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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161352
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】パレット用滑り止め部材
(51)【国際特許分類】
   B65D 19/38 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
B65D19/38 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066088
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】592160607
【氏名又は名称】日進ゴム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505090595
【氏名又は名称】株式会社佐野商会
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】和氣 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 則夫
【テーマコード(参考)】
3E063
【Fターム(参考)】
3E063AA02
3E063BA05
3E063CA22
3E063EE01
3E063GG10
(57)【要約】
【課題】
パレットの凹部や穴部から脱落しにくい圧入式のパレット用滑り止め部材を提供する。
【解決手段】
パレット20の穴部25に圧入することによって、パレット20の上面に載せた荷物がパレット20の上面に対して滑らないようにする圧入式のパレット用滑り止め部材10を、穴部25に圧入される圧入部11と、圧入部11における圧入方向手前側に設けられた滑り止め部12とを有するものとし、圧入部11及び滑り止め部12を含む略全体のJIS-A硬度を45度以上とするとともに、滑り止め部12に、複数の滑り止め突起12aを形成した。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットの凹部又は穴部に圧入することによって、パレットの上面に載せた荷物がパレットの上面に対して滑らないようにする圧入式のパレット用滑り止め部材であって、
前記凹部又は前記穴部に圧入される圧入部と、
圧入部における圧入方向手前側に設けられた滑り止め部と
を有し、
圧入部及び滑り止め部を含む略全体のJIS-A硬度が、45度以上とされるとともに、
滑り止め部に、複数の滑り止め突起が形成された
ことを特徴とする圧入式のパレット用滑り止め部材。
【請求項2】
圧入部及び滑り止め部を含む略全体が、ゴム若しくは熱可塑性エラストマー又はそれらと熱可塑性樹脂の混合体からなる弾性材料で形成された請求項1記載のパレット用滑り止め部材。
【請求項3】
前記弾性材料として、エチレンプロピレンジエンゴム若しくはニトリルゴムを用いた請求項2記載のパレット用滑り止め部材。
【請求項4】
前記弾性材料に、無機顔料が添加された請求項2又は3記載のパレット用滑り止め部材。
【請求項5】
滑り止め突起の水平断面がV字状を為し、
滑り止め突起が倒れにくくするための補強部が、滑り止め突起の付根部を囲った状態に設けられた請求項1~4いずれか記載のパレット用滑り止め部材。
【請求項6】
滑り止め突起の水平断面が為すV字の開き角度が、30~150°とされた請求項1~5いずれか記載のパレット用滑り止め部材。
【請求項7】
滑り止め突起における荷物に接触する面の表面粗さが30μm以下とされた請求項1~6いずれか記載のパレット用滑り止め部材。
【請求項8】
パレットの凹部又は穴部に圧入することによって、パレットに差し込んだリフトの爪の上面に対してパレットが滑らないようにする圧入式のパレット用滑り止め部材であって、
前記凹部又は前記穴部に圧入される圧入部と、
圧入部における圧入方向手前側に設けられた滑り止め部と
を有し、
圧入部及び滑り止め部を含む略全体のJIS-A硬度が、45~80度とされるとともに、
滑り止め部に、複数の滑り止め突起が形成された
