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特開2022-161461コンクリート打設装置及びコンクリート打設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161461
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】コンクリート打設装置及びコンクリート打設方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/04 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
E04G21/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066303
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】橋本 学
(72)【発明者】
【氏名】内田 拓史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雄紀
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172CA31
2E172CA55
(57)【要約】
【課題】コンクリートを円滑に分配可能なコンクリート打設装置及びコンクリート打設方法を提供する。
【解決手段】コンクリート打設装置1は、上方から供給されたコンクリートを搬送するコンクリート供給管5と、水平方向に延在する水平管部7bを有しコンクリート供給管5の下流側に水平回転可能に接続されるコンクリート分配管7と、を備え、コンクリート供給管5の接続管部5cの下方に、コンクリート分配管7の鉛直な接続管部7aが回転継手部13を介して管軸周りに回転可能に接続されており、回転継手部13の鉛直下方の位置でコンクリート分配管7を支持するとともに管軸周りに回転可能な回転補助部50を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方から供給されたコンクリートを搬送するコンクリート供給管と、水平方向に延在する水平管部と前記コンクリートを吐出するコンクリート吐出口とを有し前記コンクリート供給管の下流側に水平回転可能に接続されるコンクリート分配管と、を備え、
前記コンクリート供給管の下流端部の下方に、前記コンクリート分配管の鉛直な上流端部が回転継手部を介して管軸周りに回転可能に接続されており、
前記回転継手部の鉛直下方の位置で前記コンクリート分配管を保持するとともに前記管軸周りに回転可能な回転補助部を備える、コンクリート打設装置。
【請求項2】
前記回転補助部が、前記コンクリート分配管の重量の一部を支持する、請求項1に記載のコンクリート打設装置。
【請求項3】
前記回転補助部よりも回転径方向外側の位置で前記水平管部を支持し回転周方向に案内する回転案内部を更に備える、請求項1又は2に記載のコンクリート打設装置。
【請求項4】
前記回転継手部では、
前記コンクリート供給管及び前記コンクリート分配管のうちのいずれか一方を第1管、他方を第2管としたとき、
前記第1管の前記第2管側の端部には、前記第2管の前記第1管側の端部に形成された第2管フランジの裏面側に回り込んで当該裏面に対向するように設けられたストッパ面を有し前記第1管から遠ざかる方向への前記第2管フランジの管軸方向の変位を前記ストッパ面によって規制するフランジ保持部が設けられており、
前記第2管フランジの前記裏面と前記ストッパ面との間には摩擦低減材が挟まれている、請求項1~3の何れか1項に記載のコンクリート打設装置。
【請求項5】
前記コンクリート分配管は、前記水平管部の下流側に他の回転継手部を介して接続され前記水平管部の管軸周りに回転可能な分配管下流部を有し、
