149、および伝搬路推定部14Bを有する。CPSK復調部14は、上記各部の処理により、コヒーレント位相変調された受信信号を復調する。
【0049】
このうち、伝搬路推定部14Bは、それぞれの無線端末4から送信された参照信号を基に、それぞれの無線端末4とアンテナ19との間の伝搬路推定値を計算する。また、図5の復調部141乃至レプリカ除去部18に至る各部は、SIC法を実行するSICループを形成する。
【0050】
復調部141は、アンテナ19で受信された受信信号に等化処理を実行し、CPSKで通信しているそれぞれの無線端末4からの受信信号を抽出する。すなわち、復調部141は、伝搬路推定部14Bで生成された、それぞれの無線端末3との間の伝搬路推定値hにより、特定の無線端末4からの受信信号を等化処理により抽出し、復調する。等化処理では、それぞれの無線端末4との間の伝搬路推定値hにより、対応する無線端末4からの受信信号が抽出され、他の無線端末からの受信信号が抑圧される。
【0051】
誤り訂正復号化部142は、復調されたデータを誤り訂正復号する。デスクランブル部143は、誤り訂正復号されたデータをデスクランブルし、スクランブル前のビット列に戻す。CRC部144は、CRCによる誤り検出を実行する。CRC部144による誤り検出結果が正常であったデータは、基地局10の上位層へ送られるとともに、スクランブル部146に引き渡される。これらのうち、復調部141からCRC部144までの構成は、コヒーレント位相変調された第2の受信信号を復調し、基地局10の上位層へ引き渡すので、第2の復調工程を実行する第2の復調回路ということができる。なお、アンテナ19で受信した受信信号のうち、このとき復調される受信信号を第2の受信信号と呼ぶことにする。
【0052】
スクランブル部146、誤り訂正符号化部147およびコヒーレント位相変調部148は、復号されたデータを基に、再度スクランブル、誤り訂正符号化、CPSKによるコヒーレント位相変調を実施する。これにより、復号されたデータを送信した無線端末4における送信データが基地局10において復元される。レプリカ生成部149は、コヒーレント位相変調部148で復元された無線端末4における送信データに伝搬路推定値hを乗算することで、無線端末4から受信されたCPSK信号のレプリカを生成する。すなわち、レプリカは、アンテナ19で受信された最大電力のCPSK変調信号を模擬した信号である。ここでは、CPSK信号のレプリカを第2の疑似信号と呼ぶ。スクランブル部146からレプリカ生成部149までの構成は、第2の復調回路で復調された復調信号を基に第2の受信信号を疑似する第2の疑似信号を生成するので、第2の生成工程を実行する第2の生成回路ということができる。
【0053】
レプリカ除去部18は、アンテナ19で受信された無線信号から第2の除去工程としてCPSK信号のレプリカを除去する。その結果、図5の例では、SICのループにより、受信信号から、最大電力のCPSK変調信号(上記第2の受信信号)に相当する模擬信号が除去される。レプリカ除去部18は、受信信号から第2の疑似信号を除去した信号を抽出する工程を実行すると言える。また、SICのループは繰り返されるので、レプリカ除去部18は、抽出された信号から前記第2の疑似信号を除去するとも言える。
【0054】
CPSK復調部14は、受信信号から、CRC部144による誤り検出でエラーのないデータが取得できなくなるまでSICのループを繰り返す。このようにして、CPSK復調部14は、複数の無線端末からのCPSKによる受信信号とDPSKによる受信信号とが混在した信号からCPSKによる受信信号を復調する。すなわち、CPSK復調部14は、CPSKで通信する個々の無線端末4からのCPSKによる受信信号を復調し基地局10の上位レイヤに引き渡す。上述のように、基地局10の制御装置10Cは、CPUを有する。例えば、制御装置10CのCPUが、CPSK復調部14の各部の処理およびSICのループの制御を実行する。CPSK復調部14として処理を実行する基地局10のCPUは、処理を繰り返す第2の制御回路とも呼ばれる場合がある。ただし、CPSK復調部14がCPUを有し、SICのループを制御するようにしてもよい。
【0055】
