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特開2022-161494乾燥設備および乾燥設備のVOC濃度制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161494
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】乾燥設備および乾燥設備のVOC濃度制御方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 21/04 20060101AFI20221014BHJP
   F26B 21/10 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
F26B21/04
F26B21/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066364
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】595080887
【氏名又は名称】株式会社ヒートエナジーテック
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】富田 正浩
(72)【発明者】
【氏名】加藤 聡根
(72)【発明者】
【氏名】石田 公基
(72)【発明者】
【氏名】迫田 淳壱
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 裕也
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA02
3L113AA08
3L113AB02
3L113AC03
3L113AC22
3L113AC35
3L113AC45
3L113AC46
3L113AC48
3L113AC63
3L113AC67
3L113BA32
3L113CA08
3L113CA11
3L113CB14
3L113DA14
(57)【要約】
【課題】大型化や煩雑化を招くことなくVOC濃度を所定濃度に維持できる乾燥設備およびそのVOC濃度制御方法を提供する。
【解決手段】実施形態の乾燥設備10は、ブロア101とダンパ102を備え燃焼装置50に空気を導入する燃焼用空気導入管100と、流量調整弁111を備え燃焼装置50に燃料を導入する燃料導入管110と、乾燥用ガスを燃焼装置50から乾燥炉20に導入する乾燥用ガス導入管130と、排気ファン142を備え乾燥炉20から排ガスを排気する排気管140と、排気管140内の排ガスに含まれるVOC濃度を検知するVOC濃度検知器143と、乾燥用ガスの温度を検知するガス温度検知器132と、VOC濃度検知器143の検知信号に基づいて排気ファン142、ブロア101を制御し、ガス温度検知器132の検知信号に基づいてダンパ102、流量調整弁111を制御する制御部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼装置と、
空気供給機および空気流量調整部を備え、前記燃焼装置に燃焼用空気を導入する燃焼用空気導入管と、
燃料流量調整弁を備え、前記燃焼装置に燃料を導入する燃料導入管と、
前記燃焼装置に希釈用空気を導入する希釈用空気導入管と、
前記希釈用空気導入管を流れる希釈用空気を加熱する加熱用熱交換器を備えたヒートポンプと、
前記空気供給機と前記空気流量調整部との間の前記燃焼用空気導入管から分岐し、前記希釈用空気導入管に連結する分岐管と、
被乾燥物を乾燥させる乾燥装置と、
前記燃焼装置で生成された燃焼ガスと希釈用空気を含む混合ガスを乾燥用ガスとして前記乾燥装置に導入する乾燥用ガス導入管と、
排気送風機を備え、前記乾燥装置から乾燥用ガスを排気する排気管と、
前記乾燥装置から乾燥用ガスを前記希釈用空気導入管へ導入し前記燃焼装置へ循環させる乾燥用ガス循環配管と、
前記乾燥装置内の乾燥用ガスに係る乾燥用ガスに含まれる揮発性有機化合物の濃度を検知するVOC濃度検知器と、
前記乾燥装置内の乾燥用ガスに係る乾燥用ガスの温度を検知するガス温度検知器と、
前記VOC濃度検知器からの検知信号に基づいて、前記排気送風機、前記空気供給機を制御し、前記ガス温度検知器からの検知信号に基づいて、前記空気流量調整部、前記燃料流量調整弁を制御する制御部と
を具備することを特徴とする乾燥設備。
【請求項2】
燃焼装置と、
第1の空気供給機を備え、前記燃焼装置に燃焼用空気を導入する燃焼用空気導入管と、
燃料流量調整弁を備え、前記燃焼装置に燃料を導入する燃料導入管と、
前記燃焼装置に希釈用空気を導入する第1の希釈用空気導入管と、
前記第1の希釈用空気導入管を流れる希釈用空気を加熱する加熱用熱交換器を備えたヒートポンプと、
第2の空気供給機を備え、前記第1の希釈用空気導入管に連結する第2の希釈用空気導入管と、
被乾燥物を乾燥させる乾燥装置と、
前記燃焼装置で生成された燃焼ガスと希釈用空気を含む混合ガスを乾燥用ガスとして前記乾燥装置に導入する乾燥用ガス導入管と、
排気送風機を備え、前記乾燥装置から乾燥用ガスを排気する排気管と、
前記乾燥装置から乾燥用ガスを前記第1の希釈用空気導入管へ導入し前記燃焼装置へ循環させる乾燥用ガス循環配管と、
前記乾燥装置内の乾燥用ガスに係る乾燥用ガスに含まれる揮発性有機化合物の濃度を検知するVOC濃度検知器と、
前記乾燥装置内の乾燥用ガスに係る乾燥用ガスの温度を検知するガス温度検知器と、
前記VOC濃度検知器からの検知信号に基づいて、前記排気送風機、前記第2の空気供給機を制御し、前記ガス温度検知器からの検知信号に基づいて、前記第1の空気供給機、前記燃料流量調整弁を制御する制御部と
を具備することを特徴とする乾燥設備。
【請求項3】
前記VOC濃度検知器は、前記排気管内、前記乾燥用ガス循環配管内および前記乾燥装置内の少なくとも一箇所における乾燥用ガスに含まれる揮発性有機化合物の濃度を検知することを特徴とする請求項1または2記載の乾燥設備。
【請求項4】
前記ガス温度検知器は、前記乾燥用ガス導入管内、前記乾燥装置内および前記乾燥用ガス循環配管内の少なくとも一箇所における乾燥用ガスの温度を検知することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の乾燥設備。
【請求項5】
前記乾燥設備が、
被乾燥物を冷却する冷却装置と、
前記冷却装置に冷却用空気を導入する冷却用空気導入管と、
前記冷却用空気導入管を流れる冷却用空気を冷却する空気冷却機構と
を備え、
前記空気冷却機構が、
冷媒を循環させる冷媒循環配管と、
前記ヒートポンプに備えられ、前記冷媒循環配管を流れる冷媒を冷却する冷媒冷却用熱交換器と、
前記冷却用空気導入管を流れる冷却用空気を前記冷媒循環配管を流れる冷媒によって冷却する空気冷却用熱交換器と
を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の乾燥設備。
【請求項6】
燃焼装置と、
空気供給機を備え、前記燃焼装置に燃焼用空気を導入する燃焼用空気導入管と、
前記燃焼装置に燃料を導入する燃料導入管と、
前記燃焼装置に、ヒートポンプで加熱された希釈用空気を導入する希釈用空気導入管と、
前記燃焼用空気導入管から分岐し、前記希釈用空気導入管に連結する分岐管と、
被乾燥物を乾燥させる乾燥装置と、
前記燃焼装置で生成された燃焼ガスと希釈用空気を含む混合ガスを乾燥用ガスとして前記乾燥装置に導入する乾燥用ガス導入管と、
排気送風機を備え、前記乾燥装置から乾燥用ガスを排気する排気管と、
前記乾燥装置から乾燥用ガスを前記希釈用空気導入管へ導入し前記燃焼装置へ循環させる乾燥用ガス循環配管と、
前記乾燥装置内の乾燥用ガスに係る乾燥用ガスに含まれる揮発性有機化合物の濃度を検知するVOC濃度検知器と、
前記乾燥装置内の乾燥用ガスに係る乾燥用ガスの温度を検知するガス温度検知器と
を備える乾燥設備のVOC濃度制御方法であって、
VOC濃度判定部は、揮発性有機化合物の濃度が所定濃度を維持するように、前記VOC濃度検知器で検知された揮発性有機化合物の濃度に基づいて、前記排気送風機を制御して前記乾燥装置から排気される乾燥用ガスの流量を調整するとともに、前記空気供給機を制御して前記乾燥装置から排気される乾燥用ガスの流量と同流量の空気を前記燃焼用空気導入管に導入し、
温度判定部は、乾燥用ガスの温度が所定温度を維持するように、前記ガス温度検知器で検知された乾燥用ガスの温度に基づいて、前記燃料導入管から前記燃焼装置に導入される燃料流量を調整するとともに、前記燃料流量に基づいて、前記燃焼用空気導入管に流れる燃焼用空気の流量および前記分岐管に流れる空気の流量を調整することを特徴とする乾燥設備のVOC濃度制御方法。
【請求項7】
燃焼装置と、
第1の空気供給機を備え、前記燃焼装置に燃焼用空気を導入する燃焼用空気導入管と、
前記燃焼装置に燃料を導入する燃料導入管と、
前記燃焼装置に、ヒートポンプで加熱された希釈用空気を導入する第1の希釈用空気導入管と、
第2の空気供給機を備え、前記第1の希釈用空気導入管に連結する第2の希釈用空気導入管と、
被乾燥物を乾燥させる乾燥装置と、
前記燃焼装置で生成された燃焼ガスと希釈用空気を含む混合ガスを乾燥用ガスとして前記乾燥装置に導入する乾燥用ガス導入管と、
排気送風機を備え、前記乾燥装置から乾燥用ガスを排気する排気管と、
前記乾燥装置から乾燥用ガスを前記第1の希釈用空気導入管へ導入し前記燃焼装置へ循環させる乾燥用ガス循環配管と、
前記乾燥装置内の乾燥用ガスに係る乾燥用ガスに含まれる揮発性有機化合物の濃度を検知するVOC濃度検知器と、
前記乾燥装置内の乾燥用ガスに係る乾燥用ガスの温度を検知するガス温度検知器と
を備える乾燥設備のVOC濃度制御方法であって、
VOC濃度判定部は、揮発性有機化合物の濃度が所定濃度を維持するように、前記VOC濃度検知器で検知された揮発性有機化合物の濃度に基づいて、前記排気送風機を制御して前記乾燥装置から排気される乾燥用ガスの流量を調整するとともに、前記第2の空気供給機を制御して前記乾燥装置から排気される乾燥用ガスの流量と同流量の空気を前記第2の希釈用空気導入管に導入し、
温度判定部は、乾燥用ガスの温度が所定温度を維持するように、前記ガス温度検知器で検知された乾燥用ガスの温度に基づいて、前記燃料導入管から前記燃焼装置に導入される燃料流量を調整するとともに、前記燃料流量に基づいて、前記第1の空気供給機を制御して前記燃焼用空気導入管に導入する燃焼用空気の流量を調整することを特徴とする乾燥設備のVOC濃度制御方法。
【請求項8】
前記VOC濃度検知器は、前記排気管内、前記乾燥用ガス循環配管内および前記乾燥装置内の少なくとも一箇所における乾燥用ガスに含まれる揮発性有機化合物の濃度を検知することを特徴とする請求項6または7記載の乾燥設備のVOC濃度制御方法。
【請求項9】
前記ガス温度検知器は、前記乾燥用ガス導入管内、前記乾燥装置内および前記乾燥用ガス循環配管の少なくとも一箇所における乾燥用ガスの温度を検知することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項記載の乾燥設備のVOC濃度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乾燥設備および乾燥設備のVOC濃度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の乾燥設備として、燃焼装置などの熱源で生成された乾燥用ガスを用いて被乾燥物を乾燥させる乾燥炉と、乾燥炉で乾燥された被乾燥物を冷却する冷却炉とを備えた乾燥設備がある。このような乾燥設備において、乾燥炉として、被乾燥物を乾燥した乾燥用ガスの一部を熱源に戻す循環式の乾燥炉が広く使用されている。
