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特開2022-161440打錠用杵または打錠用臼の洗浄方法および洗浄装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161440
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】打錠用杵または打錠用臼の洗浄方法および洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 5/02 20060101AFI20221014BHJP
   B05B 7/04 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B08B5/02 Z
B05B7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066269
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】518398394
【氏名又は名称】株式会社マシンパーツ
(71)【出願人】
【識別番号】598005661
【氏名又は名称】日新化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(72)【発明者】
【氏名】澤口 拓
【テーマコード(参考)】
3B116
4F033
【Fターム(参考)】
3B116AA47
3B116AB53
3B116BB22
3B116BB62
3B116BB88
3B116BB90
4F033QA09
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB11X
4F033QB12Y
4F033QD02
4F033QD15
4F033QE06
4F033QE19
4F033QF02X
4F033QF07Y
(57)【要約】
【課題】打錠用杵または打錠用臼の洗浄に際して、洗浄装置の大型化を招くことなく、また、洗浄に要する時間や労力をさらに低減させることができ、さらに、打錠面に設けられた刻印および/または割線用小突起の隙間も十分な洗浄が可能な洗浄技術を提供する。
【解決手段】打錠機に取り付けられる打錠用杵または打錠用臼を洗浄する打錠用杵または打錠用臼の洗浄方法であって、液化炭酸ガスを用いて生成されたドライアイスの微小粒子を、噴射ノズルの先端から打錠用杵または打錠用臼の洗浄対象面に向けて噴射することにより、打錠用杵または打錠用臼の洗浄対象面を洗浄する打錠用杵または打錠用臼の洗浄方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打錠機に取り付けられる打錠用杵または打錠用臼を洗浄する打錠用杵または打錠用臼の洗浄方法であって、
液化炭酸ガスを用いて生成されたドライアイスの微小粒子を、噴射ノズルの先端から前記打錠用杵または前記打錠用臼の洗浄対象面に向けて噴射することにより、前記打錠用杵または前記打錠用臼の洗浄対象面を洗浄することを特徴とする打錠用杵または打錠用臼の洗浄方法。
【請求項2】
液化炭酸ガスを用いて生成されたドライアイスの微小粒子をキャリアガスと合流させることにより加速させて噴射ノズルの先端に向けて供給し、加速された前記ドライアイスの微小粒子を、前記噴射ノズルの先端から噴射することを特徴とする請求項1に記載の打錠用杵または打錠用臼の洗浄方法。
【請求項3】
前記噴射ノズルの先端に、打錠用杵洗浄アダプターまたは打錠用臼洗浄アダプターを取り付けて、前記ドライアイスの微小粒子を噴射することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の打錠用杵または打錠用臼の洗浄方法。
【請求項4】
打錠機に取り付けられる打錠用杵または打錠用臼を洗浄する打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置であって、
液化炭酸ガスを用いて生成されたドライアイスの微小粒子を、噴射ノズルの先端から噴射する噴射装置と、
前記打錠用杵または前記打錠用臼を固定する洗浄対象物固定台と
を備えていることを特徴とする打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置。
【請求項5】
前記噴射ノズルの先端が、打錠用杵洗浄アダプターまたは打錠用臼洗浄アダプターを取り付け自在に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置。
【請求項6】
前記噴射装置が、
前記液化炭酸ガスを供給する液化炭酸ガス供給路と、
キャリアガスを供給するキャリアガス供給路と、
前記液化炭酸ガス供給路から供給される液化炭酸ガスを噴出する噴出部と、
前記噴出部から噴出された液化炭酸ガスが膨張してドライアイスの微小粒子を生成する膨張空間と、
前記キャリアガス供給路から供給されるキャリアガスと、前記膨張空間で生成された前記ドライアイスの微小粒子とを合流させる合流部と、
前記合流部から前記噴射ノズルの先端の噴射口に至るまで形成された噴射路と
