(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161365
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】土木構造体
(51)【国際特許分類】
E02B 7/02 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
E02B7/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066115
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
(57)【要約】
【課題】 資材数が少なく、手作業のみで水平/鉛直方向で各資材を強固に固定できる高クリープ特性の高空隙率の土木構造体を提供する。
【解決手段】
複数の水平部材を上下に配置したコンクリート製の柱部材により相互に離間させた土木構造体であって、前記水平部材は、複数の交差部で相欠継式に交差配置された複数のコンクリート製の梁部材で形成され、前記柱部材は前記交差部を収容可能な平面形状を有する凹部を有し、前記交差部の上部が上の前記柱部材の凹部に収容され、前記交差部の下部が下の前記柱部材の凹部に収容された、土木構造体とした。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の水平部材を上下に配置したコンクリート製の柱部材により相互に離間させた土木構造体であって、
前記水平部材は、複数の交差部で相欠継式に交差配置された複数のコンクリート製の梁部材で形成され、
前記柱部材は前記交差部を収容可能な平面形状を有する凹部を有し、
前記交差部の上部が上の前記柱部材の凹部に収容され、
前記交差部の下部が下の前記柱部材の凹部に収容された、土木構造体。
【請求項2】
前記交差部の高さが前記凹部の深さよりも大きい、請求項1の土木構造体。
【請求項3】
前記梁部材は前面に嵌合部を有し、
前記交差部は前記前面を対向させて交差配置した一対の前記梁部材を前記嵌合部で相互に嵌合させることで形成される、請求項1の土木構造体。
【請求項4】
長手方向に配列した複数の前記梁部材が嵌め合い式の水平接続部で接続されている、請求項1の土木構造体。
【請求項5】
前記柱部材は上半部と下半部と臍体を有し、
前記上半部と下半部の底面の臍穴に前記臍体を挿入することで前記柱部材が形成される、請求項1の土木構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として土木工事等で使用される土木構造体(骨組構造体)に関し、特に、貯水槽やダム構造、盛土等の形成に有用な土木構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
所定形状のブロックを多数積み上げた高空隙率の土木構造体を窪地に設置し、土で埋戻すことで、雨水の貯留空間を形成した貯留施設が知られている(特許文献1~3)。同様の土木構造体は盛土等の形成にも利用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-211316号公報
【特許文献2】特開2010-048010号公報
【特許文献3】特開2018-131794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の土木構造体はプラスチックのブロックで形成されており、上方土圧/側方土圧への耐性に問題があり、クリープ変形する問題があった。このようなブロックをコンクリートで形成すると施工等で問題があった。出願人はこれまでコンクリート等の剛性材料の土木構造体を検討してきたが、施工容易で強度が一層高い土木構造体が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願には、
複数の水平部材を上下に配置したコンクリート製の柱部材により相互に離間させた土木構造体であって、
前記水平部材は、複数の交差部で相欠継式に交差配置された複数のコンクリート製の梁部材で形成され、
前記柱部材は前記交差部を収容可能な平面形状を有する凹部を有し、
前記交差部の上部が上の前記柱部材の凹部に収容され、
前記交差部の下部が下の前記柱部材の凹部に収容された、土木構造体が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の1実施形態の土木構造体10を用いた貯留槽2を示す。
【
図2】例示的な梁部材30を示す。(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は正面図。
【
図3】嵌合部31による梁部材30の接続方法を示す。
【
図4】水平接続部32による梁部材30の接続方法を示す。
【
図6】例示的な柱部材40を示す。(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は平面図。
【
図7】水平部材20と柱部材40の接続方法を示す。
【
図8】例示的な天板部材50を示す。(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は斜視図。
【
図9】例示的な底板部材60を示す。(a)は側面図、(b)は平面図。
【
図10】例示的な外枠部材70を示す。(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は斜視図。
【
図11】土木構造体10を側面から見たときの各部材の位置関係を示す。
【