ことを特徴とする圧入式のパレット用滑り止め部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を運搬する際等に用いられるパレットの凹部又は穴部に圧入することによって、パレットに対して荷物が滑らないようにするパレット用滑り止め部材に関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫等で荷役作業を行う際には、パレットを使用することが一般的となっている。パレットの側面には、フォークリフトやハンドリフトの爪を差し込むための差込口が設けられている。荷物をパレットの上面に載置しておくことによって、フォークリフトやハンドリフトを用いた荷役作業を効率的に行うことが可能になる。
【0003】
パレットは、木製のものが広く普及している。しかし、木製のパレットには、腐りやすいという欠点がある。また、表面がささくれ立った状態になりやすいという欠点もある。このため、近年には、樹脂製や金属製のパレットも普及し始めている。ところが、樹脂製や金属製のパレットは、木製のパレットと比較して表面が滑らかである。このため、パレットに載せた荷物がパレットの上面に対して滑りやすいという問題があった。
【0004】
ところで、これまでには、パレットに積載した荷物が滑らないようにするために、パレットに滑り止め部材(パレット用滑り止め部材)を装着することも行われている。一般的なパレット(平パレット)の上面には、複数の凹部や穴部が形成されているためか、パレット用滑り止め部材としては、その凹部や穴部に圧入するもの(以下において、「圧入式のパレット用滑り止め部材」と呼ぶことがある。)が多く提案されている(例えば、特許文献1~10を参照。)。圧入式のパレット用滑り止め部材は、摩擦係数の大きなゴムや樹脂で形成されたものが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭49-024837号公報
【特許文献2】実公昭52-003005号公報
【特許文献3】実公昭52-003008号公報
【特許文献4】実開昭48-052258号公報
【特許文献5】実公昭52-007003号公報
【特許文献6】実公昭56-037941号公報
【特許文献7】実公昭56-049880号公報
【特許文献8】実開昭56-109921号公報
【特許文献9】実開昭58-052044号公報
【特許文献10】特開昭59-199445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の圧入式のパレット用滑り止め部材は、容易に変形するため、それが圧入されていた凹部や穴部から脱落することがあった。また、従来の圧入式のパレット用滑り止め部材は、荷物の底面やパレットの上面が乾燥しているときには、所望の滑り止め効果を発揮できたとしても、荷物の底面やパレットの上面に水や油が付着した状態では、荷物がパレットの上面に対して滑るおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、パレットの凹部や穴部から脱落しにくい圧入式のパレット用滑り止め部材を提供するものである。また、荷物の底面やパレットの上面が乾燥しているときだけでなく、それらの面に水や油が付着しているときでも、優れた滑り止め効果を奏することのできる圧入式のパレット用滑り止め部材を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、
パレットの凹部又は穴部に圧入することによって、パレットの上面に載せた荷物がパレットの上面に対して滑らないようにする圧入式のパレット用滑り止め部材であって、
前記凹部又は前記穴部に圧入される圧入部と、
圧入部における圧入方向手前側に設けられた滑り止め部と
を有し、
圧入部及び滑り止め部を含む略全体のJIS-A硬度が、45度以上とされるとともに、
滑り止め部に、複数の滑り止め突起が形成された
ことを特徴とする圧入式のパレット用滑り止め部材
を提供することによって解決される。
【0009】
このように、パレット用滑り止め部材の略全体のJIS-A硬度を45度以上とすることによって、パレット用滑り止め部材を硬めにし、パレットの凹部又は穴部に圧入されたパレット用滑り止め部材がその凹部又は穴部から抜け出ないようにすることができる。このため、パレット用滑り止め部材の脱落や紛失を防ぐことができる。また、滑り止め部に複数の滑り止め突起を形成したことによって、荷物の底面やパレットの上面に水や油が付着しているときでも、パレット用滑り止め部材が優れた滑り止め効果を奏するようになる。