【0003】
このような従来の乾燥設備では、乾燥炉には熱風である乾燥用ガスが導入され、冷却炉には冷風である冷却ガスが導入される。そこで、熱風である乾燥用ガスおよび冷風である冷却ガスを利用する従来の乾燥設備では、エネルギ効率を向上させるために、ヒートポンプを備えた設備が検討されている。
【0004】
ヒートポンプを備えた乾燥設備では、例えば、ヒートポンプの凝縮器側熱交換器(加熱側熱交換器)において熱量を得ることで加熱された空気は、燃焼装置に導入される。燃焼装置に導入された空気は、例えば、燃焼ガスの温度を調整する希釈用空気として、また、燃焼装置を冷却する冷却用空気として利用される。そして、燃焼ガスと希釈用空気との混合ガスは、乾燥用ガスとして乾燥炉に導入される。なお、燃焼装置は、燃料との燃焼に使用される燃焼用空気の供給管も備えている。
【0005】
一方、ヒートポンプを備えた乾燥設備では、ヒートポンプの蒸発器において熱量を失うことで冷却された空気は、冷却用空気として冷却炉に導入される。
【0006】
ヒートポンプを備えた乾燥設備では、外気温度によっても流量は異なるが、所定流量の空気を加熱および冷却しつつ、ヒートポンプの成績係数(COP)を最高値に維持している。
【0007】
このような乾燥設備の乾燥炉において、塗装された被乾燥物の塗膜を乾燥する際、塗膜に含まれる揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds、以下VOCという)が蒸発する。乾燥炉内のVOC濃度が所定範囲になると爆発することがある。そのため、乾燥炉内のVOC濃度を所定値(例えば、爆発下限界の1/4)以下に維持する必要がある。
【0008】
乾燥炉内においてVOC濃度が所定値を超えた場合、VOC濃度を減少させる必要がある。このような場合、従来の乾燥設備の乾燥炉では、循環させる乾燥用ガスに含まるVOCを回収して除去し、その乾燥用ガスを乾燥炉に循環するシステムが採用されている。従来の乾燥設備では、このVOC除去循環システムによって、乾燥炉内のVOC濃度が所定値以下になるように調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010-51932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記したようなVOC除去循環システムを乾燥設備に備えることは、乾燥設備の大型化や煩雑化を招く。
【0011】
また、VOCを除去する機能を備えていない既存の乾燥設備に、上記したようなVOC除去循環システムを増設することは、大規模な増設工事が必要となるとともに、乾燥設備の大型化や煩雑化を招く。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、大型化や煩雑化を招くことなく、乾燥炉内のVOC濃度を所定濃度に維持することができる乾燥設備および乾燥設備のVOC濃度制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態の乾燥設備は、燃焼装置と、空気供給機および空気流量調整部を備え、前記燃焼装置に燃焼用空気を導入する燃焼用空気導入管と、燃料流量調整弁を備え、前記燃焼装置に燃料を導入する燃料導入管と、前記燃焼装置に希釈用空気を導入する希釈用空気導入管と、前記希釈用空気導入管を流れる希釈用空気を加熱する加熱用熱交換器を備えたヒートポンプと、前記空気供給機と前記空気流量調整部との間の前記燃焼用空気導入管から分岐し、前記希釈用空気導入管に連結する分岐管と、被乾燥物を乾燥させる乾燥装置と、前記燃焼装置で生成された燃焼ガスと希釈用空気を含む混合ガスを乾燥用ガスとして前記乾燥装置に導入する乾燥用ガス導入管と、排気送風機を備え、前記乾燥装置から乾燥用ガスを排気する排気管と、前記乾燥装置から乾燥用ガスを前記希釈用空気導入管へ導入し前記燃焼装置へ循環させる乾燥用ガス循環配管と、前記乾燥装置内の乾燥用ガスに係る乾燥用ガスに含まれる揮発性有機化合物の濃度を検知するVOC濃度検知器と、前記乾燥装置内の乾燥用ガスに係る乾燥用ガスの温度を検知するガス温度検知器と、前記VOC濃度検知器からの検知信号に基づいて、前記排気送風機、前記空気供給機を制御し、前記ガス温度検知器からの検知信号に基づいて、前記空気流量調整部、前記燃料流量調整弁を制御する制御部とを具備する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の乾燥設備および乾燥設備のVOC濃度制御方法によれば、大型化や煩雑化を招くことなく、乾燥炉内のVOC濃度を所定濃度に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施の形態の乾燥設備の概要を模式的に示した図である。
図2】第1の実施の形態の乾燥設備において、VOC濃度検知器におけるVOC濃度をVOC濃度閾値に維持するための制御を実行する制御部の構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施の形態の乾燥設備における、排ガス中のVOC濃度をVOC濃度閾値に維持するための作用を説明するためのフローチャートである。
図4】第1の実施の形態の乾燥設備における、排ガス中のVOC濃度をVOC濃度閾値に維持するための作用のうちの乾燥用ガスの温度調整の作用を説明するためのフローチャートである。
図5】第2の実施の形態の乾燥設備の概要を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の乾燥設備10の概要を模式的に示した図である。
【0018】
図1に示すように、乾燥設備10は、乾燥炉20と、冷却炉30とを備える。なお、乾燥炉20は、乾燥装置として機能し、冷却炉30は、冷却装置として機能する。
【0019】
乾燥炉20には、例えば、塗装部で表面に塗料が塗装されたワークWが搬送される。そして、乾燥炉20では、被乾燥物であるワークWに乾燥用ガスの熱風を作用させて、例えば、ワークWの表面に塗布された塗料を乾燥させる。なお、乾燥炉20における乾燥工程の際、塗料に含まれるVOCが蒸発する。
【0020】
冷却炉30には、乾燥炉20で乾燥されたワークWが搬送される。そして、冷却炉30では、乾燥炉20で乾燥されたワークWに冷却用空気の冷風を作用させて、例えば、ワークWを冷却する。
【0021】
なお、乾燥炉20および冷却炉30におけるワークWの搬送は、例えば、ワイヤなどに吊り下げた状態で搬送される。
【0022】
また、図示しないが、乾燥炉20には、例えば、搬送されるワークWに乾燥用ガスを噴出する噴出ノズルが設けられている。ワークWに噴出される乾燥用ガスの温度は、例えば、60~200℃の温度である。なお、乾燥用ガスの温度は、ワークWの仕様によって適宜設定される。
【0023】
また、図示しないが、冷却炉30には、例えば、搬送されるワークWに冷却用空気を噴出する噴出ノズルが設けられている。ワークWに噴出される冷却用空気の温度は、例えば、15~30℃の温度である。なお、冷却用空気の温度は、ワークWの仕様によって適宜設定される。
【0024】
このように、乾燥設備10においては、乾燥炉20に導入する乾燥用ガス(熱風)、および冷却炉30に導入する冷却用空気(冷風)を発生させることが必要となる。そこで、乾燥設備10では、放熱および吸熱の双方の機能が発揮可能なヒートポンプ40を備えている。ヒートポンプ40を備えることで、乾燥設備10のエネルギ効率の向上を図ることができる。
【0025】
ヒートポンプ40は、図1に示すように、熱媒体としての冷媒が流れる冷媒流路41を備えている。冷媒流路41は、環状の循環流路を構成している。冷媒流路41には、凝縮器42(放熱部)、蒸発器43(吸熱部)、圧縮機44、膨張弁45が介在している。
【0026】
圧縮機44は、凝縮器42の上流側に配置されている。換言すると、圧縮機44は、凝縮器42の上流側、かつ凝縮器42と蒸発器43との間に配置されている。圧縮機44は、冷媒流路41内を流れる冷媒を圧縮して凝縮器42に送る。
【0027】
膨張弁45は、蒸発器43の上流側に配置されている。換言すると、膨張弁45は、蒸発器43の上流側、かつ凝縮器42と蒸発器43との間に配置されている。膨張弁45は、冷媒流路41を全開状態から全閉状態まで調整する機能を有する。膨張弁45が全閉されていない状態の際、蒸発器43に冷媒が供給される。
【0028】
このような構成のヒートポンプ40において、膨張弁45を閉状態で圧縮機44を駆動し、冷媒を凝縮器42に送る。この際、冷媒の流れの多くは、膨張弁45によって止められている。これによって、冷媒は、圧縮され、凝縮器42付近の冷媒の温度が上昇する。
【0029】
一方、凝縮器42付近の冷媒が圧縮されるのに伴って、蒸発器43付近の冷媒は膨張して低温となる。
【0030】
凝縮器42には、燃焼装置50に希釈用空気を導入する希釈用空気導入管60が配管されている。換言すると、凝縮器42において、冷媒流路41を流れる冷媒と希釈用空気導入管60を流れる空気との間で熱交換が行われる。上記したように、膨張弁45を閉状態で圧縮機44を駆動すると、凝縮器42付近の冷媒の温度が上昇するため、希釈用空気は加熱される。なお、凝縮器42は、加熱用熱交換器として機能する。
【0031】
蒸発器43には、冷却炉30に冷却用空気を導入する空気を冷却する空気冷却機構70の一部が配管されている。具体的には、空気冷却機構70における冷媒を循環させる冷媒循環配管71が配管されている。換言すると、蒸発器43において、冷媒流路41を流れる冷媒と冷媒循環配管71を流れる冷媒との間で熱交換が行われる。
【0032】
上記したように、膨張弁45を閉状態で圧縮機44を駆動すると、蒸発器43付近の冷媒の温度は低下するため、冷媒循環配管71を流れる冷媒は冷却される。なお、蒸発器43は、冷媒循環配管71を流れる冷媒を冷却する冷媒冷却用熱交換器として機能する。ここで、冷媒循環配管71を流れる冷媒として、例えば、水が使用される。
【0033】
また、空気冷却機構70は、冷却用空気導入管80を流れる冷却用空気を冷媒循環配管71を流れる冷媒によって冷却する空気冷却用熱交換器72を備える。また、空気冷却機構70は、冷媒を循環させる循環ポンプ73を備える。この循環ポンプ73は、冷媒循環配管71に介在している。
【0034】
なお、空気冷却用熱交換器72を通過した冷媒が流れる冷媒循環配管71には、図1に示すように、冷媒循環配管71を流れる冷媒を加熱する冷媒加熱用熱交換器74を備えてもよい。例えば、後述する乾燥炉20の排気管140から分岐した分岐排気管145の一部は、冷媒加熱用熱交換器74を通るように配置されている。
【0035】
なお、分岐排気管145には、分岐排気管145を流れる排ガスの流量を調整するための流量調整弁146が備えられている。
【0036】
そして、空気冷却用熱交換器72を通過した冷媒の温度が所定の温度より低い場合には、冷媒循環配管71を流れる冷媒は、冷媒加熱用熱交換器74において、分岐排気管145を流れる排ガスによって加熱される。これによって、冷媒は、所定の温度で蒸発器43に循環され、ヒートポンプ40において最大の冷却側成績係数(COP)が得られる。
【0037】
冷却用空気導入管80は、空気冷却用熱交換器72を通り、冷却炉30に連結されている。空気冷却用熱交換器72において、冷媒循環配管71を流れる冷媒と冷却用空気導入管80を流れる空気との間で熱交換が行われる。そして、冷却用空気導入管80を流れる空気は、冷媒循環配管71を流れる低温の冷媒によって冷却される。この冷却された空気は、冷却用空気として冷却炉30に導入される。