前記分配管下流部は、回転軸線に交差する方向に前記コンクリートを送出する、請求項1~4の何れか1項に記載のコンクリート打設装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のコンクリート打設装置を用いて、前記コンクリート供給管に対して前記コンクリート分配管を水平回転させ、前記回転継手部を略中心とする水平な円周上に配置された各分配先に前記コンクリート分配管のコンクリート吐出口を移動させてコンクリートを投入する工程を備える、コンクリート打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設装置及びコンクリート打設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載のコンクリート打設装置が知られている。この打設装置は、下方から供給されるコンクリートを流通させる第1のコンクリート配管と、コンクリートの吐出口が形成された第2のコンクリート配管と、を備えている。第2コンクリート配管が、第1コンクリート配管から更に上方に延びるとともに、継手部を介して第1コンクリート配管に対し水平回転可能に連結されている。第2コンクリート配管は継手部の上方で屈曲して水平に延び、回転中心から離れた位置に吐出口が配置されることで、コンクリートを円周上に分配可能とすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-217906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の打設装置においては、第2コンクリート配管が第1コンクリート配管との継手部で片持ち支持され回転径方向に張り出している。従って、第2コンクリート配管の重量に起因して継手部には周方向に不均等な力が作用し、第2コンクリート配管の回転抵抗が大きくなり、コンクリートの分配の円滑性に問題が発生する可能性がある。そこで、本発明は、コンクリートを円滑に分配可能なコンクリート打設装置及びコンクリート打設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のコンクリート打設装置は、上方から供給されたコンクリートを搬送するコンクリート供給管と、水平方向に延在する水平管部と前記コンクリートを吐出するコンクリート吐出口とを有しコンクリート供給管の下流側に水平回転可能に接続されるコンクリート分配管と、を備え、コンクリート供給管の下流端部の下方に、コンクリート分配管の鉛直な上流端部が回転継手部を介して管軸周りに回転可能に接続されており、回転継手部の鉛直下方の位置でコンクリート分配管を保持するとともに管軸周りに回転可能な回転補助部を備える。
【0006】
回転補助部が、コンクリート分配管の重量の一部を支持する、こととしてもよい。また、本発明のコンクリート打設装置は、回転補助部よりも回転径方向外側の位置で水平管部を支持し回転周方向に案内する回転案内部を更に備える、こととしてもよい。
【0007】
回転継手部では、コンクリート供給管及びコンクリート分配管のうちのいずれか一方を第1管、他方を第2管としたとき、第1管の第2管側の端部には、第2管の第1管側の端部に形成された第2管フランジの裏面側に回り込んで当該裏面に対向するように設けられたストッパ面を有し第1管から遠ざかる方向への第2管フランジの管軸方向の変位をストッパ面によって規制するフランジ保持部が設けられており、第2管フランジの裏面とストッパ面との間には摩擦低減材が挟まれている、こととしてもよい。
【0008】
コンクリート分配管は、水平管部の下流側に他の回転継手部を介して接続され水平管部の管軸周りに回転可能な分配管下流部を有し、分配管下流部は、回転軸線に交差する方向にコンクリートを送出する、こととしてもよい。
【0009】
本発明のコンクリート打設方法は、上記何れかのコンクリート打設装置を用いて、コンクリート供給管に対してコンクリート分配管を水平回転させ、回転継手部を略中心とする水平な円周上に配置された各分配先にコンクリート分配管のコンクリート吐出口を移動させてコンクリートを投入する工程を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンクリートを円滑に分配可能なコンクリート打設装置及びコンクリート打設方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態のコンクリート打設装置及びコンクリート打設方法が適用される立坑の施工現場の断面図である。
図2図1の立坑の平面図である。
図3】コンクリート打設装置の要部を示す斜視図である。
図4】回転継手部の分解斜視図である。
図5】回転継手部の断面図である。
図6】回転継手部の変形例を示す断面図である。
図7】変形例に係るコンクリート打設装置の要部を示す斜視図である。