【0010】
本発明のパレット用滑り止め部材の略全体(圧入部及び滑り止め部を含む略全体)を形成する材料は、上記のJIS-A硬度となるのであれば、その種類を特に限定されないが、ゴム若しくは熱可塑性エラストマー又はそれらと熱可塑性樹脂の混合体からなる弾性材料で形成することが好ましい。
【0011】
前記弾性材料のうち、ゴム材料としては、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)若しくはニトリルゴム(NBR)を用いたものが例示される。これにより、パレット用滑り止め部材を、耐摩耗性や強度や耐油性に優れたものとすることができる。これらの材料には、スチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体(SBS)を添加することもできる。これにより、材料を射出成形しやすくなるし、ゴム材料の加硫時間を短縮することもできる。ゴム材料には、再生ゴムを利用することもできる。また、熱可塑性エラストマー(TPE)としては、オレフィン系TPEや、塩化ビニル系TPEや、ウレタン系TPE等が例示される。これらの熱可塑性エラストマー(TPE)は、成形性に優れるという利点を有している。さらに、前記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル(PVC)等を例示することができる。塩化ビニルを添加すると、パレット用滑り止め部材に、適度な硬度を付与できることに加えて、パレット用滑り止め部材の強度や耐久性をさらに高めることができる。
【0012】
前記弾性材料には、無機顔料を添加することも好ましい。無機顔料としては、カーボン、酸化亜鉛、酸化コバルト、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化クロム、硫酸モリブデン酸クロム酸鉛、炭酸カルシウム、及び硫化亜鉛等が例示される。というのも、パレット用滑り止め部材10を長期間に亘って使用(特に屋外で使用)していると、パレット用滑り止め部材10の表面が硬化して、所望の滑り止め機能が発揮されなくなるおそれがあるところ、上記の無機顔料を添加することによって、パレット用滑り止め部材の対候性を高め、パレット用滑り止め部材10が長期間に亘って所望の滑り止め機能を発揮できるようになる。無機顔料は、カーボン(カーボンブラック又はカーボンホワイト等)、優れた紫外線吸収能に優れるものを用いると特に好ましい。上記無機顔料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
本発明のパレット用滑り止め部材においては、滑り止め突起の形態も特に限定されない。しかし、荷物の底面やパレットの上面に水や油が付着している場合でも、パレット用滑り止め部材で優れた滑り止め効果が奏されるようにするためには、以下の形態を採用することが好ましい。すなわち、滑り止め突起の水平断面がV字状を為し、滑り止め突起が倒れにくくするための補強部を、滑り止め突起の付根部を囲った状態に設けた形態である。これにより、滑り止め突起における、荷物の底面に接触する面(以下、「滑り止め突起の先端面」と呼ぶことがある。)と、荷物の底面との間に、水や油が入り込みにくくすることが可能になる。加えて、上記の補強部を設けたことによって、滑り止め突起が倒れにくくなるため、その状態(水や油が入り込みにくい状態)を維持しやすくなる。
【0014】
この場合(滑り止め突起の水平断面をV字状とする場合)において、滑り止め突起の水平断面が為すV字の開き角度をどの程度とするかは、特に限定されない。V字の開き角度は、0°よりも大きく180°よりも小さい範囲で適宜設定することができる。ただし、V字の開き角度を小さくしすぎると、滑り止め突起がV字の横幅方向に倒れやすくなり、V字の開き角度を大きくしすぎると、滑り止め突起がV字の縦幅方向に倒れやすくなる。このため、滑り止め突起の水平断面が為すV字の開き角度は、30~150°の範囲で設定することが好ましい。
【0015】
