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特開2022-161345解析装置、地表観測システム、ターゲットユニット、地表観測方法及び地表観測プログラム
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  • 特開-解析装置、地表観測システム、ターゲットユニット、地表観測方法及び地表観測プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161345
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】解析装置、地表観測システム、ターゲットユニット、地表観測方法及び地表観測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 11/06 20060101AFI20221014BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
G01C11/06
G01C15/06 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066075
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】円谷 信一
(57)【要約】
【課題】地表の状態の変化を簡単かつ高い精度で評価できる。
【解決手段】地表の画像を取得する画像取得部と、地表に設置されたターゲットとターゲットの位置とを対応付けたターゲット情報を取得するターゲット情報取得部と、画像とターゲット情報とに基づいて、画像から得られるターゲットの信号強度と、ターゲット情報の信号強度とを比較することにより、地表の状態を解析する解析部と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表の画像を取得する画像取得部と、
前記地表に設置されたターゲットとターゲットの位置とを対応付けたターゲット情報を取得するターゲット情報取得部と、
前記画像と前記ターゲット情報とに基づいて、前記画像から得られるターゲットの信号強度と、前記ターゲット情報の信号強度とを比較することにより、地表の状態を解析する解析部と、を含む解析装置。
【請求項2】
前記画像は、ターゲットの設置した位置を含む1つ以上の画素を有する請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記ターゲットは、同じ面積で配置される請求項1または請求項2に記載の解析装置。
【請求項4】
前記解析部は、前記画像に含まれるターゲットの数を評価して地表の状態を解析する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項5】
前記ターゲット情報は、前記画像の領域を含む以前の画像であり、
前記解析部は、前記ターゲット情報の画像と、前記画像取得部で取得した画像と、を撮影条件に基づいた補正をして、比較する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の解析装置と、
地表の画像を撮影する地表画像撮影装置と、
前記地表に配置された複数のターゲットと、を含む地表観測システム。
【請求項7】
評価対象の地表面に設置され、
上空に向いている反射面を有するターゲットを複数備え、
複数の前記ターゲットは、反射面が同じ向きで、かつ同じ面積であるターゲットユニット。
【請求項8】
前記反射面は、白色である請求項7に記載のターゲットユニット。
【請求項9】
地表に設置されたターゲットとターゲットの位置とを対応付けたターゲット情報を取得するターゲット情報取得ステップと、
前記地表の画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像と前記ターゲット情報とに基づいて、前記画像から得られるターゲットの信号強度と、前記ターゲット情報の信号強度とを比較することにより、地表の状態を解析する解析ステップと、を含む地表観測方法。
【請求項10】
地表に設置されたターゲットとターゲットの位置とを対応付けたターゲット情報を取得するターゲット情報取得ステップと、