【0038】
冷却用空気導入管80には、外気から空気を冷却用空気導入管80内に取り入れ、冷却用空気を冷却炉30に導入するファン81が介在している。なお、ファン81は、送風機として機能する。送風機として、例えば、ブロアを使用してもよい。
【0039】
また、冷却炉30においてワークWを冷却した冷却用空気は、冷却用空気排出管90を介して排気される。冷却用空気排出管90には、冷却用空気を冷却炉30から大気中に排出するための排気ファン91が介在している。
【0040】
次に、乾燥用ガス(熱風)を乾燥炉20に導入する構成について説明する。
【0041】
図1に示すように、乾燥設備10は、燃焼装置50と、燃焼用空気導入管100と、燃料導入管110と、分岐管120と、希釈用空気導入管60と、乾燥用ガス導入管130と、排気管140と、乾燥用ガス循環配管150とを備える。また、乾燥設備10は、乾燥設備10を制御する制御部160を備える。
【0042】
燃焼装置50は、燃料と空気を燃焼させる燃焼ライナ51と、燃焼ライナ51を収容するケーシング52とを備える。燃焼ライナ51とケーシング52との間には空隙53を有する。
【0043】
燃焼用空気導入管100は、燃焼装置50に燃焼用空気を導入する。具体的には、燃焼用空気導入管100は、燃焼ライナ51に連結され、燃焼ライナ51内に空気を導入する。燃焼用空気導入管100には、外気を燃焼用空気導入管100に導入して燃焼装置50に導くブロア101が備えられている。なお、ブロア101は、空気供給機として機能する。空気供給機として、例えば、ファンを使用してもよい。
【0044】
また、燃焼用空気導入管100には、ダンパ102が介在している。ダンパ102は、燃焼ライナ51内に導入する燃焼用空気の流量を調整する。ダンパ102は、空気流量調整部として機能する。空気流量調整部は、例えば、バルブなどで構成されてもよい。
【0045】
燃焼用空気導入管100の一部は、図1に示すように、排気管140を流れる乾燥用ガスと熱交換可能に構成されている。なお、排気管140を流れる乾燥用ガスは、乾燥炉20においてワークWを乾燥させた、外部に排気される乾燥用ガスである。以下において、排気管140を流れる乾燥用ガスを排ガスという。
【0046】
燃焼用空気導入管100は、例えば、排気管140に備えられた熱交換器141を通るように配管されている。そして、燃焼用空気導入管100を流れる空気は、熱交換器141を介して排ガスによって加熱される。
【0047】
燃料導入管110は、燃焼装置50に燃料を導入する。具体的には、燃料導入管110は、燃焼ライナ51に連結され、燃料供給源(図示しない)から燃焼ライナ51内に燃料を導入する。燃料としては、特に限定されないが、例えば、炭化水素系の燃料などが使用される。
【0048】
燃料導入管110には、燃焼ライナ51内に導入する燃料の流量を調整する流量調整弁111が介在している。また、燃料導入管110には、燃焼ライナ51内に導入する燃料の流量を計測する燃料流量計112が介在している。流量調整弁111は、バルブなどで構成される。なお、流量調整弁111は、燃料流量調整弁として機能する。
【0049】
分岐管120は、ブロア101とダンパ102との間の燃焼用空気導入管100から分岐し、希釈用空気導入管60に連結されている。具体的には、分岐管120は、熱交換器141よりも下流側、かつダンパ102よりも上流側の燃焼用空気導入管100から分岐している。
【0050】
そして、分岐管120は、ヒートポンプ40と燃焼装置50との間の希釈用空気導入管60に連結されている。また、分岐管120には、希釈用空気導入管60に導く空気の流量を調整するダンパ121が備えられている。なお、ダンパ121の代わりに、バルブを備えてもよい。
【0051】
なお、分岐管120を流れる空気は、希釈用空気として機能する。そして、分岐管120を流れる空気は、希釈用空気導入管60を流れる希釈用空気とともに、燃焼装置50に導入される。
【0052】
希釈用空気導入管60は、前述したとおり、燃焼装置50に希釈用空気を導入する。具体的には、希釈用空気導入管60は、例えば、燃焼ライナ51とケーシング52との間の空隙53に希釈用空気を導入する。
【0053】
空隙53に導入された希釈用空気は、空隙53を下流側に流れ、燃焼ライナ51から排出された燃焼ガスと混ざり、乾燥用ガス導入管130に流入する。希釈用空気は、例えば、燃焼ライナ51に形成された希釈孔から燃焼ライナ51内に流入し、燃焼ガスとともに燃焼ライナ51から排出される。
【0054】
このように、希釈用空気は、燃焼ライナ51から排出された燃焼ガスや燃焼ライナ51内の燃焼ガスと混ざることで、燃焼ガスを希釈して、燃焼ガスの温度を所定温度に調整する。これによって、燃焼ガスの温度は低下する。ここで、所定温度とは、乾燥炉20で要求される温度である。
【0055】
また、空隙53を下流側に流れる希釈用空気は、燃焼ライナ51やケーシング52を冷却する冷却媒体としても機能する。
【0056】
なお、希釈用空気導入管60を流れる空気は、加熱用熱交換器として機能する凝縮器42において、冷媒流路41を流れる冷媒によって加熱される。なお、希釈用空気導入管60を流れる空気の流量は、一定流量に調整される。
【0057】
希釈用空気導入管60には、外気を希釈用空気導入管60に導入して燃焼装置50に導くファン61が備えられている。ファン61は、例えば、ヒートポンプ40内に収容されている。なお、ファン61は、送風機として機能する。送風機として、例えば、ブロアを使用してもよい。
【0058】
乾燥用ガス導入管130は、燃焼ライナ51内で燃料と燃焼用空気が燃焼することで生成された燃焼ガスと希釈用空気導入管60から導入された希釈用空気を含む混合ガスを乾燥用ガスとして、燃焼装置50から乾燥炉20に導入する。すなわち、乾燥用ガス導入管130は、燃焼装置50と乾燥炉20とを連結する。なお、混合ガスには、乾燥用ガス循環配管150を介して希釈用空気導入管60に導入された、循環される乾燥用ガスも含まれる。
【0059】
乾燥用ガス導入管130には、燃焼装置50から排出された乾燥用ガスを乾燥炉20に導入するとともに、ワークWを乾燥させた乾燥用ガスを乾燥炉20から燃焼装置50に乾燥用ガス循環配管150を介して循環させるファン131が備えられている。なお、ファン131は、送風機として機能する。送風機として、例えば、ブロアを使用してもよい。
【0060】
例えば、乾燥用ガス導入管130には、乾燥用ガス導入管130を流れる乾燥用ガスの温度を検知するガス温度検知器132が備えられている。この場合、ガス温度検知器132は、乾燥用ガス導入管130に備えられる。ガス温度検知器132は、例えば、熱電対などで構成される。
【0061】
ここで、ガス温度検知器132は、乾燥炉20内の乾燥用ガスに係る乾燥用ガスの温度を検知する。乾燥炉20内の乾燥用ガスに係る乾燥用ガスとは、乾燥炉20内の乾燥用ガスと見なせる乾燥用ガスである。
【0062】
乾燥炉20内の乾燥用ガスに係る乾燥用ガスとして、乾燥炉20内の乾燥用ガス以外に、上記した乾燥用ガス導入管130内の乾燥用ガス、乾燥用ガス循環配管150内の乾燥用ガスが挙げられる。
【0063】
すなわち、ガス温度検知器132は、上記した乾燥用ガス導入管130を流れる乾燥用ガスの温度を検知するように配置される以外に、乾燥炉20内の乾燥用ガスの温度を検知するように乾燥炉20に配置されても、乾燥用ガス循環配管150を流れる乾燥用ガスの温度を検知するように乾燥用ガス循環配管150に配置されてもよい。
【0064】
また、ガス温度検知器132は、乾燥用ガス導入管130内、乾燥炉20内および乾燥用ガス循環配管150内の少なくとも一箇所における乾燥用ガスの温度を検知するように備えられてもよい。ガス温度検知器132がこれらのいずれか複数個所に備えられた場合には、例えば、後述するガス温度閾値との差が最も大きくなる温度に基づいて各制御が実行される。
【0065】
乾燥用ガス循環配管150は、乾燥用ガスを乾燥炉20から希釈用空気導入管60へ導入する。これによって、乾燥用ガス循環配管150を介して希釈用空気導入管60へ導入された乾燥用ガスは、燃焼装置50へ循環される。
【0066】
ここで、燃焼装置50へ循環された乾燥用ガスは、再び乾燥用ガスとして乾燥用ガス導入管130を介して乾燥炉20に導入される。なお、乾燥用ガス循環配管150を流れる乾燥用ガスは、乾燥炉20においてワークWを乾燥させた乾燥用ガスである。
【0067】
乾燥用ガス循環配管150は、乾燥炉20と、ヒートポンプ40と燃焼装置50との間の希釈用空気導入管60とを連結する。
【0068】
乾燥用ガス循環配管150は、例えば、分岐管120が希釈用空気導入管60に連結される位置よりもヒートポンプ40側で希釈用空気導入管60に連結される。なお、乾燥用ガス循環配管150の希釈用空気導入管60との連結部は、分岐管120の希釈用空気導入管60との連結部よりも燃焼装置50側であってもよい。
【0069】
排気管140は、排ガスを乾燥炉20から大気中に排気する。排気管140の一端は、乾燥炉20に連結され、排気管140の他端は、例えば、大気に解放されている。
【0070】
排気管140には、乾燥炉20から排ガスを吸い込んで大気に排出するための排気ファン142が備えられている。なお、排気ファン142は、排気送風機として機能する。排気送風機として、例えば、ブロアを使用してもよい。
【0071】
また、排気管140には、前述したように熱交換器141が備えられている。燃焼用空気導入管100を流れる空気は、熱交換器141を介して排気管140を流れる排ガスによって加熱される。
【0072】
さらに、排気管140には、排気管140を流れる排ガスに含まれるVOC濃度を検知するVOC濃度検知器143が備えられている。VOC濃度検知器143は、例えば、熱交換器141と乾燥炉20との間の排気管140に備えられている。
【0073】
ここで、VOC濃度検知器143は、乾燥炉20内の乾燥用ガスに係る乾燥用ガスに含まれるVOC濃度を検知する。乾燥炉20内の乾燥用ガスに係る乾燥用ガスとは、乾燥炉20内の乾燥用ガスと見なせる乾燥用ガスである。
【0074】
乾燥炉20内の乾燥用ガスに係る乾燥用ガスとして、乾燥炉20内の乾燥用ガス以外に、上記した排気管140内の乾燥用ガス、乾燥用ガス循環配管150内の乾燥用ガスが挙げられる。
【0075】
すなわち、VOC濃度検知器143は、上記した排気管140を流れる排ガスに含まれるVOC濃度を検知するように配置される以外に、乾燥炉20内の乾燥用ガスに含まれるVOC濃度を検知するように乾燥炉20に配置されても、乾燥用ガス循環配管150を流れる乾燥用ガスに含まれるVOC濃度を検知するように乾燥用ガス循環配管150に配置されてもよい。
【0076】
また、VOC濃度検知器143は、排気管140内、乾燥炉20内および乾燥用ガス循環配管150内の少なくとも一箇所における乾燥用ガス(または排ガス)に含まれるVOC濃度を検知するように備えられてもよい。VOC濃度検知器143がこれらのいずれか複数個所に備えられた場合には、例えば、後述するVOC濃度閾値との差が最も大きくなるVOC濃度に基づいて各制御が実行される。
【0077】