図8】変形例に係る型枠内の扁平ホースを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係るコンクリート打設装置1及びコンクリート打設方法について詳細に説明する。図1は、本実施形態のコンクリート打設装置1及びコンクリート打設方法が適用される円形の立坑91の施工現場の断面図であり、図2はその平面図である。図3は、コンクリート打設装置1の要部を示す斜視図である。立坑91は、例えば、直径約10m、深さ約40mで地下に構築される円形の立坑であり、立坑91の施工現場では厚さ約1.5mの円筒状の側壁93がコンクリート打設によって施工される。このコンクリート打設のために、立坑91の周縁部に側壁93の型枠95が設けられ、立坑91内で型枠95の内側の上方に作業ステージ97が設けられる。
【0013】
以下、型枠95内にコンクリートを打設するためのコンクリート打設装置1について説明する。コンクリート打設装置1は、地上のコンクリート供給設備2(例えばコンクリートポンプ)から型枠95内までコンクリートを搬送するコンクリート配管3を備えている。コンクリート打設装置1は、同じ構成のコンクリート配管3を2系統備えているが、以下では主に1つのコンクリート配管3について説明し、重複する説明を省略する。
【0014】
コンクリート配管3は、大きく分けて、上流側のコンクリート供給管5と、下流側のコンクリート分配管7と、を備えている。コンクリート供給管5は、上記コンクリート供給設備2から作業ステージ97近傍まで延びている。コンクリート分配管7は、作業ステージ97近傍でコンクリート供給管5に連結されており型枠95の位置まで延びている。コンクリート供給管5とコンクリート分配管7との連結部9は、立坑91のほぼ中心軸線の位置にある。コンクリート配管3が2系統存在することから、各系統の連結部9は立坑91の中心軸線を挟んで互いに近接して配置される。
【0015】
コンクリート供給管5は、上流側から、鉛直管部5aと水平管部5bと接続管部5cとを主に備えている。鉛直管部5aは立坑91の壁に沿って鉛直に延びている。鉛直管部5aの途中には、管内でコンクリートが鉛直落下することによる材料分離を抑制するために、S字管や曲がり管等が適宜含まれていてもよい。水平管部5bは、鉛直管部5aの下端から立坑91の内側に屈曲し立坑91のほぼ中心の位置まで水平に延びている。接続管部5cは、コンクリート供給管5の下流端部であり、立坑91のほぼ中心の位置で水平管部5bから屈曲し鉛直下方に向けて延びている。このようなコンクリート供給管5により、地上のコンクリート供給設備2から作業ステージ97近傍までコンクリートが搬送される。
【0016】
コンクリート分配管7は、上流側から、接続管部7aと、水平管部7bと、吐出管部7cと、ゴムホース7dと、を備えている。接続管部7aは、コンクリート供給管5の接続管部5cの下方に同軸に接続されて鉛直下方に延びている。水平管部7bは、接続管部7aから水平に屈曲し立坑91の半径に概ね沿って、型枠95の上方の位置まで延びている。吐出管部7cは、型枠95の上方の位置で水平管部7bから鉛直下方に屈曲している。ゴムホース7dは可撓性の管であり、吐出管部7cから下方に延びるように当該吐出管部7cに接続されている。ゴムホース7dの下流端部にはコンクリート吐出口8が設けられており、当該ゴムホース7dを通じてコンクリートが吐出される。このようなコンクリート分配管7により、立坑91のほぼ中心軸線の位置から立坑91の半径に概ね沿って、水平にコンクリートが搬送される。
【0017】
コンクリート供給管5とコンクリート分配管7との連結部9について更に説明する。連結部9においては、鉛直な接続管部5cと鉛直な接続管部7aとが、回転継手部13を介して同軸で上下方向に連結されている。接続管部5cは所定の支持部(図示せず)を介して作業ステージ97に固定されており、更には接続管部5cを含むコンクリート供給管5全体が作業ステージ97及び立坑91に対して不動に固定されている。そして、詳細は後述するが回転継手部13の構造に基づいて、接続管部7aは、接続管部5cに対して相対的に、自軸周りに回転可能である。従って、立坑91内においては、接続管部7aを含むコンクリート分配管7全体が回転継手部13を中心として水平回転可能である。この水平回転によれば、コンクリート分配管7のコンクリート吐出口8は、立坑91とほぼ同心の円周上を、型枠95の上端部近傍の高さで、周方向に移動する。
【0018】
