(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161410
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】脱臭用フィルター積層体
(51)【国際特許分類】
A61L 9/014 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
A61L9/014
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066210
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】591025772
【氏名又は名称】株式会社 イトウ
(74)【代理人】
【識別番号】100142217
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 宜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100119367
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 理
(72)【発明者】
【氏名】三木 慎也
(72)【発明者】
【氏名】樫野 真
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180CC04
4C180CC13
4C180CC15
4C180EA14X
4C180HH05
4C180JJ01
4C180JJ07
(57)【要約】
【課題】脱臭性能の高い脱臭用フィルター積層体を提供する。
【解決手段】粒状の炭又は粒状の活性炭からなる脱臭部材11aを有するフィルター部11と、積層される複数のフィルター部11の間に介設され、フィルター部11間に隙間を設ける第二ハニカム構造体12とを備え、フィルター部11は、複数の中空柱体を側面部同士が接するように連接してなる第一ハニカム構造体11bと、通気性を有する材料からなり、脱臭部材11aが第一ハニカム構造体11bの中空柱体内部に配されるよう脱臭部材11a及び第一ハニカム構造体11bを内包する第一包装体11cとを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の炭又は粒状の活性炭からなる脱臭部材を有するフィルター部と、
積層される複数の前記フィルター部の間に介設され、該フィルター部間に隙間を設けるスペーサー部と、
を備え、
前記フィルター部は、
複数の中空柱体を側面部同士が接するように連接してなる第一ハニカム構造体と、
通気性を有する材料からなり、前記脱臭部材が前記第一ハニカム構造体の中空柱体内部に配されるよう前記脱臭部材及び第一ハニカム構造体を内包する第一包装体と、
を有する脱臭用フィルター積層体。
【請求項2】
請求項1に記載の脱臭用フィルター積層体であって、
前記スペーサー部は、
複数の中空柱体を側面部同士が接するように連接してなる第二ハニカム構造体
を有する脱臭用フィルター積層体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の脱臭用フィルター積層体であって、さらに、
前記フィルター部及び前記スペーサー部を内包する第二包装体を備える脱臭用フィルター積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気成分を吸着し、脱臭を行う脱臭用フィルター積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭(特に活性炭)は高い脱臭効果があることが知られている。炭は多くの細孔を有する多孔質材料であり、その表面積は1gにつき200m2~400m2と言われている。これにより、炭は強い分子間力によって臭い物質を吸着し、脱臭効果を奏する。このため、特許文献1や特許文献2に示すような、炭の脱臭効果を利用した様々な脱臭装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、活性炭と銅イオンが主のフィルターと、金属触媒と吸着剤が主のフィルターを直列に並べて設けた脱臭装置の技術が開示されている。また、特許文献2では、脱臭材を含む2以上の脱臭フィルターを備える脱臭装置の技術が開示されている。これらの技術によると、臭い物質を素早く除去し、快適な環境を作り出すことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-218636号公報
