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特開2022-161439医療用オスコネクタ及び医療用コネクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161439
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】医療用オスコネクタ及び医療用コネクタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/26 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
A61M39/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066268
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 和紀
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066JJ04
4C066QQ15
(57)【要約】
【課題】コネクタの挿抜時における液漏れを抑制し、シール性に優れた医療用コネクタを提供する。
【解決手段】実施形態の一例である医療用コネクタは、サイドホール管と、伸縮部を含み、サイドホール管を覆う第一弾性体とを有するオスコネクタと、第二弾性体と、第二弾性体が内挿され、第二弾性体に比して硬質のハウジングとを有するメスコネクタとを含む。ハウジングの先端面は、第二弾性体に比して先端側に位置し、ハウジングと第二弾性体の先端面とで凹部が区画され、オスコネクタとメスコネクタとの接続時において、凹部内に挿入される突出部を第一弾性体が有している。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドホール管と、前記サイドホール管を覆う第一弾性体とを含む医療用オスコネクタであって、
前記第一弾性体は、
メスコネクタの挿抜時に伸縮する伸縮部と、
前記伸縮部に接続された第一弾性体頭部と、
を備え、
組み付け前の状態において先端から基端に亘って延びる孔を有し、組み付け後において前記サイドホール管の横孔を塞ぐことを特徴とする、医療用オスコネクタ。
【請求項2】
サイドホール管と、伸縮部を含み、前記サイドホール管を覆う第一弾性体とを有するオスコネクタと、
第二弾性体と、前記第二弾性体が内挿され、前記第二弾性体に比して硬質のハウジングとを有するメスコネクタと、
を含む医療用コネクタであって、
前記ハウジングの先端面が前記第二弾性体に比して前記メスコネクタの先端側に位置し、前記ハウジングと前記第二弾性体の先端面とで凹部が区画され、前記オスコネクタと前記メスコネクタとの接続時において、前記凹部内に挿入される突出部を前記第一弾性体が有することを特徴とする、医療用コネクタ。
【請求項3】
前記第一弾性体は、前記凹部を区画する前記ハウジングの先端面と密着するシール部を有する、請求項2に記載の医療用コネクタ。
【請求項4】
前記シール部は、斜面であると共に、前記シール部に密着するハウジングの先端面も斜面である、請求項3に記載の医療用コネクタ。
【請求項5】
前記第一弾性体が、前記伸縮部から一体的に形成され、前記サイドホール管の横孔を塞ぐ頭部を有する弁体である、請求項2~4のいずれか一項に記載の医療用コネクタ。
【請求項6】
前記第二弾性体は、軸方向に厚肉に形成された栓体である、請求項2~4のいずれか一項に記載の医療用コネクタ。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記第二弾性体を収容する筒状のハウジング本体と、前記ハウジング本体に固定され、前記第二弾性体の先端面の周縁部を押えるキャップとを有する、請求項2~6のいずれか一項に記載の医療用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用オスコネクタ及び医療用コネクタに関し、より詳しくは、サイドホール管を含むオスコネクタを備えた医療用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輸液、抗がん剤等の薬剤の投与や、採血、透析などを行うための流体経路において、経路を接続するための医療用コネクタが使用されている。例えば、特許文献1には、横孔が形成された流路管本体と、流路管本体を覆う伸縮性の弁体とを有する医療用オスコネクタが開示されている。オスコネクタの弁体の先端には、メスコネクタとの接続時に開いて流路管本体を通すスリットが形成されている。