一方、型枠95の上端近傍には、複数の(例えば約20個の)アサガオホッパー15が立坑91の周方向に規則的に配置されている。各アサガオホッパー15の排出口には、型枠95内をコンクリート打設位置まで鉛直下方に延びるサニーホース17が取付けられている。前述したコンクリート分配管7の水平回転により、コンクリート分配管7のコンクリート吐出口8が、各々のアサガオホッパー15(分配先)に対して順々にアクセスすることが可能である。
【0019】
以上のようなコンクリート打設装置1を用いたコンクリート打設方法は次の通りである。コンクリート分配管7の水平回転により、コンクリート吐出口8が1つのアサガオホッパー15の位置に移動され、当該アサガオホッパー15の上方にコンクリート吐出口8が配置される。ここでは、施工作業者が水平管部7bを回転方向に押すことにより、手動でコンクリート分配管7が水平回転されてもよい。またここでは、ゴムホース7dの下端部がアサガオホッパー15内に挿入されてもよい。また、コンクリート分配管7の水平回転の位置決め精度が悪い場合にも、コンクリート分配管7の最下流部が可撓性のゴムホース7dであるので、ゴムホース7dのみを変形させることで、コンクリート分配管7全体を回転させることなく、コンクリート吐出口8の位置を周方向に微調整することができる。よって、コンクリート分配管7の過度な位置決め精度は要求されない。
【0020】
続いて、1つのアサガオホッパー15の位置にコンクリート吐出口8が配置された状態で所定のバルブが開かれると、コンクリート供給設備2からのコンクリートが、コンクリート供給管5及びコンクリート分配管7を通じてアサガオホッパー15に投入され、更にサニーホース17を通じて型枠95内に投入される。このとき、型枠95内に居る施工作業者によってコンクリートの締固め等が実行される。そして、必要量のコンクリートが投入された時点で、所定のバルブが閉じられ当該アサガオホッパー15へのコンクリート投入が停止される。
【0021】
その後、再びコンクリート分配管7を水平回転させ、コンクリート吐出口8を隣接のアサガオホッパー15内に移動させ、上記同様にして当該アサガオホッパー15にコンクリートが投入される。以上が繰り返されることで、半数のアサガオホッパー15に対しコンクリートが投入され、型枠95の周方向の半分に亘って均等に所定高さのコンクリートが打設される。前述のとおり、コンクリート配管3は2系統存在するので、型枠95の残りの半周分についても他方のコンクリート配管3を用いてコンクリート打設が同様に行われることで、型枠95の全周について所定高さのコンクリート打設が完了する。
【0022】
上記のような各アサガオホッパー15へのコンクリート分配を円滑に可能にするために、コンクリート打設装置1は、次に説明するような回転継手部13と、回転補助部50と、回転案内部61と、を備えている。
【0023】
〔回転継手部13〕
図4は回転継手部13の分解斜視図であり、図5はその断面図である。図に示されるように、接続管部5cの下端にはフランジ21が形成されている。これに対し、接続管部7aの上端には、上記のフランジ21よりも小径のフランジ23(第2管フランジ)が形成されている。このようなフランジ21とフランジ23とが管軸方向に突き合わされることで、コンクリート供給管5(第1管)の接続管部5c(下流端部)とコンクリート分配管7(第2管)の接続管部7a(上流端部)とが接続されている。
【0024】
フランジ21の下方には、当該フランジ21とほぼ同じ外径のリング状をなし、フランジ23を掛止して保持するためのフランジ受リング29がボルト止めされている。なお、図4中の符号30は、上記ボルト止めのためのボルト穴である。フランジ受リング29の内周面下部には、フランジ23の下面23b側に回り込むように、内周側に張出したフランジ受部31が設けられている。接続管部7aが後述するスラストワッシャ33,33と一緒に上方からフランジ受リング29に挿通され、フランジ23がフランジ受部31の上面31aに引っ掛かることで、接続管部7aがフランジ受部31によって支持されている。このフランジ受部31の上面31a(ストッパ面)が、フランジ23の下面23b(第2管フランジの裏面)に対向し当該フランジ23の下方への変位を規制している。その一方、フランジ23の上方への変位は、フランジ21の下面21bによって規制されている。
【0025】