【特許文献2】特開2016-043038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら前述の技術は、炭を用いたフィルターと炭以外を用いたフィルターを複合的に用いることで脱臭効果を高めた技術であって、炭を用いたフィルター自体の脱臭効果を高めるような方法は検討されていない。
【0006】
本発明は、従来のこのような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的の一は、脱臭性能の高い脱臭用フィルター積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明の第1の側面に係る脱臭用フィルター積層体は、粒状の炭又は粒状の活性炭からなる脱臭部材を有するフィルター部と、積層される複数の前記フィルター部の間に介設され、該フィルター部間に隙間を設けるスペーサー部とを備え、前記フィルター部は、複数の中空柱体を側面部同士が接するように連接してなる第一ハニカム構造体と、通気性を有する材料からなり、前記脱臭部材が前記第一ハニカム構造体の中空柱体内部に配されるよう前記脱臭部材及び第一ハニカム構造体を内包する第一包装体とを有することができる。前記構成によれば、フィルター部間に隙間が設けられることによってフィルター部を通過する空気の量が増え、脱臭効果を高めることができる。
【0008】
また、本発明の第2の側面に係る脱臭用フィルター積層体は、前記スペーサー部が複数の中空柱体を側面部同士が接するように連接してなる第二ハニカム構造体を有することができる。前記構成によれば、ハニカム構造体を用いてフィルター部間に隙間を設けることができる。また、第一ハニカム構造体及び第二ハニカム構造体に同一のハニカム構造体を用いることもできる。
【0009】
さらにまた、本発明の第3の側面に係る脱臭用フィルター積層体は、前記フィルター部及び前記スペーサー部を内包する第二包装体を備えることができる。前記構成によれば、複数のフィルター部とスペーサー部とを一部材に纏めることができるので脱臭装置への着脱を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る脱臭用フィルター積層体の模式図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る脱臭用フィルター積層体を適用した脱臭装置の模式図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係る脱臭用フィルター積層体を適用した脱臭装置の内部構造を説明する模式図である。
【
図4】本発明の一実施の形態に係る脱臭用フィルター積層体を構成するフィルター部の模式図である。
【
図6】検証実験の測定条件を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明はそれらを以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(脱臭用フィルター積層体1)
【0012】
本発明の一実施の形態に係る脱臭用フィルター積層体1について、
図1~
図7に基づいて説明する。
【0013】
脱臭用フィルター積層体1は、
図1に示すように3つのフィルター部11、2つの第二ハニカム構造体12(特許請求の範囲における「スペーサー部」及び「第二ハニカム構造体」の一例に対応する。)及び1つの第二包装体13とからなり、
図2及び
図3に示すように筐体2及びファン3と組み合わされて脱臭装置を形成して使用される。各部材について以下で説明する。
(フィルター部11)
【0014】
フィルター部11は、
図4に示すように脱臭部材11a、第一ハニカム構造体11b及び第一包装体11cとで構成される部材である。
<脱臭部材11a>
【0015】
脱臭部材11aは、
図4に示すように粒状の炭(活性炭が好ましい。)である。炭は多くの細孔を有する多孔質材料であり、表面積が大きいという特徴を有する。本発明にかかる脱臭部材11aは、このような炭を粒状にすることでさらに表面積を大きくしている。これにより、脱臭部材11aは強い分子間力によって臭い物質を吸着し、効率的に脱臭することができる。
【0016】
なお、脱臭部材11aは前述の態様に限定されず、炭以外の脱臭効果を有する材料を混合した物であってもよい。また、炭の粒度は特に限定されないが、小さいものの方が全体の表面積が大きくなり、脱臭効果が高まると共に、フィルター部11の通気性が高まる(圧力損失が低減する)ので好ましい。さらにまた、フィルター部11に用いられる脱臭部材11aの量は特に限定されない。脱臭部材11aの量を増やすとフィルター部11の脱臭効果が持続する期間が長くなり、脱臭部材11aの量を減らすとフィルター部11の通気性が高まるので、用途に合わせて適宜調整すればよい。