前記地表の画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像と前記ターゲット情報とに基づいて、前記画像から得られるターゲットの信号強度と、前記ターゲット情報の信号強度とを比較することにより、地表の状態を解析する解析ステップと、をコンピュータに実行させる地表観測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、解析装置、地表観測システム、ターゲットユニット、地表観測方法及び地表観測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地表の状態を把握するシステムとして、上空から地表を撮影し、撮影した画像を解析するシステムがある。特許文献1には、水面から上方に向かって所定の傾斜角度で延出するように設置される測量部を有する水位計と、測量部を上空から撮影する撮影手段および複数の回転翼を有する無人航空機と、を備えることを特徴とする水位測定システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-116305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、積雪、台風、地震等の自然現象の影響を迅速に評価することが求められる場合がある。特許文献1に記載の装置は、詳細な画像解析は必要となる。また、特許文献1に記載のシステムは水位を計測することはできるが、他の地表の変化に対応することが難しい。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上記課題を解決するために、地表の状態の変化を簡単かつ高い精度で評価できる解析装置、地表観測システム、ターゲットユニット、地表観測方法及び地表観測プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、地表の画像を取得する画像取得部と、前記地表に設置されたターゲットとターゲットの位置とを対応付けたターゲット情報を取得するターゲット情報取得部と、前記画像と前記ターゲット情報とに基づいて、前記画像から得られるターゲットの信号強度と、前記ターゲット情報の信号強度とを比較することにより、地表の状態を解析する解析部と、を含む解析装置を提供する。
【0007】
本開示は、評価対象の地表面に設置され、上空に向いている反射面を有するターゲットを複数備え、複数の前記ターゲットは、反射面が同じ向きで、かつ同じ面積であるターゲットユニットを提供する。
【0008】
本開示は、地表に設置されたターゲットとターゲットの位置とを対応付けたターゲット情報を取得するターゲット情報取得ステップと、地表の画像を取得する画像取得ステップと、前記画像と前記ターゲット情報とに基づいて、前記画像から得られるターゲットの信号強度と、前記ターゲット情報の信号強度とを比較することにより、地表の状態を解析する解析ステップと、を含む地表観測方法を提供する。
【0009】
本開示は、地表に設置されたターゲットとターゲットの位置とを対応付けたターゲット情報を取得するターゲット情報取得ステップと、地表の画像を取得する画像取得ステップと、前記画像と前記ターゲット情報とに基づいて、前記画像から得られるターゲットの信号強度と、前記ターゲット情報の信号強度とを比較することにより、地表の状態を解析する解析ステップと、をコンピュータに実行させる地表観測プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
上記構成とすることで、地表の状態の変化を簡単かつ高い精度で評価できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、地表観測システムの一例を示す模式図である。
図2図2は、解析装置の一例を示すブロック図である。
図3図3は、ターゲットの一例を示す説明図である。
図4図4は、ターゲットの一例を示す説明図である。
図5図5は、ターゲットの一例を示す説明図である。
図6図6は、ターゲットの一例を示す説明図である。
図7図7は、ターゲットの一例を示す説明図である。
図8図8は、地表観測方法の処理の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、解析装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、解析方法の一例を示す説明図である。
図11図11は、解析方法の一例を示す説明図である。
図12図12は、解析方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0013】
図1は、地表観測システムの一例を示す模式図である。地表観測システム10は、地表画像撮影装置12と、解析装置14と、複数のターゲット16と、を含む。地表観測システム10は、地表画像撮影装置12で、複数のターゲット16が配置されている地表18の画像を取得し、解析装置14で、複数のターゲットを含む地表18の画像を解析することで、地表の状態を評価する。具体的には地表の状態の変化を評価する。ここで、地表は、地面の表面、地面に設けられた建物上面、川、池、湖、海等の水の表面、地面の表面に雪が積もった積雪面等、地球の表面の種々が含まれる。
【0014】
地表画像撮影装置12は、地表の上から地表の画像を撮影する。本実施形態の地表画像撮影装置12は、地球上を周回する衛星である。地表画像撮影装置12としては、飛行機、ドローン、気球等の飛行物体を用いてもよい。地表画像撮影装置12は、撮影した画像を解析装置14に送る。地表画像撮影装置12は、撮影した画像の地球上での位置や、撮影した時間の情報も撮影した画像とともに解析装置14に送る。地表画像撮影装置12は、地表を撮影する画像を、太陽光を反射した画像として撮影してもよいが、測定波を出力しその反射を受信して画像を取得する、例えばSAR(開口合成レーダ)で画像を取得してもよい。