を備えていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄対象物固定台が、
複数の前記打錠用杵の下端部をそれぞれ側方より挿入して、前記打錠用杵を立設保持する固定台本体部と、
挿入して立設保持されたそれぞれの前記打錠用杵の下端部を、スプリングにより側方より押圧して前記固定台本体部に固定する取付部材と
を備えていることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置。
【請求項8】
前記洗浄対象物固定台が、
複数の前記打錠用臼をそれぞれ上方より挿入して、前記打錠用臼を保持する固定台本体部と、
保持されたそれぞれの前記打錠用臼を、スプリングにより側方より押圧して前記固定台本体部に固定する取付部材と
を備えていることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置。
【請求項9】
少なくとも1台の前記噴射装置と、少なくとも1台の前記洗浄対象物固定台とが、所定の空間を有する箱状収納体に収納されていることを特徴とする請求項4ないし請求項8のいずれか1項に記載の打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置。
【請求項10】
前記箱状収納体の側面に、前記噴射装置を操作するための手指挿入孔が少なくとも1つ設けられていることを特徴とする請求項9に記載の打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置。
【請求項11】
前記箱状収納体の内部が複数の区画に区分けされており、
各区画のそれぞれに、前記洗浄対象物固定台が1台以上配置されていることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品等の錠剤を成型する打錠機に取り付けられる打錠用杵または打錠用臼の洗浄方法および洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品等の錠剤は、一般的に、錠剤成型機(打錠機)を用いて、所定量の材料粉末を加圧成型することにより製造されている。
【0003】
打錠機は、例えば、上下方向に回転軸を有するターンテーブルの周方向に沿って上下方向に開口した臼(打錠用臼)が多数配置されると共に、各打錠用臼に対応して上下一対の杵(打錠用杵)が夫々上下方向に移動可能に配置されて構成されており、ターンテーブルの回転に合わせてホッパー(材料粉末供給機)の位置まで回転して移動してきた打錠用臼に所定量の材料粉体が供給されると、上下一対の打錠用杵により加圧力が付与されて、打錠用杵の向かい合った凹状の面と、円筒状の打錠用臼との間で錠剤の加圧成型が行われ、その後、成型された錠剤が打錠用臼から取り出される。そして、このような動作が繰り返されることにより、連続的に、錠剤の製造が行われる。
【0004】
図10は、打錠機における打錠用杵および打錠用臼を説明する模式図であり、上杵211および下杵212からなる打錠用杵21と、打錠用臼22とから1組の成型部20が構成されており、複数組(通常は、36~48組)の成型部20がターンテーブルに設けられている。なお、上杵211および/または下杵212の凹状の打錠面には、品名や品番などの刻印および/または割線用の小突起が設けられている場合もある。
【0005】
そして、このような打錠機による具体的な打錠は、以下の手順に従って行われる。
【0006】
まず、成型部20がターンテーブルの回転に合わせて移動して、打錠用臼22がホッパーの位置に来ると、ホッパーから打錠用臼22と下杵212とが形成する空間に、所定量の材料粉体を供給する。
【0007】
次に、下杵212を所定の位置まで上昇させ、それに伴って、打錠用臼22の上部表面からはみ出た余剰粉末を摺り切って取り除くことにより、錠剤1錠当たりに必要な材料を定量化する。
【0008】
次に、上杵211を打錠用臼22の内周面に沿って下降させ、打錠用杵21と打錠用臼22により形成される空間を閉状態とした後、上杵211をさらに下降させて加圧することにより、打錠用杵21と打錠用臼22との間で材料粉体を圧縮成型し、錠剤化する。
【0009】
次に、上杵211を上昇させて(上昇退避)打錠用杵21と打錠用臼22を開状態とし、その後、下杵212を上昇させることにより、成型された錠剤を打錠用臼22の上部表面より上に上昇させ、できた錠剤をスクレーパーで横にはじいて取り出す(系外排出)。
【0010】
次に、下杵212を再び、所定の位置まで下降させ、ターンテーブルを回転させる。これにより、次の組の成型部20がホッパーの位置に移動する。
【0011】
以降、上記した各動作を繰り返すことにより、連続的に打錠が行われる。
【0012】
このような打錠機において、連続的に打錠を行った場合、打錠用杵21(上杵211および下杵212)の成型面である打錠面や、打錠用杵21と打錠用臼22との摺動面などに、材料粉体の一部が付着し、長時間に亘る連続的な打錠工程により、これが固着することが避けられない。また、上杵211や下杵212に設けられた刻印等の隙間に、材料粉体の一部が侵入して固着することが避けられない。
【0013】