このように、接続管部5cの下端部に設けられたフランジ21及びフランジ受リング29によれば、フランジ23の裏面側(下面23b側)に回り込んで下面23bに対向するように設けられたストッパ面(フランジ受部31の上面31a)を有し、フランジ23の下方への変位を上記ストッパ面によって規制するフランジ保持部47が構成される。すなわち、フランジ保持部47は、フランジ23に突き合わされるように接続管部5cに形成されたフランジ21と、フランジ21の下面21bの外周側に取り付けられストッパ面(上面31a)を有するフランジ受リング29と、を備えるものである。
【0026】
フランジ受リング29の上部の内周面と、フランジ受部31の上面31aと、フランジ21の下面21bと、で囲まれるスペースには、フランジ23が、回転可能な程度の径方向のクリアランスをもって収納されている。このようなクリアランスにより、接続管部5cに対して接続管部7aが管軸周りに回転可能である。
【0027】
更に、フランジ23の下面23bと、フランジ受部31の上面31aと、の間には、スラストワッシャ33(摩擦低減材)が挟み込まれている。スラストワッシャ33は、管軸方向から見てフランジ23の下面23bとほぼ同一形状の円環薄板状をなす。スラストワッシャ33は、その材料及び表面状態により、鋼材の平滑面(フランジ23の下面23b、フランジ受部31の上面31a)に対する低摩擦を実現するものである。スラストワッシャ33の上端面33aはフランジ23の下面23bに密着し当該下面23b上を円滑に滑る。また、スラストワッシャ33の下端面33bはフランジ受部31の上面31aに密着し当該上面31a上を円滑に滑る。スラストワッシャ33の素材は、例えば高力黄銅鋳物である。市販のスラストワッシャが上記スラストワッシャ33として採用されてもよい。また、フランジ21の下面21bとフランジ23の上面23aとの間にも、同様のスラストワッシャ33が挟み込まれている。
【0028】
以上のような回転継手部13においては、コンクリート分配管7の重量による荷重がフランジ23の下面23bからフランジ受部31の上面31aに対して鉛直方向に作用するので、この下面23bと上面31aとの間の摩擦が、円滑な接続管部7aの回転の妨げになり得る。これに対して、回転継手部13によれば、スラストワッシャ33の存在により、フランジ23の下面23bと、フランジ受部31の上面31aと、の摩擦が低減される。また同様に、フランジ21の下面21bとフランジ23の上面23aとの間のスラストワッシャ33により、下面21bと上面23aとの摩擦が低減されている。以上のような回転継手部13の構成は、接続管部5cに対する接続管部7aの回転抵抗を低減し、コンクリート分配管7の水平回転の円滑性に寄与する。
【0029】
また、上記のような回転継手部13に代えて、図6に示されるような回転継手部13Bが採用されてもよい。回転継手部13Bでは、フランジ21の下面21bとフランジ23の上面23aとの間のスラストワッシャ33が省略されている。また、フランジ21の下面21bにはコンクリートの流路を環状に囲むOリング27が設置されている。このOリング27がフランジ23の上面23aとの間に挟み込まれることにより、コンクリート配管3の管内が管外から封止され、コンクリートの漏洩が防止されている。なお、Oリング27が無い回転継手部13(図5)は、Oリング27の摩擦に起因する回転抵抗が削減される観点では回転継手部13Bよりも好ましい。
【0030】
また、回転継手部13Bでは、フランジ受リング29の上部に、外周面から内周面まで径方向に貫通するネジ穴41が対称の位置に一対形成されている。このネジ穴41に蝶ねじ43が取り付けられ、蝶ねじ43の先端がフランジ23の外周面に突当てられるように当該蝶ねじ43を締め付けることで、上記のようなコンクリート分配管7の回転を禁止することもできる。回転継手部13Bのうち前述の回転継手部13と同一又は同等の構成要素については、図面で同一符号を付し重複する説明を省略する。
【0031】
〔回転補助部50〕
図1及び図3に示されるように、コンクリート打設装置1は作業ステージ97上に設けられた回転補助部50を備えている。回転補助部50は、回転継手部13の鉛直直下の位置でコンクリート分配管7を保持し、当該コンクリート分配管7の重量の一部を支持するとともに、コンクリート分配管7と一緒に回転継手部13の回転軸線周りに水平回転可能である。
【0032】