VOC濃度検知器143は、例えば、FID法(水素炎イオン化法)、触媒酸化-非分散赤外吸収法などの測定方法を利用した検知器で構成される。ここで、VOCは、揮発性を有し大気中で気体となる有機化合物の総称であり、VOCには、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどの物質が含まれる。なお、VOC濃度検知器143は、例えば、VOCに含まれる所定の有機化合物を検知する検知器で構成されてもよい。この場合、後述するVOC濃度閾値は、例えば、所定の有機化合物の許容限界濃度に基づいて適宜設定される。
【0078】
制御部160は、VOC濃度検知器143で検知された信号に基づいて、例えば、排気ファン142、ブロア101を制御する。また、制御部160は、ガス温度検知器132で検知された信号に基づいて、例えば、ダンパ102、121、流量調整弁111を制御する。
【0079】
ここで、図2は、第1の実施の形態の乾燥設備10において、VOC濃度検知器143におけるVOC濃度をVOC濃度閾値に維持するための制御を実行する制御部160の構成を示すブロック図である。
【0080】
なお、VOC濃度検知器143における乾燥用ガス(排ガスを含む)の検知箇所として、上記したように、排気管140内、乾燥炉20内、乾燥用ガス循環配管150内などが挙げられる。ここでは、VOC濃度検知器143における検知箇所を排気管140内としたときの一例を示している。
【0081】
図2に示すように、制御部160は、入力部170、演算部180、記憶部190、出力部171を備える。
【0082】
入力部170は、各種検知部や流量計から検知信号を入力する。具体的には、入力部170は、例えば、VOC濃度検知器143、ガス温度検知器132、燃料流量計112などからの検知信号を入力する。
【0083】
記憶部190は、読み出し専用メモリ(ROM)やランダムアクセスメモリ(RAM)などの記憶媒体で構成される。記憶部190は、閾値記憶部191、流量相関記憶部192を備える。
【0084】
閾値記憶部191は、演算部180の各判定部および各設定部の判定のための基準値を提供する。閾値記憶部191は、例えば、VOC濃度を所定濃度に維持するためのVOC濃度調整運転の基準値となるVOC濃度閾値を格納している。VOC濃度閾値は、VOCガスの爆発下限界の1/4に設定される。なお、爆発下限界は、VOCガスの爆発範囲の濃度のうちの最も下限の濃度(最低濃度)である。
【0085】
VOC濃度閾値を上記した範囲に設定することで、検知されるVOC濃度が変動した際においても、安全に乾燥設備10を運転することができる。ここで、VOC濃度閾値は、上記した範囲に限られない。VOC濃度閾値は、例えば、乾燥炉20の仕様、乾燥炉20の運転環境などに基づいて適宜設定可能である。
【0086】
VOC濃度調整運転では、検知されたVOC濃度がVOC濃度閾値を維持するように制御を行う。検知されたVOC濃度が、VOC濃度閾値より高い場合またはVOC濃度閾値より低い場合には、例えば、排ガスの流量、燃焼装置50に導入される燃焼用空気や希釈用空気の流量などを調整する。
【0087】
また、閾値記憶部191は、例えば、乾燥炉20に導入される乾燥用ガスの温度のガス温度閾値を格納している。ガス温度閾値は、例えば、乾燥されるワークWの種類等によって任意に設定可能である。
【0088】
なお、ガス温度検知器132が乾燥炉20内の乾燥用ガスの温度を検知するように配置された場合には、閾値記憶部191は、乾燥炉20内における乾燥用ガスの温度のガス温度閾値を格納している。また、ガス温度検知器132が乾燥用ガス循環配管150を流れる乾燥用ガスの温度を検知するように配置された場合には、閾値記憶部191は、循環される乾燥用ガスの温度のガス温度閾値を格納している。
【0089】
乾燥炉20に導入される乾燥用ガスの温度が、ガス温度閾値より高い場合またはガス温度閾値より低い場合には、例えば、燃焼装置50に導入される、燃焼用空気、燃料、希釈用空気の流量を調整する。
【0090】
流量相関記憶部192は、演算部180のVOC濃度判定部181および温度判定部182の判定のための基準値を提供する。
【0091】
流量相関記憶部192は、例えば、VOC濃度検知器143で検知された排ガス中のVOC濃度とVOC濃度閾値との差に基づいて排気する排ガスの流量を設定するための排ガス流量・VOC濃度相関テーブルを格納している。
【0092】
なお、排気する排ガスの流量は、排気ファン142の例えば回転数などによって決まる。そのため、具体的には、排ガス流量・VOC濃度相関テーブルは、VOC濃度検知器143で検知された排ガス中のVOC濃度とVOC濃度閾値との差に基づいて排気ファン142の回転数を定めた相関データで構成される。
【0093】
また、流量相関記憶部192は、例えば、排気ファン142によって排気される排ガスの流量と同流量の空気を燃焼用空気導入管100にブロア101から導入するための排ガス流量・空気流量相関テーブルを格納している。
【0094】
具体的には、排ガス流量・空気流量相関テーブルは、排気される排ガスの流量と同流量の空気を吐出するためのブロア101の回転数を定めた相関データで構成される。例えば、排ガス流量・空気流量相関テーブルは、排気ファン142の回転数とブロア101の回転数の対応関係を定めた相関データで構成される。
【0095】
さらに、流量相関記憶部192は、例えば、燃料流量に基づいて燃焼用空気の流量を設定するための燃料流量・空気流量相関テーブルを格納している。
【0096】
燃焼装置50では、燃料流量に対して空気流量が所定の割合になるように調整されている。換言すると、燃焼装置50では、燃料流量に対して、所定の空燃比または当量比になるように空気流量が調整されている。燃料流量・空気流量相関テーブルは、例えば、燃料流量に対応する空気流量を定めた相関データで構成される。
【0097】
なお、空気流量は、例えば、ブロア101の回転数に応じて設定されたダンパ102、121の開度に関するデータに基づいて設定される。
【0098】
また、流量相関記憶部192は、例えば、ガス温度検知器132で検知された乾燥用ガスの温度とガス温度閾値との差に基づいて燃料流量を設定するための燃料流量・ガス温度相関テーブルを格納している。
【0099】
燃料流量・ガス温度相関テーブルは、検知された乾燥用ガスの温度とガス温度閾値との差(温度差)に比例して燃料流量を定めた相関データで構成される。具体的には、燃料流量・ガス温度相関テーブルは、例えば、ガス温度検知器132で検知された乾燥用ガスの温度がガス温度閾値より低い場合に、温度差に比例して増加させる燃料流量を定めている。また、燃料流量・ガス温度相関テーブルは、例えば、ガス温度検知器132で検知された乾燥用ガスの温度がガス温度閾値より高い場合に、温度差に比例して減少させる燃料流量を定めている。
【0100】
演算部180は、例えば、記憶部190に格納されたプログラムやデータなどを用いて各種の演算処理を実行する。演算部180は、VOC濃度判定部181、温度判定部182を備える。
【0101】
VOC濃度判定部181は、閾値記憶部191に格納されたVOC濃度閾値およびVOC濃度検知器143からの検知信号に基づいて、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値であるか否か、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より高いか否かまたはVOC濃度閾値より低いか否かを判定する。
【0102】
そして、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より高いと判定した場合または排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より低いと判定した場合には、VOC濃度判定部181は、排ガス中のVOC濃度とVOC濃度閾値との差および流量相関記憶部192に格納された排ガス流量・VOC濃度相関テーブルに基づいて、排気ファン142を制御するための信号を出力部171に出力する。
【0103】
また、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より高いと判定した場合または排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より低いと判定した場合には、VOC濃度判定部181は、排ガスの流量(例えば、排気ファン142の回転数)および排ガス流量・空気流量相関テーブルに基づいて、ブロア101を制御するための信号を出力部171に出力する。
【0104】
温度判定部182は、閾値記憶部191に格納されたガス温度閾値およびガス温度検知器132からの検知信号に基づいて、例えば、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値であるか否かを判定する。また、温度判定部182は、例えば、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値より高いか、または低いかを判定する。
【0105】
そして、例えば、VOC濃度判定部181によって排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より高いと判定された場合において、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値より高いか、または低いと判定した場合には、温度判定部182は、検知された乾燥用ガスの温度とガス温度閾値との差、流量相関記憶部192に格納された燃料流量・ガス温度相関テーブルおよび燃料流量・空気流量相関テーブルに基づいて、ダンパ102、121、流量調整弁111を制御する。
【0106】
例えば、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値より高いと判定した場合には、温度判定部182は、検知された乾燥用ガスの温度とガス温度閾値との差および燃料流量・ガス温度相関テーブルに基づいて流量調整弁111を絞るための信号を出力部171に出力するとともに、燃料流量および燃料流量・空気流量相関テーブルに基づいてダンパ102を絞るための信号を出力部171に出力する。
【0107】
なお、この際、温度判定部182は、ダンパ121の開度を調整するための信号を出力部171に出力することもある。
【0108】
また、排ガスの温度が排ガス温度閾値より低いと判定した場合には、温度判定部182は、検知された乾燥用ガスの温度とガス温度閾値との差および燃料流量・ガス温度相関テーブルに基づいて流量調整弁111を開くための信号を出力部171に出力するとともに、燃料流量および燃料流量・空気流量相関テーブルに基づいてダンパ102を開くための信号を出力部171に出力する。
【0109】
なお、この際、温度判定部182は、ダンパ121の開度を調整するための信号を出力部171に出力することもある。
【0110】
出力部171は、例えば、VOC濃度判定部181からの制御信号をブロア101、排気ファン142に出力する。また、出力部171は、例えば、温度判定部182からの制御信号を流量調整弁111、ダンパ102、121に出力する。
【0111】
ここで、上記した制御部160が実行する処理は、例えば、コンピュータ装置などで実現される。
【0112】
ここで、乾燥設備10の作用について説明する。
【0113】
まず、乾燥炉20の作用について説明する。
【0114】