このような材料粉体の付着物や固着物が錠剤に混入することは、薬剤の製造において好ましいことではなく、厳しく管理するように定められている。このため、例えば、成型する錠剤の種類を変更する際や、一日の作業が終了した際に、打錠用杵および打錠用臼を洗浄して、材料粉体の付着物や固着物を除去する必要がある。
【0014】
具体的な洗浄方法として、打錠機から取り外された打錠用杵や打錠用臼を1つずつ、有機溶媒(例えば、無水エタノールなどのアルコール類)や水を含んだ洗浄液に浸して手洗いで洗浄する方法に替えて、例えば、打錠機から取り外した複数の打錠用杵と打錠用臼とを洗浄バスケット内に収納して、洗浄液が貯留された洗浄槽内で洗浄して乾燥させる洗浄方法がより効率的な洗浄方法として提案されている(特許文献1)。
【0015】
しかしながら、このような洗浄方法は、手洗いでの洗浄に比べると効率的とは言えるが、洗浄バスケットに収納した全ての打錠用杵と打錠用臼を一度に処理するため、装置全体が大型化する。そして、洗浄に要する時間や労力についても、効率化が十分とは言えない。また、洗浄バスケットを用いた洗浄では、打錠用杵21に設けられた刻印等の隙間を十分に洗浄することも難しい。
【0016】
そこで、打錠用杵と打錠用臼の表面をフッ素化合物によりコーティングすることにより、汚れの付着を抑制して、洗浄頻度を低減させることにより、効率化を図ることが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平10-008273号公報
【特許文献2】特開2013-159814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、打錠用杵と打錠用臼の表面をフッ素化合物によりコーティングして、洗浄頻度を低減させたとしても、従来と同様の洗浄方法を採用している限り、装置の大型化は避けられず、洗浄に要する時間や労力の低減にも限界がある。また、刻印等の隙間の洗浄も十分とは言えず、さらなる改善が求められている。
【0019】
そこで、本発明は、打錠用杵または打錠用臼の洗浄に際して、洗浄装置の大型化を招くことなく、また、洗浄に要する時間や労力をさらに低減させることができ、さらに、刻印等の隙間も十分な洗浄が可能な洗浄技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、以下に記載する発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0021】
請求項1に記載の発明は、
打錠機に取り付けられる打錠用杵または打錠用臼を洗浄する打錠用杵または打錠用臼の洗浄方法であって、
液化炭酸ガスを用いて生成されたドライアイスの微小粒子を、噴射ノズルの先端から前記打錠用杵または前記打錠用臼の洗浄対象面に向けて噴射することにより、前記打錠用杵または前記打錠用臼の洗浄対象面を洗浄することを特徴とする打錠用杵または打錠用臼の洗浄方法である。
【0022】
請求項2に記載の発明は、
液化炭酸ガスを用いて生成されたドライアイスの微小粒子をキャリアガスと合流させることにより加速させて噴射ノズルの先端に向けて供給し、加速された前記ドライアイスの微小粒子を、前記噴射ノズルの先端から噴射することを特徴とする請求項1に記載の打錠用杵または打錠用臼の洗浄方法である。
【0023】
請求項3に記載の発明は、
前記噴射ノズルの先端に、打錠用杵洗浄アダプターまたは打錠用臼洗浄アダプターを取り付けて、前記ドライアイスの微小粒子を噴射することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の打錠用杵または打錠用臼の洗浄方法である。
【0024】
請求項4に記載の発明は、
打錠機に取り付けられる打錠用杵または打錠用臼を洗浄する打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置であって、
液化炭酸ガスを用いて生成されたドライアイスの微小粒子を、噴射ノズルの先端から噴射する噴射装置と、
前記打錠用杵または前記打錠用臼を固定する洗浄対象物固定台と
を備えていることを特徴とする打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置である。
【0025】
請求項5に記載の発明は、
前記噴射ノズルの先端が、打錠用杵洗浄アダプターまたは打錠用臼洗浄アダプターを取り付け自在に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置である。
【0026】
請求項6に記載の発明は、
前記噴射装置が、
前記液化炭酸ガスを供給する液化炭酸ガス供給路と、
キャリアガスを供給するキャリアガス供給路と、
前記液化炭酸ガス供給路から供給される液化炭酸ガスを噴出する噴出部と、
前記噴出部から噴出された液化炭酸ガスが膨張してドライアイスの微小粒子を生成する膨張空間と、
前記キャリアガス供給路から供給されるキャリアガスと、前記膨張空間で生成された前記ドライアイスの微小粒子とを合流させる合流部と、
前記合流部から前記噴射ノズルの先端の噴射口に至るまで形成された噴射路と
を備えていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置である。