具体的な構造として、回転補助部50は、作業ステージ97上に設けられたケーブルジャッキ51と、ケーブルジャッキ51の上に取付けられた保持台座53と、を有している。ケーブルジャッキ51は、本来、ケーブルドラムに巻かれたケーブルを送り出す際に使用される器具である。ケーブルジャッキ51は、脚部等を含むジャッキ本体部51aと、ジャッキ本体部51aに対して昇降する軸受部51bと、を有しており、本来の使用方法では、ケーブルドラムの中心穴に水平に挿通されたシャフトが、2台のケーブルジャッキ51の各軸受部51bで両持ちされ、各軸受部51bを上昇させることでケーブルドラムを持ち上げる。なお、軸受部51bは、ジャッキ本体部51aに対し相対的に水平回転(鉛直軸周りの回転)が可能でもある。
【0033】
ケーブルジャッキ51は、回転継手部13の鉛直下方に配置され、作業ステージ97に対してジャッキ本体部51aが固定されている。ジャッキ本体部51aに対する軸受部51bの回転軸線は、接続管部7aの管軸に一致しており、すなわち回転継手部13の回転軸線に一致している。軸受部51bには適切な金具等を介して側面視三角形状の保持台座53が固定されており、コンクリート分配管7の接続管部7aと水平管部7bとの屈曲部が保持台座53の溝に嵌り込むようにして当該保持台座53に保持されている。このため、コンクリート分配管7は保持台座53及びケーブルジャッキ51に対して変位しないようになっている。また、ケーブルジャッキ51の軸受部51bが伸長する方向に操作されることで、コンクリート分配管7の重量の一部が回転補助部50によって支持される。
【0034】
この回転補助部50では、ケーブルジャッキ51の高さに対応する高さで、コンクリート分配管7の水平管部7bを作業ステージ97の上面から浮かせて配置することが可能である。従って、作業ステージ97上に存在する障害物等が水平管部7bの回転移動の邪魔になりにくい。また、コンクリート分配管7を回転させる際に施工作業者が回転方向に押しやすい高さに水平管部7bを配置しやすい。
【0035】
〔回転案内部61〕
図1図3に示されるように、回転案内部61は、回転補助部50よりも回転径方向外側の位置で水平管部7bを支持し回転周方向に案内する。回転案内部61は、1つのコンクリート配管3に対して水平管部7bの延在方向に間隔をあけて2個所設けられており、図3にはそのうちの1個所のみが示されている。2箇所の回転案内部61は互いに同一の構成を有しているので、重複する説明は省略する。
【0036】
具体的には、図2及び図3に示されるように、回転案内部61は、レール63と、当該レール63上を転動する車輪65と、を備えている。レール63は、立坑91の周方向に延びる円環状をなしており、作業ステージ97に支持されている。車輪65は、水平管部7bの下面に固定され、水平管部7bの延在方向に平行な軸周りに回転可能であり、レール63上を立坑91の周方向に転動可能である。一例として図3に示されるように、レール63は立坑91の周方向に沿って湾曲して延びるH鋼で構成されてもよい。この場合、H鋼のウエブを水平にする姿勢とし、当該ウエブと2つのフランジとで囲まれてなるU字状の溝63a内に車輪65が収容される。この構成により、車輪65のレール63からの脱輪が抑制される。コンクリート分配管7の重量の一部は、車輪65を介してレール63に支持される。
【0037】
以上説明したコンクリート打設装置1及びコンクリート打設方法による作用効果について説明する。図3等に示されるように、コンクリート分配管7の接続管部7aの下端部が回転補助部50に保持されるので、接続管部7aの管軸が回転継手部13及びケーブルジャッキ51の回転軸線からずれにくく、回転継手部13に対して周方向に不均等な力が作用しにくい。従って、回転継手部13においては周方向に偏った部位同士の摩擦が抑制され、回転継手部13における回転抵抗が低減される。その結果、コンクリート分配管7の円滑な水平回転が可能になる。また、回転補助部50により、回転継手部13の鉛直下方でコンクリート分配管7の重量の一部が負担されるので、回転継手部13に作用する回転軸方向の力が軽減される。従って、回転継手部13においては回転に係る部位同士の摩擦が更に低減され、回転継手部13における回転抵抗が更に低減される。このように、回転継手部13における回転抵抗が低減されることにより、コンクリート分配管7の円滑な水平回転が可能になり、コンクリートを円滑に周方向に分配することができる。
【0038】
