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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161491
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】車両用ストッパー構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/14 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
B60N2/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066359
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板東 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】沼田 麻結
(72)【発明者】
【氏名】稲熊 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】原田 友康
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA08
3B087BB12
3B087BB14
3B087BC18
(57)【要約】
【課題】精度管理が比較的容易なストッパー機構によって、移動部材の操作性を確保しつつ、摺動部材を極力ガタつかせないように停止させておくことにある。
【解決手段】ストッパー機構(60)は、一方の部材(45)側から摺動部材(51)に当たるように差込まれる差込部(70)と、差込部(70)を摺動部材(51)の摺動方向に弾性支持する弾性支持部(80)とを有し、差込部(70)は、摺動部材を受け入れ可能な受入部(73)から摺動部材(51)の摺動方向に沿う向きに延びているとともに、受入部(73)に近づくに従って次第に他方の部材(35)側から一方の部材(45)側に向かうように構成されている。
【選択図】図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材に対して移動可能な移動部材と、前記ベース部材と前記移動部材の間に配置された摺動部材と、予め定められた位置で摺動部材を停止させるストッパー機構とを備えた車両用ストッパー構造において、
前記摺動部材は、前記ベース部材と前記移動部材のいずれか一方の部材に固定された状態で、前記一方とは異なる前記ベース部材と前記移動部材のいずれか他方の部材に摺動可能に構成されており、
前記ストッパー機構は、一方の部材側から前記摺動部材に当たるように差込まれる差込部と、前記差込部を前記摺動部材の摺動方向に弾性支持する弾性支持部とを有し、
前記差込部は、前記摺動部材を受け入れ可能な受入部から前記摺動部材の摺動方向に沿う向きに延びているとともに、前記受入部に近づくに従って次第に他方の部材側から一方の部材側に向かうように構成されている車両用ストッパー構造。
【請求項2】
前記差込部に対する前記弾性支持部の支持力を調節可能な調節機構が設けられている請求項1に記載の車両用ストッパー構造。
【請求項3】
前記弾性支持部は、前記摺動部材の摺動方向に延びる軸材と、前記軸材に嵌められた弾性材とを有して、前記弾性材の先端部で前記差込部を支持できるように構成されており、
前記調節機構は、前記軸材に螺合された第一ナットと、前記第一ナットとは逆向きで前記軸材に螺合された第二ナットとからなるダブルナットであり、
前記ダブルナットは、前記先端部とは反対側の前記弾性材の基端部を支持した状態で、前記軸材の延びる方向に位置調節可能に螺合されている請求項2に記載の車両用ストッパー構造。
【請求項4】
シート本体を支持する前記移動部材と、前記ベース部材上で前記移動部材を車両前向きの格納位置とドア開口部を向く乗降位置との間で回転移動させる回転機構と、前記ベース部材と前記移動部材の間に配置された複数の摺動部材とを備え、
前記複数の摺動部材の中のいずれか一つの摺動部材は、別の摺動部材よりも格納位置における前記シート本体の回転中心から離れて配置されているとともに、
前記ストッパー機構は、前記一つの摺動部材を停止させられる位置に配設されている請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用ストッパー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ベース部材に対して移動可能な移動部材と、ベース部材と移動部材の間に配置された摺動部材と、予め定められた位置で摺動部材を停止させるストッパー機構とを備えた車両用ストッパー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連するシート回転機構が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のシート回転機構は、シート本体を支持するプレート(移動部材)を、シートスライド機構上の前後スライドテーブル(ベース部材)上で回転させられるように構成されている。そしてプレートの下面には四つのスライド(摺動部材)が前後左右に分かれて設けられている。また前後スライドテーブルの上面には、各スライドと対応する位置に円弧形のレール部材が複数設けられている。そして乗員乗車時においては、乗員が着座したシート本体を、シート回転機構を利用してドア開口部を向く乗降位置から車両前向きの格納位置まで回転させる。このときプレートと前後スライドテーブルとは、これらの間に配置された各スライドをレール部材に対して摺動させながら相対回転していく。そしてシート本体が格納位置に到達して、プレートがロック機構にロックされることにより、シート本体が格納位置で保持されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-206113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記構成では、異音の発生を抑制する観点から、プレートのスライド(移動部材の摺動部材)が前後スライドテーブルのレール部材に隙なく接地していることが望ましい。即ち、走行時の振動等でレール部材に対してスライドが上下にガタつくと、意図しない異音が発生するおそれがある。そこで車両用シート装置に、前後スライドテーブル側に突出する弾性材を設け、この弾性材の弾性力でスライドを前後スライドテーブル側に押付けて停止させておくこともできる。しかしこのような構成では、押付けるべきスライドの上下位置が他のスライドとの関係でばらつくなどして、前後スライドテーブルと弾性材との間の隙管理が困難となりがちである。