図5のように、SICのループにより、受信信号から、最大電力のCPSK変調信号に相当する模擬信号が除去された信号は、再度SICのループに戻されるとともに、DPS
K復調部13にも引き渡される。このようにして、DPSK復調部13とCPSK復調部14とは、それぞれ独立に並列に復調処理を実行しつつ、SICの結果を自身のSICループに戻すともに、相手の復調部に引き渡す。
【0056】
以上のように、レプリカ除去部18は、DPSK復調部13およびCPSK復調部14のそれぞれからレプリカを受け、アンテナ19で受信された無線信号から、レプリカを徐行する。本実施形態では、DPSK復調部13およびCPSK復調部14は、それぞれ独立に並列動作し、信号対干渉雑音電力比(SINR)の高いものから順に復調する。そして、DPSK復調部13のCRC部134およびCPSK復調部14のCRC部144のいずれかでエラーがない場合に、エラーがない方でレプリカが生成され、レプリカ除去部18において、エラーなしに復調されたデータに対応する信号の干渉が除去される。
【0057】
(処理フロー)
図6は、DPSK復調部13の伝搬路推定部13Bの処理を例示する図である。今、伝搬路推定の対象としている無線端末3を無線端末3-Aとする。この処理では、伝搬路推定部13Bは、現在伝搬路推定の対象としている無線端末3-Aと、アンテナ19との間の伝搬路を、参照信号を用いないで推定する。このため、伝搬路推定部13Bは、無線端末3-Aを含む複数の無線端末3からの受信信号と雑音とが混在した受信信号を用いる。そして、伝搬路推定部13Bは、伝搬路を推定する対象となる無線端末3-A以外の他の無線端末3-B等からの干渉信号および雑音を除去するため、複数の期間における伝搬路推定値を平均する。
【0058】
そこで、まず、伝搬路推定部13Bは、計算した伝搬路推定値hを平均する期間Nの設定値を取得する(S1)。期間Nの設定値は、基地局10で蓄積された経験値であってもよい。また、期間Nの設定値は、例えば、基地局10に対して、管理者が設定した設定であってもよい。また、期間Nの設定値は、例えば、伝搬路推定部13Bが図6の処理で決定する伝搬路推定値hの時間に対する変化率等(フェージングの速度等)から設定される値であってもよい。
【0059】
次に、伝搬路推定部13Bは、期間N分の受信信号rn(n=1,…,N)をメモリから取得する(S2)。受信信号rnは、基地局10のアンテナ19において、それぞれの期間(n=1,…,N)において無線端末3-Aを含む複数の無線端末3から送信された信号を含む受信信号である。伝搬路推定部13Bとして処理を実行する基地局10のCPUはメモリ上に基地局10のアンテナ19における受信信号を所定期間メモリに保存している。
【0060】
次に、伝搬路推定部13Bは、期間N分のDPSK疑似送信信号sn(n=1,…,N)
をメモリから取得する(S3)。DPSK疑似送信信号snは、図4の差動位相変調部138が出力した、DPSKで通信する無線端末3-Aに対応して生成された差動位相変調信号である。伝搬路推定部13Bとして処理を実行する基地局10のCPUは、メモリに、差動位相変調部138が出力した、無線端末3-Aに対応して生成された差動位相変調信号を所定期間メモリに保存している。
【0061】
そして、伝搬路推定部13Bは、期間N分だけ、伝搬路推定値hn=rn/sn(n=1,…,N)を計算し、これらの平均値を計算する(S4)。この平均値の計算により、アンテナ19において受信された受信信号rn(n=1,…,N)に含まれる、現在伝搬路推定の対象としている無線端末3-A以外からの干渉信号と雑音をランダム成分として除去する。このような平均は、統計処理の1つである。伝搬路推定部13Bは、推定回路として、伝搬路での伝搬信号の振幅および位相の変動量である伝搬路推定値を統計処理するといえる。また、上記レプリカ生成部149は、統計処理された推定値により疑似信号を生成する工程を実行するといえる。
【0062】
(変形例)