また、オスコネクタが接続されるメスコネクタには、流路管本体が挿し込まれる弁体が設けられている。メスコネクタの弁体は、オスコネクタの接続時にメスコネクタの内側に押し込まれるように変形し、このとき、スリットが開いて流路管本体の挿し込みが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/056465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らの検討の結果、特許文献1に開示されるようなコネクタでは、例えば、メスコネクタからオスコネクタを引き抜くコネクタの接続解除時に、各弁体の間に隙間が生じて液漏れが発生することが判明した。
【0005】
特許文献1のコネクタでは、メスコネクタの弁体がスリットを有するディスク状弁であるため、オスコネクタが接続された状態において、実際はメスコネクタの弁体が大きく変形して内側に押し込まれる。このため、オスコネクタの弁体の先端面を僅かに曲面状としても、各弁体を隙間なく密着させることは困難である。コネクタの接続解除時には、例えば、各弁体の間に隙間が生じて隙間に液が溜まり、またオスコネクタの流路管本体がメスコネクタの弁体の先端面に接触して液が付着し、コネクタの外部に液が暴露される場合がある。また、オスコネクタ側弁体のスリットが閉じて流路管本体がオスコネクタの内部に収容される際又はオスコネクタ側弁体のスリットが開くように流路管本体がオスコネクタ側スリットを押し開く際、弁体が径方向に大きく変位するため、各弁体の間に密着性が安定せず、隙間が生じて液漏れが発生する場合がある。
【0006】
本発明の目的は、コネクタの挿抜時における液漏れを抑制し、シール性に優れた医療用コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様である医療用オスコネクタは、サイドホール管と、サイドホール管を覆う第一弾性体とを含む医療用オスコネクタであって、第一弾性体は、メスコネクタの挿抜時に伸縮する伸縮部と、伸縮部に接続された第一弾性体頭部とを備え、組み付け前の状態において先端から基端に亘って延びる孔を有し、組み付け後においてサイドホール管の横孔を塞ぐことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、サイドホール管と第一弾性体とが相対移動する際に、第一弾性体が径方向に大きく変形する事態が低減されて、液漏れが生じる事態を抑制することができる。
【0009】
本発明の一態様である医療用コネクタは、サイドホール管と、伸縮部を含み、サイドホール管を覆う第一弾性体とを有するオスコネクタと、第二弾性体と、第二弾性体が内挿され、第二弾性体に比して硬質のハウジングとを有するメスコネクタとを含む医療用コネクタであって、ハウジング先端面が第二弾性体に比して先端側に位置し、ハウジングと第二弾性体先端面とで凹部が区画され、オスコネクタとメスコネクタとの接続時において、凹部内に挿入される突出部を第一弾性体が有することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、サイドホール管と第一弾性体が相対移動する際に、第一弾性体が径方向に大きく変形する事態が低減されて、液漏れが生じる事態を抑制することができる。
【0011】
本発明の一態様である医療用コネクタは、第一弾性体が凹部を区画するハウジングの先端面と密着するシール部を有する。
【0012】
上記構成によれば、突出部と凹部により第一弾性体が過剰に変形することがないため、第一弾性体と硬質のハウジングとを安定して密着させることができる。
【0013】
本発明の一態様である医療用コネクタは、シール部が斜面であると共に、シール部に密着するハウジングの先端面も斜面である。
【0014】
上記構成によれば、密着部分を斜面とすることで密着面積を大きくすることができると共に、第一弾性体とハウジングとが当接する構造であるため、第一弾性体がハウジング内に入り込んでしまうことを防止できる。
【0015】
本発明の一態様である医療用コネクタは、第一弾性体が伸縮部と、伸縮部から一体的に形成され、サイドホール管の横孔を塞ぐ頭部とを有する弁体である。
【0016】
上記構成によれば、伸縮部を一部材で形成することができる。
【0017】
本発明の一態様である医療用コネクタは、第二弾性体が軸方向に厚肉に形成された栓体である。
【0018】
上記構成によれば、第二弾性体が変形しにくく、接続時の液漏れを低減できる。なお、栓体は、栓体の外径をハウジング内径に比して大きくし、径方向に圧縮された状態とすることが好ましい。
【0019】