また弾性材でスライドを強く押付けておくと、格納位置のプレートを回転移動させる際に大きな操作力を要し、プレートの操作性の確保に手間取るおそれがある。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、精度管理が比較的容易なストッパー機構によって、移動部材の操作性を確保しつつ、摺動部材を極力ガタつかせないように停止させておくことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両用ストッパー構造は、ベース部材に対して移動可能な移動部材と、ベース部材と移動部材の間に配置された摺動部材と、予め定められた位置で摺動部材を停止させるストッパー機構とを備えている。ここで摺動部材は、ベース部材と移動部材のいずれか一方の部材に固定された状態で、一方とは異なるベース部材と移動部材のいずれか他方の部材に摺動可能に構成されている。この種の構成においては、精度管理が比較的容易なストッパー機構によって、移動部材の操作性を確保しつつ、摺動部材を極力ガタつかせないように停止させておくことが望ましい。そこで本発明のストッパー機構は、一方の部材側から摺動部材に当たるように差込まれる差込部と、差込部を摺動部材の摺動方向に弾性支持する弾性支持部とを有している。そして差込部は、摺動部材を受け入れ可能な受入部から摺動部材の摺動方向に沿う向きに延びているとともに、受入部に近づくに従って次第に他方の部材側から一方の部材側に向かうように構成されている。
【0006】
本発明のストッパー機構では、その差込部が、受入部に近づくに従って一方の部材側に近づく形状(概ね楔形状)となって、弾性支持部によって弾性支持されている。そして弾性支持部の支持力によって、概ね楔形状の差込部が一方の部材側から差込まれて摺動部材に当てられることで、この摺動部材を停止させられるようになる。このため、摺動部材と差込部との隙管理をシビアに行う必要がなく、ストッパー機構の精度管理を容易にすることができる。そして摺動部材に当たるように差し込まれた差込部の楔効果によって、例えば摺動部材と他方の部材との間の隙を詰めることにより、この摺動部材のガタつきを抑制できるようになる。また本発明のストッパー機構では、弾性支持部の支持力が弱い場合にも差込部の楔効果で摺動部材のガタつきを抑制できる。このため、摺動部材に過度の押付け力がかからないようになり、移動部材の操作性の確保に資する構成となる。
【0007】
第2発明の車両用ストッパー構造は、第1発明の車両用ストッパー構造において、差込部に対する弾性支持部の支持力を調節可能な調節機構が設けられている。本発明では、弾性支持部による差込部の支持力を調節機構で調節することで、移動部材の操作性と摺動部材のガタツキの抑制の両立をより確実に図ることができる。
【0008】
第3発明の車両用ストッパー構造は、第2発明の車両用ストッパー構造において、弾性支持部は、摺動部材の摺動方向に延びる軸材と、軸材に嵌められた弾性材とを有して、弾性材の先端部で差込部を支持できるように構成されている。また調節機構は、軸材に螺合された第一ナットと、第一ナットとは逆向きで軸材に螺合された第二ナットとからなるダブルナットであり、ダブルナットは、先端部とは反対側の弾性材の基端部を支持した状態で、軸材の延びる方向に位置調節可能に螺合されている。本発明では、ダブルナットを用いたシンプルな調節機構によって、弾性支持部による差込部の支持力を調節することが可能となる。
【0009】
第4発明の車両用ストッパー構造は、第1発明~第3発明のいずれかの車両用ストッパー構造において、シート本体を支持する移動部材と、ベース部材上で移動部材を車両前向きの格納位置とドア開口部を向く乗降位置との間で回転移動させる回転機構と、ベース部材と移動部材の間に配置された複数の摺動部材とを備えている。そして複数の摺動部材の中のいずれか一つの摺動部材は、別の摺動部材よりも格納位置におけるシート本体の回転中心から離れて配置されているとともに、ストッパー機構は、一つの摺動部材を停止させられる位置に配設されている。本発明では、移動部材を、シート本体を支持させた状態で回転移動させることにより、乗降性の確保に資する構成となる。そして格納位置におけるシート本体の回転中心から比較的遠い摺動部材、即ち、大きくガタつきやすい摺動部材をストッパー機構で停止させられるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る第1発明によれば、精度管理が比較的容易なストッパー機構によって、移動部材の操作性を確保しつつ、摺動部材を極力ガタつかせないように停止させておくことができる。また第2発明によれば、移動部材の操作性と摺動部材のガタツキの抑制の両立をより確実に図ることができる。また第3発明によれば、比較的シンプルな構成によって、移動部材の操作性と摺動部材のガタツキの抑制の両立をより確実に図ることができる。そして第4発明によれば、シート本体の乗降性を確保しつつ、摺動部材を極力ガタつかせないように停止させておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】乗降位置のシート本体を表す車両の模式斜視図である。
図2】格納位置のシート本体を表す車両の概略側面図である。
図3】格納位置にある後部リンクを後方から見た模式断面図である。
図4】格納位置にある前部リンクを後方から見た模式断面図である。
図5】乗降位置に移動する際の回転機構の動作初期を表す模式平面図である。
図6】乗降位置に移動する際の回転機構の動作中期を表す模式平面図である。
図7】乗降位置に移動する際の回転機構の動作後期を表す模式平面図である。
図8】乗降位置に移動する際の回転機構の動作最後期を表す模式平面図である。
図9】乗降位置にある後部リンクを後方から見た模式断面図である。
図10】乗降位置にある前部リンクを後方から見た模式断面図である。
図11】移動部材とベース部材を透視して示す模式斜視図である。
図12】摺動部材を示す移動部材の模式斜視図である。
図13】ストッパー機構を左方から見た車両用シート装置の模式斜視図である。
図14】ストッパー機構を後方から見た車両用シート装置の模式斜視図である。
図15】ストッパー機構の分解斜視図である。
図16】ストッパー機構を示す車両用シート装置の模式断面図である。
図17】調節機構の拡大斜視図である。
図18】格納位置に移動する際の回転機構を表す模式平面図である。
図19】摺動部材を受け入れる際のストッパー機構の模式断面図である。
図20】摺動部材を停止させた際のストッパー機構の模式斜視図である。
図21】変形例1の調節機構を示す模式断面図である。
図22】変形例2の調節機構を示す模式断面図である。
図23】変形例3の調節機構を示す模式断面図である。
図24】実施例2の福祉車両の模式側面図である。