<第一ハニカム構造体11b>
【0017】
第一ハニカム構造体11bは、
図4に示すように複数の中空円柱体を側面部同士が接するように連接してハニカム(ここでいう「ハニカム」とは、「正六角柱を隙間なく並べたもの」という狭義の意味に限定されず、「正六角柱に限らず立体図形を隙間なく並べたもの」という広義の意味である。)構造を形成した、略矩形状の部材である。第一ハニカム構造体11bの中空円柱体内部には、脱臭部材11aが、隙間ができるよう配された状態で第一包装体11cに内包される。この際、一フィルター部11内での通気性が偏らないよう、各中空円柱体内部に配される脱臭部材11aの量が略均一である方が好ましい。
【0018】
なお、第一ハニカム構造体11bは前述の態様に限定されない。例えば、中空三角柱体を側面部同士が接するように連接してハニカム構造を形成してもよいし、中空六角柱体を側面部同士が接するように連接してハニカム構造を形成してもよい。また、その外形も略矩形状に限定されない。
<第一包装体11c>
【0019】
第一包装体11cは、メッシュ生地からなり、
図4に示すように、第一ハニカム構造体11bの略矩形状の概形に沿うよう、第一ハニカム構造体11b及び脱臭部材11aを内包する部材である。これにより、第一包装体11cは、通気性を有したまま第一ハニカム構造体11bと脱臭部材11aとの位置関係(第一ハニカム構造体11bの中空円柱体内部に、脱臭部材11aが、隙間ができるよう配される状態)を保つことができる。すなわち、一中空円柱体内部に配された脱臭部材11aが他の中空円柱体内部に移動し、各中空円柱体内部に配される脱臭部材11aの量が極端に偏るのを防止することができる。
(第二ハニカム構造体12)
【0020】
第二ハニカム構造体12は、
図1に示すように3つのフィルター部11の間に配される部材であり、第一ハニカム構造体11bと同一の部材である。第二ハニカム構造体12をフィルター部11の間に配することにより、フィルター部11の間に隙間を設けることができる。本発明者は、実験により、フィルター部11の間に隙間を設けることで脱臭用フィルター積層体1を通過する空気の風速が高くなることを確認している(詳細は後述する。)。すなわち、単位時間あたりにフィルター部11を通過する空気の量が増えるので、脱臭効果が高まる。
【0021】
なお、第二ハニカム構造体12はフィルター部11の間に隙間を設けることができる態様であればよく、前述の態様に限定されない。ただ、生産性向上という観点からすれば、第一ハニカム構造体11bと第二ハニカム構造体12とで、異なる部材を製造する必要がなくなるため、第一ハニカム構造体11bと同一の部材であるほうが好ましい。
(第二包装体13)
【0022】
第二包装体13は、
図1に示すように、略矩形状の紙製箱体であって、平面と底面に空気を通すための円形の穴を有する。第二包装体13は、3つのフィルター部11と2つの第二ハニカム構造体12とを交互に積層した状態で内包することができる。すなわち、第二包装体13は、複数のフィルター部11を、フィルター部11の間に隙間を設け脱臭効果が高まった状態で一つの部材(脱臭用フィルター積層体1)として纏めることができる。すなわち、脱臭用フィルター積層体1を筐体2へ取り付けることが、複数のフィルター部11を筐体2に取り付けることとなり、フィルター部11の間の隙間を調整する必要もなくなるので好適である。また、脱臭用フィルター積層体1を取り外すことで複数のフィルター部11を筐体2から取り外すことができる。
【0023】
なお、第二包装体13は前述の態様に限定されず、第二包装体13自体の大きさや形状、穴の大きさや形状は適宜変更してもよい。また、内包するフィルター部11と第二ハニカム構造体12の数量も前述のものに限定されない。また、第二包装体13は必ずしも設ける必要はない。
(筐体2)
【0024】
筐体2は、
図2及び
図3に示すように、断面が略矩形の筒状の部材である筐体本体21と、筐体本体21の内部に脱臭用フィルター積層体1及びファン3を取り付けるための取付部22、23とからなり、吸気口24と排気口25を備える。取付部22、23により、筐体本体21の上端部には脱臭用フィルター積層体1が取り付けられ、脱臭用フィルター積層体1の下方にファン3が取り付けられる。筐体2の内部は、ファン3によって吸気口24から排気口25に向かう空気の流れが発生するので、吸気口24から吸気された空気は脱臭用フィルター積層体1を通過し脱臭された後、排気口25から排気される。
【0025】
また、筐体2は紙製の部材であり、例えば、筐体本体21は、