本発明の一態様である医療用コネクタは、ハウジングが第二弾性体を収容する筒状のハウジング本体と、ハウジング本体に固定され栓体の先端面の周縁部を押えるキャップとを有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コネクタの挿抜時における液漏れをより確実に抑制でき、シール性に優れた医療用コネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態の一例である医療用コネクタの斜視図であって、オスコネクタとメスコネクタの接続状態を示す。
図2図1中のAA線断面図である。
図3】実施形態の一例であるオスコネクタの斜視図である。
図4】実施形態の一例であるオスコネクタの分解斜視図である。
図5図3中のBB線断面図である。
図6】実施形態の一例であるメスコネクタの斜視図である。
図7図6中のCC線断面図である。
図8】オスコネクタとメスコネクタの接続を解除する様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る医療用コネクタの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態、変形例の各構成要素を選択的に組み合わせてなる構成は本発明に含まれている。
【0023】
以下、図面を参照しながら、実施形態の一例である医療用コネクタ1について詳細に説明する。図1は医療用コネクタ1の斜視図、図2図1中のAA線断面図であって、オスコネクタ10とメスコネクタ40が接続された状態を示している。
【0024】
図1及び図2に示すように、医療用コネクタ1は、オスコネクタ10と、メスコネクタ40とを備える。オスコネクタ10は、横孔12が形成されたサイドホール管部11と、サイドホール管部11を覆う第一弾性体である弁体20とを有する。メスコネクタ40は、スリット51が形成された第二弾性体である栓体50を有する。医療用コネクタ1は、オスコネクタ10とメスコネクタ40の接続状態において、サイドホール管部11が弁体20の開口部23(後述の図3等参照)から延出してメスコネクタ40の栓体50を貫通し、メスコネクタ40の内腔61に挿入されるように構成されている。
【0025】
オスコネクタ10は、基端側筒部31と、フード32とを含むハウジング30を有する。ハウジング30は、例えば、弁体20よりも硬質な樹脂部材である。基端側筒部31は、薬液等の液体が通る流路が内部に形成された筒状部であって、基端側筒部31の基端部には、図示しないチューブ付きコネクタ等が接続される接続部37が形成されている。接続部37には、ネジ山が形成されている。ここで、オスコネクタ10における基端とは、メスコネクタ40に接続される側と反対側の端を意味する。なお、メスコネクタ40に接続される側の端を「先端」とする。
【0026】
オスコネクタ10は、ハウジング30と一体成形されたサイドホール管部11を有する。サイドホール管部11は、薬液等の液体が通る流路を内部に有し、流路の先端が閉じられた細長い管状に形成された部分である。サイドホール管部11の流路は、基端側筒部31の流路と連通している。本実施形態では、ハウジング30と一体的に形成されたサイドホール管部11を例示しているが、サイドホール管部11の代わりに、別部材のサイドホール管がハウジングに装着されていてもよい。サイドホール管は、例えば、金属製の円筒管が採用されるが、樹脂製であってもよく、基端側筒部31の筒内に挿し込まれた状態で固定されていてもよく、基端側筒部31の筒と一体であってもよい。
【0027】
オスコネクタ10は、サイドホール管部11を覆うようにフード32が形成された構造を有する。フード32は、基端側筒部31につながった有底筒状部であって、基端側筒部31との接続部からオスコネクタ10の先端側に延びている。サイドホール管部11は、その全体がフード32の筒内に収容されている。
【0028】
オスコネクタ10の弁体20は、フード32の筒内に収容されている。弁体20は、オスコネクタ10がメスコネクタ40に接続されていない状態でサイドホール管部11の全体を覆う(後述の図5参照)。オスコネクタ10とメスコネクタ40の接続状態において、弁体20はメスコネクタ40に押されて圧縮される。弁体20が圧縮されると、上述のように、サイドホール管部11の先端部が弁体20から延出してメスコネクタ40の内腔61に挿入される。
【0029】