図25】実施例2のリヤリフタの一部を示す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、図1図25を参照して説明する。各図には、便宜上、車両の前後方向と左右方向と上下方向を示す矢線を適宜図示する。また図2図10では、便宜上、専ら車両用シート装置の四節リンク機構を図示し、ストッパー機構及び各摺動部材を簡略化又は省略して図示している。また図11図14及び図18では、専らストッパー機構と摺動部材を図示し、四節リンク機構の図示を省略している。そして図11では、便宜上、移動部材側の部材を二点破線で図示し且つベース部材側の部材を実線で図示する。
【0013】
[実施例1]
実施例1では、車両用シート装置10に設けられたストッパー機構について説明する。この車両用シート装置10は、図1に示すように車両2の車室内の右側に設置されるシート装置であり、車両右側の前部座席を構成するシート本体20を有している。そして車両用シート装置10は、図2に示すように、シート本体20を車両前後方向にスライドさせる前後スライド機構30と、前後スライド機構30の上側でシート本体20を回転させる回転機構40と、複数の摺動部材51~54の中の一つを停止させるストッパー機構60とを備えている。ここで前後スライド機構30は、車室内のフロアF上に固定されて車両前後方向に延びる左右一対のロアレール32と、左右のロアレール32に沿って前後スライドする左右の一対のアッパレール33とを備えている。各アッパレール33は、多段式ロック機構(図示省略)の働きにより、各ロアレール32に対して多段階でスライドロックできるように構成されている。
【0014】
[回転機構]
また回転機構40は、図1及び図2を参照して、シート本体20を右側のドア開口部Dを向く乗降位置と、車両前向きの格納位置との間で回転移動させられるように構成されている。この回転機構40は、図2に示すように、回転移動不能なベース部材35に対してシート本体20を支持する移動部材45を回転可能に支える四節リンク機構40rと、複数の摺動部材51~54とを備えている。なお車両用シート装置10には、回転機構40の回転移動をロックする回転ロック装置(図示省略)が設けられている。ここでベース部材35は、シート本体20の回転移動に追従しない上方視で矩形の板状部材であり、左右のアッパレール33間に渡されている。また移動部材45は、シート本体20を支持する上方視で矩形の部材であり、四節リンク機構40rに支持された状態でベース部材35の上方に配置されている。また各摺動部材51~54は、後述するように、ベース部材35と移動部材45のいずれか一方の部材に設けられて、ベース部材35と移動部材45のいずれか他方の部材に摺動可能に構成されている。
【0015】
後述するシート本体20の位置変位の際には、図2に示すベース部材35と移動部材45とが、これらの間に配置された各摺動部材51~54を摺動させながら相対回転していく。そしてシート本体20が格納位置に到達した際には、異音の発生を抑制する観点から、一つの摺動部材(51)を後述するようにストッパー機構60にてガタつかせないように停止させる。この種の構成では、ストッパー機構60の精度管理が容易であり、また移動部材45の操作性を確保できることが望ましい。そこで本実施例では、後述する構成によって、精度管理が比較的容易なストッパー機構60によって、移動部材45の操作性を確保しつつ、一つの摺動部材(51)を極力ガタつかせないように停止させることとした。以下、回転機構40とストッパー機構60の各構成を詳述する。
【0016】
[四節リンク機構]
各摺動部材51~54及びストッパー機構60について説明する前に、まず回転機構40の四節リンク機構40r及びその作用(回転機構の回転動作)の概要について説明する。図2図4に示す四節リンク機構40rは、ベース部材35上で移動部材45を前傾させながら回転させられるように支持する。この四節リンク機構40rは、前部リンク41と後部リンク42とから構成されている。そして前部リンク41と後部リンク42とは、ドア開口部D側、即ち、右側が低くなるように傾斜した状態でベース部材35と移動部材45とに連結されている。そして前部リンク41と後部リンク42とは、後述する回転中心側と回動自由端側の高さ寸法差がベース部材35と移動部材45間の隙間寸法(図2の符号D1で表す部分を参照)と等しい値になるように設定されている。
【0017】
また前部リンク41の回動中心側は、図5に示すように、ベース部材35の前部の幅方向右側部に下部連結軸41dを介して回動可能な状態で連結されている。ここでベース部材35は、図4に示すように、前部リンク41が連結される部分が傾斜部35kとなっており、その傾斜部35kが右側(ドア開口部D側)で低くなるように傾斜している。そして下部連結軸41dは、傾斜部35kに対して直角な状態で、ベース部材35に連結されている。即ち、下部連結軸41dは、ベース部材35上で右側に傾いた状態で立設されている。また前部リンク41の先端側、即ち、回動自由端側は、図5に示すように、移動部材45の略中央部に上部連結軸41uを介して回動可能な状態で連結されている。ここで移動部材45は、図4に示すように、前部リンク41が連結される部分が傾斜部45kとなっており、その傾斜部45kがベース部材35の傾斜部35kと等しい角度で右側が低くなるように傾斜している。そして上部連結軸41uは、傾斜部45kに対して直角な状態で、移動部材45に連結されている。即ち、上部連結軸41uは、下部連結軸41dと等しい傾斜角度で移動部材45の下側に設けられている。
【0018】
また後部リンク42の回動中心側は、図5に示すように、ベース部材35の後部の幅方向中央部に下部連結軸42dを介して回動可能な状態で連結されている。ここでベース部材35は、図3に示すように、後部リンク42が連結される部分が傾斜部35kとなっている。そして下部連結軸42dは、傾斜部35kに対して直角な状態で、ベース部材35に連結されている。即ち、下部連結軸42dは、前部リンク41の下部連結軸41dと等しい傾斜角度でベース部材35上に立設されている。また後部リンク42の先端側、即ち、回動自由端側は、図5に示すように、移動部材45の後右角部に上部連結軸42uを介して回動可能な状態で連結されている。ここで移動部材45は、図3に示すように、後部リンク42が連結される部分が傾斜部45kとなっている。そして上部連結軸42uは、傾斜部45kに対して直角な状態で、移動部材45に連結されている。即ち、上部連結軸42uは、前部リンク41の上部連結軸41uと等しい傾斜角度で移動部材45の下側に設けられている。
【0019】
[回転機構の回転動作の概要]
つづいてシート本体20の位置変位の際における回転機構40の回転動作について説明する(各摺動部材の挙動については後述)。この回転機構40は、上記構成により、格納位置(図5参照)にあるシート本体20に対して右回転方向に外力が加わると、四節リンク機構40rの前部リンク41の先端側(回動自由端側)が移動部材45を介して右方向に外力を受ける。これにより、前部リンク41は、下部連結軸41dを中心に図5に示す位置から左回動(上方視で反時計回りに回動)する。即ち、前部リンク41の先端側に連結された上部連結軸41uは、ドア開口部Dに近づくように円弧運動する。