なお、前述した特許文献1のコンクリート打設装置は、コンクリート供給設備から上方に向けてコンクリートを搬送するものであり、水平回転可能な下流側配管が、上流側配管から上方に延び出すように接続されている。この構造では、下流側配管をその回転軸線上で保持し、下流側配管の重量を一部負担させようとしたとき、下流側配管を上方から吊る構造など、比較的複雑な支持部を構築せざるを得ない。これに対し、コンクリート打設装置1は、地上のコンクリート供給設備2から地下の型枠95内に下向きにコンクリートを搬送するものであり、コンクリート分配管7の接続管部7aは、コンクリート供給管5から鉛直下方に延び出している。従って、この接続管部7aの下端の屈曲部を保持台座53を介してケーブルジャッキ51上に載置させるといった比較的シンプルな構造で、コンクリート分配管7をその回転軸線上で保持するとともにコンクリート分配管7の重量を一部負担する支持部が構築可能である。
【0039】
また、更に回転案内部61によって、コンクリート分配管7の回転軸線から比較的遠い位置で当該コンクリート分配管7の重量の一部が支持されるので、水平管部7b等の重量に起因して回転継手部13に作用する周方向に不均等な力が低減される。また、前述のとおり、回転継手部13がスラストワッシャ33を備えることにより、回転に係る部位同士の摩擦が低減されているので、回転継手部13における回転抵抗が更に低減される。従って、コンクリート分配管7の更なる円滑な水平回転が可能になり、コンクリートを更に円滑に周方向に分配することができる。
【0040】
また、このようなコンクリート打設装置1を用いた前述のコンクリート打設方法によれば、コンクリート分配管7の円滑な水平回転が可能であるので、周方向に配列された各アサガオホッパー15にコンクリート分配管7のコンクリート吐出口8を移動させてコンクリートを投入するといった工程の作業負担が軽減される。
【0041】
なお、前述のとおり、2系統のコンクリート配管3の各系統の回転継手部13(連結部9)は立坑91の中心軸線を挟んで互いに近接して配置される。従って、厳密には、各コンクリート配管3におけるコンクリート分配管7の回転軸線は、立坑91の中心軸線から僅かにずれている。但し、この回転軸線のずれは立坑91の径に比較して無視できる程度の小さいものであるので、各系統のコンクリート分配管7の回転軸線が立坑91の中心軸線に一致しているものと考えてよい。あるいは、厳密に上記回転軸線のずれに対応させて、アサガオホッパー15の配置や、回転案内部61のレール63の位置や形状が微調整されてもよい。
【0042】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、変形例を構成することも可能である。各実施形態等の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0043】
例えば、図7に示されるように、コンクリート分配管7は、外周側の回転案内部61と吐出管部7cとの間の位置で水平管部7b上に設けられた回転継手部14(他の回転継手部)を更に備えてもよい。回転継手部14は、当該回転継手部14の上流側の管に対して同軸の下流側の管を管軸周りに回転可能に連結する。回転継手部14は、前述の回転継手部13又は回転継手部13Bと同様の構造をなしてもよいが、これに限定されるものではない。吐出管部7cとゴムホース7dとを含み回転継手部14よりも下流側の部位を分配管下流部69と呼べば、分配管下流部69は、水平管部7bに対して当該水平管部7bの管軸周りに回転可能であり、この回転の回転軸線に直交する方向にコンクリートを送出し吐出する。
【0044】
このようなコンクリート分配管7を用いても、前述のコンクリート打設方法を同様に実行することができる。このコンクリート打設方法においては、コンクリート分配管7の水平回転によりコンクリート吐出口8を各アサガオホッパー15に移動させる際に、コンクリート分配管7の位置決め精度が悪い場合がある。この場合にも、分配管下流部69のみを回転させることで、コンクリート分配管7全体を回転させることなく、コンクリート吐出口8の位置を周方向に微調整することができる。よって、コンクリート分配管7の過度な位置決め精度は要求されず、その結果、コンクリート打設における作業負担が軽減される。
【0045】