メスコネクタ40は、栓体50に比して硬質のハウジング55を有する。ハウジング55は、栓体50を収容する筒状のハウジング本体60と、ハウジング本体60に固定され、栓体50の先端面52の周縁部を押えるキャップ70とを有する。栓体50は、キャップ70によりハウジング本体60から抜けないようにハウジング本体60の一端部に内挿された状態で保持されている。メスコネクタ40は、オスコネクタ10との接続時において、キャップ70が固定されたハウジング本体60の一端部が、オスコネクタ10のフード32の筒内に挿入された状態となる。本実施形態では、メスコネクタ40及びフード32が略円筒状に形成されており、キャップ70が固定された部分のメスコネクタ40の外径が、フード32の内径より小さくなっている。
【0030】
メスコネクタ40は、ハウジング本体60の筒内に薬液等の液体が流れる流路となる内腔61を有する。この内腔61の一端部が、栓体50により閉じられている。本実施形態では、ハウジング本体60の他端側にオスルアー63が形成されている。また、オスルアー63の周囲には、図示しない接続部材を固定するためのネジ溝65が形成された外筒部64が形成されている。栓体50は、オスコネクタ10のサイドホール管部11が挿通されたときに開口するスリット51を有する。詳しくは後述するが、栓体50は、半径より軸方向幅が長く、好ましくは直径より軸方向幅が長い厚みのあるゴム部材であって、サイドホール管部11の挿抜により大きく変形しない。
【0031】
医療用コネクタ1では、オスコネクタ10とメスコネクタ40の接続状態において、サイドホール管部11の横孔12が形成された部分が弁体20の外部に露出し、メスコネクタ40の内腔61に配置される。これにより、オスコネクタ10及びメスコネクタ40の各流路が連通する。また、オスコネクタ10とメスコネクタ40の接続状態において、弁体20の先端面24と栓体50の先端面52が当接し、隙間なく密着している。この密着状態は、コネクタの接続解除時にも維持されるので、液漏れが効果的に抑制され、高いシール性が得られる。
【0032】
医療用コネクタ1において、メスコネクタ40のキャップ70の先端面74が栓体50に比してメスコネクタ40の先端側に位置し、キャップ70と栓体50の先端面52とで凹部56(図7参照)が区画され、オスコネクタ10とメスコネクタ40との接続時において、凹部56内に挿入される突出部28を弁体20が有している。また、弁体20は、凹部56を区画するキャップ70の先端面74と密着するシール面25を有する。医療用コネクタ1では、凹部56内において、弁体20の先端面24と、栓体50の先端面52が密着しており、その密着面の周囲をキャップ70の先端面74と、弁体20のシール面25とが密着したシール部が囲んでいる。シール部は、斜面であると共に、シール部に密着するハウジングの先端面も斜面である。
【0033】
医療用コネクタ1は、オスコネクタ10とメスコネクタ40の接続状態を維持する回転ロック構造(後述の凸条部33及び第二溝76)を有する。また、オスコネクタ10のフード32の先端部には凹状部35が形成され、メスコネクタ40のハウジング本体60の外周面には凹状部35に嵌るストッパ66が形成されている。凹状部35に挿入されるストッパ66が凹状部35の縁部に当接することで、メスコネクタ40の回転が防止され、コネクタのロックが外れることをより確実に抑制できる。
【0034】
以下、図3図5を参照しながら、オスコネクタ10について更に詳説する。図3はオスコネクタ10の斜視図、図4はオスコネクタ10の分解斜視図である。図5は、図3中のBB線断面図である。
【0035】
図3図5に示すように、オスコネクタ10は、ハウジング30のフード32の筒内に、弁体20及び弁体20に覆われたサイドホール管部11が収容された構造を有する。フード32の先端は開口しているので、メスコネクタ40を挿し込み可能である。また、フード32の先端から基端側に向かって切欠き状の凹状部35が形成されている。凹状部35は、上述の通り、メスコネクタ40のストッパ66が挿入される部分であって、フード32の径方向に並んで先端部の2箇所に形成されている。弁体20は全体がフード32の筒内に収容され、弁体20の先端は、フード32の先端と、凹状部35の基端側の端との間に位置している。
【0036】
サイドホール管部11は、上述の通り、ハウジング30と一体成形された、横孔12を有する細長い管状に形成された部分である。サイドホール管部11の内部は、基端側筒部31の内部と連通し、薬液等の液体が通る流路となる。本実施形態では、サイドホール管部11の先端が丸みを帯びた半球状に形成され、先端近傍の菅の側面に横孔12が形成されている。即ち、サイドホール管部11は、先端が閉じられた有底円筒形状を有し、先端近傍の菅側面が開口している。また、サイドホール管部11は、基端側から先端側に向かって次第に縮径したテーパー形状を有し、基端部よりも先端部が内径、外径ともに小さくなっている。横孔12は、例えば、サイドホール管部11の径方向に並んで2つ形成されている。