【0020】
そして円弧運動の初期、即ち、格納位置(図5参照)から前部リンク41がθ1°左回動するまでは、図6に示すように、上部連結軸41uと、この上部連結軸41uに連結された移動部材45とは、ドア開口部D側(右側)に移動しつつ後退する。また、前部リンク41に連結された上部連結軸41uの後退により、後部リンク42の先端側に連結された上部連結軸42uが移動部材45を介して後方向に力を受ける。これにより、後部リンク42は、下部連結軸42dを中心に若干右回動(上方視で時計回りに回動)する。この結果、シート本体20及び移動部材45(シート本体20等)は、図6に示すように、ドア開口部D側(右側)に移動しつつ後退する(白矢印参照)。
【0021】
そして前部リンク41が格納位置からθ1°左回動した状態(図6参照)から引き続きシート本体20に対して右回転方向に外力が加えられると、図7に示すように、シート本体20等は右側に移動しつつ右方向に回転し、前部リンク41は角度θ1の位置から左回動する。そして、前部リンク41は角度θ1の位置から角度θ2だけ左回動した状態で、前部リンク41の下部連結軸41d、上部連結軸41uと、後部リンク42の上部連結軸42uとが平面視において一直線上に保持される。この状態で、移動部材45は角度略θ2だけ右側を向いて、その移動部材45の後右角部がベース部材35の後端縁から後方に突出する。この位置が移動部材45の後退限位置である。
【0022】
つづいて後退限位置においてシート本体20に対し、さらに右回転方向に外力が加えられると、図8に示すように、前部リンク41と後部リンク42とが共に左回動してシート本体20等は前方に移動しつつ、右回転するようになる。即ち、シート本体20等は、回転中心を前方に移動させながら右方向に回転するようになる。そして、前部リンク41が後退限位置から角度θ3だけ回動した状態で(図8参照)、シート本体20等は乗降位置に到達する。
【0023】
また上記したように、四節リンク機構40rの前部リンク41と後部リンク42とが、ドア開口部D側(右側)が低くなるように傾斜した状態でベース部材35と移動部材45とに連結されている。このため、前部リンク41と後部リンク42とが後退限位置から左回動して、シート本体20等が回転中心を前方に移動させながら右方向に回転すると、シート本体20等は、図9図10に示すように、その前側が低くなるように傾斜するようになる。こうして本実施例では、格納位置のシート本体20を、回転機構40によってドア開口部Dを向く乗降位置まで回転移動させることができ、優れた乗降性の確保に資する構成となる。
【0024】
[摺動部材]
つぎに図2及び図11に示す複数の摺動部材51~54について説明する。車両用シート装置10では、その概ね四隅に摺動部材がそれぞれ設けられており、各摺動部材51~54は、ベース部材35と移動部材45のいずれか一方の部材に設けることができる。例えば図11を参照して、前左側に位置する第一摺動部材51と、後左側に位置する第二摺動部材52とは移動部材45に設けられている。一方、車両用シート装置10の前右側に位置する第三摺動部材53と、後右側に位置する第四摺動部材54とはベース部材35に設けられている。そして各摺動部材51~54は、後述するように、シート本体20の位置変位の際に、ベース部材35と移動部材45のいずれか他方の部材のガイドレール(510~540)に摺動可能に構成されている。
【0025】
まず、第一摺動部材51は、図11及び図12に示す縦向きのローラ状の部材であり、側方視で略矩形の受板部46に回転可能に軸支されている。この受板部46は、移動部材45の左前角部から下方且つ後方に延びる支持ブラケット47の後端に固定されている。そして図11に示す格納位置においては、左前側の第一摺動部材51が、別の摺動部材(52~54)よりもシート本体20の回転移動の際の回転中心RCから遠い位置に配置されている。また第一摺動部材51は、ベース部材35の上面に設けた第一ガイドレール510に摺動可能に構成されている。この第一ガイドレール510は、上方視で前右側に向けて直線的に延びており、右方に向かうにつれて次第に前方に傾いている。そして本実施例の車両用シート装置10では、第一摺動部材51が本発明の一つの摺動部材に相当し、後述するストッパー機構60によって停止させられるように構成されている。
【0026】
また図11に示す後左側に位置する第二摺動部材52は、ベース部材35の上面に設けた第二ガイドレール520に摺動可能に構成されている。この第二ガイドレール520は、上方視で前右側に向けて直線的に延びている。また前右側に位置する第三摺動部材53は、移動部材45に設けられた第三ガイドレール530に摺動可能に構成されている。この第三ガイドレール530は、移動部材45が回転をする際の第三摺動部材53の相対移動軌跡に沿う円弧形状に形成されている。また後右側に位置する第四摺動部材54は、移動部材45の下面に設けた第四ガイドレール540に摺動可能に構成されている。この第四ガイドレール540も、第四摺動部材54の相対移動軌跡に沿うように円弧形状に形成されている。
【0027】
[ストッパー機構]
つぎに図11及び図13に示すストッパー機構60について説明する。このストッパー機構60は、シート本体20が格納位置に到達した際に、予め定められた位置で第一摺動部材51を停止させる機構である。即ち、ストッパー機構60は、ベース部材35側の第一ガイドレール510の左部位置に配設されることで、当該位置で第一摺動部材51を停止させられるようになっている。そしてストッパー機構60は、第一ガイドレール510に沿って概ね左右方向に延設されており、後述する本体部600と差込部70と弾性支持部80と調節機構90とを有している。
【0028】
ここで図13に示すストッパー機構60の本体部600は、第一ガイドレール510に沿って延びる第一ベース部61と、第二ベース部62と、第三ベース部63とを有している。第一ベース部61は、図14及び図15を参照して、後壁部611と、この後壁部611の上端に沿って前方に張り出す上壁部612と、後壁部611の下端から後方に張り出す第一フランジ部613とを有している。この第一ベース部61の上壁部612は、その右端部が上方に向けて傾斜しているとともに、上壁部612の左部には、前方に張り出すストッパー部614が形成されている。そして第一ベース部61は、その第一フランジ部613がベース部材35に固定されることで、このベース部材35の第一ガイドレール510上に配設されている。また第二ベース部62は、第一ベース部61の上壁部612と後壁部611を覆うように取付けられている。この第二ベース部62の右端からは、第一ベース部61の右端部が露出しており、第二ベース部62の左部からは、第一ベース部61のストッパー部614が露出している。また第二ベース部62左側には、その前縁から下方に張り出す取付け用フランジ部621が設けられている。そして第二ベース部62は、その後縁部から後方且つ下方に張り出す第二フランジ部622を有し、この第二フランジ部622が第一ベース部61の第一フランジ部613に重ねられて固定されている。