本発明のパレット用滑り止め部材において、滑り止め突起における荷物に接触する面(先端面)の表面は、粗くてもよいが、この場合には、滑り止め突起の先端面と荷物の底面との間に、水や油が入り込みやすくなるおそれがある。また、滑り止め突起の先端面と荷物の底面との実質的な接触面積が小さくなり、滑り止め突起と荷物の底面との間に生ずる摩擦力を大きく確保しにくくなる。このため、滑り止め突起の先端面は、できるだけ滑らかにすることが好ましい。具体的には、滑り止め突起の先端面の表面粗さ(Ra)を30μm以下とすることが好ましい。
【0016】
ここまでは、パレットの上面に対する荷物の滑り防止について説明したが、パレットの滑りの問題は、パレットと、そのパレットに差し込んだリフトの爪との間でも同様に生じ得る。この問題は、
パレットの凹部又は穴部に圧入することによって、パレットに差し込んだリフトの爪の上面に対してパレットが滑らないようにする圧入式のパレット用滑り止め部材であって、
前記凹部又は前記穴部に圧入される圧入部と、
圧入部における圧入方向手前側に設けられた滑り止め部と
を有し、
圧入部及び滑り止め部を含む略全体のJIS-A硬度が、45度以上とされるとともに、
滑り止め部に、複数の滑り止め突起が形成された
ことを特徴とする圧入式のパレット用滑り止め部材
を提供することによって解決される。
使用箇所が異なること以外は、上述したパレット用滑り止め部材(パレットの上面に対する荷物の滑りを防止するパレット用滑り止め部材)と同様である。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によって、パレットの凹部や穴部から脱落しにくい圧入式のパレット用滑り止め部材を提供することが可能になる。また、荷物の底面やパレットの上面が乾燥しているときだけでなく、それらの面に水や油が付着しているときでも、優れた滑り止め効果を奏することのできる圧入式のパレット用滑り止め部材を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るパレット用滑り止め部材をパレットの穴部に取り付けている様子を示した斜視図である。
図2】本発明に係るパレット用滑り止め部材を示した斜視図である。
図3】本発明に係るパレット用滑り止め部材を示した平面図である。
図4】本発明に係るパレット用滑り止め部材を図3におけるX-X平面で切断した状態を示した断面図である。
図5】本発明に係るパレット用滑り止め部材をパレットの穴部に取り付けた様子を、図3におけるY-Y平面に相当する平面で切断した状態で示した断面図である。
図6】パレットの上面に対する荷物の滑りを防止する際の、本発明に係るパレット用滑り止め部材の配置例を示した平面図である。
図7】リフトの爪に対するパレットの滑りを防止する際の、本発明に係るパレット用滑り止め部材の配置例を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のパレット用滑り止め部材の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。以下で述べる構成は、飽くまで好適な実施形態に過ぎず、本発明のパレット用滑り止め部材の技術的範囲は、以下で述べる構成に限定されない。本発明のパレット用滑り止め部材には、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。

【0020】
1.パレット用滑り止め部材の使用態様
図1は、本発明のパレット用滑り止め部材10をパレット20の穴部21に取り付けている様子を示した斜視図である。倉庫等で荷役作業を行う際には、図1に示すようなパレット20の上面に荷物(図示省略)を載せた状態で行うことが一般的となっている。このパレット20は、パレット20の上面を形成する天板部21と、パレット20の下面(底面)を形成する底板部22と、天板部21及び底板部22の周縁同士を接続する側端面23とを有する四角板状を為している。この種のパレット20は、「平パレット」とも呼ばれる。パレット20には、底板部22を有さず、底面(特に、差込口24の下側の面)が解放されたタイプもある。
【0021】
パレット20の側端面23には、フォークリフト(図示省略)やハンドリフト(図示省略)等のリフトの爪を差し込むための差込口24が設けられている。リフトの爪は、通常、左右一対で設けられているため、それを差し込むための差込口24も、通常、左右一対で設けられる。図1に示したパレット20では、対向する2組(4面)の側端面23のうち、1組(2面)の側端面23のみに、差込口24を設けているが、2組の側端面23の全てに差込口24を設けることもできる。