図1に示すように、ファン61によって大気から希釈用空気導入管60内に引き込まれた希釈用空気は、凝縮器42を通り加熱される。なお、ヒートポンプ40における加熱側成績係数(COP)が最大となるように、希釈用空気導入管60内に導入される希釈用空気の流量や凝縮器42通過後の希釈用空気の温度などが調整されている。なお、流量などが調整された後には、希釈用空気導入管60に導入される希釈用空気の流量は、一定流量に設定される。
【0115】
加熱された希釈用空気は、燃焼装置50に導入される。希釈用空気は、燃焼ライナ51とケーシング52との間には空隙53に導入され、空隙53内を下流に向かって流れる。
【0116】
燃焼装置50の燃焼ライナ51内には、燃料導入管110を介して燃料および燃焼用空気導入管100を介して燃焼用空気が導入される。なお、燃焼用空気導入管100を流れる燃焼用空気は、熱交換器141を介して排気管140を流れる排ガスによって加熱される。ここで、排ガスによって加熱された燃焼用空気を燃焼装置50に導入することで、排ガスの有する熱量を有効利用することができるとともに、燃料流量を削減することができる。
【0117】
燃焼ライナ51内おいて燃料と燃焼用空気が燃焼し、燃焼ガスを生成する。燃焼ガスと希釈用空気を含む混合ガスは、乾燥用ガスとして、ファン131によって燃焼装置50から乾燥炉20に導入される。なお、この混合ガスには、乾燥用ガス循環配管150、希釈用空気導入管60を介して燃焼装置50に循環される乾燥用ガスも含まれる。ここで、燃焼ガスが希釈用空気と混合することで、燃焼ガスの温度は低下する。これによって、燃焼ガスと希釈用空気を含む混合ガスの温度は、乾燥炉20において要求される温度に調整される。
【0118】
乾燥用ガス導入管130を流れる乾燥用ガスの温度は、ガス温度検知器132によって検知される。
【0119】
乾燥炉20に導入された乾燥用ガスは、乾燥炉20内を移動するワークWに向けて噴出される。そして、例えば、ワークWに塗装された塗膜は、乾燥炉20内を移動する間に乾燥する。
【0120】
ここで、定常運転時において、分岐管120に備えられたダンパ121は、閉じられた状態である。すなわち、定常運転時においては、燃焼装置50において燃焼用空気として使用される空気がブロア101から燃焼用空気導入管100に導入され、分岐管120を介して希釈用空気導入管60に燃焼用空気は流れない。
【0121】
ここで、定常運転時とは、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値に維持されている状態での運転時をいう。
【0122】
乾燥炉20においてワークWを乾燥させた乾燥用ガスは、排ガスとして、排気ファン142によって排気管140を介して、大気中に排出される。排気管140を流れる排ガスに含まれるVOC濃度は、VOC濃度検知器143によって検知される。
【0123】
一方、乾燥炉20においてワークWを乾燥させた乾燥用ガスは、ファン131によって乾燥用ガス循環配管150を介して希釈用空気導入管60に導入される。そして、循環される乾燥用ガスは、希釈用空気導入管60を流れる希釈用空気とともに燃焼装置50に導入される。すなわち、循環される乾燥用ガスは、再び乾燥用ガスとして乾燥炉20に導入される。
【0124】
次に、冷却炉30の作用について説明する。
【0125】
ファン81によって大気から冷却用空気導入管80内に引き込まれた空気は、空気冷却用熱交換器72を通り冷却され、冷却用空気となる。
【0126】
なお、ヒートポンプ40における冷却側成績係数(COP)を最大に維持しつつ、冷却用空気導入管80を流れる空気を適正に冷却できるように、冷媒循環配管71を流れる冷媒の流量や温度などが調整されている。
【0127】
冷却用空気は、冷却用空気導入管80を介して冷却炉30に導入される。冷却炉30に導入された冷却用空気は、冷却炉30内を移動するワークWに向けて噴出される。なお、乾燥炉20で乾燥されたワークWは、図1に示すように、冷却炉30内に導かれる。
【0128】
冷却炉30においてワークWを冷却させた冷却用空気は、排気ファン91によって冷却用空気排出管90を介して、大気中に排出される。
【0129】
次に、排気管140を流れる排ガス中のVOC濃度に基づく乾燥設備10の作用について説明する。
【0130】
図3は、第1の実施の形態の乾燥設備10における、排ガス中のVOC濃度をVOC濃度閾値に維持するための作用を説明するためのフローチャートである。図4は、第1の実施の形態の乾燥設備10における、排ガス中のVOC濃度をVOC濃度閾値に維持するための作用のうちの乾燥用ガスの温度調整の作用を説明するためのフローチャートである。
【0131】
図3に示すように、制御部160のVOC濃度判定部181は、入力部170において入力されたVOC濃度検知器143からの検知信号および閾値記憶部191に格納されたVOC濃度閾値に基づいて、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値であるか否かを判定する(ステップS200)。
【0132】
ここで、乾燥設備10の運転時、制御部160の入力部170は、VOC濃度検知器143から検知信号を常時入力している。
【0133】
ステップS200の判定で、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値であると判定した場合(ステップS200のYes)、VOC濃度判定部181は、再度ステップS200の判定を実行する。
【0134】
ステップS200の判定で、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値ではないと判定した場合(ステップS200のNo)、VOC濃度検知器143からの検知信号および閾値記憶部191に格納されたVOC濃度閾値に基づいて、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より低いか否かを判定する(ステップS201)。
【0135】
ステップS201の判定で、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より低くないと判定した場合、すなわち、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より高いと判定した場合(ステップS201のNo)、VOC濃度判定部181は、VOC濃度検知器143で検知された排ガス中のVOC濃度とVOC濃度閾値との差(VOC濃度差)および流量相関記憶部192に格納された排ガス流量・VOC濃度相関テーブルに基づいて、排気ファン142を制御するための信号を出力部171に出力する(ステップS202)。そして、出力部171は、その信号を排気ファン142に出力する(ステップS202)。
【0136】
この際、VOC濃度判定部181は、例えば、VOC濃度差および排ガス流量・VOC濃度相関テーブルに基づいて、排気ファン142の回転数を増加させるための信号を出力部171に出力する。
【0137】
また、ステップS201の判定で、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より高いと判定した場合(ステップS201のNo)、VOC濃度判定部181は、排ガスの流量(例えば、排気ファン142の回転数)および流量相関記憶部192に格納された排ガス流量・空気流量相関テーブルに基づいて、ブロア101を制御するための信号を出力部171に出力する(ステップS203)。そして、出力部171は、その信号をブロア101に出力する(ステップS203)。
【0138】
この際、VOC濃度判定部181は、排ガスの流量および排ガス流量・空気流量相関テーブルに基づいて、排ガスの流量と同流量の空気をブロア101から吐出するための信号を出力部171に出力する。なお、ここでいう流量は、体積流量である。
【0139】
続いて、制御部160の温度判定部182は、ガス温度検知器132からの検知信号および閾値記憶部191に格納されたガス温度閾値に基づいて、乾燥用ガスの温度調整を実行する(ステップS204)。
【0140】
ここで、ステップS204(ステップS204A~ステップS204E)の乾燥用ガスの温度調整の作用を図4を参照して説明する。
【0141】
ステップS203において、ブロア101から吐出される空気の流量が増加されると、図4に示すように、制御部160の温度判定部182は、分岐管120のダンパ121を開くための信号を出力部171に出力する(ステップS204A)。そして、出力部171は、その信号をダンパ121に出力する(ステップS204A)。
【0142】
ここで、燃焼ライナ51内に導入される燃焼に必要な燃焼用空気に対して余剰の空気が分岐管120を介して希釈用空気導入管60に流れるように、ダンパ121の開度は制御される。なお、定常運転時には、ダンパ121は閉じられている。
【0143】
続いて、温度判定部182は、ガス温度検知器132からの検知信号および閾値記憶部191に格納されたガス温度閾値に基づいて、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値であるか否かを判定する(ステップS204B)。
【0144】
ステップS204Bの判定で、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値であると判定した場合(ステップS204BのYes)、温度判定部182は、再度ステップS204Bの判定を実行する。
【0145】
ステップS204Bの判定で、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値ではないと判定した場合(ステップS204BのNo)、温度判定部182は、ガス温度検知器132からの検知信号および閾値記憶部191に格納されたガス温度閾値に基づいて、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値より低いか否かを判定する(ステップS204C)。
【0146】
ステップS204Cの判定で、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値より低いと判定した場合(ステップS204CのYes)、温度判定部182は、乾燥用ガスの温度とガス温度閾値との温度差を算出する(ステップS204D)。そして、温度判定部182は、算出した温度差および流量相関記憶部192に格納された燃料流量・ガス温度相関テーブルに基づいて、流量調整弁111を制御して燃料流量を増加させるための信号を出力部171に出力する(ステップS204D)。出力部171は、その信号を流量調整弁111に出力する(ステップS204D)。
【0147】
ここで、温度判定部182は、入力部170で入力された燃料流量計112からの出力信号に基づいて、燃料流量に係る情報を得る。
【0148】
また、温度判定部182は、燃料流量および流量相関記憶部192に格納された燃料流量・空気流量相関テーブルに基づいて、ダンパ102の開度を大きくして燃焼ライナ51内に導入される燃焼用空気の流量を増加させるための信号を出力部171に出力する(ステップS204D)。そして、出力部171は、その信号をダンパ102に出力する(ステップS204D)。
【0149】
なお、この際、温度判定部182は、燃焼に必要な燃焼用空気が燃焼ライナ51内に導入されるように、ダンパ121の開度を調整する。
【0150】
そして、ステップS204Dを実行後、温度判定部182は、再度ステップS204Bの判定を実行する。
【0151】