【0029】
また図13図15を参照して、本体部600の第三ベース部63は、第二ベース部62に固定された状態で、第一ベース部61の左部側に配設されている。この第三ベース部63は、図14及び図15に示すように、底面をなす底板部631と、底板部631の前縁から上方に突出する前板部632を有し、この前板部632が、第二ベース部62の取付け用フランジ部621の外面(前面)にあてがわれてボルトBMで固定されている。そして第三ベース部63には、その底板部631の右縁に沿うように上方に張り出す右板部633が設けられており、この右板部633に、後述する差込部70と弾性支持部80とが配設されている。
【0030】
[差込部]
差込部70は、図15及び図16を参照して、移動部材45側(各図の上側)から第一摺動部材51に当たるように差込まれる部材であり、第三ベース部63(右板部633)の右側に設けられている。この差込部70は、下側が解放されている概ね立方体状の取付け部位71と、この取付け部位71に設けられた差込部位72とを有している。ここで取付け部位71は、第三ベース部63の右板部633が下側から挿入されることで、この第三ベース部63の右側に取付けられている。この取付け部位71の左壁712は、その概ね中央が後述する弾性支持部80(軸材81)の挿入を許容するように切りかかれている。そして取付け部位71の右壁711には、その上部位置から右方且つ上方に張り出す差込部位72が一体に設けられている。
【0031】
また図15及び図16を参照して、差込部位72は、取付け部位71から第三ガイドレール530に沿う左右方向、即ち、第一摺動部材51の摺動方向に沿うように延びている。この差込部位72は、その右端部E1が最も上側に位置しており、この右端部E1側が、第一摺動部材51を受け入れるための受入部73となっている。また差込部位72の左端部E2は、最も下側に位置しており、第一ガイドレール510上の第一摺動部材51の上端位置E3よりも低い位置に配置されている。このように差込部位72は、取付け部位71から右側且つ上側に傾斜した形状(概ね楔形状)とされ、取付け部位71から受入部73に向かうにつれて次第にベース部材35側から移動部材45側に向かうように構成されている。そして差込部位72の移動部材45側(上側)には第一ベース部61の上壁部612が位置しており、この上壁部612に差込部位72の右端部E1が接している。
【0032】
[弾性支持部]
また図15及び図16を参照して、弾性支持部80は、差込部70を摺動部材の摺動方向(各図の左右方向)に弾性支持する部材であり、第三ベース部63(右板部633)の左側に設けられている。この弾性支持部80は、概ね円柱状の軸材81と、この軸材81に嵌められた圧縮コイルバネ状の弾性材82とを有している。軸材81は、第一摺動部材51の摺動方向に延びるように形成されて、その右端側が第三ベース部63の右板部633に挿設されている。また弾性材82は、左右方向を向いた状態で軸材81に嵌められている。この弾性材82の右側の先端部821は、差込部70の取付け部位71の左壁712に当接している。また先端部821と反対側(左側)の弾性材82の基端部822は、後述する調節機構90によって支持されている。このため弾性支持部80は、弾性材82の弾性力によって、差込部70を第一摺動部材51の摺動方向(左右方向)に弾性的に支持できるようになる。また弾性支持部80は、差込部70を弾性材82の圧縮で左側に移動させ、また差込部70を弾性材82の伸長で右側に移動させられるようになっている。
【0033】
[調節機構]
また図15図17を参照して、調節機構90は、差込部70に対する弾性支持部80の支持力を調節可能な機構であり、弾性支持部80の軸材81に取付けられている。この調節機構90は、軸材81に螺合された第一ナット91と、第一ナット91とは逆向きで軸材81に螺合された第二ナット92とからなるダブルナットである。そして第一ナット91は、軸材81左部の第一ネジ部811に螺合され、第二ナット92は、第一ネジ部811の左方に形成された小径の第二ネジ部812に逆向きで螺合されている。こうしてダブルナットとしての両ナット91,92は、互いに当接した状態(緩みのない状態)とされて、弾性材82の基端部822を支持できるように軸材81に螺合されている。
【0034】
そして調節機構90では、図16に示すダブルナット(91,92)が軸材81の延びる方向に位置調節可能に螺合されることで、差込部70に対する支持力を調節できるようになっている。例えば本実施例では、第一ネジ部811に対して第一ナット91が移動できる範囲でダブルナット(91,92)の位置を調整できる。そこでダブルナット(91,92)の位置を軸材81の右側にずらして弾性材82を圧縮することにより、弾性支持部80の差込部70に対する支持力を強めることができる。また逆にダブルナット(91,92)の位置を軸材81の左側にずらして弾性材82を伸長させることにより、弾性支持部80の差込部70に対する支持力を弱めることができる。
【0035】
[回転機構の回転移動に伴う各摺動部材の挙動]
図18を参照して、乗降位置のシート本体20が格納位置に回転移動する際、ベース部材35と移動部材45とは、各摺動部材51~54を各ガイドレール510~540に摺動させながら相対回転する。そこで以下に、各摺動部材の挙動を、移動部材45の前左側に設けられた第一摺動部材51を一例に説明する。この第一摺動部材51は、格納位置付近で移動部材45とともに左回動(上方視で反時計回りに回動)して第一ガイドレール510に支持される。そしてシート本体20を支持する移動部材45が格納位置に到達することで、この移動部材45に設けられた第一摺動部材51がストッパー機構60によって停止させられる。この格納位置の車両用シート装置10では、第一摺動部材51を、ストッパー機構60にてガタつかせないように停止させるのであるが、その際のストッパー機構60の精度管理は容易であることが望ましい。即ち、図16を参照して、差込部70と第一摺動部材51との間の隙管理(同図の符号D2で示す隙の管理)を容易に行えることが望ましい。
【0036】