【0027】
請求項7に記載の発明は、
前記洗浄対象物固定台が、
複数の前記打錠用杵の下端部をそれぞれ側方より挿入して、前記打錠用杵を立設保持する固定台本体部と、
挿入して立設保持されたそれぞれの前記打錠用杵の下端部を、スプリングにより側方より押圧して前記固定台本体部に固定する取付部材と
を備えていることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置である。
【0028】
請求項8に記載の発明は、
前記洗浄対象物固定台が、
複数の前記打錠用臼をそれぞれ上方より挿入して、前記打錠用臼を保持する固定台本体部と、
保持されたそれぞれの前記打錠用臼を、スプリングにより側方より押圧して前記固定台本体部に固定する取付部材と
を備えていることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置である。
【0029】
請求項9に記載の発明は、
少なくとも1台の前記噴射装置と、少なくとも1台の前記洗浄対象物固定台とが、所定の空間を有する箱状収納体に収納されていることを特徴とする請求項4ないし請求項8のいずれか1項に記載の打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置である。
【0030】
請求項10に記載の発明は、
前記箱状収納体の側面に、前記噴射装置を操作するための手指挿入孔が少なくとも1つ設けられていることを特徴とする請求項9に記載の打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置である。
【0031】
請求項11に記載の発明は、
前記箱状収納体の内部が複数の区画に区分けされており、
各区画のそれぞれに、前記洗浄対象物固定台が1台以上配置されていることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、打錠用杵または打錠用臼の洗浄に際して、洗浄装置の大型化を招くことなく、また、洗浄に要する時間や労力をさらに低減させることができ、さらに、刻印等の隙間も十分な洗浄が可能な洗浄技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施の形態に係る洗浄装置における噴射装置とその周辺部材との配置状況を示す模式図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る洗浄装置における噴射ガンの断面模式図である。
図3】本発明の一実施の形態において、噴射ノズルに打錠用杵洗浄アダプターが取り付けられた噴射ガンの模式断面図である。
図4】本発明の一実施の形態において、噴射ノズルに打錠用臼洗浄アダプターが取り付けられた噴射ガンの模式断面図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る洗浄装置における打錠用杵固定用の洗浄対象物固定台の構成を説明する(a)固定台本体部の模式斜視図、(b)取付部材の模式斜視図、(c)取付部材の模式側面図である。
図6】本発明の一実施の形態において、打錠用杵固定用の洗浄対象物固定台に、打錠用杵が挿通されて固定されている状態を示す模式斜視図である。
図7】本発明の一実施の形態における打錠用臼固定用の洗浄対象物固定台の構成を説明する(a)固定台本体部の模式斜視図、(b)取付部材の模式斜視図、(c)取付部材の模式側面図である。
図8】本発明の一実施の形態において、打錠用臼固定用の洗浄対象物固定台に、打錠用臼が固定されている状態を示す模式斜視図である。
図9】本発明の一実施の形態において、1台の噴射装置と1台の洗浄対象物固定台とが収納された箱状収納体の一例を示す図である。
図10】打錠機における打錠用杵および打錠用臼を説明する模式図である。
図11】打錠用杵の洗浄対象面の形状を示す断面図である。
図12】打錠用臼の洗浄対象面における形状を示す断面図である。
図13】本発明の一実施の形態における打錠用杵の(a)洗浄前、(b)洗浄後の拡大写真である。
図14】本発明の一実施の形態における打錠用臼の(a)洗浄前、(b)洗浄後の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[1]従来の洗浄方法とその問題点
本発明の実施の形態について説明する前に、従来の洗浄方法とその問題点について、より詳細に説明する。
【0035】
1.従来の洗浄方法
まず、打錠機から、打錠用杵(上杵および下杵)と打錠用臼とを、1個ずつ取り外す。
【0036】
次に、取り外した打錠用杵や打錠用臼の表面に付着している材料粉末の残渣を、乾いたウエスなどを用いて拭き取り、除去する。
【0037】
次に、ウエスなどでは拭き取れず、打錠用杵や打錠用臼の表面に固着している材料粉末を、洗浄する。具体的には、打錠用杵や打錠用臼を1つずつ、有機溶媒(例えば、無水エタノールなどのアルコール類)や水を含んだ洗浄液に浸して手洗いで洗浄してもよいが、作業効率を考えると、複数個の打錠用杵や打錠用臼を洗浄バスケット内に収納して、洗浄液が貯留された洗浄槽内に投入し、超音波や水流にて洗浄する方法を採ることが好ましい。
【0038】