上記第1の実施形態では、図3に例示したように、DPSK信号はCPSKのための参照信号の無線リソースには重畳しない。このような構成により、CPSKで利用される参照信号は、DPSK信号の影響を受けない。この場合には、DPSK信号が復調されるときに、DPSK信号の信号対干渉雑音電力比(SINR)がCPSK信号よりも大きければよい。したがって、基地局10が参照信号を取得する前に、DPSK信号の干渉除去が行われる必要はない。しかし、本実施形態の基地局10は、このような処理に限定される訳ではない。
【0063】
例えば、図7に例示するように、DPSK信号がCPSKのための参照信号の無線リソースに重畳する構成であってもよい。この場合には、無線端末3、4等と基地局10が形成する無線通信ネットワークにおいて、基地局10におけるDPSK信号の受信電力が最も強くなるように、基地局10は、各無線端末3、4等に対して送信電力を制御させる。すなわち、基地局10は、図4図5で説明したSICのループにおいて、最初にDPSK信号からの干渉が除去されるようにする。本実施形態では、このような無線信号強度の設定により、DPSK信号が参照信号に与える干渉をSICで先に取り除く。その結果、図7のようにDPSK信号がCPSKのための参照信号の無線リソースには重畳する構成であってもCPSK信号が復調されるときには、干渉が除去され、CPSKの復調信号の劣化が抑制される。
【0064】
この場合、アンテナ19で受信されるDPSKの信号は、コヒーレント位相変調(CPSK)された第2の受信信号のための参照信号(RS)と重複するリソースにおいて、受
信信号を含むと言える。また、アンテナ19で受信されるDPSKの信号は、参照信号(RS)を超える電力の差動位相変調された受信信号を含むと言える。
【0065】
(シミュレーション結果)
図8乃至11に、本実施形態の無線通信システム100をモデル化してシミュレーションした結果を例示する。図8、9は、無線端末3、4等が高速移動する場合を想定したシミュレーションの例である。図8は、シミュレーションで設定されたパラメータを例示する。このシミュレーションでは、無線端末3、4の数は、それぞれ2台(合計4台)、変調方式は、シングルキャリア同期検波QPSK(CQPSK)と、シングルキャリア差動符号化QPSK(DQPSK)である。誤り訂正符号は、畳み込み符号 拘束長6、符号化率1/3、端末間電力比(SIR)3dB、移動速度は最大ドップラー周波数fd・シンボル周期Tで、fdT=0.0005~0.0008である。例えば、1シンボル長が1マイクロ秒のとき、fd=500~800Hzである。また、信号対雑音電力比(SNR)は30dB、情報ビット数は128ビットである。
【0066】
また、シミュレーションは、DQPSKでは、参照信号なしで、伝搬路推定値hn=rn/sn(n=1,2,3,…,20)を平均により推定した。すなわち、20シンボルの区間で伝搬路推定値hnが平均された。
【0067】
図9は、シミュレーション結果の一例である。図9のように、無線端末3、4の移動スピード増加とともに、CQPSKでは、パケット誤り率が増加する。一方、DQPSKでは、パケット誤り率の増加が抑制される結果となった。
【0068】
図10図11は、参照信号(RS)が2つの無線端末4の間で、衝突した場合のシミュレーションの例である。図10は、シミュレーションで設定されたパラメータを例示する。このシミュレーションでは、無線端末3、4は静止している。また、端末間電力比SIRは、2~5dBの範囲で変更した。その他のパラメータは、図8の場合と同一である
。また、CQPSKの場合の初期伝搬路推定値hは衝突したRSで計算された2つのh、とhによりh=h+hとする。2回目以降のSICループにおける伝搬路推定は図9のDQPSKと同様、伝搬路推定値hn=rn/sn(n=1,2,3,…,20)を平均により推定した。
【0069】
図11に、シミュレーション結果を例示する。このシュミュレーションでも、概ね、DQPSKでのパケット誤り率がCQPSKでのパケット誤り率よりも小さい結果となった。ただし、4台の無線端末3、4間の電力SIRが2dB程度になると、CQPSKでのパケット誤り率がDQPSKでのパケット誤り率よりも低い結果となった。
【0070】
(第1の実施形態の効果)