【0037】
弁体20は、メスコネクタ40の挿抜時に伸縮する伸縮部21と、伸縮部21から一体的に形成された頭部22(第一弾性体頭部)とを備える。弁体20は、オスコネクタ10への組付け前の状態において先端から基端に亘って延びる孔である挿通路27を有し、組付け後においてサイドホール管部11の横孔12を塞ぐようになっている。頭部22には、頭部22の先端に形成され、サイドホール管部11を通す挿通路27の開口部23と、開口部23の周囲に形成され、メスコネクタ40の栓体50に当接する先端面24とを有する。サイドホール管部11は、メスコネクタ40との非接続状態において、横孔12が形成された部分が挿通路27内に配置されている。そして、横孔12が挿通路27の内面に密着することにより横孔12が塞がれている。
【0038】
弁体20は、固定リング13を用いてフード32に固定されている。弁体20の基端部には、径方向に延びた張り出し部26が形成され、固定リング13がこの張り出し部26をフード32の筒内の底面に押し付けている。フード32の筒内の底面近傍には、固定リング13を係止する突起36が形成されている。張り出し部26に装着された固定リング13は、突起36を乗り越え、突起36とフード32の底面との間に嵌め込まれる。なお、オスコネクタ10の先端側を向いた突起36の面は、固定リング13の嵌め込みを容易にするため、弁体20側に向かって凸となるように湾曲している。
【0039】
弁体20は、柔軟で耐久性に優れたゴムにより構成されることが好ましい。弁体20を構成する好適なゴムの一例は、シリコーンゴムである。弁体20は、頭部22がメスコネクタ40に押されて伸縮部21が圧縮されることで、頭部22がオスコネクタ10の基端側に移動するように構成されている。また、メスコネクタ40が抜かれて押圧力が無くなると、伸縮部21が元の形状を復元して頭部22が元の位置に戻る。伸縮部21は、弁体20の基端部と頭部22の間に形成されている。伸縮部21は、例えば、少なくとも1つの山折部と谷折部を含む蛇腹構造を有する。
【0040】
弁体20は、先端部に形成された頭部22がサイドホール管部11の横孔12に密着することで、メスコネクタ40との非接続状態において横孔12を塞いでいる。頭部22は、伸縮部21よりも厚肉に形成され、頭部22自体は大きく変形しない。上述の通り、弁体20では、伸縮部21の伸縮により頭部22がサイドホール管部11の軸方向に沿って移動する。頭部22に形成された挿通路27は、サイドホール管部11の軸方向に沿って形成され、オスコネクタ10の軸方向に基端側筒部31と並んで配置されている。
【0041】
挿通路27は、頭部22を貫通して弁体20の内外を連通させる。サイドホール管部11を通す開口部23は、挿通路27の一端に形成された開口部である。挿通路27は、例えば、頭部22において、基端側から先端側の開口部23に向かって直径が次第に小さくなっている。挿通路27の直径は、頭部22のサイドホール管部11の横孔12と接する部分よりも開口部23側において、サイドホール管部11の外径よりもやや小さく、挿通路27の内面がサイドホール管部11の側面を押圧していることが好ましい。この場合、サイドホールの周囲部において、良好なシール性が得られる。頭部22における挿通路27の直径は、例えば、サイドホール管部11の外径の0.50倍~0.95倍であり、より好ましくは0.70倍~0.90倍である。
【0042】
開口部23は、頭部22の先端に形成されている。開口部23は、常時開いているため、弁体20を先端側から見ると、挿通路27内に収容されたサイドホール管部11の先端を確認できる。なお、開口部23は、サイドホール管部11が挿入されていない状態、即ち弁体20がオスコネクタ10にセットされていない状態においても開いている。開口部23の直径は、サイドホール管部11の外径の0.50倍~0.95倍であり、より好ましくは0.70倍~0.90倍である。この場合、横孔12の良好なシール性を確保しつつ、弁体20のスムーズな伸縮が可能になる。
【0043】
弁体20に常時開いた開口部23を形成することにより、例えば、開閉するスリットが形成された場合と比べて、メスコネクタ40との接続解除時における弁体20の変形が小さくなる。このため、弁体20の先端面24とメスコネクタ40の栓体50の先端面52との良好な密着状態が維持されやすく、高いシール性が得られる。つまり、スリットが形成された弁体の場合、開いたスリットが閉じる際に、メスコネクタとの密着面が変形し、弁体とメスコネクタとの間に隙間が生じるが、本実施形態によれば、開口部23の大きさが径方向に多少変化したとしても、弁体20の先端面24と栓体50の先端面52との密着状態に殆ど影響しないため、高いシール性が確保される。
