(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161492
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】耐火電線及び耐火電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 7/295 20060101AFI20221014BHJP
H01B 13/26 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
H01B7/295
H01B13/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066360
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】永岡 一
【テーマコード(参考)】
5G315
5G327
【Fターム(参考)】
5G315CA01
5G315CB01
5G315CC01
5G315CD02
5G315CD10
5G315CD11
5G327CA08
5G327CC01
(57)【要約】
【課題】耐火テープの重ね部である折り返し部の絶縁抵抗低下を防ぐことが可能となり、耐火性能を向上させることができる耐火電線を提供する。
【解決手段】耐火電線1は、導体10と、この導体10外周に縦添えされる耐火テープ20と、この耐火テープ20の外周に施される絶縁層31,32と、を備え、耐火テープ20は、その両側端部で折り返され、該折り返し部23A,24Aがその折り返し片23a,24aにより互いに端部を挟み込むように重ねられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、
前記導体の外周に縦添えされる耐火テープと、
前記耐火テープの外周に施される絶縁層と、
を備え、
前記耐火テープは、その両側端部で折り返され、該折り返し部がその折り返し片により互いに端部を挟み込むように重ねられている耐火電線。
【請求項2】
前記耐火テープの外周に押さえヤーンが巻き付けられている、請求項1に記載の耐火電線。
【請求項3】
前記耐火テープは、前記折り返し部内に接着剤を有する、請求項1又は2に記載の耐火電線。
【請求項4】
前記耐火テープは、樹脂製又はガラスクロス製でフィルム状の基材と、前記フィルム状の基材上に積層された耐火層と、を有し、
前記折り返し部の一方の折り返し部において、前記フィルム状の基材が外周側に、前記耐火層が前記導体側にして重ねられている、請求項1から3のいずれか1項に記載の耐火電線。
【請求項5】
筒部と出口側に折り返し部を有した湾曲筒部とを備えたテープ縦添え治具を用いて耐火テープを導体の外周に縦添えする耐火電線の製造方法であって、
前記筒部に前記導体を挿入すると共に、前記湾曲筒部に前記耐火テープを挿入し、
次に、前記導体を前記筒部から次々に引き出すと共に、前記耐火テープを前記湾曲筒部の出口側の前記折り返し部から次々に引き出しながら、前記湾曲筒部の折り返し部で前記耐火テープの両側端部を折り返して互いの端部を挟み込むように重ねる耐火電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災等によって高温や火炎に晒されても長時間の使用に耐え得る耐火電線及び耐火電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の耐火電線として、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に開示された耐火電線は、導体と、導体の外周に縦添えで包み込むように巻き付けされ、一端部が折り返され他端部がその上に重ね合わされた耐火テープと、耐火テープの外周を押さえる押さえ糸と、耐火テープの外周を被う絶縁層と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の耐火電線では、耐火テープの折り返された一端部を他端部に重ねた構造であるため、火災時に絶縁層が燃焼し、押さえ糸が外れて耐火テープが開いてしまうことで絶縁抵抗を失い、導体が暴露されて通電が遮断されるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、耐火テープの重ね部である折り返し部の絶縁抵抗低下を防ぐことが可能となり、耐火性能を向上させることができる耐火電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る耐火電線は、導体と、前記導体の外周に縦添えされる耐火テープと、前記耐火テープの外周に施される絶縁層と、を備え、前記耐火テープは、その両側端部で折り返され、該折り返し部がその折り返し片により互いに端部を挟み込むように重ねられているものである。