以上述べたように、本実施形態の基地局10は、DPSKの受信において、参照信号の受信なしに、複数の無線端末3からの送信信号が混在した受信信号を用いて伝搬路を推定する。すなわち、基地局10は、それぞれの無線端末3からの受信信号から復号されたデータを基に生成された差動位相変調信号を復元する。そして、基地局10は、複数の無線端末3からの送信信号が混在した受信信号と、復元した差動位相変調信号と、を基に、それぞれの無線端末3との間の伝搬路推定値を計算する(図6)。そして、基地局10は、この伝搬路推定値hを基に、それぞれの無線端末3から受信した受信信号の模擬信号であるレプリカを生成する。そして、基地局10は、生成したレプリカにより、複数の無線端末3からの受信信号が混在した信号から、DPSKで通信する複数の無線端末3からの受信信号にSICを実行することで、個々の無線端末3からの受信信号を抽出できる。
【0071】
また、この場合、基地局10は、図6のように、期間N分だけ、伝搬路推定値hn=rn/sn(n=1,…,N)を計算し、これらの平均値を計算する。したがって、基地局10は、対象とする無線端末3-A以外の無線端末3からの干渉信号および雑音のランダムな成分を除去できる。
【0072】
また、上記のように、基地局10は、DPSKで通信する無線端末3とCPSKで通信する無線端末3とを同時接続可能であるので、DPSKとCPSKの長所を組み合わせることができる。
【0073】
すなわち、DPSKで通信するにより、以下が実現される。
(1)参照信号用無線リソースが不要である。参照信号は直交させる必要があり、CPSKは参照信号用に多くの無線リソースを消費する。一方、DPSKは参照信号が不要である。これにより参照信号用の無線リソースをDATA用に割り当てることが可能になる。(2)高速フェージングによる伝搬路推定誤差の影響を低減できる。DPSKでは参照信号による伝搬路推定が不要であり、高速フェージングの影響が低減される。
(3)DPSKでは、低遅延が実現される。すなわち、DPSKは、参照信号の割り当てのための基地局-端末間のネゴシエーションなしに伝送可能である。このため、ネゴシエーションによる通信の遅延がない。
【0074】
また、CPSKにより、以下が実現される。
(1)CPSKでは、送信端末の把握が可能である。すなわち、CPSKでは、受信した参照信号により、基地局は復調前に送信端末の接続台数やIDを把握可能である。
(2)CPSKでは、同一のビット誤り率を得るための信号対干渉雑音電力比(SINR)を小さくできる。すなわち、CPSKはDPSKよりもノイズへの耐性が高い。このため、重畳できる端末数を増加させることが可能となる。
(3)CPSKではレプリカの作成が容易である。CPSKの場合は参照信号から伝搬路推定値を得られていることからレプリカの生成が容易である。
【0075】
<第2の実施形態>
上記実施形態の基地局10は、DPSK復調部13と、CPSK復調部14を有し、それぞれが独立に並列で動作した。しかし、電力効率を考慮し、基地局10は、DPSK復調部13と、CPSK復調部14を状況に応じて、切り替えて動作させてもよい。
【0076】
基地局10は、例えば、無線端末3、4等の接続時の要求に応じて、DPSK復調部13と、CPSK復調部14を切り替えて動作させてもよい。本実施形態のこのような無線端末3、4および基地局10の処理以外の処理は、第1の実施形態の無線端末3、4および基地局10の処理と同様である。そこで、図2乃至図7の構成はそのまま本実施形態にも適用されるものとし、第1の実施形態と異なる処理を以下説明する。
【0077】
図12は、無線端末3、4等が、変調方式を決定する処理を例示する図である。図12の処理は、無線端末3、4等のCPUがメモリ上のコンピュータプログラムにより実行するが、ここでは、無線端末3、4等が実行する処理として説明する。
【0078】
この処理では、無線端末3、4等において、送信すべきペイロードが発生する場合を想定する(S11)。そして、無線端末3、4等は、ペイロードとして送信するデータ量が規定値以下か否かを判定する(S12)。ペイロードとして送信するデータ量が規定値以上の場合(S12でNO)、無線端末3、4等は、CPSKの参照信号(RS)と重畳してDPSKのデータを送信する方式を選択し、基地局10に通知する(S13)。これにより、無線端末3、4等は、参照信号(RS)のリソースも含めて、DPSKでデータ送信を実行できる。したがって、データ量が規定値以上の場合に、無線リソースを効率よく使用してアップリンクでの送信を実現できる。