そこで本実施例のストッパー機構60は、図16及び図19を参照して、移動部材45側から第一摺動部材51に当たるように差込まれる差込部70と、差込部70を第一摺動部材51の摺動方向に弾性支持する弾性支持部80とを有している。そして差込部70は、第一摺動部材51を受け入れ可能な受入部73から第一摺動部材51の摺動方向に沿う向きに延びているとともに、受入部73に近づくに従って次第にベース部材35(他方の部材)側から移動部材45(一方の部材)側に向かうように構成されている。このストッパー機構60では、弾性支持部80の支持力によって、差込部70が移動部材45側から差込まれて第一摺動部材51に当てられることで、この第一摺動部材51を停止させられるようになる。そこで上記構成のストッパー機構60の働きを以下に詳細に説明する。
【0037】
ベース部材35に対して移動部材45が格納位置に回転移動する場合、図16及び図19に示すように、移動部材45に設けられた第一摺動部材51は、第一ガイドレール510上を摺動してストッパー機構60に導かれる。つづいて第一摺動部材51は、ストッパー機構60の第一ベース部61に沿うように移動して、差込部70の差込部位72の受入部73から受入れられる。この差込部位72は、上述したように取付け部位71から受入部73に向かうにつれて次第に下側から上側に近づく形状(概ね楔形状)となっている。このため第一摺動部材51が更に摺動することで、差込部位72が移動部材45側、即ち、第一ベース部61の上壁部612と第一摺動部材51の間の隙から差し込まれていく。そして弾性支持部80の弾性力によって、差込部70の差込部位72が、移動部材45側から第一摺動部材51に当てられることで、この第一摺動部材51を停止させられるようになる。こうして概ね楔形状の差込部位72を弾性的に差し込めるようにしたことで、第一摺動部材51と差込部70の間の隙(図16の符号D2で示す隙)を差込部位72の差し込みによる追込みで吸収できるようになる。このため上記構成によれば、図16に示す差込部70と第一摺動部材51との間の隙(D2)管理、即ち、ストッパー機構60の精度管理を容易に行えるようになる。
【0038】
また上記構成の弾性支持部80では、図19に示す差込部70を弾性材82の圧縮で左側に移動させ、また差込部70を弾性材82の伸長で右側に移動させられるようになっている。このためストッパー機構60では、第一摺動部材51が差込部位72に当接した際に、この第一摺動部材51の荷重を、差込部70を弾性材82の圧縮で左側に移動させることで吸収できる。また第一摺動部材51が差込部位72との当接の反動で右側に移動した際にも、差込部70を弾性材82の伸長で右側に移動させて追従させられるようになっている。なおストッパー機構60では、その第一ベース部61の左部にストッパー部614が設けられ、このストッパー部614が弾性支持部80(軸材81)の右側に位置している。このため第一摺動部材51の勢いを弾性材82の圧縮で十分に吸収できない場合、図20に示すように、第一摺動部材51が軸支された受板部46をストッパー部614で受止めることで、弾性支持部80への意図しない荷重入力を回避することができる。
【0039】
そして図19を参照して、停止した第一摺動部材51と第一ベース部61の上壁部612との間には、弾性支持部80の弾性力で、差込部位72が差し込まれた状態となっている。このような状態の差込部位72は、その反発力によって第一摺動部材51を下方に押し退けようとする楔効果を発揮し、この楔効果は、弾性支持部80の支持力が弱い場合にも発揮される。このため差込部位72の楔効果によって、第一摺動部材51と第一ガイドレール510(ベース部材35)との間の隙を詰めることにより、この第一摺動部材51の上下のガタつきを抑制できるようになる。特に第一摺動部材51は、図11を参照して、格納位置におけるシート本体20の回転中心RCから比較的遠いことから、シート本体20の上下動で大きくガタつきやすい。そこでストッパー機構60では、図19に示す差込部位72の楔効果で第一摺動部材51の上下動(突き上げ力の作用)を抑えることで、この第一摺動部材51のガタつきが原因となる異音の発生を極力回避できるようになる。
【0040】
また車両用シート装置10では、図11に示す格納位置のシート本体20を、人力等によって乗降位置に回転移動させる場合、その際の移動部材45の操作荷重が小さいことが望ましい。そこで上記構成のストッパー機構60では、図19に示す弾性支持部80の支持力が弱くとも、差込部70の楔効果で第一摺動部材51のガタつきを抑制できる。このため第一摺動部材51に対する差込部位72の差込みが抑えられ、この第一摺動部材51に過度の下方への押付け力がかからないようになっている。このためシート本体20を乗降位置に移動させる際に、この第一摺動部材51を比較的小さな操作力で動かせるようになり、移動部材45の操作性の確保に資する構成となっている。
【0041】
以上説明した通り本実施例のストッパー機構60では、その差込部70が、受入部73に近づくに従って移動部材45側に近づく形状(概ね楔形状)となって、弾性支持部80によって弾性支持されている。このため弾性支持部80の支持力によって、概ね楔形状の差込部70が移動部材45側から差込まれて第一摺動部材51に当てられることで、この第一摺動部材51を停止させられるようになる。このため、第一摺動部材51と差込部70との隙管理をシビアに行う必要がなく、ストッパー機構60の精度管理を容易にすることができる。そして第一摺動部材51に当たるように差し込まれた差込部70の楔効果によって、第一摺動部材51とベース部材35との間の隙を詰めることにより、この第一摺動部材51のガタつきを抑制できるようになる。また本実施例のストッパー機構60では、弾性支持部80の支持力が弱い場合にも差込部70の楔効果で第一摺動部材51のガタつきを抑制できる。このため第一摺動部材51に過度の押付け力がかからないようになり、移動部材45の操作性の確保に資する構成となる。よって本実施例によれば、精度管理が比較的容易なストッパー機構60によって、移動部材45の操作性を確保しつつ、摺動部材を極力ガタつかせないように停止させることができる。このため本実施例の車両用ストッパー構造では、シビアな部品組付けと検査作業(隙調整)を要さず、また第一摺動部材51を下方に過度に押付けるような部材を省略することで、組付け費や部品費の低減に資する構成となる。さらに弾性支持部80の支持力を調節して、移動部材45の操作力を低減することにより、優れた操作フィーリングの確保に資する構成となる。
【0042】
更に本実施例では、弾性支持部80による差込部70の支持力を調節機構90で調節することで、移動部材45の操作性と第一摺動部材51のガタツキの抑制の両立をより確実に図ることができる。特にダブルナットを用いたシンプルな調節機構90によって、弾性支持部80による差込部70の支持力を調節することが可能となる。また本実施例では、移動部材45を、シート本体20を支持させた状態で回転移動させることにより、乗降性の確保に資する構成となる。そして格納位置におけるシート本体20の回転中心RCから比較的遠い第一摺動部材51、即ち、大きくガタつきやすい第一摺動部材51をストッパー機構60で停止させられるようになる。