図12】変形形態の柱部材40Aを示す。(a)は平面図、(b)は側断面図、(c)は底面図、(d)は分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、本発明の1実施形態の土木構造体10を示す。土木構造体10を窪地1に設置して土で埋め戻すことで雨水等の貯留槽2を形成できる。土木構造体10を路面下や宅地下に設置して盛土として使用し、又は、ダム底に設置してダム構造を形成してもよい。土木構造体10は陥没防止等のための天板5や側部土砂の進入防止のための壁板7を有し得る。土木構造体10は地上に設置する地上構造体としても使用可能である。
【0008】
土木構造体10は、複数の水平部材20とその上下の複数の柱部材40を有し、水平部材20は柱部材40により上下に離間される。水平部材20は複数の梁部材30で形成され得る。水平部材20(梁部材30)と柱部材40、あるいはさらに天板5、壁板7は、コンクリート製がよい。コンクリート製は鉄筋コンクリート等の剛性材料を含む。
【0009】
図2は、例示的な梁部材30(例えば、1100×100×60mm)を示す。梁部材30は、梁部材30の前面側に形成した凹部(例えば、60mm)等の形状の嵌合部31と、梁部材30の両端に位置する凹部等の形状の水平接続部32a,32bを有する。嵌合部31は、1つ又は3つ以上でもよいが、施工性等から長手方向に対称に2つ設けるのがよい。
【0010】
図3は、嵌合部31による梁部材30の接続方法を示す。2つの梁部材30(30U,30L)の前面同士を対向させて交差配置し(
図3(a))、両梁部材30の嵌合部31を嵌合させることで梁部材30を井桁状にして2つの梁部材30を交差接続できる(
図3(b))。水平部材20の各嵌合部31で同様の交差接続を行うことで複数の梁部材30が井桁状/格子状に配置される。各交差した部分を交差部21という。図の交差接続は十字相欠継式であり、交差部21は平面視十字の形状を有する。交差及び/又は十字の角度は任意であり90度に限らない。
【0011】
図4は、水平接続部32による梁部材30の接続方法を示す。梁部材30a,30b,30c・・・を長手方向に並べ、一の梁部材30aの水平接続部32bとその隣の梁部材30bの水平接続部32aを嵌め合い式で接続して複数の梁部材30を連結できる。
【0012】
図5は水平部材20を示す。
図3のような梁部材30の上下(Z方向)接続と
図4のような水平(XY方向)接続を組み合わせることで水平部材20が形成できる。
図5では、説明の目的で、縦(Y)方向の梁部材30Lを灰色で示した。
図3,4の接続の順序は任意である。
【0013】
図6は例示的な柱部材40(例えば、450×120×120mm)を示す。柱部材40は上下端に交差部21を収容可能な平面形状(例えば、十字形状)を有する凹部41を有する。例えば、平面形状が相似でサイズが同じか凹部41が大きければ収容できる。交差部21の高さ(本例では
図2のH)は凹部41の深さより大きいのがよい。本例では、平面視方形の柱部材40の上下端の四隅に交差部21の高さよりも低い突起42があり、突起42の間に凹部41が形成されている。
【0014】
図7は、水平部材20と柱部材40の接続方法を示す。水平部材20の各交差部21の上下に柱部材40を配置し(
図7)、交差部21の上半分を上の柱部材40Uの凹部41に挿入し、交差部21の下半分を下の柱部材40Uの凹部41に挿入することで水平部材20と柱部材40が接続される(
図11参照)。このような接続により、各部材30,40を鉛直水平斜め方向で安定に強固に位置決めできる。
【0015】
図8は、例示的な天板部材50を示す。天板部材50は、最上段の水平部材20を収容可能な溝51を有するとよい。天板部材50の一辺の長さを梁部材30の有効長さの1/2の正方形とし、天板部材50と交差部21の位置を一致させて敷き詰めることで天板5を形成するとよい(5,11参照)。
【0016】
図9は、例示的な底板部材60を示す。底板部材60は、最下段の水平部材20を収容可能な溝61を有するとよい。底板部材60は天板部材50より小さい外形を有するだけで天板部材50と同様の形状である。底板部材60と交差部21の位置を一致させて配置するとよい。底板部材60の間に隙間が空いて地面1との間にスペースが確保できる(
図11参照)ので槽底の泥等を流すことができる。
【0017】
図10は、例示的な外枠部材70を示す。外枠部材70は、梁部材30の側面に嵌合できる凹部71を有するとよい。
【0018】
図11は土木構造体10を側面から見たときの各部材の位置関係を示す。まず底板部材60を配置し、その上に柱部材40→水平部材20→柱部材・・・水平部材20と組み立て、最後に天板部材50を配置する。梁部材30が上下及び水平方向に間隔を開けて配列されて高空隙率の空間が形成される。土木構造体10の外周やそれ以外の適宜箇所に外枠部材70が配置されて土木構造体10の強度が向上する。土木構造体10の最外周には壁板7が配置される。
【0019】
本発明の土木構造体10は、少数種類の資材でしかも手作業のみで強固かつ高クリープ特性の高空隙率の構造体を形成可能であり、極めて簡易にかつ強固に水平部材20と柱部材40の水平/鉛直方向の強固な位置固定が可能であり、施工容易かつ低廉である。
【0020】
図12は変形形態の柱部材40Aを示す。柱部材40Aは臍穴44を有する同形の上半部43Uと下半部43Lと臍体45を有し、両臍穴44に臍体45に嵌合させて半柱部材43U,43Uを接続することで柱部材40と同様の柱部材40Aが形成できる。軽量化により資材取扱が容易になる。
【0021】
上記実施形態に記載した土木構造体10やその要素の寸法、形状、配置、個数、材料等は例示であり、他の態様も可能である。
【符号の説明】
【0022】
1・・・窪地
2・・・貯留槽
5・・・天板
7・・・壁板
10・・・土木構造体
20・・・水平部材
21・・・交差部
30・・・柱部材
30・・・梁部材
31・・・嵌合部
32・・・水平接続部
40,40A・・・柱部材
41・・・凹部
42・・・突起
43U,43U・・・半柱部材
44・・・臍穴
45・・・臍体
50・・・天板部材
51・・・溝
60・・・底板部材
61・・・溝
70・・・外枠部材
71・・・凹部