【0079】
一方、ペイロードとして送信するデータ量が規定値以下の場合(S12でYES)、無線端末3、4等は、基地局から参照信号(RS)の割り当てを受けているか否かを判定する(S14)。無線端末3、4等は、基地局から参照信号(RS)の割り当てを受けていない場合(S14でNO)、CPSKの参照信号と重畳しないリソースの範囲で、DPSKのデータを送信する方式を適用し、基地局10に通知する。これにより、無線端末3、4等は、参照信号(RS)のリソースを受信する時間を要しないで、迅速短時間でDPSKによりデータ送信を実行できる。また、この場合、データ量が規定値以下であるので、参照信号と重複する無線リソースまで使用する必要がない。
【0080】
さらに、無線端末3、4等は、基地局10から参照信号(RS)の割り当てを受けている場合(S14でYES)、無線端末3、4等自身の移動速度をGlobal Positioning System(GPS)等を用いて計算する。そして、無線端末3、4等は、移動速度が規定値以下か否かを判定する(S15)。そして、移動速度が規定値以上の場合(S15でNO)、無線端末3、4等は、CPSKの参照信号と重畳しないリソースの範囲で、DPSKのデータを送信する方式を適用し、基地局10に通知する(S16)。これにより、無線端末3、4等は、迅速短時間で、高速フェージングの影響を抑制してDPSKによりデータ送信を実行できる。
【0081】
また、移動速度が規定値以下の場合(S15でYES)、無線端末3、4等は、CPSKのデータを送信する方式を選択し、基地局10に通知する(S17)。これにより、無線端末3、4等は、電力のSIRを小さくして、効率よくアップリンクのデータを送信できる。その結果、多数の無線端末3、4等が基地局10に接続できる。
【0082】
なお、本実施形態では、図12のように、無線端末3、4等が状況に応じてDPSKとCPSKを選択し、基地局10に通知する処理が例示された。しかし、本実施形骸の無線通信システム100は、このような処理に限定される訳ではない。例えば、基地局10が
、無線端末3、4の移動速度、データ送受信の負荷等を基に、DPSKの通信方式と、CPSKの通信方式を切り替えるようにしてもよい。
【0083】
図13に、基地局10において、DPSKの通信方式と、CPSKの通信方式を切り替える処理を例示する。この処理は、基地局10の制御装置10C(図2参照)が制御部の一例としてコンピュータプログラムにより実行するが、基地局10が実行するものとして説明する。この処理では、基地局10は、無線端末3、4等と、まず、DPSKで通信していると想定する。ただし、図13における基地局10の処理がDPSKで先に通信していている場合に限定される訳ではない。基地局10は、無線端末3、4等と、まず、CPSKで通信していてもよい。
【0084】
そして、今、基地局10は、無線端末3-Aから、移動速度およびデータをDPSKで受信したとする(S21)。基地局10は、まず、無線端末3-Aから通信方式の指定があるか否かを判定する(S22)。無線端末3-Aから通信方式の指定がある場合(S22でYES)、基地局10は、無線端末3-Aから指定の通信方式を適用する。すなわち、基地局10は、無線端末3-Aからの指定にしたがって、DPSKとCPSKを切り替え、または、現在の通信方式を維持し、無線端末3-Aに応答する(S23)。したがって、基地局10の制御部であるCPUは、複数の送信装置それぞれからの指定に応じて、第1の復調回路であるDPSK復調部13および第2の復調回路であるCPSK復調部14のいずれか一方動作させ、他方を停止させるといえる。
【0085】
一方、無線端末3-Aから指定がない場合、基地局10は、現在接続中の無線端末数が規定値以上か否かを判定する。そして、現在接続中の無線端末数が規定値以上の場合、基地局10は、CPSKを適用する。すなわち、基地局10は、通信方式をCPSKとし、無線端末3、4等に応答する(S25)。CPSKによって、より多くの無線端末3、4等の接続の可能性が高くなる。