ステップS204Cの判定で、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値より低くないと判定した場合、すなわち、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値より高いと判定した場合(ステップS204CのNo)、温度判定部182は、乾燥用ガスの温度とガス温度閾値との温度差を算出する(ステップS204E)。そして、温度判定部182は、算出した温度差および流量相関記憶部192に格納された燃料流量・ガス温度相関テーブルに基づいて、流量調整弁111を制御して燃料流量を減少させるための信号を出力部171に出力する(ステップS204E)。出力部171は、その信号を流量調整弁111に出力する(ステップS204E)。
【0152】
ここで、温度判定部182は、入力部170で入力された燃料流量計112からの出力信号に基づいて、燃料流量に係る情報を得る。
【0153】
また、温度判定部182は、燃料流量および流量相関記憶部192に格納された燃料流量・空気流量相関テーブルに基づいて、ダンパ102の開度を小さくして燃焼ライナ51内に導入される燃焼用空気の流量を減少させるための信号を出力部171に出力する(ステップS204E)。そして、出力部171は、その信号をダンパ102に出力する(ステップS204E)。
【0154】
なお、この際、温度判定部182は、燃焼に必要な燃焼用空気が燃焼ライナ51内に導入されるように、ダンパ121の開度を調整する。
【0155】
そして、ステップS204Eを実行後、温度判定部182は、再度ステップS204Bの判定を実行する。
【0156】
以上のステップS204(ステップS204A~ステップS204E)の乾燥用ガスの温度調整を実行後、図3に示すように、VOC濃度判定部181は、入力部170の入力信号に基づいて、乾燥設備10の運転終了に係る信号があるか否かを判定する(ステップS205)。
【0157】
ステップS205の判定で、乾燥設備10の運転終了に係る信号があると判定した場合(ステップS205のYes)、VOC濃度判定部181は、乾燥設備10の運転を終了するための処理を実行する。
【0158】
なお、乾燥設備10の運転終了に係る処理は、VOC濃度判定部181以外の他の判定部で実行されてもよい。
【0159】
ステップS205の判定で、乾燥設備10の運転終了に係る信号がないと判定した場合(ステップS205のNo)、VOC濃度判定部181は、再度ステップS200からの処理を実行する。
【0160】
ステップS201の判定で、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より低いと判定した場合(ステップS201のYes)、VOC濃度判定部181は、VOC濃度検知器143で検知された排ガス中のVOC濃度とVOC濃度閾値との差(VOC濃度差)および流量相関記憶部192に格納された排ガス流量・VOC濃度相関テーブルに基づいて、排気ファン142を制御するための信号を出力部171に出力する(ステップS206)。そして、出力部171は、その信号を排気ファン142に出力する(ステップS206)。
【0161】
この際、VOC濃度判定部181は、例えば、VOC濃度差および排ガス流量・VOC濃度相関テーブルに基づいて、排気ファン142の回転数を減少させるための信号を出力部171に出力する。
【0162】
また、ステップS201の判定で、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より低いと判定した場合(ステップS201のYes)、VOC濃度判定部181は、排ガスの流量(例えば、排気ファン142の回転数)および流量相関記憶部192に格納された排ガス流量・空気流量相関テーブルに基づいて、ブロア101を制御するための信号を出力部171に出力する(ステップS207)。そして、出力部171は、その信号をブロア101に出力する(ステップS207)。
【0163】
この際、VOC濃度判定部181は、排ガスの流量および排ガス流量・空気流量相関テーブルに基づいて、排ガスの流量と同流量の空気をブロア101から吐出するための信号を出力部171に出力する。
【0164】
続いて、制御部160の温度判定部182は、ガス温度検知器132からの検知信号および閾値記憶部191に格納されたガス温度閾値に基づいて、乾燥用ガスの温度調整を実行する(ステップS208)。
【0165】
なお、ステップS208では、前述したステップS204の処理と同じ処理を実行する。すなわち、ステップS208では、図4に示した、ステップS204A~ステップS204Eの処理を実行する。
【0166】
この際、温度判定部182は、燃焼用空気として必要な空気流量を超える空気がブロア101から燃焼用空気導入管100に導入されている場合には、分岐管120のダンパ121の開度を適宜調整するための信号を出力部171に出力する(ステップS204A)。一方、温度判定部182は、燃焼用空気として必要な空気流量の空気のみがブロア101から燃焼用空気導入管100に導入されている場合には、分岐管120のダンパ121を閉じるための信号を出力部171に出力する(ステップS204A)。
【0167】
ステップS208において乾燥用ガスの温度調整を実行後、図3に示すように、VOC濃度判定部181は、入力部170の入力信号に基づいて、乾燥設備10の運転終了に係る信号があるか否かを判定する(ステップS209)。
【0168】
ステップS209の判定で、乾燥設備10の運転終了に係る信号があると判定した場合(ステップS209のYes)、乾燥設備10の運転を終了するための処理を実行する。
【0169】
ステップS209の判定で、乾燥設備10の運転終了に係る信号がないと判定した場合(ステップS209のNo)、VOC濃度判定部181は、再度ステップS200からの処理を実行する。
【0170】
上記したように、第1の実施の形態の乾燥設備10では、排ガス中のVOC濃度をVOC濃度閾値に維持することができる。
【0171】
乾燥設備10において、例えば、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より高い場合には、乾燥炉20から排出する排ガスの流量を増加させ、乾燥炉20に導入する乾燥用ガスの流量を増加させることができる。
【0172】
一方、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より低い場合には、乾燥炉20から排出する排ガスの流量を減少させ、乾燥炉20に導入する乾燥用ガスの流量を減少させることができる。
【0173】
また、乾燥設備10では、排ガス中のVOC濃度とVOC濃度閾値との差に基づいて、乾燥炉20から排出する排ガスの流量、乾燥炉20に導入する乾燥用ガスの流量を適正に調整することができる。
【0174】
ここで、VOC濃度がVOC濃度閾値より高くなる場合として、乾燥炉20において一度に多くのワークWを乾燥させるときや、乾燥させるワークWのサイズが大きいときなどが挙げられる。これらの場合、乾燥炉20内において、塗膜に含まれるVOCが多量に蒸発するため、VOC濃度がVOC濃度閾値より高くなる。
【0175】
一方、VOC濃度がVOC濃度閾値より低くなる場合として、乾燥炉20において一度に乾燥させるワークWの数量が少ないときや、乾燥させるワークWのサイズが小さいときなどが挙げられる。これらの場合、乾燥炉20内において、発生するVOCが少なく、VOC濃度がVOC濃度閾値より低くなる。
【0176】
いずれの場合においても、排ガス中のVOC濃度に応じて、乾燥炉20から排出する排ガスの流量および乾燥炉20に導入する乾燥用ガスの流量を調整することで、排ガス中のVOC濃度、すなわち乾燥炉20内のVOC濃度をVOC濃度閾値に維持することができる。
【0177】
乾燥設備10では、排ガスに含まるVOCを回収して除去する装置などを備えることなく、乾燥炉20から排出する排ガスの流量および乾燥炉20に導入する乾燥用ガスの流量を調整することで、排ガス中のVOC濃度をVOC濃度閾値に維持することができる。
【0178】
また、乾燥設備10では、排ガスの流量と同流量の空気をブロア101から吐出することで、乾燥炉20から排出された排ガスと同流量の乾燥用ガスを乾燥炉20に導入することができる。これによって、乾燥炉20内の圧力を一定に維持できる。
【0179】
また、乾燥設備10では、分岐管120を備え、ダンパ121の開度を調整することで、燃焼に必要な空気を燃焼ライナ51内に導入しつつ、余剰の空気を希釈用空気導入管60に導入することができる。すなわち、乾燥用ガスの流量を増加しつつ、適正な流量の空気を燃焼ライナ51内に導入することができる。
【0180】
乾燥設備10では、ステップS204(ステップS204A~ステップS204E)、ステップS208において、温度判定部182を備え、燃料流量および燃焼用空気流量を調整することで、乾燥炉20内のVOC濃度をVOC濃度閾値に維持するために乾燥用ガスの流量が増加または減少されたときにおいても、ガス温度閾値の温度の乾燥用ガスを乾燥炉20に導入することができる。また、乾燥設備10では、例えば、乾燥炉20に導入される乾燥用ガスの温度とガス温度閾値との差に基づいて、燃焼装置50に導入する燃料の流量を適正に設定することができる。
【0181】
これらによって、乾燥炉20内のVOC濃度をVOC濃度閾値に維持するための処理を実行しているときにおいても、ワークWを適正に乾燥させることができる。
【0182】
乾燥設備10において、燃焼用空気導入管100を流れる空気は、熱交換器141を介して排気管140を流れる排ガスによって加熱される。これによって、排ガスの有する熱量を有効利用することができる。さらに、この加熱された空気が燃焼装置50に導入されることで、燃焼装置50に導入する燃料流量を削減することができる。
【0183】
また、乾燥設備10では、ヒートポンプ40における成績係数(COP)が最大となる条件を維持しつつ、簡易な構成を備えることで、VOC濃度をVOC濃度閾値に維持するための処理を実行することができる。
【0184】
また、VOCを除去する機能を備えていない既存の乾燥設備においても、大規な増設工事をすることなく、第1の実施の形態に示したVOC濃度をVOC濃度閾値に維持するための構成を備えることができる。
【0185】
すなわち、既存の乾燥設備に、例えば、ダンパ121を有する分岐管120と、制御部160とを備えることで、大型化や煩雑化を招くことなく、既存の乾燥設備に第1の実施の形態に示したVOC濃度をVOC濃度閾値に維持するための構成を備えることができる。
【0186】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態の乾燥設備11の概要を模式的に示した図である。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態の乾燥設備10と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
【0187】
第2の実施の形態の乾燥設備11において、燃焼用空気の導入系統、および排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値を超えた際に増加した空気(希釈用空気)を第1の希釈用空気導入管60Aに導入する導入系統の構成が、第1の実施の形態の乾燥設備10の構成と異なる。ここでは、この異なる構成について主に説明する。
【0188】