【0015】
図2は、解析装置の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る解析装置14は、地表画像撮影装置12で取得した画像に含まれるターゲットと、予め記憶しているターゲットの情報との比較を行い、画像のターゲットの状態を評価して、地表の状態を解析する。解析装置14の設置位置は、特に限定されず、種々の場所に設置することができる。
【0016】
解析装置14は、入力部112と、出力部114と、通信部116と、演算部118と、記憶部120と、を含む。入力部112は、キーボード及びマウス、タッチパネル、またはオペレータからの発話を集音するマイク等の入力装置を含み、オペレータが入力装置に対して行う操作に対応する信号を演算部118へ出力する。出力部114は、ディスプレイ等の表示装置、プリンタ等の印刷装置、スピーカ等の音声出力装置を含み、演算部118から出力される表示信号に基づいて、処理結果や処理対象の画像等、各種情報を含む画面を表示する。また、出力部114は、データを記録媒体で出力する記録装置を含んでもよい。通信部116は、通信インターフェースを用いて、データの送信を行う。通信部116は、外部機器と通信を行い取得した各種データ、プログラムを記憶部120に送り、保存する。通信部116は、地表画像撮影装置12と通信し、地表画像と地表画像を撮影した位置、時間の情報を取得する。通信部116は、有線の通信回線で外部機器と接続しても、無線の通信回線で外部機器と接続してもよい。
【0017】
演算部118は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の集積回路(プロセッサ)と、作業領域となるメモリとを含み、これらのハードウェア資源を用いて各種プログラムを実行することによって各種処理を実行する。具体的に、演算部118は、記憶部120に記憶されているプログラムを読み出してメモリに展開し、メモリに展開されたプログラムに含まれる命令をプロセッサに実行させることで、各種処理を実行する。
【0018】
演算部118は、画像取得部130と、ターゲット情報取得部132と、解析部134と、を含む。なお、画像取得部130と、ターゲット情報取得部132と、解析部134と、通信網で接続して処理を実行しても、1つの処理装置で処理を実行してもよい。各部の機能については後述する。
【0019】
記憶部120は、磁気記憶装置や半導体記憶装置等の不揮発性を有する記憶装置からなり、各種のプログラムおよびデータを記憶する。記憶部120は、画像データ140と、ターゲットデータ142と、処理条件データ144と、解析プログラム146と、を含んで有している。
【0020】
記憶部120に記憶されるデータとしては、画像データ140と、ターゲットデータ142と、処理条件データ144と、が含まれる。画像データ140は、地表画像撮影装置12で撮影した画像のデータである。画像データ140は、画像への付加情報として、撮影位置、撮影角度、撮影日時、撮影時の天候、撮影手段の種別情報(衛星で撮影したか、航空機で撮影したか、気球で撮影したか等)、撮影手段の個別識別番号等の情報を含めてもよい。画像データ140は、過去に取得し、蓄積した画像のデータであるが、解析対象を一時的に保存した画像も含まれる。画像データ140は、解析部134の解析時の比較処理や、ターゲットを評価するための条件の解析に用いられる。
【0021】
ターゲットデータ142は、地表に設置されたターゲットの情報である。ターゲットの情報としては、ターゲットの位置、ターゲットの大きさ、ターゲットの設置方向等の情報である。また、ターゲットの情報には、直近で撮影した際の画像で解析を行っている場合、ターゲットの見え方の情報も含む。ターゲットの見え方とは、画像上での信号強度の情報が一例として挙げられる。
【0022】
処理条件データ144は、画像やターゲットの情報を処理する条件である。例えば、画像処理を行う際の、ターゲットと信号強度との関係の算出条件や、画像の比較を行う場合の、時間帯、天候に基づいた補正条件である。また処理条件データ144には、解析部で解析を実行するかの基準条件や、画像データ、ターゲットデータを更新するか等の判断基準も含まれる。
【0023】
記憶部120に記憶されるプログラムとしては、解析プログラム146がある。解析プログラム146は、画像取得部130、ターゲット情報取得部132、解析部134で実行されるプログラムである。解析プログラム146は、ターゲットデータ142を用いて、画像を解析し、画像に含まれる地表の状態を評価する処理を実行する。
【0024】