【0022】
図1に示すパレット20の上面(天板部21の上面)に荷物を載せた状態としておくことによって、荷物の下側(パレット20の差込口24)に、リフトの爪を容易に差し込むことができるようになる。このため、倉庫等における荷役作業を効率的に行うことが可能になる。
【0023】
ところが、既に述べたように、近年には、パレット20が、木製のものから樹脂製や金属製のものに置き換えられることが多くなってきている。図1に示したパレット20も樹脂製となっている。ところが、樹脂製や金属製のパレット20は、木製のものと比較して、表面の摩擦が小さい。このため、樹脂製や金属製のパレット20では、パレット20の上面に対して荷物が滑りやすく、パレット20に荷物を載せて運搬しているときに、荷物がズレ動いたり、荷物が倒れたりするおそれがある。
【0024】
この点、本発明のパレット用滑り止め部材10は、図1に示すように、パレット20の天板部21に取り付けることで、パレット20の上面に載せた荷物がパレット20の上面に対して滑らないようにするためのものとなっている。パレット20の天板部21には、肉抜きや排液を行うために、複数の凹部や穴部(図1で黒く塗り潰した部分。同図のパレット20では穴部)が設けられているところ、本発明に係るパレット用滑り止め部材10は、その凹部や穴部に圧入することで取り付ける圧入式のものとなっている。図1では、図示の便宜上、1箇所の穴部25のみにパレット用滑り止め部材10を取り付けているが、実際には、複数個所の穴部25にパレット用滑り止め部材10が取り付けられる。

【0025】
2.パレット用滑り止め部材の構成
図2は、本発明のパレット用滑り止め部材10を示した斜視図である。図3は、本発明のパレット用滑り止め部材10を示した平面図である。図4は、本発明のパレット用滑り止め部材10を図3におけるX-X平面で切断した状態を示した断面図である。図5は、本発明のパレット用滑り止め部材10をパレット20の穴部25に取り付けた様子を、図3におけるY-Y平面に相当する平面で切断した状態で示した断面図である。
【0026】
本発明のパレット用滑り止め部材10は、図2に示すように、圧入部11と、滑り止め部12とを備えている。パレット用滑り止め部材10は、別々に成形された圧入部11と滑り止め部12とを後から一体化させたものであってもよいが、本実施形態においては、圧入部11と滑り止め部12とを一体的に成形したものとなっている。これにより、パレット用滑り止め部材10を強度に優れ、破損しにくいものとすることができる。

【0027】
2.1 圧入部
圧入部11は、図5に示すように、パレット10の穴部25(又は凹部)に圧入するための部分となっている。本実施形態においては、圧入部11の先端部(圧入方向奥側の端部)に、掛止部11aを設けている。この掛止部11aは、パレット用滑り止め部材10を穴部25に圧入した際に、穴部25の奥側で引っ掛かることで、パレット用滑り止め部材10が穴部25から抜け出にくくするための部分となっている。
【0028】
ただし、圧入部11に掛止部11aを設けたとしても、圧入部11が柔らかく簡単に変形してしまうと、圧入部11が穴部25から抜け出るおそれがある。この点、本発明のパレット用滑り止め部材10では、圧入部11及び滑り止め部12を含む略全体を適度に硬くしている。具体的には、圧入部11及び滑り止め部12を含む略全体のJIS-A硬度を45度以上に設定している。このため、パレット20の穴部25(又は凹部)に圧入されたパレット用滑り止め部材10がその穴部25(又は凹部)から抜け出ないようになっている。したがって、パレット用滑り止め部材10の脱落や紛失を防ぐことができる。
【0029】
パレット用滑り止め部材10の硬度(圧入部11及び滑り止め部12を含む略全体のJIS-A硬度。以下同じ。)は、45度以上であれば、特に限定されない。しかし、圧入部11をさらに抜け出にくいものとするためには、パレット用滑り止め部材10の硬度は、50度以上とすることが好ましい。パレット用滑り止め部材10の硬度は、55度以上とすることがより好ましく、60度以上とすることがさらに好ましい。
【0030】