また、図7に示されるように、回転補助部50においては、ケーブルジャッキ51に代えてターンテーブル52が採用されてもよい。ターンテーブル52は、作業ステージ97に対して水平回転可能に固定されており、当該ターンテーブル52の上面に保持台座53が固定されている。また、保持台座53と作業ステージ97との間に介在し保持台座53を作業ステージ97に対して水平回転可能とするものであれば、ターンテーブル52や前述のケーブルジャッキ51に限られず、種々の機構の器具を回転補助部50に採用することができる。
【0046】
また例えば、実施形態ではアサガオホッパー15の下方にサニーホース17が接続されているが、サニーホース17に代えて、図8に示されるように扁平ホース18が採用されてもよい。図8の例では、アサガオホッパー15の下方に3本の扁平ホース18が直列に連結されブラケット等を介して型枠95に支持されている。扁平ホース18は、扁平な断面形状の部分をもつゴム製のホースである。図8の例では、扁平ホース18同士の連結部(上端部及び下端部)では、互いの扁平ホース18同士の断面形状はほぼ円形であるが、連結部以外においては、図8における左右方向に潰された扁平形状の断面をなしている。そして、扁平ホース18は、内部をコンクリートが通過していないときは扁平形状を保ち、内部をコンクリートが通過するときは内圧によって断面が円形に近づくように拡がるといった弾性を備えるものである。このような扁平ホース18によれば、管内でのコンクリートの流動速度が抑えられ、管内でコンクリートが鉛直落下することによる材料分離が抑制される。
【0047】
また、回転継手部13,13Bでは、スラストワッシャ33に代えて、回転方向の摩擦を低減できるような他の種類の摩擦低減材が採用されてもよい。また、スラストワッシャ33の素材は高力黄銅鋳物には限定されず、金属製、樹脂製、セラミック製と様々な素材のスラストワッシャを適用することができる。また、スラストワッシャ33の素材としては、摩擦係数が小さいのみならず、接続管部5c、接続管部7a及びフランジ受リング29よりも摩耗し易い材質の素材が選択されてもよい。この場合、接続管部5c、接続管部7a及びフランジ受リング29の摩耗が抑制され、メンテナンス時には摩耗したスラストワッシャ33のみを交換すればよい。
【0048】
また、回転継手部13,13Bでは、ボルト締結されたフランジ21及びフランジ受リング29によってフランジ保持部47が構成されているが、フランジ保持部47が一体的に形成されてもよいし、3以上の部品によって構成されてもよい。
【0049】
また、回転継手部13,13Bでは、フランジ保持部47が接続管部5c(第1管)の下端部に設けられて、当該フランジ保持部47が接続管部7a(第2管)のフランジ23を内側に保持する構造が採用されているが、このような接続管部5cと接続管部7aとの関係が逆であってもよい。すなわち、フランジ保持部47が接続管部7a(第1管)の上端部に設けられ、当該フランジ保持部47が接続管部5c(第2管)のフランジ21を内側に保持する構造であってもよい。この場合、回転継手部13の断面図は、図5の回転継手部13の断面図を上下反転させたようなものになり、回転継手部13Bの断面図は、図6の回転継手部13Bの断面図を上下反転させたようなものになる。
【0050】
また、コンクリート供給管5とコンクリート分配管7との連結部9における回転継手部としては、前述の回転継手部13,13Bには限定されず、コンクリート供給管5に対してコンクリート分配管7を回転可能に連結するものであれば、摩擦低減材を有するものにも限定されず、種々の構造の回転継手部を採用することができる。また、実施形態のコンクリート打設装置1は、2系統のコンクリート配管3を備えているが、これには限定されず、コンクリート配管3は1系統のみが設けられてもよく、3系統以上が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…コンクリート打設装置、5…コンクリート供給管(第1管,第2管)、5c…接続管部(下流端部)、7…コンクリート分配管(第2管,第1管)、7a…接続管部(上流端部)、7b…水平管部、8…コンクリート吐出口、13,13B…回転継手部、14…回転継手部(他の回転継手部)、15…アサガオホッパー(分配先)、23…フランジ(第2管フランジ)、23b…下面(第2管フランジの裏面)、33…スラストワッシャ(摩擦低減材)、31a…上面(ストッパ面)、47…フランジ保持部、50…回転補助部、61…回転案内部、69…分配管下流部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8