【0086】
また、現在接続中の無線端末数が規定値以下の場合、基地局10は、S21で受信した無線端末3-Aの移動速度が規定値以上か否かを判定する(S26)。移動速度が規定値以上の場合(S26でYES)、基地局10は、無線端末3-Aからの通信データ量が規定値以上か否かを判定する(S27)。基地局10は、無線端末3-Aからの通信データ量を、例えば、所定期間の実績値を基に推定する。通信データ量が規定値以上の場合、基地局10は、CPSKの参照信号(RS)と重畳してDPSKのデータを送信する方式を選択し、無線端末3-Aに通知する(S28)。これにより、基地局10は、参照信号の無線リソースを活用して、DPSKのデータを受信できる。一方、通信データ量が規定値以下の場合、基地局10は、CPSKの参照信号と重畳しないリソースの範囲で、DPSKのデータを送信する方式を適用し、無線端末3-Aに通知する(S29)。これにより、基地局は、参照信号への干渉なしに、DPSKのデータを受信できる。
【0087】
一方、移動速度が規定値以下の場合(S26でNO)、基地局10は、通信方式をDPSKからCPSKに切り替え、無線端末3-Aに応答する(S2A)。
【0088】
以上の処理により、基地局10の制御部であるCPUは、複数の送信装置および前記復調装置の通信状況に応じて制御を実行する。そして、基地局10は、第1の復調回路であるDPSK復調部13および第2の復調回路であるCPSK復調部14のいずれか一方を動作させ、他方を停止させるといえる。
【0089】
以上述べたように、本実施形態によれば、基地局10は、自身の通信状況、無線端末3、4等の状況、移動速度等に応じて適切にDPSKとCPSKとを切り替えて、無線端末3、4等からのアップリンクの通信を受信できる。
【0090】
<ハードウェア構成>
図14は、上記第1の実施形態および第2の実施形態で例示した基地局10のハードウェア構成を例示する図である。基地局10は、CPU101と、メモリ102と、内部インターフェース103と、他の基地局等と通信するためのネットワークインターフェース104と、無線処理装置105とを有する。
【0091】
CPU101は、プロセッサ、Microprocessor Unit (MPU)とも呼ばれる。CPU101は、単一のプロセッサに限定される訳ではなく、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、CPU101は、単一のソケットで接続される単一の物理CPUがマルチコア構成を有していても良い。さらにまた、CPU101は、Digital Signal Processor(DSP)、Graphics Processing Unit(GPU)等の様々な回路構成の演算装置を含んでも良い。また、CPU101は、集積回路(IC)、その他のデジタル回路、またはアナログ回路と連携するものでもよい。集積回路は、LSI、 Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)を含むものでもよい。PLDは、例えば、Field-Programmable Gate Array(FPGA)を含むものでもよい。したがって、CPU11は、例えば、マイクロコントローラ(MCU)、SoC(System-on-a-chip)、システムLSI、チップセットなどと呼ばれるものでもよい。
【0092】
メモリ102は、CPU101が実行する命令列(コンピュータプログラム)、または、をCPU101が処理するデータ等を記憶する。CPU101とメモリ12とは、ベースバンド装置(BBU)とも呼ばれることがある。内部インターフェース13は、種々の周辺装置をCPU101に接続する回路である。ベースバンド装置は、制御部または制御回路ということもできる。CPU101は、例えば、図13に例示した処理を実行する。したがって、CPU101は、複数の送信装置である無線端末3、4等のそれぞれからの指定、または複数の無線端末3、4等および基地局10の通信状況に応じて、処理を切り替えてもよい。すなわち、CPU101は、これらの通信状況に応じて第1の復調回路であるDPSK復調部13および第2の復調回路であるCPSK復調部14のいずれか一方を動作させ、他方を停止させる制御部または制御回路としての処理を実行してもよい。