ただし、パレット用滑り止め部材10を硬くしすぎると、パレット20の穴部25(又は凹部)に対してパレット用滑り止め部材10を圧入すること自体が困難になるおそれがある。また、パレット用滑り止め部材10の摩擦係数を大きく確保しにくくなるおそれもある。このため、パレット用滑り止め部材10の硬度は、通常、80度以下とされる。パレット用滑り止め部材10の硬度は、70度以下とすることが好ましく、65度以下とすることがより好ましい。本実施形態のパレット用滑り止め部材10の硬度は、約60度となっている。
【0031】
既に述べたように、本発明のパレット用滑り止め部材10は、圧入部11及び滑り止め部12を含む略全体を、適度に硬く(JIS-A硬度を45度以上に設定)している。このような硬さを有するパレット用滑り止め部材10は、ゴム若しくは熱可塑性エラストマー又はそれらと熱可塑性樹脂の混合体からなる弾性材料で成形することによって得ることができる。このうち、ゴムとしては、天然ゴム(NR)のほか、ニトリルブタジエンゴム(NBR)や、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)や、ブタジエンゴム(BR)や、スチレンブタジエンゴム(SBR)や、イソプレンゴム(IR)や、ブチルゴム(IIR)や、クロロプレンゴム(CR)や、アクリルゴム(ACM)や、ウレタンゴム(U)やシリコーンゴム(SI)やフッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムが例示される。一方、樹脂としては、塩化ビニル(PVC)や、ポリスチレン(PS)等が例示される。
【0032】
本実施形態においては、パレット用滑り止め部材10に配合するゴムとして、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を採用している。エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)は、パレット用滑り止め部材10として必要な耐摩耗性や強度や耐油性を備えながらも、耐候性に非常に優れているため、パレット用滑り止め部材10に配合するゴムとして好適である。また、本実施形態には、上記のエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)に、無機顔料としてカーボンを添加している。これにより、パレット用滑り止め部材10が紫外線を浴びても劣化しにくくすることができる。

【0033】
2.2 滑り止め部
一方、滑り止め部12は、圧入部11における基端側(圧入方向手前側)に設けられており、荷物に接触することで、パレット20に対して荷物が滑らないようにするための部分となっている。また、滑り止め部12は、圧入部11よりも大きな水平断面を有している。このため、パレット20の穴部25(図1)にパレット用滑り止め部材10の圧入部11を圧入する際には、パレット20の上面に対して滑り止め部12が当たることで、圧入部11がそれ以上穴部25の奥深くまで入らないようになっている。
【0034】
この滑り止め部12には、図2~4に示すように、複数の滑り止め突起12aが形成されている。これにより、荷物の底面やパレット20の上面に、水や油が付着している場合であっても、その水や油を滑り止め突起12aの隙間に逃し、その水や油が滑り止め突起12aの先端面と荷物の底面との間に入り込まないようにすることが可能となっている。このため、荷物の底面やパレット20の上面に水や油が付着しているときでも、パレット用滑り止め部材10が優れた滑り止め効果を発揮できるようになっている。
【0035】
ただし、上記の滑り止め効果は、滑り止め突起12aが簡単に倒伏するようでは、安定して発揮することができない。この点、本発明のパレット用滑り止め部材10では、図2及び図3に示すように、滑り止め突起12を平面視V字状に形成しており、その水平断面もV字状を為すようにしている。これにより、滑り止め突起12を横方向(V字の横幅方向)及び縦方向(V字の縦幅方向)のいずれにも倒れにくくすることができる。加えて、図2~5に示すように、滑り止め突起12が倒れにくくするための補強部12bを、滑り止め突起12の付根部を囲った状態に設けている。これらの工夫によって、滑り止め突起12aが倒れにくくしており、滑り止め突起12aが所望の滑り止め効果を安定して発揮できるようになっている。また、補強部12bは、滑り止め突起12aの付根部にゴミ等が溜まりにくくする機能も発揮する。
【0036】