洗浄が完了すると、打錠用杵や打錠用臼の表面に残った水滴を拭き取り、その後、防錆油を塗布して、次回、使用するまで保管する。
【0039】
2.従来の洗浄方法の問題点
しかしながら、上記した洗浄バスケットを用いた洗浄方法であっても、以下に示すような問題点があった。
【0040】
まず、洗浄に要する時間や労力は、手洗い洗浄に比べれば、効率的ということができるが、十分なものではなかった。例えば、45組の打錠用杵および打錠用臼を洗浄バスケットを用いて洗浄を行った場合、洗浄の完了までには、4~5時間を必要とする。
【0041】
また、洗浄液を使用する場合、全ての打錠用杵と打錠用臼を一度に処理しようとすると、装置全体が大型化して、大きな設備費用が発生する。このため、通常は、コンパクトな洗浄装置を用いて、3~4回に分けて洗浄しているが、安価とは言えない洗浄液を、その都度、交換する必要があり、交換した洗浄液を浄化する浄化槽を設ける必要もある。
【0042】
洗浄バスケットに収納して行う洗浄作業においては、打錠用杵に設けられた刻印等の隙間を十分に洗浄することが難しく、また、隙間に入った洗浄液を除去することも容易ではない。
【0043】
そして、特許文献2に示すコーティング技術においても、洗浄頻度は低減するものの、洗浄バスケットを用いて洗浄を行った場合の問題点は、依然として残っていた。
【0044】
[2]本発明の概要
本発明者は、上記した従来の洗浄方法における問題点の解決方法につき鋭意検討を行った結果、洗浄剤としてドライアイスを用い、ドライアイスを洗浄対象面に噴射して洗浄することにより、上記した問題点を解決できることが分かった。
【0045】
即ち、ドライアイスは打錠用杵や打錠用臼を構成する金属より硬度が低く、すばやく昇華して気体となって飛散するため、噴射ノズルから洗浄対象面にドライアイスを噴射させても、打錠用杵や打錠用臼の表面コーティングなどを傷付けることがなく、また、ドライアイスの昇華に伴うサーマルショック効果により、短時間で洗浄対象面を洗浄することができる。また、洗浄後に行う洗浄液の拭き取り、除去作業も不要となる。
【0046】
このように、ドライアイスを直接洗浄対象物に吹き付けて洗浄することにより、装置の大型化を図ることなく、短時間での洗浄作業が可能となるため、時間や労力の効率化を十分に図ることができる。
【0047】
そして、ドライアイスの微小粒子は、刻印部等の微小な隙間にも容易に入っていくことができるため、刻印部等の隙間に付着した付着物を急速に熱収縮させて、短時間で洗浄対象面を洗浄することができる。
【0048】
また、ドライアイスは不燃性であり毒性もないため、安全に洗浄作業を行うことができ、また、従来の洗浄剤に比べて安価であるため、これらの面からも好ましい。
【0049】
具体的に、上記した各効果を有する本発明に係る打錠用杵または打錠用臼の洗浄方法は、液化炭酸ガスを用いて生成されたドライアイスの微小粒子を、噴射ノズルの先端から打錠用杵または打錠用臼の洗浄対象面に向けて噴射することにより、前記打錠用杵または前記打錠用臼の洗浄対象面を洗浄することを特徴とした洗浄方法である。
【0050】
[3]本発明の具体的な実施の形態
以下、本発明の具体的な実施の形態について、打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置(以下、単に「洗浄装置」ともいう)、打錠用杵または打錠用臼の洗浄方法(以下、単に「洗浄方法」ともいう)の順に、図面を参照しながら説明する。
【0051】
1.本実施の形態に係る打錠用杵または打錠用臼の洗浄装置
本実施の形態に係る洗浄装置は、液化炭酸ガスを用いて生成されたドライアイスの微小粒子を、噴射ノズルの先端から噴射する噴射装置と、打錠用杵または打錠用臼を固定する洗浄対象物固定台とを備えている。
【0052】
(1)噴射装置
まず、本実施の形態に係る洗浄装置における噴射装置について説明する。図1は、本実施の形態に係る洗浄装置における噴射装置とその周辺部材との配置状況を示す模式図である。そして、図2は、噴射ガン8の断面模式図である。
【0053】
図1に示すように、噴射装置は、噴射ガン8に液化炭酸ガス供給路6およびキャリアガス供給路7が接続されて構成されている。そして、液化炭酸ガス供給路6は、制御ユニット5を経由して液化炭酸ガスボンベ2に接続されている。一方、キャリアガス供給路7は、制御ユニット5、ウオータセパレータ4を経由してエアコンプレッサー3に接続されている。
【0054】
噴射ガン8のトリガーを引くことにより、液化炭酸ガス供給路6を経由して供給された液化炭酸ガスが、噴射ガン8の先端からドライアイスの微粒子となって噴出して、洗浄対象面を洗浄することができる。
【0055】
噴射ガン8は、図2に示すように、噴射ガン本体部81と噴射ノズル82とから構成されており、噴射ガン本体部81の後端側上方には、液化炭酸ガス供給路6が接続されている。
【0056】
図2において、61は液化炭酸ガス供給路6の途中に設けられたバルブであり、噴射ガン8のトリガー(図示せず)と連動して開閉して、液化炭酸ガスの供給を制御している。そして、85はバルブ61の開閉に合わせて液化炭酸ガス供給路から供給された液化炭酸ガスを噴出する噴出部であり、88は噴出部85から噴出された液化炭酸ガスが膨張してドライアイスの微小粒子を生成する膨張空間である。なお、87は、液化炭酸ガスの流量調節のために設けられたオリフィス板である。