【0044】
頭部22の開口部23の周囲には、栓体50の先端面52に当接する先端面24が形成されている。本実施形態では、開口部23の周囲がオスコネクタ10の先端側に小さく突出して突出部28が形成されており、突出部28の先端に先端面24が形成されている。突出部28は、扁平な円筒状に形成され、この円筒の中心に開口部23(挿通路27)が形成されている。つまり、先端面24は、開口部23の周囲において一定の幅でリング状に形成されている。先端面24は、外縁部よりも開口部23の周縁部がオスコネクタ10の先端側に位置するように緩やかに傾斜した斜面となっている。
【0045】
先端面24の外径は、先端面24と栓体50の先端面52との密着に支障のない大きさとされ、例えば、メスコネクタ40のキャップ70の後述する開口部73の直径よりやや小さい。弁体20の突出部28は、コネクタの接続状態において、キャップ70の開口部73に挿入され、突出部28の先端に形成された先端面24が、開口部73から露出する栓体50の先端面52に隙間なく密着する(図2参照)。先端面24の外径は、例えば、開口部23の直径の1.5倍以上、より好ましくは2.0倍以上であり、好適な範囲の一例としては2.0倍~3.0倍である。
【0046】
弁体20には、後述するキャップ70の先端面74に当接するシール面25が形成されている。シール面25は、弁体20を先端側から見たときに、先端面24を囲むように一定の幅でリング状に形成されている。コネクタの接続状態において、シール面25はキャップ70の先端面74に隙間なく密着し(図2参照)、凹部56の周囲をシールするので、コネクタの接続解除時における液漏れがより効果的に抑制される。
【0047】
シール面25は、先端面24側に向かって次第にオスコネクタ10の先端側に位置するように傾斜している。シール面25の傾斜角度は、周方向に沿って一定であることが好ましい。シール面25は、例えば、先端面24と略平行に形成されている。シール面25の外径は、例えば、先端面24の外径の1.5倍以上、より好ましくは2.0倍以上であり、好適な範囲の一例としては2.0倍~3.0倍である。
【0048】
本実施形態では、メスコネクタ40の挿抜をガイドするための凸条部33が、ハウジング30のフード32に形成されている。凸条部33は、フード32の筒内に突出し、軸方向に延びた凸部であって、フード32の先端からサイドホール管部11の横孔12を超える長さで形成されている。なお、メスコネクタ40には、凸条部33が嵌る溝が形成されている。凸条部33は、メスコネクタ40を安定にガイドするため、フード32の径方向に並んで2つ形成されていることが好ましい。
【0049】
以下、図6及び図7を参照しながら、メスコネクタ40について更に詳説する。図6はメスコネクタ40の斜視図、図7図6中のCC線断面図である。
【0050】
図6及び図7に示すように、メスコネクタ40は、ハウジング本体60の筒内に栓体50が収容され、ハウジング本体60の外部に装着されたキャップ70によって栓体50が押さえられた構造を有する。ハウジング本体60は、栓体50及びキャップ70が配置される軸方向一端側よりも他端側の外径が大きくなった形状を有する。他方、流路となる内腔61の内径は、ハウジング本体60の軸方向他端側よりも一端側で大きくなっている。本実施形態では、ハウジング本体60の軸方向他端側にオスルアー63が設けられ、内周面にネジ溝65が形成された外筒部64がオスルアー63を囲むように設けられているが、ハウジング本体60の軸方向他端側の構造は特に限定されない。
【0051】
栓体50は、上述のように、オスコネクタ10のサイドホール管部11が挿入されたときに開口するスリット51を有し、オスコネクタ10の先端面24が当接する先端面52がコネクタ内部に押し込まれない状態でスリット51が開口するように構成されている。スリット51は、例えば、先端面52において、先端面52の中心を通る1本の直線状に形成されている。オスコネクタ10との非接続状態において、スリット51は閉じており、内腔61は密栓されている。メスコネクタ40のシール性向上の観点から、栓体50の直径はハウジング本体60の栓体50が収容される部分の内径よりやや大きく、栓体50は径方向にやや圧縮された状態で配置されていることが好ましい。
【0052】