【0043】
[変形例1]
ここでストッパー機構は、上述の構成のほか各種の構成を取り得る。例えば図21に示す変形例1のストッパー機構60Xには、差込部70の上下位置を調節するアジャスタ調節機構AD(調節機構の変形例)が設けられており、差込部位72とベース部材35(第一ガイドレール510)との間の距離H1を変更できるように構成されている。このアジャスタ調節機構ADは、差込部70の上側に固定されたアジャスタ板68と、このアジャスタ板68と移動部材45とに挿通された調節ネジ69とを有している。そして調節ネジ69の回転によって、移動部材45に対するアジャスタ板68の上下位置を調節できるように構成されている。上記構成によると、アジャスタ板68を上下動させて差込部位72とベース部材35の距離H1を変えることにより、弾性支持部80の支持力、即ち、弾性材82の伸縮の程度を調節することが可能となる。例えば差込部位72をベース部材35に近づけておく程、第一摺動部材51に対する差込部位72の差込みが少なくなり、弾性支持部80の弾性材82を圧縮させられる(支持力を強められる)ように調節できる。
【0044】
[変形例2]
また図22に示す変形例2のストッパー機構60Yでは、差込部70Yの差込部位72Yを断面三角形状、即ち、差込部位72Yを先端まで傾斜形状(調節機構の変形例)とすることができる。こうして差込部位72Yを先端まで傾斜形状として、ベース部材35との距離H1を変えることにより、弾性支持部80の支持力を調節することが可能となる。
【0045】
[変形例3]
また図23に示す変形例3のストッパー機構60Zは、複数の差込部又は複数の弾性材の中から適宜の差込部又は弾性支持部を選択して設置できる構成(調節機構の変形例)とされている。例えば実施例1の差込部と、実施例1とは異なる傾斜角度θの差込部位72Zを備えた差込部70Zを用意し、その中の一つを選択して使用することができる。また実施例1の弾性支持部と、実施例1とは異なるバネ定数の弾性材82を備えた弾性支持部80Zを用意し、その中の一つを使用してもよい。なお弾性材として、各種のバネ材やゴム材(エラストマを含む)を適宜選択して使用することができる。また不等ピッチバネのようにバネ定数が複数段階で変化するバネ材を使用し、摺動部材を受け止めた差込部が軸材81に近づくにつれてばね定数が大きくなるように構成することもできる。
【0046】
[実施例2]
実施例2では、実施例1の構成部材とほぼ同一の基本構成を備える構成については、対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。図24に示す福祉車両Cは、そのドア開口部Hの内側に、車椅子(図示省略)を昇降するためのリヤリフタ10Cが設けられている。このリヤリフタ10Cは、車椅子等を載せる水平なプラットホーム20Cと、そのプラットホーム20Cを水平な状態で昇降させる左右一対の昇降リンク機構40Cとを備えている。また昇降リンク機構40Cの下端部分には、プラットホーム20Cを前後スライド可能な状態で左右から支持するプラットホームホルダ30Cが設けられている。そして本実施例では、リヤリフタ10Cを備えた福祉車両Cにストッパー機構(61C,62C)が設けられている点が実施例1と異なっている。
【0047】
ここで昇降リンク機構40Cは、図24に示すように、車室フロア15Cの後部左右に設けられた固定金具41Cと、左右の固定金具41Cにそれぞれ上下回動可能な状態で連結された四節リンク機構43Cと、その四節リンク機構43Cの先端側に同じく上下回動可能な状態で連結された起立状態の昇降アーム44Cと、四節リンク機構43Cを上下回動させて、昇降アーム44Cを昇降させる油圧シリンダ(図示省略)とから構成されている。そして四節リンク機構43Cは、四隅に相対回動可能な連結点(支点)を備えるリンク機構であり、固定金具41Cのリンク支持部411Cと、上部リンク433Cと、下部リンク434Cと、昇降アーム44Cのリンク支持部445Cとから構成されている。そして油圧シリンダの動作により、四節リンク機構43Cが上下回動することで、図24の実線及び二点破線に示すように、昇降アーム44Cが起立姿勢のままで上昇及び下降するようになる。
【0048】
また左右の昇降アーム44Cの下端部には、図25に示すように、プラットホームホルダ30Cが設けられており、左右のプラットホームホルダ30Cにプラットホーム20Cが前後スライド可能な状態で支持されている(図25では、便宜上、右側と左側の同じ部材に共通の符号を付す)。このプラットホームホルダ30Cには、その前部の左右位置に前側摺動部材51Cが設けられており、後部の左右位置に後側摺動部材52Cが設けられている。これら前後の各摺動部材51C,52Cは、プラットホーム20Cの上縁で前後に延びる上側フランジ200Cに受けられている。またプラットホームホルダ30Cには、プラットホーム20Cをそのプラットホームホルダ30Cに対して前後スライドさせる電動スライド装置(図示省略)が設けられている。そしてプラットホーム20Cには、その前端の左右位置に車輪状の前端摺動部材53Cが設けられている。
【0049】
また福祉車両Cの車室フロア15Cの後部には、図24に示すように、プラットホーム20Cが水平に格納される凹部17Cが形成されている。そしてプラットホーム20Cが、図24の実線で示すように、プラットホームホルダ30Cの電動スライド装置の動作により、前進限位置、即ち凹部17Cまで前進スライドすることで、プラットホーム20Cは車室フロア15Cの凹部17Cに格納される。この状態でプラットホーム20Cに載せられた車椅子を車室フロア15C前部のフロア面まで案内できるようになる。
【0050】
上記構成では、図24に示す移動部材としてのプラットホーム20Cが、ベース部材としての車室フロア15Cに対して車両前後方向に移動する。また車室フロア15Cの後部に設けられた凹部17Cが格納位置となっている。そしてプラットホーム20Cが、プラットホームホルダ30Cに対して車両前側に移動して、格納位置となる凹部17Cに配置される。この格納位置のプラットホーム20Cでは、その前端の前端摺動部材53Cが凹部17Cの前端位置で停止させられる。即ち、凹部17Cの前端位置にL字ブラケットを介して設けられた第一のストッパー機構61Cによって前端摺動部材53Cが停止させられるようになっている。この第一のストッパー機構61Cでは、その差込部71Cが、後端(受入口)に向かうにつれて次第に下側から上側、即ち、凹部17C(他方の部材)側からプラットホーム20C(一方の部材)側に向かうように構成されている。このため差込部71Cの楔効果によって、前端摺動部材53Cと凹部17Cとの間の隙を詰めることにより、この前端摺動部材53Cのガタつきを抑制できるようになる。