記憶部120は、記録媒体に記録された解析プログラム146を読み込むことで、解析プログラム146がインストールされてもよいし、ネットワーク上で提供される解析プログラム146を読み込むことで、解析プログラム146がインストールされてもよい。
【0025】
演算部118の各部の機能について説明する。演算部118の各部は、記憶部120に記憶されるプログラムを実行することで、実行することができる。画像取得部130は、地表画像撮影装置12で撮影した画像を取得する。また、画像取得部130は、ターゲットデータ142の作成に用いる画像も取得する。ターゲット情報取得部132は、ターゲットデータ142から解析対象の画像に含まれる領域のターゲット情報を取得する。
【0026】
解析部134は、評価対象の画像をターゲットデータに基づいて、画像に含まれるターゲットの状態を評価し、ターゲットが置かれている地表の状態、具体的には地表の状態の変化を解析する。また、解析部134は、ターゲットの設置情報、ターゲットを撮影した画像等に基づいて、ターゲットデータを作成する。
【0027】
ターゲット16は、評価対象となる地表に設置される。なお、地表は、上述したように、地面、水面、建造物の上面等が含まれる。地表観測システム10は、1つの評価対象に対して複数のターゲット16が配置される。ここで、評価対象は、地表の変化を検出したい領域である。ターゲット16は、種々の形状、種々の位置に配置される。1つのターゲットユニットに含まれる複数のターゲット16は、地表画像撮影装置12に向けて同じ向きに傾斜した反射面を備える。なお、本実施形態では、ターゲット16を複数としているが、1つのターゲットでもよい。反射面は、周囲と識別しやすい、つまりターゲットと認識しやすい色であることが好ましい。例えば、反射面は白であることが好ましい。ターゲットを白とすることで、周囲の自然物、建造物と識別しやすくできる。ターゲットは、形状は限定されないが、例えば1辺が30cmから50cmの四角形とすることができる。
【0028】
図3から図7は、それぞれターゲットの一例を示す説明図である。図3に示すターゲットユニット22、24は、家屋20の屋根に設置されている。ターゲットユニット22は、同じ向きの屋根に設置された4つのターゲット16aを含む。4つのターゲット16aは、同じ面積の板状部材であり、反射面となる上面も同じ材料で形成されている。また、4つのターゲット16aは、同じ向きで配置される。ターゲットユニット24は、ターゲットユニット22が設置されている屋根と異なる向きの屋根に設置された4つのターゲット16bを含む。4つのターゲット16bは、同じ面積の板状部材であり、反射面となる上面も同じ材料で形成されている。また、4つのターゲット16bは、同じ向きで配置される。
【0029】
ターゲットユニット22、24は、設置されている屋根の一部、ターゲットが配置されている部分が損傷した場合や、積雪等で隠れた場合、ターゲットユニット22、24の状態が変化する。また、ターゲットユニット22、24は、家屋20が例えば、地滑り、地震等で移動した場合、位置が変化する。地表観測システム10は、ターゲットユニット22、24の変化を検出することで、家屋20の変化、家屋20が設置されている地面の変化を検出することができる。
【0030】
図4に示すターゲットユニット30は、2つのターゲット16cを含む。ターゲット16cは、木の根元に配置される。2つのターゲット16cは、同じ向きに配置され、同じ面積の反射面を備える。ターゲットユニット30は、木によってさえぎられている状態となる。この状態から、近傍にある木の葉が落ちることで、ターゲットユニット30が、地表に露出した状態となる。例えば、乾燥した状態となると葉が枯れる木にターゲットユニット30を設けることで火事が発生する危険があるかを判断できる。また、山火事等で木が燃えた場合も、ターゲットユニット30が露出するので、火事が発生したかを地表の変化で観測することもできる。また、この状態から、近傍にある木が地滑り等で移動した場合、ターゲットユニット30が、地表に露出した状態となる。このように、地表観測システム10は、隠れているターゲットユニット30が、露出したことを地表の変化として検出することもできる。なお、本実施形態では、ターゲットユニット30が木に隠れている状態としたが、例えば、斜面にターゲットを設置して地盤に固定し、斜面でがけ崩れ等が生じた場合に、ターゲットが露出する構成としても、地表の変化をターゲットで検出することができる。
【0031】
図5に示すターゲットユニット34は、3つのターゲット16dを含む。ターゲットユニット34は、3つのターゲット16dを、土台40に固定された長さが異なる支持部42a、42b、42cで支持する。土台40は、水平に伸びた部材である。支持部42a、42b、42cは、一方の端部が土台40に固定され、他方の端部にそれぞれターゲット16dが固定される。支持部42a、42b、42cは、支持部42a、支持部42b、支持部42cの順で短くなる。ターゲットユニット34は、3つのターゲット16dが高さの異なる位置に配置される。
【0032】