栓体50は、弁体20と同様に、柔軟で耐久性に優れたゴムにより構成されることが好ましい。栓体50を構成する好適なゴムの一例は、シリコーンゴムである。栓体50は、軸方向に厚肉に形成された、直径よりも厚みが大きく剛性の高いゴム部材であって、オスコネクタ10のサイドホール管部11がスリット51に挿入されてもメスコネクタ40の内部に押し込まれるように変形することがない。このため、栓体50の先端面52はサイドホール管部11の軸方向に直交した状態を維持し、コネクタの接続解除時においても、先端面52と弁体20の先端面24との良好な密着状態が確保される。
【0053】
また、栓体50の底面(先端面52と反対側の面)は、先端面52側に向かって凸となった湾曲面53となっている。湾曲面53は、スリット51との交点が最も先端面52側に位置するように、断面視略アーチ状に形成されている。栓体50の底部がこのようなアーチ構造を有することにより、栓体50は先端面52側からの荷重に対して撓みにくくなり、サイドホール管部11がスリット51に挿入されても栓体50の変形がより効果的に抑えられる。
【0054】
ハウジング本体60の内腔61には、栓体50を支持する支持部62が形成されている。栓体50は、例えば、底面の周縁部が支持部62によって支持される。内腔61は、ハウジング本体60の軸方向一端から所定長さ離れた位置で内径が小さくなり、内腔61の内面には段が形成されている。この段は内腔61の周方向に沿って環状に形成され、栓体50を支持する支持部62となる。所定長さは、栓体50の厚みに相当する長さであって、支持部62により栓体50の底面が支持された状態で、先端面52がハウジング本体60の軸方向一端と面一となる長さである。
【0055】
キャップ70は、ハウジング本体60の外周面を覆う筒壁部71と、栓体50の先端面52の周縁部を押える押え部72とを有する。筒壁部71は、略円筒状に形成され、ハウジング本体60の外周面に固定されている。筒壁部71は、例えば、ハウジング本体60に形成された凹部と筒壁部71に形成された凸部による凹凸嵌合によりハウジング本体60に固定される。押え部72は、筒壁部71の一端から径方向内側に延び、先端面52の周縁部を覆うように円環状に形成されている。即ち、キャップ70には、栓体50のスリット51を露出させる開口部73(キャップ開口部)が形成されている。
【0056】
開口部73は、サイドホール管部11の直径より大きく、ハウジング本体60の内径、弁体20の外径、及び弁体20の外径より幅が小さく、弁体20の先端面24の外径よりもやや大きな直径を有し、弁体20の突出部28を挿入可能である。また、押え部72の外側を向いた面には、開口部73側に向かって次第に栓体50の先端面52に近づくように傾斜した先端面74が形成されている。先端面74は、サイドホール管部11の軸方向に対して、弁体20のシール面25と実質的に同じ角度で傾斜し、コネクタの接続時にシール面25と密着する。弁体20と栓体50との密着面の周囲が、シール面25,74の密着によりシールされるので、コネクタの挿抜時の液漏れがより効果的に抑制される。なお、押え部72に先端面74を形成することで、栓体50の先端面52との段差が小さくなるため、先端面52の消毒作業が容易になる。
【0057】
メスコネクタ40の先端部には、栓体50の先端面52とキャップ70により区画された凹部56が形成されている。凹部56は、斜面であるキャップ70の先端面74の外縁部から開口部73の内部に亘って形成され、開口部73内で一段深く形成されている。弁体20の突出部28は、メスコネクタ40との接続時において、凹部56のうち最も深くなった開口部73内に挿入される。凹部56の底には栓体50の先端面52が存在し、凹部56内において、弁体20の先端面24と栓体50の先端面52が密着している。凹部56に弁体20の突出部28が挿入されることで、弁体20の径方向変位が防止され、また突出部28が意図しない方向へ屈曲することが防止される。
【0058】
筒壁部71の外周面には、筒壁部71の軸方向全長にわたって第一溝75が形成されている。第一溝75は、オスコネクタ10のフード32に形成された凸条部33が嵌る溝であって、筒壁部71の径方向に並んで2つ形成されている。第一溝75を凸条部33の位置に合わせて、メスコネクタ40をフード32の筒内に挿入することで、オスコネクタ10とメスコネクタ40を安定かつ容易に接続することができる。また、筒壁部71の外周面には、隔壁77を隔てて第一溝75と隣接する位置に、筒壁部71の他端から一端に至らない長さの第二溝76が形成されている。
【0059】