【0007】
前記耐火テープの外周に押さえヤーンが巻き付けられていることが好ましい。
【0008】
前記耐火テープは、前記折り返し部内に接着剤を有することが好ましい。
【0009】
前記耐火テープは、樹脂製又はガラスクロス製でフィルム状の基材と、前記フィルム状の基材上に積層された耐火層と、を有し、前記折り返し部の一方の折り返し部において、前記フィルム状の基材が外周側に、前記耐火層が前記導体側にして重ねられていることが好ましい。
【0010】
本発明の他の態様に係る耐火電線の製造方法は、筒部と出口側に折り返し部を有した湾曲筒部とを備えたテープ縦添え治具を用いて耐火テープを導体の外周に縦添えする耐火電線の製造方法であって、前記筒部に前記導体を挿入すると共に、前記湾曲筒部に前記耐火テープを挿入し、次に、前記導体を前記筒部から次々に引き出すと共に、前記耐火テープを前記湾曲筒部の出口側の前記折り返し部から次々に引き出しながら、前記湾曲筒部の折り返し部で前記耐火テープの両側端部を折り返して互いの端部を挟み込むように重ねる方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐火テープの重ね部である折り返し部の絶縁抵抗低下を防ぐことが可能となり、耐火性能を向上させることができる耐火電線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る耐火電線の一例を示す斜視図である。
【
図3】上記耐火電線における耐火テープの要部を示す拡大断面図である。
【
図4】(a)は上記耐火テープを導体の外周に縦添えするテープ縦添え治具の中途部の断面図、(b)は同テープ縦添え治具の出口側の断面図である。
【
図5】(a)は上記耐火テープの縦添え時のテープ縦添え治具の中途部の断面図、(b)は同耐火テープの縦添え時のテープ縦添え治具の出口側の断面図である。
【
図6】(a)~(c)は上記耐火テープの折り返し部の開き方を示す要部の拡大断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態の耐火電線における耐火テープの要部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係る耐火電線について詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態に係る耐火電線の一例を示す斜視図である。
図2は
図1中II-II線に沿う断面図である。
図3は耐火電線における耐火テープの要部を示す拡大断面図である。
図4(a)は耐火テープを導体の外周に縦添えするテープ縦添え治具の中途部の断面図である。
図4(b)はテープ縦添え治具の出口側の断面図である。
図5(a)は耐火テープの縦添え時のテープ縦添え治具の中途部の断面図である。
図5(b)は耐火テープの縦添え時のテープ縦添え治具の出口側の断面図である。
図6(a)~(c)は耐火テープの折り返し部の開き方を示す要部の拡大断面図である。
【0015】
図1に示すように、耐火電線1は、導体10と、この導体10の外周に縦添えされる耐火テープ20と、この耐火テープ20の外周に巻き付けられる押さえヤーン30と、耐火テープ20の外周に施される絶縁層としての絶縁被覆31及びシース32と、を備える。
【0016】
図1、
図2に示すように、導体10は、断面円形の単芯導体である。この導体10は、銅材、銅合金材、アルミ材等により形成されている。
【0017】
図3に示すように、導体10の外周に縦添えされる耐火テープ20は、例えば、ポリエチレン(PE)製又はガラスクロス製でフィルム状の基材21と、このフィルム状の基材21上に積層されたマイカ層(耐火層)22とからなる。そして、
図2、
図3に示すように、耐火テープ20は、その両側端部23,24で折り返され、該折り返し部23A,24Aがその折り返し片23a,24aにより互いに端部23,24を挟み込むように重ねられている。また、
図3に示すように、折り返し部23A,24Aの折り返し片23a,24aにおいて、フィルム状の基材21が外周側に、マイカ層22が導体10側にして重ねられている。
【0018】