ターゲットユニット34は、川や湖等の底面に土台40を配置することで、水位により、ターゲット16dが水面から露出する数を変化させることができる。これにより、ターゲット16dの露出している数を観測することで、設置場所の水位を判断することができる。同様に、ターゲットユニット34は、積雪する地域の地表面に土台40を配置することで、積雪量により、ターゲット16dが雪から露出する数を変化させることができる。これにより、ターゲット16dの露出している数を観測することで、設置場所の積雪量を判断することができる。本実施形態では、ターゲットユニット34が3つのターゲット16dを備えたが、1つのターゲットユニット34に含めるターゲット16dの数は、3つに限定されず、2つでも4つ以上でもよい。
【0033】
図6に示すターゲットユニット50は、ターゲット16eと、支持体52と、を含む。支持体52は、鉛直方向上側に向いている面が、位置により高さが変化する傾斜面であり、傾斜面にターゲット16eが固定される。ターゲットユニット50は、川や湖等の底面に固定される。ターゲットユニット50は、水位Rにより、ターゲット16eが水面から露出量を変化させることができる。このように1つのターゲットの露出量が変化する構造としてもよい。
【0034】
図7に示すターゲットユニット60は、支持体64に水流入口62が設置される。支持体64の鉛直方向上側の面には、ターゲット16fが設置される。ターゲットユニット60は、所定高さに配置され、設置されている位置まで水位が上昇し、水流入口62から水が流入すると、水中に沈降する。ターゲットユニット60のように、ターゲット16fが鉛直方向に移動する構造としてもよい。この場合もターゲット16fが水面にあるか、水中にあるかでターゲットの露出状態が変化し、画像上のターゲットの状態が、水位により変化する。
【0035】
次に、図8から図12を用いて、地表観測システム10の処理動作について説明する。図8は、地表観測方法の処理の一例を示すフローチャートである。図8に示す処理は、地表観測システム10の各部と、ターゲットを設置する管理者とが処理を実行することで実現できる。以下、地表観測システム10の処理として説明する。
【0036】
地表観測システム10は、ターゲットを設置する(ステップS12)。管理者が、地表の状態を評価する位置にターゲットを設置する。地表観測システム10は、ターゲットを含む画像を取得する(ステップS14)。地表観測システム10は、地表画像撮影装置12で、ターゲット16を設置した位置の画像を取得する。
【0037】
地表観測システム10は、ターゲットデータを更新する(ステップS16)。地表観測システム10は、解析装置14で、取得した画像に含まれるターゲットを抽出し、画像でのターゲットの状態、画像信号を、対応するターゲットの情報として、ターゲットデータ142に記憶させる。
【0038】
地表観測システム10は、地表確認指示があるかを判定する(ステップS18)。地表確認指示は、地震、台風、洪水等の自然災害が起きた場合や、積雪、雨、気温上昇等で、地表の状態は変化する可能性がある場合に、出力される。地表観測システム10は、地表確認指示がない(ステップS18でNo)と判定した場合、ステップS12に戻る。なお、ターゲット16を設置しない場合、ステップS14に戻ってもよい。また、ターゲットデータの更新を行わない場合、ステップS18に戻り、判定処理を繰り返してもよい。
【0039】
地表観測システム10は、地表確認指示がある(ステップS18でYes)と判定した場合、対象位置の画像を取得する(ステップS20)。地表観測システム10は、地表確認指示に含まれる位置の画像を地表画像撮影装置12で撮影する。地表確認指示に含まれる位置は、1つ限定されない。地表を確認したい領域を指定し、複数枚の画像を取得してもよい。また、対象位置は、連続した位置である必要もなく、複数の点在した位置の画像を取得してもよい。地表画像撮影装置12は、取得した画像を解析装置14に出力する。
【0040】
地表観測システム10は、対象位置のターゲットデータを取得する(ステップS22)。解析装置14は、地表確認指示に含まれる位置のターゲットの情報をターゲットデータ142から取得する。なお、ステップS20の処理とステップS22の処理は、順序が逆でも、並列して処理してもよい。
【0041】
次に、地表観測システム10は、画像とターゲットデータを比較する(ステップS24)。以下、図9を用いて、比較処理について説明する。図9は、解析装置の処理の一例を示すフローチャートである。図10から図12は、それぞれ解析方法の一例を示す説明図である。
【0042】
解析装置14は、解析部134で処理を実行することで、図9の処理を実現する。解析部134は、ターゲットデータに基づいて、ターゲットが含まれている画素を特定する(ステップS32)。具体的には、図10に示すように、画像200から、画素202を特定する。画素202は、ターゲットが少なくとも1つ含まれる領域である。解析装置14は、ターゲットの分布に基づいて、画像200から複数の画素202を特定してもよい。