図5に示すように、乾燥設備10は、乾燥炉20と、冷却炉30とを備える。また、乾燥設備10は、燃焼装置50と、燃焼用空気導入管300と、燃料導入管110と、第1の希釈用空気導入管60Aと、第2の希釈用空気導入管310と、乾燥用ガス導入管130と、排気管140と、乾燥用ガス循環配管150とを備える。また、乾燥設備10は、乾燥設備10を制御する制御部160を備える。
【0189】
なお、第1の希釈用空気導入管60Aは、第1の実施の形態の乾燥設備10における希釈用空気導入管60と同じ構成である。また、第1の希釈用空気導入管60Aにおける作用も、第1の実施の形態の乾燥設備10における希釈用空気導入管60の作用と同じである。
【0190】
ここでは、燃焼用空気導入管300および第2の希釈用空気導入管310について主に説明する。
【0191】
燃焼用空気導入管300は、燃焼装置50に燃焼用空気を導入する。具体的には、燃焼用空気導入管300は、燃焼ライナ51に連結され、燃焼ライナ51内に空気を導入する。燃焼用空気導入管300には、外気を燃焼用空気導入管300に導入して燃焼装置50に導くブロア301が備えられている。なお、ブロア301は、第1の空気供給機として機能する。第1の空気供給機として、例えば、ファンを使用してもよい。
【0192】
第2の希釈用空気導入管310は、第1の希釈用空気導入管60Aに、空気(希釈用空気)を導入可能に備えられている。具体的には、第2の希釈用空気導入管310は、ヒートポンプ40と燃焼装置50との間の第1の希釈用空気導入管60Aに連結されている。
【0193】
第2の希釈用空気導入管310には、外気を第2の希釈用空気導入管310に導入して第1の希釈用空気導入管60Aに導くブロア311が備えられている。なお、ブロア311は、第2の空気供給機として機能する。第2の空気供給機として、例えば、ファンを使用してもよい。
【0194】
第2の希釈用空気導入管310の一部は、図5に示すように、排気管140を流れる乾燥用ガスと熱交換可能に構成されている。第2の希釈用空気導入管310は、例えば、排気管140に備えられた熱交換器141を通るように配管されている。そして、第2の希釈用空気導入管310を流れる空気は、熱交換器141を介して排ガスによって加熱される。
【0195】
なお、第2の希釈用空気導入管310を流れる空気は、第1の希釈用空気導入管60Aを流れる空気とともに、希釈用空気として燃焼装置50に導入される。
【0196】
ここで、第2の希釈用空気導入管310に備えられたブロア311は、排気ファン142によって排気される排ガスの流量と同流量の空気を第2の希釈用空気導入管310内に導くように作動される。すなわち、乾燥炉20から排ガスが排気されている運転条件において、ブロア311は、常時作動している。
【0197】
ここで、乾燥用ガス循環配管150は、例えば、第2の希釈用空気導入管310が第1の希釈用空気導入管60Aに連結される位置よりもヒートポンプ40側で第1の希釈用空気導入管60Aに連結される。なお、乾燥用ガス循環配管150の第1の希釈用空気導入管60Aとの連結部は、第2の希釈用空気導入管310の第1の希釈用空気導入管60Aとの連結部よりも燃焼装置50側であってもよい。
【0198】
制御部160は、VOC濃度検知器143で検知された信号に基づいて、例えば、排気ファン142、ブロア311を制御する。また、制御部160は、ガス温度検知器132で検知された信号に基づいて、例えば、ブロア301、流量調整弁111を制御する。
【0199】
ここで、第2の実施の形態の乾燥設備11においても、図2に示された構成と同様に、制御部160は、入力部170、演算部180、記憶部190、出力部171を備える。
【0200】
ここでは、第2の実施の形態の乾燥設備11の制御部160の各構成部の機能と、第1の実施の形態の乾燥設備10の制御部160の各構成部の機能とで異なる点について主に説明する。
【0201】
前述したように、記憶部190は、閾値記憶部191、流量相関記憶部192を備える(図2参照)。
【0202】
流量相関記憶部192は、排気ファン142によって排気される排ガスの流量と同流量の空気を第2の希釈用空気導入管310にブロア311から導入するための排ガス流量・空気流量相関テーブルを格納している。
【0203】
具体的には、排ガス流量・空気流量相関テーブルは、排気される排ガスの流量と同流量の空気を吐出するためのブロア311の回転数を定めた相関データで構成される。例えば、排ガス流量・空気流量相関テーブルは、排気ファン142の回転数とブロア311の回転数の対応関係を定めた相関データで構成される。
【0204】
また、流量相関記憶部192は、例えば、燃料流量に基づいて燃焼用空気の流量を設定するための燃料流量・空気流量相関テーブルを格納している。燃料流量・空気流量相関テーブルは、例えば、燃料流量に対応する空気流量を定めた相関データで構成される。具体的には、燃料流量・空気流量相関テーブルは、燃料流量に基づいてブロア301の回転数を定めた相関データで構成される。
【0205】
前述したように、演算部180は、VOC濃度判定部181、温度判定部182を備える(図2参照)。
【0206】
VOC濃度判定部181は、閾値記憶部191に格納されたVOC濃度閾値およびVOC濃度検知器143からの検知信号に基づいて、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値であるか否か、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より高いか否かまたはVOC濃度閾値より低いか否かを判定する。
【0207】
そして、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より高いと判定した場合または排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より低いと判定した場合には、VOC濃度判定部181は、排ガス中のVOC濃度とVOC濃度閾値との差および流量相関記憶部192に格納された排ガス流量・VOC濃度相関テーブルに基づいて、排気ファン142を制御するための信号を出力部171に出力する。
【0208】
また、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より高いと判定した場合または排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より低いと判定した場合には、VOC濃度判定部181は、排ガスの流量(例えば、排気ファン142の回転数)および排ガス流量・空気流量相関テーブルに基づいて、ブロア311を制御するための信号を出力部171に出力する。
【0209】
温度判定部182は、閾値記憶部191に格納されたガス温度閾値およびガス温度検知器132からの検知信号に基づいて、例えば、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値であるか否かを判定する。また、温度判定部182は、例えば、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値より高いか、または低いかを判定する。
【0210】
そして、例えば、VOC濃度判定部181によって排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より高いと判定された場合において、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値より高いか、または低いと判定した場合には、温度判定部182は、検知された乾燥用ガスの温度とガス温度閾値との差、流量相関記憶部192に格納された燃料流量・ガス温度相関テーブルおよび燃料流量・空気流量相関テーブルに基づいて、ブロア301、流量調整弁111を制御する。
【0211】
例えば、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値より高いと判定した場合には、温度判定部182は、燃料流量・ガス温度相関テーブルに基づいて流量調整弁111を絞るための信号を出力部171に出力するとともに、燃料流量・空気流量相関テーブルに基づいてブロア301の回転数を減少させるための信号を出力部171に出力する。
【0212】
また、排ガスの温度が排ガス温度閾値より低いと判定した場合には、温度判定部182は、燃料流量・ガス温度相関テーブルに基づいて流量調整弁111を開くための信号を出力部171に出力するとともに、燃料流量・空気流量相関テーブルに基づいてブロア301の回転数を増加させるための信号を出力部171に出力する。
【0213】
出力部171は、例えば、VOC濃度判定部181からの制御信号を排気ファン142、ブロア311に出力する。また、出力部171は、例えば、温度判定部182からの制御信号を流量調整弁111、ブロア301に出力する。
【0214】
次に、排気管140を流れる排ガス中のVOC濃度に基づく乾燥設備11の作用について説明する。
【0215】
ここで、第1の実施の形態の乾燥設備10の作用の説明で示した図3および図4を参照して、第2の実施の形態の乾燥設備11の作用を説明する。
【0216】
図3に示すように、制御部160のVOC濃度判定部181は、入力部170において入力されたVOC濃度検知器143からの検知信号および閾値記憶部191に格納されたVOC濃度閾値に基づいて、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値であるか否かを判定する(ステップS200)。
【0217】
ここで、乾燥設備10の運転時、制御部160の入力部170は、VOC濃度検知器143から検知信号を常時入力している。
【0218】
ステップS200の判定で、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値であると判定した場合(ステップS200のYes)、VOC濃度判定部181は、再度ステップS200の判定を実行する。
【0219】
ステップS200の判定で、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値ではないと判定した場合(ステップS200のNo)、VOC濃度検知器143からの検知信号および閾値記憶部191に格納されたVOC濃度閾値に基づいて、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より低いか否かを判定する(ステップS201)。
【0220】
ステップS201の判定で、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より低くないと判定した場合、すなわち、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より高いと判定した場合(ステップS201のNo)、VOC濃度判定部181は、VOC濃度検知器143で検知された排ガス中のVOC濃度とVOC濃度閾値との差(VOC濃度差)および流量相関記憶部192に格納された排ガス流量・VOC濃度相関テーブルに基づいて、排気ファン142を制御するための信号を出力部171に出力する(ステップS202)。そして、出力部171は、その信号を排気ファン142に出力する(ステップS202)。
【0221】
この際、VOC濃度判定部181は、例えば、VOC濃度差および排ガス流量・VOC濃度相関テーブルに基づいて、排気ファン142の回転数を増加させるための信号を出力部171に出力する。
【0222】