本実施形態では、凸条部33の基端が隔壁77の先端を超える位置までメスコネクタ40をオスコネクタ10のフード32の筒内に挿入した後、メスコネクタ40を回転させて凸条部33を第二溝76に嵌めることにより、コネクタの接続状態がロックされる。メスコネクタ40は弁体20を圧縮しながら挿入されるため、弁体20の復元力により押し戻されているので、凸条部33が第二溝76の縁部に当接してメスコネクタ40が抜ける方向への移動、並びにメスコネクタ40の回転が規制される。コネクタの接続を解除する際には、メスコネクタ40を更にオスコネクタ10の基端側に押し込んで回転させる。このとき、凸条部33が第二溝76から第一溝75に移動し、オスコネクタ10の先端側へのメスコネクタ40の移動が可能となる。
【0060】
図8は、コネクタの接続を解除する様子を示す断面図である。図8(a)は、オスコネクタ10のサイドホール管部11がメスコネクタ40の栓体50から抜ける前の状態を示す。図8(b)は、サイドホール管部11が栓体50から完全に抜けた状態を示す。
【0061】
図8(a)に示すように、弁体20の先端面24と栓体50の先端面52とは隙間なく密着しており、かつサイドホール管部11の側面には弁体20及び栓体50が密着している。栓体50は、サイドホール管部11がスリット51に挿し込まれた状態においても先端面52がサイドホール管部11の軸方向に直交した状態を維持し、大きく変形しないので、弁体20の先端面24と栓体50の先端面52との良好な密着状態が維持される。このため、サイドホール管部11が栓体50の先端面52に接触して液が付着することが抑制される。
【0062】
図8(b)に示すように、弁体20には常時開いた開口部23が形成されているので、サイドホール管部11が弁体20に収容される際に弁体20が大きく変形しない。このため、弁体20の変形に起因して隙間が生じることが抑制され、弁体20の先端面24と栓体50の先端面52との良好な密着状態が維持される。また、弁体20のシール面25が、キャップ70の先端面74に密着して先端面24と先端面52との密着面の周りを囲んでいるので、液漏れがより確実に抑制される。
【0063】
弁体20及び栓体50は、サイドホール管部11が通る際に、サイドホール管部11の軸方向に直交する方向に多少変形するが、弁体20の先端面24と栓体50の先端面52の密着面に隙間が生じるような変形はしない。したがって、上記構成を備えた医療用コネクタ1によれば、コネクタの接続解除時に弁体20と栓体50の密着面が維持され、優れたシール性が実現される。
【0064】
なお、上述の実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。例えば、上述の実施形態では、栓体50を押えるキャップ70がメスコネクタ40のハウジング本体60に装着されているが、メスコネクタにはキャップ70が設けられていなくてもよい。栓体をハウジングと一体成形する、或いは接着剤を用いて栓体をハウジングに固定することにより、キャップ70を省略することが可能である。この場合、オスコネクタ10の弁体20のシール面25を無くして先端面24の面積を大きくして、先端面24と栓体の先端面との密着面を拡大できる。
【0065】
また、オスコネクタ10の弁体20には、サイドホール管部11を通す開口部23、及びサイドホール管部11の軸方向に平坦な先端面24が形成されているが、いずれか一方の構成のみを適用してもよい。この場合、上述の実施形態と比較するとシール性は低下するものの、従来のコネクタよりも高いシール性を実現できる。例えば、オスコネクタとメスコネクタとの接続時、ハウジングと第二弾性体の先端面とで区画された凹部内に、第一弾性体に形成された突出部が挿入されることで、弁体20の先端部に、開口部23ではなくスリットを形成し、サイドホール管部11の挿通に支障がない範囲で閉じた構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0066】
1 医療用コネクタ、10 オスコネクタ、11 サイドホール管部、12 横孔、13 固定リング、15 凹部、20 弁体、21 伸縮部、22 頭部、23,73 開口部、24,52,74 先端面、25 シール面、26 張り出し部、27 挿通路、28 突出部、30,55 ハウジング、31 基端側筒部、32 フード、33 凸条部、35 凹状部、36 突起、37 接続部、40 メスコネクタ、50 栓体、51 スリット、53 湾曲面、60 ハウジング本体、61 内腔、62 支持部、63 オスルアー、64 外筒部、65 ネジ溝、66 ストッパ、70 キャップ、71 筒壁部、72 押え部、75 第一溝、76 第二溝、77 隔壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8