【0043】
解析部134は、撮影の条件に基づいて補正処理を実行する(ステップS34)。解析部134は、ターゲットデータのターゲットの評価条件と、画像の撮影条件に基づいて、評価基準の補正処理を実行する。例えば、ターゲットデータが夜撮影した画像に基づいて作成した評価値で、画像が昼撮影した画像である場合、ターゲットデータを明るくする補正または、画像を暗くする補正を行う。
【0044】
次に、解析部134は、ターゲットデータと画像との比較を実行する(ステップS36)。補正処理した後の、ターゲットデータの画素と、画像の画素の情報を比較する。次に、解析部134は、信号強度の差に基づいて、状態を判定する(ステップS38)。例えば、ターゲットデータでは、図11に示すように、画素202に3つのターゲット210212、214が含まれており、評価対象の画像では、図12に示すように、画素202aに何らかの理由で、ターゲット214が隠れるまたは消失し、2つのターゲット210、212のみが残っていた場合、画素202の信号強度よりも画素202aの信号強度が低くなる。解析部134は、以上のように、ターゲットの変化に画素に生じる画素の信号強度の変化に基づいて、状態を判定する。
【0045】
地表観測システム10は、評価結果を出力し(ステップS26)、本処理を終了する。地表観測システム10は、ステップS12からステップS16の処理と、ステップS18からステップS26の処理を、別々の処理として実行してもよい。つまり、地表観測システム10は、ターゲットデータは、他の機器から取得し、ステップS18からステップS26の処理を実行してもよい。また、地表観測システム10は、ターゲットの設置が完了し、ターゲットの追加がない場合、ステップS14からの処理を実行する。
【0046】
以上のように、地表観測システム10は、以上のように、地表に複数のターゲット16を配置し、ターゲットを含む画像を取得して、ターゲットを含む領域の信号強度を比較することで、対象の位置の地表の変化を高精度に評価することができる。また、予め設置したターゲットに基づいて評価することで、信号強度の比較のみで状態の変化を把握することができる。つまり、画像に変化が生じている場合に、その変化が、自然災害で表面の状態が変化しているか、それ以外の理由かの判断を制御部が簡単に行うことができる。
【0047】
また、上述したように、ターゲットを地上に配置することで、浸水の状態、地滑りの発生、積雪等を検出することができる。また、ターゲットを水面に設置することで、水位を検出することができる。また、地表観測システム10は、ターゲット情報として設置位置の情報を備えていることで、1つの画像で複数の状況の変化、例えば、地滑りと浸水をそれぞれの位置で評価することができる。また、広域の画像のそれぞれの画素で評価を行うことができるため、広域の状態を迅速に把握することができる。
【0048】
また、本実施形態のように、画像の1つの画素に、複数のターゲットが配置されることで、信号強度の変化をより適切に検出することができる。なお、上記実施形態のように、ターゲットを1つの画素より小さくし、1つの画素に複数のターゲットが含まれる配置とすることが好ましいが、これに限定さない。計測精度は低下するが、1つの画素に1つのターゲットとなる分布で配置してもよい。
【0049】
上記実施形態では、ターゲットを含む画像を事前に取得し、評価したが、これに限定されない。解析装置14は、ターゲットの位置と、設置されているターゲットの反射面の情報に基づいて、ターゲットデータを作成してもよい。地表観測システム10は、規定したターゲットを用いることで、実際の画像データがない場合でも比較を行うことができる。
また、地表画像撮影装置12とは、異なる撮影装置で撮影したデータで、ターゲットデータを作成してもよい。これにより、より多くのターゲットデータを作成することができる。また、複数のシステムでターゲットデータを共有することもできる。また、地表画像撮影装置12は、画像の撮影条件に基づいて、類似する条件(撮影日時、地形、土地利用状況、撮影手段など)の画像データを特定し、類似する条件の画像データを差分に基づいて画像補正処理を行い、比較用の画像データを作成してもよい。
【0050】
また、上記実施形態では画像処理を行う場合として説明したが、ターゲットデータとして、種々の条件でのターゲットの信号強度の情報を含む場合、画像処理を行わず、比較対象のターゲットデータの情報を選択し、比較すればよい。
【符号の説明】
【0051】
10 地表観測システム
12 地表画像撮影装置
14 解析装置
16 ターゲット
18 地表
112 入力部
114 出力部
116 通信部
118 演算部
120 記憶部
130 画像取得部
132 ターゲット情報取得部
134 解析部
140 画像データ
142 ターゲットデータ
144 処理条件データ
146 解析プログラム
図1
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