図1に示すように、耐火テープ20の外周に巻き付けられる押さえヤーン30は、例えば、ガラスヤーン、シリカヤーンアルミナヤーン等を用いる。そして、耐火テープ20の両側端部23,24を折り返し部23A,24Aの折り返し片23a,24aで互いに挟み入れ込んだ状態で、押さえヤーン30を巻き付けることにより、両側端部23,24が密着状態に重ね合わされて固定されるようになっている。この状態の耐火テープ20の上に例えばポリエチレンからなる絶縁被覆31を押出し成形し、この絶縁被覆31の上にシース32を更に被覆することにより耐火電線1が形成されるようになっている。
【0019】
この耐火電線1を製造する場合には、
図4(a),(b)に示すテープ縦添え治具40を用いる。このテープ縦添え治具40は、筒部41と、中途に折り曲げ部43を有すると共に出口側に折り返し部44を有した湾曲筒部42と、を備えている。
【0020】
次に、耐火電線1の製造方法、詳しくは、テープ縦添え治具40を用いて耐火テープ20を導体10の外周に縦添えする方法を、
図5(a),(b)に沿って順に説明する。
【0021】
まず、
図5(a)に示すように、テープ縦添え治具40の筒部41に導体10を挿入すると共に、テープ縦添え治具40の湾曲筒部42に耐火テープ20を挿入する。
【0022】
次に、
図5(b)に示すように、導体10を筒部41から次々に引き出すと共に、耐火テープ20を湾曲筒部42の出口側の折り返し部44から次々に引き出す。この引き出しにより、湾曲筒部42の折り返し部44で耐火テープ20の両側端部23,24を折り返して互いの端部23,24を折り返し片23a,24aで挟み込むように密着状態で重ね合わせる。この折り返し片23a,24aによる重ね合わせにより、導体10の外周に耐火テープ20が縦添えされる。次に、耐火テープ20の外周に押さえヤーン30を巻き付けた後で、その外周を絶縁被覆31とシース32で被うことにより、耐火電線1が完成する。
【0023】
以上第1実施形態の耐火電線1によれば、絶縁被覆31とシース32の燃焼により耐火テープ20から押さえヤーン30が外れてしまっても、従来品に比べ耐火テープ20が開く難くなり、火災時にも絶縁抵抗を失い難くなる。これにより、耐火性能がより高い耐火電線1となる。すなわち、耐火テープ20の重ね部である折り返し部23A,24Aの絶縁抵抗低下を防ぐことが可能となり、耐火電線1の耐火性能をより一段と向上させることができる。
【0024】
具体的には、
図6(a)~(c)に示すように、耐火テープ20から押さえヤーン30が外れて耐火テープ20が開く方向に動いても、お互い両端部23,24が折り返し部23A,24Aにより邪魔をして開く難い形となる。これにより、導体10が火災方向へ暴露される機会が減少し、絶縁抵抗を失い難くなる。また、押さえヤーン30の巻きマン角が広がることで、耐火テープ20の両端部23,24同士の間隔が広がり、その隙間に溶けた絶縁被覆31が流れ込んでも、流れ込んだ溶けた絶縁被覆31は、耐火テープ20の折り返し部23A,24Aで堰止められ、導体10まで達しない。これにより、絶縁抵抗を失い難くなる。絶縁抵抗が失い難くなることで、通電が遮断される可能性が減少する。
【0025】
図7は本発明の第2実施形態の耐火電線における耐火テープの要部を示す拡大断面図である。
【0026】
この第2実施形態の耐火電線1における耐火テープ20は、片側の端部23の折り返し部23A内(耐火テープ20と折り返し片23aとの間)に接着剤25を有する点が、前記第1実施形態のものとは異なる。なお、他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0027】
この第2実施形態の耐火電線1における耐火テープ20では、端部23の折り返し部23A内に接着剤25を塗布したことで、前記第1実施形態のものよりも、より高い耐火性能を有する。また、導体10や押さえヤーン30、絶縁被覆31等に接着剤25が付着する可能性を少なくすることができ、劣化等の可能性を減らすことができる。
【0028】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0029】
すなわち、前記実施形態によれば、絶縁被覆をポリエチレンで形成したが、ポリエチレン以外の樹脂材で絶縁被覆を形成しても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 耐火電線
10 導体
20 耐火テープ
21 フィルム状の基材
22 マイカ層(耐火層)
23,24 端部
23A,24A 折り返し部
23a,24a 折り返し片
25 接着剤
30 押さえヤーン
31 絶縁被覆(絶縁層)
32 シース(絶縁層)
40 テープ縦添え治具
41 筒部
42 湾曲筒部
43 折り曲げ部
44 折り返し部