また、ステップS201の判定で、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より高いと判定した場合(ステップS201のNo)、VOC濃度判定部181は、排ガスの流量(例えば、排気ファン142の回転数)および流量相関記憶部192に格納された排ガス流量・空気流量相関テーブルに基づいて、ブロア311を制御するための信号を出力部171に出力する(ステップS203)。そして、出力部171は、その信号をブロア311に出力する(ステップS203)。
【0223】
この際、VOC濃度判定部181は、排ガスの流量および排ガス流量・空気流量相関テーブルに基づいて、排ガスの流量と同流量の空気をブロア311から吐出するための信号を出力部171に出力する。
【0224】
続いて、制御部160の温度判定部182は、ガス温度検知器132からの検知信号および閾値記憶部191に格納されたガス温度閾値に基づいて、乾燥用ガスの温度調整を実行する(ステップS204)。
【0225】
ここで、ステップS204の乾燥用ガスの温度調整の作用を図4を参照して説明する。
【0226】
乾燥設備11においては、図4のステップS204Aにおける処理は実行されない。したがって、乾燥設備11においては、図4のステップS204Bからの処理が実行される。
【0227】
温度判定部182は、ガス温度検知器132からの検知信号および閾値記憶部191に格納されたガス温度閾値に基づいて、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値であるか否かを判定する(ステップS204B)。
【0228】
ステップS204Bの判定で、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値であると判定した場合(ステップS204BのYes)、温度判定部182は、再度ステップS204Bの判定を実行する。
【0229】
ステップS204Bの判定で、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値ではないと判定した場合(ステップS204BのNo)、温度判定部182は、ガス温度検知器132からの検知信号および閾値記憶部191に格納されたガス温度閾値に基づいて、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値より低いか否かを判定する(ステップS204C)。
【0230】
ステップS204Cの判定で、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値より低いと判定した場合(ステップS204CのYes)、温度判定部182は、乾燥用ガスの温度とガス温度閾値との温度差を算出する(ステップS204D)。そして、温度判定部182は、算出した温度差および流量相関記憶部192に格納された燃料流量・ガス温度相関テーブルに基づいて、流量調整弁111を制御して燃料流量を増加させるための信号を出力部171に出力する(ステップS204D)。出力部171は、その信号を流量調整弁111に出力する(ステップS204D)。
【0231】
また、温度判定部182は、燃料流量および流量相関記憶部192に格納された燃料流量・空気流量相関テーブルに基づいて、ブロア301の回転数を増加して燃焼ライナ51内に導入される燃焼用空気の流量を増加させるための信号を出力部171に出力する(ステップS204D)。そして、出力部171は、その信号をブロア301に出力する(ステップS204D)。
【0232】
そして、ステップS204Dを実行後、温度判定部182は、再度ステップS204Bの判定を実行する。
【0233】
ステップS204Cの判定で、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値より低くないと判定した場合、すなわち、乾燥用ガスの温度がガス温度閾値より高いと判定した場合(ステップS204CのNo)、温度判定部182は、乾燥用ガスの温度とガス温度閾値との温度差を算出する(ステップS204E)。そして、温度判定部182は、算出した温度差および流量相関記憶部192に格納された燃料流量・ガス温度相関テーブルに基づいて、流量調整弁111を制御して燃料流量を減少させるための信号を出力部171に出力する(ステップS204E)。出力部171は、その信号を流量調整弁111に出力する(ステップS204E)。
【0234】
また、温度判定部182は、燃料流量および流量相関記憶部192に格納された燃料流量・空気流量相関テーブルに基づいて、ブロア301の回転数を減少して燃焼ライナ51内に導入される燃焼用空気の流量を減少させるための信号を出力部171に出力する(ステップS204E)。そして、出力部171は、その信号をブロア301に出力する(ステップS204E)。
【0235】
そして、ステップS204Eを実行後、温度判定部182は、再度ステップS204Bの判定を実行する。
【0236】
以上のステップS204(ステップS204B~ステップS204E)の乾燥用ガスの温度調整を実行後、図3に示すように、VOC濃度判定部181は、入力部170の入力信号に基づいて、乾燥設備10の運転終了に係る信号があるか否かを判定する(ステップS205)。
【0237】
ステップS205の判定で、乾燥設備10の運転終了に係る信号があると判定した場合(ステップS205のYes)、VOC濃度判定部181は、乾燥設備10の運転を終了するための処理を実行する。
【0238】
なお、乾燥設備10の運転終了に係る処理は、VOC濃度判定部181以外の他の判定部で実行されてもよい。
【0239】
ステップS205の判定で、乾燥設備10の運転終了に係る信号がないと判定した場合(ステップS205のNo)、VOC濃度判定部181は、再度ステップS200からの処理を実行する。
【0240】
ステップS201の判定で、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より低いと判定した場合(ステップS201のYes)、VOC濃度判定部181は、VOC濃度検知器143で検知された排ガス中のVOC濃度とVOC濃度閾値との差(VOC濃度差)および流量相関記憶部192に格納された排ガス流量・VOC濃度相関テーブルに基づいて、排気ファン142を制御するための信号を出力部171に出力する(ステップS206)。そして、出力部171は、その信号を排気ファン142に出力する(ステップS206)。
【0241】
この際、VOC濃度判定部181は、例えば、VOC濃度差および排ガス流量・VOC濃度相関テーブルに基づいて、排気ファン142の回転数を減少させるための信号を出力部171に出力する。
【0242】
また、ステップS201の判定で、排ガス中のVOC濃度がVOC濃度閾値より低いと判定した場合(ステップS201のYes)、VOC濃度判定部181は、排ガスの流量(例えば、排気ファン142の回転数)および流量相関記憶部192に格納された排ガス流量・空気流量相関テーブルに基づいて、ブロア311を制御するための信号を出力部171に出力する(ステップS207)。そして、出力部171は、その信号をブロア311に出力する(ステップS207)。
【0243】
この際、VOC濃度判定部181は、排ガスの流量および排ガス流量・空気流量相関テーブルに基づいて、排ガスの流量と同流量の空気をブロア311から吐出するための信号を出力部171に出力する。
【0244】
続いて、制御部160の温度判定部182は、ガス温度検知器132からの検知信号および閾値記憶部191に格納されたガス温度閾値に基づいて、乾燥用ガスの温度調整を実行する(ステップS208)。
【0245】
なお、ステップS208では、前述したステップS204の処理と同じ処理を実行する。すなわち、ステップS208では、図4に示した、ステップS204B~ステップS204Eの処理を実行する。
【0246】
ステップS208において乾燥用ガスの温度調整を実行後、図3に示すように、VOC濃度判定部181は、入力部170の入力信号に基づいて、乾燥設備10の運転終了に係る信号があるか否かを判定する(ステップS209)。
【0247】
ステップS209の判定で、乾燥設備10の運転終了に係る信号があると判定した場合、(ステップS209のYes)、乾燥設備10の運転を終了するための処理を実行する。
【0248】
ステップS209の判定で、乾燥設備10の運転終了に係る信号がないと判定した場合、(ステップS209のNo)、VOC濃度判定部181は、再度ステップS200からの処理を実行する。
【0249】
なお、第2の実施の形態の乾燥設備11におけるVOC濃度調整運転時において、運転条件によっては、排気ファン142によって排出される排ガスの流量よりも、乾燥炉20に導入される乾燥用ガスの流量が多くなることがある。
【0250】
このような場合には、その過剰分の乾燥用ガスは、例えば、乾燥炉20よりも上流側(ワークWの搬送方向の上流側)に備えられるセッティングゾーンに導入されてもよい。これによって、乾燥炉20内の圧力を一定に維持することができる。
【0251】
第2の実施の形態の乾燥設備11においては、第1の実施の形態の乾燥設備10の作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0252】
また、乾燥設備11においては、ブロア311によって外気から導入された空気が流れる第2の希釈用空気導入管310と、燃焼装置50に燃焼用空気を導入する燃焼用空気導入管300とを独立した別個の系統で構成している。
【0253】
これによって、第2の希釈用空気導入管310を介して第1の希釈用空気導入管60Aに導入される空気の流量と、燃焼用空気導入管300を介して燃焼装置50に導入される燃焼用空気の流量とを独立して制御することができる。
【0254】
乾燥設備11において、第2の希釈用空気導入管310を流れる空気は、熱交換器141を介して排気管140を流れる排ガスによって加熱される。これによって、排ガスの有する熱量を有効利用することができる。さらに、この加熱された空気が燃焼装置50に導入されることで、燃焼装置50に導入する燃料流量を削減することができる。
【0255】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0256】
10、11…乾燥設備、20…乾燥炉、30…冷却炉、40…ヒートポンプ、41…冷媒流路、42…凝縮器、43…蒸発器、44…圧縮機、45…膨張弁、50…燃焼装置、51…燃焼ライナ、52…ケーシング、53…空隙、60…希釈用空気導入管、60A…第1の希釈用空気導入管、61、81、131…ファン、70…空気冷却機構、71…冷媒循環配管、72…空気冷却用熱交換器、73…循環ポンプ、74…冷媒加熱用熱交換器、80…冷却用空気導入管、90…冷却用空気排出管、91、142…排気ファン、100、300…燃焼用空気導入管、101、301、311…ブロア、102、121…ダンパ、110…燃料導入管、111…流量調整弁、112…燃料流量計、120…分岐管、130…乾燥用ガス導入管、132…ガス温度検知器、140…排気管、141…熱交換器、143…VOC濃度検知器、145…分岐排気管、146…流量調整弁、150…乾燥用ガス循環配管、160…制御部、170…入力部、171…出力部、180…演算部、181…VOC濃度判定部、182…温度判定部、190…記憶部、191…閾値記憶部、192…流量相関記憶部、310…第2の希釈用空気導入管、W…ワーク。
図1
図2
図3
図4
図5