【0057】
そして、86はキャリアガス供給路7(図1)の終端部であり、キャリアガス供給路7から供給されたキャリアガス(例えば、圧縮空気)を、合流部821において膨張空間88で生成されたドライアイスの微小粒子と合流させることにより、ドライアイスの微小粒子の移動速度を加速させることができる。加速されたドライアイスの微小粒子は、噴射ノズル82の先端の噴射口822まで噴射路を移動した後、噴射口822から洗浄対象面に向けて噴射されて、洗浄が行われる。なお、キャリアガスとしては特に限定されないが、コスト面を考慮すると、上記したように、圧縮空気を用いることが好ましい。
【0058】
このとき、打錠用杵の場合には洗浄対象面が凹状平面であるため、噴射口から洗浄対象面に向けてダイレクトにドライアイスの微小粒子を噴出させることができ、効率的な洗浄を行うことができるが、打錠用臼の場合には洗浄対象面が円筒の内周面であるため、噴射口から噴射されたドライアイスの微小粒子は、洗浄対象面と平行に移動していき、洗浄対象面にダイレクトには吹き付けられず、効率的な洗浄を行うには十分とは言えない。
【0059】
このため、本実施の形態において、噴射ノズルの先端は、打錠用杵洗浄アダプターまたは打錠用臼洗浄アダプターを取り付け自在に形成されていることが好ましく、打錠用杵洗浄アダプターまたは打錠用臼洗浄アダプターを適宜交換して、噴射ノズルに装着することにより、1つの噴射ガンであっても、打錠用杵および打錠用臼を効率的に洗浄することができる。
【0060】
図3は、噴射ノズル82に打錠用杵洗浄アダプター820aが取り付けられた噴射ガン8の模式断面図である。また、図4は、噴射ノズル82に打錠用臼洗浄アダプター820bが取り付けられた噴射ガン8の模式断面図である。なお、図4においては、打錠用臼洗浄アダプター820bの先端に、ドライアイスの微小粒子の噴射方向を制御する複数の噴射方向制御管823が、放射状に設けられている。
【0061】
図3に示すように、打錠用杵洗浄アダプター820aを装着させることにより、ドライアイスの微小粒子を噴射口822から一方向に集中させて噴射することができるため、打錠用杵の洗浄対象面の刻印部等の隙間にもドライアイスの微粒子を十分に侵入させて、打錠用杵の洗浄対象面を効率的に、短時間で洗浄することができる。
【0062】
一方、図4に示すように、複数の噴射方向制御管823が放射状に設けられた打錠用臼洗浄アダプター820bを装着させることにより、ドライアイスの微小粒子を噴射口822から放射状に噴射して、円筒状の打錠用臼の洗浄対象面の全体に対して、均等に噴射することができるため、打錠用臼の洗浄対象面を効率的に、短時間で洗浄することができる。なお、この噴射方向制御管は、噴射ノズル82の軸に対して角度θで設け、交差角度θ図4では120度)で噴射するように適宜設定される。
【0063】
(2)洗浄対象物固定台
次に、洗浄対象物固定台について説明する。洗浄に際しては、噴射ガンと洗浄対象物(打錠用杵または打錠用臼)とを同時に操作して、洗浄対象面に対して適切にドライアイスの微粒子を噴射させる必要があるため、本実施の形態においては、洗浄対象物固定台を設けて、洗浄対象物を固定した状態にして、洗浄を行う。これにより、洗浄作業の負担軽減を図ることができると共に、無駄のない効率的な洗浄を行うことができる。
【0064】
なお、洗浄対象物固定台には、打錠用杵固定用と打錠用臼固定用の2種類の洗浄対象物固定台があるが、固定台本体部と取付部材とから洗浄対象物固定台が構成されている点では同様である。洗浄対象物固定台は耐久性の面から金属製であることが好ましく、その内でも、軽いアルミニウム製の洗浄対象物固定台が好ましい。
【0065】
(a)打錠用杵固定用の洗浄対象物固定台
図5は、本実施の形態における打錠用杵固定用の洗浄対象物固定台の構成を説明する(a)固定台本体部の模式斜視図、(b)取付部材の模式斜視図、(c)取付部材の模式側面図である。
【0066】
図5(a)に示すように、固定台本体部91には、上面側に複数の台座911が所定の間隔で設けられており、側面に2個の固定部材取付部92が設けられている。固定部材取付部92は、それぞれ一対のボルト・ナット921とスペーサー922を備え、ボルト・ナット921を介して取付部材93がねじ止めされる。
【0067】
図5(b)に示すように、取付部材93は、板状の打錠用杵固定部931と、固定台本体部91の台座911に対応する位置に設けられた打錠用杵押圧部932とを備えている。なお、図示していないが、打錠用杵固定部931には、固定部材取付部92に対応する位置に、ボルト・ナット921との嵌合用の切欠き部934が設けられており、この切欠き部934とボルト・ナット921とを嵌合させてボルト・ナット921を回転させて螺合することにより、打錠用杵を固定することができる。なお、打錠用杵押圧部932には、先端にキャップ部が設けられており、コイルバネ933によって付勢することにより、キャップ部が打錠用杵の外周部後端に設けられた凹部(図10参照)に入り込むため、打錠用杵の上下左右への変動が規制されて、打錠用杵を安定して固定することができる。