【0093】
また、CPU101は、図4図5で例示した処理を実行してよい。すなわち、CPU101は、第1の復調回路であるDPSK復調部13による復調が可能な限度での第1の処理または、第2の復調回路であるCPSK復調部14による復調が可能な限度での第2の処理を実行させてもよい。ここで、第1の処理は、図4に例示した差動復調部131からCRC部134、スクランブル部136からレプリカ生成部139、推定回路である伝搬路推定部13Bおよび除去回路であるレプリカ除去部18による処理である。また、第2の処理は、図5に例示した復調部141からCRC部144、スクランブル部146からレプリカ生成部149およびレプリカ除去部18による処理である。
【0094】
なお、CPU101は、例えば、図4および図5のDPSK復調部13とCPSK復調部14のそれぞれに設けられてもよい。また、CPU101は、例えば、図4および図5のDPSK復調部13とCPSK復調部14の両方を制御するように、DPSK復調部13とCPSK復調部14との共通部分に設けられてもよい。したがって、CPU101は、第1の復調回路であるDPSK復調部13による復調が可能な限度で、第1の復調回路であるDPSK復調部13等による処理を繰り返す第1の制御回路ということができる。また、CPU101は、第2の復調回路であるCPSK復調部14による復調が可能な限度で、CPSK復調部14等による処理を繰り返す第2の制御回路ということができる。
【0095】
ネットワークインターフェース14は、他の基地局が接続されるネットワークに基地局10がアクセスするための通信装置である。他の基地局が接続されるネットワークは、バックホールとも呼ばれる。バックホールは例えば、光通信による有線ネットワークである。
【0096】
無線処理装置105は、無線信号を送信するトランシーバおよび無線信号を受信するレシーバ等を含み、アンテナANT-1、・・・、ANT-Mに接続される。無線処理装置15は、トランシーバおよびレシーバをそれぞれアンテナANT-1、・・・、ANT-Mと同数のM系統有してもよい。無線処理装置15は、遠隔無線ヘッド(RRH)と呼ばれ、ベースバンド装置とは光通信による有線ネットワークで接続して、遠隔に設置される構成とすることもできる。また、1つのベースバンド装置に、複数の遠隔無線ヘッドが接続される構成であってもよい。ベースバンド装置と遠隔無線ヘッドを接続するネットワークは、フロントホールとも呼ばれる。図14では、複数のアンテナANT-1、・・・、ANT-Mが設けられているが、アンテナANT-1が1つだけ設けられてもよい。なお、ANT-Mにおいて、Mは整数であり、アンテナの数に限定はない。無線処理装置105に接続されるアンテナANT-1、・・・、ANT-Mは受信回路の一例ということができる。なお、無線端末3、4等も、プロセッサ、メモリ、無線処理装置、アンテナ等を有する。
【符号の説明】
【0097】
3 DPSKで通信する無線端末
4 CPSKで通信する無線端末
10 基地局
13 DPSK復調部
13B、14B 伝搬路推定部
14 CPSK復調部
18 レプリカ除去部
31、41、134、144 CRC部
32、42、136、146 スクランブル部
33、43、137、147 誤り訂正符号化部
34、138 差動位相変調部
44、148 コヒーレント位相変調部
100 無線通信システム
101 CPU
102 メモリ
103 内部インターフェース
104 ネットワークインターフェース
105 無線処理装置
131、141 差動復調部
132、142 誤り訂正復号化部
133、143 デスクランブル部
139、149 レプリカ生成部
図1
図2
図3
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図5
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図11
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図14