滑り止め突起12aが形成するV字の開き角度θ(図3)は、0°よりも大きく180°よりも小さければ特に限定されない。しかし、V字の開き角度θが小さすぎると、滑り止め突起12aがV字の横幅方向に倒れやすくなるおそれがある。このため、V字の開き角度θは、30°以上とすることが好ましい。V字の開き角度θは、45°以上とすることがより好ましく、60°以上とすることがさらに好ましく、80°以上とすることが最適である。
【0037】
ただし、滑り止め突起12aが形成するV字の開き角度θを大きくしすぎると、滑り止め突起12aがV字の縦幅方向に倒れやすくなるおそれがある。このため、V字の開き角度θは、150°以下とすることが好ましい。V字の開き角度θは、140°以下とすることがより好ましく、130°以下とすることがさらに好ましく、120°以下とすることが最適である。本実施形態においては、滑り止め突起12aが形成するV字の開き角度θを110°に設定している。
【0038】
滑り止め突起12aの幅W図3)は、特に限定されない。しかし、滑り止め突起12aの幅Wを狭くしすぎると、滑り止め突起12aが倒れやすくなるおそれがある。このため、滑り止め突起12aの幅W(場所によって幅Wが異なる場合には、その最小値。以下、幅Wの下限値について同じ。)は、1mm以上とすることが好ましい。滑り止め突起12aの幅Wは、1.5mm以上とすることがより好ましく、2mm以上とすることがさらに好ましい。
【0039】
ただし、滑り止め突起12aの幅Wを広くしすぎると、滑り止め突起12aの先端面と荷物の底面との間に水や油が存在する場合に、その水や油を逃しにくくなるおそれがある。このため、滑り止め突起12aの幅W(場所によって幅Wが異なる場合には、その最大値。以下、幅Wの上限値について同じ。)は、20mm以下とすることが好ましい。滑り止め突起12aの幅Wは、10mm以下とすることがより好ましく、5mm以下とすることがさらに好ましい。本実施形態においては、滑り止め突起12aの幅Wを3mmに設定している。
【0040】
滑り止め突起12aにおける補強部12bの幅W図3)も、特に限定されない。しかし、補強部12bの幅Wを狭くしすぎると、補強部12bを設ける意義が低下する。このため、補強部12bの幅Wは、通常、0.1mm以上とされる。補強部12bの幅Wは、0.3mm以上とすることが好ましく、0.5mm以上とすることがより好ましい。
【0041】
ただし、補強部12bの幅Wを広くしすぎると、複数の滑り止め突起12bを密に配置できなくなり、滑り止め突起12による滑り止め効果が奏されにくくなるおそれがある。このため、補強部12bの幅Wは、通常、5mm以下とされる。補強部12bの幅Wは、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。本実施形態においては、補強部12bの幅Wを1mmに設定している。
【0042】
隣り合う滑り止め突起12aの間に形成される隙間の幅W図3)も、特に限定されない。しかし、隙間の幅Wを狭くしすぎると、荷物と滑り止め部材12との間に水や油が入ったときに、水や油がその隙間を通じて逃げにくくなる。加えて、その隙間にゴミ等が溜まりやすくなる。このため、隙間の幅W(場所によって幅Wが異なる場合には、その最小値。以下、幅Wの下限値について同じ。)は、0.5mm以上とすることが好ましい。隙間の幅Wは、1mm以上とすることがより好ましく、1.5mm以上とすることがさらに好ましい。
【0043】
ただし、隙間の幅Wを広くしすぎると、複数の滑り止め突起12bを密に配置できなくなり、滑り止め突起12による滑り止め効果が奏されにくくなるおそれがある。このため、隙間の幅W(場所によって幅Wが異なる場合には、その最大値。以下、幅Wの上限値について同じ。)は、通常、10mm以下とされる。隙間の幅Wは、7mm以下とすることが好ましく、5mm以下とすることがより好ましい。本実施形態においては、隙間の幅Wを2~3mmに設定している。
【0044】
さらに、滑り止め突起12aの高さH図5)も、特に限定されない。しかし、滑り止め突起12aを低くしすぎると、荷物と滑り止め部材12との間に水や油が入ったときに、水や油がその隙間を通じて逃げにくくなる。加えて、滑り止め突起12aが僅かに摩耗しただけでなくなってしまう。このため、滑り止め突起12aの高さHは、0.3m以上とすることが好ましい。滑り止め突起12aの高さHは、0.5mm以上とすることがより好ましく、0.7mm以上とすることがさらに好ましい。