【0068】
図6は、打錠用杵固定用の洗浄対象物固定台9に、6本の打錠用杵21が挿通されて固定されている状態を示す模式斜視図である。なお、本実施の形態の打錠用杵固定用の洗浄対象物固定台9の固定台本体部91の場合、図5(a)に示すように、一側縁側に6本、他側縁側に6本、計12本の打錠用杵21を固定することができる。
【0069】
図6に示すように、打錠用杵21は、下側端部が洗浄対象物固定台9の台座911に挿通されて立設状態とされた後、固定部材取付部92を用いてねじ止めすることにより、洗浄対象物固定台9に固定されている。
【0070】
(b)打錠用臼固定用の洗浄対象物固定台
図7は、本実施の形態における打錠用臼固定用の洗浄対象物固定台の構成を説明する(a)固定台本体部の模式斜視図、(b)取付部材の模式斜視図、(c)取付部材の模式側面図である。
【0071】
図7(a)に示すように、固定台本体部91には、上面側に複数の台座911が所定の間隔で設けられており、側面に2個の固定部材取付部92が設けられている。固定部材取付部92は、それぞれ一対のボルト・ナット921とスペーサー922を備え、ボルト・ナット921を介して取付部材93が螺着される。
【0072】
図7(b)に示すように、取付部材93には、板状の打錠用臼固定部9311と、固定台本体部91の台座911に対応する位置に設けられた打錠用臼押圧部9321とを備えている。なお、図示しないが、打錠用臼固定部9311には、固定部材取付部92に対応する位置に、ボルト・ナット921との嵌合用の切欠き部934が設けられており、この切欠き部934とボルト・ナット921とを嵌合させてボルト・ナット921を回転させて螺合することにより、打錠用臼を固定することができる。なお、打錠用臼押圧部9321には、先端にキャップ部が設けられており、コイルバネ933によって付勢することにより、キャップ部が打錠用臼の外周部に設けられた凹部(図10参照)に入り込むため、打錠用臼の上下左右への変動が規制されて、打錠用臼を安定して固定することができる。
【0073】
図8は、打錠用臼固定用の洗浄対象物固定台9に、6個の打錠用臼22が固定されている状態を示す模式斜視図である。なお、本実施の形態の打錠用臼固定用の洗浄対象物固定台9の固定台本体部91についても、図8に示すように、一側縁側に6個、他側縁側に6個、計12個の打錠用臼22を固定することができる。
【0074】
図8に示すように、打錠用臼22は、上方から台座911に嵌め込まれた後、固定部材取付部92を用いてねじ止めすることにより、洗浄対象物固定台9に固定されている。
【0075】
(3)箱状収納体
本実施の形態において、少なくとも1台の噴射装置と、少なくとも1台の洗浄対象物固定台とが、所定の空間を有する箱状収納体に収納されていることが好ましい。そして、箱状収納体の側面には、噴射装置を操作するための手指挿入孔が少なくとも1つ設けられていることが好ましい。
【0076】
図9は、1台の噴射装置と1台の洗浄対象物固定台とが収納された箱状収納体の一例を示す図である。図9に示すように、箱状収納体10の側面には、噴射装置を操作するための円形の孔が手指挿入孔101として少なくとも1つ設けられている(図では2個)ことが好ましく、手指挿入孔101にはグローブが装着されて、箱状収納体10の内部と隔絶されている。手指挿入孔101のグローブに手指を挿入して、噴射装置の噴射ガンと洗浄対象物固定台とを操作することにより、安全、確実に洗浄作業を行うことができる。
【0077】
また、箱状収納体10の側面には、打錠用杵または打錠用臼、噴射ガン8、洗浄対象物固定台9のそれぞれを搬入・搬出するために、開閉自在な搬入・搬出口102が設けられていることが好ましい。
【0078】
また、箱状収納体10の床面には、ターンテーブルなど、洗浄対象物固定台9を載置して移動させるための移動台103が設けられていることが好ましい。これにより、複数の打錠用杵または打錠用臼が固定されて、重量が大きくなった洗浄対象物固定台9であっても、所定の洗浄位置まで容易に移動させて、打錠用杵や打錠用臼の洗浄対象面に向けてドライアイスの微小粒子を正確に噴射することができる。
【0079】
なお、箱状収納体10には、ドライアイスの気化によって箱状収納体内の圧力が上昇しないように、排気路が連結されていることが好ましい。
【0080】
また、収納体内に殺菌灯を設置した場合には、洗浄を終えた打錠用杵や打錠用臼をそのまま殺菌することができるため好ましい。
【0081】
2.本実施の形態に係る打錠用杵または打錠用臼の洗浄方法
次に、上記した洗浄装置を用いて行う本実施の形態に係る打錠用杵または打錠用臼の洗浄方法について、手順を追って、具体的に説明する。なお、以下では、打錠用杵の洗浄を例に挙げて説明するが、打錠用臼の場合も同様に考えることができる。
【0082】
(1)打錠用杵の洗浄対象物固定台への固定
まず、打錠機から取り外した打錠用杵(下杵212)のそれぞれを、図5(a)に示す各台座911に挿通した後、図5(b)に示す取付部材93の切欠き部934をボルト・ナット921に嵌合させて螺合し、図6に示すように、下杵212を洗浄対象物固定台9へ固定する。
【0083】
(2)洗浄対象物固定台の箱状収納体への収納