図5に示すよう切り出した紙を折り線に沿って折曲げて断面が略矩形の筒状にし、貼着部を貼り付けることで形成できる。取付部22は筐体本体21の内部に貼着される矩形状の紙材であり、貼着された取付部22は筐体本体21内部の出っ張りとなる。
図2及び
図3に示すように、取付部22は排気口25側から挿着された取付部23を係止し、取付部23は脱臭用フィルター積層体1及びファン3を係止する。このように筐体2は紙製の部材であるため、機械的な結合方法を用いることなく容易に且つ低廉に製造可能であり、使用後は資源ごみとして処分することもできる。
【0026】
一方、一般的なプラスチック製や金属製の筐体に比べ、筐体2は密閉性が低く、脱臭効果が低減する可能性があるが、本発明の一実施の形態に係る脱臭用フィルター積層体1を適用することで解決できる。すなわち、フィルター部11の間に隙間を設け脱臭効果を高めた脱臭用フィルター積層体1を用いることで、筐体2が紙製であることに起因する脱臭効果の低減を補うことができる。言い換えれば、本発明の一実施の形態に係る脱臭用フィルター積層体1であれば、脱臭効果を低減させることなく紙製の筐体2を適用できるので、筐体を紙製にすることの利点のみを享受することが可能である。
【0027】
なお、筐体2は前述の態様に限定されず、脱臭用フィルター積層体1及びファン3の取り付け位置や取り付け方法等は適宜変更可能である。例えば、
図2及び
図3では、脱臭用フィルター積層体1とファン3とが近い位置で取り付けられているが、これらを離して取り付けるようにしてもよい。また、脱臭用フィルター積層体1を吸気口24側に取り付け、ファン3を排気口25側に取り付けるようにしてもよい。
(ファン3)
【0028】
ファン3は、筐体2に取り付けられ、筐体2の吸気口24から排気口25に向かう空気の流れを発生させる部材である。これにより、吸気口24から吸気された空気は脱臭用フィルター積層体1を通過し脱臭された後、排気口25から排気される。なお、ファン3の態様は特に限定されない。
(脱臭用フィルター積層体1を通過する空気の風速に関する検証実験)
【0029】
本発明者は、本発明の一実施の形態に係る脱臭用フィルター積層体1のフィルター部11の間に隙間を設けることで通過する空気の風速が高くなることを実験によって確認している。以下で実験内容について説明する。
【0030】
脱臭用フィルター積層体1を通過する空気の風速に関する検証するために、3つのフィルター部11を密着させた場合(パターンA)と、3つのフィルター部11を、隙間を設けて配した脱臭用フィルター積層体1(パターンB)とで、吸気口24側の風速V
1、排気口25側の風速V
2及びフィルター部11及びファン3の間の静圧Pを10回ずつ測定した。詳細な測定条件については
図6を参照されたい。
【0031】
10回の測定値を平均したところ、パターンAの風速V
1は0.509±0.052m/sec、風速V
2は0.286±0.007m/sec、静圧Pは9.0±0.0Paであった。一方、パターンBの風速V
1は0.535±0.028m/sec、風速V
2は0.345±0.009m/sec、静圧Pは9.5±0.0Paであった。測定結果の詳細については
図7の表にまとめる。また、パターンA及びパターンBの風速V
1と風速V
2について、有意水準を5%でマン・ホイットニーのU検定を行ったところ、風速V
1には有意差がなく、風速V
2には有意差があった。
【0032】
以上の結果から、3つのフィルター部11を、隙間を設けて配した脱臭用フィルター積層体1(パターンB)の方が、3つのフィルター部11を密着させた場合(パターンA)に比べ、フィルター部11及びファン3の間の静圧Pが高くなり、排気口25側の風速が高くなっていることがわかる。すなわち、排気口25側へ押し出す空気量が増え、単位時間あたりにフィルター部11を通過する空気の量が増えており、本発明の一実施の形態に係る脱臭用フィルター積層体1は3つのフィルター部11を密着させた場合に比べ、脱臭効果が高いといえる。
【0033】
以上説明したように、本発明の一実施の形態に係る脱臭用フィルター積層体1は、フィルター部11間に隙間を設けることでフィルター部11を通過する空気の量を増やし、脱臭装置に設置した際に、脱臭効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0034】
1…脱臭用フィルター積層体
11…フィルター部
11a…脱臭部材;11b…第一ハニカム構造体;11c…第一包装体
12…第二ハニカム構造体
13…第二包装体
2…筐体
21…筐体本体;22、23…取付部;24…吸気口;25…排気口
3…ファン