【0045】
ただし、滑り止め突起12aを高くしすぎると、滑り止め突起12aが倒れやすくなるおそれがある。加えて、隣り合う滑り止め突起12aの隙間にゴミ等が溜まりやすくなる。このため、滑り止め突起12aの高さHは、5mm以下とすることが好ましい。滑り止め突起12aの高さHは、4mm以下とすることがより好ましく、3mm以下とすることがさらに好ましい。本実施形態においては、滑り止め突起12aの高さHを1~2mmの範囲で設定しており、この高さHの凡そ半分(高さHの0.3~0.7倍の範囲)が補強部12bで補強されるようにしている。
【0046】
滑り止め突起12aの先端面は、粗くてもよいが、この場合には、滑り止め突起12aの先端面と荷物の底面との間に、水や油が入り込みやすくなるおそれがある。また、滑り止め突起12aの先端面と荷物の底面との実質的な接触面積が小さくなり、滑り止め突起12aと荷物の底面との間に生ずる摩擦力を大きく確保しにくくなるおそれもある。このため、滑り止め突起12aの先端面の表面粗さ(Ra)は、30μm以下とすることが好ましい。滑り止め突起12aの先端面の表面粗さ(Ra)は、20μm以下とすることがより好ましく、10μm以下とすることがさらに好ましい。
【0047】
滑り止め部12に設ける滑り止め突起12aの個数は、2個以上であれば特に限定されない。しかし、滑り止め突起12aの数が少なすぎると、所望の滑り止め効果が奏されにくくなるおそれがある。このため、滑り止め突起12aの数は、3個以上とすることが好ましい。滑り止め突起12aの数は、4個以上とすることがより好ましく、5個以上とすることがさらに好ましい。
【0048】
ただし、滑り止め突起12aの数を多くしすぎると、必然的に、パレット用滑り止め部材10の寸法が大きくなり、パレット用滑り止め部材10の使い勝手が悪くなるおそれがある。このため、滑り止め突起12aの数は、通常、30個以下とされる。滑り止め突起12aの数は、20個以下であるとより好ましい。本実施形態においては、図2に示すように、6個の滑り止め用突起12aを1列に設けている。滑り止め用突起12aは、複数列で設けることもできる。

【0049】
3.パレット用滑り止め部材の配置
本発明のパレット用滑り止め部材10は、パレット20の凹部又は穴部に圧入することによって、パレット20の上面に載せた荷物がパレット20の上面に対して滑らないようにするものである。このため、その用途で本発明のパレット用滑り止め部材10を用いる場合には、パレット20の上面にバランスよく滑り止め部材10を配置することが好ましい。例えば、図6において網掛けハッチングで示した部分(穴部25)にパレット用滑り止め部材10を配置すると、パレット20の上面に載せた荷物の滑りをバランスよく帽子することが可能になる。図6は、パレット20の上面に対する荷物(図示省略)の滑りを防止する際の、パレット用滑り止め部材10の配置例を示した平面図である。この場合において、パレット用滑り止め部材10は、その滑り止め突起12a(図2)の先端面が上側を向く状態で、パレット20の天板部21の上面側から下向きに圧入される。
【0050】
また、パレット20の滑りの問題は、パレット20と、そのパレット20に差し込んだリフトの爪との間でも同様に生じ得る。この問題は、本発明のパレット用滑り止め部材10を、その滑り止め突起12a(図2)の先端面が下側を向く状態で、パレット20の天板部21の下面側から上向きに圧入される。この場合においては、天板部21におけるリフトの爪が重なり得る箇所に、パレット用滑り止め部材10をバランスよく配置することが好ましい。例えば、図7において網掛けハッチングで示した部分(穴部25)にパレット用滑り止め部材10を配置すると、リフトの爪に対するパレット20の滑りをバランスよく防止することが可能になる。図7は、リフトの爪(図示省略)に対するパレット20の滑りを防止する際の、パレット用滑り止め部材10の配置例を示した平面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 パレット用滑り止め部材
11 圧入部
11a 掛止部
12 滑り止め部
12a 滑り止め突起
12b 補強部
20 パレット
21 天板部
22 底板部
23 側端面
24 差込口
25 穴部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7