次に、打錠用杵が固定された洗浄対象物固定台9を、図9に示すように、箱状収納体10の床面に載置する。
【0084】
(3)打錠用杵へのドライアイスの噴射
次に、手指挿入孔101のグローブに手指を挿入して、片方の手を噴射ガン8に添えると共に、他方の手を洗浄対象物固定台9に添え、噴射ノズル82の先端が打錠用杵の洗浄対象面と正対するように、調整する。
【0085】
その後、噴射ガン本体部81に設けられた液化炭酸ガス噴出用トリガー84bを引くことにより、液化炭酸ガス供給路6から噴射ノズル82へ向けて液化炭酸ガスを噴出させ、ドライアイスの微粒子を形成させる。このとき、併せて、キャリアガス噴射用トリガー84aを引くことにより、形成されたドライアイスの微粒子をキャリアガスと合流させる。これにより、前記したように、ドライアイスの微小粒子の移動速度が加速されて、噴射ノズル82の先端から洗浄対象面に向けて噴出され、洗浄対象面を洗浄することができる。
【0086】
ドライアイスの微小粒子の粒子径としては、120~160μmであることが好ましく、このような粒子径とすることにより、洗浄対象面を細かく洗浄できると共に、洗浄対象面の刻印部等の隙間にもドライアイスの微粒子を十分に侵入させて洗浄することができる。
【0087】
なお、より効率的な洗浄を考慮すると、ドライアイスの微粒子は、洗浄対象面の垂直方向からではなく、ある程度傾斜した方向から噴射することが好ましい。
【0088】
図11は、打錠用杵の洗浄対象面の形状を示す断面図であり、215は打錠面、217は側面であり、θ、θは洗浄対象面に対する噴射角度である。具体的なθ、θとしては、30~60°であることが好ましい。
【0089】
なお、打錠用臼の洗浄においては、図12に示すように、洗浄対象面である打錠用臼22の内周面221に対してθの噴射角度とする。具体的なθとしては、θ、θと同様に、30~60°であることが好ましい。図12は、打錠用臼の洗浄対象面における形状を示す断面図である。
【0090】
本実施の形態において、ドライアイスの微粒子の噴射時間、即ち、洗浄時間は、打錠用杵と打錠用臼の45組を洗浄しても、20分程度で洗浄作業を完了することができる。そして、洗浄液を用いて行う従来の洗浄方法と異なり、洗浄後、水洗して洗浄液を取り除く必要もない。このため、従来の洗浄方法における所要時間4~5時間に比べて、大きな時間短縮を図ることができる。
【0091】
そして、ドライアイスの微粒子を生成するための液化炭酸ガスボンベは、通常のサイズであれば、3時間程度、連続使用が可能であり、また、安価に再充填もできるため、洗浄作業にかかるコストも大きく低減させることができる。
【0092】
また、ドライアイスから気化した炭酸ガスや、除去された付着物などは、箱状収納体の内部空間に留まっているため、作業環境が汚染されることもなく、安全に洗浄作業を行うことができる。
【0093】
図13に、打錠用杵の(a)洗浄前、(b)洗浄後の拡大写真を示す(洗浄時間:約15秒)。また、図14に、打錠用臼の(a)洗浄前、(b)洗浄後の拡大写真を示す(洗浄時間:約30秒)。いずれも、十分な洗浄が行われていることが分かる。
【0094】
(4)洗浄済みの打錠用杵の保管
洗浄が完了した打錠用杵は、従来と同様に、防錆油を塗布して保管する。
【0095】
以上述べてきたように、本実施の形態に基づけば、打錠用杵または打錠用臼の洗浄に際して、洗浄装置の大型化を招くことなく、また、洗浄に要する時間や労力をさらに低減させることができ、さらに、打錠面に設けられた刻印および/または割線用小突起などの微細な凹凸部分の隙間も十分な洗浄が可能な洗浄技術を提供することができる。
【0096】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。なお、本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0097】
2 液化炭酸ガスボンベ
3 エアコンプレッサー
4 ウオータセパレータ
5 制御ユニット
6 液化炭酸ガス供給路
7 キャリアガス供給路
8 噴射ガン
9 洗浄対象物固定台
10 箱状収納体
20 成型部
21 打錠用杵
22 打錠用臼
61 バルブ
81 噴射ガン本体部
82 噴射ノズル
84a キャリアガス噴出用トリガー
84b 液化炭酸ガス噴出用トリガー
85 噴出部
86 (キャリアガス供給路の)終端部
87 オリフィス板
88 膨張空間
91 固定台本体部
92 固定部材取付部
93 取付部材
101 手指挿入孔
102 搬入・搬出口
103 移動台
211 上杵
212 下杵
215 打錠面
217 側面
221 (打錠用臼の)内周面
820a 打錠用杵洗浄アダプター
820b 打錠用臼洗浄アダプター
821 合流部
822 噴射口
823 噴射方向制御管
911 台座
921 ボルト・ナット
922 スペーサー
931 打錠用杵固定部
932 打錠用杵押圧部
933 コイルバネ
934 切欠き部
9311 打錠用臼固定部
9321 打錠用臼押圧部
θ 噴射ノズルの軸に対する角度
θ 交差角度
θ、θ、θ 噴射角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14