【0051】
また図24を参照して、移動部材としてのプラットホーム20Cが、ベース部材としてのプラットホームホルダ30Cに対して車両前側に移動することで、プラットホームホルダ30Cの後側摺動部材52Cがプラットホーム20Cの後端に相対移動する。このとき後側摺動部材52Cを備えたプラットホームホルダ30Cは、前端摺動部材53Cを備えたプラットホーム20Cの上側に配置している。そしてプラットホーム20Cの後端位置に設けられた第二のストッパー機構62Cによって後側摺動部材52Cを停止させられるようになっている。この第二のストッパー機構62Cでは、その差込部72Cが、前端(受入口)に向かうにつれて次第に下側から上側、即ち、プラットホーム20C(他方の部材)側からプラットホームホルダ30C(一方の部材)側に向かうように構成されている。このため差込部72Cの楔効果によって、後側摺動部材52Cを下方に押し退けて上下動を抑制することにより、この後側摺動部材52Cのガタつきを抑制できるようになる。こうして本実施例においても、精度管理が比較的容易なストッパー機構(61C,62C)によって、移動部材(プラットフォーム20C等)の操作性を確保しつつ、摺動部材(52C,53C)を極力ガタつかせないように停止させておくことができる。
【0052】
本実施形態の車両用ストッパー構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。実施例1では、各摺動部材51~54の構成を例示したが、各摺動部材の構成を限定する趣旨ではない。例えば複数の摺動部材を、それぞれ独立に、ベース部材と移動部材のいずれか一方の部材に設け、その中の少なくとも一つをストッパー機構によって停止させられるように構成できる。またシート本体を回転移動させる構成では、その回転中心とは無関係に停止させるべき摺動部材を選択することができるが、回転中心から相対的に遠い(特に最も遠い)摺動部材を選択することが望ましい。なお摺動部材の数も適宜設定可能であり、各摺動部材の配置位置も、移動部材(ベース部材)の四隅や端部に限る必要はない。なお摺動部材として、摺動可能な各種の部材を使用でき、例えばローラ状や車輪状や球状の部材を使用することができる。
【0053】
また本実施形態では、ストッパー機構の構成を例示したが、ストッパー機構の構成を限定する趣旨ではない。ストッパー機構は、差込部と弾性支持部を必須とし、調整機構を設けてもよく設けなくともよい。また差込部(差込部位)は、受入口に近づくにつれて直線的に一方の部材側に向かう構成(傾斜面形状)のほか、複数段階で傾斜角度が変わるように構成してもよく、また曲面形状や段差形状としてもよい。また差込部には、板状又はブロック(稠密)状の差込部位を設けることができる。また差込部の一方の部材側に補強材を一体に設けたり、差込部の一方の部材側を補強する補強構造を設けたりすることができる。そして補強材や補強構造は、実施例1の第一ベース部の上壁部等の代替えとなる。
【0054】
また本実施形態では、実施例1において移動部材をベース部材上で回転移動させる構成を例示した。移動部材は、四節リンク機構を備えた回転機構のほか、ドリブンギアを備えた回転機構で回転させることもでき、必ずしも乗降位置のシート本体を前傾(チルト)させる必要はない。また移動部材は、ベース部材に対して車両前後方向や車幅方向や車両高さ方向等に移動させることが可能であり、この場合にも、移動部材等に設けた摺動部材をストッパー機構によって停止させることができる。なお移動部材とベース部材とは車両高さ方向(上下方向)から重なるように配置されていてもよく、車幅方向から重なるように配置されていてもよい。また実施例2の構成は、スロープ車などの福祉車両に適用することができ、例えば移動部材としての車椅子等の車輪(摺動部材)を、ベース部材としての車室フロアに設けたストッパー機構で停止させることができる。そして各実施例の構成と各変形例の構成は適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
2 実施例1の車両
D ドア開口部
F フロア
10 車両用シート装置
20 シート本体
RC (シート本体の)回転中心
30 前後スライド機構
32 ロアレール
33 アッパレール
35 ベース部材(本発明の他方の部材)
35k 傾斜部
40 回転機構
40r 四節リンク機構
41 前部リンク
41u 上部連結軸
41d 下部連結軸
42 後部リンク
42u 上部連結軸
42d 下部連結軸
45 移動部材(本発明の一方の部材)
45k 傾斜部
46 受板部
47 支持ブラケット
51 第一摺動部材(本発明の摺動部材)
52 第二摺動部材
53 第三摺動部材
54 第四摺動部材
510 第一ガイドレール
520 第二ガイドレール
530 第三ガイドレール
540 第四ガイドレール
60 ストッパー機構
600 本体部
61 第一ベース部
611 後壁部
612 上壁部
613 第一フランジ部
614 ストッパー部
62 第二ベース部
621 取付け用フランジ部
622 第二フランジ部
63 第三ベース部
631 底板部
632 前板部
633 右板部
70 差込部
71 取付け部位
711 (取付け部位の)右壁
712 (取付け部位の)左壁
72 差込部位
73 受入部
E1 (差込部位の)右端部
E2 (差込部位の)左端部
E3 (第一摺動部材の)上端位置
80 弾性支持部
81 軸材
811 第一ネジ部
812 第二ネジ部
82 弾性材
821 (弾性材の)先端部
822 (弾性材の)基端部
90 調節機構
91 第一ナット
92 第二ナット
60X 変形例1のストッパー機構
AD アジャスタ調節機構
68 アジャスタ板
69 調節ネジ
60Y 変形例2のストッパー機構
70Y 差込部
72Y 差込部位
60Z 変形例3のストッパー機構
70Z 差込部
72Z 差込部位
80Z 弾性支持部
C 実施例2の福祉車両
H 実施例2のドア開口部
10C リヤリフタ
15C 車室フロア
17C 凹部
20C プラットホーム
200C 上側フランジ
30C プラットホームホルダ
40C 昇降リンク機構
41C 固定金具
411C (固定金具の)リンク支持部
43C (実施例2の)四節リンク機構
433C 上部リンク
434C 下部リンク
44C 昇降アーム
445C (昇降アームの)リンク支持部
51C 前側摺動部材
52C 後側摺動部材
53C 前端摺動部材
61C 第一のストッパー機構
71C (第一のストッパー機構の)差込部
62C 第二のストッパー機構
72C (第二のストッパー機構の)差込部
図1
図2
図3
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図5
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